JP3917921B2 - 河川治水用堤体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、河川治水用堤体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の河川治水用堤体1を図7に示す。
図7において、前記河川治水用堤体1は、治水ダム(遮蔽部材)本体2と治水ダム基礎3と護岸4とによって構成されている。
治水ダム本体2の高さは、基本高水によって設定されており、この治水ダム本体2の下流の両岸には護岸4が上流とは異なる計画高水位を考慮した高さをもって設けられている。
【0003】
上記の構成からなる河川治水用堤体1は、常時においても河川の流れが遮られているため、上流には河川がせき止められることによって水量調整用の貯水池が形成されている。また、下流には少量の水量のみが流されている。
【0004】
また、増水時のみ河川の流れをせき止める方法として、通常時には川底にあって、増水時に川面に向けて張設される可撓性膜体を使用する堤体もある(例えば特許文献1参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−2485831号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の河川治水用堤体においては、河川の水量が少ない常時においてもダムが河川の流れを遮るため、上流からの流出土砂がダム底に堆積されて底面の上昇を招くとともに、ダム排水口付近に流出土砂や流木等が詰まって水の流れを妨げてしまう問題があった。
【0007】
さらに、豪雨等によって増水しても下流への水量を調整できる規模をあらかじめ確保するため、ダム自身及び基本高水が大きく必要とされて、ダム建設時及びそれ以降にわたって貯水池流域の自然環境への負荷が大きくなってしまう問題があった。
【0008】
また、川底から張設する可撓性膜体を有する堤体においては、水流を膜体によってせき止めることになるため、ダムの場合と同様に基本高水が大きく必要とされる護岸を構築しなければならないという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであり、堤体による治水が必要とされる河川において、常時は水の流れを妨げることがなく、また、豪雨等の増水時のみ河川の流れを完全に遮蔽することなく、自然環境への負荷が小さい堤体を供給することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
請求項1に記載の発明は、河川の水の流れる領域を挟んで対向する位置に、前記領域の計画高水位から上方に突出するように一方のアンカーと他方のアンカーとを立設し、これら一方のアンカーと他方のアンカーとに渡って、前記計画高水位以下の水の流れを許容し、前記計画高水位以上の流れを阻止する遮蔽部材を張設してなることを特徴とする。
【0011】
このような構成とすることで、通常時には河川の水が流れて、土砂・流木等が堤体の上流側に溜まることがない。また、豪雨等の増水時には、計画高水位を超える水流が発生しても下流への流れを阻止する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の河川治水用堤体において、前記遮蔽部材は、膜部材と、該膜部材に前記一方のアンカーから前記他方のアンカーに向かって設けられた索状体とを備えてなることを特徴とする。
【0013】
このような構成とすることで、通常時には折り畳まれて収納されている膜体を、増水時にアンカー間に張ることによって、計画高水位以上の水流が下流に流れるのが阻止される。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の河川治水用堤体において、前記アンカーと前記遮蔽部材とが、河川の上流側から下流側に間隔をおいて複数設置されていることを特徴とする。
【0015】
このような構成とすることで、複数からなる遮蔽部材が、各配設位置における計画高水位以上の水流を阻止することによって、1つの大きなダムで阻止する場合と同程度の水量が阻止される。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
図1〜図4は、本発明の第1の実施形態を示す。
図1は、河川治水用堤体の全体概要を示す。
図1、図2において、河川治水用堤体10は、アンカー11と膜体(遮蔽部材)12と護岸13とからなっており、アンカー11と膜体12とが河川の水の流れる領域の上流から下流にかけて間隔をおいて複数個設置されて構成されている。
【0017】
護岸13は、上端面14と壁面15とを備えて河川に沿って両岸に設置されており、片方のアンカー11の設置位置に対して、河川を挟んで幅方向に沿って対向する護岸13の上端面14上に他方のアンカー11が対となって配設されている。膜体12は、1対のアンカー11間に渡って張設されている。
この一対のアンカー11と膜体12一式とを膜ダム16とする。
【0018】
図2〜図4において、護岸13は、膜ダム16の設置位置の上流側に設置されている上流側護岸13aと下流側に設置されている下流側護岸13bとに分かれて構築されている。上流側護岸13aの上端面14aのほうが、下流側護岸13bの上端面14bよりも高い位置に形成されている。
【0019】
前記アンカー11は、下流側護岸13bの上端面14b上に立設して、膜体12の下端部が前記上端面14bよりも下側となるように固定されている。前記アンカー11の高さは、上流側護岸13aの上端面14a位置よりも高くなるように形成されている。
【0020】
このアンカー11は、鉄筋コンクリートブロックからなり、必要に応じて護岸13内部を貫通して起訴地盤まで杭が打たれている。
片方のアンカー11内部には空間が形成されており、膜体12が収納されている。他方のアンカー11内部にも同様に空間が形成されているが、前記膜体12の端部を固定するための拘束体17が備えられている。
【0021】
護岸13は、アンカー11と同様の材料によって構成されているが、壁面15は、石及びコンクリートブロックが敷き詰められてそれらの間にコンクリート等の充填材を打設して固め、護岸13内部へ水の浸入がないように塞いでいる。
河川の基本高水から想定される計画高水位18に対して、実際の河川の水位を水位19とすると、護岸13の上端面14は、護岸余裕高として河川の計画高水位18よりも例えば1m程度高い位置となるように形成されている。
【0022】
上記の構成からなる河川治水用堤体10において、通常時の河川の水量が少ない場合は、膜体12が収納されており、水位19は計画高水位18以下であって、水が上流側から下流側へとスムーズに流れていく。
【0023】
豪雨等の発生によって河川が増水するような異常時の場合、上流から流れる水量が増加して、膜ダム16の設置位置よりも下流の水位19bが計画高水位18を超えると、膜体12が片方のアンカー11内から取り出されて、対向する他方のアンカー11の拘束体17に固定され、河川の幅方向にわたって張設される。
【0024】
さらに増水が進むと、水位19bは上昇して膜体12の下端部にかかり、膜ダム16よりも上流の水位19aは膜体12によって遮られることによりさらに上昇する。しかしながら、膜体12の下端部よりも低位置を流れる水は、膜体12によってせき止められることなく下流に流れていくため、上流側及び下流側いずれにおいても護岸13の上端面14を越流することはない。
【0025】
膜ダム16は、河川に沿って間隔をおいて複数設置されていることから、一の膜ダム16にて水量の調整が困難であっても、さらに下流の膜ダム16毎に水量が調整されて、最終的に最下流側の膜ダム16にて必要量の水量が阻止される。
【0026】
増水が収まって再び河川の水位19が下がって計画高水位18以下になった場合は、膜体12をアンカー11の拘束体17から取り外して、他方のアンカー11に形成されている膜体12の収納位置に再び収納される。
【0027】
この河川治水用堤体によれば、通常時における計画高水位以下の水位であっても河川の流れを遮ることがなく、計画高水位以上の水位の場合のみ河川の流れを抑制することから、膜ダム近傍での流出土砂の堆積や水の滞留がなく、魚等の生存環境の妨げを抑えることができる。
また、計画高水位までの水位を想定した護岸があればよいため、建設時及びそれ以降においても、周囲の環境に与える負荷を抑えることができる。
【0028】
なお、上記の実施の形態では、膜体は、片方のアンカー内に収納され、他方のアンカーに設置するように構成されているが、膜体は河川の水面以下に折り畳まれて配設されて、増水時にはアンカーに沿って上昇させるものであっても、アンカーから隔離された位置に収納されていても同様の作用、効果を得ることができる。
【0029】
さらに、上記の実施形態では遮蔽部材として膜体を使用しているが、増水時にハンドリングが容易となる部材であれば、例えば板体のようなものであっても問題はない。
【0030】
図5、図6は、本発明の第2の実施形態を示す。なお、以下の説明において、上記第1の実施形態において説明した構成要素と同一構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0031】
図5、図6において、前記膜体12は、膜部材20と、ケーブルワイヤ(索状体)21と梁部材22とが折り畳み可能となるよう構成されている。
ケーブルワイヤ21と梁部材22は、膜部材20の下流側の面上に設置されている。ケーブルワイヤ21は、膜部材20の水平方向に延在して配設されており、梁部材21は、膜部材19の鉛直方向に延在して配設されている。
【0032】
上記の構成からなる河川治水用堤体10において、膜体12によって遮られた水流によってかかる水圧によっても、膜体12の変形が弾性変形内に収まるようにケーブルワイヤ21、梁部材22の本数、及び配設位置を調整することによって、必要量の水量が遮蔽される。
また、折り畳み可能となるよう構成されているため、通常時にはアンカー11内部に収納される。
【0033】
この河川治水用堤体10によれば、通常時には折り畳まれて収納されている膜体12を、増水時に各アンカー11間に張ることによって、計画高水位18以上の水流が下流に流れることを阻止できる。さらに膜体12自身が耐久性を有するため、再使用することができる。
【0034】
なお、上記の実施形態においては、膜体12が膜部材19とケーブルワイヤ21と梁部材22とから構成されているが、可撓性を有する構成であれば、上記の実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明した河川治水用堤体においては以下の効果を奏する。
請求項1記載の発明は、通常時に土砂・流木等や水の滞留がない流れを確保できるとともに、魚等の生活への妨げを抑えることができる。
また、計画高水位までの水位を想定した堤体であるため、建設時及びそれ以降においても、周囲の環境に与える負荷を抑えることができる。
【0036】
請求項2記載の発明は、遮蔽部材を通常時には折り畳んで収納することができるとともに、遮蔽部材が耐久性を有するため再使用することができる。
【0037】
請求項3記載の発明は、1個の巨大なダムの建設でなく、小規模の堤体を複数個配設することで対応できるため、環境負荷の小さい堤体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態における河川治水用堤体の全体概要図である。
【図2】 本発明の第1の実施形態における河川治水用堤体のアンカーと遮蔽部材の概要図である。
【図3】 本発明の第1の実施形態における通常時のアンカーと遮蔽部材の断面図である。
【図4】 本発明の第1の実施形態における増水時のアンカーと遮蔽部材の断面図である。
【図5】 本発明の第2の実施形態における遮蔽部材の断面図である。
【図6】 本発明の第2の実施形態における遮蔽部材の平面図である。
【図7】 従来の河川治水用堤体の概要図である。
【符号の説明】
10 河川治水用堤体
11 アンカー
12 膜体(遮蔽部材)
18 計画高水位
20 膜部材
21 ケーブルワイヤ(索状体)
22 梁部材
Claims (3)
- 河川の水の流れる領域を挟んで対向する位置に、前記領域の計画高水位から上方に突出するように一方のアンカーと他方のアンカーとを立設し、これら一方のアンカーと他方のアンカーとに渡って、前記計画高水位以下の水の流れを許容し、前記計画高水位以上の流れを阻止する遮蔽部材を張設してなることを特徴とする河川治水用堤体。
- 前記遮蔽部材は、膜部材と、該膜部材に前記一方のアンカーから前記他方のアンカーに向かって設けられた索状体とを備えてなることを特徴とする請求項1に記載の河川治水用堤体。
- 前記アンカーと前記遮蔽部材とが、河川の上流側から下流側に間隔をおいて複数設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の河川治水用堤体。
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