JP2003183827A - 薄膜作製装置 - Google Patents

薄膜作製装置

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JP2003183827A
JP2003183827A JP2001385645A JP2001385645A JP2003183827A JP 2003183827 A JP2003183827 A JP 2003183827A JP 2001385645 A JP2001385645 A JP 2001385645A JP 2001385645 A JP2001385645 A JP 2001385645A JP 2003183827 A JP2003183827 A JP 2003183827A
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film forming
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Shinichi Morohashi
信一 諸橋
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高速・低温スパッタが可能な従来の対向ター
ゲット式スパッタの特長を持ちながら、磁束漏洩の防止
のために大型化するという構造上の問題を解決し、構造
の小型化、マルチターゲット化及びそれに伴う真空装置
の小型化により、コスト的に有利な多層薄膜構造を作製
でき、更に、より高密度プラズマ状態でのスパッタを実
現し、In-situで多層薄膜構造の高真空・高速・低温ス
パッタが可能な薄膜作製装置を提供する。 【解決手段】 より高密度プラズマ状態でのスパッタを
実現するため、自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを
利用した薄膜作製装置とし、磁束漏洩の問題を解決する
ため、回転できる多面体型の回転軸に平行なそれぞれの
面にターゲットを配置した多面体ターゲットホルダー一
対が対向する配置とし、多面体ターゲットホルダーのそ
れぞれのターゲット裏面に配置されている磁石の作る磁
束線が、多面体ターゲットホルダー内面において完全に
閉じるように、磁石の極性が交互に変わるように配置し
た薄膜作製装置とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜単層又は多層
構造からなるエレクトロニクス、電子工業、時計工業、
機械工業、光学工業において、欠くことのできない重要
な薄膜作製装置に関する。
【0002】
【従来の技術】薄膜単層又は多層構造からなる電子材料
とその応用である電子デバイス作製において、真空状態
下での薄膜作製装置は重要である。薄膜作製方法は大別
して、蒸着、スパッタ、CVD(Chemical Vapor Depositio
n)がある(薄膜作成の基礎(日刊工業新聞社)麻蒔立男
著、薄膜ハンドブック(日本学術振興会薄膜第131委員
会、オーム社)、薄膜化技術(共立出版株式会社)和佐
清孝・早川茂著、スパッタ薄膜(日刊工業新聞社)小林
春洋著など)。
【0003】なかでもスパッタは、基板材料の種類を問
わずどんな材質の膜でも有毒なガスを使用しないで安全
に比較的簡単な装置で薄膜を堆積できることから、各方
面において広く使用されている。
【0004】スパッタの原理は、真空装置内でプラズマ
を発生させ、そのプラズマ中のイオンをターゲットに衝
突させてターゲット表面の構成原子・分子をはじき飛ば
して、それを基板上に堆積させて薄膜を作製するもので
ある。
【0005】スパッタ装置は、衝撃イオン源であるイオ
ン化ガス又は放電プラズマの発生方法、印加電源の種
類、電極の構造から、図1のような各種の方法がある。
【0006】図1-aに示すイオンビームスパッタは、イ
オン室で形成した照射イオンをスパッタ室へ導出し、そ
の照射イオンでターゲットをスパッタして薄膜を堆積す
る。イオンを形成する方法の違いで熱陰極型のカウフマ
ンイオン源、電子サイクロトロン共鳴(electron cyclo
tron resonance:ECR)型のECRイオン源がある。いずれ
もAr等のイオンビームを引きだしてターゲットに照射
し、スパッタする方法である。放電圧力が10-4 Torr以
下と低くてもスパッタが可能であり、薄膜への放電ガス
の混入が少なくスパッタ粒子のもつ運動エネルギーが大
きいために、表面平滑性の優れた緻密な薄膜形成が可能
となるが、薄膜堆積速度が小さいことが欠点である。
【0007】図1-bに示す2極スパッタは、プラズマ内
のイオンが陰極降下内で加速されてターゲットを衝撃し
てスパッタを起こし、対向した基板上にスパッタされた
粒子が飛来して薄膜が形成される。印加電源の違いによ
り直流(DC)、交流(RF)スパッタがある。装置構成は
簡単なものの、1)プラズマ効率が悪く、プラズマを起
こすために導入するガス圧力を高くしなければならず、
薄膜へのガス混入が大きい、2)プラズマ効率が悪く、
結果的に薄膜堆積速度が小さい、3)ターゲットをイオ
ンガスが衝撃するときに生成される高エネルギーのγ電
子(2次電子)が正対している基板を直撃するために、
基板温度が堆積中に数百度にも上昇する、4)ターゲッ
トと基板が正対しているために、ターゲットを衝撃した
イオンの一部が基板を直撃し(反跳イオン)、基板への
ダメージ及び多成分の薄膜での組成ずれが起こる、等の
欠点がある。
【0008】2極スパッタの欠点を解決するために、マ
グネトロンスパッタが考案された。図1-cは、その代表
的なプレナーマグネトロンスパッタの原理図を示す。印
加電源の違いによりDC、RFスパッタがある。2極スパッ
タで述べた、ターゲットをイオンガスが衝撃するときに
生成される高エネルギーのγ電子は、基板直撃による基
板温度上昇の大きな原因ではあるが、高エネルギーのた
めにガスをイオン化してプラズマ放電を維持する上で重
要な役割をしている。そこで、ターゲット裏面に図のよ
うにマグネトロンを配置してターゲット表面に平行な磁
界を作り、ターゲット表面から放出されたγ電子をター
ゲット表面近くに閉じこめるようにして雰囲気ガスとの
衝突回数の増加を図ることによって、1)雰囲気ガスの
イオン化を促進してプラズマ効率を高めることができる
(高速スパッタ)、2)図のような閉じた移動経路によ
り高エネルギーのγ電子の基板衝撃による基板温度上昇
を抑制できる(低温スパッタ)、等が特長である。一
方、マグネトロン配置により2極スパッタの欠点は大幅
に改善されたが、基板とターゲットが正対しているため
に、1)γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全に
は抑制できない、2)強磁性体をターゲットにした場
合、マグネトロンの磁束が強磁性体の部分を通りγ電子
を閉じこめるのに十分な大きさの磁界がターゲット表面
に印加できないため、強磁性体の低温・高速スパッタは
困難である、などが欠点である。然しながら、構造が比
較的簡単で高堆積速度の薄膜形成可能なために、プレナ
ーマグネトロンスパッタは広く使用されている。
【0009】図1-dに示す対向ターゲット式スパッタ
は、マグネトロンスパッタのもつ欠点を更に改善するた
めに考案された。2つのターゲットが対向する位置にあ
り、それぞれのターゲット裏面には、互いに反対磁極を
もつようにマグネトロンが配置されている。雰囲気ガス
のイオン化ガスのターゲット衝撃によりターゲット表面
から放出された高エネルギーのγ電子は、対向するター
ゲット間に閉じこめられ高密度プラズマを発生する。基
板は対向するターゲットの横のプラズマ外に置かれてい
るために、γ電子及び反跳イオンの基板への入射を完全
に抑制することができ、低温・高速スパッタが可能とな
る。γ電子を閉じこめることによる高密度プラズマによ
り、雰囲気ガス圧力を低くしても放電が可能で(〜 10
-4 Torr台)、薄膜への雰囲気ガス混入も小さく、強磁
性体の低温・高速スパッタも可能であるという特徴を持
つ。印加電源の違いによりDC、RFスパッタがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】然しながら、図1-dの
原理図と図1-cの原理図を比較して判るように、プレナ
ーマグネトロンスパッタではターゲット裏面に配置され
た磁石の発生する磁束は閉じているのに対して、対向タ
ーゲット式スパッタでは対向するターゲット面の磁束は
閉じているが、各々の裏面の磁束はオープンになってお
り磁束の漏れが生じている。裏面に磁束が漏洩するとい
うことは、その分だけ対向するターゲット面間に磁束が
廻らないことを意味し、磁石から発生する磁束を有効に
対向するターゲット面に導いていないことになり、効率
の良い磁石の使い方になっていない。この影響を小さく
するためには、裏面の磁極後ろに漏れ磁束を小さくする
ための厚い鉄ヨークを設置する必要があり、構造が大き
くならざるを得ない欠点がある。更に、多層構造の薄膜
を同一真空装置でこの方式で作製する場合には、大きな
構造の対向ターゲット式スパッタを図2のように配置し
なくてはならず、対向ターゲット式スパッタを納める真
空装置が大きくなるという問題が生じる。真空装置が大
型になると、同じ到達真空度を作るためには、より排気
速度の大きな真空ポンプを装置に設置しなければなら
ず、コスト面からも問題となる。また、この方式では、
高密度プラズマ化により雰囲気ガス圧力を低くしても放
電が可能で(〜 10-4 Torr台)、薄膜への雰囲気ガス混
入も小さくできるが、より高性能な電子デバイス作製の
ためには、より高真空下(〜 10-5 Torr台)でのスパッ
タが求められている。
【0011】本発明は、薄膜作製装置に係わる前述の状
況に鑑み、高速・低温スパッタが可能な従来の対向ター
ゲット式スパッタの特長を持ちながら、磁束漏洩の防止
のために大型化するという構造上の問題を解決し、構造
の小型化、マルチターゲット化及びそれに伴う真空装置
の小型化により、コスト的に有利な多層薄膜構造を作製
でき、更に、より高密度プラズマ状態でのスパッタを実
現し、In-situで多層薄膜構造の高真空・高速・低温ス
パッタが可能な薄膜作製装置を提供することを目的とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、先ず、より高
密度プラズマ状態でのスパッタを実現するため、自発及
び誘発電子ビーム励起プラズマを利用して薄膜を作製す
る装置とした。本発明は又、前記薄膜作製装置におい
て、2つの自発電子ビームがクロス或いは対向するよう
に配置された薄膜作製装置であり、更にまた、誘発電子
ビームを励起する2つの対向するターゲット間に自発電
子ビームが入射する配置の薄膜作製装置である。
【0013】本発明は、従来の対向ターゲット式スパッ
タが磁束漏洩対策のために大型化するという構造上の問
題を解決するため、回転できる多面体型の回転軸に平行
なそれぞれの面にターゲットを配置した多面体ターゲッ
トホルダー一対が対向する配置とした薄膜作製装置であ
る。本発明は又、前記薄膜作製装置において、多面体タ
ーゲットホルダーのそれぞれのターゲット裏面に配置さ
れている磁石の作る磁束線が、多面体ターゲットホルダ
ー内面において完全に閉じるように、磁石の極性が交互
に変わるように配置している薄膜作製装置であり、更に
又、一対の多面体ターゲットホルダーにおいて対向する
ターゲットの裏面に配置されている磁石の極性が反対で
磁束線が閉じており、対向する多面体ターゲットホルダ
ーをそれぞれ逆回転して別な面を対向させ、対向するタ
ーゲットの裏面に配置されているそれぞれの磁石の極性
が回転前と反対で、磁束線の向きが回転前と反対にな
り、一対の多面体ターゲットホルダーをそれぞれ逆回転
することで多面体についているターゲット数だけの多層
薄膜がIn-situで作製できる薄膜作製装置である。
【0014】
【発明の実施の形態】先ず、より高密度プラズマ状態で
のスパッタを実現する、本発明の実施の形態について説
明にする。即ち、自発電子ビーム及び誘発電子ビームを
利用することにより、より高密度プラズマ状態でのスパ
ッタを実現するものであり、本発明の自発電子ビーム
は、1つの自発電子ビームでも良いが、2つの自発電子
ビームをクロス或いは対向するように配置するのが好ま
しく、更にまた、誘発電子ビームを励起する2つの対向
するターゲット間に自発電子ビームが入射するように配
置するのが好ましい。
【0015】対向ターゲット式スパッタでは、前述のよ
うに、雰囲気ガスのイオン化ガスのターゲット衝撃によ
りターゲット表面から放出された高エネルギーのγ電子
(誘発電子ビーム)は、対向するターゲット間に閉じこ
められ高密度プラズマを発生しているが、本発明は、こ
の誘発電子ビームと共に、外から自発電子ビームを対向
するターゲット間に照射するものであり、これにより更
に高密度なプラズマ生成が実現でき、より高真空下での
低温・高速スパッタが可能となる。
【0016】次に、従来の対向ターゲット式スパッタが
磁束漏洩対策のために大型化するという構造上の問題を
解決する、本発明の実施の形態について説明にする。即
ち、回転できる多面体型の回転軸に平行なそれぞれの面
にターゲットを配置した多面体ターゲットホルダー一対
が対向する配置としたことを特徴とし、更に、例えば、
多面体ターゲットホルダーのそれぞれのターゲット裏面
に配置されている磁石の作る磁束線が、多面体ターゲッ
トホルダー内面において完全に閉じるように、磁石の極
性が交互に変わるように配置する。また、一対の多面体
ターゲットホルダーにおいて対向するターゲットの裏面
に配置されている磁石の極性が反対で磁束線が閉じてお
り、対向する多面体ターゲットホルダーをそれぞれ逆回
転して別な面を対向させ、対向するターゲットの裏面に
配置されているそれぞれの磁石の極性が回転前と反対
で、磁束線の向きが回転前と反対になり、一対の多面体
ターゲットホルダーをそれぞれ逆回転することにより、
多面体についているターゲット数だけの多層薄膜がIn-s
ituで作製可能にすることができる。
【0017】即ち、多面体ターゲットホルダーを有する
薄膜作製装置において、ターゲットの後ろにある磁石の
極性が各々交互に反対磁極になるように取付けることに
より、従来型で問題となるターゲット面と反対面の磁石
の作る磁束がオープンにならず、交互に反対の磁極をも
つ磁石で閉じた磁束線を形成することが可能になる。従
って、原理的には磁束の漏洩を防ぐ鉄ヨークは不要とな
り、付けてもその厚さは薄くできる。対向するもう一つ
のターゲットホルダーも、2つのターゲットホルダーで
対向するターゲット面の磁石の磁極は反対になるように
して、同様に、磁石の極性が交互に反対になるように設
置する。対向する回転式対向ターゲットホルダーを互い
に逆回転することで、別の材料のターゲット面が向き合
い、そのときのターゲット間で作る磁束線の向きは回転
前と反対向きになる。
【0018】以上のような、回転できる多面体型の回転
軸に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多面体
ターゲットホルダー一対が対向する配置を有する実施の
形態により、それぞれのターゲット裏面に配置されてい
る磁石の作る磁束線を閉じることが可能となり、磁束漏
洩を防ぐ鉄ヨークを不要とし、或いは非常に薄くできる
ため、構造の小型化と共にマルチターゲット化が可能と
なる。また、これに伴う真空装置の小型化も可能とな
る。
【0019】即ち、本発明は、高速・低温スパッタが可
能な従来の対向ターゲット式スパッタの特長を持ちなが
ら、磁束漏洩の防止のために大型化するという構造上の
問題を解決し、コスト的に有利な多層薄膜構造を作製で
き、更に、より高密度プラズマ状態でのスパッタを実現
し、In-situで多層薄膜構造の高真空・高速・低温スパ
ッタが可能な薄膜作製装置を提供することができる。
【0020】
【実施例】以下、図に基づいて本発明の実施例を説明す
る。図3は、本発明の第一の実施例として説明する、回
転式対向ターゲット式スパッタの、ターゲットホルダー
及びそのターゲット裏面の磁石の配置と移動式基板ホル
ダーの配置を示した概念図である。本実施例では、回転
するターゲットホルダーはボックス型になっており、回
転軸に平行な面にターゲットが設置されていて、一対の
回転式ボックス型ターゲットホルダーが対向している。
対向するターゲットホルダーの両側に移動式基板ホルダ
ーが設置されており、同時に2枚の薄膜作製が可能とな
っている。基板ホルダー前面にはシャッターが備わって
いる。本実施例では磁石は円柱型で説明するが、円筒形
等でもよくその形状は問わない。
【0021】図4は、従来型の対向ターゲット式スパッ
タの、ターゲット及びターゲット裏面の磁石と発生する
磁束線を示した図である。従来型では、対向するターゲ
ット間の向き合う面の磁石の磁極は反対であるため、そ
こに発生する磁束線は閉じているが、図4から明らかな
ように、磁石のターゲット反対面は閉じた磁束線を形成
できず、磁束線の漏洩が生じる。即ち、従来型の対向タ
ーゲット式スパッタは、前述のように、効率のよい磁石
の使い方になっておらず、この影響を小さくするため
に、裏面の磁極後ろには漏れ磁束を小さくするための厚
い鉄ヨークを設置する必要があり、構造が大きくならざ
るを得ない欠点がある。例えば、対向するターゲット間
の磁束は、およそ150〜250 Oe(エルステッド)が必要
であり、大きな磁束を発生させるためにネオジウム磁石
を用いるが、図1-cで示したマグネトロンスパッタで
は、磁束が磁石の表及び裏面両方とも閉じているため
に、磁石+鉄ヨークの厚みは30 〜 50 ミリ程度で済む
のに対して、図1-dで示した従来型の対向ターゲット式
スパッタでは、磁石+鉄ヨークの厚み100ミリ程度が必
要である。
【0022】図5は、本実施例の回転式ボックス型対向
ターゲット式スパッタのターゲット及びターゲット裏面
の磁石と、回転前後での発生する磁束線の向きの変化を
示した図である。ボックス型ターゲットホルダーの4つ
の面には、異なった材料のターゲットが設置されてい
る。ターゲット取付け方法は、着脱の簡便性から銅のバ
ッキングプレートにターゲットを取付け、バッキングプ
レートを銅またはステンレス製のボックス型ターゲット
ホルダーに取付けてある。ターゲットの後ろにある磁石
の極性は、各々交互に反対磁極になるように取付けられ
ており、このように磁石を配置することにより、従来型
で問題となるターゲット面と反対面の磁石の作る磁束が
オープンにならず、図5に示すように、交互に反対の磁
極をもつ4つの磁石で閉じた磁束線を形成することが可
能になる。従って、原理的には磁束の漏洩を防ぐ鉄ヨー
クは不要となり、付けてもその厚さは薄くできる。対向
するもう一つのボックス型ターゲットホルダーも、同様
に、磁石の極性が交互に反対になるように設置する。但
し、2つのボックス型ターゲットホルダーで、対向する
ターゲット面の磁石の磁極は反対になるようにする。対
向する回転式ボックス型対向ターゲットホルダーを互い
に逆回転することで、別の材料のターゲット面が向き合
い、そのときのターゲット間でつくる磁束線の向きは回
転前と反対向きになる。このような配置により、従来型
の対向ターゲット式スパッタでは、磁石+鉄ヨークの厚
み100ミリ程度が必要だったのに対し、本実施例の回転
式ボックス型対向ターゲット式スパッタでは、磁石の裏
面で磁束線を閉じることができるために、磁石+鉄ヨー
クの厚みは30 〜 50 ミリ程度で済み、非常にコンパク
トな装置にできる。また、本実施例では異なった4つの
材料をコンパクトなスペース配置でスパッタでき、更に
又、コンパクトな真空装置に取付けることができるメリ
ットが生まれ、真空装置自体のコスト面からも非常に有
利となる。
【0023】試みに、従来型の対向ターゲット式スパッ
タで、4つの異なる材料をスパッタする場合の配置例を
図2に示す。一対の対向ターゲット式スパッタ自体が、
裏面の磁極後ろに漏れ磁束を小さくするための厚い鉄ヨ
ークを設置する必要があり、構造が大きくならざるを得
ない欠点があり、また、多層構造の薄膜を同一真空装置
でこの方式で作製するためには、大きな構造の対向ター
ゲット式スパッタを図2のように配置しなくてはなら
ず、対向ターゲット式スパッタを納める真空装置が大き
くなる。例えば、同一サイズのターゲットを4つ配置し
た場合で比較すると、本実施例では、図2に示す従来型
の時のスパッタ部分の占有面積及び体積の約50%の占有
面積及び体積で済む。また、真空装置が大型になると、
同じ到達真空度を作るために、より排気速度の大きな真
空ポンプを必要とし、真空ポンプの大きさ及びそのコス
ト面からも、本実施例の回転式ボックス型対向ターゲッ
ト式スパッタは有効である。
【0024】以上の実施例によれば、構造の小型化、マ
ルチターゲット化及びそれに伴う真空装置の小型化が可
能であり、コスト的に有利な多層薄膜をIn-situで高速
・低温スパッタで作製することができる。然しながら、
プラズマを発生するための雰囲気ガスの圧力は10-4 Tor
r台が必要であり、更に、より高性能な電子デバイス作
製のためには、より高真空下(〜 10-5 Torr台)でのス
パッタが求められる。
【0025】以下、第二の実施例として、高密度プラズ
マを生成して高真空下でのスパッタを可能とする本発明
の実施例について説明する。図6は、自発型電子ビーム
発生装置を取付けた回転式ボックス型対向ターゲット式
スパッタ装置の概略図であり、自発型電子ビーム発生装
置を2つ斜めに配置して、ターゲット間に入射できるよ
うにしたものである。前述のように、高真空雰囲気ガス
のイオン化ガスのターゲット衝撃によりターゲット表面
から放出された高エネルギーのγ電子は、対向するター
ゲット間に閉じこめられ、対向するターゲット間を往復
運動して雰囲気ガスをイオン化して高密度プラズマを発
生しているが、本実施例では、図6に示すように、この
誘発電子ビームと共に、外から自発電子ビームを対向す
るターゲット間に照射することにより、より高真空下
(〜 10-5 Torr台)で高密度プラズマを生成しての高真
空・低温・高速スパッタが可能になる。なお、本実施例
では、2つの自発型電子ビーム発生装置を備え2つの自
発電子ビームを対向するターゲット間に入射する例で説
明しているが、1つの自発型電子ビーム発生装置を備え
1つの自発電子ビームを対向するターゲット間に入射さ
せても良く、更には、2つの自発型電子ビーム発生装置
を備えた場合でも、その一方のみを用い1つの自発電子
ビームを対向するターゲット間に入射させても良い。
【0026】本実施例は、回転式ボックス型対向ターゲ
ットホルダーに印加する電源の違いにより、図7に示す
ようにDC、RFスパッタが共に可能である。また、スパッ
タ中、基板はフロート状態でも、更には、バイアス電圧
を印加してのバイアススパッタも可能である。図8は、
本実施例のロードロックタイプの装置を、真横からみた
時の外観図であり、図9は、それを真横からみた時の内
面図、図10は、真上からみた時の内面図である。基板
は、サブチャンバーから入れて、同時に2枚のスパッタ
が可能になっている。
【0027】次に、本実施例の薄膜スパッタ装置で薄膜
作製した一例を説明する。自発型電子ビームを照射しな
い場合、Nbターゲットを用いて、ターゲット〜基板間距
離9cm、Ar圧力2 x 10-4 Torr、DC印加電流2.0 A、DC印
加電圧350 Vの条件で、堆積速度125 nm/minが得られ
た。Nbは超伝導材料で、超伝導になる温度(Tc)は9.3K
であるが、酸素が1 at%混入しただけでそのTcは8.3 K
に下がってしまうほど敏感である。上記の条件で作製し
たNb薄膜は、Tcが9.3 Kと同じ値を示した。次に、自発
型電子ビームを100 V、10 Aの印加電力で電子ビーム源
から引きだして対向するターゲット間に照射したとこ
ろ、Ar圧力3 x 10-5 Torr、DC印加電流2.0 A、DC印加電
圧350 Vの条件で、堆積速度100 nm/minが得られた。こ
の条件で作製したNb薄膜は、Tcが9.3 Kと同じ値を示
し、更に、室温と10 Kでの抵抗の比で表す残留抵抗比が
約10と、自発電子ビームを照射しない場合に比べて約3
倍大きな値を示した。即ち、この結果は、自発電子ビー
ム及び誘発電子ビームを利用することにより、高真空下
でより高密度プラズマ状態でのスパッタを実現でき、残
留ガスの取込みの少ない高品質な薄膜が形成できること
を証明したものである。以上、本発明の実施例を説明し
たが、特許請求の範囲で規定された本発明の精神と範囲
から逸脱することなく、その形態や細部に種々の変更が
なされても良いことは明らかである。
【0028】例えば、実施例では、ロードロックタイプ
で示したが、装置構成としては、サブチャンバーが無
い、所謂、バッチ式でも構わない。また、実施例では、
ボックス型で説明したが、ターゲット面と反対側の磁極
の磁束線が閉じる形、例えば、6角柱型でも構わない。
この場合は、6つの異なる材料の同時スパッタが可能と
なる。更にまた、実施例では、ターゲット裏面の磁石を
円柱で示しているが、例えば、中心が空洞の円筒状でも
構わず、磁石の形状は何ら本発明を限定するものではな
い。
【0029】
【発明の効果】本発明は、高速・低温スパッタが可能な
従来の対向ターゲット式スパッタの特長を持ちながら、
磁束漏洩の防止のために大型化するという構造上の問題
を解決し、構造の小型化、マルチターゲット化及びそれ
に伴う真空装置の小型化により、コスト的に有利な多層
薄膜構造を作製でき、更に、対向するターゲット間の誘
発電子ビームに自発電子ビームを上乗することで、より
高密度プラズマ状態でのスパッタを実現し、In-situで
多層薄膜構造の高真空・高速・低温スパッタが可能な薄
膜作製装置を提供できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の各種スパッタ装置の原理を説明するため
の原理図であって、a)イオンビームスパッタ原理図、
b)2極スパッタ原理図、c)プレナーマグネトロンスパ
ッタ原理図、d)対向ターゲット式スパッタ原理図、の
四面図である。
【図2】従来型の対向ターゲット式スパッタで、4つの
異なる材料をスパッタする場合の配置例を示す図であ
る。
【図3】本発明の実施例である回転式対向ターゲット式
スパッタの配置例を示した概念図である。
【図4】従来型の対向ターゲット式スパッタのターゲッ
ト、ターゲット裏面の磁石、磁束漏洩を防ぐための鉄ヨ
ーク、及び磁石で発生する磁束線を示した図である。
【図5】本発明の実施例である多面体型対向ターゲット
式スパッタのターゲット配置と回転前後の磁束線変化の
例を示した概念図である。
【図6】本発明の実施例である自発型電子ビーム発生装
置を取付けた回転式ボックス型対向ターゲット式スパッ
タ装置の例を示す概略図であり、自発及び誘発電子ビー
ム励起プラズマ発生を説明するための模式図である。
【図7】図6の回転式ボックス型対向ターゲット式スパ
ッタ装置において、印加電源の印加方法を示した概略図
である。
【図8】図6の回転式ボックス型対向ターゲット式スパ
ッタ装置を真横からみた時のロードロックタイプの装置
外観図である。
【図9】図6の回転式ボックス型対向ターゲット式スパ
ッタ装置を真横からみた時のロードロックタイプの装置
内観図である。
【図10】図6の回転式ボックス型対向ターゲット式ス
パッタ装置を真上からみた時のロードロックタイプの装
置内観図である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 自発及び誘発電子ビーム励起プラズマを
    利用した薄膜作製装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の薄膜作製装置において、
    2つの自発電子ビームがクロス或いは対向するように配
    置された薄膜作製装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は請求項2記載の薄膜作製装
    置において、誘発電子ビームを励起する2つの対向する
    ターゲット間に自発電子ビームが入射する配置の薄膜作
    製装置。
  4. 【請求項4】 回転できる多面体型の回転軸に平行なそ
    れぞれの面にターゲットを配置した多面体ターゲットホ
    ルダー一対が対向する配置の薄膜作製装置。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至請求項3のいずれかに記載
    の薄膜作製装置において、回転できる多面体型の回転軸
    に平行なそれぞれの面にターゲットを配置した多面体タ
    ーゲットホルダー一対が対向する配置の薄膜作製装置。
  6. 【請求項6】 請求項4又は請求項5記載の薄膜作製装
    置において、多面体ターゲットホルダーのそれぞれのタ
    ーゲット裏面に配置されている磁石の作る磁束線が、多
    面体ターゲットホルダー内面において完全に閉じるよう
    に、磁石の極性が交互に変わるように配置している薄膜
    作製装置。
  7. 【請求項7】 請求項4乃至請求項6のいずれかに記載
    の薄膜作製装置で、一対の多面体ターゲットホルダーに
    おいて対向するターゲットの裏面に配置されている磁石
    の極性が反対で磁束線が閉じており、対向する多面体タ
    ーゲットホルダーをそれぞれ逆回転して別な面を対向さ
    せ、対向するターゲットの裏面に配置されているそれぞ
    れの磁石の極性が回転前と反対で、磁束線の向きが回転
    前と反対になり、一対の多面体ターゲットホルダーをそ
    れぞれ逆回転することで多面体についているターゲット
    数だけの多層薄膜がIn-situで作製できる薄膜作製装
    置。
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