JP3926245B2 - 金属蒸発用発熱体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空中で金属を蒸発させる際に使用される金属蒸発用発熱体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の金属蒸発用発熱体としては、キャビティを有する導電性セラミックス製のボートがあり(特許文献1)、その市販品の一例は電気化学工業社製商品名「BNコンポジットEC」である。これの使用方法は、ボートの両端をクランプで電極につなぎ電圧を印加することによってそれを発熱させ、キャビティに入れられた金属を溶融・蒸発させて蒸着膜を得るものである。
【0003】
【特許文献1】
特公昭53−20256号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このようなボートは、使用回数の増加にともなってキャビティ部が溶融金属により侵され、次第にその反応生成物が堆積し、蒸着能が減少してボート寿命となる。金属がアルミニウムである場合の平均寿命は約500回である。本発明の目的は、このボート寿命を延ばすことである。本発明の目的は、導電性セラミックスの異なる2面又は3面以上にキャビティを設けることによって達成することができる。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、長方形断面を持つ導電性セラミックス製四角柱体の上面と下面に、一つのキャビティを有してなることを特徴とする金属蒸発用発熱体である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、更に詳しく本発明について説明すると、本発明の特徴は、長方形断面を持つ導電性セラミックスの上面に一つのキャビティが設けられてなる金属蒸発用発熱体(以下、「ボート」ともいう。)において、上記上面に対応する下面にも一つのキャビティを形成させたことである。これによって、キャビティ面を切り替えることにより、ボートの長寿命化を図ることができる。
【0007】
本発明で使用されるボートの材質は導電性セラミックスであり、二硼化チタン(TiB2 )、窒化アルミニウム(AlN)及び六方晶窒化ほう素(BN)の複合焼結体が一般的であるが、導電物質のTiB2は二硼化ジルコニウム(ZrB2 )であってもよい。
【0008】
上記導電性セラミックスは、BN粉末15〜50質量%、TiB2 粉末及び/又はZrB230〜60質量%及びAlN粉末10〜45質量%からなる混合粉末の成形物を、窒素、アルゴン等の非酸化性雰囲気下、温度1700〜2000℃、時間30〜120分で焼結して製造されたものであることが好ましい。
【0009】
とくに、溶融金属に対する耐食性を高めてボート寿命を更に延ばすために、上記BN粉末は、結晶子の大きさ(La)が800A以上、特に900A以上の割合が50質量%以上、特に80質量%以上であるものが好ましい。
【0010】
本発明の金属蒸発用発熱体(ボート)は、上記導電性セラミックスから長方形断面を持つ四角柱体を切り出しその上面と下面に一つのキャビティを加工する。これによって、キャビティを上面にしか設けられていない従来ボートに存在する以下の欠点をなくすことができる。
【0011】
すなわち、従来のように、キャビティを上面にしか設けられていないボートにあっては、その使用による劣化は一般的に溶融金属とボートの成分(特にBN)との反応によるスラッジ生成によるものである。たとえば、溶融金属がアルミニウムの場合には、Al+BN→AlN+Bの反応により、ボートの構成成分であるBNが腐食されてAlNが生成し、密度の低い多孔質スラッジとなってキャビティに堆積する。
【0012】
このようなスラッジの堆積したキャビティにあっては、蒸着用金属の濡れ広がりを妨げられるので、金属の蒸発はキャビティ内部で一様なものとはなくなるうえに、蒸発量も減少する。蒸着の終期になると、キャビティの端部からスラッジの堆積が激しくなり、キャビティ中央部に溶融金属が残っている状態となる。そのため、約500回程度の短寿命となる。しかし、ヒーターとしての発熱機能自体にはほとんど劣化がない。
【0013】
そこで、本発明においては、この発熱機能自体にはほとんど劣化がないことに着目し、上記上面に対応する下面にも一つのキャビティを形成しておき、切り替え使用を行ってボート寿命を延長させたものである。
【0014】
本発明の金属蒸発用発熱体(ボート)実施態様の一例を図1に示した。すなわち、長方形断面を持つ導電性セラミックス製四角柱体の上面と下面に一つのキャビティを設けた構造(図1)、である。図2〜図4は比較例のボートである。すなわち、正三角形の断面を持つ導電性セラミックス製多角柱体の3面にキャビティを設けた構造(図2)、正方形の断面を持つ導電性セラミックス製多角柱体の4面にキャビティを設けた構造(図3)、長方形断面を持つ導電性セラミックス製四角柱体の上面にのみ一つのキャビティを持つ従来構造(図4)である。
【0015】
一般的にボートはキャビティ面の劣化により寿命となるが、多数面を切り替えることで連続的にボートを使用し続けるとヒーターとしての機能も徐々に劣化し始める。特に4面キャビティを持つ構造では実施例に示すように、ヒーターの劣化などにより過剰な発熱によってボートが損傷する恐れがある。そこで、本発明においては、長方形断面を持つ導電性セラミックス製四角柱体の上面と下面に一つのキャビティを設けた構造とした。
【0016】
キャビティの形状は、舟形、谷型等の区別なく採用することができる。また、その寸法の一例を示せば、20〜26mm×60〜120mm×1〜2mmである。ボートの全体寸法としては、90〜160mm×25〜40mm×8〜15mmが一般的である。
【0017】
【実施例】
以下、実施例、比較例をあげて更に具体的に本発明を説明する。
【0018】
実施例1 比較例1〜3
TiB2 粉末(平均粒子径12μm)45質量%、BN粉末(平均粒子径0.7μm、結晶子の大きさ(La)900A以上の割合が80質量%)30質量%及びAlN粉末(平均粒子径10μm)25質量%の混合粉末を黒鉛ダイスに充填し、温度1750℃でホットプレスを行って直径200mm×高さ10mmの導電性セラミックスの円柱焼結体を製造した。
【0019】
この焼結体から、表1に示すような角柱体を切り出し、その表面の中央部に幅4mm×深さ2mm×長さ60mmの舟形キャビティを機械加工によりそれぞれ設け、図1〜図4、表1に示される本発明の金属蒸発用発熱体(ボート)とした。
【0020】
これらボートの寿命を評価するため、ボートの端部をクランプで電極につなぎキャビティ中央部の温度が1500℃となるように印加電圧を決定し設定した。1回のアルミニウム量80mg、通電時間30秒、真空度2×10-2Paとして蒸着試験を行い、この操作を設定された一定印加電圧で繰り返し行った。そして、ボート上方200mmの位置におけるアルミニウム蒸着膜の厚みが2000A以下になったときの繰り返し回数をボートにおけるキャビティ面の寿命とした。その結果を表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
表1に示されるように、実施例1は比較例1〜3よりも、二面のキャビティを使用した後のボート寿命が大幅に改善されていることがわかる。
【0023】
【発明の効果】
本発明によれば、長寿命の金属蒸発用発熱体(ボート)が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属蒸発用発熱体(ボート)の一例である。Aは斜視図、BはAの中央断面図である。
【図2】比較例の金属蒸発用発熱体(ボート)の別の一例である。Aは斜視図、BはAの中央断面図である。
【図3】比較例の金属蒸発用発熱体(ボート)の他の一例である。Aは斜視図、BはAの中央断面図である。
【図4】比較例の金属蒸発用発熱体(ボート)の一例である。Aは斜視図、BはAの中央断面図である。
【符号の説明】
1 金属蒸発用発熱体
2 キャビティ
Claims (1)
- 長方形断面を持つ導電性セラミックス製四角柱体の上面と下面に、一つのキャビティを有してなることを特徴とする金属蒸発用発熱体。
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