JP3926026B2 - アンカー固定式軌道構造及びアンカー固定式まくら木 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は軌道に作用する水平荷重をアンカー体で負担するようにした軌道構造及びまくら木に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来から一般的に使用されてきた鉄道の軌道構造としては、鉄筋コンクリートスラブ版等に直接レールを締結するスラブ軌道、コンクリート製まくら木を砂利(バラストと称する)やコンクリートで固定する軌道構造などがある。
バラスト軌道構造は、まくら木をバラストで支えるため、まくら木下に十分なバラストの層厚が必要となり、レール頭面とバラスト最下端との間で相当の高さが必要となり、本体構造物から高い位置で列車が走行することとなる。また、バラスト軌道はまくら木を固定する材料が砂利であり、列車走行頻度により生ずる砂利の劣化、軌道狂いに対する軌道整備が重要な課題とされるが、軌道整備には作業時間帯の制限や騒音問題などから相当の問題を抱えている。
【0003】
スラブ軌道はバラスト軌道のこのような短所を解消するために開発されたが、バラスト軌道に比べ騒音の問題を有することや、ランニングコストは安いものの建設コストが高いことなどから、近年採用が見送られているのが実状である。さらに,新設の場合には、列車運行、レール、架線等といった制約条件がないことから施工が容易であるが、軌道構造が経年等によって劣化損傷し、取替えなどが必要となった場合に、容易には取り替えや軌道構造の変更ができないのが実状である。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためのもので、軌道構造の変更や取替えを容易にできるアンカー固定式軌道構造及びアンカー固定式まくら木を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、アンカー体用穴が形成された軌道を支持する下部構造体上に、前記アンカー体用穴に対応する箇所にアンカー体用孔が貫通形成されたまくら木を設置し、前記まくらぎのアンカー体用孔を通して前記下部構造体のアンカー体用穴にアンカー体を挿入し、挿入したアンカー体でまくら木に作用する水平荷重を負担するようにしたアンカー固定式軌道構造であって、前記アンカー体用孔にテーパ付アンカー固定用ラッパ管を埋め込んでその中にアンカー用外とう管を入れ、前記アンカー用外とう管を通してアンカー体を挿入するとともに、前記アンカー固定用ラッパ管とアンカー用外とう管の間を固定手段で固定したことを特徴とする。
また、本発明は、軌道を支持する下部構造体に形成したアンカー体用穴に対応する箇所に、水平荷重を負担するアンカー体が挿入されるアンカー体用孔が形成されたアンカー固定式まくら木であって、前記アンカー体用孔にテーパ付アンカー固定用ラッパ管が埋め込まれてその中にアンカー体を挿入するアンカー用外とう管が配置され、前記アンカー固定用ラッパ管とアンカー用外とう管の間が固定手段で固定されることを特徴とする。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
現在スラブ軌道構造で敷設されている軌道が劣化損傷等により取替えが必要となった場合、スラブ軌道を敷設し直すことは容易ではなく、ましてトンネル内のように空間が限定される箇所においてはさらに困難となる。このため、本発明では、取扱い重量を従来のコンクリートまくら木程度の重量に抑えたまくら木を使用し、作業性を向上させると共に、スラブ軌道であっても容易に交換可能な軌道構造とする。なお、本発明で使用するまくら木は、鉛直方向の挙動を拘束せずにまくら木に作用する水平加重をアンカー体で負担する構造のアンカー固定式まくら木(以下アンカーまくら木という)を使用する。
【0007】
図1はアンカー固定式軌道構造を説明する概略図である。
図1によりアンカーまくら木の設置について説明すると、
・交換が必要な箇所であらかじめアンカーまくら木配置箇所に軌道スラブ上から路盤コンクリート1に対してアンカーボルト設置用の穴2をコアボーリング等により削孔する。
・次いで、交換部分の軌道スラブを取り壊し、露出した路盤コンクリート1上にPCまくら木等からなるアンカーまくら木3(構造の詳細は後述する)を配置する。このアンカーまくら木3は、重量を従来のコンクリートまくら木程度の重量となるまくら木高さとする。軌道スラブにはレールが取り付けられたままであるので、アンカーまくら木3は、軌道スラブを取り除いた箇所(窪み)のレールの下側へ挿入する形で配置する。このアンカーまくら木3には、あらかじめアンカーボルト設置用の穴2に対応する箇所にアンカーボルト用孔4と、高さ調節用の据付用ボルト孔5が貫通形成されている。図1の例では、アンカーボルト用孔4は、レールの内側に形成されているが、レールの外側に形成してもよい。
・この時点でレールにアンカーまくら木3を据え付け、軌道高さを調整して所定高さの位置に据えつける。この据付けには据付け用保持ボルト孔5に保持ボルト(図示せず)を挿入して保持ボルトの回転により高さを調整する。この状態では、アンカーまくら木3は、レールにぶら下がるような形となる。
・アンカーまくら木3の高さ及び方向性を調整した後、下面に所定の厚みの合成ゴム等からなる弾性材(ゴム支承体)6を取り付け、その下部に簡易な型枠を設置し、速硬化型モルタルを充填して調整モルタル7を施工する。なお、この際、調整モルタル7にはクラツク防上などのメッシュ筋等の補強筋を配置することが望ましい。また,弾性材は必要に応じて設けられるが、弾性材がない場合も同様に補強筋入りの調整モルタルを施工するのが望ましい。
・アンカーまくら木3の固定用アンカーボルト孔4を貫通してアンカーボルト(鋼棒)8を路盤コンクリート1のアンカーボルト穴2に挿入する。
・路盤コンクリート1のアンカーボルト穴2に速硬化型のアンカー充填材(例えば、コンクリート、セメントモルタル、ポリマーモルタル、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂等)を注入充填してアンカーボルトを固定する。
・アンカーまくら木3とアンカーボルト8との間に図示しないアンカー固定用のくさび(アンカー固定用キャンバー)を挿入して(詳細は後述する)、まくら木をアンカーボルト8に固定する。
【0008】
なお、アンカーまくら木3を鉛直方向に拘束していないのは、拘束力により弾性材やまくら木が壊れるのを防止するためである。
【0009】
この軌道構造によれば、スラブ軌道の整備の必要な箇所に容易に設置可能であり、特に、トンネル内などのスラブ軌道の整備には、交換の必要なスラブのみ取り除き、路盤コンクリート等の下部構造体に穴を開けるだけでよく、レールの取り外し等が必要ないので極めて好適である。また、軌道の変更や取替えだけでなく、軌道の新設の場合にもこの軌道構造を適用することも可能である。
【0010】
次に、上記アンカー固定まくら木と、その固定装置についてより詳細に説明する。
従来のまくら木は、道床砂利やコンクリート枠によって線路方向及び線路直角方向へ水平荷重や列車の荷重を負担する構造となっているが、本発明のアンカー固定まくら木は、鉛直方向は拘束せず、水平荷重のみを軌道を支持する下部構造体(路盤コンクリート等)に設置したアンカー体(図1の例のアンカーボルト)によって負担する構造とし、そのアンカー体に設置するまくら木である。
【0011】
図2は本発明のアンカー固定式まくら木を説明する詳細図で、図2(a)は断面図、図2(b)は平面図である。なお、図1と同一参照数字は同一内容を示している。
図2において、PCまくら木3は、鉛直方向は拘束せず、水平荷重のみ負担するためのアンカー体を挿入設置する位置に固定用アンカー孔4を有しており、その設置位置はまくら木のどの位置にあってもよい。アンカー固定式まくら木の材料は、コンクリート構造,鋼構造、樹脂材料,合成材料などを使用することができる。また、この例では下面に緩衝用の弾性材6を貼りつけているが弾性材をはずして直接下部構造体に接してもよい。
【0012】
このように、本発明のアンカー固定式まくら木は、鉛直方向を拘束せず、水平荷重のみ負担するためのアンカー体を挿入するための固定用アンカー孔が形成されている以外は、従来のPCまくら木と同様に取り扱えるようなサイズと重量であり、通常のまくら木交換作業程度の作業性を有し、現場での1本ごとの作業が行えるため、短時間の作業間合いで施工が可能なものである。
図3は図1のA部の詳細を示すアンカー固定装置を説明する図で、図3(a)は断面図、図3(b)は平面図である。
図3において、軌道を支持する下部構造体である路盤コンクリート1上に設置されるまくら木3のアンカー孔には、円錐形のアンカー固定用ラッパ管11が埋め込まれており、この中にアンカー用外とう管12を入れ、その中にアンカー体13を入れる構造となっている。アンカー用外とう管12とアンカー体13との間には遊びがあり、アンカー体13は列車荷重等による鉛直方向の荷重を負担しない構造であり、このためまくら木及び下部構造体に鉛直荷重を負荷しない構造である。また,まくら木の設置の施工精度は、レール頭面の方向性及び高低といった精度に大きく影響される。まくら木の施工精度は、アンカー体13の施工精度に影響されることになるが、アンカー体13の施工性を考慮すると、僅かな施工誤差はやむを得ないのが実状である。そこで、本発明では、アンカー固定用ラッパ管11をテーパーを有する構造にしてアンカー用外とう管12との間に隙間を持たせ、アンカー用外とう管12とアンカー固定用ラッパ管11との間に複数のテーパー付アンカー固定用キャンバー14を挿入することで前後左右上下方向に自由に固定することができるようにしている。なお、図では4個の固定用キャンバー14を挿入する例を示しているが、個数は適宜変えることができる。また、固定方法として固定用キャンバーのほか、注入物による充填でもよく,充填材としてたとえば,コンクリート,セメントモルタル,ポリマーモルタル,セメントアスフアルトモルタル,エポキシ系樹脂,アクリル系樹脂,ポリエステル系樹脂などが挙げられる。
【0013】
【発明の効果】
本発明は、従来、道床砂利やコンクリート型ストッパーによって負担していた軌道の水平荷重をアンカー体で負担するという、従来の軌道構造と構造形式の発想を異にするものであり、短時間に精度よく施工が可能となるため、軌道の設置に際し、新設、交換を問わずに施工性を格段に向上させることができる。
特に、スラブ軌道の劣化損傷などの場合に、スラブ版の交換を行おうとするとレールを外すなどの大がかりな工事となり、列車運行の停止やスラブ板の製作に多大な費用と工期を要することになるが、本発明により現場作業でスラブ軌道区間の小規模の交換を簡単に行えるようになり、作業効率が向上して時間短縮を図ることができ、さらに、道床砂利やコンクリート枠のストッパー等が不要となることから大幅なコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 アンカー固定軌道構造を説明する概略図である。
【図2】 アンカー固定まくら木を説明する図である。
【図3】 アンカー固定装置を説明する図である。
【符号の説明】
1…路盤コンクリート、2…アンカーボルト穴、3…アンカーまくら木、4…アンカーボルト用孔、5…据付用保持ボルト孔、6…弾性材、7調整モルタル、8…アンカーボルト、9…アンカー充填材、11…アンカー固定用ラッパ管、12…アンカー固定用外とう管、13…アンカー体、14…アンカー固定用キャンバー。
Claims (2)
- アンカー体用穴が形成された軌道を支持する下部構造体上に、前記アンカー体用穴に対応する箇所にアンカー体用孔が貫通形成されたまくら木を設置し、前記まくらぎのアンカー体用孔を通して前記下部構造体のアンカー体用穴にアンカー体を挿入し、挿入したアンカー体でまくら木に作用する水平荷重を負担するようにしたアンカー固定式軌道構造であって、
前記アンカー体用孔にテーパ付アンカー固定用ラッパ管を埋め込んでその中にアンカー用外とう管を入れ、前記アンカー用外とう管を通してアンカー体を挿入するとともに、前記アンカー固定用ラッパ管とアンカー用外とう管の間を固定手段で固定したことを特徴とするアンカー固定式軌道構造。 - 軌道を支持する下部構造体に形成したアンカー体用穴に対応する箇所に、水平荷重を負担するアンカー体が挿入されるアンカー体用孔が形成されたアンカー固定式まくら木であって、
前記アンカー体用孔にテーパ付アンカー固定用ラッパ管が埋め込まれてその中にアンカー体を挿入するアンカー用外とう管が配置され、前記アンカー固定用ラッパ管とアンカー用外とう管の間が固定手段で固定されることを特徴とするアンカー固定式まくら木。
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