JP3924605B2 - タイヤのビードワイヤ除去方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤのビードワイヤ除去方法及びその装置に関するものでり、更に詳しくは、タイヤのビード部のビードワイヤを誘導加熱を利用してゴム部分から分離し、これを機械的に取り出してゴム部分とビードワイヤに分離する方法及びその装置、及びこれらの手段による廃タイヤの再資源化方法に関するものである。本発明は、特に、廃タイヤのマテリアルリサイクル化を実現するタイヤの新しいリサイクル技術として有用である。
【0002】
【従来の技術】
一般に、廃棄されたタイヤのリサイクル技術には、大きく分けて、三つの方法、即ち、(1)廃タイヤをセメント、製紙等の工場において燃料として使用する「サーマルリサイクル」、(2)廃タイヤのすり減った部分に新たにゴムを張り付けて再びタイヤとして利用する「更正タイヤのリユース」、及び、(3)廃タイヤを切断してマットや舗装材料等に用いるいわゆる「マテリアルリサイクル」、の三つの方法がある。この内、資源の有効活用の観点からは、更生タイヤのリユースが望ましく、次いで、好ましくはマテリアルリサイクルであるが、廃タイヤのリサイクルの大半は燃料として使用するサーマルリサイクルが占めている。しかしながら、サーマルリサイクルは、資源の活用と言う見地からは、リサイクルとは言っても、むしろ焼却代を支払って焼却処分している、と言った方が妥当である。
【0003】
ところで、タイヤは、図1に示されるように、ビード部、サイドウォール部、及びトレッド部に分かれるが、現在使われている自動車用のタイヤのほとんどには、ビード部にはワイヤ1が配列され、トレッド部にはスチール線2が配列されている。これらのスチール線やワイヤは、タイヤの耐久性、車の制動性あるいは燃費等の面から優れた特性を発揮させるものであるが、廃棄されたタイヤのリサイクルの面からはこれらが大きな問題となる。
【0004】
上記タイヤのリサイクル方法の内、マテリアルリサイクルの基本は、まず、タイヤを細かくすることから出発する。一般に、タイヤは、切断し、破砕し、磁力選別等の手段によりスチール線やワイヤの除去あるいは繊維分を取り除いて、舗装材やマット材に用いられるが、更に、これを粉砕して、より商品価値の高いゴム粉へと加工される場合もある。このようなリサイクルの過程で問題となるのは、スチール線やワイヤの存在である。まず、タイヤの切断において、ゴムの様な柔らかく弾力性に富んだものと、鋼の様に硬く高強度のものとは基本的にその切断に使用される刃物の材質や形状が異なるため、スチール線やワイヤが存在すると、効率的な切断が出来ないばかりか、高い刃物の寿命が維持できないという問題がある。
【0005】
また、タイヤの破砕において、例えば、スチール線を除去するために現在多く用いられている方法は、切断されたタイヤを機械的に強撹拌した後、磁力等でスチール分を拾い出す方法であるが、上記機械的な強撹拌では処理時間がかかり、完全なゴムとスチール分の分離は困難である。従って、これらの方法では、スチール線の分離コストが高くなり、そのことが、マテリアルリサイクルへの転換が進まない大きな要因でもある。もちろん、サーマルリサイクルにおいても、スチール分は、燃えないために燃焼機器のトラブルの原因になるばかりか、廃棄量物量を著しく増大させるという問題を有する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記従来技術の問題点を確実に解消して、低コスト及び簡便な方法でタイヤのマテリアルリサイクル化を実現することを可能とするタイヤの新しいリサイクル技術を開発することを目標として鋭意研究を積み重ねた結果、タイヤを切断、破砕する前にタイヤのビード部のワイヤを抜き取り、マテリアルリサイクル過程におけるタイヤのビード部の切断や粉砕を容易にすると共に、従来の方法によるスチール分の除去工程を完全に省略することを可能にすることにより、所期の目的を達成し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、タイヤを切断する前に、まず、タイヤのビード部のビードワイヤを抜き取り、タイヤの切断や粉砕を容易にすると共に、磁気分離などによるタイヤチップからのスチール分の除去工程を完全に省略することを可能にすることによって、その分離コストの大幅な低下を図り、それによって、タイヤのマテリアルリサイクル化を促進させることを可能とするタイヤのビードワイヤの除去方法及びその装置を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、上記ビードワイヤの除去方法及びその装置によりタイヤのゴム部分とビードワイヤを分離、回収し、廃タイヤを再資源化する方法を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の技術的手段から構成される。
(1)タイヤのビード部のビードワイヤを誘導加熱した後、そのビード部からビードワイヤを分離するビードワイヤ除去方法であって、1)タイヤから分割したサイドウォール部及びビード部からなるタイヤ円盤を回転ディスクに載せてその端部を固定する、2)該ディスクを回転させながらビード部のビードワイヤを誘導加熱する、3)その後、ビード部を覆っているゴム部を上下移動可能に吊した係止手段で係止してそのゴムを引き裂き、ビード部からビードワイヤを分離する、ことを特徴とするビードワイヤ除去方法。
(2)ビード部を覆っているゴム部を単一又は複数のフックを有する係止手段で係止してそのゴムを引き裂き、ビード部からビードワイヤを取り出す、前記(1)に記載のビードワイヤ除去方法。
(3)ビード部を含むタイヤからビードワイヤを除去する装置において、タイヤから分割したサイドウォール部及びビード部からなるタイヤ円盤を載置して固定する固定手段、ビード部のビードワイヤを加熱する誘導加熱手段、ビード部を覆っているゴム部を係止してビード部からビードワイヤを分離する係止手段、を有するビードワイヤ除去装置であって、上記固定手段として回転ディスク、また、上記係止手段として単一又は複数のフックを有する係止手段を備えていることを特徴とするビードワイヤ除去装置。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の構成を図面に基づいて具体的に説明する。まず、図2に示すように、刃物等の切断手段により、タイヤをその円周方向に切り裂き、トレッド部と、ビード部を含む部分とに分割する。この場合、好適には、トレッド部3と、サイドウォール部及びビード部4に三分割する。これらの内、本発明で問題とするのはビード部を含む部分、即ち、サイドウォール部及びビード部4であり、これは、真ん中に大きな穴を持つほぼ円盤状の形を有する。上記分割は、タイヤからビード部を含む部分を分割し得るものであれば良く、その位置は大まかで良い。もちろん、この分割は刃物ではなく剪断による切断等の手段を用いて行っても差し支えない。次に、例えば、図3に示すように、この円盤状のサイドウォール部及びビード部4を、固定手段、例えば、水平面上で回転するディスク5の上に載せて、クランプ6で回転ディスク5に固定する。
【0009】
この場合、例えば、図3に示すように、好適には、サイドウォール部の端部を固定する方法が例示されるが、これに制限されるものではない。上記固定手段は、上記回転ディスク5に限らず、それと同様の機能を有するものであれば、その種類は特に制限されるものではない。また、上記クランプ6の代わりに、他の手段、例えば、油圧等による自動的な締め付けを用いても良い。上記固定化(締め付け)が完了した後、例えば、図3に示すように、高周波コイル7をビード部近傍に持ってくることで、この高周波コイル7によって、例えば、回転ディスク5をゆっくり回転させながらビードワイヤを誘導加熱する。この場合、好適には、100〜200℃の条件でビードワイヤを誘導加熱することによって、ビードワイヤと接するゴムの分解とゴム中に含まれる空気の膨張によって、ゴムがワイヤから分離し、図4に示すように、ビードワイヤ周辺に隙間が生ずる。
【0010】
次に、例えば、上記回転ディスク5が1回転し、ビードワイヤのゴムからの分離が終了した状態で、高周波コイル7を取り除き、図4に示すように、好適には、例えば、二股に分かれたフックを有する係止手段8をタイヤの上方より吊し、フックをタイヤ円盤の下に挿入する。このフックは、その先端が鋭く尖っているものを用いることが好ましい。次に、このフックを上方に移動させて、フック先端がビード部あるいはビード部に近いサイドウォール部に突き刺さるようにする。更に、フックを上方に移動させて、フックがビードワイヤに接触するようにする。この場合、サイドウォール部の端部は、回転ディスクに固定されているので、更にフックの上方への移動を続けると、ビード部を覆っていたゴム部は引き裂かれて破れ、ビードワイヤのみがフックによって持ち上げられる。もちろん、ゴムとワイヤは既に分離が済んでいるので、ワイヤにゴムが付着することはない。また、フックを引っ張る力も、ただ単にビード部のゴムを引き裂く程度の力で良く、大がかりな引っ張り装置を必要としない。上記係止手段としては、上記フックを有する係止手段が好適なものとして例示されるが、これに限らず、これと同様にビード部を覆っているゴムを引き裂き、ビード部からビードワイヤを分離、回収できる機能を有するものであれば同様に使用することができる。
【0011】
本発明の装置は、上記の通り、ビード部を含むタイヤ、好適には、タイヤから分割したサイドウォール部及びビード部を載置して固定する固定手段、ビード部のビードワイヤを加熱する誘導加熱手段、ビード部を覆っているゴム部を係止してビード部からビードワイヤを分離する係止手段、を構成要素としている。上記固定手段としては、好適には、上述したように、クランプ等の固定手段を有する回転ディスクが用いられるが、これらに限らず、サイドウォール部及びビード部を載置し、これを固定する機能を有するものであれば同様に使用することができる。また、上記誘導加熱手段としては、例えば、周波数50KHz以上、最高出力10kwの高周波焼き入れ装置が例示される。ビードワイヤの加熱は、例えば、ビード部を高周波コイルの下で円周上に回転させることにより、簡単な操作で実施することができる。しかし、本発明において、上記誘導加熱の方法及びその装置は、これらに制限されるものではなく、適宜の手段を使用することができる。上記誘導加熱により、ゴム部分とビードワイヤが分離するので、このゴム部分を係止手段で係止し、該ゴム部分を切り裂いて、ビードワイヤを取り出せば、ビードワイヤの完全分離が可能となる。上記係止手段は、上述したように、上記ゴム部分を係止し、該ゴム部分を切り裂いて、ビードワイヤを分離、回収できるものであれば良く、その種類は特に制限されない。好適には、例えば、単一又は複数のフックを上下移動可能に上方より吊した吊下げ式フックを有する係止装置が用いられるが、それらに制限されない。
【0012】
本発明により、タイヤのビード部を誘導加熱してゴムとビードワイヤを分離し、これを係止手段で係止し、ビード部のゴムを引き裂き、ビード部からビードワイヤを取り出すことにより、簡便な操作で、タイヤのゴム部分とビードワイヤを分離し、これらを回収することで、タイヤ中のビードワイヤとゴム部分を高い回収率で回収することができ、更に、回収されたビードワイヤ及びゴム部分は、金属ないしゴム資源、高付加価値燃料等として、再利用ないしリサイクルし、再資源化することが可能となる。
【0013】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
(1)方法
普通乗用車用タイヤをその円周方向に切り裂き、トレッド部、サイドウォール部及びビード部に分割し、サイドウォール部及びビード部からなるタイヤ円盤をディスクの上に載せ、サイドウォール部の端部をクランプで固定して、周波数400KHz、最高出力30kwの高周波焼き入れ装置を用いて、上記ビード部のビードワイヤを誘導加熱した。この時の、高周波出力は、3キロワットとし、上記サイドウォール部及びビード部を載せたディスクを3rpmの速度で回転させ、高周波コイルをビード部近傍に位置させることによって上記ビード部のビードワイヤを誘導加熱した。
上記誘導加熱により、ビードワイヤに接する部分のゴムを分解ガス化させてビードビードワイヤとゴム部分を分離させた後、図4に示した二股に分かれたフックを有する係止手段のフックをタイヤ円盤の下に挿入し、次いで、このフックを上方に移動させて、フック先端をビード部に突き刺し、更に、フックを上方に移動させることにより、ビード部を覆っていたゴム部を破り、ビードワイヤを取り出し、ビードワイヤとゴム部分を分離、回収した。次に、上記ゴム部分を常法により切断、破砕し、舗装材料等に再利用した。
【0014】
(2)結果
上記方法において、ビードワイヤの誘導加熱開始後、直ちにビードワイヤに接する部分のゴムのガス化が起こり、ビード部の内側に向けて風船状に膨らんだ。この時の温度を、ビードワイヤ近傍のゴム部分に熱線対を挿入して測定したところ約136℃であり、ビードワイヤ以外のゴム部分が熱によって燃焼や変質しない温度であることが分かった。
また、上記ビード部分を上記係止手段で係止することにより、容易にビード内側部分のゴムが抵抗なく剥がされ、ビードワイヤを取り出すことができることが分かった。
また、ビード部の円周上に沿って誘導加熱を行い、ビード部の内側を膨らませた後、係止手段で係止すれば、容易にゴム部分を切り裂き、ビードワイヤを取り出すことができることが分かった。
【0015】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明は、タイヤのビードワイヤ除去方法及びその装置に係るものであり、本発明により、1)ビードワイヤを、完全・迅速・低エネルギーで分離できる、2)ゴム及びスチールの同時切断をしないので刃物寿命は問題とならない、3)分離装置の機構も簡単であり、装置のメンテナンスが不必要である、4)タイヤのサイドウォール部及びビード部のマテリアルリサイクル化をより促進させることを可能とする、という格別の効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】タイヤの構造を示す説明図である。
【図2】タイヤの分割を示す説明図である。
【図3】サイドウォール部及びビード部を回転ディスクに取り付け、高周波コイルにより誘導加熱する装置の説明図である。
【図4】誘導加熱によって、ワイヤ部に空隙を発生させる共に、フックを有する係止手段によってビードワイヤを取り出す装置の説明図である。
【符号の説明】
1 ビードワイヤ
2 スチール線
3 トレッド部
4 サイドウォール部及びビード部
5 回転ディスク
6 クランプ
7 高周波コイル
8 フックを有する係止手段
Claims (3)
- タイヤのビード部のビードワイヤを誘導加熱した後、そのビード部からビードワイヤを分離するビードワイヤ除去方法であって、1)タイヤから分割したサイドウォール部及びビード部からなるタイヤ円盤を回転ディスクに載せてその端部を固定する、2)該ディスクを回転させながらビード部のビードワイヤを誘導加熱する、3)その後、ビード部を覆っているゴム部を上下移動可能に吊した係止手段で係止してそのゴムを引き裂き、ビード部からビードワイヤを分離する、ことを特徴とするビードワイヤ除去方法。
- ビード部を覆っているゴム部を単一又は複数のフックを有する係止手段で係止してそのゴムを引き裂き、ビード部からビードワイヤを取り出す、請求項1に記載のビードワイヤ除去方法。
- ビード部を含むタイヤからビードワイヤを除去する装置において、タイヤから分割したサイドウォール部及びビード部からなるタイヤ円盤を載置して固定する固定手段、ビード部のビードワイヤを加熱する誘導加熱手段、ビード部を覆っているゴム部を係止してビード部からビードワイヤを分離する係止手段、を有するビードワイヤ除去装置であって、上記固定手段として回転ディスク、また、上記係止手段として単一又は複数のフックを有する係止手段を備えていることを特徴とするビードワイヤ除去装置。
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