JP3923194B2 - ケーブル式ステアリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハンドルとステアリングギヤボックスとをボーデンケーブル等のケーブルで接続したケーブル式ステアリング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ハンドルとステアリングギヤボックスとを接続するステアリングシャフトに代えて、ボーデンケーブル等のフレキシブルな伝達手段を採用したケーブル式ステアリング装置が提案されている(特開平8−2431号公報参照)。かかるケーブル式ステアリング装置を採用すれば、ステアリングギヤボックスの位置に対するハンドルの相対位置を自由に選択することができるだけでなく、ステアリングギヤボックスの振動がハンドルに伝達され難くすることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のケーブル式ステアリング装置は、ボーデンケーブルのインナーケーブルが巻き付けられるプーリが、その厚さ方向に一定の直径を有する円柱状に形成されているので、プーリが回転するとインナーケーブルの張力が変動する問題がある。
【0004】
上記張力の変動が発生する理由を図7に基づいて説明する。図7における実線はプーリ01が中立状態にあってプーリ01の厚さ方向の中央面CP上に位置する分離点P0 からインナーケーブル02が引き出された状態を示しており、このときのアウターチューブ03の端部Oから前記分離点P0 までの距離はL0 となる。一方、鎖線はプーリ01が左右に回転した状態にあってプーリ01の厚さ方向の両端部側にずれた分離点PL ,PR からインナーケーブル02が引き出された状態を示しており、このときのアウターチューブ03の端部Oから前記分離点PL ,PR までの距離は前記L0 よりも大きいL1 となる。このように、アウターチューブ03の端部Oから分離点P0 ,PL ,PR までの距離L0 ,L1 が変化すると、その距離が小さいL0 であるときにはインナーケーブル02が弛められて張力が減少し、その距離が大きいL1 であるときにはインナーケーブル02が張られて張力が増加してしまう問題がある。
【0005】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、ケーブル式ステアリング装置において、プーリの回転に伴うインナーケーブルの張力の変動を最小限に抑えることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、ハンドルに接続されて回転する駆動プーリと、車輪を転舵するステアリングギヤボックスに接続されて回転する従動プーリと、駆動プーリおよび従動プーリの外周面に螺旋状に形成したプーリ溝に両端部を巻き付けられた2本のインナーケーブルと、駆動プーリを収納するプーリハウジングおよび従動プーリを収納するプーリハウジングに両端部を固定されてインナーケーブルが摺動自在に嵌合する2本のアウターチューブとを備えてなり、前記アウターチューブの端部が、駆動プーリおよび従動プーリの厚さ方向の中心部を通って該プーリの軸線に直交する中心面上に配置されたケーブル式ステアリング装置において、駆動プーリおよび従動プーリの外周面の直径を、その厚さ方向の中心部から厚さ方向の両端部に向かって漸減させたことを特徴とする。
【0007】
プーリの形状が円筒状であって外周面の直径がプーリの厚さ方向に一定であれば、インナーケーブルがプーリの厚さ方向の中心部を通って該プーリの軸線に直交する中心面に沿うように延びているときに、インナーケーブルがプーリの外周面に最初に接触する分離点からアウターチューブの端部までの距離が最小値になる。この状態からプーリが回転して前記分離点がプーリの厚さ方向の端部側に移動すると、前記移動した分離点からアウターチューブの端部までの距離が前記最小値から増加するため、その分だけインナーケーブルが引き伸ばされて張力が増加してしまう。
【0008】
しかしながら、上記請求項1の構成によれば、駆動プーリおよび従動プーリの外周面の直径を、その厚さ方向の中心部から厚さ方向の両端部に向かって漸減させたので、プーリの厚さ方向の中心部の直径と厚さ方向の両端部の直径との差により、分離点がプーリの厚さ方向の中心部に接近するほど該分離点からアウターチューブの端部までの距離が増加する。従って、プーリが回転してインナーケーブルの分離点がプーリの厚さ方向に移動しても、インナーケーブルのプーリの厚さ方向の傾斜に伴う張力変化の一部を、インナーケーブルのプーリの半径方向の傾斜に伴う張力変化で相殺し、インナーケーブルの張力の変動を最小限に抑えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
【0010】
図1〜図6は本発明の一実施例を示すもので、図1はケーブル式ステアリング装置の全体斜視図、図2は図1の2−2線拡大断面図、図3は図2の3−3線断面図、図4は図1の4−4線拡大断面図、図5は図2の要部拡大図、図6は図5の6方向矢視図である。
【0011】
図1に示すように、自動車のハンドル1の前方に設けた駆動プーリハウジング2と、ステアリングギヤボックス3の上方に設けた従動プーリハウジング4とが、2本のボーデンケーブル5,6によって接続される。ステアリングギヤボックス3の両端部から車体左右方向に延びるタイロッド7L ,7R が、左右の車輪WL ,WR を支持するナックル(図示せず)に接続される。
【0012】
図2および図3に示すように、ハンドル1のボス部8にナット9で固定された回転軸10drが駆動プーリハウジング2に回転自在に支持されており、この回転軸10drに駆動プーリ11drが固定される。2本のボーデンケーブル5,6はアウターチューブ5o,6oと、その内部に摺動自在に収納されるインナーケーブル5i,6iとから構成される。駆動プーリ11drの外周面には1本のプーリ溝111 が螺旋状に形成され、また両端面にはプーリ溝111 の両端に連なる渦巻き状のケーブル案内溝112 ,112 と、このケーブル案内溝112 ,112 に連なるピン孔113 ,113 とが形成される。
【0013】
各ボーデンケーブル5,6のインナーケーブル5i,6iは、それらの一端に固定したピン12,12を駆動プーリ11drのピン孔113 ,113 に圧入した後に、ケーブル案内溝112 ,112 からプーリ溝111 に巻き付けられて駆動プーリ11drの直径方向両端部から略同方向に引き出される。このとき、2本のインナーケーブル5i,6iは駆動プーリ11drのプーリ溝111 に軸方向外側から内側に向かって相互に接近するように巻き付けられる。
【0014】
図5から明らかなように、駆動プーリ11drの外周面は、その厚さ方向の中心部を通って該駆動プーリ11drの軸線CLに直交する中心面CP上で最大直径を有するとともに厚さ方向両端部で最小直径を有しており、最大直径および最小直径の間が円弧状に接続されている。つまり駆動プーリ11drは樽形に形成されており、その外周面に螺旋状のプーリ溝111 が形成されている。
【0015】
図1および図4に示すように、従動プーリハウジング4に回転自在に支持された回転軸10dnに従動プーリ11dnが固定される。従動プーリ11dnの形状およびインナーケーブル5i,6iの取付構造は、図2、図3および図5で説明した駆動プーリ11drのそれと同一である。即ち、0動プーリ11dnは断面円弧状の外周面を有しており、そこに螺旋状のプーリ溝は111 が形成される。また両インナーケーブル5i,6iの他端に固定したピン12,12は従動プーリ11dnのピン孔113 ,113 に圧入され、そのピン12,12に連なるインナーケーブル5i,6iは従動プーリ11dnの端面に形成した渦巻き状のケーブル案内溝112 ,112 から前記螺旋状のプーリ溝111 に巻き付けられる。
【0016】
従動プーリハウジング4からステアリングギヤボックス3の内部に突出する回転軸10dnの先端にピニオン21が設けられており、このピニオン21がステアリングギヤボックス3の内部に左右摺動自在に支持されたステアリングロッド22に形成したラック23に噛み合っている。従動プーリハウジング4にパワーステアリング用モータ24が支持されており、従動プーリハウジング4の内部で出力軸25に設けたウオーム26が回転軸10dnに設けたウオームホイール27に噛み合っている。従って、パワーステアリング用モータ24のトルクはウオーム26およびウオームホイール27を介して回転軸10dnに伝達される。
【0017】
次に、前述の構成を備えた本発明の実施例の作用について説明する。
【0018】
車両を旋回させるべくハンドル1を操作して回転軸10drを回転させると、駆動プーリ11drに巻き付けられたボーデンケーブル5,6の一方のインナーケーブル6iが引かれ、他方のインナーケーブル5iが弛められることにより、駆動プーリ11drの回転が従動プーリ11dnに伝達される。その結果、図4に示す従動プーリ11dnの回転軸10dnが回転し、ステアリングギヤボックス3内のピニオン21、ラック23およびスアリングロッド22を介して車輪WL ,WR に操舵トルクが伝達される。
【0019】
このとき、両インナーケーブル5i,6iの張り側の張力と弛み側の張力との偏差がハンドル1に入力される操舵トルクに比例するため、図示せぬセンサで検出した前記偏差が一定に保持されるように前記パワーステアリング用モータ24にトルクを発生させることにより、ドライバーのステアリング操作を適切にアシストすることができる。
【0020】
図5に示すように、ハンドル1が中立位置にあるときに一方のインナーケーブル5iは駆動プーリ11drの分離点P0 でプーリ溝111 を離れてアウターチューブ5oの端部Oに向けて延びている。ハンドル1を左回転させるとインナーケーブル5iはプーリ溝111 から繰り出されて分離点は中立時のP0 からPL へと移動し、逆にハンドル1を右回転させるとインナーケーブル5iはプーリ溝111 に巻き取られて分離点は中立時のP0 からPR へと移動する。つまり、図5の如く、駆動プーリ11drの軸線CLに直交する方向に見ると、アウターチューブ5oの端部Oから操舵時の分離点PL ,PR までの距離L1 は、中立時の分離点P0 までの距離L0 よりも大きくなり、従ってハンドル1を中立位置から左右に回転させるとインナーケーブル5iの張力が増加することになる。
【0021】
しかしながら、前記張力の増加は以下のような理由で緩和される。駆動プーリ11drの軸線CLの方向に見た図6から明らかなように、駆動プーリ11drを樽形に形成したことにより、アウターチューブ5oの端部Oから操舵時の分離点PL ,PR までの距離L1 ′は、中立時の分離点P0 までの距離L0 ′よりも小さくなる。このことは、ハンドル1を中立位置から左右に回転させるとインナーケーブル5iの張力が減少することを意味しており、これにより前述したハンドル1の回転に伴うインナーケーブル5iの張力の増加分の一部を相殺して該張力の変化を最小限に抑えることができる。尚、図6は駆動プーリ11drのプーリ溝111 の半径方向のピッチを誇張して示している。
【0022】
このように、駆動プーリ11drを樽形に形成するだけの簡単な構造で、操舵に伴うインナーケーブル5iの張力変化が最小限に抑えられるので、操舵フィーリングの低下を回避することができる。またハンドル1に加えられる操舵トルクをインナーケーブル5i,6iの張力に基づいて検出するものでは、張力変化に基づく操舵トルクの検出誤差を減少させることができる。
【0023】
以上、駆動プーリ11dr側の一方のインナーケーブル5iについて説明したが、駆動プーリ11dr側の他方のインナーケーブル6i、あるいは従動プーリ11dn側の両インナーケーブル5i,6iについても同様である。
【0024】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0025】
例えば、実施例ではパワーステアリング用モータ24でドライバーの操舵力をアシストするステアリング装置を説明したが、本発明は、パワーステアリング用モータ24を使用せずに、ボーデンケーブル5,6を介して伝達される荷重だけでマニュアル操舵を行うステアリング装置に対しても適用することができる。
【0026】
【発明の効果】
以上のように請求項1に記載された発明によれば、駆動プーリおよび従動プーリの外周面の直径を、その厚さ方向の中心部から厚さ方向の両端部に向かって漸減させたので、プーリの厚さ方向の中心部の直径と厚さ方向の両端部の直径との差により、分離点がプーリの厚さ方向の中心部に接近するほど該分離点からアウターチューブの端部までの距離が増加する。従って、プーリが回転してインナーケーブルの分離点がプーリの厚さ方向に移動しても、インナーケーブルのプーリの厚さ方向の傾斜に伴う張力変化の一部を、インナーケーブルのプーリの半径方向の傾斜に伴う張力変化で相殺し、インナーケーブルの張力の変動を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ケーブル式ステアリング装置の全体斜視図
【図2】図1の2−2線拡大断面図
【図3】図2の3−3線矢視図
【図4】図1の4−4線拡大断面図
【図5】図2の要部拡大図
【図6】図5の6方向矢視図
【図7】従来例に係る、前記図5に対応する図
【符号の説明】
1 ハンドル
2 駆動プーリハウジング(プーリハウジング)
3 ステアリングギヤボックス
4 従動プーリハウジング(プーリハウジング)
5i インナーケーブル
5o アウターチューブ
6i インナーケーブル
6o アウターチューブ
11dr 駆動プーリ
11dn 従動プーリ
111 プーリ溝
CP 中心面
CL 軸線
O アウターチューブの端部
WL 車輪
WR 車輪
Claims (1)
- ハンドル(1)に接続されて回転する駆動プーリ(11dr)と、
車輪(WL ,WR )を転舵するステアリングギヤボックス(3)に接続されて回転する従動プーリ(11dn)と、
駆動プーリ(11dr)および従動プーリ(11dn)の外周面に螺旋状に形成したプーリ溝(111 )に両端部を巻き付けられた2本のインナーケーブル(5i,6i)と、
駆動プーリ(11dr)を収納するプーリハウジング(2)および従動プーリ(11dn)を収納するプーリハウジング(4)に両端部を固定されてインナーケーブル(5i,6i)が摺動自在に嵌合する2本のアウターチューブ(5o,6o)とを備えてなり、
前記アウターチューブ(5o,6o)の端部(O)が、駆動プーリ(11dr)および従動プーリ(11dn)の厚さ方向の中心部を通って該プーリ(11dr,11dn)の軸線(CL)に直交する中心面(CP)上に配置されたケーブル式ステアリング装置において、
駆動プーリ(11dr)および従動プーリ(11dn)の外周面の直径を、その厚さ方向の中心部から厚さ方向の両端部に向かって漸減させたことを特徴とするケーブル式ステアリング装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP27958398A JP3923194B2 (ja) | 1998-10-01 | 1998-10-01 | ケーブル式ステアリング装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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Publications (2)
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JP2000108911A JP2000108911A (ja) | 2000-04-18 |
JP3923194B2 true JP3923194B2 (ja) | 2007-05-30 |
Family
ID=17613014
Family Applications (1)
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JP27958398A Expired - Lifetime JP3923194B2 (ja) | 1998-10-01 | 1998-10-01 | ケーブル式ステアリング装置 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP3923194B2 (ja) |
-
1998
- 1998-10-01 JP JP27958398A patent/JP3923194B2/ja not_active Expired - Lifetime
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