JP3916685B2 - ガラクトース誘導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、肝実質細胞に代表されるガラクトースレセプターを有する細胞に対し、特異的親和性を有するDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラクトース残基でリポソームの脂質二分子膜の表面を修飾したリポソームをガラクトース修飾リポソームと呼び、これらは肝実質細胞へ特異的に結合することが既に知られている。
【0003】
ガラクトース残基で修飾したリポソーム(ガラクトース修飾リポソーム)としては、アシアロフェツインを含有するリポソーム(バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ 65巻、537頁、1975年)、アシアロガングリオシドを含有するリポソーム(バイオキミカ・バイオフィジカ・アクタ 497巻、760頁、1977年)、ラクトシルセラミドを含有するリポソーム(バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ 110巻、140頁、1983年)、ジガラクトシルジグリセリドを含有するリポソーム(ディアベトロジア 27巻、333A頁、1984年)、乳糖モノ脂肪酸エステルを含有するリポソーム(ジャーナル・オブ・マイクロエンカプスレーション 11巻、179頁、1994年)、乳糖モノ脂肪酸アミドを含有するリポソーム(ジャーナル・オブ・マイクロエンカプスレーション 11巻、287頁、1994年)、糖骨格を有する分枝鎖型誘導体を含有するリポソーム(特開平6−9675号公報)等が報告され、肝実質細胞へのターゲッティングを目的として、in vivoでの研究がなされているが、未だ満足のいく結果は得られていない。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、ある特定の化学構造を有するガラクトース誘導体を用いて製した脂質膜構造体が肝実質細胞へターゲッティングすることを見いだした。
【0005】
【発明の実施の形態】
すなわち、本発明は次の▲1▼〜▲6▼の発明に関する。
▲1▼ 一般式(I)
【0006】
【化4】
[式中、R1およびR2は各々独立して炭素数12〜30の飽和または不飽和脂肪酸残基を意味する。nは2〜50の整数を意味する。]で表されるガラクトース誘導体。
【0007】
▲2▼ 一般式(I)
【0008】
【化5】
[式中、R1およびR2は各々独立して炭素数12〜30の飽和または不飽和脂肪酸残基を意味する。nは2〜50の整数を意味する。]で表されるガラクトース誘導体を含有する脂質膜構造体。
【0009】
▲3▼ 薬物および/または遺伝子を保持した、一般式(I)
【0010】
【化6】
[式中、R1およびR2は各々独立して炭素数12〜30の飽和または不飽和脂肪酸残基を意味する。nは2〜50の整数を意味する。]で表されるガラクトース誘導体を含有する脂質膜構造体。
【0011】
▲4▼ 一般式(I)中のR1およびR2が各々パルミトイル基を意味し、nが10を意味する発明▲1▼に記載のガラクトース誘導体。
【0012】
▲5▼ 一般式(I)中のR1およびR2が各々パルミトイル基を意味し、nが10を意味する発明▲2▼または▲3▼に記載の脂質膜構造体。
【0013】
▲6▼ 発明▲2▼、▲3▼または▲5▼のいずれか1つの発明に記載の脂質膜構造体がリポソームである脂質膜構造体。
【0014】
以下に、本発明について説明する。
【0015】
まず、本発明の一般式(I)で表されるガラクトース誘導体における置換基について説明する。
【0016】
一般式(I)中、R1およびR2は各々独立して炭素数12〜30の飽和または不飽和脂肪酸残基を意味する。これらの例としては、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル(パルミトイル)基、ヘプタデカノイル基、オクタデカノイル(ステアロイル)基、ノナデカノイル基、エイコサノイル基、ヘニコサノイル基、ドコサノイル基、トリコサノイル基、テトラコサノイル基、ヘキサコサノイル基、トリアコンタノイル基、4−ドデセノイル基、9−ヘキサデセノイル基、9−オクタデセノイル基、11−エイコセノイル基、13−ドコセノイル基、15−テトラコセノイル基、9,12−オクタデカジエノイル基、11,14−エイコサジエノイル基、9,12,15−オクタデカトリエノイル基、11,14,17−エイコサトリエノル基、4,8,12,16−エイコサテトラエノイル基、4,8,12,15,19−ドコサペンタノイル基、2−デカニルヘキサデカノイル基、2−テトラデシルヘキサデカノイル基、2−テトラデシルヘキサデセノイル基、2−テトラデセニルヘキサデカノイル基等の直鎖もしくは分枝状の飽和または不飽和の脂肪酸残基を挙げることができる。
【0017】
また、nは2〜50の整数を意味するが、2〜25が好ましく、5〜15が特に好ましい。
【0018】
本発明のガラクトース誘導体を製造するための製造フローの1例を表1と表2を用いて、次に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
本発明において、脂質膜構造体とはミセル、エマルジョン、リポソーム等を意味し、本発明の一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を含有する脂質膜構造体は、公知の製造方法に従って製造することができる。
【0022】
すなわち、ミセルおよびエマルジョンの製造方法としては、たとえば、ドラッグデリバリーシステム(瀬崎 仁 編 南江堂 1986年)に記載の方法を挙げることができる。
【0023】
また、リポソームの製造方法としては、機械的振動法、超音波処理法、逆相蒸発法、凍結乾燥法、加温法、多価アルコール法、メカノケミカル法、脂質溶解法および噴霧乾燥法等を挙げることができる。
【0024】
脂質膜構造体は、一般式(I)で表されるガラクトース誘導体のみだけでも製することができるが、更に一般的に脂質膜構造体を製するのに用いられる脂質を加えてもよい。例えば、それらの例として、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン等を挙げることができる。
【0025】
また、脂質膜構造体がリポソームにおいては、膜の安定化剤としてコレステロール、コレスタノール等のステロール類、酸化防止剤としてα−トコフェロール等を更に添加してもよい。
【0026】
本発明の脂質膜構造体は、人体等に投与するものであり、実施時の形態としては、注射剤を挙げることができる。したがって、脂質膜構造体は、溶液中に分散した状態にあるのが好ましい。分散媒としては、水性溶媒であれば特に限定されるべきものではないが、水、種々の緩衝液、種々の等溶液、水溶性の有機溶媒等を挙げることができる。これら水性溶媒は2種以上を混合して用いてもよい。なお、脂質膜構造体の分散液には、安定化剤、等張化剤、pH調整剤等の添加剤を更に添加してもよい。安定化剤としては、エチレンジアミン四酢酸、トコフェロールおよびアスコルビン酸等を挙げることができるが、特にこれらに限定されるべきものではない。
【0027】
等張化剤とは、血液または体液と等張にするためのものであり、糖類、多価アルコール、塩化ナトリウム等を挙げることができる。また、pH調整剤としては、人体等に無害な酸またはアルカリならば特に限定されるべきものではないが、塩酸および水酸化ナトリウム等を挙げることができる。
【0028】
以下に、本発明の薬物および/または遺伝子を保持させた一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を含有する脂質膜構造体の製造方法について説明する。
【0029】
脂質膜構造体がミセルであるとき、すなわち薬物および/または遺伝子を保持したミセルを製造するには、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン等のミセル形成界面活性物質をミセル形成臨界濃度以上の濃度で分散媒に加え、ミセルの分散液を調製する。調製したミセルの分散液に薬物および/または遺伝子と一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を加え、一定時間放置、好ましくは40℃以上に加温し、ついで放冷することにより、薬物および/または遺伝子を保持させた一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を含有するミセルを製造することができる。また、ミセル形成物質、一般式(I)で表されるガラクトース誘導体、薬物および/または遺伝子をあらかじめ混合し、次いで公知のミセルの製造法に従って処理することにより、薬物および/または遺伝子を保持させた一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を含有するミセルを製造することができる。
【0030】
脂質膜構造体がエマルジョンであるときには、先に述べた方法により製した、薬物および/または遺伝子を保持させた一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を含有するミセルに、あらかじめ薬物および/または遺伝子を分散もしくは溶解させた大豆油等の油脂を加えて、ミセル内を飽和させ、不可逆的な油層分離が生じない程度まで油相を増加させることにより、薬物および/または遺伝子を保持させた一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を含有するエマルジョンを製造することができえる。また、公知の方法に従って、調製したエマルジョンに、薬物および/または遺伝子と一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を加え、一定時間放置後、好ましくは40℃以上に加温し、次いで放冷することにより、一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を含有するエマルジョンを製造することができる。
【0031】
また、脂質膜構造体がリポソームであるとき、すなわち薬物および/または遺伝子を保持したリポソームを製造するには、薬物を一般式(I)で表されるガラクトース誘導体等の脂質成分と共に有機溶媒中に溶解した後、公知の方法に従い、リポソームの分散液を調製しても良いし、またはあらかじめ調製したリポソームの分散液に、薬物の水溶液もしくは粉体の薬物を加え一定時間放置、好ましくは膜の相転移温度以上に加温して、次いで放冷することにより、薬物および/または遺伝子を保持させた一般式(I)で表されるガラクトース誘導体を含有するリポソーム分散液を製造することができる。
【0032】
本発明の脂質膜構造体に保持させる薬物または遺伝子は、特に限定されるべきものではないが、特に抗がん作用を有する薬物(制癌剤)、ヒトの欠損している遺伝子や機能不全の遺伝子、発現するとヒトにとって好ましくない遺伝子を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド、実験動物や家畜等の産業用動物の品種改良における遺伝子等が脂質膜構造体に保持させるのに適している。
【0033】
薬物としては、たとえば、プロスタグランジン、トロンボキサンおよびロイトコリエン等のアラキドン酸代謝産物またはその誘導体、インターフェロン、インターロイキン、腫瘍壊死因子(TNF)、上皮成長因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、心房性利尿ペプチド(ANP)およびエリスロポエチン等の生理活性物質等のペプチド類、ステロイド等のホルモン類、シトシンアラビノシド、ダウノルビシン、ドキソルビシン、アクラルビシン、4−O−テトラハイドロピラニル−アドリアマイシン、4−エピアドリアマイシン、4−デメトキシダウノマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、メトトレキサート、カンプトテシンおよびその誘導体等の制癌剤、アンピシリン、セファレキシン、ゲンタマイシン、ストレプトマイシン、カナマイシン、アミカシン、アムホテリシンB、ベンジルペニシリン、ピペラシリン、セファロリジン、セファロチン、セファゾリン、セファマンドール、セフォタキシム、セフォキシチン、セフメタゾール、セフォテタン等の抗生物質、スルフィソミジン、スルファジメトキシン、スルファモノメトキシン、イソニアジド、ナリジクス酸、オフロキサシン、ノルフロキサシン、エノキサシン、レボフロキサシン、ロメフロキサシン等の化学療法剤、イオヘキソール、イオジキサノール、インドシアニングリーン、イオタラム酸ナトリウム等の造影剤、グルタチオン、ブクラデシンナトリウム等を挙げることができる。中でも、本発明においては、制癌剤が好ましい。
【0034】
また、遺伝子としては、たとえば、ウイルス肝炎(A、BおよびC)に感染した際のウイルス遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド、がん遺伝子の発現を抑制するアンチセンスオリゴヌクレオチド等を挙げることができる。
【0035】
保持させる遺伝子の形態は、特に限定されるべきものではないが、遺伝子の導入や発現のさせやすさ等を考慮して、該遺伝子が発現できるように構築されたプラスミドが好ましい。また、発現をさせやすくするために、該プラスミドにおいて、遺伝子にプロモーターおよび/またはエンハンサーを連結してもよい。
【0036】
次に、本発明を実施例及び試験例により説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0037】
【実施例】
実施例1 1,2−ジパルミトイル−3−O−グリセリニル−ポリエチレンジオキシエチル−D−ガラクトシル サクシネート(ポリオキシエチレンの平均分子量:1000)の合成
【0038】
1−1. 1,2−プロピリデン−3−O−グリセリニルポリエチレンジオキシエチルベンジルサクシネート(ポリオキシエチレンの平均分子量:1000)の合成
【0039】
1,2−プロピリデン−3−O−グリセリニルポリエチレンジオキシエチルサクシネート(5.6g、5.1mmol)を10mlのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)に溶解し、その溶液を50mlのDMFに炭酸水素カリウム(1.0g、10mmol)を懸濁した懸濁液に加えた。ついで、得られた懸濁液に10mlのDMFにベンジルブロマイド(1.3g、7.7mmol)を溶解した溶液を加えた。混合液を室温で24時間攪拌し、攪拌後、冷水に注いでクロロホルムで抽出し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を減圧留去し、残渣をセファデックス LH20カラム(溶出液:メタノール)を用いて精製し、標題の化合物を無色油状物として得た。収率は79%(4.8g)であった。
【0040】
1H−NMR(CDCl3)δ:1.36(3H,s,(CH 3 )2C),1.42(3H,s,(CH 3 )2C),2.68(4H,s,COCH 2 CH 2 CO),3.49−3.76(m,oxyethylene H),5.17(2H,br,CH 2 −Ph),7.36(5H,m,CH2−Ph)
13C−NMR(CDCl3)δ:24.8,26.2((CH3)2C),28.4,28.5(COCH2 CH2CO),63.2,65.8,66.1,68.4,70.3,71.7(CH2O−),74.1(CH2 CHCH2),108.7((CH3)2 C),127.6,127.7,127.9(aromatic CH),135.2(aromatic C),171.4,171.6(COCH2CH2 CO)
【0041】
1−2. グリセリニル−ポリエチレンジオキシエチルベンジルサクシネート(ポリオキシエチレンの平均分子量:1000)の合成
【0042】
1−1.で得た化合物(3.36g、2.8mmol)に40mlの60%(v/v)酢酸水溶液を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒をトルエンで共沸留去し、粗混合物を得た。粗混合物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=20:1)を用いて精製し、標題の化合物を無色油状物として得た。収率は86%であった。
【0043】
1H−NMR(CDCl3)δ:2.68(4H,s,COCH 2 CH 2 CO),3.41−3.68(m,oxyethylene H),5.13(2H,s,CH 2 −ph),7.36(5H,m,CH2−ph)
13C−NMR(CDCl3)δ:29.0,29.1(COCH2 CH2CO),63.86,63.89,66.5,69.0,70.8(CH2O−),72.9(CH2 CHCH2),128.1,128.2,128.5,(aromatic CH),135.8(aromatic C),172.0,172.2(COCH2CH2 CO)
【0044】
1−3. 1,2−ジステアロイル−3−O−グリセリニルポリエチレンジオキシエチルベンジルサクシネート(ポリオキシエチレンの平均分子量:1000)の合成
【0045】
ステアリン酸無水物(1.8g、3.3mmol)を50mlのクロロホルムに溶解し、この溶液を1−2.で得た化合物(1.7g、1.5mmol)、トリエチルアミン(0.39g、3.9mmol)と4−ジメチルアミノピリジン(0.090g、0.7mmol)を50mlのクロロホルムに溶解した溶液に窒素下で50〜60℃、2時間かけて攪拌しながら滴下した。反応混合物をクロロホルムで希釈し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、残渣をセファデックス LH20カラム(溶出液:メタノール)用いて精製した。収率は51%(1.3g)であった。
【0046】
1H−NMR(CDCl3):δ0.88(6H,t,J=6.33Hz,CH 3 (CH2)16),1.25(56H,br,CH3(CH 2 )14CH2CH2−),1.59−1.66(4H,m,CH3(CH2)14CH 2 CH2−),2.27−2.34(4H,m,CH3(CH2)14CH2CH 2 −),2.69(4H,s,COCH 2 CH 2 CO),3.60−3.70(m,oxyethylene H),4.15(1H,dd,J=11.92Hz,J=6.42Hz,glycerol H),4.22−4.24(2H,m,(CH2CH2O)9CH2CH 2 OCOCH2CH2CO−),4.34(1H,dd,J=11.92Hz,J=3.66Hz,glycerol H),5.14(2H,s,CH 2 Ph),5.20−5.22(1H,m,glycerol H),7.35−7.37(5H,m,CH2 Ph)
【0047】
1−4. 1,2−ジステアロイル−3−O−グリセリニル−ポリエチレンジオキシエチルサクシネート(ポリオキシエチレンの平均分子量:1000)の合成
【0048】
1−3.で得た化合物(1.3g、0.8mmol)とPd−C(1.0g)を加えた10mlのメタノールを水素下、室温で一晩攪拌した。触媒を濾過により除去し、フィルターを乾燥させ、白色固体を得た。収率は78%(1.0g)であった。
【0049】
1H−NMR(CDCl3):0.88(6H,t,J=6.33Hz,CH 3 (CH2)16),1.26(56H,br,CH3(CH 2 )14CH2CH2−),1.60(4H,m,CH3(CH2)14CH 2 CH2−),2.24−2.34(4H,m,CH3(CH2)14CH2CH 2 −),2.65(4H,s,COCH 2 CH 2 CO),3.60−3.69(m,oxyethylene H),4.15(1H,dd,J=11.92Hz,J=6.42Hz,glycerol H),4.25−4.27(2H,m,(CH2CH2O)9CH2CH 2 OCOCH2CH2CO−),4.32(1H,dd,J=11.92Hz,J=3.66Hz,glycerol H),5.18−5.25(1H,m,glycerol H)
13C−NMR(CDCl3)δ:14.1(CH3(CH2)16CO),22.7(CH3(CH2)14 CH2CH2CO),29.6(CH3(CH2)14CH2CH2CO),32.0(CH3(CH2)14CH2 CH2CO),34.2,34.3(COCH2 CH2CO),70.6(OCH2 CH2O),172.0,173.1,173.4,173.8(COCH2CH2 CO and CH3(CH2)16 CO)
【0050】
1−5. 1,2−ジパルミトイル−3−O−グリセリニル−ポリエチレンジオキシエチル−2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−ガラクトシル サクシネートの合成
【0051】
ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスホニウム ヘキサフルオロフォスフェート(0.45g、0.34mmol)を、1−4.で得た化合物(0.3g、0.19mmol)、2,3,4,6−テトラ−O−ベンジル−D−ガラクトース(0.12g、0.22mmol)とトリエチルアミン(0.05g、0.5mmol)を10mlのクロロホルムに溶解させた溶液に添加し、0℃で一晩攪拌した。反応混合物を0.2Nの塩酸で一度洗い、NaClで飽和させた。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒留去後、残渣をセファデックス LH20カラム(溶出液:クロロホルム:メタノール=1:1)を用いて精製し、標題の化合物を白色固体として得た。収率は74%(0.3g)であった。
【0052】
1H−NMR(CDCl3)δ:0.88(6H,t,J=6.4Hz,CH 3 (CH2)14),1.26(48H,br,CH3(CH 2 )12CH2CH2−),1.60(4H,m,CH3(CH2)12CH 2 CH2−),2.28−2.33(4H,m,CH3(CH2)12CH2CH 2 −),2.60−2.65(4H,m,COCH 2 CH 2 CO),3.56−3.69(m,oxyethylene H),3.96(2H,m,H−2,H−6a),4.15(1H,dd,J=6.5Hz,J=11.5Hz,CH 2 OCO(CH2)14CH3),4.20−4.22(1H,m,(CH2CH2O)9CH2CH 2 OCOCH2CH2CO−),4.23−4.26(1H,m,(CH2CH2O)9CH2 CH 2 OCOCH2CH2CO−),4.34(1H,dd,J=4.0Hz,12.0Hz,CH 2 OCO(CH2)14CH3),4.39(1H,d,J=10.4Hz,OCH 2 −ph),4.44(1H,d,J=10.4Hz,OCH 2 −ph),4.61(1H,d,J=11.5Hz,OCH 2 −ph),4.71(2H,s,OCH 2 −ph),4.75(1H,d,J=11.5Hz,OCH 2 −ph),4.81(1H,d,J=11.0Hz,OCH 2 −ph),4.93(1H,d,J=11.5Hz,OCH 2 −ph),5.21(1H,m,CH2CHCH2),5.58(1H,d,J=7.5Hz,H−1),7.30−7.33(20H,m,OCH2−ph)
13C−NMR(CDCl3)δ:14.1(CH3(CH2)16CO),22.7(CH3(CH2)14 CH2CH2CO),29.7(CH3(CH2)14CH2CH2CO),31.9(CH3(CH2)14CH2 CH2CO),34.2,34.3(COCH2 CH2CO),70.6(OCH2 CH2O),94.6(C−1),127.6,127,7,127.8,127.9,128.0,128.2,128.3,128.4(aromatic CH),137.7,138.2,138.3,138.5(aromatic C),170.8,171.9,173.1,173.4(COCH2CH2 CO and CH3(CH2)16 CO)
【0053】
1−6. 1,2−ジパルミトイル−3−O−グリセリニル−ポリエチレンジオキシエチル−D−ガラクトシル サクシネートの合成
【0054】
1−5.で得た化合物(0.27g、0.13mmol)とPd−C(0.27g)を加えた10mlのエタノールを水素下、室温で3日間攪拌した。触媒を濾過により除去し、フィルターを乾燥させ、残渣をセファデックス LH20カラム(溶出液:メタノール)を用いて精製し、標題の化合物を白色固体として得た。収率は60%(0.13g)であった。
【0055】
1H−NMR(CDCl3)δ:0.88(6H,t,J=6.4Hz,CH 3 (CH2)14),1.26(48H,br,CH3(CH 2 )12CH2CH2−),1.60(4H,m,CH3(CH2)12CH 2 CH2−),2.28−2.33(4H,m,CH3(CH2)12CH2CH 2 −),2.60−2.65(4H,m,COCH 2 CH 2 CO),3.58−3.75(m,oxyethylene H),3.78−3.79(1H,m,H−2),4.15(1H,dd,J=6.5Hz,J=11.5Hz,CH 2 OCO(CH2)14CH3),4.23−4.26(2H,m,(CH2CH2O)9CH2CH 2 OCOCH2CH2CO−),4.34(1H,dd,J=4.0Hz,J=12.0Hz,CH 2 OCO(CH2)14CH3),5.20−5.22(1H,m,CH2CHCH2),5.53(1H,d,J=8.5Hz,H−1)
【0056】
実施例2 1,2−ジパルミトイル−3−O−グリセリニル−ポリエチレンジオキシエチル−D−ガラクトシル サクシネート(ポリオキシエチレンの平均分子量:500)の合成
【0057】
ポリオキシエチレンの平均分子量を1000から500に変えた以外は実施例1と同様にして、標題の化合物を得た。
【0058】
実施例3 1,2−ジパルミトイル−3−O−グリセリニル−ポリエチレンジオキシエチル−D−ガラクトシル サクシネート(ポリオキシエチレンの平均分子量:2000)の合成
【0059】
ポリオキシエチレンの平均分子量を1000から2000に変えた以外は実施例1と同様にして、標題の化合物を得た。
【0060】
【試験例】
試験例1.RCA−レクチンによる凝集実験
【0061】
卵黄フォスファチジルコリン(以下、PCと略する。)と実施例2の1,2−ジパルミトイル−3−O−グリセリニル−ポリエチレンジオキシエチル−D−ガラクトシル サクシネート(以下、Gal−PEG(500)−lipidと略する。)が8:2のモル比を有するリポソーム(800μMリン脂質)をバンガム法にて調製した。脂質の懸濁液はポリカーボネートメンブランフィルター(0.1μm)で数回押し出し濾過を行い、サイジングした。ガラクトース結合レクチンとして知られているRCA(Ricinus communis agglutinin)−レクチン(0.5mg/ml)を含有するトリス−塩酸緩衝液(1ml)をリポソーム懸濁液(2ml)に添加した。レクチンとの凝集は、波長450nmで分光光度計により濁度の増加として観察した。結果を図1に示す。
【0062】
【図1】
結果から明らかなように、Gal−PEG(500)−lipidを含有するリポソームは凝集が見られた。
【0063】
試験例2.Gal−PEG(500)−lipidの用量効果
【0064】
試験例1と同様にして、PCとGal−PEG(500)−lipidのモル比を変えたリポソーム懸濁液を調製し、凝集を観察した。結果を図2に示す。
【0065】
【図2】
結果から明らかなように、Gal−PEG(500)−lipidを含有する種々の組成のリポソームは全てレクチンとの凝集が見られた。
【0066】
【発明の効果】
本発明のガラクトース誘導体を含有する脂質膜構造体は、膜の表面上にガラクトース残基を有するため、RCA−レクチンの添加により凝集した。
【0067】
したがって、本発明のガラクトース誘導体およびガラクトース誘導体を含有する脂質膜構造体は、肝実質細胞に代表されるガラクトースレセプターを有する細胞へのターゲッティングに有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】リポソーム表面上にガラクトース残基が露出しているかどうかを確認するためのRCA−レクチンによる凝集実験の結果を示す図である。
【図2】RCA−レクチンが誘発するリポソームの凝集におけるGal−PEG(500)−lipidの用量における効果を示す図である。
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