JP3922739B2 - 気管切開カテーテル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、気管切開カテーテルに関し、より詳細には、気道確保のための第1のルーメンと、痰、唾液あるいは血液などの異物を吸引するための第2のルーメンとを備える気管切開カテーテルに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、手術時の全身麻酔に際して気道を確保するために、気管内に挿入される種々のカテーテルが開発されている。また、長期の呼吸管理や意識障害にある患者の呼吸管理のために、気管切開による気道の確保が必要であり、そのような用途に用いられる気管切開カテーテルも種々開発されている(例えば、実開平3−27255号公報など)。
【0003】
従来の気管切開カテーテルの一例を図1を参照して説明する。図1は、従来の気管切開カテーテルを気管内に留置した状態を模式的に示す断面図である。患者の気管1が切開されており、切開された部分から気管切開カテーテル2が挿入されている。気管切開カテーテル2は、マルチルーメンチューブ3の外側端にフレーム4を固定した構造を有する。また、マルチルーメンチューブ3の先端近傍にはカフ5が設けられている。カフ5は、気体や液体を注入することにより膨張するような柔軟性を有する部材で構成されている。体外に配置されたバルーン6から気体を注入し、カフ5を膨張させることにより、カフ5の外周面が気管1の内周面に密着され、それによって空気のリークが防止される。
【0004】
他方、マルチルーメンチューブ3内には、気道を構成するための第1のルーメンと、カフ5の上部に貯留した痰や唾液、血液などの異物7を吸引し除去するための第2ルーメンと、上記カフ5とバルーン6とを接続するための第3のルーメンとが構成されている。
【0005】
気管切開カテーテル2を使用した場合、カフ5の上部(患者の体内において上部、すなわち頭部に近い側を上方とする。)に、図示のように異物7が貯留しがちである。ところが、患者自身の力でこれらの異物7を排出することはできない。従って、マルチルーメンチューブ3の側面には、異物7を吸引するための痰吸引孔が形成されており、異物7は、該痰吸引孔からマルチルーメンチューブ3内を延びる第2のルーメンを介して、吸引除去される。第2のルーメンは、図1に示したフレーム4に設けられた異物排出孔4aに通しており、異物7は該異物排出孔4aに接続された吸引チューブ8から吸引され、除去される。
【0006】
患者は寝ている場合が多いため、上記異物7は、図1に示されているように、気管1の背中側に溜まることが多い。従って、痰吸引孔は、マルチルーメンチューブ3の患者の背中側側面に設けることが好ましい。よって、図1のように湾曲されているマルチルーメンチューブ3では、第2のルーメンは湾曲されている部分の外側の管壁内を長手方向に延びるように形成されている。
【0007】
上記痰吸引機能を有する気管切開カテーテルの具体的な構造を、図2及び吸引チューブを接続してなる図2のA−A線に沿う部分の断面図である図3を参照して説明する。図2及び図3に示した気管切開カテーテル9では、合成樹脂よりなるマルチルーメンチューブ10と、フレーム11及びフレームアダプター12が備えられている。なお、5はカフを示す。マルチルーメンチューブ10においては、相対的に径の大きな第1のルーメン13がその長手方向に延びるように形成されており、第1のルーメン13の管壁の一部に、断面が楕円の第2のルーメン14が形成されている。カフ5の近傍には痰吸引孔15が形成されており、痰吸引孔15は第2のルーメン14に連通している。他方、第2のルーメン14の上端側では、マルチルーメンチューブ10が図3に示すように、円筒状のリング部材であるフレームアダプター16に内挿されかつ固定されている。フレームアダプター16は、フレーム11に内挿されている。
【0008】
図3から明らかなように、フレームアダプター16内においては、第2のルーメン14の外側部分14aが除去されており、第2のルーメン14が外側に開いている。この部分において、フレーム11及びフレームアダプター16に貫通孔11a,16aが形成されている。貫通孔11a,16aは異物排出孔を構成するものであり、吸引チューブ8が接続されている。
【0009】
すなわち、図1に示す吸引チューブ8が上記フレーム11の貫通孔11aから挿入されて、第2のルーメン14に連通されている。
従って、図1に示したように、吸引チューブ8から吸引することにより、カフ5の上部に貯留されている痰などの異物7を吸引し、除去することができる。
【0010】
しかしながら、上記気管切開カテーテル9では、吸引チューブ8が取り付けられる異物排出孔が患者の顎B(図1参照)側に開いている。従って、吸引チューブ8が患者の顎Bに当たり不快感を与えることがある。また、場合によっては、吸引チューブ8が患者の顎により折れて、吸引できなくなることもあった。
【0011】
そこで、異物吸引のための異物排出孔を患者の顎側ではなく、他の方向に向かって開くようにした気管切開カテーテルが提案されている。このような気管切開カテーテルの一例を図4〜図7を参照して説明する。
図4は、従来の気管切開カテーテルの他の例を示す部分断面側面図であり、図5は、図4のV−V線に沿う部分の切断部端面図である。
【0012】
気管切開カテーテル21では、マルチルーメンチューブ22に、フレームアダプター23及びフレーム24が固定されている。なお5はカフを示す。マルチルーメンチューブ22内には、相対的に径の大きな気道構成用の第1のルーメン25が長手方向に延びている。第1のルーメン25の管壁には、異物を除去するための第2のルーメン26が形成されている。第2のルーメン26の横断面は図5に示すように楕円形とされている。
【0013】
また、カフ5の近傍においては、異物吸引孔27が形成されており、異物吸引孔27は第2のルーメン26に開口している。
他方、マルチルーメンチューブ22はフレームアダプター23内に内挿されかつ固定されている。フレームアダプター23は図6に斜視図で示すように、全体が略円筒状の部材で構成されている。フレームアダプター23の外周面には、溝23aが周方向に延びるように形成されている。溝23aは、第2のルーメン26から吸引されてきた異物を後述のフレームに設けられた排出孔24aから除去するための経路を構成している。
【0014】
他方、フレーム24は、図4及び図7に示す形状を有し、中央にフレームアダプター23が挿入されかつ固定される開口24bを有する。開口24bの壁面には排出口24aが設けられている。この排出孔24aが、上述した溝23aに内側で開口しており、かつ排出孔24aには異物を吸引除去するための吸引チューブが外側から接続される。
【0015】
第2のルーメン26は上端側において、外側に開いており、この部分に位置するように、フレームアダプター23の溝23aの底部に貫通孔が形成されている。従って、第2のルーメン26から吸引されていた異物は、上記貫通孔を経て溝23aとフレーム24の開口24bの周壁との間で構成される経路を経て排出口24aから吸引除去される。
【0016】
従って、図4〜図7を参照して説明して気管切開カテーテル21では、排出口24aが第2のルーメン26が設けられている部分に対して、周方向において所定距離隔てられている。他方、第2のルーメン26は、図1に示した気管切開カテーテル2の場合と同様に、上端側では患者の顎に近い側に開口している。従って、上記排出口24aの位置を患者の顎とは異なる方向、例えば上記第2のルーメン26が開口している部分から中心角で90°以上離した位置に設けることにより、吸引チューブが患者の顎に当たることを防止することができる。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記気管切開カテーテル21では、異物を吸引除去するための経路を構成するにあたり、合成樹脂よりなるフレームアダプター23に上記溝23aを形成すると共に、マルチルーメンチューブ22の外壁を削る必要があった。ところが、マルチルーメンチューブ22の外壁を削るとマルチルーメンチューブ22の強度が低下するため、マルチルーメンチューブ22の外壁を削るにも限度があった。すなわち、マルチルーメンチューブでは、患者の気管の太さ以下の外径を有するように構成し、かつ呼吸が苦しくないように、その内径、すなわち第1のルーメンの径はできるだけ大きくすることが求められている。
【0018】
従って、マルチルーメンチューブ22の肉厚はできるだけ薄い方が好ましいため、上記のように異物を除去するための経路を構成するに際し、マルチルーメンチューブの外壁を削って溝を形成するに際し限界があった。通常、上記のような理由により、マルチルーメンチューブの外壁を削る場合の深さは0.5mm程度が限界であった。
【0019】
他方、フレームアダプター23は、通常、射出成形やデッピング成形などで成形されている。従って、溝23aの深さを深くするとアンダーカットが大きくなり、金型から抜け難くなるので、溝23aの深さについても0.2〜0.3mmが限度であった。
【0020】
よって、気管切開カテーテル21では、フレームアダプター23における溝23aの深さと、マルチルーメンチューブ22の外壁を削ることにより構成された溝の深さとを合わせたとしても、約0.7mmの深さの経路ができるに過ぎなかった。従って、例えば、短径0.7mm×長径3.5mmの楕円形の溝を形成したとすると、その断面積は1.9mm2 となる。
【0021】
他方、マルチルーメンチューブ22の異物吸引用の第2のルーメンを短径1.2mm×長径3.5mmの楕円形とした場合、その断面積は3.3mm2 であり、この程度の断面積を有するように第2のルーメンを構成しないと、痰や血液などの異物を有効に除去することができないとされている。
【0022】
従って、気管切開カテーテル21では、痰や異物を吸引する際に、上記フレームアダプター23及びマルチルーメンチューブ22で構成される経路が相対的に狭いため、吸引抵抗が高く、異物が溝23aとマルチルーメンチューブ22の外壁を削ることにより構成された溝とで構成される経路において異物が詰まることがあった。
【0023】
例えば、断面積3.3mm2 よりも大きい異物は、第2のルーメンに侵入しないため、気管切開カテーテル21内に詰まることはない。また、このような大きな異物については、口からカフ5の上部まで別途吸引チューブを挿入し、吸引すれば問題はなく除去し得る。ところが、断面積が1.9mm2 〜3.3mm2 の異物については、第2のルーメン26内を通過するが、上記溝23aとマルチルーメンチューブ22の外壁を削ったことにより構成される溝とからなる経路内において詰まるため、このような場合には、気管切開カテーテル21を抜去しなけばならず、患者に多大の苦痛を与えることになる。
【0024】
本発明の目的は、異物を吸引するための第2のルーメンを気管切開カテーテルの湾曲部分の外側に位置するように配置して痰などの異物を効果的に吸引し得るだけでなく、気管切開カテーテルに接続される異物吸引チューブが患者の顎に当たらないように該吸引チューブを接続することができ、かつカテーテル内で異物が詰まり難い気管切開カテーテルを提供することにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するために成されたものであり、気道確保と共に、痰、唾液あるいは異物の吸引を可能とする気管切開カテーテルであって、気道確保のための相対的に大きな径の第1のルーメンと、第1のルーメンの管壁内に形成されており、かつ痰や異物を吸引するための相対的に小さな径の第2のルーメンとを有し、一端側にカフが設けられており、他端側であって、患者の顎に対向する位置に第2のルーメンが外側面に開口している部分を有するカフ付マルチルーメンチューブと、前記マルチルーメンチューブが内挿される開口を有し、かつ一端から他端に向かって外径が小さくなるように外周面にテーパーが設けられた円錐台状リングよりなるフレームアダプターと、前記フレームアダプターが内挿される開口を有し、かつ開口壁を貫通している痰排出孔を有するフレームとを備え、前記フレームアダプターの外表面には周方向に延びるように痰を通過させるための経路を構成する溝が形成されており、該溝の一端側において第2のルーメンの外側面に開口している部分に連通されるようにフレームアダプターの開口内に貫通している連通孔が形成されており、溝の他端側においてフレームの前記痰排出孔が溝に連通されており、前記痰排出口が前記溝の長さにより前記第2のルーメンの外側面に開口している部分からフレームアダプターの周方向に隔てられており、前記フレームアダプターの開口部分の直径方向の肉厚が、前記第2のルーメンの径以上の寸法を有するように構成されていることを特徴とする。
【0026】
本発明に係る気管切開カテーテルでは、第2のルーメンは、マルチルーメンチューブの湾曲部の外側を通るように第1のルーメンの管壁内に形成されている。従って、第2のルーメンの先端側の吸引孔からカフの上部に溜まっている痰などの異物を確実に吸引することができる。
【0027】
また、カフ付マルチルーメンチューブ内に痰や異物を吸引するための第2のルーメンが形成されている。この第2のルーメンは、カフが設けられている一端側とは反対側である他端側において、外側面に開口している。従って、痰などの異物は第2のルーメンの上記外側面に開口している部分から除去され得る。
【0028】
上記第2のルーメンが外側面に開口している部分にフレームアダプターの連通孔が連通されており、該連通孔はフレームアダプターの溝の一端側において形成されている。従って、第2のルーメンが外側面に開口している部分から取り出される異物は上記連通孔を通り、フレームアダプターの外表面に周方向に延びている溝に導かれる。他方、溝の他端側においては、溝にフレームの痰吸引孔が連通されているため、フレームの痰排出孔から吸引することにより溝内に導かれてきた異物が除去される。
【0029】
しかも、上記痰排出孔は、第2のルーメンの外側面に開口している部分とは、フレームアダプターの外周面に設けられた上記溝の長さ分だけ隔てられている。従って、上記溝の長さを調整することにより、患者の顎から隔てられた位置に痰排出孔を設けることができるため、痰排出孔に接続される吸引チューブが患者の顎に当たったり、折れたりする事故を防止することができる。
【0030】
加えて、フレームアダプターの開口部分の直径方向の肉厚は、上記第2のルーメンの径以上の寸法を有するように構成されており、さらに、上記フレームアダプターの外表面に設けられた溝により痰などの異物を通過させるための経路が構成されているため、マルチルーメンチューブの外壁を削ることなく痰などの異物を通過させる経路を構成することができる。
【0031】
また、フレームアダプターは、上記のように一端から他端に向かって外径が小さくなるように外周面にテーパーが設けられた円錐台状リングとして構成されているため、射出成形やディッピング成形などによる成形に際し、アンダーカット部分が生じないので上記溝の深さを深くして、痰などの異物を円滑に排出し得る経路を構成した場合であっても、合成樹脂成形品により容易に構成することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の気管切開カテーテルを説明する。
図8は、本発明の気管切開カテーテルの一例を示す斜視図である。気管切開カテーテル31は、カフ付マルチルーメンチューブ32と、フレーム33とを有する。図9に縦断面図で示すように、フレーム33の内側には、フレームアダプター34が配置されている。
【0033】
すなわち、フレームアダプター34の開口にマルチルーメンチューブ32の一端が挿入されており、該フレームアダプター34がフレーム33の開口33aに内挿されている。
【0034】
図8に戻り、マルチルーメンチューブ32の下端近傍には、カフ35(図9では想像線で示す。)が設けられている。カフ35は、従来のカフ付マルチルーメンチューブと同様に、流体を注入することにより膨張され、気管の内周面に密着されるように構成されている。図8において、36はインジケーターを示し、該インジケーター36は接続チューブ37によりマルチルーメンチューブ32内の第3のルーメンに接続されている。第3のルーメンは、図9を参照して後述するが、その先端が開口しており、該開口がカフ35に連通されている。
【0035】
他方、図9に示すように、マルチルーメンチューブ32は、外管38と、内管39とを有する。内管39は、外管38よりも上端側に(上端とはフレーム33側の端部をいうものとする。)突出しており、内管39の先端は内管アダプター40に内挿されている。
【0036】
内管アダプター40は、上記内管39の上端を固定するために設けられており、該内管アダプター40の上端側にはコネクター41が取り付けられている。
図9の矢印C−Cで示す断面図である図13から明らかなように、マルチルーメンチューブ32の外管38内に内管39が通っており、気管切開カテーテル31では、内管39の開口39aが第1のルーメンを構成している。もっとも、後述するように内管39は、本発明において必須ではなく、その場合には、外管38の中央の径の大きな貫通孔38aが第1のルーメンを構成する。
【0037】
外管38の開口38aの周囲の管壁内には、外管38の長手方向に延びるように、第2,第3のルーメン42,43が形成されている。
第2,第3のルーメン42,43の横断面は楕円形であり、第2のルーメン42が、第3のルーメン43よりも大きな断面積を有するように構成されている。
【0038】
前述したように、第3のルーメン43は、図8に示したカフ35を膨らませるために設けられている。すなわち、図9に示すように、外管38の先端側において、湾曲部分内側に開口44が形成されており、該開口44を経て第3のルーメン43から送られてきた流体がカフ35内に注入される。
【0039】
また、第2のルーメン42は、図9から明らかなように、マルチルーメンチューブ32の湾曲部分の外側に配置されている。また、カフ35の近傍には、カフ35の上方に異物吸引孔45a,45bが形成されている。異物吸引孔45a,45bは、第2のルーメン42に開いており、カフ35の上部に貯留している異物を吸引するために形成されている。
【0040】
なお、図9において、46はスタイレットを示し、気管切開カテーテル31を気道内に挿入する作業を容易とするために設けられており、気管切開カテーテル31を気道内に設置した後には抜去されるものである。
【0041】
次に、上記マルチルーメンチューブ32の上端側に取り付けられるフレーム33及びフレームアダプター34の詳細を図10及び図11を参照して説明する。図10(a)及び(b)に示すように、フレーム33は、筒状部51と筒状部51の側方に延びる一対の羽部52,53とを有する。フレーム33は合成樹脂成形品よりなり、筒状部51内に開口33aを有する。開口33aの中間には、段差33cが形成されている。段差33cは、後述のフレームアダプター34の挿入深度を規制するために設けられている。すなわち、フレームアダプター34は図12の矢印E方向に挿入され、フレームアダプター34の先端が上記段差33cで係止される。
【0042】
他方、図10に示すように、開口33aにおいて、段差33cの上方には、図9に示した内管アダプター40が挿入される。すなわち、フレーム33は、フレームアダプター34と内管アダプター40とを連結している。
【0043】
また、フレーム33の開口33aの周壁には、痰排出孔33bが開口している。痰排出孔33bはフレーム33の周壁を貫通しており、吸引チューブが接続される部分に相当する。すなわち、痰排出孔33bから痰や異物が吸引チューブを介して吸引・除去される。
【0044】
図10(b)から明らかなように、開口33aのうち、上記段差33cの下端側部分には内周面にテーパーが付されている。このテーパーは、下端側から段差33cに向かうにつれて、内径が小さくなるように付されている。
【0045】
上記フレーム33の内周面のテーパーに応じて、図11に示すフレームアダプター34の外形が定められている。すなわち、図11(a)〜(d)に示すように、フレームアダプター34は、一端から他端に向かって外径が徐々に小さくなるように外周面にテーパーが設けられており、上記フレーム33内に挿入された際に、フレーム33の内周面とフレームアダプター34の外周面とが一致するように構成されている。
【0046】
フレームアダプター34もまた合成樹脂成形品よりなり、中央に開口34aを有する円錐台状のリング状部材で構成されている。
フレームアダプター34の外周面には、周方向に延びる溝34bが形成されている。溝34bは、痰や異物が通過する経路を構成している。溝34bの一端側には連通孔34cが形成されている。連通孔34cは、第2のルーメン42の上端の外側に開口している部分に連通するように設けられている。すなわち、マルチルーメンチューブの外管38はフレームアダプター34に内挿されるが、第2のルーメン42の上端の外側に開口している部分が上記連通孔34cに一致するように外管38とフレームアダプター34とが相互に固定される。
【0047】
図12は、上記フレーム33にフレームアダプター34を内挿する工程を説明するための斜視図である。
フレームアダプター34を前述したフレーム33に内挿することにより、上記溝34bに痰や異物の経路が構成されることになる。また、溝33bの他端側が前述したフレーム33の痰排出孔33bに連通される。すなわち、フレーム33の痰排出孔33bは上記溝34bの他端側に開口している。
【0048】
従って、図11(b)で略図的平面図で示すフレームアダプター34において、第2のルーメンから吸引されてきた痰や異物は図示の矢印Fで示す経路を通り痰排出孔33bから吸引除去される。
【0049】
この場合、フレームアダプター34は、上述したように外径が一端から他端に向かって徐々に小さくなるようにテーパーを付与された成形品で構成されており、かつ痰や異物の経路は上記溝34bにより構成されている。従って、フレームアダプター34は成形に際してのアンダーカット部分を有しない。また、フレームアダプター34のリング状部分の径方向に沿う肉厚は、第2のルーメン42の短径以上の寸法を有するように構成されている。従って、溝34bの深さを十分に大きくすることができる。なお、第2のルーメンが断面円形の場合には、その径以上の寸法を有するように、上記肉厚が設定される。
【0050】
また、フレームアダプター34では、上記のようにリング状部分の径方向に延びる肉厚を変更することにより、流路の断面積を容易に変更することができる。例えば、溝34bの幅を従来技術の項において説明したと同様に3.5mmとし、厚みを2mmとすれば、7.0mm2 の断面積の流路を溝34bにより構成することができ、第2のルーメン42の断面積よりも大きな流路を確実に形成し得る。
【0051】
よって、第2のルーメン42の上端側で外側に開いた部分から吸引された痰や異物は、連通孔34c及び溝34bで構成される流路を経て痰排出孔33bから円滑に除去され得る。
【0052】
また、第2のルーメン42の上端の外側に開口している部分に一致するように上記連通孔34cが形成されており、フレームアダプター34の周方向に延びる溝34bの他端側に設けられた痰排出孔33bから痰や異物が排出されるように構成されているので、上記溝34bの長さを調節することにより、吸引チューブを患者の顎に当たり難い位置に接続することができる。
【0053】
すなわち、第2のルーメン42はマルチルーメンチューブ31の湾曲部の外側に沿って配置されるため、第2のルーメン42の上端の外側に開口している部分は患者の顎に対向するように位置されるが、吸引チューブが接続される痰排出孔33bは上記溝34bの長さだけ第2のルーメン42の上端から周方向に隔てられているため、吸引チューブを痰排出孔33bに接続したとしても、該吸引チューブが患者の顎に接触し難い。
【0054】
なお、図11(a)及び(c)に示す孔34dは、第3のルーメン43に連通しており、フレームに形成された貫通孔(図示せず)を介して図8に示した接続チューブ37に接続される。また、溝34bの他端にも連通孔34eが形成されているが、この連通孔34eは形成されずともよい。
【0055】
次に、上記気管切開カテーテル31のより具体的な例につき説明する。マルチルーメンチューブ32として、外径12.0mm、内径8.5mmの外管を有し、第2のルーメンの径が長径3.5mm×短径1.2mmの寸法を有するものを用い、第2のルーメン42が外側に開口している部分から225°隔てて痰吸引孔33bを形成したフレーム33を用いた。
【0056】
また、フレーム33とマルチルーメンチューブ31との間に、外径16.5mm×内径12.0mm×長さ10.0mmのフレームアダプター34を挿入し、該フレームアダプター34には幅3.5mm×深さ2.0mmの溝34bを形成したものを用いた。
【0057】
上記寸法の気管切開カテーテル31を用い、外管38に設けられた異物吸引孔45a,45bから異物を吸引させたところ、溝34bにより構成される流路が十分な断面積を有するため、第2のルーメン42で吸引された異物を無理なく痰排出孔33bから吸引することが可能であった。
【0058】
図14は、本発明の気管切開カテーテルのさらに他の例を説明するための縦断面図である。気管切開カテーテル61は、内管を有しないことを除いては、前述した気管切開カテーテル31とほぼ同様に構成されている。すなわち、本発明に係る気管切開カテーテルは外管と内管との二重構造を有する必要は必ずしもなく、気管切開カテーテル61のように、外管38のみを備えるものであってもよい。この場合には、外管38の相対的に径の大きな貫通孔38aが第1のルーメンを構成し、その管壁内に長さ方向に延びる第2のルーメン42及び第3のルーメン43が形成されている。
【0059】
また、気管切開カテーテル61は内管を有しないため、図9に示した内管アダプター40及びコネクター41は設けられていない。その他の点については気管切開カテーテル31と同様であるため、同一部分については、同一の参照番号を付することにより、その説明は省略する。
【0060】
気管切開カテーテル61においても、上記フレーム33及びフレームアダプター34は気管切開カテーテル31の場合と同様に構成されている。よって、同様にフレームアダプター34の溝34bの深さを調整することにより、十分に大きな断面積の流路を構成することができるため、第2のルーメン42から吸引された異物を無理なく除去することができる。
【0061】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る気管切開カテーテルでは、上記フレームアダプターが一端から他端に向かって外径が小さくなるように外周面が傾斜されている円錐台状リングよりなり、上記外側面において周方向に延びる溝により痰や異物が通過する流路が構成されている。従って、射出成形やディッピング成形でフレームアダプターを成形するに際し、上記溝の深さを深くしたとしてもアンダーカットとならないため、溝の深さを大きくすることができる。しかも、上記フレームアダプターのリング状部分の直径方向の肉厚は、第2のルーメンの径以上の寸法を有するように構成されているので、十分に大きな横断面積を有する流路を構成することができる。
【0062】
よって、第2のルーメンから吸引されてきた痰や異物などをフレームアダプター内の溝により構成される流路を経てフレームの痰吸引孔からフレーム外に容易に吸引・除去することができる。また、上記フレームに設けられた痰吸引孔は溝の長さにより、第2のルーメンの上端の外側面に開口している部分から周方向に隔てられているため、第2のルーメンをマルチルーメンチューブの湾曲部の外側に沿うように設けた場合であっても、痰排出孔に接続される吸引チューブが患者の顎に接触し難い。従って、患者に不快感を与えることがなく、かつ吸引チューブの折れ曲がりにより吸引が不可能となる事故も発生し難い。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の気管切開カテーテルを患者の気管に留置した状態を示す模式的断面図。
【図2】従来の気管切開カテーテルの一例を説明するための部分断面図。
【図3】図2のA−A線に沿う部分の断面図。
【図4】従来の気管切開カテーテルの他の例を説明するための部分断面側面図。
【図5】図4のV−V線に沿う部分を示す断面図。
【図6】従来の気管切開カテーテルに用いられているフレームアダプターを示す斜視図。
【図7】従来の気管切開カテーテルに用いられているフレームを示す斜視図。
【図8】本発明の気管切開カテーテルの一例を説明するための外観斜視図。
【図9】本発明の気管切開カテーテルの一例を示す縦断面図。
【図10】(a)及び(b)は、本発明の気管切開カテーテルに用いられるフレームを示す平面図及び縦断面図。
【図11】(a)〜(d)は、本発明の気管切開カテーテルに用いられるフレームアダプターの一例を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は平面図、(c)は(b)中c−c線に沿う断面図、(d)は(b)中のd−dに沿う断面図。
【図12】本発明に気管切開カテーテルにおいてフレームにフレームアダプターを挿入する工程を説明するための斜視図。
【図13】図9のC−C線に沿う部分の断面図。
【図14】本発明の気管切開カテーテルの他の例を説明するための縦断面図。
【符号の説明】
31…気管切開カテーテル
32…マルチルーメンチューブ
33…フレーム
33a…開口
33b…痰排出孔
34…フレームアダプター
34a…開口
34b…溝
34c…連通孔
35…カフ
38…外管
39…内管
42…第2のルーメン
61…気管切開カテーテル

Claims (1)

  1. 気道確保と共に、痰、唾液あるいは異物の吸引を可能とする気管切開カテーテルであって、
    気道確保のための相対的に大きな径の第1のルーメンと、第1のルーメンの管壁内に形成されており、かつ痰や異物を吸引するための相対的に小さな径の第2のルーメンとを有し、一端側にカフが設けられており、他端側であって、患者の顎に対向する位置に第2のルーメンが外側面に開口している部分を有するカフ付マルチルーメンチューブと、
    前記マルチルーメンチューブが内挿される開口を有し、かつ一端から他端に向かって外径が小さくなるように外周面にテーパーが設けられた円錐台状リングよりなるフレームアダプターと、
    前記フレームアダプターが内挿される開口を有し、かつ開口壁を貫通している痰排出孔を有するフレームとを備え、
    前記フレームアダプターの外表面には周方向に延びるように痰を通過させるための経路を構成する溝が形成されており、該溝の一端側において第2のルーメンの外側面に開口している部分に連通されるようにフレームアダプターの開口内に貫通している連通孔が形成されており、溝の他端側においてフレームの前記痰排出孔が溝に連通されており、
    前記痰排出口が前記溝の長さにより前記第2のルーメンの外側面に開口している部分からフレームアダプターの周方向に隔てられており、
    前記フレームアダプターの開口部分の直径方向の肉厚が、前記第2のルーメンの径以上の寸法を有するように構成されていることを特徴とする気管切開カテーテル。
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