JP3929744B2 - 新規ポリぺプチド、新規dna、新規抗体および新規遺伝子改変動物 - Google Patents

新規ポリぺプチド、新規dna、新規抗体および新規遺伝子改変動物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、細胞死を抑制する活性を有する新規ポリぺプチド、該ポリぺプチドをコードするDNA、該DNAを含む組換え体DNA、該組換え体DNAを保有する形質転換体、該ポリペプチドの製造法、該ポリペプチドを認識する抗体、該ポリペプチドに結合する物質、該ポリペプチドと結合して該ポリペプチドの活性を阻害する物質、該ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を制御する物質、該物質のスクリーニング法および該遺伝子の全部または一部が欠損または置換された動物、及びそれらの利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞死、特にアポトーシスは、本来生理的条件下で細胞自らが積極的に引き起こす細胞死を意味しており、発生過程での形態、組織の形成、ホメオスタシスの維持、生体防御に深く関わり、細胞分裂 (増殖) と表裏一体となって個体の生命維持に重要な役割を持つ。アポトーシスは、細胞外あるいは細胞内からの生理的または病的な様々なシグナルによって誘発される。遺伝子により制御されたこの死の過程に先天的あるいは後天的に異常が生じると、アポトーシスが過剰に誘発されたり抑制されたりして様々な疾患を引き起こすと考えられる。アポトーシスによる過剰な細胞死が発症に関わる疾患としては、劇症肝炎やその他のウイルス疾患、アルツハイマー病などの神経変性疾患、放射線障害などがあげられる。逆にアポトーシス抑制が発症に関わる疾患としては、癌や自己免疫疾患などがあげられる。
【0003】
また、放射線や薬物がアポトーシスを引き起こすことを利用して、癌治療や免疫抑制療法が行われている。逆に、生体で重要な役割を果たす細胞を死から守るといった観点からは、例えば、脳、心臓などの虚血時における細胞死抑制、抗癌剤や放射線治療時における正常細胞の細胞死からの保護のために、アポトーシス抑制を医学的な治療目的に利用することも考えられる。
【0004】
細胞死を調節する細胞内因子として、これまで多くの遺伝子及び遺伝子産物が知られている。例えば、Bcl−2遺伝子ファミリー(Bcl−2、Bcl−xL、Bcl−w、mcl−1、a1、bfl−1、BHRF−1、LMW−5−HL、E1B19K等)、baxサブファミリー(bax、bad、bak)、bikサブファミリー(bik、bid、bim、hrk)が知られている。Bcl−2遺伝子ファミリーはアポトーシス抑制活性を有し、baxサブファミリーとbikサブファミリーは、アポトーシス促進活性を有する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、細胞死に関わる新規な遺伝子を提供することを目的とする。具体的には、アポトーシス制御や糖代謝制御シグナルの異常によって生じる胃癌、卵巣癌、乳癌、膵癌、前立腺癌等の悪性腫瘍、糖尿病等の疾患に対する治療薬、予防薬および診断薬、脳、心臓などの虚血時における細胞死抑制剤、抗癌剤や放射線治療時における正常細胞の細胞死の抑制剤、または既存の治療薬の効果を増強する薬剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、ヒト第16番染色体に存在する遺伝子と相同性が高く、マウス由来の細胞死に関わる新規な遺伝子(以下、アナモルシン遺伝子ともいう)を取得し、該遺伝子がコードするポリペプチドが細胞死を抑制する活性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は以下の(1)〜(54)に関する。
(1)配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(2)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有し、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
(3)配列番号2で示されるアミノ酸配列と60%以上の相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
(4)(1)〜(3)のいずれか1項に記載のポリペプチドをコードするDNA。
(5)配列番号1で示される塩基配列の40番目〜969番目で表される塩基配列を有するDNA。
(6)(4)又は(5)に記載のDNAから選ばれるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
【0008】
(7)配列番号4で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド。
(8)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有し、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
(9)(7)又は(8)記載のポリペプチドをコードするDNA。
(10)配列番号3で示される塩基配列を有するDNA。
(11)(9)又は(10)に記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするDNA。
(12)(4)〜(6)、(9)〜(11)のいずれか1項に記載のDNAから選ばれるDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNA。
(13)(12)記載の組換え体DNAを保有する形質転換体。
【0009】
(14)(13)記載の形質転換体を培地に培養し、培養物中に(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドを生成蓄積させ、該培養物より該ポリペプチドを採取することを特徴とする(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドの製造法。
(15)(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドを認識する抗体またはその抗体断片。
(16)モノクローナル抗体またはその抗体断片である、(15)記載の抗体またはその抗体断片。
(17)ハイブリドーマKM3048(FERM BP−7765)、ハイブリドーマKM3052(FERM BP-7766)またはハイブリドーマKM3057(FERM BP-7767)が生産するモノクローナル抗体またはその抗体断片である、(16)記載の抗体またはその抗体断片。
(18)(15)〜(17)のいずれか1項に記載の抗体又はその抗体断片を用いる、(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドの免疫学的測定法。
【0010】
(19)(18)記載の免疫学的測定法を用いる、細胞死の抑制又は促進に起因する疾患の診断法。
(20)細胞死の抑制又は促進に起因する疾患が、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、糖尿病、放射線障害あるいは虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死、悪性腫瘍または自己免疫疾患である、(19)に記載の診断法。
(21) (1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドと被験試料とを接触させ、被験試料の中から(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドに結合する物質を選択することを特徴とする、(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドに結合する物質のスクリーニング法。
(22)(21)記載の方法により得られる物質。
(23) (1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドと被験試料とを接触させ、被験試料の中から(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドの活性を抑制させる物質を選択することを特徴とする、(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドの活性を抑制させる物質のスクリーニング法。
【0011】
(24)(23)記載の方法により得られる物質。
(25)(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドを発現する細胞と被験試料とを接触させ、被験試料より(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドをコードする遺伝子の発現を制御する物質を選択することを特徴とする、(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドをコードする遺伝子の発現を制御する物質のスクリーニング法。
(26)発現の制御を、(18)記載の測定法を用いて検出することを特徴とする、(25)記載のスクリーニング法。
(27)発現の制御を、(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドをコードするmRNA量を測定することにより検出することを特徴とする、(25)記載のスクリーニング法。
(28)(25)〜(27)のいずれか1項に記載のスクリーニング法により得られる物質。
【0012】
(29)(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドをコードする遺伝子の転写を制御する領域の下流にレポーター遺伝子の連結されたDNAを含むプラスミドで形質転換された形質転換体と被験試料とを接触させ、被験試料より(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドをコードする遺伝子の発現を制御する物質を選択することを特徴とする、(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドをコードする遺伝子の発現を制御する物質のスクリーニング法。
(30)(29)記載のスクリーニング法により得られる物質。
(31)(4)〜(6)、(9)〜(11)のいずれか1項に記載のDNAを含む遺伝子の全部または一部が欠損または置換され、細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドの発現量、時期または組織特異性が変化した遺伝子欠失または置換非ヒト動物。
(32)発現量の変化が、発現が低下する変化または発現しない変化である(31)記載の動物。
(33)非ヒト動物が非ヒトほ乳類動物であることを特徴とする(31)または(32)記載の動物。
(34)非ヒトほ乳類動物がマウスであることを特徴とする(33)記載の動物。
(35)(31)〜(34)のいずれか1項に記載の動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞と被験試料とを接触させ、被験試料の中から該動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞の動態を変化させる物質を選択することを特徴とする、細胞死の抑制あるいは促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬のスクリーニング法。
(36)(35)記載のスクリーニング法により得られる物質。
【0013】
(37)(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドを含有する医薬。
(38)(4)〜(6)、(9)〜(11)のいずれか1項に記載のDNAを含有する医薬。
(39)(12)に記載の組換え体DNAを含有する医薬。
(40)(12)に記載の組換え体DNAが、細胞死を抑制するための遺伝子治療用ベクターである、(39)に記載の医薬。
(41)(13)に記載の形質転換体を含有する医薬。
(42)細胞死の促進に起因する疾患の予防、診断又は治療のための、(37)〜(41)のいずれか1項に記載の医薬。
(43)(22)、(24)、(28)、(30)および(36)のいずれか1項に記載の物質を含有する医薬。
(44)細胞死の抑制あるいは促進に起因する疾患の予防、診断又は治療のための、(43)記載の医薬。
(45)(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリぺプチドが有する活性を阻害する物質を含有する医薬。
(46)該物質が、(4)〜(6)、(9)〜(11)のいずれか1項に記載のDNAの塩基配列に基づいて調製したアンチセンス鎖DNAである、(45)記載の医薬。
【0014】
(47)該物質が、(15)記載の抗体またはその抗体断片である、(45)記載の医薬。
(48)細胞死の抑制に起因する疾患の予防、診断又は治療のための、(45)〜(47)のいずれか1項に記載の医薬。
(49)細胞死の促進に起因する疾患が、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、糖尿病、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死である、(42)又は(44)に記載の医薬。
(50)細胞死の抑制に起因する疾患が、悪性腫瘍又は自己免疫疾患である、(44)又は(48)に記載の医薬。
(51)(4)〜(6)、(9)〜(11)のいずれか1項に記載のDNAの塩基配列に基づいて調製したアンチセンス鎖DNAを用いて(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)に記載のポリペプチドの生産を抑制する方法。
(52)細胞内の(1)、(2)、(3)、(7)又は(8)記載のポリペプチドが有する活性を制御する工程を含む、細胞死の制御方法。
(53)インターロイキン3非存在下の培養で生存でき、培養下の細胞外マトリックスに接着可能であることを特徴とするマウスproB細胞由来のBa/F3−Ad細胞。
(54)細胞内のH−Ras分子が活性化状態にあることを特徴とする、(53)に記載のBa/F3−Ad細胞。
【0015】
本発明の細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド(以下、本発明のポリペプチドとも表記する)は、新規なポリペプチドである。本発明のポリペプチドは、正常組織では、多種の臓器でその発現が見られ、発生時期、例えばマウスでは胎生初期からその発現が見られる。また、本発明のポリペプチドは、白血病や悪性リンパ腫などの造血器由来の腫瘍細胞に強い発現が見られる。一方、本発明のポリペプチドは、エリスロポイエチン、トロンボポイエチン、インターロイキン−3(以下、IL−3と表記する)等のサイトカインにより発現が誘導される。特に、Ras遺伝子産物を介した情報伝達によりその発現が制御されていると考えられる。本発明のポリペプチドの発現は、公知の抗アポトーシス分子であるBcl−2の発現も維持することから、Bcl−2の発現と関連したペプチドであると考えられる。
本発明における細胞死とは、ネクローシス(壊死)とアポトーシスの両方を包含する。本発明においては、好ましくはアポトーシスによる細胞死に関わる。
【0016】
本発明のポリペプチドとしては、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有し、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドが挙げられる。
更に、本発明のポリペプチドとしては、配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有し、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドも含む。
【0017】
上記において1個以上のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加とは、部位特異的突然変異誘発法等の周知の方法により欠失、置換、挿入および/または付加できる程度の数のアミノ酸が欠失、置換、挿入若しくは付加されることを意味し、例えば1〜20個、好ましくは1〜15個、より好ましくは1〜5個の任意の数のアミノ酸の欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列をあげることができる。
【0018】
ポリペプチドのアミノ酸配列において1個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列を有し、かつ細胞死を抑制する活性を有するペプチドは、Nucleic Acids Research, 10, 6487 (1982) 、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 79, 6409 (1982) 、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 81,5662 (1984) 、Science,224, 1431 (1984)、WO85/00817(1985) 、Nature, 316, 601 (1985) 、Gene, 34, 315 (1985) 、Nucleic Acids Research, 13, 4431 (1985) 、Current Protocols in Molecular Biology, John and Wily & Sons (1987-1997)(以下、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジーと略す)等に記載の方法に準じて該ポリペプチドをコードするDNAに含まれる塩基を欠失、置換、挿入および/または付加することで得られる変異DNAを用いて調製することができる。
本発明のポリペプチドは、配列番号2で示されるアミノ酸配列と、好ましくは60%以上、より好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上の相同性を有するポリペプチドも包含する。配列番号4に記載のアミノ酸配列は、ヒト第16番染色体長腕に存在するオープンリーディングフレーム(ORF)で、本発明の配列番号2ので示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドと約82%の相同性であるが、それらの機能については知られていない。
【0019】
本発明のDNAとしては、
上記本発明のポリペプチドをコードするDNA、
配列番号1で示される塩基配列の40番目〜969番目で表される塩基配列を有するDNA、及び
これら上記のDNAから選ばれるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするDNAが挙げられる(いか、これらを本発明の細胞死抑制遺伝子とも表記する)。
【0020】
上記においてストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするDNAとは、細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするDNAまたはその染色体遺伝子断片をプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザン・ブロット・ハイブリダイゼーション法等を用いることにより得られるDNAを意味し、具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、42〜68℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1倍〜2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM塩化ナトリウム、15mMクエン酸ナトリウムよりなる)を用い、42〜68℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるDNAをあげることができる。ハイブリダイゼーションは、 Molecular Cloning, A laboratory manual, Second Edition.(1989)(以下、モレキュラー・クローニング第2版と略す)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー、DNA cloning1:Core Techniques,APractical Approach, Second Edition, Oxford University (1995)に記載されている方法に準じて行うことができる。ハイブリダイズ可能なDNAとして具体的には、BLAST〔J. Mol. Biol., 215, 403 (1990)〕、FASTA〔Method in
Enzymology, 183, 63 (1990)〕等の解析ソフトを用いて計算したときに、配列番号2又は4で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは95%以上の相同性を有するDNAをあげることができる。
【0021】
本発明のポリペプチドをコードするDNAを含む組換え体DNAは、本発明のDNAから選ばれるDNAをモレキュラー・クローニング 第2版記載の方法に従ってベクターに連結することで得られる。
本発明のポリペプチドを製造する方法は、上記方法により作製した組換え体DNAを用いてモレキュラー・クローニング 第2版記載の方法に従って形質転換された細胞を、該細胞が生育し得る適当な培養液中で培養し、該培養液中に本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、該培養液から該ポリペプチドを採取する方法をあげることができる。また該培養液からポリペプチドを採取するには、ポリペプチドを可溶化後、イオン交換、ゲルろ過あるいは疎水性クロマトグラフィー法等、またはこれらを組み合わせることにより単離精製する方法があげられる。
【0022】
本発明の抗体又はその抗体断片としては、上記本発明のポリペプチドを認識する抗体又はその抗体断片をあげることができる。
上記本発明のDNAを連結する遺伝子治療用のベクターDNAとしては、レトロウィルスベクター、アデノウィルスベクターまたは該ウィルスベクターの誘導体など、本発明のDNAから選ばれるDNAを動物細胞内に導入し、発現させることができるベクターをあげることができる。
【0023】
本発明のポリペプチドと特異的に結合する物質としては、本発明のポリペプチドと特異的に結合する物質であればいずれのものでもよい。
本発明のポリペプチドから選ばれるポリペプチドの発現を制御(増強又は抑制)させる化合物としては、該ポリペプチドをコードするDNAの転写量を特異的に制御(増強又は抑制)させる物質をあげることができる。
【0024】
本発明の遺伝子改変非ヒト動物としては、ヒト以外の動物であればいかなる動物でもよいが、好ましくはほ乳動物、例えばウシ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ、ハムスター、モルモット、マウス、ラットなどが用いられる。特にゲッ歯類はライフサイクルが比較的短く、また繁殖が容易であることからモデル動物としては好ましく、とりわけラット、マウスが好ましい。該動物を用いて作製される遺伝子改変非ヒト動物は、本発明のDNA、および該DNAを含む染色体遺伝子を用いて、本発明の細胞死を抑制する作用を有するポリペプチドをコードするDNAを含む遺伝子の全部あるいは一部が欠損あるいは置換した遺伝子を有する胚性幹細胞クローンを作成し、キメラ法によって該胚性幹細胞クローンと正常細胞を掛け合わせることでキメラ個体を作成後、該キメラ個体と正常個体を掛け合わせることにより、すべての細胞が該DNAに変異を有する個体を得たのち、該個体同士の掛け合わせにより相同染色体双方に変異の入ったホモ個体を得る方法により作成できる。本発明のDNAを含む染色体DNAとしては本発明のDNAを含む染色体遺伝子を断片をあげることができる。
【0025】
また、細胞死抑制遺伝子の任意の位置へ変異の導入が可能である。例えば細胞死抑制遺伝子の翻訳領域中への塩基置換、欠失、挿入、付加等の変異を導入することにより、その産物の活性を変化させた動物を作ることができる。またその発現制御領域への同様な変異の導入により、発現の程度、時期、組織特異性等を改変させた動物の作成も可能である。さらにCre-loxP系〔 J. Clin. Invest., 98, 600 (1996)〕との組合せにより、より積極的に発現時期、発現部位、発現量等を制御することも可能である。このような例としては脳のある特定の領域で発現されるプロモータを利用して、その領域でのみ目的遺伝子を欠失させた例〔Cell, 87, 1317 (1996)〕やCreを発現するアデノウィルスを用いて、目的の時期に、臓器特異的に目的遺伝子を欠失させた例〔Science, 278, 5335 (1997)〕が知られている。従って本発明の細胞死抑制遺伝子についてもこのように任意の時期や組織で発現を制御できる、または任意の挿入、欠失、置換および/または付加をその翻訳領域や、発現制御領域に有する動物個体を作成することが可能である。このような動物は任意の時期、任意の程度または任意の部位で、細胞死と細胞死に伴って生ずる疾患等の種々の疾患の症状を誘導することができる。従って細胞死や細胞死に伴って生ずる疾患の診断、治療、予防において極めて有用な動物モデルとなる。
【0026】
本発明の遺伝子改変非ヒト動物を用いたスクリーニング法は、動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞と被験物質を接触させ、被験物質の中から該動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞の動態を変化させる被験物質を選択することを特徴とする、細胞死の抑制あるいは促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬のスクリーニング法である。具体的には、該動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞を被験物質で処理し、無処理の対照動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞と比較し、該動物の各器官、組織、細胞の動態の変化を観察することにより該物質の効果を調べることができる。該動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞を被験物質で処理する方法としては、該動物に経口投与する、または静脈注射等により投与する方法、臓器、組織または細胞を有する培養液等の液中に被験物質を含有させる方法等があげられるが、特にこれらの方法に限られることはなく、用いられる被験物質の性質により適宜選択することができる。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.本発明の細胞死抑制遺伝子の生産
(1)細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするDNAの取得
本発明のポリペプチドをコードするDNAの取得方法としては、由来の異なる二つのサンプル間で異なる発現形態を取る遺伝子を取得する方法であるサブトラクション法[Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 85, 5738-5742 (1988)]、Representational difference analysis[Nucleic Acids Research, 22, 5640-5648 (1994)]による方法、発現クローニング法[新遺伝子工学ハンドブック(羊土社)]などがあげられる。
【0028】
サブトラクション法では、Ba/F3-Ad細胞より作製したcDNAライブラリーを、対照細胞であるBa/F3細胞より取得したmRNAを用いてサブトラクションを行う。Ba/F3-Ad細胞に特異的な遺伝子を濃縮した差分化cDNAライブラリーを調製した後、該差分化cDNAライブラリーの挿入cDNA配列を5’末端側よりランダムに塩基配列解析を行い、分泌シグナル配列を持つものだけを選択する(ランダム配列解析)。このようにして得られたcDNAの塩基配列を決定する。
【0029】
発現クローニング法では、Ba/F3-Ad細胞より作製したcDNAライブラリーをレトロウィルスベクターに組み込み、パッケージング細胞により高い力価のウィルス液を作製し、該ウィルス液を対照細胞に感染させて、細胞のゲノムにDNAを組み込ませる。IL-3非依存的に増殖する細胞を選択し、細胞内のゲノムを、ポリメラーゼ・チェイン・リアクション(Polymerase Chain Reaction:以下、PCRと略記する)を行うことにより、該cDNAを増幅させ、該cDNA配列を決定する。
レトロウィルスベクターとしては、pBabeX〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 9146-9150 (1995)〕、pMXなどがあげられる。
パッケージング細胞としては、BOSC23(ATCC CRL 11554)などがあげられる。上記方法により得られたcDNAの塩基配列としては、配列番号1で示される塩基配列があげられる。
【0030】
PCRの条件は、該PCRに用いられるTaqポリメラーゼの性質にあわせて適宜変更することが好ましい。該PCR法により増幅したDNA断片の塩基配列を、例えば、サンガー(Sanger)らのジデオキシ法〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 74, 5463 (1977)〕あるいは、塩基配列自動分析装置、例えば、アプライド・バイオシステムズ(Applied Biosystems)社製373A・DNAシークエンサー(Sequencer)等を用いて決定する。
【0031】
(2)細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするDNA断片のクローン化
上記(1)で取得した、細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするDNAを用いて、該DNA断片を含む、より長い染色体遺伝子断片を、例えば染色体遺伝子コスミドライブラリーから(1)で取得した該DNA断片を含むコスミドクローンを選択することにより取得することができる。
【0032】
該選択法としては、(1)で取得したDNAをプローブにしたコロニー・ハイブリザイゼーション法、プラーク・ハイブリザイゼーション法(モレキュラー・クローニング 第2版記載)等、あるいは(1)で取得した染色体DNA部分断片の塩基配列から選ばれる配列を有する合成DNAをプライマーにしたPCRを利用した方法等があげられる。
【0033】
PCRを利用した具体的方法としては以下に示す方法があげられる。
(1)で取得した配列番号1で示される塩基配列から選ばれる配列を有するプライマーを合成する。プライマーとしては例えば配列番号7および配列番号8で示される塩基配列を有するプライマーのセットをあげることができる。該プライマーを用いてPCR法により染色体遺伝子コスミドライブラリーをスクリーニングする。染色体遺伝子コスミドライブラリーはモレキュラー・クローニング 第2版記載の方法により作製することもできるが、市販の染色体遺伝子コスミドライブラリー(例えばKURABO社)を用いることもできる。取得される染色体DNAコスミドライブラリーからPCRにより該遺伝子を含むクローンを選択する具体的な方法としては、該プライマーを用いたPCRにより増幅断片を与えるコスミドクローンを選択することにより行われる。PCRの条件は、該プライマーを用いたPCRにより、特異的なDNA増幅を増幅できる条件であれば特に限定されない。
【0034】
次に、上記PCRによって増幅断片を与えるクローンに含まれる染色体DNAについて制限酵素地図を作成し、(1)で取得したcDNA全長をプローブとして用いたサザンハイブリダイゼーション法を組み合わせることにより(1)でクローン化したDNAの染色体上の位置、すなわち該染色体部分断片(エクソン領域)を含んだ制限酵素切断断片を同定できる。マウスの場合には、マウス染色体DNAの制限酵素地図を常法にしたがって作製できる。次に該マウス染色体DNAを適当な制限酵素で消化したDNA断片に対し、配列番号1で示される塩基配列からなるDNA断片をプローブとしたサザン解析を行い、該マウス染色体DNA上における配列番号1で示されるDNAの位置を特定することで、エクソン部位が決定できる。該エクソン領域を含む染色体DNA断片について、(1)記載の常法により部分塩基配列を決定し、公知の細胞死抑制遺伝子と相同性を比較することにより、コスミドライブラリーから選択したコスミドクローンに含まれるマウス染色体DNA断片は、マウス細胞死抑制遺伝子を含む断片であることを確認する。該部分塩基配列の例として配列番号1で示される塩基配列をあげることができる。他の動物についても同様の方法を用いて、細胞死抑制ポリペプチドの一部をコードするDNAを含む染色体DNA断片を取得することができる。
【0035】
(3) 細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするcDNAのクローン化
細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドをコードするcDNAをクローニングする方法としては、上記(2)に記載の方法により同定された、細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドの一部をコードする、染色体DNA上のエクソン部分の塩基配列から選ばれる配列を有するDNAをプローブにしたサザンハイブリダイゼーションまたはプラークハイブリダイゼーションによりcDNAライブラリーをスクリーニングする方法、該染色体DNA上のエクソン部の配列をもとにプライマーを設計し、PCRによりcDNAライブラリーからスクリーニングする方法等があげられる。
【0036】
PCRを用いる方法としては、例えば配列番号1で示される塩基配列を有するDNAに含まれる細胞死抑制遺伝子のエクソン部分の塩基配列をもとにプライマーセットを作成し、cDNAライブラリーをPCR法によりスクリーニングする方法があげられる。プライマーは該細胞死抑制遺伝子のエクソン中の配列を特異的に増幅できればどのような配列、組み合わせでもよいが、好適には配列番号7および配列番号8で示される塩基配列を有するDNAがあげられる。cDNAライブラリーは該プライマーセットで特異的に増幅断片が出現するもの、つまり、該細胞死抑制遺伝子を発現している組織であれば限定されない。マウスの場合には19日齢胚を用いて作製されるものがあげられる。cDNAライブラリーの作製方法は、該胚を用いてモレキュラー・クローニング 第2版記載の方法によっても作製可能であるが、市販のものを購入してもよい。市販のcDNAライブラリーからのPCRによるスクリーニング法の具体的な好適な例として、マウスの場合、19日齢胚ライブラリーをマイクロタイタープレートのウェルに小分割したものを用いた方法をあげることができる〔RAPID-SCREENTM cDNA LIBRARY PANELS (OriGene Technologies, Inc)〕。
【0037】
配列番号7および配列番号8で示される塩基配列を有するプライマーのセットを用いた該タイタープレートのウェル中の試料に対するPCRにより、増幅断片が認められたウェルに対応するライブラリーのサブプールをさらにPCRによりスクリーニングする。PCRの条件は、用いたプライマーに特異的な増幅断片を与える条件であれば特に限定されないが、好適には配列番号7および配列番号8で示される塩基配列のプライマーセットを用いた場合、95℃−9分,(95℃−30秒、65℃−30秒、72℃−30秒)の反応サイクルを33回、72℃−5分保温の温度条件をあげることができる。つぎに陽性ウェル、すなわち増幅断片を与えたウェル中のcDNAを含有する大腸菌のコロニーを寒天培地上に形成させた後、配列番号7および配列番号8で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いたコロニーPCR法により、増幅断片が認められるコロニーを選択し、含有するプラスミドを回収し、該プラスミドに含まれるcDNA部分の遺伝子配列を(1)記載の常法により決定する。
【0038】
上記細胞死抑制遺伝子のコードするポリペプチドとしては、例えば、配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをあげることができる。
【0039】
2.本発明のポリペプチド、組換え体DNA、及び形質転換体の生産
上記のようにして得られる細胞死抑制遺伝子を宿主細胞中で発現させ、本発明のポリペプチドを製造するためには、モレキュラー・クローニング 第2版、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー等に記載された方法を用いることができる。
【0040】
即ち、本発明のDNAを適当な発現ベクターのプロモーター下流に挿入した組換え体DNAを造成し、該ベクターを該ベクターに適合した宿主細胞中に導入することにより、本発明のポリペプチドを発現する形質転換体を取得し、該形質転換体を培養液中で培養し、該培溶液に本発明のポリペプチドを生成蓄積させることにより製造できる。
【0041】
本発明の組換え体DNAは、上述の本発明のDNAから選ばれるDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAである。
本発明の形質転換体は、宿主細胞中に上記本発明の組換え体DNAを保有する形質転換体である。
【0042】
宿主細胞としては、目的とする遺伝子を発現できるものは全て用いることができる。例えば、エッシェリヒア属、セラチア属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、シュードモナス属、バチルス属、ミクロバクテリウム属等に属する原核生物、クルイベロミセス属、サッカロマイセス属、シゾサッカロマイセス属、トリコスポロン属、シワニオミセス属等に属する酵母菌株や動物細胞宿主等をあげることができる。
【0043】
発現ベクターとしては、上記宿主細胞において自立複製可能ないしは染色体中への組込みが可能で、細胞死抑制遺伝子を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが用いられる。
細菌等の原核生物を宿主細胞として用いる場合は、細胞死抑制遺伝子発現ベクターは原核生物中で自立複製可能であると同時に、プロモーター、リボソーム結合配列、細胞死抑制遺伝子、転写終結配列、より構成されていることが好ましい。プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
【0044】
発現ベクターとしては、例えば、pBTrp2、pBTac1、pBTac2(いずれもベーリンガーマンハイム社より市販)、pSE280(インビトロジェン社製)、pGEMEX−1(Promega社製)、pQE−8(QIAGEN社製)、pKYP10( 特開昭58−110600)、pKYP200〔Agric. Biol. Chem., 48, 669 (1984)〕、pLSA1〔Agric. Biol. Chem., 53, 277 (1989)〕、pGEL1〔Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 82, 4306 (1985)〕、pBluescript (STRATAGENE社)、pTrs30(FERM BP−5407)、pTrs32(FERM BP−5408)、pGHA2(FERM BP−400)、pGKA2(FERM B−6798)、pTerm2(特開平3−22979、US4686191、US4939094、US5160735)、pKK233−2(Pharmacia社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pETシステム(Novagen社製)、pSupex、pUB110、pTP5、pC194等を例示することができる。
【0045】
プロモーターとしては、大腸菌等の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、trpプロモーター(Ptrp)、lacプロモーター(Plac)、PLプロモーター、PRプロモーター、PletIプロモーター、PSEプロモーター等の、大腸菌やファージ等に由来するプロモーター、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーター等をあげることができる。またPtrpを2つ直列させたプロモーター(Ptrp x2)、tacプロモーターのように人為的に設計改変されたプロモーター等も用いることができる。
【0046】
リボソーム結合配列としては、大腸菌等の宿主細胞中で発現できるものであればいかなるものでもよいが、シャイン−ダルガノ(Shine-Dalgarno)配列と開始コドンとの間を適当な距離(例えば6〜18塩基)に調節したプラスミッドを用いることが好ましい。
本発明のDNAの発現には転写終結配列は必ずしも必要ではないが、好適には構造遺伝子直下に転写終結配列を配置することが望ましい。
【0047】
宿主細胞としては、エシェリヒア属、セラチア属、コリネバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、シュードモナス属、バチルス属、ミクロバクテリウム属等に属する微生物、例えば、Escherichia coli XL1-Blue 、Escherichia coli XL2-Blue 、Escherichia coli DH1、Escherichia coli MC1000、Escherichia coli KY3276、Escherichia coli W1485 、Escherichia coli JM109 、Escherichia coli HB101、Escherichia coli No.49 、Escherichia coli W3110 、Escherichia coli NY49、Bacillus subtilis、Bacillus amyloliquefacines、Brevibacterium ammoniagenes、Brevibacterium immariophilum ATCC14068、Brevibacterium saccharolyticum ATCC14066、Brevibacterium flavum ATCC14067、Brevibacterium lactofermentum ATCC13869、Corynebacterium glutamicum ATCC13032、Corynebacterium acetoacidophilum ATCC13870 、Microbacterium ammoniaphilum ATCC15354 等をあげることができる。
【0048】
組換えベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 69, 2110 (1972)〕、プロトプラスト法(特開昭63-248394)、Gene, 17, 107 (1982)やMolecular & General Genetics, 168, 111 (1979)に記載の方法等をあげることができる。
【0049】
酵母菌株を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、YEp13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)、YCp50(ATCC37419)pHS19、pHS15等を例示することができる。
プロモーターとしては、酵母菌株中で発現できるものであればいかなるものでもよい。例えば、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、gal 1プロモーター、gal 10プロモーター、ヒートショック蛋白質プロモーター、MFα1プロモーター、CUP 1プロモーター等のプロモーターをあげることができる。
【0050】
宿主細胞としては、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、クリュイベロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis)、トリコスポロン・プルランス(Trichosporon pullulans)、シュワニオミセス・アルビウス(Schwanniomyces alluvius)等をあげることができる。
【0051】
組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、エレクトロポレーション法〔Methods. Enzymol., 194, 182 (1990)〕、スフェロプラスト法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84, 1929 (1978)〕、酢酸リチウム法〔ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J. Bacteriol.)、153, 163 (1983)〕、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 1929 (1978)記載の方法等をあげることができる。
【0052】
動物細胞を宿主細胞として用いる場合には、発現ベクターとして、例えば、pcDNAI、pcDM8(フナコシ社より市販)、pAGE107〔特開平3-22979 ;サイトテクノロジー(Cytotechnology)、3, 133, (1990)〕、pAS3−3(特開平2-227075)、pCDM8〔ネイチャー(Nature)、329, 840, (1987)〕、pcDNAI/Amp(インビトロジェン社製)、pREP4(インビトロジェ ン社製)pAGE103〔J. Biochem., 101, 1307(1987)〕、pAGE210等を例示することができる。
【0053】
プロモーターとしては、動物細胞中で発現できるものであればいずれも用いることができ、例えば、サイトメガロウイルス(ヒトCMV)のIE(immediateearly)遺伝子のプロモーター、SV40の初期プロモーターあるいはメタロチオネインのプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒートショックプロモーター、SRαプロモーター等をあげることができる。また、ヒトCMVのIE遺伝子のエンハンサーをプロモーターと共に用いてもよい。
【0054】
宿主細胞としては、ナマルバ細胞、HBT5637(特開昭63―299)、COS1細胞、COS7細胞、CHO細胞等をあげることができる。
動物細胞への組換えベクターの導入法としては、動物細胞にDNAを導入できるいかなる方法も用いることができる。例えば、エレクトロポーレーション法〔Cytotechnology, 3, 133(1990)〕、リン酸カルシウム法(特開平2―227075)、リポフェクション法〔Proc.Natl.Acad.Sci.,USA, 84, 7413(1987)〕、Virology, 52, 456 (1973)に記載の方法等を用いることができる。形質転換体の取得および培養は、特開平2−227075号公報あるいは特開平2−257891号公報に記載されている方法に準じて行なうことができる。
【0055】
昆虫細胞を宿主として用いる場合には、例えばバキュロウイルス・イクスプレッション・ベクターズ ア・ラボラトリー・マニュアル(Baculovirus Expression Vectors, A Laboratory Manual)、カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー サプルメント1-34、Bio/Technology, 6, 47 (1988)等に記載された方法によって、本発明のポリペプチドを発現することができる。
【0056】
即ち、組換え遺伝子導入ベクターおよびバキュロウイルスを昆虫細胞に共導入して昆虫細胞培養上清中に組換えウイルスを得た後、さらに組換えウイルスを昆虫細胞に感染させ、本発明のポリペプチドを発現させることができる。
該方法において用いられる遺伝子導入ベクターとしては、例えば、pVL1392、pVL1393、pBlueBacIII (ともにインビトロジェン社製)等をあげることができる。
【0057】
バキュロウイルスとしては、例えば、夜盗蛾科昆虫に感染するウイルスであるアウトグラファ・カリフォルニカ・ヌクレアー・ポリヘドロシス・ウイルス(Autographa californica nuclear polyhedrosis virus) などを用いることができる。
昆虫細胞としては、Spodoptera frugiperdaの卵巣細胞であるSf9、Sf21〔バキュロウイルス・ エクスプレッション・ベクターズ、ア・ラボラトリー・マニュアル、ダブリュー・エイチ・フリーマン・アンド・カンパニー(W.H.Freeman and Company)、ニューヨーク(New York)、(1992)〕、Trichoplusia niの卵巣細胞であるHigh 5(インビトロジェン社製)等を用いることができる。
【0058】
組換えウイルスを調製するための、昆虫細胞への上記組換え遺伝子導入ベクターと上記バキュロウイルスの共導入方法としては、例えば、リン酸カルシウム法(特開平2-227075)、リポフェクション法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 84,7413 (1987)〕等をあげることができる。
遺伝子の発現方法としては、直接発現以外に、モレキュラー・クローニング 第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
【0059】
酵母、動物細胞または昆虫細胞により発現させた場合には、糖あるいは糖鎖が付加されたポリペプチドを得ることができる。
本発明のDNAを組み込んだ組換え体DNAを保有する形質転換体を培地に培養し、培養物中に本発明のポリペプチドを生成蓄積させ、該培養物より該ポリペプチドを採取することにより、該ポリペプチドを製造することができる。
【0060】
該ポリペプチド製造用形質転換体が大腸菌等の原核生物、酵母菌等の真核生物である場合、これら生物を培養する培地は、該生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれでもよい。
炭素源としては、それぞれの微生物が資化し得るものであればよく、グルコース、フラクトース、スクロース、これらを含有する糖蜜、デンプンあるいはデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノールなどのアルコール類が用いられる。
【0061】
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、等の各種無機酸や有機酸のアンモニウム塩、その他含窒素化合物、並びに、ペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕および大豆粕加水分解物、各種発酵菌体およびその消化物等が用いられる。
【0062】
無機塩としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
培養は、振盪培養または深部通気攪拌培養などの好気的条件下で行う。培養温度は15〜40℃がよく、培養時間は、通常16〜96時間である。培養中pHは、3.0〜9.0に保持する。pHの調整は、無機あるいは有機の酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム、アンモニアなどを用いて行う。
【0063】
また培養中必要に応じて、アンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
【0064】
動物細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地〔The Journal of the American Medical Association, 199, 519 (1967)〕、EagleのMEM培地〔Science, 122,501 (1952)〕、DMEM培地〔Virology, 8, 396 (1959)〕、199培地〔Proceeding of the Society for the Biological Medicine, 73, 1 (1950)〕またはこれら培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
【0065】
培養は、通常pH6〜8、30〜40℃、5%CO2存在下等の条件下で1〜7日間行う。
また、培養中必要に応じて、カナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
昆虫細胞を宿主細胞として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているTNM−FH培地〔ファーミンジェン(Pharmingen)社製〕、Sf-900 II SFM培地(ギブコBRL社製)、ExCell400 、ExCell405 〔いずれもJRHバイオサイエンシーズ(JRH Biosciences)社製〕、Grace's Insect Medium〔Grace, T.C.C.,ネイチャー(Nature), 195, 788 (1962)〕等を用いることができる。
【0066】
pH6〜7、培養温度25〜30℃がよく、培養時間は、通常1〜5日間である。
また、培養中必要に応じて、ゲンタマイシン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
本発明のポリペプチド製造用形質転換体の培養物から、本発明のポリペプチドを単離精製するには、通常の酵素の単離、精製法を用いればよい。
【0067】
例えば、本発明のポリペプチドが、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、細胞を遠心分離により回収し水系緩衝液にけん濁後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー、ダイノミル等により細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られた上清から、通常の酵素の単離精製法、即ち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA-75 (三菱化学社製)等レジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S-Sepharose FF(ファルマシア社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の手法を単独あるいは組み合わせて用い、精製標品を得ることができる。
【0068】
また、該ポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に細胞を回収後破砕し、遠心分離を行うことにより得られた沈殿画分より、通常の方法により該ポリペプチドを回収後、該ポリペプチドの不溶体をポリペプチド変性剤で可溶化する。該可溶化液を、ポリペプチド変性剤を含まないあるいはポリペプチド変性剤の濃度がポリペプチドが変性しない程度に希薄な溶液に希釈、あるいは透析し、該ポリペプチドを正常な立体構造に構成させた後、上記と同様の単離精製法により精製標品を得ることができる。
【0069】
本発明のポリペプチドあるいはその糖修飾体等の誘導体が細胞外に分泌された場合には、培養上清に該ポリペプチドあるいはその糖鎖付加体等の誘導体を回収することができる。即ち、該培養物を上記と同様の遠心分離等の手法により処理することにより可溶性画分を取得し、該可溶性画分から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
【0070】
また、上記方法により発現させたポリペプチドを、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、桑和貿易(米国AdvancedchemTech社製)、パーキンエルマージャバン(米国Perkin-Elmer社製)、ファルマシアバイオテク(スウューデンPharmacia Biotech社製)、アロカ(米国Protein Technology Instrument社製)、クラボウ(米国Synthecell-Vega社製)、日本パーセプティブ・リミテッド(米国PerSeptive社製)、島津製作所等のペプチド合成機を利用し合成することもできる。
【0071】
3.本発明のポリペプチドを認識する抗体又はその抗体断片の生産とその利用
本発明のポリペプチドまたは該ポリペプチドの部分断片ポリペプチドの精製標品、あるいは本発明のポリペプチドの一部のアミノ酸配列を有するペプチドを抗原として用いることにより、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体等、本発明のポリペプチドを認識する抗体またはその抗体断片を作製することができる。本発明のモノクローナル抗体としては、ハイブリドーマが生産するモノクローナル抗体、遺伝子組換え抗体などがあげられる。
ハイブリドーマとは、ヒト以外の哺乳動物に抗原を免疫して取得されたB細胞と、マウスなどに由来するミエローマ細胞とを細胞融合させて得られる、所望の抗原特異性を有したモノクローナル抗体を生産する細胞を意味する。
遺伝子組換え抗体とは、ハイブリドーマが生産するモノクローナル抗体をコードする遺伝子の一部または全部を、遺伝子工学的手法を用いて作製した抗体を意味する。
遺伝子組換え抗体としては、ヒト化抗体、ヒト抗体等があげられる。
【0072】
ヒト化抗体としては、ヒト型キメラ抗体及びヒト型CDR移植抗体などがあげられる。
ヒト型キメラ抗体は、ヒト以外の動物の抗体重鎖可変領域(H鎖V領域)(以下、HVまたはVHとも称す)および抗体軽鎖(L鎖)V領域(以下、LVまたはVLとも称す)とヒト抗体のH鎖定常領域(C領域)(以下、CHとも称す)およびヒト抗体のL鎖C領域(以下、CLとも称す)とからなる抗体を意味する。ヒト以外の動物としては、マウス、ラット、ハムスター、ラビット等、ハイブリドーマを作製することが可能であれば、いかなるものも用いることができる。
ヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDRのアミノ酸配列をヒト抗体のVHおよびVLの適切な位置に移植した抗体を意味する。
ヒト抗体は、元来、ヒト体内に天然に存在する抗体を意味するが、最近の遺伝子工学的、細胞工学的、発生工学的な技術の進歩により作製されたヒト抗体ファージライブラリーおよびヒト抗体産生トランスジェニック動物から得られる抗体等も含まれる。
抗体断片としては、Fab、Fab'、F(ab')2、scFv(一本鎖抗体断片)、dsFv(ジスルフィド抗体断片)、CDRを含むペプチドなどがあげられる。
【0073】
Fabは、抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得られる断片のうち(H鎖の224番目のアミノ酸残基で切断される)、H鎖のN末端側約半分とL鎖全体がジスルフィド結合で結合した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
F(ab')2は、IgGを蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得られる断片のうち(H鎖の234番目のアミノ酸残基で切断される)、Fabがヒンジ領域のジスルフィド結合を介して結合されたものよりやや大きい、分子量約10万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
Fab'は、上記F(ab')2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断した分子量約5万の抗原結合活性を有する抗体断片である。
【0074】
scFvは、一本のVHと一本のVLとを適当なペプチドリンカー(以下、Pと称す)を用いて連結した、VH−P−VLないしはVL−P−VHポリペプチドを示す。本発明で使用されるscFvに含まれるVHおよびVLは、ハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれをも用いることができる。
【0075】
dsFvは、VHおよびVL中のそれぞれ1アミノ酸残基をシステイン残基に置換したポリペプチドを該システイン残基間のジスルフィド結合を介して結合させたものをいう。システイン残基に置換するアミノ酸残基はReiterらにより示された方法[プロテイン・エンジニアリング(Protein Engineering), 7, 697 (1994)]に従って、抗体の立体構造予測に基づいて選択することができる。本発明のdsFvに含まれるVHおよびVLはハイブリドーマが産生する抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体のいずれをも用いることができる。
CDRを含むペプチドは、H鎖またはL鎖CDRの少なくとも1領域以上を含んで構成される。複数のCDRは、直接または適当なペプチドリンカーを介して結合させることができる。
【0076】
(1)抗原の調製
抗原用部分ペプチドとしては、5〜30残基程度の蛋白質部分配列があげられる。
天然の構造を有する蛋白質を認識する抗体を取得する方法としては、立体構造において蛋白質の表面に存在している部分アミノ酸配列を抗原ペプチドとして選択する方法があげられる。
立体構造において蛋白質の表面に存在する部分アミノ酸配列は、KyteとDoolittleの方法[ジャーナル・オブ・モレキュラー・バイオロジー (Journal of Molecular Biology), 157, 105-132 (1982)]などにより、親水性の高い部分配列を予測することができる。親水性の低い部分は立体構造上蛋白質の内部に存在する場合が多く、親水性の高い部分は蛋白質表面に存在する場合が多い。また、蛋白質のN末端およびC末端は蛋白質表面に存在する場合が多い。
【0077】
さらに、Chou-Fasmanの方法[アドバンセズ・イン・エンザイモロジー(Advances in Enzymology), 47, 45-147 (1978)]などによりアミノ酸配列から予測した蛋白質二次構造において、ターン構造やランダムコイル構造を有する部分を抗原用ペプチドとする方法もあげられる。
しかしながら、このように選択した部分ペプチドが目的通りの抗体を確立する抗原となるとは限らない。
部分ペプチドには、蛋白質と架橋するためにシステインを末端に付加する。蛋白質の内部配列を選択した場合には、必要に応じペプチドのN末端はアセチル化、C末端はアミド化する。
【0078】
部分ペプチドは一般的な液相、固相ペプチド合成法およびそれらを適宜組み合わせる方法、またはそれらに準じる方法によって合成することができる[インターナショナル・ジャーナル・オブ・ペプタイド・アンド・プロテイン・リサーチ (International Journal of Peptide Protein Research), 35, 161-214 (1990)、「ソリッド−フェーズ・ペプタイド・シンセシス (Solid-Phase Peptide Synthesis)」, メソッズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology) 第289巻 、グレッグ・B・フィールズ (Gregg B. Fields) 編、アカデミック・プレス (Academic Press)、(1997)、「ペプタイド・シンセシス・プロトコール (Peptide Synthesis Protocols)」, メソッズ・イン・モレキュラー・バイオロジー(Methods in Molecular Biology) 第35巻 、マイケル・W・ペニントン (Michael W. Pennington)、ベン・M・ダン (Ben M. Dunn) 編、ヒューマナ・プレス (Humana Press)、(1994)]。
【0079】
また、自動ペプチド合成機を用いることもできる。ペプチド合成機によるペプチドの合成は、島津製作所製ペプチド合成機、アドバンスト・ケムテック社(Advanced ChemTech Inc., USA、以後 ACT社と略称する)製ペプチド合成機等の市販のペプチド合成機上で、適当に側鎖を保護した Nα-Fmoc-アミノ酸あるいは Nα-Boc-アミノ酸等を用い、それぞれの合成プログラムに従って実施することができる。原料となる保護アミノ酸および担体樹脂は、ABI 社、島津製作所、国産化学(株)、ノバビオケム社(NovaBiochem)、渡辺化学(株)、ACT 社、アナスペック社(AnaSpec Inc.)、またはペプチド研究所(株)等から入手することができる。
【0080】
(2)ポリクローナル抗体の作製
ウサギ、ヤギまたは3〜20週令のラット、マウスもしくはハムスターに、上記2.で取得され、上記3.(1)に従い調製される本発明の細胞死抑制ポリペプチド全長または部分断片精製標品(抗原)を、50〜100μg/匹程、該動物の皮下、静脈内または腹腔内に、適当なアジュバント〔例えば、フロインドの完全アジュバント(Complete Freund's Adjuvant)または、水酸化アルミニウムゲルと百日咳菌ワクチンなど〕とともに投与する。
【0081】
該抗原の投与は、1 回目の投与の後1〜2週間おきに3〜10回行う。各投与後、3〜7日目に眼底静脈叢より採血し、該血清が免疫に用いた抗原と反応することを酵素免疫測定法〔酵素免疫測定法(ELISA 法):医学書院刊 1976年、Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory (1988)〕などで確認する。
【0082】
免疫に用いた抗原に対し、該血清が充分な抗体価を示したウサギ、ヤギ、マウス、ラットまたはハムスターより血清を取得し、該血清より、40〜50%飽和硫酸アンモニウムによる塩析法、カプリル酸沈殿法、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムあるいはゲルろ過カラム等を用いたクロマト法等の常法を用いて精製抗体を取得する。
【0083】
(3)モノクローナル抗体の作製
(a)抗体産性細胞の調製
免疫に用いた本発明のポリペプチドまたはその部分断片に対し、その血清が十分な抗体価を示したラットを抗体産生細胞の供給源として供する。
【0084】
該抗体価を示したラットに抗原物質を最終投与した後3〜7日目に、脾臓を摘出する。
該脾臓をMEM培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、1,200rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。
得られた沈殿画分の脾細胞をトリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.65)で1〜2分間処理し赤血球を除去した後、MEM培地で3回洗浄し、得られた脾細胞を抗体産生細胞として用いる。
【0085】
(b)骨髄腫細胞の調製
骨髄腫細胞としては、マウスまたはラットから取得した株化細胞を使用する。たとえば、8-アザグアニン耐性マウス(BALB/c由来)骨髄腫細胞株P3-X63Ag8-U1(以下、P3−U1と略す)[カレント・トピックス・イン・ミクロバイオロジィ・アンド・イムノロジィ(Curr. Topics Microbiol. Immunol.), 81, 1(1978)]、[ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・イムノロジィ(Europ. J. Immunol.),6, 511 (1976)]、SP2/0-Ag14(SP-2)[ネイチャー(Nature), 276, 269 (1978)]、P3-X63-Ag8653(653)[ジャーナル・オブ・イムノロジィ(J. Immunol.), 123,1548 (1979)]、P3-X63-Ag8(X63)[ネイチャー(Nature), 256, 495 (1975)]等を用いることができる。これらの細胞株は、8−アザグアニン培地〔RPMI−1640培地にグルタミン(1.5mmol/L)、2−メルカプトエタノール(5×10-5M)、ジェンタマイシン(10μg/ml)および牛胎児血清(FCS)(CSL社製、10%)を加えた培地(以下、正常培地という)に、さらに8−アザグアニン(15μg/ml)を加えた培地〕で継代するが、細胞融合の3〜4日前に正常培地で培養し、融合には該細胞を2×107個以上用いる。
【0086】
(c)ハイブリドーマの作製
(a)で取得した抗体産生細胞と(b)で取得した骨髄腫細胞をMEM培地またはPBS(リン酸二ナトリウム1.83g、リン酸一カリウム0.21g、食塩7.65g、蒸留水1リットル、pH7.2)でよく洗浄し、細胞数が、抗体産生細胞:骨髄腫細胞=5〜10:1になるよう混合し、1,200rpmで5分間遠心分離した後、上清を捨てる。
【0087】
得られた沈澱画分の細胞群をよくほぐし、該細胞群に、攪拌しながら、37℃で、108抗体産生細胞あたり、ポリエチレングライコール−1000(PEG−1000) 2g、MEM 2mlおよびジメチルスルホキシド(DMSO) 0.7mlを混合した溶液を 0.2〜1ml添加し、更に1〜2分間毎にMEM培地 1〜2mlを数回添加する。
【0088】
添加後、MEM培地を加えて全量が50mlになるように調製する。
該調製液を900rpmで5分間遠心分離後、上清を捨てる。
得られた沈殿画分の細胞を、ゆるやかにほぐした後、メスピペットによる吸込み、吹出しでゆるやかにHAT培地〔正常培地にヒポキサンチン(10-4M)、チミジン(1.5×10-5M)およびアミノプテリン(4×10-7M)を加えた培地〕100ml中に懸濁する。
【0089】
該懸濁液を96穴培養用プレートに100μl/穴ずつ分注し、5% CO2インキュベーター中、37℃で7〜14日間培養する。
培養後、培養上清の一部をとりアンチボディイズ〔Antibodies, A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Chapter14(1988)〕等に述べられている酵素免疫測定法により、本発明のポリペプチドまたはその部分断片に特異的に反応するハイブリドーマを選択する。
【0090】
酵素免疫測定法の具体的例として、以下の方法をあげることができる。
免疫の際、抗原に用いた本発明のポリペプチドまたはその部分断片を適当なプレートにコートし、ハイブリドーマ培養上清もしくは後述の(d)で得られる精製抗体を第一抗体として反応させ、さらに第二抗体としてビオチン、酵素、化学発光物質あるいは放射線化合物等で標識した抗ラットイムノグロブリン抗体を反応させた後に標識物質に応じた反応を行ない、本発明のポリペプチドに特異的に反応するものを抗細胞死抑制ポリペプチドモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマとして選択する。
【0091】
該ハイブリドーマを用いて、限界希釈法によりクローニングを2回繰り返し〔1回目は、HT培地(HAT培地からアミノプテリンを除いた培地)、2回目は、正常培地を使用する〕、安定して強い抗体価の認められたものを抗細胞死抑制ポリペプチド抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
(d)モノクローナル抗体の調製
プリスタン処理〔2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン(Pristane) 0.5mlを腹腔内投与し、2週間飼育する〕した 8〜10週令のマウスまたはヌードマウスに、(c)で取得した抗細胞死抑制ポリペプチドモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ細胞5〜20×106細胞/匹を腹腔内に注射する。10〜21日間でハイブリドーマは腹水癌化する。
【0092】
該腹水癌化したマウスから腹水を採取し、3,000rpmで5分間遠心分離して固形分を除去する。
得られた上清を、40〜50%飽和硫酸アンモニウムによる塩析法、カプリル酸沈殿法〔Antibodies , A Laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory, (1988)〕、DEAE−セファロースカラム、プロテインA−カラムあるいはセルロファインGSL2000(生化学工業社製)を用いたカラムクロマト法等を用いて、IgGあるいはIgM画分を集め、精製モノクローナル抗体として使用する。
【0093】
抗体のサブクラスの決定は、マウスモノクローナル抗体タイピングキットまたはラットモノクローナル抗体タイピングキットを用いて行う。蛋白質量は、ローリー法あるいは280nmでの吸光度より算出する。
【0094】
(4)遺伝子組換え抗体、各種抗体断片の作製
【0095】
本発明のヒト型キメラ抗体は、本発明のポリペプチドを認識するモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマより、VHおよびVLをコードするcDNAを取得し、ヒト抗体CHおよびヒト抗体CLをコードする遺伝子を有する動物細胞用発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型キメラ抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより発現させ、製造することができる。
ヒト型キメラ抗体のCHとしては、ヒトイムノグロブリン(以下、hIgと表記する)に属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、更にhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、ヒト型キメラ抗体のCLとしては、hIgに属すればいかなるものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
【0096】
本発明のヒト型CDR移植抗体は、ヒト以外の動物の抗体のVHおよびVLのCDR配列を任意のヒト抗体のVHおよびVLのCDR配列に移植したV領域をコードするcDNAを構築し、ヒト抗体のCHおよびヒト抗体のCLをコードする遺伝子を有するヒト型CDR移植抗体発現ベクターにそれぞれ挿入してヒト型CDR移植抗体発現ベクターを構築し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入することによりヒト型CDR移植抗体を発現させ、製造することができる。
【0097】
本発明のヒト型CDR移植抗体のCHとしては、hIgに属すればいかなるものでもよいが、hIgGクラスのものが好適であり、更にhIgGクラスに属するhIgG1、hIgG2、hIgG3、hIgG4といったサブクラスのいずれも用いることができる。また、該ヒト型CDR移植抗体のCLとしては、hIgに属すればいかなるものでもよく、κクラスあるいはλクラスのものを用いることができる。
【0098】
ヒト体内に存在する抗体は、例えば、ヒト末梢血リンパ球を単離し、EBウイルス等を感染させ不死化、クローニングすることにより、該抗体を産生するリンパ球を培養でき、培養物中より該抗体を精製することができる。
ヒト抗体ファージライブラリーは、ヒトB細胞から調製した抗体遺伝子をファージ遺伝子に挿入することによりFab、scFv等の抗体断片をファージ表面に発現させたライブラリーである。該ライブラリーより、抗原を固定化した基質に対する結合活性を指標として所望の抗原結合活性を有する抗体断片を発現しているファージを回収することができる。該抗体断片は、更に遺伝子工学的手法により、2本の完全なH鎖および2本の完全なL鎖からなるヒト抗体分子へも変換することができる。
本発明のFabは、上記抗体を蛋白質分解酵素パパインで処理して得ることができる。または、該抗体のFabをコードするDNAを発現ベクターに挿入し、該ベクターを宿主細胞へ導入することにより発現させ、Fabを製造することができる。
【0099】
本発明のF(ab')2は、上記抗体を蛋白質分解酵素ペプシンで処理して得ることができる。または、下記のFab'をチオエーテル結合あるいはジスルフィド結合させ、作製することができる。
本発明のFab'は、上記F(ab')2を還元剤ジチオスレイトール処理して得ることができる。または、該抗体のFab'断片をコードするDNAを発現ベクターに挿入し、該ベクターを宿主細胞へ導入することによりFab'を発現させ、製造することができる。
本発明のscFvは、上記抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、scFvをコードするDNAを構築し、該DNAを発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入することによりscFvを発現させ、製造することができる。
【0100】
本発明のdsFvは、抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得し、dsFvをコードするDNAを構築し、該DNAを発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより発現させ、dsFvを製造することができる。
本発明のCDRを含むペプチドは、抗体のVHおよびVLをコードするcDNAを取得した後、該cDNAを発現ベクターに挿入し、該発現ベクターを宿主細胞へ導入することにより発現させ、CDRを含むペプチドを製造することができる。
また、CDRを含むペプチドは、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によって製造することもできる。
【0101】
(5)モノクローナル抗体を用いた免疫細胞染色
付着細胞を用いて免疫細胞染色を行う場合には、予め下記の処理をすることにより、培養フラスコより剥がした細胞を用いることが好ましい。
【0102】
即ち、培養付着細胞をPBS緩衝液で洗浄し、0.05% トリプシン、0.02% EDTA(エチレンジアミン4酢酸)を含むPBS緩衝液3mlを加え、余分な溶液を除いた後、37℃、5分間インキュベートすることによりフラスコより細胞を剥がす(以下、この操作をトリプシン−EDTA処理と呼ぶ)。
浮遊細胞については培養細胞をそのまま用いることができる。
【0103】
免疫細胞染色を行う細胞を免疫細胞染色用緩衝液(1% BSA、0.02% EDTA、0.05% アジ化ナトリウムを含むPBS)等に懸濁し、1〜20×105個ずつ丸底96穴プレートに分注する。
該プレートに、(c)で取得した抗細胞死抑制ポリペプチドモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清、(d)で取得した精製モノクローナル抗体、もしくは該モノクローナル抗体を公知の方法(酵素抗体法:学際企画刊1985年)でビオチン標識した抗体を 0.1〜50μg/mlの濃度になるように免疫細胞染色用緩衝液あるいは10%動物血清を含む免疫細胞染色用緩衝液を用いて希釈したものを20〜500μl/穴となるように分注し、氷冷下で30分間放置する。
【0104】
上記において、(c)で取得した抗細胞死抑制ポリペプチドモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清または(d)で取得した精製モノクローナル抗体を用いた場合には、上記プレートに免疫細胞染色用緩衝液を添加し、細胞を洗浄後、FITCあるいはフィコエリスリン等の蛍光色素で標識した抗マウスイムノグロブリン抗体あるいは抗ラットイムノグロブリン抗体を0.1〜50μg/ml程度の濃度で含む免疫細胞染色用緩衝液を50〜500μl/穴ほど分注し、氷冷下で30分間遮光して放置する。
【0105】
ビオチン標識した該モノクロ−ナル抗体を用いた場合には、上記プレートにストレプトアビジンを50〜500μl/穴ほど分注し、氷冷下で30分間遮光して放置する。
両ケースとも、放置後、プレートに免疫細胞染色用緩衝液を添加し、細胞を良く洗浄し、セルソーターにより解析する。
(6)本発明のポリペプチドの免疫沈降
本発明のポリペプチドを発現するCHO細胞あるいは昆虫細胞をシャーレ等の培養容器中で培養する。
【0106】
該培養容器にPBSを添加し、細胞を洗浄する。
該培養容器に氷冷した1% Triton X100、 20mmol/L Tris−HCl、150mmol/L NaClからなる緩衝液(以後、緩衝液1と呼ぶ)等の細胞膜を可溶化する緩衝液を100〜500μl添加し、氷上で30分間静置した後、5分間隔でゆっくり振動させ、可溶化処理する。
【0107】
該処理液を1.5ml用遠心チューブに回収し、14,000rpmで30分間遠心分離する。
得られた上清に、上記で用いた緩衝液で平衡化させたプロテインG−セファロースもしくはプロテインA−セファロースを10〜50μl添加し、4℃で1時間以上振盪した後、5,000rpmで2分間遠心分離し、上清を回収する。
【0108】
該上清に、(c)で取得した抗細胞死抑制ポリペプチドモノクローナル抗体産生ハイブリドーマの培養上清または(d)で取得した精製モノクローナル抗体を0.01〜50μg/mlとなるように添加し、4℃で1時間以上振盪する。
該振盪液にプロテインGーセファロースもしくはプロテインAーセファロースを10〜50μl添加し、4℃で1時間以上振盪後、5,000rpmで2分間遠心分離する。
【0109】
得られた沈殿画分に200μlの上記の細胞膜を可溶化する緩衝液を添加し、沈殿を懸濁させる。同様の操作を3度以上繰り返し、沈殿画分を洗浄する。
該沈殿にSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動用サンプルバッファーを添加し、ヒートブロックを用いて加熱した後、SDS−PAGEを行う。
SDS−PAGE終了後、得られたゲル中のポリペプチドをPVDF膜等へ転写し、本発明の抗細胞死抑制ポリペプチドポリクローナル抗体等を用いたウエスタンブロッティング法等により細胞死抑制ポリペプチドを検出する。
【0110】
4.本発明のポリぺプチドと特異的に結合する物質のスクリーニング法
本発明のポリペプチドと被験試料とを接触させ、被験試料の中から本発明のポリペプチドに結合する物質を選択して、本発明のポリペプチドに結合する物質をスクリーニングすることにより、本発明のポリペプチドと特異的に結合する物質をスクリーニングすることができる。
【0111】
被験試料として、合成化合物、天然に存在するまたは人工的に合成された抗体、タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、糖質、脂質、本発明のポリペプチドをコードするDNAのアンチセンスDNAおよびそれらの修飾体、誘導体などの他に、例えば、哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル、ヒトなど)の尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物、さらに発酵生産物、植物その他の生物の抽出物等を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0112】
具体的には本来、本発明のポリペプチドを発現していない細胞と、該細胞に本発明の細胞死抑制遺伝子を導入発現させた細胞の両細胞に被験試料を接触させ、例えば、細胞内カルシウム、cAMP、cGMP等の細胞内情報伝達分子濃度の変化、細胞内蛋白質のリン酸化、初期転写因子遺伝子の発現変化、細胞膜電位の変化、細胞内pHの変化、細胞外情報伝達分子の遊離、細胞の形態変化等、種々の細胞刺激活性を両細胞において測定し、両細胞における差異を詳細に比較、解析することにより、該ポリペプチドに結合する物質をスクリーニングすることができる。
【0113】
また、被験試料がポリペプチドである場合、宿主細胞の中に、本発明のポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターとともに、被験試料であるポリペプチドをコードするDNAを含む発現ベクターを導入する。その導入した発現ベクターを発現させて、細胞内で本発明のポリペプチドと被験試料であるポリペプチドを接触できるようにする。その細胞内で本発明のポリペプチドと被験試料であるポリペプチドが結合すると、細胞自体の色が変化するように設定して、目視で本発明のポリペプチドと被験試料であるポリペプチドの結合が確認できるようにする。目視で確認できた細胞を取り出して、被験試料であるポリペプチドをコードするDNAを同定すれば、本発明のポリペプチドに結合する物質をスクリーニングすることができる。
【0114】
被験試料のうち、合成化合物、天然に存在するあるいは人工的に合成された蛋白質、糖質、脂質およびそれらの修飾体、誘導体を、酵素、放射能等により標識する。標識された被験試料の、本発明のポリぺプチドを発現する細胞、該細胞膜画分、もしくはマイクロタイタープレート等へ固層化した本発明のポリぺプチドに対する結合量を測定することにより、被験試料の本発明のポリペプチドに結合する物質であるか否かの同定が可能である。
【0115】
また、本発明のポリぺプチド、該ポリペプチドの部分改変体又は部分ぺプチドを、BIAcore(Pharmacia Biotech社製)のセンサーチップに共有結合させ被験試料を接触させる方法〔Nature, 368, 558 (1994)〕により、該ポリペプチドに結合する物質を探索し、同定することができる。
更に、標識した本発明のポリぺプチド、または非標識の本発明のポリぺプチドと該ポリぺプチドに対する標識抗体を用いて、該ポリぺプチドと特異的に会合する該ポリペプチドに結合する物質を以下の方法で探索し、同定することが可能である。
【0116】
即ち、尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物などの被験試料を適当な分画を行った後、ポリアクリルアミド電気泳動、アガロース電気泳動、二次元電気泳動などの電気泳動や、HPLC等のカラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー等の手法によりさらに分画し、本発明の細胞死抑制遺伝子を発現している個体と発現していない個体、または本発明の細胞死抑制遺伝子を発現している細胞と発現していない細胞等の間における差異を詳細に比較、解析することにより、本発明の細胞死抑制遺伝子の発現と特異的に相関して認められる(または消失する)バンドやスポット、ピークを特定する。
【0117】
該バンド、スポット、ピークより、ブロッティングの手法を用いて、ゲルまたは薄層プレートからニトロセルロース膜、ナイロン膜、PVDF膜等の支持体に写し取った後、標識した本発明の細胞死抑制遺伝子ポリぺプチドまたは非標識の該ポリぺプチドと該ポリぺプチドに対する標識抗体を用いて、該ポリぺプチドと特異的に結合するバンド、スポットを探索し、該バンド、スポットより該ポリペプチドに結合する物質を抽出し、同定することができる。
【0118】
5.本発明のポリぺプチドの活性を抑制する物質のスクリーニング法
該スクリーニングにより得られる物質には、本発明のポリぺプチドの有する活性を阻害する活性を有する物質(アンタゴニスト)が含まれる。
【0119】
該物質のスクリーニング方法として、例えば、以下の方法をあげることができる。
本発明の細胞死抑制遺伝子を導入発現させた細胞もしくは本来本発明の細胞死抑制遺伝子を発現している細胞に、被験試料を接触させ、例えば、細胞内カルシウム、cAMP、cGMP等の細胞内情報伝達分子濃度の変化、細胞内蛋白質のリン酸化、初期転写因子遺伝子の発現変化、細胞膜電位の変化、細胞内pHの変化、細胞外情報伝達分子の遊離、細胞の形態変化、アポトーシス活性等の種々の細胞刺激活性を測定することにより、本発明のポリぺプチドの有する活性を阻害する物質を探索し、同定する方法をあげることができる。
【0120】
被験試料として、合成化合物、天然に存在するまたは人工的に合成された抗体、タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、糖質、脂質、本発明のポリペプチドをコードするDNAのアンチセンスDNAおよびそれらの修飾体、誘導体などの他に、例えば、哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル、ヒトなど)の尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物、さらに発酵生産物、植物その他の生物の抽出物等を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0121】
6.本発明のポリペプチドの発現を制御する物質(以下、発現制御物質と略す)のスクリーニング法
(1)本発明のポリペプチドを認識する抗体を用いたスクリーニング法
ここで、ポリペプチドの発現を制御するとは、その発現を増強する場合とその発現を抑制する場合の両方を包含する。
本発明のポリペプチドを発現する細胞を被験試料と接触させた後、本発明のポリペプチドを認識する抗体を用いて、該ポリペプチドを定量することにより、発現制御物質をスクリーニングすることができる。
本発明のポリペプチドを発現する細胞として、例えば腫瘍細胞、癌細胞、あるいはそれら細胞由来の細胞株(例えば、マウスproB細胞由来のBa/F3−Ad細胞等)をあげることができる。また、本発明のポリペプチドをコードするDNAが導入された本発明の形質転換体を用いることができる。
【0122】
被験試料として、合成化合物、天然に存在するまたは人工的に合成された抗体、タンパク質、ペプチド、非ペプチド性化合物、糖質、脂質、本発明のポリペプチドをコードするDNAのアンチセンスDNAおよびそれらの修飾体、誘導体などの他に、例えば、哺乳動物(例えばマウス、ラット、モルモット、ハムスター、ブタ、ヒツジ、ウシ、ウマ、イヌ、ネコ、サル、ヒトなど)の尿、体液、組織抽出物、細胞培養上清、細胞抽出物、さらに発酵生産物、植物その他の生物の抽出物等を挙げることができるが、それらに限定されない。
【0123】
本発明のポリペプチドを発現する細胞を、例えば該細胞の増殖することのできる培地に懸濁し、被験試料を該培地に添加し、該細胞を接触させた後、該細胞の発現したポリペプチド含量を、上記3.記載のポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を用い、上記4.記載の方法に準じて定量する。被験試料を添加しない系と比較し、ポリペプチド含量を増加あるいは減少させることのできた被験試料を探索することにより、発現制御物質を同定することができる。
【0124】
(2)本発明の細胞死抑制遺伝子の転写産物の定量系を利用したスクリーニング法
本発明のポリペプチドを発現する細胞を被験試料と接触させた後、本発明の細胞死抑制遺伝子の転写産物を定量することにより発現制御物質を探索、同定することができる。
本発明のポリペプチドを発現する細胞および被験試料として、上記(1)記載のものを用いることができる。
【0125】
本発明のポリペプチドを発現する細胞を、例えば該細胞の増殖することのできる培地に懸濁し、被験試料を該培地に添加し、該細胞を接触させた後、該細胞の発現した細胞死抑制遺伝子の転写産物の量を、通常のノーザン・ブロット・ハイブリダイゼーション法、RNAのドット・ブロット・ハイブリダイゼーション法、RT−PCR法などを用い定量することができる。
【0126】
ハイブリダイゼーション法等に用いることのできるプローブおよびRT−PCR法等に用いることのできるプライマーとして、本発明の細胞死抑制遺伝子断片をあげることができ、具体的には配列番号7、8で示される塩基配列から選ばれる配列を有するDNA断片を好適に用いることができる。
被験試料を添加しない系と比較し、本発明の細胞死抑制遺伝子の転写産物含量を増加あるいは減少させることのできる被験試料を探索することにより、発現制御物質を同定することができる。
【0127】
(3)レポーター遺伝子を利用したスクリーニング法
本発明のポリぺプチドをコードする遺伝子の転写を制御する領域(以下、転写制御領域と略す)の下流にレポーター遺伝子の連結されたDNAを含むプラスミドで形質転換された形質転換体と被験試料とを接触させた後、レポーター遺伝子によりコードされたポリペプチドの発現量を定量することにより発現制御物質を探索、同定することができる。
【0128】
レポーター遺伝子としては、該遺伝子の翻訳産物が細胞内で安定であり、該翻訳産物の存在量が容易に定量できるものであればいかなるものでも用いることができ、例えば、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシダーゼ(β−gal)、ルシフェラーゼ(luc)、グリーンフルオレッセントプロテイン(GFP)等をあげることができる。
【0129】
被験試料として、上記(1)記載のものを用いることができる。
転写制御領域の下流に常法によりレポーター遺伝子を連結し、作製したプラスミドを用い、常法により宿主細胞を形質転換する。
該形質転換体を、例えば該細胞の増殖することのできる培地に懸濁し、被験試料を該培地に添加し、該細胞を接触させた後、該細胞の発現したレポーター遺伝子の転写産物の量を、該転写産物に適した方法で検出、定量する。
【0130】
検出、定量法として、CATの場合には、例えば、モレキュラー・クローニング 第2版,16章,60頁に記載の方法を、β−galの場合には、例えば、モレキュラー・クローニング 第2版,16章,66頁に記載の方法を、lucの場合には、例えば、実験医学別冊バイオマニュアルシリーズ4遺伝子導入と発現・解析法, 81(1994)に記載の方法を、GFPの場合には、例えば、Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 94, 4653 (1997)記載の方法等をあげることができる。
【0131】
被験試料を添加しない系と比較し、本発明の細胞死抑制遺伝子の転写産物含量を増加又は減少させることのできる被験試料を探索することにより、発現制御物質を同定することができる。
【0132】
7.本発明のポリペプチドおよびその関連物質の医薬等への利用
(1)本発明の抗細胞死抑制ポリペプチド抗体またはその抗体断片を用いる免疫学的測定法により、血液、臓器の一部、細胞等のサンプルでの細胞死抑制ポリペプチドの検出、定量を行うことができる。具体的に好適な手法としてはマイクロタイタープレートを用いるELISA法、蛍光抗体法、 ウェスタンブロット法などがあげられ、また病理組織切片を用いた免疫組織染色にも利用できる。
従って該抗体は細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド発現の増強又は低下に伴う、細胞死が促進されて引き起こされる疾患(例えば、糖尿病、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死)、細胞死が抑制されて引き起こされる疾患(例えば、悪性腫瘍、又は自己免疫疾患)の発生の可能性の診断に有用である。同様に該ポリペプチドを対象とした研究における研究用試薬としても有用である。
【0133】
(2)本発明のポリペプチドの全長または部分断片を生体に投与することにより細胞死の抑制が可能である。従って細胞死の進行に密接に関連して生ずる種々の疾患、例えば、糖尿病、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死等の治療薬、予防薬として有用である。
(3)本発明の細胞死抑制遺伝子をレトロウィルス、アデノウィルス等のウィルスベクターやその他のベクターに組み込み、遺伝子治療用ベクターとすることができる。この遺伝子治療用ベクターを用いることにより細胞死が促進されて引き起こされる疾患の治療に用いることができる。
【0134】
(4)本発明の細胞死抑制遺伝子を用いて、ノーザンハイブリダイゼーション法またはPCR法により、該遺伝子の発現量を測定し、細胞死が促進されて引き起こされる疾患(例えば、糖尿病、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死)、細胞死が抑制されて引き起こされる疾患(例えば、悪性腫瘍、又は自己免疫疾患)の発生の可能性の診断するとともに、該細胞死抑制遺伝子を前記疾患の発症抑制に利用することができる。
また、該細胞死抑制遺伝子の先天的な欠損により、細胞死が促進され、細胞死が促進されて引き起こされる疾患を生じやすくなった個体を、該細胞死抑制遺伝子を用いたサザン・ブロット・ハイブリダイゼーションやPCR法あるいはSSCP法により検出し、該検出された個体の核酸配列情報を基に遺伝子診断を行うことができる。更に該細胞死抑制遺伝子は遺伝子研究用試薬としても極めて有用である。
【0135】
(5)本発明の組換え体DNAを含む形質転換体は、本発明のポリペプチドの代替もしくは補助、又は本発明のポリペプチドに結合する物質、本発明のポリペプチドの有する活性を阻害する物質などのスクリーニングなどに使用できる。
【0136】
(6)本発明のポリぺプチドは、該ポリペプチドに結合する物質をスクリーニングするための試薬として有用である。
(7)本発明のポリぺプチドと該ポリペプチドに結合する物質とを用いて、該ポリぺプチドと該ポリペプチドに結合する物質の特異的結合を阻害する化合物のスクリーニングに用いることができる。
【0137】
(8)本発明のポリぺプチドと該ポリペプチドに結合する物質を利用し、該ポリペプチドと該ポリペプチドに結合する物質が結合した結果誘導される物質を探索、同定することができる。
(9)本発明のポリペプチドに結合する物質、本発明のポリペプチドに結合して該ポリペプチドの有する活性を阻害する物質、本発明のポリぺプチドと該ポリペプチドに結合する物質との特異的結合を阻害する物質、本発明のポリペプチドと該ポリペプチドに結合する物質が結合した結果誘導される物質は、本発明のポリぺプチドの細胞死抑制機能を代替もしくは補助、または阻害すると考えられ、これら物質を含む薬剤は、細胞死が促進されて引き起こされる疾患(例えば、糖尿病、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死)、細胞死が抑制されて引き起こされる疾患(例えば、悪性腫瘍、又は自己免疫疾患)のための診断薬、予防薬あるいは治療薬として有用である。
【0138】
(10)本発明のポリペプチドをコードする細胞死抑制遺伝子の発現を制御(増加又は抑制)する物質(発現制御物質)は、本発明のポリペプチド同様、細胞死が促進されて引き起こされる疾患(例えば、糖尿病、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死)、細胞死が抑制されて引き起こされる疾患(例えば、悪性腫瘍、又は自己免疫疾患)の治療、予防に有用である。
【0139】
(11)本発明のポリペプチドの細胞死を抑制する活性を阻害する物質としては、前述のスクリーニング法により得られた物質、本発明のDNAの塩基配列に基づいて調製したアンチセンス鎖DNAあるいは本発明の抗体またはその抗体断片などがあげられる。本発明の抗体またはその抗体断片の調製方法については前述のとおりである。
本発明のDNAの塩基配列に基づいて調製したアンチセンス鎖DNAは、以下の方法によって調製できる。
上述の方法で取得した本発明のDNAまたはDNA断片を用いて、モレキュラー・クローニング第2版等に記載の常法により、あるいは該DNAの塩基配列情報よりDNA合成機により、本発明のDNAの一部の配列を有するアンチセンス・オリゴヌクレオチド、センス・オリゴヌクレオチド等のオリゴヌクレオチドを調製することができる。
【0140】
該オリゴヌクレオチドとしては、上記DNAの有する塩基配列中の連続した5〜60塩基と同じ配列を有するDNAまたは該DNAと相補的な配列を有するDNAをあげることができ、具体的には、配列番号1又は3で表される塩基配列中の連続した5〜60塩基と同じ配列を有するDNAまたは該DNAと相補的な配列を有するDNAをあげることができる。センスプライマーおよびアンチセンスプライマーとして用いる場合には、両者の融解温度(Tm)および塩基数が極端に変わることのない上記記載のオリゴヌクレオチドが好ましい。具体的には、配列番号7,8等に示された塩基配列を有するオリゴヌクレオチドをあげることができる。
【0141】
更に、これらオリゴヌクレオチドの誘導体(以下、オリゴヌクレオチド誘導体という)も本発明のアンチセンス鎖DNAとして利用することができる。
該オリゴヌクレオチド誘導体としては、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスフォロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスフォアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合がペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine-modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、あるいはオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体等をあげることができる〔細胞工学, 16, 1463 (1997)〕。
【0142】
本発明のポリペプチドの細胞死を抑制する活性を阻害する物質は、細胞死が抑制されて引き起こされる疾患(例えば、悪性腫瘍、又は自己免疫疾患)の発生の診断、予防あるいは治療に有用である。
【0143】
8.細胞死抑制遺伝子が欠損または置換した遺伝子改変非ヒト動物、その作製法と利用法
細胞死抑制遺伝子の全部或いはその一部が欠損または置換した、不活性型または置換型細胞死抑制遺伝子を含むベクターを用い胚性幹細胞(embryonic stem cell)において染色体上の細胞死抑制遺伝子を公知の相同組換えの手法〔例えば、Nature, 326, 295 (1987)、Cell, 51, 503 (1987)等〕により不活化または任意の配列と置換した変異クローンを作成することができる〔例えば、Nature, 350, 243 (1991)〕。
【0144】
具体的には図16で示した遺伝子断片を用いることができる。ターゲティングベクターは以下のように造成できるが、これに限定するものではない。
図16のSpeI-SpeI断片(short arm:約1.5kb)、PGKneobpAカセット〔PGKプロータ-ネオマイシン耐性遺伝子-ウシ成長ホルモン遺伝子ポリアデニレーションシグナル配列からなるネオマイシン耐性遺伝子発現ユニット、 Cell, 64, 693 (1991)〕、図16のSmaI-KpnI断片(lomg arm:約6kb)、MC1/DT-Aカセット〔MC1プロモータとジフテリア毒素A鎖からなるジフテリア毒素A鎖発現ユニット、 Analytical biochemistry, 214, 77 (1993)〕を図16のTargeting vectorに示したように連結した断片を含有するpBluescriptIISK(-)を造成する。該ベクターをNotIなどで切断し線状化した後、TT2細胞[Analytical Biochemistry, 214, 70 (1993)]などのES細胞株に導入する。G418耐性を有するクローンよりPCR法またはサザンハイブリダイゼーション法により、相同組換えを起こして本細胞死抑制遺伝子のエクソン1部分が破壊されたクローンを選択する。
【0145】
このようにして作成した胚性幹細胞クローンを用い、動物の受精卵の胚盤胞(blastocyst)への注入キメラ法または集合キメラ法等の手法により胚性幹細胞クローンと正常細胞からなるキメラ個体を作成することができる。このキメラ個体と正常個体の掛け合わせにより、全身の細胞の本発明の細胞死抑制遺伝子に変異を有する個体を得ることができ、さらにその個体の掛け合わせにより相同染色体の双方に変異が入った、ホモ個体を得ることができる。
【0146】
このようにして動物個体において、細胞死抑制遺伝子の任意の位置へ変異の導入が可能である。例えば細胞死抑制遺伝子の翻訳領域中への塩基置換、欠失、挿入等の変異を導入することにより、その産物の活性を変化させることができる。またその発現制御領域への同様な変異の導入により、発現の程度、時期、組織特異性等を改変させることも可能である。さらにCre-loxP系〔 J. Clin. Invest., 98, 600 (1996)〕との組合せにより、より積極的に発現時期、発現部位、発現量等を制御することも可能である。このような例としては脳のある特定の領域で発現されるプロモータを利用して、その領域でのみ目的遺伝子を欠失させた例〔Cell, 87, 1317 (1996)〕やCreを発現するアデノウィルスを用いて、目的の時期に、臓器特異的に目的遺伝子を欠失させた例〔Science, 278, 5335 (1997)〕が知られている。
【0147】
従って本発明の細胞死抑制遺伝子についてもこのように任意の時期や組織で発現を制御できる、または任意の挿入、欠失、置換および/または付加をその翻訳領域や、発現制御領域に有する動物個体を作成することが可能である。このような動物は任意の時期、任意の程度または任意の部位で、細胞死と細胞死に伴って生ずる、細胞死が促進されて引き起こされる疾患(例えば、糖尿病、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死)の症状を誘導することができる。従って細胞死や上記の種々の疾患の治療や予防において極めて有用な動物モデルとなる。特にその治療薬、予防薬、また機能性食品、健康食品等の評価用モデルとして非常に有用である。
【0148】
上記遺伝子改変非ヒト動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞と被験化合物を接触させ、被験化合物の中から該動物、あるいは該動物の臓器、組織または細胞の動態を変化させる被験化合物を選択することにより、細胞死の抑制あるいは促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬のスクリーニングを行うことができる。
上述の如く、これらスクリーニング方法により得られる物質は、細胞死が促進されて引き起こされる疾患(例えば、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死)、細胞死が抑制されて引き起こされる疾患(例えば、糖尿病、悪性腫瘍、又は自己免疫疾患)の治療、予防に有用である。
【0149】
9.本発明のポリペプチドの活性を制御する細胞死の制御方法
本発明において、ポリペプチドの活性を制御するとは、その活性を抑制する場合あるいは促進する場合を意味する。
本発明のポリペプチドの活性を抑制する場合には、上記本発明の抗体またはその抗体断片、上記アンチセンス鎖DNA、上記スクリーニングで得られた物質等を用いて行うことができる。
本発明のポリペプチドの活性を促進する場合には、本発明のポリペプチド、本発明のDNA、本発明の組換え体DNA、上記スクリーニングで得られた物質等を用いて行うことができる。
【0150】
10.本発明のマウスproB細胞由来のBa/F3−Ad細胞
Ba/F3−Ad細胞は、IL−3がなくとも培養下で生存及び/又は増殖でき、培養下の培養器上の細胞外マトリックスに接着可能な性質を有するマウスproB細胞由来の細胞株である。このBa/F3−Ad細胞は、細胞内のH−Ras分子が活性化状態にあることが好ましい。
これらのBa/F3−Ad細胞は、親株であるIL-3依存性マウスproB細胞株Ba/F3(理研ジーンバンク cell number:RCB0805)細胞を培養している中で、培養器に接着しているものを選択し、それを取りだして、更にIL-3の非存在下で培養し、生存あるいは増殖する細胞を選択することで作成することができる。
具体的には、Ba/F3細胞を通常の培地[0.1ng/mlマウスIL-3(R&Dsystems社製)を添加した、10%FCS含有RPMI-1640(ナカライテスク社製)]で培養し、細胞皿に付着した細胞のみを分離し、分離された細胞を10%FCS含有RPMI-1640で培養することにより、Ba/F3-Ad細胞を単離することができる。
本発明のBa/F3−Ad細胞は、上記の如く、細胞死についての研究、細胞接着のメカニズムの研究等の材料として特に有用である。
【0151】
11.本発明の医薬
本発明の医薬において、細胞死が促進されて引き起こされる疾患、細胞死が抑制されて引き起こされる疾患としては、以下の疾病があげられる。具体的には、アポトーシスによる過剰な細胞死が発症に関わる疾患として、例えば劇症肝炎やその他のウイルス疾患、アルツハイマー病などの神経変性疾患、放射線障害などがあげられ、逆にアポトーシス抑制が発症に関わる疾患として、例えば胃癌、卵巣癌、乳癌、膵癌、前立腺癌等の悪性腫瘍や自己免疫疾患などがあげられる。また、糖代謝制御シグナルの異常によって生じる疾患として、糖尿病等があげられる。
さらに、本発明の医薬は、脳、心臓などの虚血時における細胞死抑制剤、
抗癌剤や放射線治療時における正常細胞の細胞死からの保護剤、または抗癌剤等の既存の治療薬の効果を増強する薬剤として使用される。
【0152】
抗癌剤としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍性抗生物質、植物アルカロイドがあげられ、さらに具体的には、ブスルファン (busulfan)、シクロフォスファミド (cyclophosphamide)、イホスファミド (ifosphamide)、メルファラン (melphalan)、ニトロソウレア (nitrosourea)、アムサクリン (amsacrine)、カルボプラチン (carboplatin)、シスプラチン (cisplatin)、ダカルバジン (dacarbazine)、アザシチジン (azacitidine)、クラドリビン (cladribine)、シタラビン (cytarabine)、フルダラビン (fludarabine)、フルオロウラシル (fluorouracil)、ヒドロキシウレア (hydroxyurea)、ロイコボリン (leucovorin)、メトトレキサート (methotrexate)、アクチノマイシンD (actinomycin D)、ブレオマイシン (bleomycin)、ダウノルビシン (daunorubicin)、ドキソルビシン (doxorubicin)、マイトマイシンC (mitomycin C)、ミトキサントロン (mitoxantrone)、エトポシド (etoposide)、パクリタキセル (pacritaxel)、テニポシド (teniposide)、ビンブラスチン (vinblastine)、ビンクリスチン (vincristine)、ビンデシン (vindesine)、ゲルダナマイシンおよびラディシコールがあげられる。
【0153】
これらの抗癌剤と同時に本発明の活性成分を患者に投与することも可能であるし、別々の容器に封入した組み合わせ(キット)として、スケジュールを決めて別々に投与することも可能である。また、本発明の活性成分に、スペーサーを介して上記の抗癌剤を結合させて生体へ投与してもよい。
患者への投与方法としては、活性成分であるポリぺプチドをコードする遺伝子を挿入させた遺伝子治療用に調製した組換えベクターを、患者から取り出した細胞に導入させた後、細胞を生体内に戻す方法、レトロウィルス、アデノウィルス、アデノ随伴ウィルス、単純ヘルペスウィルス、レンチウィルス、センダイウィルス等のウィルスベクターに乗せて生体に投与する方法、リポソームなどの人工的なビークル構造に封入して生体に投与する方法、活性成分であるポリペプチドに細胞内への導入効率を高めるペプチド断片、例えば実施例に記載されたTATペプチド [Science, 285, 1569-1572 (1999)] などを融合させて生体に投与する方法などがあげられる。
抗癌剤と本発明の活性成分の投与比、投与スケジュールは、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度を考慮して決定される。
【0154】
本発明の活性成分は、医薬製剤として、単独で、あるいは任意の他の治療のための有効成分との混合物として含有することができる。また、それら医薬製剤は、活性成分を薬理学的に許容される一種もしくはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造される。
【0155】
投与経路は、治療に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口または、例えば静脈内などの非経口をあげることができる。
【0156】
投与形態としては、錠剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、注射剤などがある。
【0157】
経口投与に適当な、例えばシロップ剤のような液体調製物は、水、蔗糖、ソルビット、果糖などの糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油などの油類、p-ヒドロキシ安息香酸エステル類などの防腐剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミントなどのフレーバー類などを使用して製造できる。また、錠剤、散剤および顆粒剤などは、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニットなどの賦形剤、澱粉、アルギン酸ソーダなどの崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルクなどの滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、ゼラチンなどの結合剤、脂肪酸エステルなどの界面活性剤、グリセリンなどの可塑剤などを用いて製造できる。
【0158】
非経口投与に適当な製剤は、好ましくは受容者の血液と等張である活性化合物を含む滅菌水性剤からなる。例えば、注射剤の場合は、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩水とブドウ糖溶液の混合物からなる担体などを用いて注射用の溶液を調製する。
【0159】
また、これら非経口剤においても、経口剤で例示した希釈剤、防腐剤、フレーバー類、賦形剤、崩壊剤、滑沢剤、結合剤、界面活性剤、可塑剤などから選択される1種もしくはそれ以上の補助成分を添加することもできる。
【0160】
本発明の活性成分の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度により異なるが、通常経口の場合、成人一人当り0.01 mg〜1 g、好ましくは0.05〜50 mgを一日一回ないし数回投与する。静脈内投与などの非経口投与の場合、成人一人当り0.001〜100 mg、好ましくは0.01〜10 mgを一日一回ないし数回投与する。しかしながら、これら投与量および投与回数に関しては、前述の種々の条件により変動する。
【0161】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明の内容がこれらに限定されるものではない。
遺伝子操作的手法は特に断らない限り公知のモレキュラー・クローニング 第2版及び「実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック」(1996年、4月20日発行)(羊土社)に記載されている方法により行った。
本発明において使用したアミノ酸およびその保護基に関する略号は、生化学命名に関するIUPAC-IUB委員会(IUPAC-IUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature)の勧告〔ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(European Journal of Biochemistry),138 巻,9 頁(1984 年)〕に従った。
以下の略号は、特に断わらない限り対応する下記のアミノ酸を表す。
【0162】
Ala: L-アラニン
Asn: L-アスパラギン
Asp: L-アスパラギン酸
Asx: L-アスパラギン酸またはL-アスパラギン
Arg: L-アルギニン
Cys: L-システイン
Gln: L-グルタミン
Glu: L-グルタミン酸
Glx: L-グルタミン酸またはL-グルタミン
Gly: グリシン
Ile: L-イソロイシン
Leu: L-ロイシン
Lys: L-リジン
Phe: L-フェニルアラニン
Pro: L-プロリン
Ser: L-セリン
Thr: L-スレオニン
Met: L-メチオニン
Val: L-バリン
【0163】
以下の略号は、対応する下記のアミノ酸の保護基および側鎖保護アミノ酸を表す。
【0164】
Fmoc: 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル
tBu: t-ブチル
Trt: トリチル
Boc: t-ブチルオキシカルボニル
Pmc: 2, 2, 5, 7, 8-ペンタメチルクロマン-6-スルフォニル
Fmoc-Arg(Pmc)-OH: Nα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-Ng-2,2,5,7,8-ペンタメチルクロマン-6-スルホニル-L-アルギニン
Fmoc-Asn(Trt)-OH: Nα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-Nγ-トリチル-L-アスパラギン
Fmoc-Asp(OtBu)-OH: Nα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-L-アスパラギン酸-β-t-ブチルエステル
Fmoc-Cys(Trt)-OH: Nα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-S-トリチル-L-システイン
Fmoc-Gln(Trt)-OH: Nα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-Nε-トリチル-L-グルタミン
Fmoc-Glu(OtBu)-OH: Nα−9−フルオレニルメチルオキシカルボニル-L-グルタミン酸-γ-t-ブチルエステル
Fmoc-Lys(Boc)-OH: Nα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-Nε-t-ブチルオキシカルボニル-L-リジン
Fmoc-Ser(tBu)-OH: Nα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-O-t-ブチル-L-セリン
Fmoc-Thr(tBu)-OH: Nα-9-フルオレニルメチルオキシカルボニル-O-t-ブチル-L-スレオニン
【0165】
以下の略号は、対応する下記の反応溶媒、反応試薬等を表す。
【0166】
HBTU: 2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウム・ヘキサフルオロホスフェート
HOBt: N-ヒドロキシベンゾトリアゾール
DIEA: ジイソプロピルエチルアミン
DMF: N,N-ジメチルホルムアミド
TFA: トリフルオロ酢酸
【0167】
以下の実施例において、化合物の理化学的性質は次の方法により測定した。
質量分析は、日本電子JMS-HX110Aを用いFAB-MS法により、もしくはブルカー社質量分析装置REFLEXを用いMALDI-TOFMS法により行った。行った。アミノ酸分析は、コーエン(Cohen, S. A.)らの方法[アナリティカル・バイオケミストリー (Analytical Biochemistry), 222, 19 (1994)]により行った。加水分解は塩酸蒸気中110℃で20時間行い、加水分解物のアミノ酸組成はウォーターズ・アキュ・タグ(Waters AccQ-Tag)アミノ酸分析計(Waters社製)を用い分析した。
【0168】
実施例1.マウス遺伝子の単離
IL-3依存性マウスproB細胞株Ba/F3(理研ジーンバンク cell number:RCB0805)から、IL-3非依存性増殖能を示す亜株であるBa/F3-Ad細胞を分離し、樹立した。
【0169】
Ba/F3細胞は、通常の培養に用いる培地[0.1ng/mLマウスIL-3(R&D systems社製)を添加した10% FCS RPMI-1640液(ナカライテスク株式会社製)中で培養した。Ba/F3細胞は、通常は浮遊しているが、培養中培養皿に付着している細胞が観察された。培養皿に付着した細胞のみを分離するために、浮遊している細胞及び培地を培養皿から捨てた。分離された細胞を10%FCS RPMI-1640液のみで培養することにより、親株のBa/F3から接着性の細胞を分離、純化した。この接着性の細胞を亜株Ba/F3-Ad細胞と命名した。亜株Ba/F3-Ad細胞は、培養皿に付着する性質、詳しくは細胞外マトリックスであるフィブロネクチンに結合する性質を有しており、培養皿に付着しつつ増殖していた。また、IL-3非存在下で生存または増殖しているが、IL-3存在下では増殖が促進される。
【0170】
Ba/F3-Ad株がIL-3非依存性細胞となった原因遺伝子を調べるために、発現クローニング法(Expression Cloning)(例えば、「実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック」(1996年、4月20日発行)、5章、245〜249頁(羊土社)に記載の方法に従って行うことができる)を行った。発現クローニング法は、以下の手順で行う。すなわち、Ba/F3-Ad細胞から常法によりcDNAライブラリーを作製し、該cDNAライブラリーをレトロウィルスベクターpBabeX(Proc. Natl. Acad. Sci. USA: Vol. 92, 9146-9150, 1995)に組み込み、パッケージング細胞により、高い力価のウィルス液を作製した。該ウィルス液を親株Ba/F3に感染させることにより、Ba/F3-Ad細胞から得られた遺伝子(cDNA)をBa/F3に導入することになる。
その後、遺伝子導入したBa/F3細胞の培養液からIL-3を除去することにより、IL-3非依存化させる遺伝子(cDNA)が導入された細胞は、生き残るが、それ以外は、死んでいくことになる。このようにして得られた生き残りBa/F3クローンから、導入したcDNAを回収し、該cDNAの配列を解析することにより、Ba/F3-Ad細胞がIL-3非依存性となった原因遺伝子を単離した。
得られた遺伝子配列をDNAデータベースにて比較することによって、新規の遺伝子配列であることが判明した。
【0171】
以下に実験方法の詳細を示す。
(1) cDNAライブラリーの作製:
Ba/F3-Ad細胞から10μgのmRNAを抽出し(RNA Maxiprep, Oligotex poly A mRNA purification; Qiagen)、cDNAライブラリー作製キット(cDNA Synthesis Kit; Stratagene)を用いて、該mRNAよりライブラリーを作製した。5×105のクローンを含む平均長約1.5KbのcDNAライブラリーを作製した。
(2) ウィルス液の作製とBa/F3への感染:
北村らの方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 92, 9146-9150 (1995)〕に準じ、Ba/F3-Ad細胞から作製したcDNAをレトロウィルスベクターpBabeXに組み込み、BOSC23パッケージング細胞(ATCC CRL 11554)を用いて、ウィルス液を作製した。そのウィルス液を親株のBa/F3細胞に感染させることにより、遺伝子導入をおこなった。
【0172】
(3) IL-3非依存性Ba/F3クローンの選択:
Ba/F3細胞は、IL-3依存性の細胞である。したがって、Ba/F3細胞を培養している培地からIL-3を除去すると、急速なアポトーシスにより、Ba/F3細胞は死ぬ。そこで、上記(2)で得られたウィルス液をBa/F3細胞に感染させることにより、各種遺伝子を導入したBa/F3細胞をIL-3を含まない培地に培養する。該培地からIL-3を除去することにより、目的の遺伝子(cDNA)が導入されたBa/F3細胞株は生き残るが、それ以外のBa/F3細胞はすべて死ぬ。この方法を用いることにより、IL-3非依存性となったBa/F3クローンを選択した。
【0173】
(4) cDNAの単離と配列決定:
cDNAをウィルスベクターpBabeXに組み込んだ。組み込む際に、cDNAの組み込まれる位置は決まっているので、DNAを組み込んだ両端の塩基配列をもとに、配列番号5および6で示される塩基配列を有するプライマーを設計し、合成DNAを作製した。IL-3非依存性となったBa/F3クローンから、ゲノムDNAを抽出し、ゲノムDNAを鋳型として、PCRを行なった。増幅されたPCR産物であるcDNAを精製し、direct sequenceを行なった(Applied Biosystems)。これにより、ポリA配列を除く1505塩基のcDNAの塩基配列(そのうち、コード領域(coding region)は930塩基(終始コドンを含む)で、配列番号1の40番〜969番)が明らかとなった。その塩基配列を配列番号1に、該塩基配列のコード領域にコードされたアミノ酸配列を配列番号2にそれぞれ示す。配列番号1に示される塩基配列について、DNAデータバンク(http://www.ddbj.nig.ac.jp)サイトにて検索したところ、既知の遺伝子とは一致せず、新規の遺伝子であった。また、ホモロジー検索によって、シークエンスのみ行われ、機能が不明であるヒトの遺伝子(16番染色体長腕上にある遺伝子)と非常に相同性が高かった。本発明のポリペプチドをアナモルシン(Anamorsin:以下、AMとも略記する)と命名し、アナモルシンの遺伝子をAM遺伝子とも略記する。
【0174】
(5) 抗アポトーシス機能:
上記(4)で得られたcDNAを発現ベクターであるpCDNA3(Invitrogen社製)に組み込んだ後、該発現ベクターをエレクトロポレーションにより、親株Ba/F3細胞に導入し、AM遺伝子を強制発現させた。AM遺伝子を強制発現しているBa/F3細胞(Ba/F3/AM)を用いて、培養培地からIL-3を除去した後の細胞について検討した。アポトーシスの指標となる、酵素キャスパーゼの活性状態を検査するキャスパーゼアッセイ(Caspase Assay)と、DNA量を検査するPI染色(PI Staining)を行った。キャスパーゼアッセイは、キャスパーゼアッセイキット(医学生物学研究所製)を用い、そのマニュアルに従って検査した。PI染色は、通常の方法により、PI(Propidium iodide)により細胞を染色した。それらの結果を図1と図2に示す。図1と図2において左側の時間(0時間(Hr)から48時間(Hr))は、培養からIL−3を抜いた時からの経過時間を表す。
【0175】
図1において、コントロールBa/F3細胞(発現ベクターpCDNA3のみ導入したBa/F3細胞)は、IL−3を抜いた当初から酵素キャスパーゼの活性状態であるのに対して、AM遺伝子を強制発現しているBa/F3細胞(AM-gene transfected Ba/F3)は、しばらく酵素キャスパーゼの不活性状態である。
図2において、コントロールBa/F3細胞は、時間とともに低分子DNAが増加しているのに対して、AM遺伝子を強制発現しているBa/F3細胞は、低分子DNAが殆ど増加しない。
従って、AM遺伝子を強制発現しているBa/F3細胞は、コントロール(発現ベクターpCDNA3のみ導入したBa/F3細胞)と比較して、有意に細胞死が抑制され、その細胞死がアポトーシスであることがわかった。
【0176】
また、Ba/F3細胞と同様にIL-3依存性であるマウス骨髄系細胞32D(理研ジーンバンク cell number: RCB1145)を用いて同様の検討を行なったところ、やはりAM遺伝子を導入、強制発現させた32Dクローン(32D/AM)では、IL-3除去後の細胞死が有意に抑制された。
ただし、AM遺伝子は、いずれの細胞においても細胞増殖を起こす機能は有さず、細胞死抑制すなわち、抗アポトーシス機能を有していた。
【0177】
配列番号2で示されるアミノ酸配列からなる本発明のポリペプチドは、ヒトの第16染色体の長腕に存在する遺伝子にコードされているポリペプチドとアミノ酸配列で約80%の相同性を示していた。本発明のポリペプチドは、細胞死を抑制する活性を有していた。したがって、ヒトの第16染色体の長腕に存在する遺伝子にコードされているポリペプチドは本発明のポリペプチドと同様の機能、すなわち細胞死を抑制する活性を有するポリペプチドであると考えられる。
【0178】
実施例2.アナモルシン(AM)の発現
(1)ノーザンブロッティングによる解析1
AM遺伝子の発現について、BamHIサイトで切り出したDNA断片(BamHI−DNAと略記する)をプローブとして、ノーザンブロッテイング(NB)解析を行なった。NB解析は、「実験医学別冊 新遺伝子工学ハンドブック」(1996年、4月20日、羊土社発行)に記載の方法に準じて行った。
プローブとして切り出したDNA断片(BamHI−DNAと略記する)は、配列番号1の塩基294番目〜603番目の配列からなるDNA断片を用いた。各細胞からRNAをトリゾール(Trizol;Gibco BRL製)により抽出し、それを上記プローブとハイブリッド形成させた。ハイブリッド溶液としてRAPID HYB BUFFER(アマシャム社製)を用い、65℃で3時間ハイブリッド形成させた。
【0179】
まず最初に、Ba/F3細胞とBa/F3-Ad細胞でのAM遺伝子の発現をみた。
Ba/F3細胞とBa/F3-Ad細胞を各培養培地中でそれぞれ培養し、Ba/F3細胞およびBa/F3-Ad細胞からRNAを抽出した後、AM遺伝子の発現をノーザンブロッティングで確認した。その結果を図3に示す。その結果両方ともAM遺伝子の発現が認められた。
次に、Ba/F3細胞とBa/F3-Ad細胞を各培養培地中でそれぞれ培養し、各培養培地中のIL-3を除去後12時間経過したBa/F3細胞およびBa/F3-Ad細胞からRNAを抽出した後、AM遺伝子の発現をノーザンブロッティングで確認した。Ba/F3細胞ではAM遺伝子の発現を示すバンドが消失したのに対し、Ba/F3-Ad細胞ではAM遺伝子の発現が認められた。
以上より、実施例1でクローニングされたAM遺伝子がIL-3除去後のBa/F3細胞のアポトーシスを抑制する活性を有することが示された。
【0180】
(2)各種臓器や細胞でのAM遺伝子発現
(正常臓器でのAM遺伝子発現)
正常臓器でのAM遺伝子発現について、まず、ヒトの種々の臓器から得たmRNA(クローンテック社製)を用いて、上記(1)と同様にNB解析した。プローブとしては、配列番号1の塩基481番目〜745番目の配列からなるDNA断片を用いた。その結果を図4に示す。図4に示すようにAM遺伝子はユビキタスに発現しており、特に心臓、肝臓、膵臓において強い発現がみられた。
【0181】
次に、マウスの種々の臓器(図5)あるいはマウス胚(図6)から調製したcDNA(クローンテック社製)を用いて、RT-PCR法によりAM遺伝子発現を観察した。RT-PCR法に用いたプライマーは、配列番号7および8に示される塩基配列のプライマーを用いた。図5を見るとマウスの種々の臓器でも、ヒトと同様にユビキタスに発現がみられた。また、図6を見ると、7日目のエンブリオですでにAM遺伝子の発現が認められたことから、胎生初期から発現している分子であることがわかった。図4〜6におけるβ−アクチンとGAPDHは、インターナルコントロールである。
【0182】
(造血系細胞株と造血器腫瘍患者から得られた腫瘍細胞でのAM遺伝子発現)
造血系細胞株と造血器腫瘍患者から得られた腫瘍細胞から得たmRNAを用いて、上記(1)と同様にNB解析した。プローブとしては、配列番号1の塩基481番目〜745番目の配列からなるDNA断片を用いた。その結果を図7及び8に示す。
造血系細胞株としては、Ba/F3細胞(レーン1)、UT−7細胞〔レーン2;Miura Y., et al., Prog. Clin. Biol. Res., 356, 259-270 (1990)〕、Mo7e細胞〔レーン3;Avanzi GC., et al., (Br. J. Haematol., 69, 359-366, (1988)〕、TF−1細胞〔レーン4;ECACC 93022307/ Exp. Cell Res., 208(1), 35, (1993)〕、HL−60細胞(レーン5;ATCC CCL 240)、U937細胞(レーン6;ATCC CRL 1593)、THP−1細胞(レーン7;ATCC TIB 202)、K−562細胞(レーン8;ATCC CCL 243)、HEL細胞〔レーン9;Science, 216 1233 (1982)〕、CMK細胞〔レーン10; Sato T., et al., Br. J. Haematol., 72, 184-190 (1989)〕、Meg−01細胞〔レーン11;Ogura M., et al., Blood, 66, 1384-1392, (1985)〕、Jurkatt細胞(レーン12;ATCC TIB-152)、Molt−4細胞(レーン13;ATCC CRL 1582)、YTC−3細胞〔レーン14;Yodoi J., et al., J. Immunol, 134, 1623-1630 (1985)〕、Daudi細胞(レーン15;ATCC CCL 213)、Raji細胞(レーン16;ATCC CCL 86)、RPMI−8226細胞(レーン17;ATCC CCL 155)、ARH−77細胞(レーン18;ATCC CRL 1621)、U266細胞(レーン19;ATCC TIB-196)、KM101細胞〔レーン20;Academy of Sciences of the United States of America, 82, 3477-3480 (1985)〕を用いた。
【0183】
造血器腫瘍患者から得られた腫瘍細胞としては、急性骨髄性白血病(AML)の腫瘍細胞(レーン2〜4)、急性リンパ性白血病(ALL)の腫瘍細胞(レーン5、6)、成人T細胞性白血病(ATL)の腫瘍細胞(レーン7)、非ホジキン悪性リンパ腫(NHL)の腫瘍細胞(レーン8、9)、骨髄異形成症候群(MDS)からAMLへの移行例(MDS overt AML)の腫瘍細胞(レーン10,11)、正常末梢血単核球(PBMNC)の細胞(レーン12)を用いた。参考としてBa/F3細胞(レーン1)を示した。
【0184】
図7の結果から、造血系細胞株では、正常細胞でのAM発現は弱いが、種々の造血器腫瘍細胞株(Myeloid, Erythroid, Megakaryocytic, T cell, B cell, Plasma cell)では、強く発現している細胞株もあった。また、図8の結果から、白血病、悪性リンパ腫などの造血器腫瘍患者から得られた白血病細胞、悪性リンパ腫細胞などで、強く発現している例を認めた。
【0185】
実施例3.AM発現誘導
(1)H-RasによるAM発現誘導
Ba/F3-Ad細胞について、さらに解析をすすめたところ、H-Ras分子が活性化されている状態であることが判明した。具体的には、Rasアッセイを、Methods in Enzymology, 238, 255-258(1994)に記載の方法に準じて行った。具体的なRasアッセイの方法としては以下の方法を用いた。
Ba/F3細胞及びBa/F3-Ad細胞を32Pでラベルされたオルソリン酸(1mCi)で1時間インキュベートした。次に、それぞれの細胞について0.1ng/mlのIL−3存在下あるいはIL−3非存在下の培養液でそれぞれ10分間培養した。各々の細胞を107細胞ずつ採取し、それぞれの細胞を溶解させた。各細胞溶解液において抗H−Ras抗体(Santa Cruz社製)1μg/1検体を用いて、免疫沈降を行った。その免疫沈降検体からGTPあるいはGDPを溶出し、その溶出液を薄層クロマトグラフィーで展開し、最後にオートラジオグラフィーを行った。その結果を図9に示す。図9を見ると、Ba/F3-Ad細胞は、IL−3存在下あるいはIL−3非存在下のいずれにおいてもGTPのシグナルが強いことにより細胞内のH−Rasが活性状態であった。
【0186】
IL-3、Epo、Tpo、SCFなどのサイトカイン刺激によって、細胞内のH-Rasが活性化されることが知られていることから、AMはH-Rasによって、発現誘導される可能性があると考えられた。そこで、H-RasによるAMの発現が誘導されるか否かを調べた。
【0187】
これを証明するのに、constitutively active H-Ras(Upstate Biotechnology社製)を強制発現させた。具体的には、Blood, 93, 1540-1548(1999)に記載の方法に準じて、constitutively active H-Rasの遺伝子を発現プラスミドベクターに組み込み、上述のBa/F3細胞に遺伝子導入し、強制発現させた。Ba/F3細胞の培地からIL-3を除去したときのAM遺伝子発現を上記と同様にNBにより解析を行った。その結果を図10に示す。
図10に示したように、その親株Ba/F3細胞(強制発現させてないもの)では、IL-3除去後12時間で、AM遺伝子が消失するのに対し、constitutively active H-Ras を強制発現させたBa/F3では、IL-3除去後36時間経過してもAM遺伝子の発現が維持されていた。
また、dominant-nagative H-Ras の発現をIPTG添加によって誘導できるBa/F3細胞において、IL-3存在下で、dominant-nagative H-Ras の発現誘導を行い、AM遺伝子発現を上記と同様にNBにより解析を行った。その結果を図11に示す。dominant-nagative H-Ras の発現をIPTG添加によって誘導できるBa/F3細胞は、J Biol Chem, 275, 24096-24105, 2000に記載の方法に従って作製した。Lac Switch II 誘導発現システム(Stratagene社製)を用い、IPTG添加によってBa/F3細胞にdominant-nagative H-Ras の発現誘導を行った。図11に示したように、dominant-nagative H-Ras の発現誘導されたBa/F3細胞は、AM遺伝子の発現が時間とともに減弱した。
【0188】
(2)サイトカインによるAM発現誘導
IL-3を除去したBa/F3細胞を培養した培地に、再度IL-3を添加したときのBa/F3細胞でのAM遺伝子の発現について、上記実施例2の(1)に示したNBの方法により解析を行った。その結果を図12に示す。その結果、Ba/F3細胞は、刺激後3時間頃より、AM遺伝子の発現がみられはじめた。
【0189】
次に、各種サイトカインによるAM遺伝子の発現について、上記実施例2の(1)に示したNBにより解析を行った。
Ba/F3細胞に、ヒト エリスロポイエチン(Epo)レセプター〔Blood, 76, 1-5 (1990), Blood, 76, 24-30 (1990)〕、マウス トロンボポイエチン(Tpo)レセプター〔EMBO J., 12, 2645-53 (1993), Oncogene, 8, 2607-15 (1993)〕、Stem cell factor(SCF)レセプター〔Cell 63, 213-24 (1990), Cell 63, 203-11 (1990)〕、G-CSF/gp130キメラレセプター〔J. Biol. Chem., 269, 16297-304 (1994) , Immunity 5, 449-60 (1996)〕
をそれぞれ発現させたBa/F3細胞を作製した。
【0190】
その細胞のIL-3除去した状態から、それぞれ、Epo 5μg/ml、Tpo(30ng/ml)、SCF(100ng/ml)、G-CSF(100ng/ml)で刺激した。そのNBの結果を図13に示す。図13の横軸はIL-3刺激後の経過時間を表す。IL-3刺激と同様に刺激後3時間頃より発現がみられた。
以上より、AM遺伝子は、種々のサイトカイン刺激によって、発現が誘導されることがわかった。
以上のことから、種々のサイトカイン刺激によるAM分子の発現は、H-Rasを介したシグナル伝達によって、誘導されることが明らかとなった。また、AM分子と関わるH-Rasは、細胞の増殖ばかりでなく、AM分子を介し、細胞の生存にも関わっていると考えられる。
【0191】
実施例4.AM分子と既知の抗アポトーシス分子Bcl-2との関係
AM分子が、抗アポトーシス作用を示す作用機序について検討した。
AM遺伝子を強制発現させたBa/F3細胞株(Ba/F3/AM)および親株Ba/F3細胞の培地中のIL-3を除去してから0、6,12,18、24、30、36時間後の、既知の抗アポトーシス分子であるBcl-2についてノーザンブロット解析(図14)とウェスターンブロット解析(図15)を行った。ノーザンブロット解析とウェスターンブロット解析は、Blood, 93, 1540-1548 (1999)に記載の方法に準じて行った。尚、ウェスタンブロット解析で用いたBcl-2の抗体は、Transduction Laboratory社製を用いた。
【0192】
その結果を図14と15に示す。図14に示したように、親株Ba/F3細胞では、IL-3除去後、Bcl-2のmRNAは、どちらも12時間で完全に消失するが、Ba/F3/AM細胞(AM-gene Transfected Ba/F3)では、36時間を経過しても、Bcl-2のmRNA発現が維持されていた。また、図15に示したように、Ba/F3細胞は、Bcl-2の蛋白質は、どちらも24時間で消失するのに対して、Ba/F3/AM細胞では、36時間を経過してもBcl-2の蛋白質が維持されていた。
以上のことから、AM分子のアミノ酸配列は、そのホモロジー検索から、既知の抗アポトーシス分子であるBcl-2とホモロジーを示さないが、Bcl-2の発現を維持することを介して、抗アポトーシス作用を示す可能性が示唆された。
【0193】
実施例5.遺伝子改変動物作成用のターゲットベクターの調製
1.ゲノミックDNA(genomic DNA)の入手:
λFIX II(ファージ;Stratagene社製)にマウスゲノミックDNA(マウスstrain;129SVJ、ゲノミックDNAの長さは、9-23Kb)を挿入したファージライブラリー〔Kawagoe K., et al. Genomics vol. 23, 566-574(1994)に記載の方法に準じて作成した。〕から、non-RI(ジゴキシゲニンシステム:Roche社製)でラベルしたAnamorsin-cDNA全長をプローブとし、プラークハイブリダイゼーション(方法は、バイオ実験イラストレイテッド4巻、第4章、125-163ページ:秀潤社に準ずる。)によって、目的遺伝子のマウスゲノミックDNA断片を含むファージをスクリーニングし、3クローンのファージを得た。
【0194】
2.Anamorsin-genomic DNAのシークエンスと制限酵素地図の作成:
得られた3クローンのファージからゲノミックDNA断片(13−20Kbの長さ)をベクタープラスミドであるpBSIISK(+)(Stratagene社製)に組み込み、BamH I、HindIII、SpeI、Sma I、Pst I(Promega社製)などのさまざまな制限酵素によるdigestionおよびnon-RI(ジゴキシゲニンシステム:Roche社製)でラベルしたAnamorsin-cDNAをプローブに用いたサザン法(方法は、バイオ実験イラストレイテッド2巻、第8章、137-152ページ:秀潤社に準ずる。)による解析、シークエンサー(Applied Biosystems社製)により目的遺伝子のexonの位置関係と制限酵素サイトを決定し、薬剤耐性遺伝子にて置換する領域(本実験では、exon1を欠失させることにした。)と、その前後で組換えをおこさせる為の5'および3' 相同領域、および致死遺伝子の挿入箇所、組換え体を選別するためのPCRプライマーとサザン法のプローブの位置を決定した。
【0195】
3.ターゲットベクターの作製:
薬剤耐性遺伝子としてPGKneobpAカセット〔PGKプロータ-ネオマイシン耐性遺伝子-ウシ成長ホルモン遺伝子ポリアデニレーションシグナル配列からなるネオマイシン耐性遺伝子発現ユニット、 Cell, 64, 693 (1991)〕、 致死遺伝子としてMC1/DT-Aカセット〔MC1プロモータとジフテリア毒素A鎖からなるジフテリア毒素A鎖発現ユニット、 Analytical biochemistry, 214, 77 (1993)〕を使用し、pBSIISK(+)をベースにつなぎ合わせ、ターゲットベクター(targeting vector)を作製した(図16参照)。以下、通常のノックアウトマウスを作製する方法に準じてノックアウトマウスを作製することができる。
【0196】
実施例6 マウスアナモルシン抗原ペプチドの調製
1. 抗原の調製
蛋白配列を解析し、親水性の高い部分、N末端、C末端、二次構造上ターン構造、ランダムコイル構造を有する部分の中から、抗原として適当と考えられる部分アミノ酸配列として、化合物1(mAd-1)、2(mAd-2)、3(mAd-3)、4(hAM-1)、5(hAM-2)、6(hAM-3)を選択した。
【0197】
1-1化合物1(mAd-1)(配列番号9)(H-Cys-Leu-Phe-Leu-Lys-Glu-Pro-Val-Glu-Thr-Ala-Glu-Val-Asn-Asn-Asp-Lys-Met-Lys-Thr-Ala-Ser-Lys-Leu-NH2)の合成化合物1は、配列番号2で示されるアミノ酸配列の92〜115番目のアミノ酸配列に対応するペプチドである。
Fmoc-NH、17μmol が結合した担体樹脂(NovaSyn TGR resin樹脂、ノバビオケム社製)80mg を自動合成機(島津製作所)の反応容器に入れ、600μlのDMFを加えて3分間攪拌し溶液を排出した後、島津製作所の合成プログラムに従い次の操作を行った。
【0198】
(a)30% ピペリジン-DMF 溶液500μl を加えて混合物を 4 分間攪拌し、該溶液を排出し、この操作をもう 1 回繰り返した。
(b)担体樹脂を 600μl の DMF で 1 分間洗浄し、該溶液を排出し、この操作を 5 回繰り返した。
(c)Fmoc-Leu-OH (168μmol)、HBTU (168μmol)、HOBt 1 水和物 (168μmol) およびDIEA (336μmol) を DMF (672μl)中で 3 分間攪拌し、得られた溶液を樹脂に加えて混合物を 60 分間攪拌し、溶液を排出した。
(d)担体樹脂を600μl の DMF で 1 分間洗浄後溶液を排出し、これを5回繰り返した。
こうして、Fmoc-Leu-NH が担体上に合成された。
次に、(a) (b)の工程の後、(c)の工程で Fmoc-Lys(Boc)-OH を用いて縮合反応を行い、(d)の洗浄工程を経て、Fmoc-Lys(Boc)-Leu-NH が担体上に合成された。
【0199】
以下、工程(c)において、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Glu(tBu)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OHを順次用いて、(a)〜(d)を繰り返した後、(a)(b)の脱保護、洗浄工程を経て、メタノール、ブチルエーテルで順次洗浄し、減圧下 12 時間乾燥して、側鎖保護ペプチドの結合した担体樹脂を得た。これに、TFA(90%)、チオアニソール(5%)および1,2-エタンジチオール(5%)からなる混合溶液 1ml を加えて室温で2時間放置し、側鎖保護基を除去するとともに樹脂よりペプチドを切り出した。樹脂を濾別後、得られた溶液にエーテル約 10ml を加え、生成した沈澱を遠心分離およびデカンテーションにより回収し、粗ペプチドとして39mgを取得した。この粗生成物全量を酢酸水溶液に溶解後、逆相カラム(資生堂製、CAPCELL PAK C18 30mmI.D. X 250mm)を用いた HPLC で精製した。0.1% TFA 水溶液に、TFA 0.1% を含む 90% アセトニトリル水溶液を加えていく直線濃度勾配法で溶出し、220nm で検出し、化合物1を含む画分を得た。この画分を凍結乾燥して、化合物1を8.3mg 得た。
【0200】
質量分析[TOFMS]; m/z = 2707 (M+H+)
アミノ酸分析; Asx 2.3 (3), Glx 3.0 (3), Ser 1.1 (1), Thr 2.2 (2), Ala 2.2 (2), Pro 1.1 (1), Val 1.9 (2), Met 1.2 (1), Leu 3.2 (3), Phe 0.9 (1), Lys 4.1 (4), Cys 1.0 (1)
【0201】
1-2化合物2(mAd-2)(配列番号10)(H-Cys-Arg-Val-Thr-Gly-Lys-Lys-Pro-Asn-Phe-Glu-Val-Gly-Ser-Ser-Ser-Gln-NH2)の合成
化合物2は、配列番号2で示されるアミノ酸配列の158〜172番目のアミノ酸配列に対応し、さらにN末端にCys残基が付加されたペプチドである。
【0202】
Fmoc-NH、17μmol が結合した担体樹脂(NovaSyn TGR resin樹脂、ノバビオケム社製)80mg を出発物質として、上記1-1と同様にして、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OHを順次縮合した後に、Fmoc基除去、洗浄、乾燥を経て、側鎖保護ペプチドの結合した担体樹脂を得た。これに、TFA(82.5%)、チオアニソール(5%)、水(5%)、エチルメチルスルフィド(3%)、1,2-エタンジチオール(2.5%)およびチオフェノール(2%)からなる混合溶液 1ml を加えて室温で8時間放置し、側鎖保護基を除去するとともに樹脂よりペプチドを切り出した。樹脂を濾別後、得られた溶液にエーテル約 10ml を加え、生成した沈澱を遠心分離およびデカンテーションにより回収し、粗ペプチドとして31mgを取得した。この粗生成物全量を酢酸水溶液に溶解後、逆相カラム(資生堂製、CAPCELL PAK C18 30mmI.D. X 250mm)を用いた HPLC で精製した。0.1% TFA水溶液に、TFA 0.1% を含む 90% アセトニトリル水溶液を加えていく直線濃度勾配法で溶出し、220nm で検出し、化合物2を含む画分を得た。この画分を凍結乾燥して、化合物2を3.1mg 得た。
【0203】
質量分析[TOFMS]; m/z = 1822.9 (M+H+)
アミノ酸分析; Asx 0.6 (1), Glx 2.0 (2), Ser 3.0 (3), Gly 2.3 (2), Arg 0.9 (1), Thr 1.0 (1), Pro 1.0 (1), Val 1.9 (2), Phe 1.0 (1), Lys 1.8 (2), Cys 1.3 (1)
【0204】
1-3化合物3(mAd-3)(配列番号11)(H-Cys-Gly-Leu-Ala-Glu-Glu-Leu-Glu-Arg-Glu-Gln-Ser-Lys-Ala-Gln-Ser-Ser-Gln-Pro-Lys-Ser-Ala-NH2)の合成
化合物3は、配列番号2で示されるアミノ酸配列の249〜270番目のアミノ酸配列に対応するペプチドである。
【0205】
Fmoc-NH、17μmol が結合した担体樹脂(Rink Amide MBHA resin樹脂、ノバビオケム社製)30mg を出発物質として、上記1-1と同様にして、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OHを順次縮合した後に、Fmoc基除去、洗浄、乾燥を経て、側鎖保護ペプチドの結合した担体樹脂を得た。これに、TFA(82.5%)、チオアニソール(5%)、水(5%)、エチルメチルスルフィド(3%)、1,2-エタンジチオール(2.5%)およびチオフェノール(2%)からなる混合溶液 1ml を加えて室温で8時間放置し、側鎖保護基を除去するとともに樹脂よりペプチドを切り出した。樹脂を濾別後、得られた溶液にエーテル約 10ml を加え、生成した沈澱を遠心分離およびデカンテーションにより回収し、粗ペプチドとして42mgを取得した。この粗生成物全量を酢酸水溶液に溶解後、逆相カラム(資生堂製、CAPCELL PAK C18 30mmI.D. X 250mm)を用いた HPLC で精製した。0.1% TFA 水溶液に、TFA 0.1% を含む 90% アセトニトリル水溶液を加えていく直線濃度勾配法で溶出し、220nm で検出し、化合物3を含む画分を得た。この画分を凍結乾燥して、化合物3を5.3mg 得た。
【0206】
質量分析[TOFMS]; m/z = 2375.3 (M+H+)
アミノ酸分析; Glx 6.9 (7), Ser 3.8 (4), Gly 1.1 (1), Arg 1.0 (1), Ala 3.2 (3), Pro 1.0 (1), Leu 2.1 (2), Lys 2.0 (2), Cys 1.4 (1)
【0207】
1-4化合物4(hAM-1)(配列番号12)(H-Cys-Leu-Phe-Leu-Lys-Glu-Pro-Val-Glu-Thr-Ala-Val-Asp-Asn-Asn-Ser-Lys-Val-Lys-Thr-Ala-Ser-Lys-Leu-NH2)の合成
化合物4は、配列番号4で示されるアミノ酸配列の92〜115番目のアミノ酸配列に対応するペプチドである。
【0208】
Fmoc-NH、15μmol が結合した担体樹脂(NovaSyn TGR resin樹脂、ノバビオケム社製)70mg を出発物質として、上記1-1と同様にして、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Asp(OtBu)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OHを順次縮合した後に、Fmoc基除去、洗浄、乾燥を経て、側鎖保護ペプチドの結合した担体樹脂を得た。これに、TFA(90%)、チオアニソール(5%)および1,2-エタンジチオール(2.5%)からなる混合溶液 1ml を加えて室温で2時間放置し、側鎖保護基を除去するとともに樹脂よりペプチドを切り出した。樹脂を濾別後、得られた溶液にエーテル約 10ml を加え、生成した沈澱を遠心分離およびデカンテーションにより回収し、粗ペプチドとして82mgを取得した。この粗生成物全量を酢酸水溶液に溶解後、逆相カラム(資生堂製、CAPCELL PAK C18 30mmI.D. X 250mm)を用いた HPLC で精製した。0.1% TFA 水溶液に、TFA 0.1% を含む 90%アセトニトリル水溶液を加えていく直線濃度勾配法で溶出し、220nm で検出し、化合物4を含む画分を得た。この画分を凍結乾燥して、化合物4を6.9mg 得た。質量分析[TOFMS]; m/z = 2733.8 (M+H+)
【0209】
1-5化合物5(hAM2)(配列番号13)(H-Cys-Gln-Ile-Thr-Gly-Lys-Lys-Pro-Asn-Phe-Glu-Val-Gly-Ser-Ser-Arg-Gln-NH2)の合成
化合物5は、配列番号4で示されるアミノ酸配列の158〜173番目のアミノ酸配列に対応し、さらにN末端にCys残基が付加されたペプチドである。
【0210】
Fmoc-NH、15μmol が結合した担体樹脂(NovaSyn TGR resin樹脂、ノバビオケム社製)70mg を出発物質として、上記1-1と同様にして、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Val-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Phe-OH、Fmoc-Asn(Trt)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Thr(tBu)-OH、Fmoc-Ile-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OHを順次縮合した後に、Fmoc基除去、洗浄、乾燥を経て、側鎖保護ペプチドの結合した担体樹脂を得た。これに、TFA(82.5%)、チオアニソール(5%)、水(5%)、エチルメチルスルフィド(3%)、1,2-エタンジチオール(2.5%)およびチオフェノール(2%)からなる混合溶液 1ml を加えて室温で8時間放置し、側鎖保護基を除去するとともに樹脂よりペプチドを切り出した。樹脂を濾別後、得られた溶液にエーテル約 10ml を加え、生成した沈澱を遠心分離およびデカンテーションにより回収し、粗ペプチドとして32mgを取得した。この粗生成物全量を酢酸水溶液に溶解後、逆相カラム(資生堂製、CAPCELL PAK C18 30mmI.D. X 250mm)を用いた HPLC で精製した。0.1% TFA水溶液に、TFA 0.1% を含む 90% アセトニトリル水溶液を加えていく直線濃度勾配法で溶出し、220nm で検出し、化合物5を含む画分を得た。この画分を凍結乾燥して、化合物5を7.0mg 得た。
質量分析[TOFMS]; m/z = 1878.3 (M+H+)
【0211】
1-6化合物6(hAM3)(配列番号14)(H-Cys-Gly-Leu-Ala-Glu-Glu-Leu-Glu-Lys-Glu-Lys-Ser-Arg-Glu-Gln-Met-Ser-Ser-Gln-Pro-Lys-Ser-Ala-NH2)の合成化合物6は、配列番号4で示されるアミノ酸配列の251〜273番目のアミノ酸配列に対応するペプチドである。
【0212】
Fmoc-NH、15μmol が結合した担体樹脂(NovaSyn TGR resin樹脂、ノバビオケム社製)70mg を出発物質として、上記1-1と同様にして、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Pro-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Met-OH、Fmoc-Gln(Trt)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Arg(Pmc)-OH、Fmoc-Ser(tBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Lys(Boc)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Glu(OtBu)-OH、Fmoc-Ala-OH、Fmoc-Leu-OH、Fmoc-Gly-OH、Fmoc-Cys(Trt)-OHを順次縮合した後に、Fmoc基除去、洗浄、乾燥を経て、側鎖保護ペプチドの結合した担体樹脂を得た。これに、TFA(82.5%)、チオアニソール(5%)、水(5%)、エチルメチルスルフィド(3%)、1,2-エタンジチオール(2.5%)およびチオフェノール(2%)からなる混合溶液 1ml を加えて室温で8時間放置し、側鎖保護基を除去するとともに樹脂よりペプチドを切り出した。樹脂を濾別後、得られた溶液にエーテル約 10ml を加え、生成した沈澱を遠心分離およびデカンテーションにより回収し、粗ペプチドとして47mgを取得した。この粗生成物全量を酢酸水溶液に溶解後、逆相カラム(資生堂製、CAPCELL PAK C18 30mmI.D. X 250mm)を用いた HPLC で精製した。0.1% TFA 水溶液に、TFA 0.1% を含む 90% アセトニトリル水溶液を加えていく直線濃度勾配法で溶出し、220nm で検出し、化合物6を含む画分を得た。この画分を凍結乾燥して、化合物6を14.5mg 得た。
質量分析[TOFMS]; m/z = 2565.88 (M+H+)
【0213】
実施例7 アナモルシンを認識するモノクローナル抗体の作製
(1)免疫原の調製
実施例6で得られた化合物1〜3は、免疫原性を高める目的で以下の方法でKLH(カルビオケム社製)とのコンジュゲートを作製し、免疫原とした。すなわち、KLHをPBSに溶解して10mg/mLに調整し、1/10容量の25mg/mL MBS[N-(m-Maleimidobenzoyloxy)succinimide;ナカライテスク社]を滴下して30分間撹拌反応させる。あらかじめPBSで平衡化したセファデックスG−25カラムなどのゲルろ過カラムでフリーのMBSを除いて得られたKLH−MBS2.5mgを0.1Mりん酸ナトリウムバッファー(pH7.0)に溶解したペプチド1mgと混合し、室温で3時間、攪拌反応させた。反応後、PBSで透析したものを免疫原として用いた。
【0214】
(2)動物の免疫と抗体産生細胞の調製
実施例7(1)で調製した化合物1〜3のKLHコンジュゲート100μgをそれぞれ水酸化アルミニウムアジュバント〔Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, p99、1988〕2 mgおよび百日咳ワクチン(千葉県血清研究所製)1×109細胞とともに4週令雌SDラット各3匹に投与した。投与2週間後より、各KLHコンジュゲート100μgを1週間に1回、計4回投与した。該ラットの心臓より採血し、その血清抗体価を以下に示す酵素免疫測定法で調べ、十分な抗体価を示したラットから最終免疫3日後に脾臓を摘出した。
脾臓をMEM(Minimum Essential Medium)培地(日水製薬社製)中で細断し、ピンセットでほぐし、遠心分離(250 ×g、5分間)した。得られた沈殿画分にトリス−塩化アンモニウム緩衝液(pH7.6)を添加し、1〜2分間処理することにより赤血球を除去した。得られた沈殿画分(細胞画分)をMEM培地で3回洗浄し、細胞融合に用いた。
【0215】
(3)酵素免疫測定法(バインディングELISA)
アッセイ用の抗原には実施例1で得られた各化合物をサイログロブリン(以下、THYと略す。)とコンジュゲートしたものを用いた。作製方法は実施例7(1)に記した通りであるが、架橋剤にはMBSの代わりにSMCC[4-(N-Maleimidomethyl)-cyclohexane-1-carboxylic acid N-hydroxysuccinimido ester;シグマ社]を用いた。96穴のEIA用プレート(グライナー社)に、上記のように調製したコンジュゲートを10μg/mL,50μL/穴で分注し、4度で一晩放置して吸着させた。該プレートを洗浄後、1% 牛血清アルブミン(BSA)/ダルベッコりん酸バッファー(Phosphate buffered saline:PBS)を100 μL/穴加え、室温で1時間放置し、残っている活性基をブロックした。
放置後、1% BSA/PBSを捨て、該プレートに被免疫ラット抗血清を50μL/穴分注し、2時間放置した。該プレートを0.05% ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート[(ICI社商標Tween 20相当品:和光純薬社製)]/PBS(以下Tween-PBSと表記)で洗浄後、ペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットイムノグロブリン(DAKO社)を50 μL/穴加えて室温、1時間放置した。該プレートをTween-PBSで洗浄後、ABTS基質液〔2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6-スルホン酸)アンモニウム、1mmol/L ABTS/ 0.1mol/Lクエン酸バッファー(pH4.2)〕を添加し、発色させOD415 nmの吸光度をプレートリーダー(Emax;Molecular Devices社)を用いて測定した。
【0216】
(4)マウス骨髄腫細胞の調製
8-アザグアニン耐性マウス骨髄腫細胞株P3X63Ag8U.1(P3-U1:ATCCより購入)を正常培地(10%ウシ胎児血清添加RPMI培地)で培養し、細胞融合時に2×107個以上の細胞を確保し、細胞融合に親株として供した。
【0217】
(5)ハイブリドーマの作製
実施例7(2)で得られたラット脾細胞と実施例2(4)で得られた骨髄腫細胞とを10:1になるよう混合し、遠心分離(250 ×g、5分間)した。得られた沈澱画分の細胞群をよくほぐした後、攪拌しながら、37℃で、ポリエチレングリコール−1000(PEG-1000)2 g、MEM培地2mLおよびジメチルスルホキシド0.7mLの混液を108個のマウス脾細胞あたり0.5 mL加え、該懸濁液に1〜2分間毎にMEM培地1mLを数回加えた後、MEM培地を加えて全量が50 mLになるようにした。
該懸濁液を遠心分離(900 rpm、5分間)し、得られた沈澱画分の細胞をゆるやかにほぐした後、該細胞を、メスピペットによる吸込み吸出しでゆるやかにHAT培地〔10%ウシ胎児血清添加RPMI培地にHAT Media Supplement(ベーリンガーマンハイム社製)を加えた培地〕100 mL中に懸濁した。該懸濁液を96穴培養用プレートに200 μL/穴ずつ分注し、5%CO2インキュベーター中、37℃で10〜14日間培養した。
【0218】
培養後、培養上清を実施例7(3)に記載した酵素免疫測定法で調べ、抗原ペプチドに反応してコントロールペプチドに反応しない穴を選び、そこに含まれる細胞から限界希釈法によるクローニングを2回繰り返し、抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを確立した。
化合物1を抗原に用いてKM3046、KM3047、KM3048およびKM3049を、化合物2を抗原に用いてKM3050、KM3051、KM3052、KM3053、KM3054およびKM3055を、化合物3を抗原に用いてKM3056およびKM3057を取得した。
ハイブリドーマKM3048、KM3052、KM3057は、平成13年10月11日付で、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東一丁目1番地中央第6)に、それぞれFERM BP−7765、FERM BP−7766、FERM BP−7767として寄託されている。
図17に示すように、いずれのモノクローナル抗体も免疫原に用いた化合物に特異的な反応性を示した。
【0219】
(6)モノクローナル抗体の精製
プリスタン処理した8週令ヌード雌マウス(BALB/c)に実施例7(5)で得られたハイブリドーマ株を5〜20×106細胞/匹それぞれ腹腔内注射した。10〜21日後、ハイブリドーマが腹水癌化することにより腹水のたまったマウスから、腹水を採取(1〜8 mL/匹)した。
該腹水を遠心分離(1200 ×g、5分間)し固形分を除去した。精製IgMモノクローナル抗体は、該腹水を50%硫酸アンモニウムを用いて塩析し、塩化ナトリウム0.5 mol/Lを添加したPBSで透析後、セルロファインGSL2000(生化学工業社製)(ベットボリューム750 mL)のカラムに流速15 mL/時で通塔しIgM画分を集めることにより取得した。
精製IgGモノクローナル抗体は、カプリル酸沈殿法〔Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988〕により精製することにより取得した。モノクローナル抗体のサブクラスはサブクラスタイピングキットを用いたELISA法により表1に示すように決定された。表1で○は反応性があったことを示す。
【0220】
【表1】
Figure 0003929744
【0221】
実施例8 抗マウスアナモルシン抗体を用いたマウスアナモルシン蛋白質の検出(1)ウェスタンブロッティングによるマウスアナモルシン蛋白質の検出
実施例1(5)抗アポトーシス機能に記載の方法に従い遺伝子導入したBaf3細胞及び無処置Baf3細胞をピペッティングにより回収した。これらの細胞をPBSで一回洗浄後、細胞溶解用緩衝液(50mM Tris-HCl pH7.2, 1% TritonX, 150mM NaCl,2mM MgCl2, 2mM CaCl2, 0.1% NaN3, 50mM iodoacetamide, 50mM N-ethylmaleimide, 1mg/ml leupepcin, 0.1mM dithiothreitol)を5×107細胞に1ml添加し、4℃、30分間放置後、遠心分離し、上清を細胞可溶化液として取得した。
上記のように調製した細胞可溶化液を10μL(1×105個)/レーンでSDS-PAGE(5-20%グラジエントゲル、アトー社製)〔Antibodies - A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988〕にて分画した後、PVDF膜(ミリポア社製)にブロッティングした。
【0222】
該膜を1% BSA-PBSでブロッキング後、該膜に抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体の培養上清を原液で添加し、室温で2時間放置した。該膜をTween-PBSでよく洗浄した後、第二抗体として1000倍希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットイムノグロブリン抗体〔DAKO社製〕を添加し、室温で1時間放置した。
該膜をTween-PBSでよく洗浄した後、ECL kit(アマシャムファルマシアバイオテク社製)を用いて検出した。
図18に示すように、抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体KM3046〜3057は、マウスアナモルシン蛋白質の分子量に相当する40Kダルトン付近のバンドに特異的に反応した。無処理のBaf3細胞にも内在性のアナモルシンが存在する為、遺伝子導入細胞より弱いが、同位置にバンドが検出された。
【0223】
(2)蛍光抗体法(セルソーター解析)によるマウスアナモルシンの検出
実施例1(5)抗アポトーシス機能に記載の方法に従い遺伝子導入したBaf3細胞及び無処置Baf3細胞をピペッティングにより回収した。PBSで洗浄した後、細胞膜の抗体透過性を上げるため、100%メタノール(氷冷)にて4℃で10分間処理した。PBSで洗浄後、10%正常マウス血清にて4℃で30分ブロッキングした。1×105個/チューブで分注した後、遠心分離を行い上清を捨て、抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体の培養上清を加えて4℃で30分間反応させた。PBSで洗浄後、FITC標識抗ラットイムノグロブリン抗体(ラットイムノグロブリンに特異的なもの;CALTAG社製)を42倍希釈30μL/チューブで分注し、4℃、30分間遮光反応させた。よくPBSで洗浄した後、セルアナライザー(コールター社;EPICS XLsystemII)にて解析した。
化合物1より得られたKM3046、KM3047、KM3048およびKM3049、化合物2から得られたKM3052およびKM3055、化合物3から得られたKM3056およびKM3057はBaf3発現マウスアナモルシンを特異的に検出した。図19に、KM3048、KM3052およびKM3057の結果を示す。縦軸は細胞数、横軸は蛍光強度を示す。
【0224】
(3)免疫沈降
実施例2(1)で調製したマウスアナモルシン遺伝子導入Baf3細胞可溶化液を用い、免疫沈降を検討した。
96穴EIAプレートに抗ラットイムノグロブリン(DAKO社)を100μL/穴ずつ分注し、4℃で一晩放置してプレートにコートした後、BSA−PBSを200μL/穴分注し、室温1時間放置してプレート上に残った蛋白質との結合残基をブロック(ブロッキング)した。その後、BSA−PBSを捨てコントロール抗体、KM3046〜KM3057の各ハイブリドーマ培養上清を原液で100μL/穴ずつ分注し、室温で2時間反応させた。PBSでよく洗浄した後、上記のように調製した細胞可溶化液を100μL/穴で分注し、4℃で一晩反応させた。PBS−Tweenでよく洗浄した後、SDS−PAGE用サンプルバッファー(×5濃度)を20μL/穴で加え、室温2時間プレートを振とうした後回収した。PBSにて5倍希釈して常法によりSDS−PAGE、ウエスタンブロッティングを行ない、実施例7(1)〜(4)で得られた抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体KM3046〜KM3057のハイブリドーマ培養上清の混合液を用いて抗体染色を行なったところ、KM3046、KM3047、KM3048、KM3049、KM3052、KM3055、KM3056およびKM3057により、抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体ハイブリドーマ培養上清混合液で検出される分子量40KDaの蛋白が沈降されることがわかった。コントロール抗体を用いた場合には、沈降蛋白質は検出されなかった。図20にKM3048、KM3052およびKM3057の結果を示す。
【0225】
(4)抗原液相系における抗原化合物に対する反応性(インヒビションELISA)
KM3046〜KM3057の液相系における抗原化合物に対する反応性を、インヒビションELISAで調べた。
実施例1(3)に示したように抗原を固相化したプレートを準備し、20μg/mLより5倍希釈で段階的に希釈した実施例6の1で得られた化合物1、化合物2および化合物3、ならびにそれぞれのヒトアナモルシンに相当するアミノ酸配列である化合物4、化合物5、化合物6を50μl/ウェルでそれぞれ分注後、KM3046〜KM3057の培養上清を希釈して(希釈倍率;KM3046、KM3047、KM3048、KM3049、KM3052、KM3055:×500、KM3050、KM3054:×1000、KM3051:×2000、KM3053:×5、KM3056、KM3057:×625)50μL/穴で分注し、ウェル内で混合して室温で2時間反応させた。ウェルをTween−PBSで洗浄後、希釈したペルオキシダーゼ標識ウサギ抗ラットイムノグロブリン(DAKO社)を50μL/穴で加えて室温、1時間反応させ、Tween−PBSで洗浄後ABTS基質液[2.2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾール-6-スルホン酸)アンモニウム]を用いて発色させOD415nmの吸光度をプレートリーダー(Emax;和光純薬)にて測定した。
KM3046〜KM3049はいずれも液相系において化合物1にのみ反応した。KM3047は化合物2にのみ反応した。KM3052、KM3053およびKM3055は化合物2、化合物5に反応した。KM3056およびKM3057は化合物3、化合物6に反応した。図21にKM3048、KM3052およびKM3057の結果を示す。
【0226】
【発明の効果】
本発明は、細胞死を抑制する活性を有するポリぺプチド、該ポリぺプチドをコードするDNA、該ポリペプチドを認識する抗体、該ポリペプチドに結合する物質、該ポリペプチドと該ポリペプチドに結合する物質との特異的な結合を阻害する物質、該ポリペプチドをコードする細胞死抑制遺伝子の発現を制御する物質、該物質のスクリーニング法および該細胞死抑制遺伝子を欠損あるいは一部改変された動物とそれらの有効な用途を提供する。
【0227】
【配列表フリーテキスト】
配列番号5−人工配列の説明:合成DNA
配列番号6−人工配列の説明:合成DNA
配列番号7−人工配列の説明:合成DNA
配列番号8−人工配列の説明:合成DNA
配列番号9−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号10−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号11−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号12−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号13−人工配列の説明:合成ペプチド
配列番号14−人工配列の説明:合成ペプチド
【配列表】
Figure 0003929744
Figure 0003929744
Figure 0003929744
Figure 0003929744
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【図面の簡単な説明】
【図1】 Ba/F3細胞とAM−gene transfected Ba/F3細胞のキャスパーゼアッセイの結果を示す図である。
【図2】 Ba/F3細胞とAM−gene transfected Ba/F3細胞のPI染色の結果を示す図である。
【図3】 Ba/F3細胞とBa/F3−Ad細胞においてAM遺伝子の発現をノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図4】 ヒト正常臓器でのAM遺伝子の発現をノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図5】 マウス正常臓器でのAM遺伝子の発現をRT−PCR法を用いて検査した結果を示す図である。
【図6】 マウス胚でのAM遺伝子の発現をRT−PCR法を用いて検査した結果を示す図である。
【図7】 造血系細胞株でのAM遺伝子の発現をノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図8】 造血器腫瘍患者から得られた腫瘍細胞でのAM遺伝子の発現をノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図9】 Ba/F3細胞とBa/F3−Ad細胞においてH−Rasの活性状態を見るためにRasアッセイを行った時の結果を示す図である。
【図10】 Ba/F3細胞とConstitutively active H-Ras遺伝子を強制発現させたBa/F3細胞においてH−Rasの活性化とAMの発現の関係を見るためにノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図11】 Ba/F3細胞とdominant-negative H-Ras遺伝子を強制発現させたBa/F3細胞においてH−Rasの活性化とAMの発現の関係を見るためにノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図12】 Ba/F3細胞においてIL−3刺激後のAM遺伝子の発現をノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図13】 Ba/F3細胞においてサイトカイン刺激によるAM遺伝子の発現をノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図14】 Ba/F3細胞とAM−gene transfected Ba/F3細胞において、IL−3除去後のbcl−2の発現とAMの発現の関係を見るためにノザンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図15】 Ba/F3細胞とAM−gene transfected Ba/F3細胞において、IL−3除去後のbcl−2の発現とAMの発現の関係を見るためにウエスタンブロッティングを用いて検査した結果を示す図である。
【図16】 遺伝子改変動物作成用のターゲットベクターの構成を示す図である。
【図17】 ラット抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体の反応特異性を示す図である。
【図18】 ラット抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体のウエスタンブロッティングによるマウスアナモルシンの検出を示す図である。
【図19】 ラット抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体の蛍光抗体法によるマウスアナモルシンの検出を示す図である。
【図20】 ラット抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体の免疫沈降法によるマウスアナモルシンの検出を示す図である。
【図21】 ラット抗マウスアナモルシンモノクローナル抗体の抗原液相系における抗原化合物に対する反応性を示す図である。

Claims (18)

  1. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドを認識する抗体を用いる細胞死の抑制又は促進に起因する疾患の診断のための免疫学的測定法。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  2. 抗体が、モノクローナル抗体又はその抗体断片である、請求項1記載の免疫学的測定法。
  3. 抗体が、ハイブリドーマKM3048(FERM BP−7765)、ハイブリドーマKM3052(FERM BP−7766)又はハイブリドーマKM3057(FERM BP−7767)が生産するモノクローナル抗体又はその抗体断片である、請求項1又は2記載の免疫学的測定法。
  4. 細胞死の抑制又は促進に起因する疾患が、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、糖尿病、放射線障害あるいは虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死、悪性腫瘍又は自己免疫疾患である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の免疫学的測定法。
  5. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドと被験試料とを接触させ、被験試料の中から該ポリペプチドに結合する物質を選択することを特徴とする、細胞死の抑制又は促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬のスクリーニング方法。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  6. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドと被験試料とを接触させ、被験試料の中から該ポリペプチドの活性を抑制させる物質を選択することを特徴とする、細胞死の抑制又は促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬のスクリーニング方法。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  7. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドを発現する細胞と被験試料とを接触させ、被験試料より該ポリペプチドをコードする遺伝子の発現を制御する物質を選択することを特徴とする、細胞死の抑制又は促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬のスクリーニング方法。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  8. 発現の制御を、請求項1〜4のいずれか1項に記載の測定法を用いて検出することを特徴とする、請求項7記載のスクリーニング方法。
  9. 発現の制御を、ポリペプチドをコードするmRNA量を測定することにより検出することを特徴とする、請求項7記載のスクリーニング方法。
  10. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドを含有する、細胞死の促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  11. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドをコードするDNAを含有する、細胞死の促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  12. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを含有する、細胞死の促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  13. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドをコードするDNAをベクターに組み込んで得られる組換え体DNAを保有する形質転換体を含有する、細胞死の促進に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  14. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドをコードするDNAの塩基配列に基づいて調製したアンチセンス鎖DNAを含有する、細胞死の抑制に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  15. 以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドを認識する抗体又はその抗体断片を含有する、細胞死の抑制に起因する疾患の予防薬、診断薬又は治療薬。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
  16. 細胞死の促進に起因する疾患が、神経変性疾患、劇症肝炎、ウイルス疾患、放射線障害、糖尿病、又は虚血時あるいは抗癌剤使用時の細胞死である、請求項10〜13のいずれか1項に記載の予防薬、診断薬又は治療薬。
  17. 細胞死の抑制に起因する疾患が、悪性腫瘍又は自己免疫疾患である、請求項14又は15に記載の予防薬、診断薬又は治療薬。
  18. 細胞内のポリペプチドが有する活性を制御する工程を含む、細胞死の制御方法であって、ポリペプチドが、以下の(a)〜(d)からなる群から選ばれるポリペプチドである細胞死の制御方法。
    (a)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
    (c)配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド。
    (d)配列番号4で示されるアミノ酸配列において一個以上のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつ細胞死を抑制する活性を有するポリペプチド。
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