JP3931142B2 - 車両のドライブトレインに対する制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機関とオートマティックトランスミッションとを含む車両のドライブトレインに対する制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
最近、車両のドライブトレインに対する制御装置を、オートマティックトランスミッションの内部又はそのケーシングの外側に取り付ける例が多くなってきている。車両のオートマティックトランスミッションの内部に入っている変速機オイルは車両の通常の走行状態においても140℃程度にまで上昇することがあり、変速動作を頻繁に繰り返すなど車両のオートマティックトランスミッションが過酷な運転状態に陥れば変速機からの熱を受けてより高い温度となることがある。一方、オートマティックトランスミッションの作動を制御するための制御装置はマイクロコンピュータ素子や駆動用パワートランジスタ素子を含んでおり、特にそれ自身からの発熱が問題となる駆動用パワートランジスタ素子が予定のトランジスタ動作を行うのを保証するためには、その接合温度が最大許容値より高くならないことが必要である。IC素子やその他のトランジスタ素子等の半導体能動素子についても同様である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のこの種の制御装置にあっては、車両用のオートマティックトランスミッションの温度が上述の如く半導体素子の使用限界に近い高温で作動しているにも拘らず、特に対策を採っていないのが現状である。したがって、何らかの原因でオートマティックトランスミッションの温度が通常値より高くなった場合に制御装置が正常に作動しなくなり、車両用故障診断装置が作動し、以後の制御が不能になってしまうという問題を有している。
【0004】
この問題を解決するため、ドライブトレイン内部の温度を一定時間間隔で検出し、このようにして検出された検出温度が所定の基準温度よりも高くなった場合に、ドライブトレインの制御をスタンバイ状態にする構成が考えられる。
【0005】
しかし、検出温度を所与の一定の基準温度と一定時間間隔で比較させる構成によると、何等かの問題によりドライブトレイン内部温度が急激に上昇する等の事態が生じた場合、次の温度比較のタイミング前にドライブトレイン内部の温度が許容温度を超えてしまい、ドライブトレインの正常な制御動作が不可能となるという事態に陥る可能性がある。
【0006】
これを避けるためには、所与の基準温度を低目に設定することが考えられるが、この方法によるとドライブトレインの動作可能な温度範囲が狭くなってしまうという別の問題を生じることになる。また、温度検出の時間間隔を短くすることも考えられるが、ドライブトレインの温度変化は一般的に緩慢であり、したがって、温度変化が殆どないような運転状態の下でその温度検出を頻繁に行なう結果となり、マイクロコンピュータの処理能力の資源を無駄に消費して、迅速な処理を必要とする他の処理に大きなしわ寄せを生じさせるなどの問題を生じる。
【0007】
本発明の目的は、上述の問題点を解決することができる車両のドライブトレインに対する制御方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、発明によれば、内燃機関とオートマティックトランスミッションとを含む車両のドライブトレインを前記オートマティックトランスミッションの近傍又は内部に配設された制御装置によって制御する車両のドライブトレインに対する制御方法において、前記制御装置の内部温度を検出するための検出手段によって得られた検出温度が第1の基準温度より高くなったか否かの温度判別を行い、前記検出温度が前記第1の基準温度より高くなったときに前記ドライブトレインをスタンバイ状態に制御する場合に、前記第1の基準温度よりも低い第2の基準温度を設定しておき、前記検出温度が前記第2の基準温度より高くなった場合には、前記検出温度が前記第2の基準温度以下の場合に比べて前記温度判別の頻度を高くするようにしたことを特徴とする車両のドライブトレインに対する制御方法が提案される。
【0009】
検出温度が第2の基準温度以下の場合には温度判別の頻度は低く、制御装置における当該制御処理のための負荷を軽くすることができる。一方、検出温度が第2の基準温度より高くなった場合には、温度判別の頻度を高くし、ドライブトレインの内部温度が急激な上昇となっても、これに対応して適切なタイミングでドライブトレインの制御をスタンバイ状態とすることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例につき詳細に説明する。
【0011】
図1は、車両のドライブトレインに対する制御装置の本発明の実施の形態の一例を説明するための概略的な全体図である。図1には、内燃機関1とオートマティックトランスミッション2とを連結して成る車両のドライブトレイン10が示されており、オートマティックトランスミッション2内にはオートマティックトランスミッション2を制御する制御装置20が組み込まれている。なお、制御装置20は必ずしもオートマティックトランスミッション2内に組み込む必要はなく、オートマティックトランスミッション2のケーシング2Aの外側又は近傍に配設することもできる。また制御装置20は、オートマティックトランスミッション2の制御のみならず、内燃機関1の制御も行うように構成されていてもよい。
【0012】
オートマティックトランスミッション2の内部には、また、位置スイッチ2Bが配設されており、位置スイッチ2Bはセレクトレバー2Cがどのセレクト位置にセットされたかを検知してその検知結果を示す位置信号S1を制御装置20に送る構成となっている。
【0013】
図2には、制御装置20の断面図が示されている。制御装置20は、底板21Aとカバーケース21Bとから成る2ピース構成の金属製の密閉型油密ケースを構成しているケーシング21を有し、ケーシング21内にはセラミック基板22が底板21Aの内面21Aaに図示の如く密接した状態で、接着その他の適宜の手段によって固定されている。セラミック基板22上には、マイクロコンピュータ23、及びマイクロコンピュータ23での演算結果に従う駆動電流信号が与えられる駆動用IC素子24が組み込まれている。セラミック基板22上には、この他にもいくつかの電子部品や回路素子を構成する各種パーツが組み立てられているが、これらを図示するのは省略してある。
【0014】
底板21Aには複数の接続端子Tが電気的絶縁材料からなるスリーブSを介して固定されており、これらの接続端子Tを介してセラミック基板22と外部回路との電気的な接続を行うことができる構成となっている。
【0015】
図2に示されるマイクロコンピュータ23、駆動用IC素子24は、いずれも、図示しない車載用のバッテリから後述の如く電力供給を受けて作動し、このとき流れる動作電流によって発熱する発熱要素である。しかし、マイクロコンピュータ23における発熱量は小さいが、駆動用IC素子24における発熱量は相当大きいものとなり、制御装置20内においては駆動用IC素子24が主たる発熱要素となっている。
【0016】
駆動用IC素子24の近傍には、温度を検出するための温度センサ25が設けられている。温度センサ25としては例えば適宜の感温抵抗器や感温半導体素子等を用いることができる。本実施の形態では、制御装置20の内部で最も高温となる主たる発熱要素である駆動用IC素子24の近傍の温度を検出するため、駆動用IC素子24の近傍に温度センサ25を配設しているが、温度センサ25の配設位置はこれに限定されず、温度検出の目的に応じて適宜の位置とすることができる。
【0017】
なお、ケーシング21は油密構造となっているので、制御装置20をオートマティックトランスミッション2内に配設してもオートマティックトランスミッション2内にある変速機オイルが制御装置20の内部に侵入することはない。
【0018】
図3は、図2に示した制御装置20の回路の概略構成を示すブロック図である。図3において26は電源回路であり、図示しない車両のバッテリからの直流電圧VBを受け取り、これより低圧の安定化直流電圧VCをマイクロコンピュータ23に供給するための回路である。駆動用IC素子24には直流電圧VBが印加されており、マイクロコンピュータ23からの制御出力信号CSに応答してギヤシフト操作のための油圧回路(図示せず)の油圧制御用の電磁弁のソレノイドSV1、SV2に所要の駆動電流J1、J2を供給する構成となっている。
【0019】
本実施の形態では、駆動電流J1、J2の供給は、異なる2つの駆動パターンのいずれか一方により行われる。1つは平均駆動電流が大きい駆動パターン1であり、もう1つは平均駆動電流が中程度の駆動パターン2である。なお、制御装置20において実行されるオートマティックトランスミッション2のギヤシフトのための制御動作それ自体は公知であるから、制御装置20の基本構成及びこれに基づくギヤシフト制御動作についての詳しい説明は省略する。
【0020】
温度センサ25からは制御装置20の内部温度を示す検出信号SKが出力され、検出信号SKはマイクロコンピュータ23に入力されている。ここでは、制御装置20がオートマティックトランスミッション2内に配設されているので、温度センサ25からの検出信号SKは、結局、オートマティックトランスミッション2の内部温度を示す信号ともなっている。マイクロコンピュータ23は、温度センサ25によって検出された駆動パターン制御装置20の内部温度が予め与えられている第1の基準温度よりも高くなったか否かをモニタしており、内部温度が第1の基準温度に達した場合には駆動用IC素子24の駆動を停止させることによりバッテリ(図示せず)から駆動用IC素子24へ電流が流れるのを停止してオートマティックトランスミッション2をスタンバイ状態とし、これにより駆動用IC素子24からの発熱量を零とし、その温度を低下させる保護機能を有している。
【0021】
図4は、この保護機能をマイクロコンピュータ23によって達成するための制御プログラムを示すフローチャートである。
【0022】
制御プログラム30について説明すると、制御プログラム30はマイクロコンピュータ23において別途実行されている周期タスクからのコールによって実行が開始される。実行開始後、先ずステップ31で、予め用意されているカウンタのカウンタ値Kが所定の判別周期tよりも大きくなっているか否かが判別される。K≦tであるとステップ31の判別結果はNOとなり、ステップ32でカウンタ値Kを1だけ大きくして制御プログラム30の実行を終了する。
【0023】
このようにして、制御プログラム30の実行が繰り返され、K>tとなると、ステップ31の判別結果がYESとなり、ステップ33に入る。ステップ33でK=0とされた後、ステップ34で温度センサ25からの検出信号SKの読み込みが行われステップ35で検出信号SKに基づく検出温度Tが計算される。
【0024】
次のステップ36では検出温度Tが第1の基準温度T1より高くなったか否かの温度判別が行われる。第1の基準温度T1は、制御装置20を動作させてこのままオートマティックトランスミッションの変速制御を続行すると制御装置20内の駆動用IC素子24の接合温度Tjが所定の許容温度Tjoより高くなってしまい、駆動用IC素子24が作動不能又は破壊されてしまう虞の高い温度に設定されている。
【0025】
ステップ36における温度判別においてT>T1と判別されると、ステップ37に進み、ここでオートマティックトランスミッション2の制御がスタンバイモードに移行される。具体的には、駆動用IC素子24の駆動が停止され、主たる発熱源である駆動用IC素子24には電流が流れず制御装置20自身が温度上昇することがなくなる。また、制御装置20が変速制御を停止したことに応答して、オートマティックトランスミッション2は4速にギヤシフトされ、そこにギヤが固定される。すなわち、オートマティックトランスミッション2において変速動作は行われず、4速固定の状態となる。したがって、オートマティックトランスミッション2が変速動作することに起因する熱の発生も無くなる。この2つの理由により、制御装置20を含むオートマティックトランスミッション2の温度は以後徐々に低下していくことになる。
【0026】
ステップ36においてT≦T1であるとステップ36の判別結果はNOとなり、ステップ38に入る。ステップ38では、検出温度Tが第1の基準温度T1よりも低い温度に定められている第2の基準温度T2と比較される。検出温度Tが第2の基準温度T2以下の場合にはステップ38の判別結果はNOとなり、ステップ39において判別周期tの値をt1とし、ステップ32に進む。一方、検出温度Tが第2の基準温度T2より大きい場合にはステップ38の判別結果はYESとなり、ステップ40において判別周期tの値をt1より小さいt2とし、ステップ32に進む。
【0027】
このように、検出温度Tが第2の基準温度T2以下の場合には、ステップ36において実行されるスタンバイモードへ移行させるべきか否かの温度判別の頻度が低いが、T>T2となるとステップ31における上記温度判別の頻度が高くなる。
【0028】
したがって、制御装置20、すなわちオートマティックトランスミッション2の温度が低い場合にはその温度判別の判別周期はt1で比較的長く、マイクロコンピュータ23の処理能力の無駄な消費がない動作となっている。何等かの理由により制御装置20の温度が上昇してT>T2の状態となると、その温度判別の周期はt2に切り換えられステップ36での温度判別の頻度が高くなる。この周期t2は、制御装置20に損傷が生じるのを未然に防止できるようなタイミングでオートマティックトランスミッション2をスタンバイモードへ移行させることを可能とするよう、制御装置20の予想される温度上昇率の最大値を考慮して適宜に決定する。
【0029】
このことを図5を参照して説明する。図5において符号(イ)で示される特性線は制御装置20の温度の上昇の時間的変化の一例を示すもので、この例において、判別周期がt1一定であると、時間tbにおける温度判別ではT<T1であるが、その次の温度判別タイミングtc(=tb+t1)においては検出温度Tがすでに最大許容温度THを超えてしまい、予定される制御が行われずに制御装置20が損傷するに至ってしまう虞が極めて大きい。
【0030】
これに対し、図4の制御プログラムに行う制御が実行されると、時間tbにおいてT>T2となっているので、次の温度判別タイミングはtx(=tb+t2)となる。txにおいてはT1<T<THであり、この時点でオートマティックトランスミッション2がスタンバイモードとされるので、制御装置20の保護が適切に行われることになる。
【0031】
以上の説明から判るように、制御プログラム30によれば、オートマティックトランスミッション2をスタンバイモードへ移行させるべきか否かのステップ36における温度判別を検出温度Tが低い場合には低い頻度(大きい判別周期)で行い、検出温度Tがあるレベルを超えた場合にはステップ36における温度判別の高い頻度(小さい判別周期)で行うようにしたので、マイクロコンピュータ23の処理能力をいたずらに損わせることなく、制御装置20の検出温度Tが第1の基準温度T1を超えたか否かを制御装置20に不具合が発生する前に検知し、ドライブトレイン10の安全な動作を確保することができる。
【0032】
【発明の効果】
本発明によれば、上述の如く、制御装置の負荷を増大させることなしに、その温度上昇が所定のレベルを超えることがないよう車両のドライブトレインに対する適切な制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態の一例を説明するための車両のドライブトレインの概略的な全体図。
【図2】図1に示した制御装置の断面図。
【図3】図2に示した制御装置の回路の概略構成を示すブロック図。
【図4】図3に示したマイクロコンピュータ内において実行される制御プログラムを示すフローチャート。
【図5】図4に示す制御プログラムに行う制御動作を説明するための図。
【符号の説明】
1 内燃機関
2 オートマティックトランスミッション
2B 位置スイッチ
2C セレクトレバー
10 ドライブトレイン
20 制御装置
23 マイクロコンピュータ
24 駆動用IC素子
25 温度センサ
26 電源回路
30 制御プログラム
CS 制御出力信号
J1、J2 駆動電流
SK 検出信号
VB 直流電圧
VC 安定化直流電圧

Claims (1)

  1. 内燃機関とオートマティックトランスミッションとを含む車両のドライブトレインを前記オートマティックトランスミッションの近傍又は内部に配設された制御装置によって制御する車両のドライブトレインに対する制御方法において、
    前記制御装置の内部温度を検出するための検出手段によって得られた検出温度が第1の基準温度より高くなったか否かの温度判別を行い、前記検出温度が前記第1の基準温度より高くなったときに前記ドライブトレインをスタンバイ状態に制御する場合に、前記第1の基準温度よりも低い第2の基準温度を設定しておき、前記検出温度が前記第2の基準温度より高くなった場合には、前記検出温度が前記第2の基準温度以下の場合に比べて前記温度判別の頻度を高くするようにしたことを特徴とする車両のドライブトレインに対する制御方法。
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