JP3921626B2 - ボールランプアクチュエータ及びこれを用いた動力伝達系 統クラッチ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両の動力伝達系統クラッチ、特に電子制御された一方向クラッチを用いて摩擦ディスクをエンジンフライホィールに締め付けて、駆動及び惰力走行動力伝達系統クラッチのロックアップ及び解放を行うために使用するようにした車両の動力伝達系統クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】
動力伝達系統クラッチは一般的に、圧力プレートを摩擦ディスクに押し付けてエンジンフライホィールに連結する複数の高率コイルばねを用いている。ばねは、エンジンフライホィールにボルト留めされた圧力プレートアセンブリ内に配置されている。圧力プレートのばね機構を制御する機械式リンク機構が、動力伝達系統クラッチのロックアップ及び解放を制御しようとする運転者の動作によって変位される。
【0003】
運転者の動作から独立させて作動させることができるように、電子機器を使用して動力伝達系統クラッチの作動を自動化しようとする広範な努力が払われてきた。変速機シフト事象中にもっと正確なクラッチ作動を行うため、実質的に運転者の代わりに機械式リンク機構に接続された電気機械式または油圧作動式アクチュエータを使用することが知られている。そのようなアクチュエータを使用した場合、動力伝達系統クラッチをいつ、どのように作動させるか、不作動化するかを決定するために様々な車両センサ入力及び他の作動状態を処理するために使用されるマイクロプロセッサベースの制御装置によって発生する電気制御信号に応じて、機械式リンク機構を移動させる。
【0004】
車両の動力伝達系統のクラッチパックに負荷を加えるためにボールランプアクチュエータを使用することは公知である。米国特許第4,805,486号は、サーボモータの回転か、作動リングに作用するソレノイド駆動式ブレーキシューによって開始されるボールランプアクチュエータの作動に応じてクラッチパックに負荷が加えられるようにした差動制限装置を開示している。ボールランプアクチュエータは、米国特許第5,078,249号に記載されているように、車両変速機において、信号に応じて歯車クラッチパックに負荷を加えることによって歯車装置の連結及び切り離しを行うためにも使用されており、この特許の開示内容は参考として本説明に含まれる。
【0005】
米国特許第5,469,948号及び第5,485,904号は、コイルを使用して作動させて制御リングに遮断力を与えることによって、ボールランプアクチュエータを作動させて締め付け負荷を摩擦ディスクに加えるようにしたクラッチボールランプアクチュエータを開示しており、これらの特許の開示内容は参考として本説明に含まれる。これらの特許は共に、制御コイルを用いて一方側を出力軸(変速機入力軸)に接続した動力伝達系統クラッチを解放する方向への制御リングの回転を阻止するために一方向クラッチを使用して、制御コイルが励磁された時だけ一方向クラッチが作動できるようにすることを開示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ボールランプアクチュエータを他のアクチュエータと比較した時の利点は、それが回転運動を非常に高い力倍率で、多くの場合に100:1以上であることが多い軸方向運動に変換することである。これらの用例のほとんどでは、ボールランプアクチュエータの一方側、一般的に制御リングまたはプレートと呼ばれる側が、コイルを流れる電流によって発生する電磁界で誘発された力によってケースグラウンド(case ground) に対して反作用させるか、あるいは制御リングが電気モータによってケースグラウンドに対して回転される。
【0007】
さらに大きい締め付け力を発生するためには、コイルモータに供給される電流を増加させ、それによって制御リングを作動リングに対して回転させる制御リングケースグラウンドの反力を増大させて、ボールランプ機構内の転動部材を制御及び作動リング内の対応のランプと係合させ、それによって軸方向移動及びクラッチディスクに対する締め付け力を増加させる。クラッチ締め付け力を与えるためにボールランプアクチュエータを使用する際の1つの問題は、片ランプのボールランプ機構の仕組みでは、作動電流を取り除いた時に締め付け力が失われることにある。
【0008】
言い換えると、この形式の従来形ボールランプ作動式クラッチでは、クラッチ制御装置が電気エネルギをコイルに供給できない時、動力伝達系統クラッチが切り離される。その場合、ボールランプアクチュエータは、動力伝達系統クラッチを不作動化させる方向へ自在に移動できる。このような状況では、作動リング及び制御リングの相対回転が逆転して、ボールランプの軸方向変位が消失するため、圧力プレートはクラッチディスクから引き離される。その結果、エンジンが変速機から切り離されて、エンジンの駆動力も制動力も失われる。クラッチ制御装置からの電力が失われた時にボールランプアクチュエータがそれの状態(位置)を維持できることが望ましい。
【0009】
ボールランプアクチュエータは、複数の転動部材と、制御リングと、向き合った作動リングとを備えており、作動リング及び制御リングによって少なくとも3つの向き合った片ランプ表面が円周方向半円溝として形成され、各対の向き合った溝に1つの転動部材が収容されている。制御リングとハウジング部材との間にスラスト軸受が配置されて、フライホィール等の入力部材に連結されてそれと共転する。制御リングの1つの部材に隣接して電磁コイルが配置されて、これが誘発する磁界が制御リングに負荷を加えることによって、ボールランプアクチュエータの制御リング及び作動リング間に相対回転を発生させる。
【0010】
このような事情に鑑みて、本発明は、電力の消失時にボールランプ作動式クラッチが切り離されないようにすることを目的としている。
【0011】
本発明の別の目的は、解放コイルを用いて制御された一方向クラッチを用いることによって、ボールランプ作動式クラッチが切り離されないようにすることである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、一方向クラッチを用いて制御リングと作動リングとの間の回転向きを固定することによって、電力の消失時にボールランプ作動式クラッチが切り離されないようにすることである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、第1レースを作動リングに接続し、第2レースを制御リングに接続した一方向クラッチを用いて制御リングと作動リングとの間の回転向きを固定することによって、動力伝達系統トルクが逆転した時にボールランプ機構が切り離されないようにすることである。
【0014】
本発明のさらなる目的は、第1レースを作動リングに接続し、第2レースを制御リングに接続した一方向クラッチを用いて制御リングと作動リングとの間の回転向きを固定することによって、ボールランプ機構が切り離されないようにすることであり、一方向クラッチは常時連結されているが、解放コイルを用いて電子的に切り離される。
【0015】
本発明のさらに別の目的は、外レースを作動リングに接続し、内レースを制御リングに接続した一方向クラッチを用いて制御リングと作動リングとの間の回転向きを固定することによって、ボールランプ機構が切り離されないようにすることであり、一方向クラッチは常時連結されているが、接地された解放コイルを用いて電子的に切り離される。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンジンフライホィール等の回転入力部材と変速機入力軸等の回転出力部材とを、ボールランプアクチュエータの軸方向伸張によってフライホィール及び作動リング間に締め付けられるクラッチディスクを介して回転結合させることを特徴としている。
【0017】
ボールランプアクチュエータは、一方向に深さが可変の溝(ランプ)を備えた制御リングと、制御リングの溝と少なくとも部分的に向き合って一方向に深さが可変の溝を備えた作動リング(圧力プレート)とを備えて、電子制御一方向クラッチの作用によって動力伝達系統クラッチを解放する方向への作動リングの回転を選択的に阻止する。制御リングを変速機ケース等のケースアースに電磁結合させるために電磁コイルを使用している。ボールランプアクチュエータは、コイルによる電子励起によってのみ増加する締め付け力をクラッチ摩擦ディスクに加える。
【0018】
圧力プレート及び制御リングに取り付けられた一方向クラッチが、これらの部材の相対回転を阻止し、それによってボールランプアクチュエータの解放を阻止する。フライホィール及び変速機入力軸間がロックアップされている時、ボールランプアクチュエータを作動状態に維持するために制御コイルに電流を供給し続ける必要がないため、寄生エネルギ損失を最小限に抑えることができる。一方向クラッチは、解放コイルによって電子制御されており、解放コイルが励磁された時、制御プレートが不作動方向へ回転できるようになり、これによってクラッチプレートが解放される。解放コイルが励磁されない時、一方向クラッチが作動して、制御リングは圧力プレートに対して、ボールランプアクチュエータをさらに作動させて動力伝達系統クラッチの連結を維持する方向にだけ回転することができる。
【0019】
【作用】
本発明は、ある部材を一方向へ回転できるが、反対方向へはほとんど回転できないようにする機構として本出願のために定義された一方向クラッチを利用している。本発明のボールランプアクチュエータに使用される一方向クラッチの目的は、電力が消失した時でも、ボールランプアクチュエータの軸方向離隔距離及びクラッチプレートに加えられている存在締め付け力を維持できるように、制御リングを作動リングに対して固定位置に保持することである。
【0020】
一方向クラッチを用いることによって、片角ランプ(制御リングが作動リングに対して一方向に回転する時に締め付け負荷を加えるだけである溝)を備えた一方向ボールランプアクチュエータを設けたクラッチは、エンジンが駆動している時、またはクラッチ制御装置からさらなる入力を受け取らないで駆動されている時に、クラッチ締め付け力を維持することができる。本発明は、締め付け力をいつでも解放できるように、一方向クラッチの切り離しの電子制御を行うことができる。一方向クラッチを切り離してボールランプアクチュエータを収縮させることができるようにする解放コイルを励磁することによって、クラッチを解放することができる。
【0021】
このように、実質的に変速機入力軸と片角溝を備えたボールランプアクチュエータの制御リングとの間で作用する一方向クラッチを使用することによって、動力伝達系統クラッチへの入力トルクが逆転するか、制御コイルへの電力が消失した時に、クラッチディスクの締め付け力を選択的に維持することができる。
【0022】
【実施例】
本発明の原理の理解を助けるため、以下に図示の実施例を参照し、それを説明するために特定の用語を用いる。しかし、それによって発明の範囲を限定するものではなく、図示の装置のそのような変更及びさらなる変化、さらに本発明の原理を図示のように応用することは、本発明が関連する技術の専門家には通常思い付くことであると考えられることを理解されたい。
【0023】
本開示において、以下の説明で便宜上一定の用語を用いるが、それらは参考にすぎず、限定的なものではない。「右方向」及び「左方向」は、その用語を使用している図面上での方向を示している。「内方」及び「外方」は、本発明の装置の構造中心に対してそれぞれ向かう方向及び離れる方向を示している。「上方」及び「下方」は、その用語を使用している図面上での方向を示している。上記用語はすべて、通常の派生語及び類似語を含む。
【0024】
図1は、入力及び出力部材に取り付けられた本発明のボールランプアクチュエータ4の断面図である。本発明を利用できる形式のクラッチアセンブリ2が用いているボールランプアクチュエータ4では、圧力プレート6(作動リングとしても知られている)を使用して軸方向力を加えることによって、変速機入力軸にすることができる出力部材5に回転不能に取り付けられたクラッチディスク10を圧力プレート6とエンジンフライホィールにすることができる入力部材3との間に締め付けることができる。クラッチアセンブリ2は、フライホィールを変速機入力軸(出力部材5)に摩擦結合させるための車両の動力伝達系統クラッチとして使用することができる。入力部材3は、内燃機関等の原動機(図示せず)によってクランク軸を介して回転駆動される。クランク軸は、出力部材5を回転駆動するクラッチディスク10に対する圧力プレート6の締め付け作用によって本発明のクラッチアセンブリ2を介して出力部材5に連結される入力部材3を回転させる。圧力プレート6は、複数の軸スプライン11を入力部材3に係合させることによって出力部材5に回転不能に取り付けられたクラッチディスク10を締め付け、それによって原動機からの回転力を出力部材5に、従って車両動力伝達系統等の回転エネルギを必要とする装置に伝達することができる。
【0025】
本開示の効果を得るため、入力部材3は電気モータ等のいずれの形式の回転原動機にも取り付けることができ、出力部材5は運動伝達装置に接続されたいずれの形式の回転軸にすることもできる。このため、回転入力部材3はエンジンフライホィールでよく、回転出力部材5は、車両動力伝達系統に使用されるギヤチェンジ変速機の変速機入力軸でよい。
【0026】
圧力プレート6は一般的に、複数の高率クラッチばねの反作用を利用して、フライホィール等の入力部材3の方へ押し付けられる。しかし、本発明は、ボールランプアクチュエータ4によって発生する軸方向力を利用して、直接的に圧力プレート6に作用する力を発生することによって、クラッチディスク10を入力部材3に締め付ける。
【0027】
ボールランプ機構は従来より公知であって、米国特許第5,078,249号に開示されているような変速機及び歯車クラッチや、米国特許第5,092,825号に開示されているような差動クラッチパックに負荷を加えるために使用されており、これらの特許の開示内容は参考として本説明に含まれる。従来技術では、ボールランプ制御機構は、制御リングの反作用によりケースグラウンドに押し付けられるか、電気コイルまたはモータによる出力軸との電磁結合によって励磁される。ボールランプアクチュエータ4の詳細な作用は、米国特許第5,078,249号及び第5,092,825号に開示されている。
【0028】
制御リング16及び圧力プレート6間の相対回転運動によって、複数の転動部材20A、20B及び20C(図2を参照)が、長さ方向に深さが変化する溝22A、22B、22C、23A、23B及び23Cに沿って移動する。制御リング16の第1面に形成されたリング溝22A、22B及び22Cは、圧力プレート6の第1側部に形成された対応のプレート溝23A、23B及び23Cと向き合っている。このため、制御リング16と圧力プレート6との相対回転によって、転動部材20A、20B及び20Cがそれぞれのリング溝22A、22B、22Cと同時にプレート溝23A、23B及び23Cを進み、それによって制御リング16を圧力プレート6に対して軸方向に移動させる。
【0029】
圧力プレート6は、軸方向に移動可能であるが、入力部材3及びハウジング15に対して回転不能に連結されていることによって、圧力プレート6の第2側部でクラッチディスク10と接触して摩擦係合することができる。制御リング16及び圧力プレート6によって発生した軸方向力を伝達するためにスラスト軸受18が使用されており、制御リング16の第2面がスラスト軸受18に接触している。スラスト軸受18は、球形転動部材を用いた形式か、針状ころ軸受等の軸方向負荷を伝達するのに適したいずれかの種類の材料または部材を用いた構造にすることができる。
【0030】
このため、ボールランプアクチュエータ4が伸張して圧力プレート6を軸方向に変位させると、力がスラスト軸受18を介してベースリング17に反作用して、ハウジング15に入り、入力部材3に達する。一方向クラッチ14の外レース21がハウジング15によって支持されており、このため、入力部材3及び圧力プレート6に回転不能に連結されている。制御延出部分26が、ケースグラウンドに取り付けられた制御コイル34と磁気的に相互作用するように制御リング16の一部として形成されていることによって、制御装置32によって制御コイル34に電流を流すと、自動車の空調コンプレッサに使用されている方法と同様にして、制御延長部分26が磁気的に制御コイル34及びケースグラウンドに引き付けられる(摩擦連結することができる)。
【0031】
一方向クラッチ14は常時連結しており、それによって通常状態では内レース19から外レース21へ回転エネルギを伝達する。解放コイル30が、一方向クラッチ14に隣接配置されており、制御装置32によって電気的に励磁された時、これは解放プレート28を磁気的に引き付け、それによって一方向クラッチ14を解放するため、内レース19は外レース21に対していずれかの方向へ回転できる。解放コイル30は、変速機ハウジング(図示せず)等のグラウンド部材に取り付けられているように概略的に示されている。
【0032】
これによって、制御リング16は、制御延長部分26に作用する制御コイル34によってだけ制御されて、圧力プレート6に対して回転できるようになる。内レース19は制御リング16に回転不能に連結されており、外レース21はハウジング15及び圧力プレート6に回転不能に連結されている。このため、一方向クラッチが連結した(解放コイルが励磁されていない)時、制御リング16は、圧力プレート6に対してボールランプアクチュエータ4をさらに分離させる方向に回転できるだけであり、これによってクラッチアセンブリの解放が防止される。
【0033】
制御リング16は、一方向クラッチ14の内レースを支持するように右方向へ延出していると共に、制御コイル34と磁気的に相互作用する制御延長部分26を形成している。制御コイル34は、変速機のケース等のアースに取り付けられて、クラッチ制御装置32によって電気的に励磁される。制御コイル34は電磁界33を発生し、これが制御延長部分26内に制動力を導入し、この制動力が制御リング16に伝達される。制御コイル34は、変速機ハウジング等のアース部材(図示せず)に取り付けられている。制御コイル34がクラッチ制御装置32によって電気的に励磁された時、制御リング16がケースグラウンドに摩擦回転可能に連結されるようにする摩擦表面を制御延長部分26に形成することができ
る。
【0034】
いずれの場合も、図1に示されているように制御コイル34によって発生した電磁界33が、制御延長部分26を制御コイル及びケースグラウンドに結合させる。同様に、やはり変速機ケース等のケースグラウンドに取り付けられた解放コイル30は、クラッチ制御装置32によって電気的に励磁された時、図1に概略的に示されているグラウンド部材に解放プレート28を摩擦連結させ、それによって電磁制動力が解放プレート28に加えられる。この制動力によって、制御リング16が圧力プレート6に対して回転し、それによって制御リング16及び圧力プレート6が分離する。
【0035】
次に図2を参照しながら説明すると、制御リング16は、出力部材5を包囲して、共通回転軸線36回りに共転するディスク形状になっている。制御リング16には複数の半径方向リング溝22A、22B及び22Cが形成されており、これらの軸方向深さは長さ方向に沿って変化している(図3及び図4を参照されたい)。リング溝22A、22B及び22Cに、それぞれ対応の転動部材20A、20B及び20Cがはまっている。同様に、圧力プレート6には、同じ数及び向きで円周方向に延在するプレート溝23A、23B及び23Cが、制御リング16に形成されたリング溝22A、22B及び22Cに向き合わせて形成されている。すなわち、ボールランプアクチュエータ4が図3に示されている不作動状態にある時、制御リング溝22Aは圧力プレート溝23Aに部分的に向き合っているが、図4に示されているような部分的作動状態の時には、もっと直接的に圧力プレート溝23Aに向き合う。
【0036】
制御リング16と圧力プレート6との間の相対回転運動時に、球形部材20Aは制御リング溝22A及び圧力プレート溝23A内を転動し、溝22A及び23Aの深さが変化することによって、制御リング16を圧力プレート6から分離させようとする軸方向運動が得られる。
【0037】
この運動は図3及び図4にもっと明らかに示されており、それを参照しながら以下に説明する。第3及び第4図は、本発明の制御リング16及び圧力プレート6の図2のIII−III線に沿った断面図である。図3は、球形部材20Aが制御リング溝22Aの最も深い部分、及び圧力プレート溝23Aの最も深い部分に位置して、それによって制御リング16と圧力プレート6との間の分離ギャップ44が比較的狭い不作動状態にあるボールランプアクチュエータ4を示している。図3に示されているような不作動状態では、分離ギャップ44が比較的狭く、制御リング16が圧力プレート6に対して図4に示されている作動位置へ相対回転すると、分離ギャップ44が相当に広くなる。この軸方向運動を利用して、圧力プレート6を入力部材3の方へ軸方向移動させ、それによってクラッチディスク10に締め付け力を与えることができる。
【0038】
図4は、クラッチ制御装置32から制御コイル34へ電流を流すことによってボールランプ機構4を作動させた時の制御リング16と圧力プレート6との間の関係を示している。(接地された)制御コイル34と制御延長部分26との間の磁気的相関作用によって、制御リング16をケースグラウンドに電磁的に接続するように制御リング16に制動効果が加えられる。このため、圧力プレート6は入力部材3と共に回転しているので、入力部材3とケースグラウンドとの間の相対回転速度差によって、圧力プレート6と制御リング16との間に相対回転移動が誘発される。この相対回転移動によって、制御リング16は圧力プレート6に対して回転して、図4に示されているものと同様な配置関係を生じる。
【0039】
図3の不作動状態に較べて、分離ギャップ44が相当に大きくなっている。球形転動部材20Aは、制御リング溝22A及び圧力プレート溝23Aの両方に沿って溝22A及び23Aの中間深さまで転動し、それによって制御リング16を圧力プレート6から分離させて、分離ギャップ44の増加で示されているような(支持ハウジング15と共転する)圧力プレート6の軸方向運動が行われ、これを伝達することによって、クラッチディスク10を入力部材3に締め付けることができる。図3及び図4の両方には、圧力プレート6に対する制御リング16の相対回転移動が、リング溝22A及びプレート溝23A上の点42及び43でさらに説明されている。
【0040】
図5は、図1のV−V線に沿った本発明のボールランプアクチュエータの断面図であり、一方向クラッチ14の構造をさらにわかりやすく示している。外レース21の内周に複数のくさび形部分27が、円筒形ローラとして示されている同数の転動部材24を収容するように設けられている。解放プレート28には、それぞれ転動部材24に接触するように解放プレート28から軸方向に延出したタブ35が設けられている。解放プレート28の回転軸線は、出力部材5の回転軸線36と一致している。
【0041】
解放コイル30がクラッチ制御装置32によって励磁された時、タブ35が転動部材24を図5に示されている解放位置へ押し込む。転動部材24が解放位置に保持されると、一方向クラッチ14は、制御リング16を圧力プレート6に対して、クラッチディスク10に対する締め付け負荷を減少させる方向に相対的に回転させる。このような相対回転により動力伝達系統クラッチ2を解放することができる。解放コイル30が励磁されない場合、転動部材24はくさび形部分27のために内レース19及び外レース21間で固定されるようになるため、制御リング16は圧力プレート6に対して、制御リング16を圧力プレート6からさらに分離させ、それによってクラッチディスク10に対する締め付け負荷を増大させる方向に回転できるだけである。
【0042】
このように、一方向クラッチ14は、ボールランプアクチュエータ4を所定の作動状態にロックすることができ、動力伝達系統クラッチアセンブリ2の係合度合いに影響を与えることなく電力を取り除くことができる。
図6は、圧力プレート6の変更実施例を示している。圧力プレート6は、圧力プレート6’及び作動プレート6”の2部材に分割されており、それぞれ転動部材20A、20B及び20Cを保持するプレート溝23A、23B及び23Cが、圧力プレート6’に接してそれを押し付ける作動プレート6”に形成されている。その場合、圧力プレート6’が、クラッチディスク10に接触して摩擦係合する。
【0043】
ボールランプ機構4を常時圧縮し、それによってクラッチアセンブリ2を解放しようとしている動力伝達系統クラッチアセンブリ2を継続的に連結させる場合は、解放コイル30を非励磁状態にして、一方向クラッチ14によって、クラッチアセンブリ2をさらに作動させる方向以外への圧力プレート6に対する制御リング16の回転を阻止する。クラッチアセンブリ2を解放する場合は、クラッチ制御装置32によって解放コイル30を励磁し、これによって解放プレート28をケースグラウンドに電磁的に接続して、タブ35が転動部材24をくさび形部分27上の位置へ押し込むことによって、一方向クラッチ14がいずれの方向へも回転できるようにする。
【0044】
【発明の効果】
本発明を車両動力伝達系統に適用する場合、クラッチアセンブリ2がボールランプ機構4の作用で作動し、一方向クラッチ14が連結して、エンジンが出力を車両動力伝達系統に供給して車両を推進できるようになった時、あるいはエンジンから動力伝達系統へ動力を供給することによって車両の速度を高めることが望まれなくなった時、エンジン出力を減少させ、エンジンから動力伝達系統への回転出力の流れを動力伝達系統からエンジンへ流れるように逆転させることによって、エンジンが車両を制動することができる。
【0045】
解放コイル30を励磁しない場合、一方向クラッチ14は制御リング16に対する圧力プレート6の相対回転位置を維持することができ、それによって圧力プレート6と入力部材3(フライホィール)との間の締め付け力を維持することによって、出力部材5(変速機入力軸)と入力部材3(フライホィール)間の摩擦回転結合を維持することができるので、動力伝達系統はエンジンに回転力を供給することができ、これは、エンジンスロットルが閉じている場合、車両を制動しようとする。このため、本発明によれば、制御コイル34への電力供給がなくなっても、動力伝達系統クラッチアセンブリ2及びボールランプアクチュエータ4の状態が維持される。解放コイル30が励磁されるまで、連結したクラッチアセンブリ2は連結したままとなる。
【0046】
以上に本発明を、当業者であればそれを製造及び使用できるまで十分に詳細に説明してきた。上記明細書を読んで理解すれば、本発明の様々な変更が当業者には明らかになるであろう。そのような変更はすべて、請求項の範囲に入る限り、本発明の一部に含まれるものとする。
【図面の簡単な説明】
【図1】入力及び出力部材に取り付けられた本発明のボールランプアクチュエータの部分断面図である。
【図2】本発明のボールランプアクチュエータの作動リング、制御リング及び圧力プレートの図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿った本発明のボールランプアクチュエータの断面図であって、アクチュエータが不作動状態に示されている。
【図4】図2のIII−III線に沿った本発明のボールランプアクチュエータの断面図であって、アクチュエータが作動状態に示されている。
【図5】図1のV−V線に沿った本発明のボールランプアクチュエータの断面図である。
【図6】本発明の圧力プレートの変更実施例の前面図である。
【符号の説明】
3 入力部材
4 ボールランプアクチュエータ
5 出力部材
6 圧力プレート
10 クラッチプレート
14 一方向クラッチ
16 制御リング
19 内レース
20A、20B、20C 転動部材
21 外レース
22A、22B、22C リング溝
23A、23B、23C プレート溝
28 解放プレート
30 解放コイル
32 クラッチ制御装置
34 制御コイル

Claims (15)

  1. 回転入力部材(3)を出力部材(5)に連結するためのボールランプアクチュエータ(4)であって、
    原動機によって駆動されて、回転軸線回りに回転する入力部材(3)と、
    該入力部材(3)の前記回転軸線と同軸的な回転軸線を備えて出力装置を回転させる出力部材(5)と、
    長さ方向に沿って軸方向深さが増加する少なくとも2つの円周方向溝(22A、22B、22C)を第1面に設けており、ケースグランドに磁気的に結合されることによって前記出力部材(5)と共に前記回転軸線回りに回転する環状制御リング(16)と、前記溝(22A、22B、22C)の各々に1つずつ配置された同数の転動部材(20A、20B、20C)と、前記制御リング(16)の前記回転軸線に沿った回転軸線を備えて、前記入力部材(3)に回転不能に連結されている圧力プレート(6)とを備えており、該圧力プレート(6)には、前記制御リング(16)に形成された前記溝(22A、22B、22C)と数、形状及び半径方向位置がほぼ同じである少なくとも2つの溝(23A、23B、23C)が設けられ、前記圧力プレート(6)に形成された前記溝(23A、23B、23C)は、前記制御リング(16)に形成された前記溝(22A、22B、22C)に少なくとも部分的に向き合って、前記転動部材(20A、20B、20C)の各々を、前記圧力プレート(6)に形成された前記溝(23A、23B、23C)の1つと前記制御リング(16)に形成された前記溝(22A、22B、22C)の1つとの間に捕らえていると共に、前記制御リング(16)を前記圧力プレート(6)に対して軸方向及び回転方向に移動可能に配置している、軸方向変位を生じるボールランプアクチュエータ(4)と、
    前記入力部材(3)と前記圧力プレート(6)との間に配置されて、前記出力部材(5)に回転不能に接続されており、前記ボールランプアクチュエータ(4)が作動した時に前記入力部材(3)と前記圧力プレート(6)との間に締め付けられ、それによって前記入力部材(3)を前記出力部材(5)に摩擦結合させるクラッチディスク(10)と、
    前記制御リング(16)に接続された内レース(19)及び前記圧力プレート(6)と共転する外レース(21)とを備えて、前記制御リング(16)及び前記圧力プレート(6)の軸方向離隔距離を減少させる方向への前記制御リング(16)及び前記圧力プレート(6)間の相対回転を阻止するように配置されており、ケースグラウンドに接続された時、前記制御リング(16)が前記圧力プレート(6)に対して、前記制御リング(16)及び前記圧力プレート(6)間の軸方向隔離距離を減少させる方向に回転できるように解放する解放プレート(28)を設けている一方向クラッチ(14)と、
    前記ケースグラウンドに接続されて、該一方向クラッチ(14)を解放するために前記解放プレート(28)を前記ケースグラウンドに電磁的に接続できるように、クラッチ制御装置(32)によって選択的に電気的に励磁される解放コイル(30)と、
    前記制御リング(16)を前記ケースグラウンドに電磁的に連結できるように、前記クラッチ制御装置(32)によって電気的に励磁される制御コイル(34)とを有することを特徴とするボールランプアクチュエータ。
  2. 前記入力部材(3)は、エンジンに回転不能に取り付けられたフライホィールを有しており、前記出力部材(5)は変速機入力軸を有していることを特徴とする請求項1記載のボールランプアクチュエータ。
  3. 前記制御コイル(34)及び前記解放コイル(30)は前記ケースグラウンドに取り付けられていることを特徴とする請求項2記載のボールランプアクチュエータ。
  4. 前記制御コイル(34)と摩擦接触してそれに回転制動トルクを加えるために前記制御リング(16)に摩擦表面が形成されていることを特徴とする請求項3記載のボールランプアクチュエータ。
  5. 前記転動部材(20A、20B、20C)は球形であることを特徴とする請求項1記載のボールランプアクチュエータ。
  6. さらに、前記入力部材(3)に取り付けられて、前記ボールランプアクチュエータ(4)をほぼ取り囲んでいるハウジング(15)と、前記制御リング(16)及び前記ハウジング(15)間に作用して、前記ボールランプアクチュータ(4)を作動させた時に発生するスラスト負荷を吸収するスラスト軸受(18)とを有していることを特徴とする請求項1記載のボールランプアクチュエータ。
  7. フライホィール(3)を変速機入力軸(5)に連結するボールランプアクチュエータ(4)を用いた動力伝達系統クラッチ(2)であって、
    エンジンで回転軸線回りに回転するフライホィール(3)と、
    入力軸(5)及びハウジングを備えたギヤチェンジ変速機と、
    前記入力軸(5)にスプライン連結されて、前記入力軸(5)から半径方向に延出しており、第1表面及び第2表面に摩擦物質を備えて、該第1表面が前記フライホィール(3)と摩擦係合するようにしたクラッチディスク(10)と、
    前記入力軸(5)を取り囲んで、前記フライホィール(3)に回転不能に滑り結合されており、前記クラッチディスク(10)の前記第2表面と摩擦係合する第1表面を備えている圧力プレート(6)と、
    該圧力プレート(6)を前記クラッチディスク(10)及び前記フライホィール(3)の方へ移動させ、それによって前記クラッチディスク(10)をその間に締め付けることができるボールランプアクチュエータ(4)であって、前記圧力プレート(6)の第2表面に形成されて、可変深さの部分を備えている複数のプレート溝(23A、23B、23C)と、各プレート溝(23A、23B、23C)内に1つずつ配置された転動部材(20A、20B、20C)と、前記入力軸(5)を取り囲んで、前記圧力プレート(6)に隣接配置された制御リング(16)とを備えており、前記制御リング(16)の第1面に前記プレート溝(23A、23B、23C)とほぼ同一の複数のリング溝(22A、22B、22C)が形成されており、前記プレート溝(23A、23B、23C)は前記リング溝(22A、22B、22C)に向き合い、転動部材(20A、20B、20C)が各対の向き合ったリング及びプレート溝(22A、23A;22B、23B;22C、23C)に接触しており、前記リング溝(22A、22B、22C)及び前記プレート溝(23A、23B、23C)は、前記圧力プレート(6)及び前記制御リング(16)の相対角移動によって前記圧力プレート(6)及び前記制御リング(16)間の軸方向離隔距離が増減するように配置されているボールランプアクチュエータ(4)と、
    前記制御リング(16)の第2面に接触して、前記フライホィール(3)に連結されたハウジング(15)に対して反作用する、前記制御リング(16)によって発生した軸方向スラスト負荷を吸収するスラスト軸受(18)と、
    前記制御プレート(16)内に選択的に磁界を誘発し、それによって前記制御リング(16)をケースグラウンド部材に磁気結合させる制御コイル(34)と、
    前記制御リング(16)に取り付けられた内レース(19)及び前記ハウジング(15)に取り付けられた外レース(21)を備えて、前記制御リング(16)及び前記圧力プレート(6)間の軸方向隔離距離を減少させる方向への前記制御リング(16)に対する前記圧力プレート(6)の回転を阻止する一方向クラッチ(14)と、
    前記一方向クラッチ(14)と接触する解放プレート(28)と、
    該解放プレート(28)内に磁界を選択的に誘発し、それによって前記一方向クラッチ(14)を解放することによって、前記圧力プレート(6)が前記制御リング(16)に対して、前記制御リング(16)及び前記圧力プレート(6)間の軸方向隔離距離を増減させる方向に回転できるようにする解放コイル(30)とを有していることを特徴とする動力伝達系統クラッチ。
  8. 前記制御コイル(34)及び前記解放コイル(30)は前記ケースグラウンド部材に取り付けられていることを特徴とする請求項7記載の動力伝達系統クラッチ。
  9. さらに、前記制御コイル(34)と摩擦係合してそれに回転制動トルクを加えるように、前記制御リング(16)に摩擦表面が形成されていることを特徴とする請求項8記載の動力伝達系統クラッチ。
  10. 前記転動部材(20A、20B、20C)は球形であることを特徴とする請求項8記載の動力伝達系統クラッチ。
  11. ボールランプアクチュエータ(4)を用いた動力伝達系統クラッチ(2)であって、
    フライホィール摩擦表面を備えて回転軸線回りに回転可能なフライホィール(3)と、
    回転軸線回りに回転可能な出力部材(5)と、
    第1摩擦表面及び第2摩擦表面を備えて、前記フライホィール(3)の前記回転軸線回りに回転可能であり、該第1摩擦表面を前記フライホィール摩擦表面に向き合わせたクラッチディスク(10)と、
    該クラッチディスク(10)の前記第2摩擦表面に向き合った摩擦表面を備えて、前記フライホィール(3)に回転不能に連結されている圧力プレート(6)と、
    該圧力プレート(6)を前記フライホィール(3)の方へ軸方向変位させるボールランプアクチュエータ(4)であって、円周方向に延在して可変深さの部分を備えている溝(22A、22B、22C;23A、23B、23C)を、少なくとも3対の対向溝(22A、23A;22B、23B;22C、23C)として配置して設けた対向面を備えた制御リング(16)及び作動リング(6)と、各対の対向溝(22A、23A;22B、23B;22C、23C)内に1つずつ配置された転動部材(20A、20B、20C)とを備えており、前記作動リング(6)及び前記隣接の制御リング(16)の前記溝(23A、23B、23C、22A、22B、22C)は、前記作動リング(6)及び前記制御リング(16)が開始位置から第1方向へ相対角移動することによって、前記作動リング(6)が前記制御リング(16)から離れる方向へ軸方向移動して、前記圧力プレート(6)を前記フライホィール(3)の方へ移動させ、これによって前記クラッチディスク(10)を締め付けることができるように配置されており、前記作動リング(6)は前記圧力プレート(6)を構成していると共に、前記制御リング(16)及び前記作動リング(6)は前記回転軸線回りに回転可能であるボールランプアクチュエータ(4)と、
    前記制御リング(16)に回転不能に取り付けられた内レース(19)及び前記フライホィール(3)に回転不能に接続された外レース(21)を備えて、前記作動リング(6)が前記制御リング(16)に近づく方向への前記作動リング(6)及び前記制御リング(16)の相対回転を阻止する一方向クラッチ(14)と、
    該一方向クラッチ(14)と接触することによって、前記作動リング(6)が前記制御リング(16)に対して、前記作動リング(6)及び前記制御リング(16)間の軸方向隔離距離を増減させる方向に回転できるようにする解放プレート(28)と、
    前記制御リング(16)をケースグラウンドに選択的に結合するカップリング手段とを有していることを特徴とする動力伝達系統クラッチ。
  12. 前記カップリング手段は、電流で励磁された時に前記制御リング(16)内に磁界を誘発し、それによって前記制御リング(16)に制動トルクを加えるコイル(34)を有していることを特徴とする請求項11記載の動力伝達系統クラッチ。
  13. 該コイル(34)はクラッチ制御装置(32)によって電気的に励磁されることを特徴とする請求項12記載の動力伝達系統クラッチ。
  14. 前記出力部材(5)は変速機入力軸であることを特徴とする請求項11記載の動力伝達系統クラッチ。
  15. 前記フライホィール(3)はエンジンによって回転駆動されることを特徴とする請求項11記載の動力伝達系統クラッチ。
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