JP3924614B2 - 酸化タングステンナノワイヤーの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、酸化タングステンナノワイヤーの製造方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、一次元の酸化タングステンナノワイヤーを簡便かつ確実に製造することのできる酸化タングステンナノワイヤーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術とその課題】
近年、酸化タングステンは情報ディスプレイの電極材料やリチウム電池などへの応用が期待されており、これまで一次元でない微粒子や薄層の酸化タングステンがレーザ加熱法や化学気相成長法あるいは電着法によって合成されている。
【0003】
また一次元のマイクロメートルサイズの酸化タングステンを合成する方法もいくつか提案されており、部分的にSiO2で覆われたタングステン薄膜をAr雰囲気中において1600℃で加熱する方法や(非特許文献1)、さらには非晶質の酸化タングステン粉末をAr雰囲気中で1000℃に加熱してWO2−WO3混合物のナノロッドを合成するといったことも行われている(非特許文献2)。
【0004】
このような状況の中、発明者等はこれまでに、空気雰囲気下でタングステンフィラメントを加熱して酸化タングステンのナノロッドを製造する方法を提案している(特願2002−338641)。
【0005】
しかしながら、エレクトロクロミックデバイスのウィンドウ、光学デバイス、ガスセンサー、超伝導材料、触媒等として有用な、一次元の酸化タングステンナノワイヤーを製造するのに適した方法として確立された方法はこれまで見出されていなかった。
【0006】
【非特許文献1】
Yan Qiu Zhu、Weibing Hu、Wen Kuang Hsu他、“Tungsten oxide tree-like structures”、Chemical Physics Letters、Vol.309、pp.327-334、1999年
【非特許文献2】
Yu Koltyoin、S.I.NikitenkoおよびA.Gedanken、“The sonochemical preparation of tungsten oxide nanoparticles”、Journal of Materials Chemistry、Vol.12、pp.1107-1110、2002年
この出願の発明は、以上のとおりの事情に鑑みてなされたものであり、従来技術の問題点を解消し、エレクトロクロミックデバイスのウィンドウ、光学デバイス、ガスセンサー、超伝導材料、触媒等として有用な一次元の酸化タングステンナノワイヤーを簡便かつ確実に製造できる酸化タングステンナノワイヤーの製造方法を提供することを課題としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、上記の課題を解決するものとして、まず第1には、酸化ホウ素で覆われたタングステン線を不活性ガス雰囲気中において1500℃以上1700℃以下の高温で酸化反応させることを特徴とする酸化タングステンナノワイヤーの製造方法を提供する。
【0008】
第2には、この出願の発明は、上記の発明において、酸化反応後に、酸化反応温度よりも低温で加熱することにより酸化ホウ素を除去することを特徴とする酸化タングステンナノワイヤーの製造方法を提供し、第3には、酸化ホウ素で覆われたタングステン線をあらかじめ空気中で600±20℃の温度で熱処理し、酸化ホウ素を融解させておくことを特徴とする酸化タングステンナノワイヤーの製造方法を提供する。
【0009】
【発明の実施の形態】
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下にその実施の形態について説明する。
【0010】
この出願の発明の酸化タングステンナノワイヤーの製造方法は、酸化ホウ素で覆われたタングステン線を不活性ガス雰囲気中において1500℃以上1700℃以下の高温で酸化反応させることを特徴としている。
【0011】
不活性ガスとしては、窒素、アルゴン、ヘリウムあるいはそれらの混合ガス等を用いることができ、さらにそれらガスの気流中において酸化反応させることがより好ましい。
【0012】
また1500℃以上1700℃以下で酸化ホウ素で覆われたタングステン線を酸化反応させるのであるが、1500℃以下あるいは1700℃以上である場合にも1500℃以上1700℃以下の範囲からのずれが20℃以内であれば測定上の許容範囲とみなすことができる。
【0013】
そして酸化反応後に、さらに酸化反応温度よりも低温で加熱することにより、酸化ホウ素を完全に除去することができ、純粋な一次元の酸化タングステンナノワイヤーを得ることができるのである。また、酸化ホウ素で覆われたタングステン線をあらかじめ空気中においておよそ600℃の温度で熱処理し、酸化ホウ素を融解させておくことで酸化ホウ素とタングステン線を確実に酸化反応させることができる。なお、“およそ600℃”とは、熱処理の温度が600℃近傍であればよいことを示しており、具体的には600℃から±20℃以内は許容範囲と見なすことができる。
【0014】
なお、この出願の製造方法においては、酸化タングステンナノワイヤーは以下のような化学反応により形成されているものと考えられる。
【0015】
W + 2B23 → WO2 + 2B22 (1)
この出願の発明の酸化ホウ素(B23)を用いた酸化タングステンナノワイヤーの製造方法は、前述したようなSiO2を用いた酸化タングステンの製造方法などに比べて酸化タングステンナノワイヤーを成長させるのに適しているといえる。それというのも酸化ホウ素は低い融点を有しかつ溶融した状態での粘度が高いという特徴を有しているからであり、溶融することで酸化ホウ素のガラス状の膜がタングステン線の表面を覆うため、酸化タングステンナノワイヤーの成長として適した気相−固相成長を提供することができるのである。また酸化ホウ素には強い溶解力と流動作用があるため(1)のような金属化合物の変化が容易に行われると考えられる。
【0016】
上記のような方法を用いることによって、エレクトロクロミックデバイスのウィンドウ、光学デバイス、ガスセンサー、超伝導材料、触媒等として有用な一次元の酸化タングステンナノワイヤーを、非常に簡便かつ確実に製造することができるのである。
【0017】
以下、添付した図面に沿って実施例を示し、この出願の発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。もちろん、この発明は以下の例に限定されるものではなく、細部については様々な態様が可能であることは言うまでもない。
【0018】
【実施例】
<実施例1>
この出願の発明の製造方法により一次元の酸化タングステンナノワイヤーを製造した。
【0019】
まず、酸化ホウ素(B23)を部分的にまぶした細いタングステン線を透過型電子顕微鏡用のホルダーに取り付け、このタングステン線を直流電源供給装置につなぎ、空気中で600℃に加熱した。このようにすることで酸化ホウ素の粉末がタングステン線の表面で融解した。そして室温まで冷却すると酸化ホウ素はガラス状になった。
【0020】
次いでそのホルダーを真空容器に移し、0.04Paの圧力のもとで窒素ガスを流しながらタングステン線を15分間、1600℃で加熱した。そしてその後30分間温度を1200℃に保ち、タングステン線表面についている未反応の酸化ホウ素を蒸発させて除去した。
【0021】
そして室温に冷却後、X線エネルギー拡散スペクトロメータを取り付けた高分解能透過型電子顕微鏡の中にそのホルダーを挿入し生成物の観察と化学組成の分析を行った。
【0022】
透過型電子顕微鏡で観察して得られた生成物の代表的な像を図1に示す。この生成物は直径が10〜30nmであって、長さが3μmの酸化タングステンナノワイヤーであり、その断面は多角形であった。
【0023】
次に、得られた生成物のX線エネルギー拡散スペクトルを図2に示す。同図より、生成されたナノワイヤーの化学組成は、O/W(原子の割合)が2.3±0.3の酸化タングステンであることが分かった。
【0024】
この値はX線エネルギー拡散スペクトロメータの誤差を含んでいるのでさらに高分解能透過型電子顕微鏡での観察と電子線回折パターンを詳細に調べた結果、単斜晶系のWO2であることが分かった。
【0025】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明によって、エレクトロクロミックデバイスのウィンドウ、光学デバイス、ガスセンサー、超伝導材料、触媒等として有用な一次元の酸化タングステンナノワイヤーを非常に簡便かつ確実に製造することのできる酸化タングステンナノワイヤーの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】この出願の発明の方法により製造した酸化タングステンナノワイヤーの透過型電子顕微鏡像の写真である。
【図2】この出願の発明の製造方法により製造した酸化タングステンナノワイヤーのX線エネルギー拡散スペクトルを例示したグラフである。

Claims (3)

  1. 酸化ホウ素で覆われたタングステン線を不活性ガス雰囲気中において1500℃以上1700℃以下の高温で酸化反応させることを特徴とする酸化タングステンナノワイヤーの製造方法。
  2. 酸化反応後に、酸化反応温度よりも低温で加熱することにより酸化ホウ素を除去することを特徴とする請求項1記載の酸化タングステンナノワイヤーの製造方法。
  3. 酸化ホウ素で覆われたタングステン線をあらかじめ空気中で600±20℃の温度で熱処理し、酸化ホウ素を融解させておくことを特徴とする請求項1または2記載の酸化タングステンナノワイヤーの製造方法。
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