JP3925188B2 - アプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法及び中継ノードシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ネットワークにおいて、アプリケーションレイヤでの処理によりマルチキャスト通信を実現するアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法及び中継ノードシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
ブロードバンド・ネットワークの普及に伴い、ネットワーク上で音声や動画などのストリーミングデータを複数のユーザに対して同報配信するマルチキャスト技術が注目されている。マルチキャスト通信を実現する方式としては、IPマルチキャストがある。IPマルチキャストでは、パケットの宛先IPアドレスフィールドにIPマルチキャストアドレスをセットしてデータ転送を行う。中継ノード(ルータ、L3スイッチなど)は、このIPマルチキャストアドレスに基づいた配信経路の設定を行い、また、受信データについてデータ複製処理をして次ホップノードへ転送する。IPマルチキャストアドレスは、IPv4やIPv6においてマルチキャスト用に用意されているアドレスセットである。IPマルチキャストの場合、複数の受信ホストからなるマルチキャストグループは、1つのネットワークユニークなIPマルチキャストアドレスに対応付けされる。
【0003】
図11にIPマルチキャストの概略構成について示す。経路制御処理は、アプリケーションレイヤで行われる。データ転送及びデータ複製処理は、ネットワークレイヤで行われる。配信データは、IPマルチキャストアドレスに基づき転送処理される。
【0004】
しかし、IPマルチキャストを実現するためには、ネットワークを構成している機器を全てIPマルチキャストに対応させる必要がある。
【0005】
そこで、ユニキャストにしか対応していない既存のIPネットワークにおいてマルチキャストを実現する技術として、アプリケーションレイヤ・マルチキャスト(ALM)が提案されている。ALMは、ネットワークレイヤ(IPレイヤ、レイヤ3)より上位のレイヤであるアプリケーションレイヤにおいて配信データの配信経路の制御やデータ複製処理を行う。図12にALMの概略構成を示す。配信データは、ユニキャストアドレスに基づき転送処理される。ALMは、ネットワークレイヤでは既存のユニキャストIPネットワークを利用できるという利点がある。
【0006】
ALMを実現するための中継ノードにおける機能として主に、マルチキャストデータの配信経路(配信ツリー)を制御する経路制御機能と、マルチキャストデータの下流ノードへのデータ複製を行うデータ複製機能とがある。このうち、データ複製機能によるデータ複製処理は、動画などのリアルタイム・ストリームデータで遅延を発生させないように高速に処理する必要がある。しかし現状のALMは、PCやワークステーションなどの汎用計算機のCPU上で上記データ複製機能を実現している。そのため、ASIC(Application Specific Integrated Circuit )などの専用ハードウェアを用いた場合に比べ、データ複製処理を高速に動作させることが難しい。
【0007】
また、経路制御機能とデータ複製機能とが同じCPU上で動作している場合、データ複製処理の負荷が経路制御処理に影響を与え、正常な経路制御が行えなくなる可能性などもある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、アプリケーションレイヤ・マルチキャストにおいて経路制御処理とデータ複製処理とを別のハードウェアに分離して処理する方式を提案する。経路制御処理は従来と同様に汎用計算機のCPU上で動作させ、データ複製処理は、既存のIPマルチキャスト対応のルータ(L3スイッチ)などの専用ハードウェアで動作させることにより、既存の装置とネットワークを利用した簡易な構成で高速なアプリケーションレイヤ・マルチキャストを実現することのできる方法及び中継ノードシステムを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するために、請求項1記載の発明は、コンテンツを配信するデータ送信ホストと、コンテンツを中継する中継ノードと、コンテンツを要求して受信する複数のデータ受信ホストと、が配置されたユニキャストIPネットワーク上においてマルチキャスト通信を行うアプリケーションレイヤ・マルチキャスト(ALM)方法であって、中継ノードは、アプリケーションレイヤでALM経路制御処理を行う経路制御装置と、レイヤ3以下で及び専用ハードウェアで次ホップノードへのデータ複製及び転送処理を行うデータ複製装置と、で構成され、経路制御装置とデータ複製装置との間では、中継コンテンツについて所定の管理IDを対応させて情報管理及び通信を行い、経路制御装置は、経路情報に更新が生じた場合、データ複製装置に対して更新情報を通知する処理を行い、また、上流から受信したコンテンツのデータについて、宛先IPアドレスに管理IDをセットしてデータ複製装置に転送する処理を行い、データ複製装置は、コンテンツについて、次ホップノードに対する複製エントリを管理し、経路制御装置からの通知に基づき複製エントリを更新する処理を行い、また、経路制御装置からの転送データについて、複製エントリを参照してデータ複製し、宛先IPアドレスに次ホップノードIPアドレスをセットしてユニキャストで送信する処理を行うことを特徴としている。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、管理IDとしてIPマルチキャストアドレスを用いることを特徴としている。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の発明において、経路情報及び複製エントリの管理する情報要素として、次ホップノードあるいはデータ受信ホストへの経路におけるQoS情報を含むことを特徴としている。
【0013】
請求項4記載の発明は、ユニキャストIPネットワーク上に配置され、データ送信ホストから配信されるコンテンツデータを受信し、前記コンテンツを要求する複数のデータ受信ホストへ中継してアプリケーションレイヤ・マルチキャスト(ALM)を行う中継ノードシステムであって、アプリケーションレイヤでALM経路制御処理を行う経路制御装置と、レイヤ3以下で及び専用ハードウェアで次ホップノードへのデータ複製及び転送処理を行うデータ複製装置と、で構成され、経路制御装置とデータ複製装置との間では、中継コンテンツについて所定の管理IDを対応させて情報管理及び通信を行い、前記経路制御装置は、経路情報に更新が生じた場合、前記データ複製装置に対して更新情報を通知する処理を行い、また、上流から受信した前記コンテンツのデータについて、宛先IPアドレスに前記管理IDをセットして前記データ複製装置に転送する処理を行い、前記データ複製装置は、前記コンテンツについて、次ホップノードに対する複製エントリを管理し、前記経路制御装置からの通知に基づき該複製エントリを更新する処理を行い、また、前記経路制御装置からの転送データについて、前記複製エントリを参照してデータ複製し、宛先IPアドレスに次ホップノードIPアドレスをセットしてユニキャストで送信する処理を行うことを特徴としている。
【0014】
請求項5記載の発明は、請求項4項記載の発明において、管理IDとしてIPマルチキャストアドレスを用いることを特徴としている。
【0015】
請求項6記載の発明は、請求項4または5記載の発明において、経路制御装置は、他の経路制御装置と経路制御情報を交換し合うことによりALM配信経路の制御を行い、また、前記コンテンツについての経路情報を管理する手段と、前記経路情報に更新が生じた場合に該更新情報を前記データ複製装置に通知する手段と、前記コンテンツのコンテンツIDと、該コンテンツに対する管理IDと、の対応を管理する手段と、上流からの前記コンテンツのデータについて、宛先IPアドレスに前記管理IDをセットして前記データ複製装置へ転送する手段と、を有し、前記データ複製装置は、前記コンテンツについての次ホップノードへの複製エントリを管理し、前記更新情報の通知に基づき、該複製エントリを更新する手段と、前記経路制御装置からの転送データについて、前記管理IDにより識別し、また、前記複製エントリを参照してデータ複製し、宛先IPアドレスに次ホップノードIPアドレスをセットしてユニキャストで送信する手段と、を有することを特徴としている。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト(ALM)方法を実現するための構成を示す図である。また、図2は、本発明の第1の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成(図1に示す構成)における中継ノード(中継ノードシステム)20の構成を示すブロック図である。本発明は、既存のマルチキャスト未対応のIPネットワーク上でアプリケーションレイヤ・マルチキャスト(ALM)を実現し、特に、中継ノードでの経路制御処理とデータ複製処理とをハードウェア的に分離して処理させ、データ複製処理を高速に動作させる構成を提供するものである。本発明の適用例として、経路制御装置は汎用計算機に実装され、データ複製装置は、ルータやスイッチなどに実装される。以下、本明細書においては、必要に応じて、アプリケーションレイヤ・マルチキャストをALM、マルチキャストをMC、ユニキャストをUCと略記する。
【0017】
図1において、本ALM方法を実現するための構成は、データ送信ホスト100、中継ノード20(110〜130)、データ受信ホスト140〜170を含んで構成される。データ送信ホスト100、中継ノード20、及び、データ受信ホスト140〜170はユニキャスト・ネットワーク上に配置され、それらは直接のリンクで接続されている必要はない。上記各ノード間では、ユニキャストでデータ転送を行う。
【0018】
本実施の形態の中継ノード(中継ノードシステム)20は、その機能により経路制御装置21とデータ複製装置22とにハードウェア的に分離された形で構成される。この2つの装置は、同一セグメント内で接続される。分離の結果、中継ノードシステム20内つまり2つの装置21及び22間では、中継データについて共通の管理IDにより情報管理し、またその管理IDを用いて通信(中継データの転送)を行う。管理IDは、同一セグメント内でのみ使用される。
【0019】
第1の実施例では、特にこの管理IDとしてIPマルチキャストアドレスを用いる。このIPマルチキャストアドレスは、IPマルチキャストルーティングを実現するために用いるのではなく、データ複製装置22での複製処理を低レイヤで処理するために用いる。管理IDにIPマルチキャストアドレスを用いることにより、レイヤ3でのデータ認識を可能にする。データ複製装置22はレイヤ3までの処理を扱う。データ複製装置22としては既存のIPマルチキャスト対応ルータなどを利用することができる。
【0020】
データ送信ホスト100は、音声や動画などのデータのALM配信を行う送信元ホストである。データ受信ホスト140〜170は、上記データを要求して受信を行う宛先ホストである。配信対象であるALMデータ(コンテンツ、オブジェクト、セッションなど呼称は様々である。以下、単にデータあるいはコンテンツなどと呼ぶ)は、特に音声や動画などのリアルタイム・ストリームデータである。これを、ALMにより複数のデータ受信ホストが同時に受信する。1つの配信データについて、データ送信ホスト100、中継ノード20、及びデータ受信ホスト140〜170により、ALM配信経路(配信ツリー)が構成される。これは、ALMデータの受信についての受信ホストの参加の状態により、随時、変動する。
【0021】
データ受信ホスト140〜170は、ALMデータを受信する宛先ホストである。データ受信ホストは、あるデータ(コンテンツ)について、受信を開始する際には、最寄りの中継ノード20の経路制御装置21に対してデータ受信要求メッセージを送信する。このメッセージには、少なくとも要求するデータのID(コンテンツID)が含まれる。中継ノード20において要求メッセージが受信されると、データ受信ホストへの配信経路の構築処理が行われる。
【0022】
中継ノード(中継ノードシステム)20は、ALMデータの配信の中継を行うノードである。中継ノード20は、経路制御装置21と、データ複製装置22とに分割され、同一セグメント内で接続されている。経路制御装置21は、データ受信要求あるいは経路作成メッセージを下流ノードから受信して配信経路の構築を行う。また、配信データを上流ノードから受信し、データ複製装置22へ転送する。データ複製装置22は、経路制御装置21から転送されたデータをデータ複製して下流ノードへユニキャストで転送する。
【0023】
経路制御装置21は、ALM配信経路のルーティング、配信経路の構築や更新や保守、データ受信ホストについての情報の管理などの複雑な経路制御処理を担当し、これを汎用計算機(CPU)によりアプリケーションレイヤで処理する。経路制御装置21は、ALM制御部211、経路管理部212、経路情報通知部213、データ転送部214を有する。
【0024】
データ複製装置22は、経路制御装置21から転送されてきた中継データについて、複製エントリに基づきデータ複製し、下流の次ホップノードへ転送するデータ複製及び転送処理を担当する。データ複製処理は、遅延を抑えるために高速処理が要求されるので、本発明ではASICなどの専用ハードウェアにより処理する。第1の実施例においてデータ複製処理は、データの宛先IPアドレスをIPマルチキャストアドレスから次ホップノードIPアドレスに変換するなどのレイヤ3以下での処理である。各中継ノードのデータ複製装置22は、次ホップノードについての情報を複製エントリ(登録情報)という形で管理する。次ホップノードは、他の中継ノードの経路制御装置もしくはデータ受信ホストである。
【0025】
前提として、データ送信ホスト100が配信するコンテンツは、ALMネットワークでユニークなID(識別子)で区別される。これをコンテンツIDと呼ぶことにする。コンテンツIDは、例えばURLなどの記述方式を用いることができる。データ受信ホストは、コンテンツIDを指定してデータ受信要求を行う。
【0026】
各中継ノード20は、自ノードが中継するコンテンツについての情報を管理する。中継ノード20では、中継コンテンツについて所定の管理IDを対応付けして情報管理する。経路制御装置21とデータ複製装置22との2つの装置間では、その共通の管理IDにより中継コンテンツデータが扱われる。第1の実施例では、管理IDとしてIPマルチキャストアドレスを用いる。
【0027】
経路制御装置21において、ALM制御部211は、ALM経路の制御を行う。ALM制御部211は、ALMネットワークを構成する他の中継ノードの経路制御装置との間で、定期的に経路制御情報の交換を行い、ALMルーティングを行う。この処理では、データ送信ホスト100の位置情報や他の経路制御装置21の情報などを扱う。ALM制御部211は、中継対象のコンテンツについての情報を経路管理部212において管理する。
【0028】
経路管理部212は、中継対象のコンテンツについての情報、つまり、コンテンツIDや配信経路(配信ツリー)情報、次ホップノードについての情報などを含む情報を管理する。この管理情報を、まとめて経路情報30と呼ぶことにする。経路管理部212は、経路情報30として、特に、コンテンツIDと、中継ノード内での管理IDとの対応を管理する。この管理IDをデータIDと呼ぶことにする。図3に経路情報30の構成とその例を示す。経路情報30として、コンテンツID31、送信装置情報32、データID33、受信装置情報34を持つ。コンテンツID31は、コンテンツについてのALMネットワークでユニークに定まるIDである。送信装置情報32は、上流のデータ送信ホスト100あるいは中継ノードの経路制御装置21のIPアドレスなどである。データID33は、中継ノードにおいてコンテンツID31と対応付けされる管理IDであり、第1の実施例の場合、特にIPマルチキャストアドレスである。受信装置情報34は、次ホップノードについての情報であり、特に次ホップノードのIPアドレスなどである。
【0029】
経路情報通知部213は、経路管理部212が管理している経路情報30に変更があった場合にALM制御部211より経路情報変更の通知を受け、経路情報30についての更新情報を、データ複製装置22の複製エントリ制御部221へ通知する処理を行う。
【0030】
データ転送部214は、上流からユニキャストで受信したコンテンツデータ、つまり、レイヤ3ならばIPデータグラムについて、送信元IPアドレス(Source Address)、コンテンツIDなどの情報を参照し、経路管理部212の管理する経路情報30中からデータID(IPマルチキャストアドレス)を検索して取得する。そして、IPヘッダの宛先IPアドレス(Destination Address )フィールドに、検索されたデータID(IPマルチキャストアドレス)をセットし、データ複製装置22のデータ複製部222へ転送する処理を行う。
【0031】
データ複製装置22は、複製エントリ制御部221と、データ複製部222とを有する。複製エントリ制御部221は、次ホップノードへのデータ転送のための複製エントリ(登録情報)40を管理する。また、複製エントリ制御部222は、経路制御装置21の経路情報通知部213からの経路情報30についての更新情報の通知に基づき、複製エントリ40の追加・削除・更新処理を行う。
【0032】
図4に複製エントリ40の構成及びその例を示す。複製エントリ40では、自ノードでのデータ複製及び転送処理のための次ホップノード情報が管理される。複製エントリ40は、データID41と受信装置情報42とから構成される。データID41は、中継対象であるコンテンツについてのデータ複製装置における管理情報であり、経路制御装置21におけるデータID33と共通のものである。データID41は、第1の実施例ではIPマルチキャスト・アドレス(IPMcastAddr)である。受信装置情報42は、受信したALMデータの複製データを送信する宛先となる次ホップノードについての情報である。受信装置情報42は、次ホップノードのIPアドレスを含む。また、受信装置(次ホップノード)までの経路のサービス品質(QoS:Quality of Service)情報などを含む構成も可能である。あるコンテンツについての受信装置情報42は、転送の対象となる次ホップノードの数だけ存在し、複製エントリ制御部221により随時追加・削除・更新処理される。受信装置情報42が全て削除された場合は、1つのコンテンツについての複製エントリごと削除される。
【0033】
データ複製部222は、経路制御装置21のデータ転送部214から転送されてきたALMデータを複製エントリ制御部221の管理する複製エントリ40に基づきデータ複製処理し、下流の次ホップノードへとユニキャストで送出する処理を行う。データ転送部214から転送されてきたALMデータは、宛先IPアドレスにデータIDとしてIPマルチキャストアドレスがセットされている。データ複製部222は、これを参照してコンテンツを識別する。そして、受信装置情報42の数だけデータ複製及び転送処理を行う。データ複製部222は、IPヘッダの宛先IPアドレスフィールドに受信装置(次ホップノード)のIPアドレス(NextHop IPAddr)をセットしてユニキャストで転送を行う。
【0034】
図8に、各装置間におけるデータ転送でのIPデータグラムの構造、特に、IPヘッダのアドレスフィールにセットされる値について整理しておく。
【0035】
処理の流れを順を追って説明する。ユニキャストネットワーク上において、経路制御装置21同士は、ALM制御部211により定期的に経路制御情報を交換し合っている。コンテンツの受信を希望するデータ受信ホスト、例えば図1での受信ホスト170は、最寄りの経路制御装置131に対してデータ受信を要求するデータ受信要求メッセージを送信する。
【0036】
図5は、経路制御装置21でのデータ受信要求メッセージ受信時の処理フローを示している。経路制御装置21のALM制御部211は、下流から要求メッセージを受信すると、まず経路管理部212に通知し(ステップS1)、経路情報30の更新を行う。ALM制御部211は、経路情報30に基づき、要求されているのが新規のコンテンツIDである場合(ステップS3・YES)、データ送信ホスト方向(上流)の中継ノードの経路制御装置111に対して経路作成メッセージを送信する(ステップS4)。既に経路管理部212の経路情報30内に記述されているコンテンツIDである場合(ステップS3・NO)、上流ノードに対する通知は行わない。上流の中継ノードの経路制御装置でさらに上流のノードに対する配信経路作成処理が繰り返されることにより、ALMネットワークにおいてデータ送信ホスト100からデータ受信ホスト170までの配信経路が構築される。
【0037】
経路制御装置21は、経路作成メッセージを上流ノードに送信する際、上流ノードがデータ送信ホストである場合は、データ送信ホストに対し、データ配信を開始するように要求する。
【0038】
ALM制御部211は、上記配信経路構築処理と共に、経路情報通知部213に経路情報30についての更新情報を通知し、データ複製装置22の複製エントリ制御部221に対して更新情報を通知させる(ステップS5)。更新情報には、新規追加されるコンテンツ及び経路についてのデータID(IPマルチキャストアドレス)33と受信装置情報34が含まれる。配信経路上の各経路制御装置21は、同様な処理を行う。
【0039】
一方、別のデータ受信ホスト、例えば図1でのデータ受信ホスト140が、上記データ受信ホスト170が要求したのと同一のコンテンツの受信を要求したものとする。その場合、中継ノード110からデータ受信ホスト140への配信経路が追加され、中継ノード110においてデータフローが分岐する配信経路が構築される。
【0040】
各中継ノード20において、データ複製装置22は、経路制御装置21から通知された更新情報に基づき、複製エントリ40を更新する。既にそのコンテンツに対する複製エントリが作成されている場合は、受信装置情報42の追加のみを行う。
【0041】
データ送信ホスト100は、コンテンツ配信時、まず、データを経路制御装置111のIPアドレス宛にユニキャストで送信する。図6に経路制御装置21におけるALMデータ受信時の処理フローを示す。経路制御装置21のデータ転送部214は、上流、ここではデータ送信ホスト100からユニキャストでデータを受信すると、受信パケットについて送信元アドレスやコンテンツIDを参照し、経路管理部212から受信コンテンツIDに対応するデータID(IPマルチキャストアドレス)を検索して取得する(もしくは、予めALM制御部211により、コンテンツIDに対応するデータIDをデータ転送部に設定しておく)(ステップS11)。データ転送部214は、IPヘッダ内の宛先IPアドレスフィールドに、経路管理部212から取得したIPマルチキャストアドレスをセットし(ステップS12)、データ複製装置22のデータ複製部222に転送する(ステップS13)。
【0042】
データ複製装置22のデータ複製部222は、経路制御装置21のデータ転送部214から転送データを受信する。図7にデータ複製装置22における転送データ受信時の処理フローを示す。データ複製装置22のデータ複製部222は、経路制御装置21のデータ転送部214から転送データを受信すると、複製エントリ40から、受信データのデータIDに一致するエントリを検索し、受信装置情報42を調べる(ステップS21)。そして、受信データについて、IPヘッダの宛先IPアドレスを、検索した受信装置情報42に含まれる受信装置IPアドレスに変換し(ステップS22)、受信装置へユニキャストで転送する(ステップS23)。これを受信装置情報分繰り返し行う(ステップS24)。
【0043】
他の実施例について説明する。図9は、本発明の第2の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成を示す図である。第1の実施例において、経路制御装置21とデータ複製装置22とは同一セグメント内における疎結合であり、一対一で接続されている必要は無い。つまり、図9の第2の実施例のように、中継ノード80として、一台の経路制御装置81で複数のデータ複製装置82を管理する構成が可能である。経路制御装置81は、第1の実施例と同様、他の経路制御装置81と経路制御情報の交換を行って配信経路を構築する。経路制御装置81は、複数のデータ複製装置82について経路情報を管理する。経路制御装置81は、経路情報についての更新情報を、接続されている複数のデータ複製装置82に通知して複製エントリの更新を行わせる。
【0044】
第2の実施例の場合、配信データは、経路制御装置81を経由せずに転送される。このため、経路制御装置81とデータ複製装置82との間におけるデータの管理ID(データID)として、第1の実施例のようにIPマルチキャストアドレスを使用することはできない。そこで、第2の実施例では、データIDとしてポート番号を使用し、ポート番号によりコンテンツを識別する。具体的には、経路制御装置81は、データ複製装置82に対して中継コンテンツに対応したポート番号を通知して複製エントリを更新させる。データ複製装置82において、複製エントリは、データIDとしてのポート番号と、対応する受信装置情報とから構成されることになる。データ複製装置82は、データ送信ホスト方向(上流)のデータ複製装置82あるいはデータ送信ホストから、経路制御装置81により通知されている上記ポート番号を宛先に持つデータ(UDPパケットなど)を受信すると、複製エントリの受信装置情報に基づき、次ホップノードとなるデータ複製装置82宛にデータ複製処理してユニキャストで転送する。第2の実施例では、ポート番号を用いるため、データ複製装置82はレイヤ4までの処理を行う。第2の実施例における中継ノード80の構成を図10に示す。構成要素は、第1の実施例と概ね同様である。なお、第1の実施例の中継ノードと第2の実施例の中継ノードを組み合わせてALMネットワークを構成することも可能である。
【0045】
なお、上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態の一例を示すものであり、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形実施が可能である。
【0046】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、既存のユニキャストネットワークやIPマルチキャスト対応ルータを利用してマルチキャストを実現することができる。また、中継ノードを分離し、データ配信経路の計算などの複雑な経路制御処理は、汎用計算上のソフトウェアで処理する経路制御装置で行い、処理自体は単純だが処理速度が要求されるデータ複製処理は、専用ハードウェアにより処理するデータ複製装置で行うことにより、高速なデータ複製及び転送が可能となり、音声や動画などのリアルタイム・ストリームデータの配信に適したシステムを提供することができる。また、各処理に特化した装置を作成することができる。
【0047】
また、第1の実施例では、データ管理IDとしてIPマルチキャストアドレスを用いるため、レイヤ3までの処理のみを行えば良い。そのため、データ複製装置は、既存のIPマルチキャスト対応ルータに若干の機能追加を行うだけで実現でき、実装が容易である。
【0048】
第2の実施例では、データ複製装置においてレイヤ4まで処理する必要がある代わりに、1つの経路制御装置で複数のデータ複製装置を管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成を示す図である。
【図2】 本発明の第1の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成における中継ノードの構成を示すブロック図である。
【図3】 経路管理部の管理する経路情報の構成及びその例を示す図である。
【図4】 複製エントリ制御部の管理する複製エントリの構成及びその例を示す図である。
【図5】 本発明の第1の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成上の中継ノードにおける経路制御装置でのデータ受信要求メッセージ受信時の処理を示すフローチャートである。
【図6】 本発明の第1の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成上の中継ノードにおける経路制御装置でのALMデータ受信時の処理を示すフローチャートである。
【図7】 本発明の第1の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成上の中継ノードにおけるデータ複製装置での転送データ受信時の処理を示すフローチャートである。
【図8】 各装置間のデータ転送におけるIPデータグラムの構造、特に、IPヘッダのアドレスフィールドにセットされる値について示す図である。
【図9】 本発明の第2の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成を示す図である。
【図10】 本発明の第2の実施の形態におけるアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法を実現するための構成における中継ノードの構成を示すブロック図である。
【図11】 IPマルチキャストの概略構成を示す図である。
【図12】 アプリケーションレイヤ・マルチキャストの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
100 データ送信ホスト
20、110〜130 中継ノード
140〜170 データ受信ホスト
21、111〜131 経路制御装置
22、112〜132 データ複製装置
211 ALM制御部
212 経路管理部
213 経路情報通知部
214 データ転送部
221 複製エントリ制御部
222 データ複製部
30 経路情報
31 コンテンツID
32 送信装置情報
33 データID
34 受信装置情報
40 複製エントリ
41 データID
42 受信装置情報
81 経路制御装置(第2の実施例)
82 データ複製装置(第2の実施例)
Claims (6)
- コンテンツを配信するデータ送信ホストと、前記コンテンツを中継する中継ノードと、前記コンテンツを要求して受信する複数のデータ受信ホストと、が配置されたユニキャストIPネットワーク上においてマルチキャスト通信を行うアプリケーションレイヤ・マルチキャスト(ALM)方法であって、
前記中継ノードは、アプリケーションレイヤでALM経路制御処理を行う経路制御装置と、レイヤ3以下で及び専用ハードウェアで次ホップノードへのデータ複製及び転送処理を行うデータ複製装置と、で構成され、前記経路制御装置と前記データ複製装置との間では、中継コンテンツについて所定の管理IDを対応させて情報管理及び通信を行い、
前記経路制御装置は、経路情報に更新が生じた場合、前記データ複製装置に対して更新情報を通知する処理を行い、また、上流から受信した前記コンテンツのデータについて、宛先IPアドレスに前記管理IDをセットして前記データ複製装置に転送する処理を行い、
前記データ複製装置は、前記コンテンツについて、次ホップノードに対する複製エントリを管理し、前記経路制御装置からの通知に基づき該複製エントリを更新する処理を行い、また、前記経路制御装置からの転送データについて、前記複製エントリを参照してデータ複製し、宛先IPアドレスに次ホップノードIPアドレスをセットしてユニキャストで送信する処理を行うことを特徴とするアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法。 - 前記管理IDとしてIPマルチキャストアドレスを用いることを特徴とする請求項1記載のアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法。
- 前記経路情報及び複製エントリ情報の管理する情報要素として、次ホップノードへの経路におけるQoS情報を含むことを特徴とする請求項1または2記載のアプリケーションレイヤ・マルチキャスト方法。
- ユニキャストIPネットワーク上に配置され、データ送信ホストから配信されるコンテンツデータを受信し、前記コンテンツを要求する複数のデータ受信ホストへ中継してアプリケーションレイヤ・マルチキャスト(ALM)を行う中継ノードシステムであって、
アプリケーションレイヤでALM経路制御処理を行う経路制御装置と、レイヤ3以下で及び専用ハードウェアで次ホップノードへのデータ複製及び転送処理を行うデータ複製装置と、で構成され、前記経路制御装置と前記データ複製装置との間では、中継コンテンツについて所定の管理IDを対応させて情報管理及び通信を行い、
前記経路制御装置は、経路情報に更新が生じた場合、前記データ複製装置に対して更新情報を通知する処理を行い、また、上流から受信した前記コンテンツのデータについて、宛先IPアドレスに前記管理IDをセットして前記データ複製装置に転送する処理を行い、
前記データ複製装置は、前記コンテンツについて、次ホップノードに対する複製エントリを管理し、前記経路制御装置からの通知に基づき該複製エントリを更新する処理を行い、また、前記経路制御装置からの転送データについて、前記複製エントリを参照してデータ複製し、宛先IPアドレスに次ホップノードIPアドレスをセットしてユニキャストで送信する処理を行うことを特徴とする中継ノードシステム。 - 前記管理IDとしてIPマルチキャストアドレスを用いることを特徴とする請求項4記載の中継ノードシステム。
- 前記経路制御装置は、
他の経路制御装置と経路制御情報を交換し合うことによりALM配信経路の制御を行い、また、前記コンテンツについての経路情報を管理する手段と、
前記経路情報に更新が生じた場合に該更新情報を前記データ複製装置に通知する手段と、
前記コンテンツのコンテンツIDと、該コンテンツに対する管理IDと、の対応を管理する手段と、
上流からの前記コンテンツのデータについて、宛先IPアドレスに前記管理IDをセッ トして前記データ複製装置へ転送する手段と、を有し、
前記データ複製装置は、
前記コンテンツについての次ホップノードへの複製エントリを管理し、前記更新情報の通知に基づき、該複製エントリを更新する手段と、
前記経路制御装置からの転送データについて、前記管理IDにより識別し、また、前記複製エントリを参照してデータ複製し、宛先IPアドレスに次ホップノードIPアドレスをセットしてユニキャストで送信する手段と、
を有することを特徴とする請求項4または5記載の中継ノードシステム。
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