JP3923305B2 - 移動発音体の運動解析支援装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は聴音器を用いた移動発音体の運動状態解析手法、特に、方位情報と周波数情報とを用いた移動発音体の運動状態解析手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、移動発音体の運動状態の解析手法には、一定距離を隔てて配置された2個の聴音器を使用し、一方の聴音器によって観測された方位と他方の聴音器によって観測された方位との交点を、目標位置として計算することで移動発音体の運動状態を解析する手法や、特開昭64-1986号公報及び特開昭64-1985号公報にあるように、発音体の位置計算回路を用い、1個の聴音器で異なる3つの時刻に観測した移動発音体の方位と周波数から移動発音体の運動状態を分析する手法、また、特開平4-370779号公報にあるように、実際に聴音器で観測された方位と、仮定した運動状態で移動発音体が移動した場合に聴音器で観測されると思われる方位との差から運動状態の近似解を求めることで、移動発音体の運動状態を解析する手法、などがある。その他にも、観測誤差を含んだ方位情報から運動状態を解析する方法として、カルマンフィルタ等のスムージング理論を適用した手法も提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来の、目標位置を計算することで解析する手法や、発音体の位置計算回路を用いる手法では、実環境における観測誤差が考慮されていないため、理論的には、音波の到来方位とその周波数を異なる時刻に3回観測すれば航跡の分析は可能となるが、実環境では、聴音器などの観測誤差により正確な方位や周波数を容易に得ることができないという問題がある。
【0004】
カルマンフィルタなどを応用した分析手法では、聴音素子が直線状に配列された線型聴音器の場合には、観測された方位に関し、俯仰角による誤差の扱いに対する配慮がないため、俯仰角バイアスといわれる上記誤差が観測された方位に加わり、分析が発散し(ばらつき)、移動発音体の運動状態が一意的に求められないという問題がある。
【0005】
また、従来の方位に関する観測値と計算値の差のみを用いた運動状態解析手法では、観測者が等速直線運動をしている場合には、実際とは異なる運動状態を仮定していても、各運動状態間の比例関係が条件を満たせば、観測された方位と計算から求めた方位とが一致して差が収束してしまうため、解が無数に存在し、一意的に航跡の近似解を求めることができないという問題が残る。
【0006】
そこで、本発明の目的は、実環境における観測された方位の誤差及び観測された周波数の誤差が考慮され、観測者が等速直線運動をしている場合であっても、また、聴音器が線型聴音器であっても、移動発音体の運動状態を表すパラメータの近似解を一意的に求めることができる、移動発音体の運動解析支援装置および方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、聴音器を用いて離散的に観測される、移動発音体の観測方位情報と観測周波数情報とから、前記移動発音体の運動諸元パラメータと固有周波数とをオペレータが解析することを支援する移動発音体の運動解析支援装置において、オペレータの入力を受け付ける入力受付手段と、前記離散的に観測された複数の観測方位情報および観測周波数情報を記憶する第一の記憶手段と、前記入力受付手段において受け付けた前記移動発音体の前記運動緒元パラメータと前記固有周波数との推定値と、前記第一の記憶手段に記憶された情報とを用い、前記移動発音体の運動解析を行う運動解析手段と、オペレータに、前記運動解析手段において解析した結果を提示する表示手段とを備え、前記複数の観測方位情報および前記複数の観測周波数情報各々に含まれる誤差を平滑化し平滑観測方位情報と平滑観測周波数情報とを算出する平滑処理手段と、前記平滑処理手段で平滑化した情報と前記推定値とを用いて、前記移動発音体の運動状態を計算する運動状態計算手段と、前記運動状態計算手段で計算された運動状態から算出した前記移動発音体の方位情報および周波数情報と、前記平滑観測方位情報および前記平滑観測周波数情報との各々の差分および差分の2乗和の残差量を求める残差計算手段とを備え、前記残差計算手段で求めた前記差分および前記残差量を前記解析結果として、前記表示手段に表示させることを特徴とする移動発音体の運動解析支援装置が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明を適用した船舶航跡分析では、はじめに、本発明の支援装置において、オペレータが推定した航跡分析対象の船舶の航跡、周波数に関する各種のパラメータ(以後、船舶の航跡に関するパラメータを、仮定航跡パラメータ、周波数に関するパラメータを、仮定固有周波数と呼ぶ)の入力を受け付け、受け付けたパラメータと方位および周波数に関する観測データに平滑処理を施したデータとを基に、対象船舶の仮の航跡パターン(以後、仮定航跡パターンと呼ぶ)を求め、求めた仮定航跡パターンから、船舶の方位および周波数を算出し、それらと、船舶の実際に観測された方位および周波数データに平滑処理を施したデータとの差分(以後、残差と呼ぶ)および残差の2乗和(以後、残差量と呼ぶ)とを表示することでオペレータに提示する。オペレータは、その表示を見ながら、残差量が最小となるよう、入力する各種パラメータなどを調整する。オペレータが最小と判断した時点のパラメータを近似解とする。そして、それらのパラメータを用い、対象船舶の航跡を算出する。
【0009】
ここで、本願における平滑処理とは、ばらつきのある観測データを平滑化し、誤差を除去する処理のことである。具体的な処理内容は、後述する平滑処理部110において説明する。
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0011】
図1に、本発明を適用した船舶航跡分析支援装置の一例を示す。ここで、航跡分析対象の船舶を船舶600とする。
【0012】
本実施の形態においては、本発明の支援装置と、船舶の方位情報と周波数情報を音圧として取り込む聴音器500と、聴音器で取り込んだ、方位および周波数に関する音圧を電気信号に変換する信号処理装置400とを備える。聴音器500で収集し、信号処理装置400を介して受け取った船舶に関する方位データおよび周波数データは、本発明の支援装置内のデータベースに格納される。なお、本実施の形態においては、聴音器は、線型聴音器510と、面型聴音器520の2種を用いる。
【0013】
本発明の支援装置は、航跡パターンを評価する航跡パターン評価装置100と、評価結果を表示する表示装置200と、オペレータから推定値の入力を受け付けるオペレータ入力装置300とを備える。
【0014】
なお、航跡パターン評価装置100は、装置全体の制御を行い、本実施の形態における各種処理を実現するためのプログラムを実行する中央処理装置(CPU)と、各種データおよびプログラムとを格納する記憶部とを備える。また、このような中央処理装置および記憶部と、入出力のインターフェースとを備えた一般的な構成を有する情報処理装置上に構築することも可能である。
【0015】
また、表示装置200は、仮定航跡パターン表示部210と、方位残差表示部220と、周波数残差表示部230と、履歴情報表示部240とを備えたCRT、液晶ディスプレイ、ELディスプレイなどの表示装置である。後述する航跡パターン評価装置100の表示制御部190の制御に基づき、各表示部に航跡パターン評価装置100における処理の結果を表示する。また、本実施の形態において、履歴情報表示部240は、方位の履歴情報を表示する方位履歴情報表示部240aと周波数の履歴情報を表示する周波数履歴情報表示部240bとを備える。
【0016】
そして、オペレータ入力装置300は、数値の入力を受け付けるテンキー310と、分析にあたって必要な各種モードの選択を受け付けるスイッチ320と、各種の推定値を受け付けるロータリーエンコーダ330と、表示装置200に表示されたものに対する選択を受け付けるマウスなどのポインティングディバイス340とを備える。オペレータは数値の入力にあたって、ロータリーエンコーダ330を用いることで、入力する数値を連続的に変化させることができる。また、ポインティングディバイス340は、ボールタブなどでもよく、マウスに限られない。本実施の形態においては、ロータリーエンコーダ330は、距離の推定値を受け付ける距離ダイヤル330a、速力の推定値を受け付ける速力ダイヤル330b、針路の推定値を受け付ける針路ダイヤル330c、および、周波数の推定値を受け付ける周波数ダイヤル330dとを備える。ダイヤルは4つ独立に備わっていなくても、3つあるいは2つとして、1つのダイヤルに複数の役割を持たせてもよい。この場合、ハードもしくはソフト的に設けられたスイッチで使い分けができるように設定すればよい。
【0017】
航跡パターン評価装置100は、聴音器500で収集し、信号処理装置400を介して入手した観測データを、オペレータ入力装置300で受け付けたオペレータによる入力値を用い、処理し、処理結果を表示装置200に表示させるものである。
【0018】
航跡パターン評価装置100の記憶部には、観測方位データベース910と、観測周波数データベース920と、分析用方位データベース930と、分析用周波数データベース940と、海図データベース950とが格納されている。
【0019】
ここで、観測方位データベース910および観測周波数データベース920は、聴音器500より得られ、信号処理装置400で信号化された、方位に関する離散時間的な観測データおよび周波数に関する離散時間的な観測データが格納されるデータベースである。観測データは、線型聴音器510によるもの、および、面型聴音器520によるものが、各々格納されている。
【0020】
具体的には、観測方位データベース910には、観測時刻tiごとの、方位Byiおよび、聴音器の位置、速力、進行方向、深度データが、格納され、観測周波数データベース920には、観測時刻tiごとの、周波数Fiおよび、聴音器の位置、速力、進行方向、深度データが格納される。ここで、線型聴音器510で観測される方位情報は聴音器軸方向からの相対角である。船舶600が聴音器軸方向に対して右舷側にいる場合には、聴音器軸方向に相対角を足したものを聴音器観測方位として、左舷側にいる場合には、聴音器軸方向から相対角を引いたものを聴音器観測方位として、観測方位データベース910に格納する。左右舷のどちらに船舶600がいるか判断できない場合には、別々の2船舶として観測方位データベース910に格納し、左右舷の判断がついたところで一方のデータを、偽とみなして、消去する。
【0021】
また、分析用方位データベース930および分析用周波数データベース940は、各々、後述する平滑方位計算処理部110aおよび平滑周波数計算処理部110bにおける処理結果が格納されるデータベースである。
【0022】
この航跡パターン評価装置100は、これらのデータベースに格納されているデータに基づき、船舶の航跡および固有周波数の分析を行う以下の機能を、プログラムの実行によって実現する。すなわち、平滑処理部110と、分析基準データ指定部120と、分析モード選択部130と、仮定航跡パラメータ設定部140と、仮定航跡パターン計算部150と、仮定固有周波数設定部160と、方位残差分析部170と、周波数残差分析部180と、表示制御部190とを実現する。これらの機能構成部110、120、130、140、150、160、170、180、190は、それぞれ、以下の処理を実行する。
【0023】
1.平滑処理部110
平滑処理部110は、ばらつきのある観測データから誤差を除去するため、観測データに平滑処理を施すもので、観測方位データベース910および観測周波数データベース920に2Th秒内に蓄積されたデータから、オペレータが指定した一次平滑時隔Th秒毎のデータを分析用データとして算出する。算出した分析用データは、分析用方位データベース930および分析用周波数データベース940に格納される。
【0024】
一次平滑時隔Thは、オペレータがテンキー310を用いて入力したデータを受け付けることによって取得する。方位情報に対する平滑処理を行う平滑方位計算処理部110aと、周波数情報に対する平滑処理を行う平滑周波数計算処理部110bは、それぞれ独立して行われる。以下に各部における処理を説明する。
【0025】
1−a)平滑方位計算処理部110a
本処理は、観測方位データベース910に2Th秒内に蓄積されたデータから以下に示す線形回帰により平滑方位、平滑方位変化率及び平滑方位分散を求めるものである。
【0026】
図2は一次平滑の原理を説明するための図である。本図において、y軸方向は時刻、x軸方向は方位を示す。Thは、前述のように、オペレータによって指定された一次平滑時隔であり、y軸のt-3Th、t-2Th、t-Th、t、は一次平滑時刻を示す。また、djk(j:平滑区間番号、k:平滑区間内データ番号)は観測データByiをプロットしたものである。
【0027】
平滑は、Th秒間を1平滑区間とし、連続した2つの平滑区間のデータを用いて、1平滑区間ずつ行う。例えば、図2において、t-3Thからt-2Thの区間を平滑区間1、t-2Thからt-Thの区間を平滑区間2、t-Thからtの区間を平滑区間3とすると、平滑区間1の平滑処理は、平滑区間1および平滑区間2のデータを用いて行われ、平滑区間2の平滑処理は、平滑区間2のおよび平滑区間3のデータを用いて行われる。
【0028】
ここで、平滑区間1における平滑処理について説明する。はじめに、平滑区間1および平滑区間2の2つの平滑区間の観測データ(2Th秒内に蓄積された観測データ)を用いて平滑直線l12を求める。この直線上における平滑区間1内の最新観測データd16の観測時刻に対する平滑直線l12上の方位を平滑方位Dk1とする。同様に、平滑区間2および平滑区間3の観測データを用いて、平滑直線l23を求め、平滑方位Dk2を計算する。
【0029】
以下に平滑方位を計算する式を示す。
【0030】
まず、一次平滑係数を以下の式により算出する。
【0031】
【数1】
【0032】
ここで、ti:観測時刻、Byi:時刻tiにおける聴音器観測方位、tb:平滑基準時刻、Bb:平滑基準方位、Ab:方位差成分の総和、At:時間差成分の総和、Abt:方位差成分と時間差成分の積の総和、At2:時間差成分の2乗総和、Ab2:方位差成分の2乗総和、N:被平滑区間および次の平滑区間内の全観測データ数、である。ただし観測方位は真北を0°とする絶対方位とする。また、Byiは、観測方位データベース910内に格納されているデータであり、tbおよびBbは、観測方位データベース910の最古のデータの方位および時刻である。
【0033】
上記の式で算出された一次平滑係数を用いて平滑方位変化率SDB、平滑基準時刻tbにおける平滑方位SBY、平滑方位BS、および、平滑方位分散σByは、以下の式により算出される。
【0034】
【数2】
【0035】
以上により求めた、平滑方位BSおよび平滑方位分散σByを、平滑区間内最新観測時刻と共に、分析用方位データベース930に格納する。このとき、観測方位データベース910から取得した、その平滑区間内最新観測時刻における聴音器情報(位置、速力、進行方向、深度)に関するデータも、同時に分析用方位データベース930に格納する。以降、ここで算出された平滑方位BSを平滑観測方位と呼び、それに対応する平滑区間内最新観測時刻を観測方位平滑時刻と呼ぶ。
【0036】
1−b)平滑周波数計算処理部110b
次に、観測周波数データベースに格納されているデータから、分析用周波数データベースに格納するデータを算出する平滑周波数計算処理部110bについて説明する。平滑周波数計算処理部110bは、観測周波数データベース920に2Th秒内に蓄積されたデータから、前述の線形回帰により平滑周波数、平滑周波数変化率及び平滑周波数分散を求めるものである。平滑処理の原理は方位の場合と同様である。
【0037】
以下に平滑周波数を計算する式を示す。
【0038】
まず、一次平滑係数は以下の式により算出する。
【0039】
【数3】
【0040】
ここで、tj:観測時刻、Fj:観測時刻tjにおける聴音器観測周波数、tb:平滑基準時刻、Fb:平滑基準時刻tbにおける平滑基準周波数、Af:周波数差成分の総和、At:時間差成分の総和、Aft:周波数差成分と時間差成分の積の総和、At2:時間差成分の2乗総和、Af2:周波数差成分の2乗総和、N:被平滑区間および次平滑区間内の全観測データ数、である。また、Fjは、観測周波数データベース920内に格納されているデータであり、tbおよびFbは、観測周波数データベース920の最古のデータの周波数および時刻である。
【0041】
上記の式で算出された一次平滑係数を用いて平滑周波数変化率SDF、平滑基準時刻における平滑周波数SF、平滑周波数FS、および、平滑周波数分散σFは以下の式で算出される。
【0042】
【数4】
【0043】
以上により求めた、平滑周波数FS及び平滑周波数分散σFを、平滑区間内最新観測時刻と共に、分析用周波数データベース940に格納する。このとき、観測周波数データベース920から取得した、その平滑区間内最新観測時刻における聴音器情報(位置、速力、進行方向、深度)に関するデータも、同時に分析用周波数データベース940に格納する。以降、ここで算出された平滑周波数FSを、平滑観測周波数と呼び、それに対応する平滑区間内最新観測時刻を観測周波数平滑時刻と呼ぶ。
【0044】
2.分析基準データ指定部120
分析基準データ指定部120では、オペレータがポインティングディバイス340を用いて選択した基準データ1および2を受け付け、後述する仮定航跡パターン計算部150と表示制御部190とに受け渡す。ここで、基準データは、先に述べた方位履歴表示部240a、または、後に述べる方位残差表示部220に表示されているデータの中から、オペレータが分析の基準となるデータとして、基準データ1と基準データ2を選択するものである。ただし、基準データ1は基準データ2より過去のデータとする。また、初期値として、最古の平滑観測方位データを基準データ1、最新の平滑観測方位データを基準データ2と設定する。表示制御部190は、後述するように、方位履歴表示部240aおよび方位残差表示部220に表示されているデータのうち、基準データとして指定を受け付けたデータに、破線円を重畳表示させる。
【0045】
3.分析モード選択部130
分析モード選択部130は、オペレータ入力装置300を介して、後述する仮定航跡パターン計算部150において分析に用いる方法などに関し、オペレータによる各種モードの選択を受け付け、仮定航跡パターン計算部150に受け渡すものである。各種モードの選択の受け付けは、入力装置300のスイッチ320に予め設けられたモード選択スイッチボタンを介して行われる。モード選択は、3−1)センサ、3−2)分析方法、3−3)推定方法、3−4)遠/近パターンに関して行われる。以下、各モードの選択について説明する。
【0046】
3−1)センサ選択
方位、周波数各々に関し、線型聴音器510および面型聴音器520のどちらの観測データを用いて分析を行うかを選択する。
【0047】
3−2)分析方法選択
方位の分析に関し、方位線分析法を適用するか、双曲線分析法を適用するかを選択する。ここで、方位線分析法とは聴音器500から見て、平滑観測方位方向に船舶が存在するとして分析を行う方法であり、双曲線分析法とは平滑観測方位、および、聴音器の深度と海底の深度との差をパラメータとして描かれる双曲線上に船舶が存在するとして分析を行う方法である。詳細は、後述の5−3)双曲線距離速力推定法において説明する。ただし、前述のセンサ選択において、方位に関して分析センサとして面型聴音器を選択した場合は、自動的に方位線分析とされる。
【0048】
3−3)推定方法選択
前述の分析方法選択において、選択した分析方法に、さらに、距離速力推定法を適用するか距離針路推定法を適用するかを選択する。距離速力推定法とは基準データ1における、船舶600と聴音器500との距離Rと船舶600の速力Mtとに関するオペレータの推定値を用い、船舶600の針路Ctを計算する方法である。ここで、船舶600の針路Ctは、船舶600の進行方向と真北のなす角度である。また、距離針路推定法とは基準データ1における、船舶600と聴音器500との距離Rと船舶600の針路Ctとに関するオペレータの推定値を用い、船舶600の速力Mtを計算する方法である。ここで、距離R、速力Mt、針路Ctなどの船舶600の航跡パラメータに関するオペレータの推定値は、後述する仮定航跡パラメータ設定部140において、受け付けられる。
【0049】
3−4)遠/近パターン選択
後述する仮定航跡パターン計算部150において、条件を満たす仮定航跡パターンが2つ存在する場合に、基準データ2における船舶600と聴音器500の距離が近い方の仮定航跡パターンを採用するか、遠い方の仮定航跡パターンを採用するかを選択するものである。
【0050】
4.仮定航跡パラメータ設定部140
仮定航跡パラメータ設定部140は、オペレータが推定した船舶600の航跡パラメータ(距離R、速力Mt、針路Ct)を、テンキー310またはロータリーエンコーダ330を介して受け付け、後述する仮定航跡パターン計算部150に受け渡すものである。
【0051】
5.仮定航跡パターン計算部150
仮定航跡パターン計算部150は、航跡パラメータと方位に関する基準データとを用い、予め定められた分析方法によって仮定航跡パターンを計算するものである。
【0052】
ここで、航跡パラメータは、仮定航跡パラメータ設定部140において、オペレータが推定し、入力したものを受け付けたもので、基準データは、基準データ指定部120においてオペレータが指定したものを受け付けた、基準データ1および2である。また、分析方法は、分析モード選択部130において選択されたものを用いる。
【0053】
求められた仮定航跡パターンは、海図データベース950に格納されている当該領域のデータと比較され、合理的なものか判断される。つまり、2つの基準データ時における船舶位置が陸地になる場合や、基準データ間の航跡が陸地を通過している場合には、合理的でないと判断し、仮定航跡パターン計算部150は、海図データベース950のデータとの比較で合理的であると判断するまで航跡パラメータを自動的に再設定し、仮定航跡パターンを再計算する。また、聴音器500の探知可能距離及び船舶600の最大速力は一般的な上限値が既知であるので、計算により求められた距離、速力がこの上限値を越える場合には、仮定航跡パターン計算部150は、距離及び速力が上限値内に収まるまで航跡パラメータを自動的に再設定し、仮定航跡パターンを再計算する。
【0054】
そして、求められた計算結果は、表示制御部190に渡され、表示装置200の仮定航跡パターン表示部210に表示される。
【0055】
仮定航跡パターン計算部150において行われる、仮定航跡パターンの計算は、分析モード選択部130においてなされた分析方法および推定方法の選択の組み合わせにより、次の4つの計算法に大別される。5−1)方位線分析法と距離速力推定法を組み合わせた、方位線距離速力推定法、5−2)方位線分析法と距離針路推定法を組み合わせた、方位線距離針路推定法、5−3)双曲線分析法と距離速力推定法を組み合わせた、双曲線距離速力推定法、5−4)双曲線分析法と距離針路推定法を組み合わせた、双曲線距離針路推定法である。以下、各計算法に関し、説明する。
【0056】
5−1)方位線距離速力推定法
方位線距離速力推定法は、距離Rと速力Mtのオペレータの推定値を用い、基準データ1における平滑観測方位方向に船舶600があると仮定し、船舶600の針路Ctを算出するものである。
【0057】
図3は、方位線距離速力推定法の原理を説明するための図である。図3において、基準データ1におけるの聴音器500の位置を原点とし、基準データ2におけるの聴音器500の位置を(Xo, Yo)とする。基準データ1における平滑観測方位をy軸方向とし、原点からy軸上の距離Rの点に船舶を仮定する。その点を中心とし半径をMt・Tとする円をCとする。ここで、Mtは速力でありTは基準データ1から基準データ2までの時間間隔である。(Xo, Yo)点からy軸とEbなる角度をなす直線をLとし円Cとの二つの交点をLa(Xa, Ya)及びLb(Xb, Yb)とする。ここでEbは基準データ1と基準データ2の平滑観測方位の差であり、直線Lの方向は基準データ2の平滑観測方位の方向である。
【0058】
方位線距離速力推定法のアルゴリズムとは、(Xo, Yo), R, Mt, T及びEbが与えられたとき、これらから円Cと直線Lとの交点La(Xa, Ya)またはLb(Xb, Yb)を求め、さらに、それらの交点LaまたはLbと円Cの中心とを結ぶ直線と、基準データ1における平滑観測方位とがなす角度UaまたはUbを求めることである。
【0059】
ここで、基準データ1における聴音器500の位置、基準データ2における聴音器500の位置(Xo, Yo)、基準データ1から基準データ2までの時間間隔Tは、分析用方位データベース930から取得した、各々の基準データの時刻から算出する。距離Rおよび速力Mtは、それぞれ基準データ1の時刻における船舶600の聴音器500からの距離および船舶600の速力の推定値であり、前述したように、ロータリーエンコ−ダ330の距離ダイヤル330aおよび速力ダイヤル330bをオペレータが操作することにより与えられたものを受け付ける。これらを用いて求めたUaまたはUbと基準データ1における平滑観測方位とから、以下のようにして船舶の針路を求めることができる。
【0060】
図4において円Cの方程式(19)と直線Lの方程式(20)は以下のとおりであり、(20)式を(19)式に代入してxについて整理すると(21)式のようになる。
【0061】
【数5】
【0062】
(21)式をxについて解くと、円Cと直線Lとの二つの交点(Xa, Ya)及び(Xb, Yb)は、以下のように表される。
【0063】
【数6】
【0064】
基準データ2における聴音器とそれぞれの解との距離をRaおよびRbとすると、RaおよびRbは以下のようになる。
【0065】
【数7】
【0066】
ここで、
Ra>Rbならば(Xa, Ya)が遠パターンの解、(Xb, Yb)が近パターンの解となり、
Ra<Rbならば(Xa, Ya)が近パターンの解、(Xb, Yb)が遠パターンの解となる。
【0067】
分析モード選択部130で選択した遠/近パターンにより(Xa, Ya)と(Xb, Yb)のどちらかを基準データ2における船舶600の位置(Xm, Ym)として選択する。つまり、Xm=Xa、Ym=Ya、または、Xm=Xb、Ym=Yb、とする。円Cの中心と(Xa, Ya)および(Xb, Yb)を結ぶ直線と基準データ1における平滑観測方位とのなす角度をそれぞれUa、Ubとすると、前記の、(Xa, Ya)と(Xb, Yb)の選択に応じ、円Cの中心と船舶600の位置(Xm, Ym)とを結ぶ直線と基準データ1における平滑観測方位とのなす角度Umは、UaまたはUbのどちらかとなる。このUmと基準データ1における平滑観測方位Bysを用い、求める船舶の針路Ctは以下のようになる。
【0068】
【数8】
【0069】
上記は直線Lと円Cとが交点を持つ場合であるが、与えられた距離Rおよび速力Mtによっては直線Lと円Cとが交わらない場合もある。そこで必ず交点を存在させるために以下の臨界処理を行う。
【0070】
5−1−a)方位線距離速力推定法における速力臨界処理
図3において円Cの半径Mt・Tおよび直線Lがy軸となす角度Ebが一定のまま、距離ダイヤル330aの操作により距離Rを増加させると、いずれ直線Lと円Cとは交わらなくなる。この臨界点、すなわち直線Lと円Cが接する点は、図4に示すように、(21)式の解が重根となる点、つまり(21)式の判別式が0となる点である。つまり、下記の場合である。
【0071】
B2-AC=0‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥(30)
(30)式を速力Mtに関して解くと、以下のようになる。
【0072】
【数9】
【0073】
臨界点を越えて距離Rを増大させると、それ以後は(31)式により速力Mtを更新させる。これにより距離Rの増大にも関わらず交点(接点)が存在する状態を保持できる。
【0074】
5−1−b)方位線距離速力推定法における距離臨界処理
図3において距離R及び直線Lがy軸となす角度Ebが一定のまま、速力ダイヤル330bの操作により速力Mtを減少させていくと、いずれ直線Lと円Cとは交わらなくなる。この臨界点、すなわち直線Lと円Cが接する点は、前述の場合同様、図4に示すように、(21)式の解が重根となる点、つまり(21)式の判別式が0となる点である。つまり、(30)式の場合である。
【0075】
(30)式をRに関して解くと以下のとおりである。
【0076】
【数10】
【0077】
臨界点を越えて速力Mtを減少させると、それ以後は(32)式により距離Rを更新させる。これにより速力Mtの減少にも関わらず交点(接点)が存在する状態を保持できる。
【0078】
5−2)方位線距離針路推定法
方位線距離針路推定法は、距離Rと針路Ctのオペレータの推定値を用い、基準データ1における平滑観測方位方向に船舶600があると仮定し、船舶600の速力Mtを算出するものである。
【0079】
図5は、方位線距離針路推定法の原理を説明するための図である。図5において、基準データ1における聴音器500の位置を原点とし、基準データ2における聴音器500の位置を(Xo, Yo)とする。基準データ1における平滑観測方位をy軸方向とし、原点からy軸上の距離Rの点に船舶600を仮定する。その点からy軸とUcなる角度をなす直線をCとする。ここで、また基準データ2における聴音器500の位置(Xo, Yo)からy軸とEbなる角度をなす直線をLとし二直線の交点を(Xc, Yc)とする。ここでEbは基準データ1と基準データ2との平滑観測方位の差であり、直線Lの方向は基準データ2の平滑観測方位の方向である。方位線距離針路推定法のアルゴリズムとは(Xo, Yo), T, R, Uc及びEbが与えられ、これから二直線の交点(Xc, Yc)を求め、更に速力Mtを求めることである。
【0080】
ここで、基準データ1における聴音器500の位置、基準データ2における聴音器500の位置(Xo, Yo)、基準データ1から基準データ2までの時間間隔Tは、分析用方位データベース930から取得する。距離Rおよび角度Ucは、それぞれ基準データ1の時刻における船舶600の聴音器500からの距離および船舶600の針路の推定値であり、前述したように、ロータリーエンコ−ダ330の距離ダイヤル330aおよび針路ダイヤル330cをオペレータが操作することにより与えられたものを受け付ける。これらを用いて、船舶の速力Mtは、以下のように求めることができる。
【0081】
図5において、直線Cの方程式(33)と直線Lの方程式(34)より、直線Cと直線Lの交点(Xc, Yc)は、以下のとおりである。この交点の座標(Xc、Yc)を用い、速力Mtは(37)式のように表される。
【0082】
【数11】
【0083】
このMtが求める船舶の速力である。
【0084】
方位線距離針路推定法は2直線の交点を求める問題であり、2直線が平行な場合を除いて必ず交点が存在するので、臨界処理は不要である。
【0085】
5−3)双曲線距離速力推定法
双曲線距離速力推定法の説明の前に、双曲線分析の一般的な原理について説明する。図6は、双曲線分析の原理を説明するための図である。前述したように、双曲線分析は、線型聴音器510によって入手したデータにのみ、適用可能な分析方法である。
【0086】
図6に示すように線型聴音器510は聴音器軸を中心軸、聴音器位置を頂点として探知角ξを頂角とする円錐状指向性を持つ。海底を水平な平面と仮定すると、この円錐と海底とが交わる線として海底面上に双曲線が形成される。船舶600の深度と聴音器軸深度とが同一である場合、海底面上の双曲線は船舶600から発した音の反射点の重なりであるから、船舶600は線型聴音器510の存在する水平面上に形成される海底双曲線の2倍の距離にある相似双曲線上に存在することになる。
【0087】
従ってこの双曲線の方程式は以下のように表される。
【0088】
【数12】
となる。ここでHは線型聴音器軸と海底との距離である。
【0089】
次に、双曲線距離速力推定法について、説明する。双曲線距離速力推定法は、前記のような双曲線上に船舶600があると仮定し、距離Rと速力Mtのオペレータの推定値を用い、船舶600の針路Ctを算出するものである。
【0090】
基準データ1及び基準データ2における平滑観測方位からそれぞれの時刻における線型聴音器510の聴音器軸方向を引いたものを探知角ξ1及び探知角ξ2とすると、これらの絶対値が上記の探知角ξであり、符号が正の場合には右舷に、負の場合には左舷に船舶600が存在することになる。またこれらの探知角の絶対値がπ/2以下なら線型聴音器510の前方に、π/2より大きい場合には線型聴音器510の後方に船舶600が存在することになる。探知角ξ1及び探知角ξ2に関し、それぞれに対応した双曲線が前述のようにして得られる。各々を、基準データ1双曲線及び基準データ2双曲線と呼ぶ。
【0091】
図7は、双曲線距離速力推定法の原理を説明するための図である。双曲線距離速力推定法のアルゴリズムとは、分析用データベース930から取得する基準データ1および基準データ2に関するデータと、オペレータが入力した聴音器500と船舶600との距離Rと、船舶600の速力Mtとから、船舶600の針路Ctを求めるものである。
【0092】
図7においてH1が基準データ1双曲線、H2が基準データ2双曲線であり、O1、O2はそれぞれ基準データ1及び基準データ2における線型聴音器510の位置である。双曲線の実線部は船舶600が存在する方の舷を、破線部は存在しない方の舷を表す。ここでは基準データ1、基準データ2ともに右舷前方に船舶600が存在したものとする。基準データ1における線型聴音器510と船舶600との距離をRと仮定し、基準データ1双曲線H1の実線部上で、原点から距離Rの位置の点を点Eとする。つまり、点Eは、基準データ1双曲線H1の実線部上の船舶600の、仮定した位置である。次に速力をMtと仮定し、基準データ1から基準データ2までの時間間隔をTとし、点Eを中心とした半径Mt・Tの円Cを描く。この円Cと基準データ2双曲線H2との2つの交点をF、Gとし、線分E-F及び線分E-Gが真北方向となす角度をUf及びUgとすると、Uf又はUgが求める船舶の針路である。
【0093】
ここで、図8は、基準データ1における、船舶600の仮定した位置Eを表した図である。図8において原点を基準データ1における線型聴音器510の位置とし、y軸を聴音器軸方向にとる。基準データ1双曲線H1上の点Eの座標を(xs, ys)とすると(41)式及び(42)式が成立する。これらの(41)式および(42)式より、点Eの座標(xs, ys)は、各々以下のように表される。
【0094】
【数13】
ここで、右舷の場合は符号を正、左舷の場合は符号を負とする。
【0095】
基準データ1及び基準データ2における聴音器位置をO1(xo1, yo1)、O2(xo2, yo2)とし聴音器軸の方向をCo1、Co2とする。基準データ2の聴音器位置を原点とし、その聴音器軸方向をy軸とする座標系における点Eの座標を(xs', ys')とすると、xs', ys'は以下のように表される。
【0096】
【数14】
【0097】
また、円Cは半径をl、つまり、l=Mt・Tとして、(47)式のように、また、基準データ2双曲線H2は、(48)式の通りに表される。
【0098】
【数15】
【0099】
円Cと基準データ2基準データ2双曲線H2の交点を求める。交点は、(47)式及び(48)式より、以下の4次式の解である。
【0100】
【数16】
【0101】
(49)式は4次式であるので根は4個存在し、そのうち実根の数は双曲線H2と円Cとの相対位置関係によって0個〜4個である。4次式の解を求めるのに、ここではコンピュータを使って高速で解を求めるのに適したDKA法(Durand-Kerner-Aberth)を例としてあげる。(49)式の4つの根をZk(k=1, 2, 3, 4)とし、関数f(x)を(56)式のように定義すると、対象とする式が4次式であるのでDKA3次法の反復公式より、以下のように(49)式の4つの根は求められる。
【0102】
【数17】
【0103】
以上の処理により(49)式の4個の根がすべて求まるので、そのうちの実根だけを対象として円Cと双曲線H2との交点を求める。
【0104】
ここで、図9に示すように交点が2個、つまり実根が2個存在する例について考える。2個の交点のうちの一方であるP1点のx座標は(49)式の実根の1つxp1で与えられる。
【0105】
このxp1に対応する双曲線上の2点Php点及びPhm点のy座標は、以下のとおりである。
【0106】
【数18】
【0107】
また、このxp1に対応する円周上の2点Pcp点及びPcm点のy座標は、以下のとおりである。
【0108】
【数19】
【0109】
上記(58)式〜(61)式によって求めたy座標の値が一致する点が交点である。図9の場合yhp=ycmであるから、Php点(=Pcm点)が交点P1である。他のもう1つの交点P2も同様にして求める。以上の処理により交点が2個もしくは4個求まる。なお、この場合、重根は2つの根と考える。
【0110】
基準データ2における探知角をξ2の符号及び絶対値の大きさから、船舶が存在する象限(以後、船舶存在象限と呼ぶ:図9における双曲線の実線部)は特定できるので、求めた交点のうち船舶存在象限以外のものは除外する。船舶存在象限に2つの交点をもつ場合には、方位線距離速力推定法と同様に遠/近パターンにより交点を選択する。
【0111】
このように求めた交点の座標をP(xe', ye')とすると、点E(xs', ys')とP(xe', ye')を結ぶ直線EPとy軸のなす角度Ct'は、(62)式のとおりである。基準データ2における聴音器軸方向Co2にCt'を加えて、前述のUgまたはUfにあたる、針路Ctを、以下のように求めることができる。
【0112】
【数20】
【0113】
このように、船舶600の針路Ctを求めることができる。
【0114】
上記は双曲線H2と円Cとが交点を持つ場合であるが、与えられたR及びMtによっては双曲線H2と円Cとが交わらない場合もある。そこで必ず交点を存在させるために以下の臨界処理を行う。
【0115】
5−3−a)双曲線距離速力推定法における速力臨界処理
図7において円Cの半径(Mt・T)を一定のままロータリーエンコーダの距離ダイヤル330aの操作により距離Rを増加させると、F点及びG点は次第に接近し、ついには一致し、円Cと双曲線H2との接点となる。このときの距離RをReとすると、このReを越えて距離Rを増加させると、双曲線H2と円Cとは交点をもたなくなる。そこで、Reを越えて距離Rを増加させた場合には、双曲線H2と円Cとが接点をもつように速力Mtを増加させる。
【0116】
図10において、R=Reの場合の、円Cの中心の座標を、E(xs', ys')とする。このE(xs', ys')から双曲線H2に降ろした法線Lの交点をP(x1, y1)とすると、P(x1, y1)は双曲線H2上の点であるから、以下の式を満たす。
【0117】
【数21】
【0118】
双曲線H2上の一点P(x1, y1)における法線Lは、(65)式で表され、この法線Lが点E(xs', ys')を通過するので、(66)式を満たす。(64)式及び(66)式よりx1を消去しy1について整理すると、(67)式の通りである。
【0119】
【数22】
【0120】
交点を求めた場合と同様にDKA法により(67)式を解くと4個の根が得られ、このうち実根が接点である。求めた接点のうち船舶存在象限以外のものは除外する。(66)式よりx1は(72)式のように表され、(67)式より求まった実根y1を(72)式に代入してx1が得られる。ここで、線分EPの長さをlEPとすると、lEPは(73)式のように表され、臨界速力Mteは、R=Reの場合の円Cの中心Eのx座標とy座標を用い、(74)式のように表される。
【0121】
【数23】
ただし、船舶存在象限に2つの接点をもつ場合には、得られた臨界速力のうちReを越える前の速力に近い方を選択する。
【0122】
5−3−b)双曲線距離速力推定法における距離臨界処理
図7において円Cの距離Rを一定のまま速力ダイヤル330bの操作により速力Mtを増加させると、F点及びG点はしだいに接近し、ついには一致し、円Cと双曲線H2との接点となる。このときの速力MtをMteとすると、このMteを越えて速力Mtを減少させると、双曲線H2と円Cとは交点をもたなくなる。そこで、Mteを越えて速力Mtを減少させた場合には、双曲線H2と円Cとが接点をもつように距離Rを変更させる。
【0123】
Mt=Mteの場合の距離Rを求めるためには、まず、図11において、両端EおよびPがそれぞれ双曲線H1及び双曲線H2上にあり、双曲線H2上の点Pにおける接線に直角で、長さLが定められた値(Mte・T)、である線分の、両端EおよびPの座標を求める。求められた点Eの座標から、距離Rは決定する。
【0124】
図11においてx'y'座標系はxy座標系に対して(Xo, Yo)だけ原点が移動し、かつα度だけ回転している。ここで、O2(Xo, Yo)は基準データ2における聴音器の相対位置(基準データ1における聴音器位置O1を基準)、αは基準データ2の聴音器軸方向から基準データ1の聴音器軸方向を引いたものである。また、x'y'座標系における、点Pの座標および点Eの座標を、それぞれ、(x1,y1)および(x2,y2)とする。
【0125】
H1はxy座標系の双曲線であるため、この座標系で(75)式のように表され、H2はx'y'座標系の双曲線であるため、この座標系で(76)式のように表される。
【0126】
【数24】
【0127】
双曲線H2を離心角と呼ばれる媒介変数θを用いて表すと、x1及びy1はx'y'座標系において、(77)式、(78)式のように表され、H2上の一点P(x1, y1)における法線はx1及びy1を用いて(79)式のようになる。よって、線分Lの傾斜角φは(80)式のとおりである。
【0128】
【数25】
【0129】
線分Lの先端E(x2, y2)は、線分Lの長さをl(=Mte・T)とすると、以下のとおりである。
【0130】
【数26】
【0131】
このx2, y2をxy座標系で表しxr, yrとすると、xr, yrは、(83)式、(84)式のようになり、双曲線H1上のxr, yrに対するxy座標値xh, yhは、(85)式、(86)式のように表される。
【0132】
【数27】
【0133】
とすれば、f(θ)=0となるのはxh=xrかつyh=yrのときであり、このときx2, y2は双曲線H1上にあることになり、求めるものである。ここでは例としてニュートンラフソン法によりf(θ)=0となるθを求める解法をあげる。(87)式をθで微分したものをf'(θ)とすると、
【0134】
【数28】
【0135】
【数29】
【0136】
初期値として、適当な値をθに代入し、(98)式の計算を繰り返すことで、f(θ)=0となるθを求める。以上により求まったθを(77)式及び(78)式に代入して点P(x1, y1)を求める。次に(81)式及び(82)式からE点(x2, y2)を求める。これらx1, y1, x2, y2をx'y'座標系からxy座標系に変換して、臨界距離Reは、(103)式のように求められる。
【0137】
【数30】
ただし、条件を満たすP(x1, y1)とE(x2, y2)の組み合わせが複数(同一象限で最大4つ)存在する場合には、得られた臨界距離のうちMteを超える前の距離に最も近いものを選択する。
【0138】
5−4)双曲線距離針路推定法
双曲線距離針路推定法は、前記のような双曲線上に船舶600があると仮定し、距離Rと針路Ctのオペレータの推定値を用い、船舶600の速力Mtを算出するものである。
【0139】
図12は、双曲線距離針路推定法の原理を説明するための図である。双曲線距離針路推定法のアルゴリズムとは、分析用データベース930から取得する基準データ1および基準データ2と、オペレータが入力した聴音器と船舶600との距離Rと、船舶600の針路Ctとから、船舶600の速力Mtを求めるものである。
【0140】
前述の5−3)双曲線距離速力推定法と同様に、基準データ1及び基準データ2における平滑観測方位からそれぞれの時刻における線型聴音器510の聴音器軸方向を引いたものを探知角ξ1及び探知角ξ2とし、それぞれに対応した基準データ1双曲線及び基準データ2双曲線を得る。図12において、H1が基準データ1双曲線、H2が基準データ2双曲線であり、O1、O2はそれぞれ基準データ1及び基準データ2における線型聴音器510の位置である。双曲線の実線部は船舶600が存在する方の舷を、破線部は存在しない方の舷を表す。ここでは基準データ1、基準データ2ともに右舷前方に船舶600が存在したものとする。基準データ1における聴音器と船舶との距離をRと仮定し、基準データ1双曲線H1の実線部上で、原点から距離Rの位置の点を点Eとする。つまり、点Eは、基準データ1双曲線H1の実線部上の、船舶600の、仮定した位置である。次に船舶600の針路をCtと仮定し、点Eを通り、真北となす角度がCtである直線Lを描く。直線Lと基準データ2双曲線H2の交点をF、Gとし、基準データ1から基準データ2までの時間間隔をTとすると、線分E-Fもしくは線分E-GをTで割ったものが求める船舶600の速力Mtである。
【0141】
この交点F,Gの算出は、図13に示すように、基準データ2の時点における線型聴音器510の位置を原点とし、そのときの聴音器軸方向をy軸とする座標系で考える。この座標系における点Eの座標(xs', ys')は、6−3)双曲線距離速力推定法の場合と全く同様にして求められる。
【0142】
基準データ2双曲線H2は、(104)式の通りであり、直線Lは、(105)式のとおりである。ここで、mは直線Lの傾きで、(106)式のとおりである。ここで、Ct'はこの座標系でみた船舶600の針路であり、基準データ2における聴音器軸方向をCo2とすると、(107)式のように表される。
【0143】
【数31】
【0144】
(105)式を(104)式に代入しxについて整理すると、以下の2次式が得られる。
【0145】
【数32】
【0146】
(108)式を解くことで、xが求まる。
【0147】
【数33】
【0148】
このxを(105)式に代入することにより、図13における交点F及びGの値が求まる。
【0149】
なお、5−3)双曲線距離速力推定法と同様に求めた交点のうち船舶存在象限以外のものは除外する。また、船舶存在象限に2つの交点をもつ場合には、方位線距離速力推定法と同様に遠/近パターンにより交点を選択する。
【0150】
このように求めた交点の座標を(xe', ye')とすると速力Mtは以下のとおりである。
【0151】
【数34】
【0152】
これが求める船舶600の速力Mtである。
【0153】
5−4−a)双曲線距離針路推定法における針路臨界処理
図14において距離Rの変更により双曲線H1上の点E0を点Eに移動した場合、直線L0は設定した針路Ct'を保ったまま直線Lに移動する。この場合双曲線H2と直線Lとは交わらなくなる。そこで、距離Rの変更により双曲線H2と直線Lとが交点を持たなくなる場合には、双曲線H2と直線とが接するように直線Lの傾き、すなわち針路を変更し、直線Leとする処理を行う。
【0154】
直線Leは傾きをmとすると、(114)式のとおりである。このとき、双曲線H2と直線Leとは接するので、(108)式の判別式は(115)式のとおりである。(109)、(110)、(111)式を(115)式に代入してmについて整理すると、(116)式が得られる。
【0155】
【数35】
【0156】
(116)式をmに関して解くと、(120)式が得られ、また、(112)式及び(115)式より、xは(121)式のように求められる。
【0157】
【数36】
【0158】
(120)式で求めたmを(121)式に代入することで、接点Pのx座標(xe')が求まる。また、このxe'を(113)式に代入して接点Pのy座標(ye')も求まる。
【0159】
こうして求めたxe'、ye'を用いて、Leがy軸となす角度Cte'は、(122)式のように表される。このCte'に、基準データ2における線型聴音器510の聴音器軸方向Co2を加え、臨界針路Cteを(123)式のように得る。
【0160】
【数37】
【0161】
5−4−b)双曲線距離針路推定法における距離臨界処理
図15において針路Ctの変更により直線L0が直線Lになった場合、双曲線H2と直線Lとは交わらなくなる。そこで、針路Ctの変更により双曲線H2と直線とが交点を持たなくなる場合には、双曲線H2と直線とが接するように直線Lを直線Leに平行移動する、すなわち距離を変更する処理を行う。
【0162】
接点をP(xe', ye')とすると直線Leの傾きmは、(124)式のとおりである。また、接点P(xe', ye')は双曲線H2上の点であるから(125)式を満たす。(124)式及び(125)式よりye'を消去して整理すると、xe'が(126)式のように求まり、(125)式から、ye'も求められる。
【0163】
【数38】
【0164】
この接点P(xe', ye')を通り、傾きmの直線Leと、双曲線H1との交点E(xs', ys')は通常の5−4)双曲線距離針路推定法と同様の手順によって求めることができる。基準データ1の線型聴音器510の位置を原点とし、その聴音器軸方向をy軸とする座標系での点Eの座標を(xs, ys)とすると、Reは以下のようになる。
【0165】
【数39】
このReが臨界距離である。
【0166】
以上5−1)〜5−4)のいずれかの計算法により計算した仮定航跡パターンから、基準データ1と基準データ2における船舶600の位置、及び航跡パラメータ(距離R、速力Mt、針路Ct)が求められる。
【0167】
6.方位残差分析部170
方位残差分析部170においては、各観測方位平滑時刻において、前述の仮定航跡パターン計算部150で求めた航跡パターンで船舶600が移動した場合に、聴音器500で観測されると思われる方位(以後、分析方位と呼ぶ)と、実際に聴音器500で観測され、平滑処理を施された方位(平滑観測方位)との差を方位残差として求める。
【0168】
基準データ1における聴音器500に対する船舶600の相対位置を(xs, ys)とし、基準データ1と各観測方位平滑時刻との時間間隔をTi、仮定航跡パターン計算部150で求められた速力をMt、針路をCtとすると、各観測方位平滑時刻における船舶600の基準データ1に対する相対位置Pi(xi, yi)は、以下のとおりである。
【0169】
【数40】
【0170】
以下に、6−1)方位線分析を行った場合の方位残差の計算方法、および、6−2)双曲線分析を行った場合の方位残差の計算方法について、説明する。
【0171】
6−1)方位線分析における方位残差計算
図16は、方位線分析における方位残差算出の原理を説明するための図である。方位線分析の場合、各観測方位平滑時刻における聴音器500からみた船舶600の分析方位Byi'は、以下のとおりである。
【0172】
【数41】
【0173】
ここでXoi及びYoiは各観測方位平滑時刻における聴音器500の相対位置、つまり、基準データ1における聴音器500の位置を基準とした場合の、東西(経度)成分及び南北(緯度)成分である。
【0174】
各観測方位平滑時刻における平滑観測方位をByiとすると、方位残差jBiは、
【0175】
【数42】
である。これが方位線分析における方位残差である。
【0176】
6−2)双曲線分析における方位残差計算
図17および図18を用い、双曲線分析における方位残差の計算を説明する。各観測方位平滑時刻における船舶600と聴音器500との距離をRi、船舶600の水平方位をφi、俯仰角をθiとする。ここで、船舶600の水平方位φiは、図17に示すように、基準データ1の聴音器500の位置を原点とし、y軸をそのときの聴音器500の聴音器軸方向、x軸をその垂直方向にとった座標系において、双曲線分析における基準データ1双曲線上の原点から距離Riの点Piと、原点のなす角度のことである。また、船舶600の俯仰角をθiは、図18に示すように、基準データ1双曲線上の原点から距離Riの点Piと、原点を結ぶ線を底辺とし、高さがHの二等辺三角形の底角のことである。ここで、Hは聴音器500の深度と海底深度との差(聴音器500と海底との距離)である。
【0177】
距離Ri、水平方位をφi、俯仰角θiは、前述の相対位置Pi(xi、yi)および、Xoi、Yoiを用いて表すと、以下のとおりである。
【0178】
【数43】
【0179】
各観測方位平滑時刻における聴音器500の聴音器軸方向をCoiとすると分析探知角ξiおよび分析方位Byi'は以下のとおりである。
【0180】
【数44】
ここで、正負符号は船舶600が聴音器500の聴音器軸に対して右舷側に存在する場合は正、左舷側の場合は負とする。
【0181】
方位残差は方位線分析の場合と同様に(132)式により得られる。
【0182】
こうして方位線分析または双曲線分析で求められた各観測方位平滑時刻における方位残差jBiと各観測方位平滑時刻における平滑方位分散σByiより、方位残差量δbを求める。
【0183】
【数45】
【0184】
この方位残差量δbを、仮定した航跡パターンが船舶600の実際の航跡に近いものかどうかの評価指標とする。つまり、方位残差量δbが微小値であるほど、仮定した航跡パターンは船舶600の実際の航跡に近いものであると評価することができる。
【0185】
7.仮定固有周波数設定部160
仮定固有周波数設定部160は、オペレータが推定した船舶の固有周波数を、テンキー310又はロータリーエンコーダ330を介して受け付け、後述する表示制御部190および周波数残差分析部180に受け渡す。
【0186】
8.周波数残差分析部180
周波数残差分析部180は、各観測周波数平滑時刻において、仮定固有周波数設定部160で受け付けたオペレータが仮定した固有周波数(以後、仮定固有周波数と呼ぶ)の音波を発しつつ、仮定航跡パターン計算部150で求めた航跡パターンで船舶600が移動した場合に、聴音器500で観測されると考えられる周波数(以後、分析周波数と呼ぶ)と、実際に聴音器500で観測され、平滑処理を施された周波数(平滑観測周波数)との差を周波数残差として求めるものである。
【0187】
ここで、図19に示すように、船舶600と聴音器500は相対運動をしているので、周波数は固有周波数からドップラー効果の分だけずれて観測される。
【0188】
以下に、8−1)方位線分析を行った場合の周波数残差の計算方法、および、8−2)双曲線分析を行った場合の周波数残差の計算方法について、説明する。
【0189】
8−1)方位線分析における周波数残差計算
仮定固有周波数設定部160で受け付けた仮定固有周波数をF0とすると、各観測周波数平滑時刻における分析周波数Fi'はドップラー効果の公式より、以下のとおりである。
【0190】
【数46】
ここでV:水中音速、Moi:聴音器500の速力、Coi:聴音器500の針路方向、Byi':分析方位、Mt:船舶600の仮定速力、Ct:船舶600の仮定針路である。
【0191】
8−2)双曲線分析における周波数残差計算
仮定固有周波数設定部160で受け付けた仮定固有周波数をF0とすると、双曲線分析の場合は、さらに、俯仰角も考慮して、各観測周波数平滑時刻における分析周波数Fi'は、以下のとおりである。
【0192】
【数47】
ここで、φi:水平方位、θi:俯仰角である。
【0193】
各観測周波数平滑時刻における平滑観測周波数をFiとすると、以上のように、方位線分析または双曲線分析によって求められた各観測周波数平滑時刻における分析周波数Fi'を用い、周波数残差jFiは、以下のとおりである。
【0194】
【数48】
【0195】
こうして方位線分析または双曲線分析で求められた各観測周波数平滑時刻における周波数残差jFiと各観測周波数平滑時刻における平滑周波数分散σFiより、周波数残差量δfは以下のように求められる。
【0196】
【数49】
【0197】
この周波数残差量δfを、仮定した固有周波数及び航跡パターンが船舶600の実際の固有周波数及び航跡に近いものかどうかの評価指標とする。つまり、周波数残差量δfが微小値であるほど、仮定した固有周波数及び航跡パターンは船舶600の実際の固有周波数及び航跡に近いものであると評価することができる。
【0198】
9.表示制御部190
航跡パターン評価装置100の各部で行われた処理の結果を表示装置200に表示させる。9−1)履歴情報表示制御、9−2)仮定航跡パターン表示制御、9−3)方位残差表示制御、9−4)周波数残差表示制御の4種の制御を行う。以下各々の制御の詳細を説明する。
【0199】
9−1)履歴情報表示制御
平滑処理部110により求め、分析用方位データベース930および分析用周波数データベース940に格納されたデータを、表示装置200の履歴情報表示部240に、時刻に対するプロットとして表示するものである。
【0200】
9−1−a)方位履歴情報表示処理190a
分析用方位データベース930に格納されている平滑観測方位BS及び平滑方位分散σByを、履歴情報表示部240の方位履歴情報表示部240aに表示する処理である。平滑観測方位BS及び聴音器針路方向を時間に対してプロットすることで表示された様子を図20に示す。
【0201】
一方の軸を方位、もう一方の軸を時刻として各観測方位平滑時刻における平滑観測方位BSをプロット表示する。各平滑観測方位BSに対する平滑方位分散σByはその平滑観測方位BSを中心とし、幅2σByの誤差棒として表示する。同時に、各観測方位平滑時刻における聴音器の進行方向もあわせて表示する。基準データ指定部120で受け付けた基準データ1及び基準データ2にあたる平滑観測方位BSのプロットには破線円を重畳表示する。以下、このプロットを時刻方位履歴表示と呼ぶ。この時刻方位履歴表示の表示中心方位Bc及び表示方位スケールBs、時間表示スケールTsは任意に設定可能である。設定は、オペレータがオペレータ入力装置300のテンキー310を用いて入力することで行われる。なお時間表示スケールTsは後に述べる時刻周波数履歴情報表示、時刻方位残差表示及び時刻周波数残差表示と連動して切り替わる。
【0202】
9−1−b)周波数履歴情報表示処理190b
分析用周波数データベース940に格納されている平滑観測周波数FS及び平滑周波数分散σFを、履歴情報表示部240の周波数履歴情報表示部240bに表示する処理である。平滑観測周波数FSを時刻に対してプロットし、表示された様子を図21に示す。
【0203】
一方の軸を周波数、もう一方の軸を時刻として各観測周波数平滑時刻における平滑観測周波数FSをプロット表示する。各平滑観測周波数FSに対する平滑周波数分散σFは平滑観測周波数FSを中心とし、幅2σFの誤差棒として表示する。以下、このプロットを時刻周波数履歴表示と呼ぶ。この時刻周波数履歴表示の表示中心周波数Fc及び表示周波数スケールFS、時間表示スケールTsは任意に設定可能である。Fc、FS、Tsの設定は、オペレータがオペレータ入力装置300のテンキー310を用いて入力することで行われる。また、仮定固有周波数設定部160において受け付けた、固有周波数Foも併せて表示される。
【0204】
9−2)仮定航跡パターン表示制御
仮定航跡パターン表示制御は、仮定航跡パターン計算部150において得られた船舶600の位置、および航跡パラメータ(距離R、速力Mt、針路Ct)を用い、仮定した船舶600の航跡の様子を、表示装置200の仮定航跡パターン表示部210に表示する制御を行うものである。
【0205】
図22および図23は、仮定航跡パターン表示部に、仮定した船舶600の航跡を表示した様子の一例を示す図である。図22は、方位線分析法における仮定航跡パターンを表示した例で、図23は、双曲線分析法における仮定航跡パターンを表示した例である。以下、図22および図23に示された船舶600の航跡の表示を仮定航跡パターン表示とよぶ。
【0206】
ここで、仮定航跡パターン表示制御の説明に先立ち、図22を用いて仮定航跡パターン表示部210の構成について説明する。仮定航跡パターン表示部210は、図22に示すように、仮定航跡パターンを表示する、パターン表示部211と、この航跡パターンを求める際に選択した分析方法を表示する、分析方法表示部212と、平滑処理部110において平滑処理を行う際に用いた平滑時隔を表示する平滑時隔表示部213と、仮定航跡パラメータ設定部140で受け付けた、または、仮定航跡パターン計算部150で算出した航跡パラメータを数値情報として表示する、航跡パラメータ表示部214と、下記に説明する仮定航跡パターン計算部150で算出した航跡パラメータから求められる、船舶600の現在時刻における方位Bynおよび距離Rnを、数値情報として表示する、解析値表示部215とを備える。
【0207】
以下に表示の制御を説明する。パターン表示部211における、仮定航跡パターン表示においては、基準データ2における聴音器500の位置を原点とし、南北方向を縦軸に、東西方向を横軸とする。基準データ2における聴音器500の進行方向に聴音器500の速力Mtに比例した長さの線分を原点から描く。分析用方位データベース内の聴音器500の位置をプロットし、その中で基準データ1及び基準データ2にあたる聴音器500の位置において、分析モード選択部130で定めた分析方法が方位線分析の場合には、そのプロットされた聴音器500の位置から方位線を、双曲線分析の場合には、対応する双曲線(船舶存在象限のみ)をそれぞれ描く。
【0208】
受け付けた聴音器500と船舶600との距離Rを基に、基準データ1における船舶600の仮定位置として、前述の方位線または双曲線上の、聴音器600から距離Rの点をプロットし、この点を中心とし、基準データ1と基準データ2の時間間隔Tに速力Mtをかけたものを半径とする円を描く。また基準データ1における船舶600の仮定位置から針路Ct方向への半直線を描き、円との交点を基準データ2における船舶600の仮定位置としてプロットする。
【0209】
基準データ1における船舶600の相対位置を(xs, ys)とし、基準データ1と現在時刻との時間間隔をTn、仮定航跡パターン計算部150で求められた速力をMt、針路をCtとすると、現在時刻における船舶600の相対位置Pn(xn, yn)は、以下のように求められる。
【0210】
【数50】
【0211】
現在時刻における聴音器500の相対位置をOn(Xon, Yon)とし、仮定航跡パターン表示にOn及びPnをプロットする。分析方法が方位線分析の場合にはOnからPnへと半直線を描き、双曲線分析の場合には探知角を計算して得られる双曲線を描く。OnからみたPnの方位をBynとすると、Bynおよび、OnとPnの距離Rnは、以下のとおりである。
【0212】
【数51】
【0213】
このようにして得られた仮定航跡パターン表示を仮定航跡パターン表示部210のパターン表示部211に表示する。さらに、この仮定航跡パターン表示に対応する領域の海図を海図データベース950から読み込み、仮定航跡パターン表示に重畳表示する。
【0214】
これにより、陸岸線等の制限範囲に関わる情報をオペレータに視覚的に伝えることが可能になり、航跡パラメータの近似解を早期に得ることができる。
【0215】
なお、パターン表示部211の距離スケール及び中心位置はテンキー310によりオペレータが自由に指定できる。表示制御部190は、オペレータの設定を受け、表示状態を制御する。
【0216】
9−3)方位残差表示制御
方位残差分析部170において求めた、方位残差jBiを、時刻に対するプロットとして、方位残差表示部220に表示するものである。方位残差表示部220に表示された様子の一例を図24に示す。一方の軸を方位残差jBi、もう一方の軸を時刻として各観測方位平滑時刻に対する方位残差jBiをプロット表示する。
【0217】
各方位残差に対する平滑方位分散σByは方位残差jBiを中心とし、幅2σByの誤差棒として表示する。また、基準データ1及び基準データ2の平滑観測方位BSのプロットには破線円を重畳し、表示する。また、方位残差量δbを数値表示する。以下このプロットを時刻方位残差表示と呼ぶことにする。時刻方位残差表示の方位残差スケール、時間表示スケールはテンキーによりオペレータが自由に指定できる。
【0218】
もちろん、前述のように、数値表示されている方位残差量δbが小さければ小さいほど、仮定した船舶航跡パラメータの近似解としての正当性は高いといえる。その数値表示に併せて時刻方位残差表示を表示したことにより、時刻方位残差表示から、オペレータは仮定した船舶航跡パラメータの近似解としての正当性を直感的に評価することができる。すなわち、方位残差スケールの0のライン上に整列して表示されるような状態に近づくほど、近似解としての正当性は高くなる。よって、オペレータは、プロットがそのような形状に近づくよう、推定値の入力をロータリーエンコーダにて調節すればよい。
【0219】
9−4)周波数残差表示制御
周波数残差分析部180において求めた周波数残差jFiを時刻に対するプロットとして、周波数残差表示部230に表示するものである。周波数残差表示部230に表示された様子の一例を図25に示す。一方の軸を周波数残差jFi、もう一方の軸を時刻として各観測周波数平滑時刻に対する周波数残差jFiをプロット表示する。
【0220】
各周波数残差に対する平滑周波数分散σFは周波数残差jFiを中心とし、幅2σFの誤差棒として表示する。また周波数残差量δFを数値表示する。以下このプロットを時刻周波数残差表示と呼ぶことにする。時刻周波数残差表示の周波数残差スケール、時間表示スケールはテンキーによりオペレータが自由に指定できる。
【0221】
もちろん、前述のように、数値表示されている周波数残差量δFが小さければ小さいほど、仮定した船舶航跡パラメータの近似解としての正当性は高いといえる。その数値表示に併せて時刻周波数残差表示を表示したことにより、時刻周波数残差表示から、オペレータは仮定した船舶航跡パラメータの近似解としての正当性を直感的に評価することができる。すなわち、周波数残差スケールの0のライン上に整列して表示されるような状態に近づくほど、近似解としての正当性は高くなる。よって、オペレータは、プロットがそのような形状に近づくよう、推定値の入力をロータリーエンコーダにて調節すればよい。
【0222】
次に、本発明を適用した航跡パターン評価装置100の処理動作について説明する。図26は、航跡パターン評価装置100の処理の流れを説明するためのフロー図である。
【0223】
まず、平滑処理部110が、オペレータによる平滑時隔の入力を受け付け、観測方位データベース910および観測周波数データベース920に蓄積されているデータに対して、その平滑時隔を用い平滑処理を行い、その結果を分析用方位データベース930および分析用周波数データベース940に格納する(S001)。
【0224】
次に、表示制御部190が、分析用方位データベース930および分析用周波数データベース940に格納されたデータを履歴情報表示部240に、時刻方位履歴表示および時刻周波数履歴表示を表示する(S002)。
【0225】
ここで、オペレータは、この履歴表示を見て、基準データを選択することができる。分析基準データ指定部120が、オペレータの基準データに関する指定を、オペレータ入力装置300を介して受け付け、表示制御部190および仮定航跡パターン計算部150に受け渡す(S003)。
【0226】
また、オペレータは、分析方法の各種モードを選択し、指定する。分析モード選択部130が、オペレータの分析方法に関する選択をオペレータ入力装置300のスイッチ320を介して受け付け、仮定航跡パターン計算部150に受け渡す(S004)。
【0227】
そして、オペレータは、ステップS004において選択した分析方法に応じ、仮定航跡パラメータを設定する。仮定航跡パラメータ設定部140は、オペレータの設定を、オペレータ入力装置300のロータリーエンコーダ330を介して受け付け、仮定航跡パターン計算部150に受け渡す(S005)。
【0228】
次に、仮定航跡パターン計算部150において、ステップS003、S004、S005において受け付けた、指定された基準データ、分析モード、仮定航跡パラメータを用い、仮定航跡パターンを計算し、その結果を表示制御部190および方位残差分析部170および周波数残差分析部180に受け渡す(S006)。
【0229】
計算された仮定航跡パターンは、表示制御部190によって、仮定航跡パターン表示部210に、仮定航跡パターン表示として表示される(S007)。
【0230】
次に、ステップS006において算出された仮定航跡パターンを基に、方位残差分析部170は、方位残差jBiおよび方位残差量δbを求め、表示制御部190に受け渡す(S008)。表示制御部190は、方位残差表示部220に受け渡された方位残差jBiおよび方位残差量δbを時刻方位残差表示として表示する(S009)。
【0231】
また、オペレータは、仮定固有周波数を設定する。仮定固有周波数設定部160が、オペレータの仮定固有周波数の設定をオペレータ入力装置300のロータリーエンコーダ330を介して受け付け、周波数残差分析部180に受け渡す(S010)。
【0232】
周波数残差分析部180は、受け取った仮定固有周波数を用い、周波数残差jFiおよび周波数残差量δFを求め、表示制御部190に受け渡す(S011)。受け取った表示制御部190は、それらを周波数残差表示部230に時刻周波数残差表示として表示する(S012)。
【0233】
オペレータは、方位残差表示部220および周波数残差表示部230に表示された、時刻方位残差表示および時刻周波数残差表示の両方を同時に見ながら、ステップS001の平滑時隔、ステップS003からステップS005、および、ステップS010で設定可能な各種パラメータを再度入力することができる。オペレータの入力を受け付け、入力されたパラメータに応じ、その後のステップを繰り返す。方位残差jBiと方位残差量δbおよび周波数残差jFiと周波数残差量δFの全てが最も小さくなる状態まで繰り返し、その時の航跡パラメータおよび固有周波数を近似解とする。
【0234】
前述したように、従来の方位残差量のみを用いた航跡分析手法では、観測者が等速直線運動をしている場合には、実際とは異なる航跡を仮定していても、各航跡間の比例関係が条件を満たせば、分析方位と平滑観測方位が一致して方位残差量が収束してしまうことがあったが、本実施の形態のように、周波数に関する残差および残差量も併せて用いるため、実際とは異なる航跡を仮定していた場合、たとえ、方位残差量が収束しても、周波数残差量が発散する(ばらつく)ので誤りと判断することができる。
【0235】
本実施の形態では、上記のように、実環境における誤差を含んだ観測方位データおよび観測周波数データを平滑処理し、平滑処理されたデータをもとに、残差量を算出するようにした。そして、算出された残差量を、仮定した航跡の正当性を評価しやすい形でオペレータに提示するようにした。また、残差量は、方位データのみでなく、周波数データに関しても併せて算出し、表示するようにしたため、観測者が等速直線運動をしていても航跡の近似解を一意的に求めることが可能となった。さらに、船舶の近似固有周波数を求めることが可能となった。また、海図データを併せて表示し、対話型の環境でオペレータから航跡パラメータ及び固有周波数の推定値の入力を受け付けるよう構成されているので、オペレータの先見情報を反映することが可能となり、早期に船舶パラメータの近似解を得ることが可能となった。
【0236】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲で様々な変形が可能である。
【0237】
例えば、上記の実施形態では、船舶の航跡を扱う場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限定されない。様々な場所で運動する様々な移動発音体に適用できる。また、解析する対象も、上記の実施の形態では、距離、速力、針路などの航跡パラメータを例にとり説明したが、加速度など、それ以外の運動諸元パラメータであってもよい。
【0238】
【発明の効果】
本発明では、実環境における観測方位誤差及び観測周波数誤差が考慮され、観測者が等速直線運動をしている場合であっても、また、線型聴音器であっても、航跡の近似解を一意的に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した船舶航跡分析支援装置の構成図である。
【図2】観測データ平滑処理の原理図である。
【図3】方位線距離速力推定法の原理図である。
【図4】方位線距離速力推定法における臨界状態を説明するための図である。
【図5】方位線距離針路推定法の原理図である。
【図6】線型聴音器の円錐状指向性及び船舶存在双曲線を示した図である。
【図7】双曲線距離速力推定法の原理図である。
【図8】基準データ1における船舶の仮定位置を示した図である。
【図9】双曲線距離速力推定法における交点選択の原理図である。
【図10】双曲線距離速力推定法における臨界状態の説明図である。
【図11】双曲線距離速力推定法における距離臨界処理の原理図である。
【図12】双曲線距離針路推定法の原理図である。
【図13】双曲線距離針路推定法における交点算出の原理図である。
【図14】双曲線距離針路推定法における針路臨界処理の原理図である。
【図15】双曲線距離針路推定法における距離臨界処理の原理図である。
【図16】方位線分析における方位残差算出の原理図である。
【図17】双曲線分析における分析水平方位を説明するための図である。
【図18】双曲線分析における俯仰角を説明するための図である。
【図19】仮定航跡パターンにおける聴音器と船舶の相対運動を説明するための図である。
【図20】時刻方位履歴表示の一例を示す図である。
【図21】時刻周波数履歴表示の一例を示す図である。
【図22】方位線分析により求めた仮定航跡パターン表示の一例を示す図である。
【図23】双曲線分析により求めた仮定航跡パターン表示の一例を示す図である。
【図24】時刻方位残差表示の一例を示す図である。
【図25】時刻周波数残差表示の一例を示す図である。
【図26】本発明の船舶航跡分析装置の分析フローである。
【符号の説明】
100・・・航跡パターン評価装置、200・・・表示装置、300・・・オペレータ入力装置、400・・・信号処理装置、500・・・聴音器、600・・・船舶、110・・・平滑処理部、120・・・基準データ指定部、130・・・分析モード選択部、140・・・仮定航跡パラメータ設定部、150・・・仮定航跡パターン計算部、160・・・仮定固有周波数設定部、170・・・方位残差分析部、180・・・周波数残差分析部、190・・・表示制御部、910・・・観測方位データベース、920・・・観測周波数データベース、930・・・分析用方位データベース、940・・・分析用周波数データベース、950・・・海図データベース、210・・・仮定航跡パターン表示部、220・・・方位残差表示部、230・・・周波数残差表示部、240・・・履歴情報表示部、310・・・テンキー、320・・・スイッチ、330・・・ロータリーエンコーダ、340・・・ポインティングディバイス
Claims (8)
- 聴音器を用いて離散的に観測される、移動発音体の観測方位情報と観測周波数情報とから、前記移動発音体の運動諸元パラメータと固有周波数とをオペレータが解析することを支援する移動発音体の運動解析支援装置において、
オペレータによる前記移動発音体の運動諸元パラメータである距離、速力および針路と、固有周波数の入力を受け付ける入力受付手段と、
前記離散的に観測された複数の観測方位情報および観測周波数情報を記憶する第一の記憶手段と、
前記入力受付手段において受け付けた前記移動発音体の前記運動諸元パラメータと前記固有周波数との推定値と、前記第一の記憶手段に記憶された情報とを用い、前記移動発音体の運動解析を行う運動解析手段と、
オペレータに、前記運動解析手段において解析した結果を提示する表示手段と、を備え、
前記運動解析手段は、
前記複数の観測方位情報および前記複数の観測周波数情報各々に含まれる誤差を平滑化し平滑観測方位情報と平滑観測周波数情報とを算出する平滑処理手段と、
前記入力受付手段において受け付けた前記移動発音体の前記運動諸元パラメータの入力値である、距離と速力を用いて解析に必要な残りの運動諸元パラメータである針路の推定値を求めるか、または、前記運動諸元パラメータの入力値である、距離と針路を用いて解析に必要な残りの運動諸元パラメータである速力の推定値を求めるかの、いずれかを算出するパラメータ算出手段と、
前記平滑処理手段で平滑化した情報と、前記受け付けた運動諸元パラメータおよび算出した推定値とを用いて、前記移動発音体の運動状態を計算する運動状態計算手段と、
前記運動状態計算手段で計算された運動状態から算出した前記移動発音体の方位情報および周波数情報と、前記平滑観測方位情報および前記平滑観測周波数情報との各々の差分および差分の2乗和の残差量を求める残差計算手段とを備え、
前記残差計算手段で求めた前記差分および前記残差量を前記解析結果として、前記表示手段に表示させることを特徴とする移動発音体の運動解析支援装置。 - 請求項1に記載の移動発音体の運動解析支援装置において、前記聴音器は水中または水上にあり、前記移動発音体は水中または水上を運動するものであることを特徴とする移動発音体の運動解析支援装置。
- 請求項1または2記載の移動発音体の運動解析支援装置において、
海図情報を記憶した第二の記憶手段をさらに備え、
前記運動状態計算手段は、運動状態を計算するときに、前記海図情報をさらに用いることを特徴とする移動発音体の運動解析支援装置。 - 請求項1から3のいずれか1項記載の移動発音体の運動解析支援装置において、
前記平滑処理手段は、前記入力手段においてオペレータから受け付けた平滑時間間隔を用い、前記平滑処理を行い、
前記運動状態計算手段は、前記入力手段においてオペレータから受け付けた指定範囲に含まれる前記平滑化した情報と、前記入力手段においてオペレータから受け付けた運動状態計算方法とを用い、移動発音体の運動状態を計算することを特徴とする移動発音体の運動解析支援装置。 - 請求項1から4のいずれか1項記載の移動発音体の運動解析支援装置において、
前記入力手段は、ロータリーエンコーダを備え、オペレータが入力値を連続的に変化させることができることを特徴とする移動発音体の運動解析支援装置。 - 請求項1から5のいずれか1項記載の移動発音体の運動解析支援装置において、
前記表示手段は、
前記平滑処理手段で平滑化した情報を表示する平滑化情報表示部と、
前記運動状態計算手段で計算した運動状態を表示する運動状態表示部と、
前記残差計算手段で計算した方位および周波数の各々に関する差分および残差量を表示する残差表示部とを
備えることを特徴とする移動発音体の運動解析支援装置。 - 請求項1から6のいずれか1項記載の移動発音体の運動解析支援装置において、
前記移動発音体は船舶であり、前記運動諸元パラメータは、前記船舶の距離と速力と針路とからなる航跡パラメータであり、前記入力受付手段では、前記航跡パラメータの中の2諸元の入力を受け付けることを特徴とする移動発音体の運動解析支援装置。 - 聴音器を用いて離散的に観測される、移動発音体の観測方位情報と観測周波数情報とから、前記移動発音体の運動諸元パラメータと固有周波数とをオペレータが解析することを支援する移動発音体の運動解析支援方法において、
観測される前記観測方位情報と前記観測周波数情報を取得して表示するステップと、
オペレータによる、平滑の時間間隔の入力を受け付けるステップと、
前記観測方位情報と前記観測周波数情報とを前記時間間隔で平滑化し平滑観測方位情報と平滑観測周波数情報とを得る平滑化処理を行うステップと、
オペレータによる、分析範囲の指定の入力を受け付けるステップと、
オペレータによる、分析方法の選択の入力を受け付けるステップと、
オペレータによる、運動諸元パラメータである距離、速力および針路と、固有周波数との推定値の入力を受け付けるステップと、
前記入力を受け付けるステップにおいて受け付けた前記移動発音体の前記運動諸元パラメータの入力値である、距離と速力を用いて解析に必要な残りの運動諸元パラメータである針路の推定値を求めるか、または、前記運動諸元パラメータの入力値である、距離と針路を用いて解析に必要な残りの運動諸元パラメータである速力の推定値を求めるかの、いずれかを算出する推定値算出処理を行うステップと、
受け付けた、前記分析範囲と、前記分析方法と、前記運動諸元パラメータと前記固有周波数との推定値と、前記算出した運動諸元パラメータの推定値とを用い、前記移動発音体の仮定の運動状態を算出する運動状態算出処理を行うステップと、
前記算出した仮定の運動状態から、前記移動発音体の所定の時刻の方位情報および周波数情報を算出する方位周波数情報算出処理を行うステップと、
前記方位情報と前記周波数情報と、同時刻の前記平滑観測方位情報と前記平滑観測周波数情報との各々の差分および差分の2乗和である残差量を求める残差量計算処理を行うステップと、
求めた前記差分および残差量をそれぞれ表示するステップと、を備え、
前記差分および残差量を表示後に平滑の時間間隔の入力を受け付けると、前記平滑化処理を行い、新たに得た平滑観測方位情報と平滑観測周波数情報と既に算出した前記移動発音体の所定の時刻の方位情報および周波数情報とを用いて前記残差計算処理を行い、当該残差量計算処理の結果を表示し、
前記差分および残差量を表示後に前記運動諸元パラメータの推定値の入力を受け付けると、受け付けた運動諸元パラメータ以外は既存の情報を用いて、前記推定値算出処理を行い、当該推定値算出処理の結果と既存の情報とを用いて運動状態算出処理と方位周波数情報算出処理とを行い、当該方位周波数情報算出処理の結果と既存の情報とを用いて残差量計算処理を行い、当該残差量計算処理の結果を表示し、
前記差分および残差量を表示後に前記分析範囲の指定、前記分析方法の選択、および前記固有周波数の推定値のいずれか1項目の入力を受け付けると、新たに入力を受け付けた項目と既存の情報とを用いて前記運動状態算出処理と方位周波数情報算出処理とを行い、当該方位周波数情報算出処理の結果と既存の情報とを用いて残差量計算処理を行い、当該残差量計算処理の結果を表示し、オペレータの解析の支援を行う、移動発音体の運動解析支援方法。
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