JP3927393B2 - 有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土壌又は灰中に含まれるダイオキシン類やその前駆体となる芳香族有機ハロゲン化合物や、トリクロロエチレン、ジクロロメタン等の脂肪族有機ハロゲン化合物を効率的に分解処理する方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
都市ごみや産業廃棄物を焼却するごみ焼却炉から発生する排ガスや飛灰、主灰中には、微量ではあるが人体に対して極めて強い毒性を持つ芳香族ハロゲン化合物であるダイオキシン類が含まれている。ダイオキシン類は、ジベンゾ−p−ジオキシン、ジベンゾフランなどの水素を塩素で置換した化合物の総称である。
【0003】
また、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレンなどの脂肪族有機ハロゲン化合物は、金属の脱脂用途、ドライクリーニング用途などに幅広く用いられている。
【0004】
これら有機ハロゲン化合物は、難分解性である上に発癌性物質であるために、大気中への排出、あるいは地下水、土壌などの汚染による環境問題は深刻になっている。特に、ごみ焼却炉から排出される灰や汚染された土壌は有機ハロゲン化合物の含有量が高いため、有機ハロゲン化合物の分解・無害化が必要とされている。しかし、これら有機ハロゲン化合物の除去方法については、様々な提案がなされているが、経済的で、効率的な分解、無害化技術は未だ十分に確立されていない。
【0005】
従来、土壌、灰中に含有される有機ハロゲン化合物の分解、無害化についての技術としては、様々な報告がされている。例えば、酸化鉄等の触媒の存在下200〜550℃で加熱することにより少なくとも炭素原子5個以上を有するポリハロゲン化芳香族化合物を分解する方法(特公平6−38863号公報)、酸化鉄を含む触媒の存在下で300〜700℃の温度で熱処理して排ガスからハロゲン化芳香族化合物等を除去又は減少させる方法(特開平2−280816号公報)、焼却炉の排ガスの煙道などにアミン化合物を担持した活性炭を含むダイオキシン類の放出防止材を注入する方法(特開平11−9960号公報)、処理灰類と脱塩素剤とを混合して加熱処理する方法(特開平11−19616)、酸化鉄等及び/又は二酸化チタンをベースとする固体触媒を用いて酸素存在下で有機ハロゲン化合物を分解させる方法(特開平11−188235号公報、特開平11−188236号公報)、固体状廃棄物に亜リン酸類及び/又は次亜リン酸類とアルミニウム化合物及び/又はチタン化合物とを添加して加熱処理する方法(特開平11−290824号公報)等が知られている。
【0006】
また、特定の触媒活性を有する鉄化合物触媒及び該鉄化合物触媒を焼却炉の燃焼室に噴霧添加して、ダイオキシン発生を抑制する方法(特開平11−267507号公報)が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
現在、土壌又は灰中に含まれる有機ハロゲン化合物を分解・無害化する処理方法は現在最も要求されているところであるが、前出各公報記載の方法は未だ十分なものとは言い難いものである。
【0008】
前出特公平6−38863号公報記載の方法は、焼却炉で発生したフライアッシュ、または、固体中のポリハロゲン化化合物を非通り抜け系、閉鎖系の装置で、酸素欠乏雰囲気、または、不活性ガス雰囲気においてフライアッシュや金属、酸化鉄を含む金属酸化物、炭酸塩、ケイ酸塩等を触媒として用いて、分解するものであるが、処理する雰囲気を閉鎖系、または、不活性ガス雰囲気に特定していることから、装置の大型化、高気密化、高額化と設備維持コストが高く工業的に満足できるものとは言い難い。
【0009】
特開平11−19616号公報に記載の方法は、焼却灰、飛灰などとアルカリ物質からなる脱塩剤とを混合した後、加熱処理するものであるが、被処理物を加熱して発生した塩素系ガスとアルカリ物質とを接触させる必要があることから、塩素系ガスを発生させるために被処理物を高温で加熱する必要があり、有機ハロゲン化合物を直接、分解・無害化するものではなく、ダイオキシン類の無害化については十分とは言い難いものである。
【0010】
特開平11−9960号公報に記載の方法は、ダイオキシン類を含む排ガス中にアミン担持活性炭を注入し、活性炭の吸着作用によりダイオキシン類を活性炭に吸着し、アミン化合物と反応してダイオキシン類を分解するものであって、ダイオキシン類の吸着機能は高いが分解機能は十分でなく、さらに活性炭によるダイオキシン類の生成も十分に抑制することができない。また、活性炭は高温域では発火する危険性を持ち併せており、安全面でも懸念が残る。
【0011】
前出特開平11−188235号公報及び特開平11−188236号公報に記載の方法は、酸化鉄等及び/又は二酸化チタンをベースとする固体触媒を用いて、ガス中の有機ハロゲン化合物を酸素存在下で分解させる方法であって、ガス中の有機ハロゲン化合物を対象としており、固体中に含有している有機ハロゲン化合物を分解するためには、十分とは言い難いものである。
【0012】
特開平11−290824号公報に記載の方法は、亜リン酸類及び次亜リン酸類を含有する処理剤を用いるものであるが、後出比較例に示す通り、ダイオキシン類の分解率が悪く、ダイオキシン類を十分に分解できるとは言い難いものである。
【0013】
また、前出特開平11−267507号公報に記載している触媒を用いて、土壌又は灰中に含有するダイオキシン類の含有量を低減することはできるが、後出参考例に示す通り、未だ十分とは言い難いものである。
【0014】
そこで、本発明は、土壌又は灰中に含まれるダイオキシン類、その前駆体となる芳香族有機ハロゲン化合物や、トリクロロエチレン、ジクロロメタン等の脂肪族有機ハロゲン化合物の分解において、ガス雰囲気を限定せず、簡便な装置で効率的に処理する方法を提供することを技術的課題とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
前記技術的課題は以下の通りの本発明により達成できる。
【0016】
すなわち、本発明は、有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰と有機ハロゲン化合物分解触媒とを混合し、加熱処理するにあたり、前記有機ハロゲン化合物分解触媒として、リン含有量が0.02重量%以下であって、硫黄含有量が0.3重量%以下であって、ナトリウム含有量が0.3重量%以下である平均粒径が0.01〜2.0μmの含水酸化鉄粒子粉末、酸化鉄粒子粉末の1種又は2種以上からなる鉄化合物粒子粉末と沸点が150℃以上のアミン化合物との複合触媒であり、該複合触媒の見掛け密度(ρa)が0.8g/ml以下であって、且つ、前記鉄化合物粒子粉末を空気中にて300℃で、60分間熱処理して得られた酸化鉄粉末と上記アミン化合物との複合物50mgをパルス式触媒反応装置を用いて不活性ガス雰囲気中にて5.0×10−7molのモノクロロベンゼンと300℃の温度においてSV=150000h−1の条件で瞬時に接触させた場合に、上記モノクロロベンゼンの50%以上を分解できる活性を有する複合触媒を用いることを特徴とする有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰の処理方法である。
【0017】
また、本発明は、加熱処理を空気流通下で行うことを特徴とする前記有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰の処理方法である。
【0018】
本発明の構成を詳しく説明すれば、次の通りである。
【0019】
まず、本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒について述べる。
【0020】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒は、鉄化合物粒子粉末とアミン化合物の複合触媒である。
【0021】
本発明における鉄化合物粒子粉末の平均粒径は、0.01〜2.0μm、好ましくは、0.02〜2.0μm、より好ましくは0.02〜1.0μmである。
【0022】
鉄化合物粒子粉末の平均粒径が2.0μmを超える場合には、得られた分解触媒と有機ハロゲン化合物との接触効率が低下して充分な有機ハロゲン化合物分解活性を発現しない。0.01μm以下の鉄化合物粒子粉末は、工業的に量産が困難であること及び粒子間での凝集力が大きくなり凝集体の粉砕に大きなエネルギーを必要とすることから実施が困難である。
【0023】
本発明における鉄化合物粒子粉末のBET比表面積値は、通常、0.2〜200m2/g、好ましくは1.0〜200m2/g、より好ましくは2.0〜150m2/gである。
【0024】
本発明における鉄化合物粒子粉末は、ゲータイト、アカゲナイト、レピドクロサイト等の含水酸化鉄粒子粉末、ヘマタイト、マグヘマイト、マグネタイト等の酸化鉄粒子粉末の1種又は2種以上からなる。好ましくは、ゲータイト、ヘマタイト、マグネタイトであり、より好ましくは、ゲータイト、ヘマタイトである。
【0025】
本発明における鉄化合物粒子粉末の粒子形状は、球状、立方体状、八面体状、六面体状、多面体状等の粒状粒子及び針状、紡錘状、米粒状等の針状粒子のいずれであってもよく、好ましくは、紡錘状又は針状である。
【0026】
本発明における鉄化合物粒子粉末は、リン含有量が0.02重量%以下、好ましくは0.01重量%以下、より好ましくは0.005重量%以下である。0.02重量%を超える場合には、このリンが触媒毒として働くため、得られる分解触媒の有機ハロゲン化合物の分解活性が低下する。
【0027】
本発明における鉄化合物粒子粉末は、硫黄含有量が0.3重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.07重量%以下である。0.3重量%を超える場合には、この硫黄が触媒毒として働くため、得られる分解触媒の有機ハロゲン化合物の分解活性が低下する。
【0028】
本発明における鉄化合物粒子粉末は、ナトリウム含有量が0.3重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.15重量%以下である。0.3重量%を超える場合には、このナトリウムが触媒毒として働くため、得られる分解触媒の有機ハロゲン化合物の分解活性が低下する。
【0029】
本発明における鉄化合物粒子粉末は、リン含有量、硫黄化合物含有量及びナトリウム含有量の合計含有量が0.5重量%以下が好ましく、より好ましくは0.3重量%以下、更により好ましくは0.2重量%以下である。0.5重量%を超える場合には、得られる分解触媒の有機ハロゲン化合物の分解活性が低下する。
【0030】
本発明における鉄化合物粒子粉末は、空気中にて300℃、60分間熱処理して得られた酸化鉄粉末50mgを、パルス式触媒反応装置を用いて、5.0×10−7molのモノクロロベンゼンと、300℃の温度の不活性ガス雰囲気中にて、SV=150000h−1の条件で瞬時に接触させた場合に、該モノクロロベンゼンの20%以上を分解できる活性を有する。
【0031】
モノクロロベンゼンの分解活性が20%未満の鉄化合物粒子粉末を用いて得られる分解触媒では、本発明の目的とする効果が得られない。好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上である。
【0032】
本発明におけるアミン化合物は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のアルキルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアルカノールアミン、アニリン等の環式アミンなどの1種又は2種以上を用いることができる。
【0033】
本発明におけるアミン化合物は、沸点が150℃以上のものが好ましい。アミン化合物の沸点が150℃未満であると、有機ハロゲン化合物との処理時に揮発しやすく、得られる分解触媒は本発明の目的とする効果が得られない。
【0034】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒の粒子形状、粒子径及びリン、硫黄及びナトリウム等の不純物含有量は、用いる鉄化合物粒子粉末の粒子形状、粒子径及び不純物含有量をほぼ保持している。
【0035】
即ち、本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒の平均粒子径は、0.01〜2.0μm、好ましくは0.02〜2.0μm、より好ましくは0.02〜1.0μmである。
【0036】
また、本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒は、リン含有量が0.02重量%以下、好ましくは0.01重量%以下、より好ましくは0.005重量%以下である。0.02重量%を超える場合には、このリンが触媒毒として働くため、得られる分解触媒の有機ハロゲン化合物の分解活性が低下する。
【0037】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒は、硫黄含有量が0.3重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.07重量%以下である。0.3重量%を超える場合には、この硫黄が触媒毒として働くため、得られる分解触媒の有機ハロゲン化合物の分解活性が低下する。
【0038】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒は、ナトリウム含有量が0.3重量%以下、好ましくは0.2重量%以下、より好ましくは0.15重量%以下である。0.3重量%を超える場合には、このナトリウムが触媒毒として働くため、得られる分解触媒の有機ハロゲン化合物の分解活性が低下する。
【0039】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒の見掛け密度(ρa)は0.8g/ml以下、好ましくは0.6g/ml以下である。見掛け密度(ρa)が0.8g/mlを越える場合には、凝集体の粉砕が十分でないことを意味し、被処理物との密接な混合が困難となる。
【0040】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒のBET比表面積値は、0.2〜200m2/gが好ましく、1.0〜200m2/g、より好ましくは2.0〜150m2/gである。
【0041】
有機ハロゲン化合物分解触媒における鉄化合物粒子粉末とアミン化合物との混合割合は、鉄化合物粒子粉末に対してアミン化合物は0.01〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.05〜5.0重量部である。0.01重量部以下の場合には、複合触媒中のアミン化合物の含有量が少ないことにより有機ハロゲン化合物分解の促進効果が小さくなることがあり、10重量部以上の場合には、分解触媒中の鉄化合物粒子粉末の割合が減少することによって有機ハロゲン化合物の分解活性を低下させる。
【0042】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒は、前記鉄化合物粒子粉末を空気中にて300℃、60分間熱処理して得られた酸化鉄粉末と前記アミン化合物とを前記所定の割合で複合化した複合物50mgを、パルス式触媒反応装置を用いて、5.0×10−7molのモノクロロベンゼンと、300℃の温度の不活性ガス雰囲気中にて、SV=150000h−1の条件で瞬時に接触させた場合に、該モノクロロベンゼンの50%以上を分解できる活性を有する。好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上のモノクロロベンゼンを分解する活性を有する。なお、鉄化合物粒子粉末とアミン化合物との複合触媒である本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒を300℃、60分間熱処理して得られた複合物50mgを、パルス式触媒反応装置を用いて、5.0×10−7molのモノクロロベンゼンと、300℃の温度の不活性ガス雰囲気中にて、SV=150000h−1の条件で瞬時に接触させた場合にも前記と同様の触媒活性を有しており、モノクロロベンゼンの50%以上を分解できる活性を有し、好ましくは55%以上、更に好ましくは60%以上のモノクロロベンゼンを分解する活性を有する。
【0043】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒の上記測定法による分解活性が50%未満の場合には、効果的に有機ハロゲン化合物を分解することができない。
【0044】
ここでモノクロロベンゼンは、有機ハロゲン化合物の代表的なものであり、またダイオキシン類の前駆体と言われており、モノクロロベンゼンを分解する活性を有することは、ダイオキシンをはじめとする有機ハロゲン化合物を分解する活性を有することの指標となる。尚、モノクロロベンゼンの分解率は下記数1で示した値である。
【0045】
【数1】
モノクロロベンゼン分解率[%]=[1−(反応後モノクロロベンゼン検出量/モノクロロベンゼン注入量)]×100
【0046】
次に、本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒の製造法について述べる。
【0047】
先ず、本発明における鉄化合物粒子粉末の製造方法について述べる。
【0048】
本発明における鉄化合物粒子粉末のうち、針状、紡錘状及び米粒状のゲータイト粒子粉末や粒状マグネタイト粒子粉末の製造法としては、例えば、第一鉄塩と、水酸化アルカリ、炭酸アルカリ又はアンモニアから選ばれる1種又は2種以上とを用いて反応して得られる鉄の水酸化物や炭酸鉄等の第一鉄含有沈殿物を含む懸濁液中に空気等の酸素含有ガスを通気することにより得ることができる。
【0049】
本発明における鉄化合物粒子粉末のうち、ヘマタイト粒子粉末は、例えば、前記ゲータイト粒子粉末又は前記マグネタイト粒子粉末を空気中200〜800℃の温度範囲で加熱脱水、加熱処理を行って得ることができ、マグネタイト粉末は、例えば、前記ゲータイト粒子粉末又は前記ヘマタイト粒子粉末を還元性雰囲気下、300〜600℃で加熱還元して得られる。マグヘマイト粒子粉末は、例えば、前記マグネタイト粒子粉末を空気中200〜600℃で加熱酸化して得ることができる。
【0050】
本発明における鉄化合物の製造にあたっては、触媒毒となるリン、硫黄及びナトリウムの含有量が所定量以下となるようにすることが必要である。具体的には、第一鉄塩溶液としては、触媒毒となるリン、硫黄等の含有量が少ないものが好ましい。また、通常、加熱焼成時の焼結防止処理に用いられるヘキサメタリン酸ナトリウム等を使用せず、第一鉄原料等に由来する硫酸イオンやアルカリ等に由来するナトリウムイオンについては充分な水洗等の精製処理を行うことによりリン、硫黄及びナトリウムの含有量の低減を図ることが好ましい。
【0051】
なお、鉄化合物粒子粉末は複合触媒としたときの見掛け密度を低減するために、あらかじめ凝集を解きほぐしておいてもよい。
【0052】
鉄化合物粒子粉末とアミン化合物の複合化処理は、鉄化合物粒子粉末とアミン化合物とをサンドミル、ヘンシェルミキサー及びナウターミキサー等の混合機、ファインミル、ピンミル等の粉砕機を用いて乾式混合する。
【0053】
前記乾式混合において、必要により、粒子の濡れ性を改善するために、水又はアルコール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコール)等の溶媒を存在させてもよい。溶媒を用いた場合は加熱又は減圧下で溶媒を蒸発するのが望ましい。
【0054】
サンドミルを用いた場合の混合条件は、線圧5〜50kg/cmで15〜90分混合することが好ましい。ヘンシェルミキサーを用いた場合には、10〜100℃の温度範囲で、回転数500〜3000rpmにて1〜30分混合することが好ましい。ナウターミキサーを用いた場合には、自転回転数25〜200rpm、公転回転数1〜5rpmで15〜60分混合することが好ましい。ファインミル、ピンミルを用いた場合には、鉄化合物粒子粉末にアミン化合物を添加しながら回転数1000〜10,000rpmで粉砕混合することが好ましい。
【0055】
本発明における有機ハロゲン化合物分解触媒は、上記複合化処理によって、鉄化合物粒子粉末の粒子表面の一部にアミン化合物が担持された形態となることが好ましい。
【0056】
次に、本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する土壌及び灰の処理方法ついて述べる。
【0057】
本発明における処理方法は、有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰と有機ハロゲン化合物分解触媒とを混合した後、加熱処理する。
【0058】
本発明においては、あらかじめ、土壌又は灰と有機ハロゲン化合物分解触媒とを混合する。混合の方法は、サンドミル、ヘンシェルミキサー、コンクリートミキサー及びナウターミキサー等を用いた一般的な乾式混合や、前記装置または、一軸および二軸式のニーダー型混合器を用い、必要に応じて水を添加する半乾式混合法などがある。また、前記混合品を圧縮法等で成型し、有機ハロゲン化合物分解触媒と灰や土壌等の被処理物の接触を高めることも有効である。
【0059】
有機ハロゲン化合物分解触媒の添加量は、被処理物100重量部に対して0.1〜100重量部が好ましく、より好ましくは1.0〜50重量部、さらに、好ましくは1.0〜30重量部である。0.1重量部未満の場合には、本発明の目的とする効果が充分得られない。100重量部を超える場合には、効果が飽和するので必要以上に添加する意味がない。
【0060】
前記加熱処理の雰囲気は、空気中又は空気等の酸素含有気体雰囲気下、不活性ガス雰囲気、密閉容器内等、特に限定されるものではないが、酸素含有気体の流通下においては酸化分解をより高めることができるためより好ましい。
【0061】
処理温度は反応時間に応じて変化させればよいが、150〜600℃が好ましく、より好ましくは200〜400℃である。150℃未満では有機ハロゲン化合物分解触媒の分解活性が低く、また、600℃以上に加熱した場合は、有機ハロゲン化合物の分解は可能であるが、加熱に要するエネルギーに見合った有機ハロゲン化合物の分解効果は得られない。
【0062】
本発明の加熱処理においては、連続式又はバッチ式のロータリーキルン、多段式炉やバッチ連続式のプッシャー炉等を用いることができるが、連続式又はバッチ式のロータリーキルン又は多段式炉が好ましい。
【0063】
本発明に係る処理方法を用いることによって、土壌又は灰中の有機ハロゲン化合物を処理前の20%以下、好ましくは17%以下、より好ましくは10%以下にすることができる。
【0064】
【発明の実施の形態】
本発明の代表的な実施の形態は以下の通りである。
【0065】
鉄化合物粒子粉末及び複合触媒の平均粒径は電子顕微鏡写真から測定した数値の平均値で示した。また、比表面積はBET法により測定し、見掛け密度(ρa)はJIS K5101で定められた方法により測定した値で示した。
【0066】
鉄化合物粒子粉末及び複合触媒に含有されるリン、ナトリウムの含有量は、誘導結合プラズマ原子発光分光光度計 SPS‐4000(セイコー電子工業(株)製)で測定した値で示した。
【0067】
鉄化合物粒子粉末及び複合触媒に含有される硫黄の含有量は、炭素−硫黄分析計 EMIA−2200型((株)堀場製作所製)によって測定した値で示した。
【0068】
複合触媒の触媒特性は、鉄化合物粒子粉末を空気中にて、300℃で60分間熱処理して得られる酸化鉄粒子粉末とアミン化合物との複合物50mgをパルス式触媒反応装置を用いて不活性ガス雰囲気中にて5.0×10−7molのモノクロロベンゼンと300℃の温度においてSV=150000h−1の条件で瞬時に接触させた場合に分解する該モノクロロベンゼン量を測定して示した。
【0069】
前記パルス式触媒反応装置としては、リアクター部とガスクロマトグラフィー質量分析計部からなり、ガスクロマトグラフィー質量分析計部は、ガスクロマトグラフィー質量分析計 GC/MSQP−5050((株)島津製作所製)である。
【0070】
なお、本評価法は、Kobesらの文献(R.J.Kobes,et al J.Am.Chem.Soc.,77,5860(1955))や、日本化学会編「実験化学講座11 反応と速度」(丸善、東京(1993))を参考にして行った。
【0071】
<鉄化合物粒子粉末>
鉄化合物粒子粉末1として、紡錘状ゲータイト粒子粉末(平均粒径0.25μm、リン含有量0.002重量%、硫黄含有量0.05重量%、ナトリウム含有量0.08重量%、BET比表面積85m2/g)を用いた。
前記ゲータイト粉末は、所定の評価法による300℃におけるモノクロロベンゼンの分解率は32%であった。
【0072】
<有機ハロゲン化合物分解触媒の製造>
前記ゲータイト粉末1.5kgとトリエタノールアミン75g(該ゲータイト粒子粉末に対して5.0wt%)を一緒にヘンシェルミキサー(公称容量10リットル)中で50℃にて乾式混合(1440rpm、5min)を行い、5.0重量%のトリエタノールアミン(沸点360℃)を担持したゲータイト粒子粉末を得た。
【0073】
前記トリエタノールアミン担持ゲータイト粒子粉末は、平均粒径0.25μm、リン含有量0.002重量%、硫黄含有量0.05重量%、ナトリウム含有量0.08重量%、BET比表面積78m2/g見掛け密度が0.43g/ml、所定の評価法による300℃におけるモノクロロベンゼンの分解率は88%であった。
【0074】
<ダイオキシン類の分解試験>
都市ごみ焼却施設の電気集じん器下の飛灰(ダイオキシン類濃度6.9ng−TEQ/g)400gを被処理体として、前記トリエタノールアミンを担持したゲータイト粒子粉末4g(被処理体100重量部に対して1.0重量部)を添加し、ヘンシェルミキサー(公称容量10リットル)で乾式混合(1440rpm、0.5min)した。次いで、得られた混合物を内容量11リットルのバッチ式ロータリーキルンに移し、300℃、空気(3リットル/分)流通下で60分間加熱処理を行った。
【0075】
<ダイオキシン類の濃度測定>
ダイオキシン類の濃度測定は、厚生省告示第6号「灰中のダイオキシン類及びコプラナーPCBの測定方法」により実施した。その結果、ダイオキシン類濃度は0.32ng−TEQ/gであり、処理前のダイオキシン類含有量に対して4.6%に相当する量まで減少していた。
【0076】
【作用】
本発明において重要な点は、本発明に係る土壌又は灰の処理方法によって、土壌又は灰中の有機ハロゲン化合物を効果的に、しかも、経済的に分解できるという点である。
【0077】
土壌又は灰中の有機ハロゲン化合物を効果的に分解できる理由として本発明者は、有機ハロゲン化合物分解触媒の触媒活性が高いこと及び有機ハロゲン化合物分解触媒が土壌又は灰と十分に接触できることによるものと考えている。
【0078】
まず、有機ハロゲン化合物分解触媒の触媒活性については、鉄化合物自体の有機ハロゲン化合物の分解能が優れていること、鉄化合物の表面に担持されたアミン化合物によって有機ハロゲン化合物の吸着反応が促進されたこと及び鉄化合物とアミン化合物が接触していることによって、アミン化合物によって吸着された有機ハロゲン化合物の分解反応が鉄化合物によって促進されたものと考えている。また、アミン化合物は有機ハロゲン化合物を吸着すると共に、有機ハロゲン化合物の脱塩素反応も生じているものと考えている。
【0079】
また、有機ハロゲン化合物分解触媒の見掛け密度が低いので、土壌又は灰の被処理物と容易に混合することができ、緊密な接触状態を保つことができる。
【0080】
【実施例】
次に、本発明の実施例及び比較例を挙げる。
【0081】
<鉄化合物1〜7>
有機ハロゲン化合物分解触媒の鉄化合物として鉄化合物1〜5を用意した。鉄化合物の諸特性を表1に示す。なお、鉄化合物4は見掛け密度ρaが0.98と大きい粉末である。
【0082】
【表1】
【0083】
<複合触媒1〜10>
有機ハロゲン化合物分解触媒として複合触媒1〜7を用意した。複合触媒9については、鉄化合物の変わりに、それ自体には触媒活性のないシリカゲルを用いた。複合触媒の諸特性を表2に示す。複合触媒6については、ナウターミキサー(自転30rpm、公転2rpm)を用いて鉄化合物4とアニリンとを5分間混合した。
【0084】
【表2】
【0085】
<ダイオキシン類の分解試験>
実施例1〜6、比較例1〜8、参考例1、2:
灰の種類、複合触媒の種類、加熱処理の雰囲気、加熱温度及び保持時間を種々変化させた以外は前記発明の実施の形態と同様にして灰中及び土壌中の有機ハロゲン化合物の分解試験を行った。
【0086】
ダイオキシン類の分解試験の諸条件及び結果を表3に示す。なお、比較例2は触媒を用いることなく加熱処理を行った。比較例5では、触媒として次亜リン酸カルシウム(関東化学(株)製試薬、純度80%以上)を用いて加熱処理を行った。また、表4に処理前の灰の分析値及び表5に処理前の土壌の分析値を示す。
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【発明の効果】
本発明に係る有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰の処理方法は、ダイオキシン類やダイオキシン前駆体を効率よく分解することができるので、土壌又は灰の処理方法として好適である。
Claims (2)
- 有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰と有機ハロゲン化合物分解触媒とを混合し、加熱処理するにあたり、前記有機ハロゲン化合物分解触媒として、リン含有量が0.02重量%以下であって、硫黄含有量が0.3重量%以下であって、ナトリウム含有量が0.3重量%以下である平均粒径が0.01〜2.0μmの含水酸化鉄粒子粉末、酸化鉄粒子粉末の1種又は2種以上からなる鉄化合物粒子粉末と沸点が150℃以上のアミン化合物との複合触媒であり、該複合触媒の見掛け密度(ρa)が0.8g/ml以下であって、且つ、前記鉄化合物粒子粉末を空気中にて300℃で、60分間熱処理して得られた酸化鉄粉末と上記アミン化合物との複合物50mgをパルス式触媒反応装置を用いて不活性ガス雰囲気中にて5.0×10−7molのモノクロロベンゼンと300℃の温度においてSV=150000h−1の条件で瞬時に接触させた場合に、上記モノクロロベンゼンの50%以上を分解できる活性を有する複合触媒を用いることを特徴とする有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰の処理方法。
- 加熱処理を空気流通下で行うことを特徴とする請求項1記載の有機ハロゲン化合物を含有する土壌又は灰の処理方法。
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