JP3921707B2 - 表面疵を自動手入れする方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料表面に存在する表面疵を自動手入れする方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板の表面疵は、従来はグラインダーを用いた手作業により研削除去されていた。しかし、手作業で表面疵の研削を行うと、研削により発生する粉塵により作業者の健康を害してしまう問題がある。更に、グラインダーによる研削作業は重労働でもある。これらの点から、表面疵の手入れ作業を自動化する要求が強かった。
【0003】
このような要求に応えるものとして、表面疵を光学的に検出し、検出された疵を研削ロボットで自動的に研削除去する方法が、特公平5−41388号公報に記載されている。この方法では、まず固定されたカメラにより鋼板表面を撮像し、そのデータを処理して表面疵の位置および大きさを検出する。次いで、検出されたデータに基づいて疵位置のところを研削ロボットにより研削し、その後、研削ロボットに付設された渦流センサで疵取り評価を実施し、疵研削が不完全な場合は作業パターンを修正し、研削作業を繰り返す。
【0004】
ところが、この方法では表面疵を検出する際に、表面全体がカメラで撮像される。そのため、細かい疵まで見落としなく検出しようとすると、カメラの分解能を上げる必要があるが、そのようなカメラで表面全体を検査すると、厚板のように表面積が大きい場合はデータ数が膨大となり、そのデータ処理に多くの時間が費やされるために、全自動であるにもかかわらず手作業のほうが能率が良くなる場合が少なくない。
【0005】
一方、カメラによる疵検出を用いた全自動手入れとは別に、表面疵の位置や深さについての情報を鋼板表面にマークするところまでを手作業で行い、そのマークを画像抽出装置により認識し、その疵情報に基づいて表面疵を自動で手入れする半自動の手入れ方法が知られている。そして、この方法に関し、特開平7−9320号公報には、疵位置を表示するために表面疵をマークで囲み、その囲みマークのほぼ中央を原点とする局所座標系の第1象限〜第4象限に付加マークを記載し、付加マークが第1象限〜第4象限のどの位置にあるかということによって疵深さを表示するようにした疵情報表示方法が記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特開平7−9320号公報に記載された疵情報表示方法では、図2(a)に示すように、囲みマークaの内側が研削領域となる。研削に使用される自動手入れ装置のヘッド部は、ある程度の幅Wを持つ研磨砥石であり研磨ベルトであり、これらの表面を鋼板表面に接触させた状態で幅方向と直角な方向に移動することにより、研削を行う。そして、囲みマークa内に存在する表面疵Cを、削り残しが発生しないように研削するためには、囲みマークaを含む長方形の領域を研削することが必要であるが、その結果として、健全部のかなりの部分が疵部と共に研削されてしまい、研削時間が非常に長くなる。
【0007】
一方、健全部の研削を回避するためには、手作業によるマーキングのときに、囲みマーク内から健全部を極力排除するように作業を行うのが有効であるが、そのような作業は非能率であり作業時間の大幅延長を招く。いずれにしても、囲みマークによって疵位置を表示する場合は、作業時間の問題が残ることになる。
【0008】
疵深さを表示する付加マークbについては、囲みマークaのほぼ中央を原点とする局所座標系の第1象限〜第4象限に付加マークbを記載し、付加マークbが第1象限〜第4象限のどの位置にあるかということによって疵深さを表示するわけであるが、これは囲みマークaの内側に更にマークを記載するという意味であるので、囲みマークaをある程度以上に大きくしないと、画像抽出装置による付加マークbの識別が不可能となる。このため、囲みマークaを小さくすることは、疵深さの表示に悪影響を及ぼさないという点からも困難となる。
【0009】
これに加えて、局所座標系の象限位置によって疵深さを表示する場合は、マーキングの位置が重要となるため、丁寧な作業が要求され、これも作業時間の問題を大きくする原因となる。
【0010】
このように、特開平7−9320号公報に記載された疵情報表示方法では、マーキング後の自動研削に本質的に時間がかかり、なおかつ手作業によるマーキングにも時間がかかるのである。
【0011】
本発明の目的は、マーキング時間および研削時間の両方を短縮し、総合手入れ時間の大幅短縮を図る表面疵の自動手入れ方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の表面疵の自動手入れ方法は、「金属材料表面に記載された疵情報マークを画像抽出装置により認識し、その疵情報に基づいて表面疵を自動手入れする方法であって、疵位置を表示するマークとして、疵の上に疵の方向に沿った線状マークを記載し、その線状マークを画像抽出装置により認識し、線状マークについてのマーク線の座標を算出し、その座標から研削位置および研削範囲を算出して、表面疵を自動手入れする方法」である。
【0013】
本発明の第2の表面疵の自動手入れ方法は、「金属材料表面に記載された疵情報マークを画像抽出装置により認識し、その疵情報に基づいて表面疵を自動手入れする方法であって、疵位置を表示するマークとして、疵の上に疵の方向に沿った線状マークを記載するとともに、その線状マークと方向および長さが異なり本数によって表面疵の深さを表示する並列線状マークを、金属材料表面の前記線状マーク近傍に記載し、線状マークおよび並列線状マークを画像抽出装置により認識し、線状マークについてのマーク線の座標を算出し、その座標から研削位置および研削範囲を算出するとともに、並列線状マークの線数から研削回数を算出して、表面疵を自動手入れする方法」である。この場合、疵深さが大きくなるに従って並列線状マークの線数を減らすような記載法が望ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明による鋼板(厚板)表面へのマーキング例を示す平面図、図2,3はマークと研削との関係を本発明および従来について示す図、図4は疵深さ表示マークの記載変更例を示す図、図5は表面疵の研削に使用する自動研削装置の構成図、図6は自動研削装置の動作を示す演算ロジック図である。
【0016】
金属材料表面に記載された疵情報マークを画像抽出装置により認識し、その疵情報に基づいて表面疵を自動手入れする場合、疵位置を表示するマークに関して重要なことは、マーキングに手数がかからない、手入れ面積を小さくする、手入れ方向を指定できる、の3点であり、これらにより効率のよい手入れが可能となる。この観点から、本発明では、図1〜3に示すように、疵位置を表示するマークとして、表面疵Cの上に疵方向に沿った線状マークAを記載する。
【0017】
線状マークAは、囲みマークaと比べて記載作業が簡単で短時間である。
【0018】
手入れ面積については、鋼板上の表面疵Cは鋼板の長手方向もしくは幅方向のどちらかに直線状に伸びる傾向があるため、図2(b)に示すように、自動手入れ装置のヘッド部(ある程度の幅Wを持つ研磨砥石や研磨ベルト)の幅方向中央位置が線状マークAと一致するように、自動手入れ装置に教示を行えば、通常は1パスの手入れで表面疵Cが除去される。このときの、手入れ面積はL(パス長)×W(ヘッド部の幅)となる。
【0019】
ちなみに、疵位置を表示するマークが囲みマークaの場合は、通常は2パス以上の研削となり、2パスの場合で手入れ面積はL×2Wとなり、3パスの場合ではL×3Wとなる。
【0020】
画像抽出型の自動手入れ装置と組み合わせることにより、線状マークAは、実に手入れ面積を囲みマークaの場合の1/2〜1/3に低減できるのである。
【0021】
手入れ方向に関しては、図3に示すように、鋼板の幅方向に延びた表面疵Cの場合、手入れ方向が鋼板の幅方向であれば1パスで手入れが完了するが、長手方向であれば何回も研削を繰り返す必要がある。線状マークAの場合、方向違いによるロスは囲みマークaの場合より大きく、この点において、手入れ方向の教示は重要であるが、マークの長さをL1 、幅をL2 とすると、線状マークAの場合はL2 >>L1 となり、囲みマークaの場合はL2 >L1 となる。このため、線状マークAの場合のほうが、手入れ方向の認識が容易で正確である。
【0022】
疵深さを表示するマークについては、マーキングに手数がかからないこと、疵位置を表示するマーク(線状マークA)と明確に区別できること、手作業を考慮した段階区分であることなどが重要である。これらの点から、本発明では、図1,4に示すように、線状マークAと方向および長さが異なり本数によって表面疵の深さを表示する並列線状マークBを用い、通常は線状マークAに直角な方向の短線を線状マークAの方向に並べた並列線状マークBを用いる。
【0023】
並列線状マークBは、手作業による記載が容易であり、線状マークAとも明確に区別される。段階区分については、マーキングが目視観察による手作業であることを考慮すると、2もしくは3段階程度が現実的である。局所座標系の象限位置によって疵深さを表示する場合は、2の4乗の段階表示が可能であるが、このような段階表示は記載自体が簡単であっても、判断に時間がかかり、逆に作業を複雑にする。3段階であれば判断が容易であり、並列線状マークBの場合でも3本の線を引けばよいので、作業を複雑にするおそれがない。
【0024】
並列線状マークBで3段階表示を行う場合、深さ「小」:1本、深さ「中」:2本、深さ「大」:3本とする通常の順進表示法と、深さ「小」:3本、深さ「中」:2本、深さ「大」:1本とする逆進の表示法が考えられるが、並列線の記載では線と線の間が狭くなり、実際は3本線の場合も画像抽出装置では2本線あるいは1本線と判断されるようなことがある。このような場合、前者の疵深さの増大に応じて線数を増やす順進表示法であると、疵深さが過少評価され、削り残しが生じる。しかし、後者の疵深さの増大に応じて線数を減らす逆進表示法であれば、画像抽出装置での誤認に起因した線数の過少評価があっても、削り残しのおそれはない。
【0025】
実際の作業では、最初に深さ「小」と判断したものの実際は深さ「中」であるため、表示深さを「小」から「中」へ変更しなければならないような場合がある(これを放置すると削り残しが生じる)が、後者の疵深さの増大に応じて線数を減らす逆進表示法でも、図4のように、線と線の間を塗り潰すことにより、全体の線数が「3」から「2」へ容易に変更される。
【0026】
次に、マーキング後の自動手入れ工程について説明する。
【0027】
自動手入れ装置は、図5に示すように、マーキングを終えた鋼板1の表面をカメラ2により撮像し、その表面に記載された全てのマークを抽出する。抽出と同時に、図6に示す画像処理を画像処理ボード3で行う。画像処理では、線状マークAおよび並列線状マークBについてマーク線の座標を算出する。画像処理が完了すると、画像処理データを用いて図6に示す疵位置・疵深さの演算を演算装置4で行う。
【0028】
この演算では、マーク線の座標からその長さを計算し、マーク線の長いものを線状マークA、短いものを並列線状マークBと判定する。線状マークAと判定した場合は、座標から研削位置(自動手入れ装置のヘッド部の幅方向中央位置)および研削範囲(ヘッド部の移動開始点・終了点)を算出する。並列線状マークBと判定した場合は、線数から疵深さに応じた研削回数を算出する。両者を対応させて研削機5に与えることにより、鋼板1の表面疵が研削除去される。6は鋼板表面を照明する照明装置である。
【0029】
表1は、マーキングに本発明の表示方法(線状マークAおよび並列線状マークB)を用いて1枚の厚板表面を自動手入れする場合の装置コストおよび作業時間を、囲みマークaおよび付加マークbを用いる場合およびマーキングを行わずに画像処理のみで疵検出を行う場合と比較して示したものである。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明の表示方法(線状マークAおよび並列線状マークB)を用いる場合と、囲みマークaおよび付加マークbを用いる場合とを比較すると、装置コスト(カメラ台数・演算装置台数)およびマーキング時間・画像抽出処理時間は大差ないが、研削時間は本発明の表示方法(線状マークAおよび並列線状マークB)を用いることにより半減する。
【0032】
マーキングを行わずに画像処理のみで疵検出を行う場合は、マーキング時間は省略されるが、その時間を遙に超えて画像抽出処理時間が長くなり、全体の手入れ時間は囲みマークaおよび付加マークbを用いる場合より更に長く、本発明の表示方法(線状マークAおよび並列線状マークB)を用いる場合の約2倍となる。しかも、本発明の場合の3倍の台数のカメラおよび演算装置が必要になる。
【0033】
【発明の効果】
以上に説明した通り、本発明の疵情報表示方法は、金属材料表面に記載された疵情報マークを画像抽出装置により認識し、その疵情報に基づいて表面疵を自動手入れする際に、疵位置を表示するマークとして、疵の方向に沿った線状マークを金属材料表面に記載することにより、マーキング時間および研削時間の両方を短縮することができるので、総合手入れ時間の短縮にすこぶる有効である。
【0034】
線状マークの近傍に位置して、線状マークと方向および長さが異なり本数によって表面疵の深さを表示する並列線状マークを、金属材料表面に記載する場合は、疵深さについても能率の良い作業および情報教示が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による鋼板(厚板)表面へのマーキング例を示す平面図である。
【図2】マークと研削との関係を本発明および従来について示す図で、aは従来、bは本発明を示す。
【図3】マークと研削との関係を本発明および従来について示す図である。
【図4】疵深さ表示マークの記載変更例を示す図である。
【図5】表面疵の研削に使用する自動研削装置の構成図である。
【図6】自動研削装置の動作を示す演算ロジック図である。
【符号の説明】
A 線状マーク
B 並列線状マーク
C 表面疵
1 鋼板
2 カメラ
3 画像処理ボード
4 演算装置
5 研削機
6 照明装置
Claims (2)
- 金属材料表面に記載された疵情報マークを画像抽出装置により認識し、その疵情報に基づいて表面疵を自動手入れする方法であって、疵位置を表示するマークとして、疵の上に疵の方向に沿った線状マークを記載し、その線状マークを画像抽出装置により認識し、線状マークについてのマーク線の座標を算出し、その座標から研削位置および研削範囲を算出して、表面疵を自動手入れする方法。
- 金属材料表面に記載された疵情報マークを画像抽出装置により認識し、その疵情報に基づいて表面疵を自動手入れする方法であって、疵位置を表示するマークとして、疵の上に疵の方向に沿った線状マークを記載するとともに、その線状マークと方向および長さが異なり本数によって表面疵の深さを表示する並列線状マークを、金属材料表面の前記線状マーク近傍に記載し、線状マークおよび並列線状マークを画像抽出装置により認識し、線状マークについてのマーク線の座標を算出し、その座標から研削位置および研削範囲を算出するとともに、並列線状マークの線数から研削回数を算出して、表面疵を自動手入れする方法。
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