JP3914860B2 - 情報再生装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両等の移動体に搭載され、受信するデジタル情報をアナログ信号に変換して再生する情報再生装置に係わり、さらに詳しくは、移動体までの情報伝送路が一時的に切断されても、連続性を損なうことなく受信したデジタル情報の再生を行うことができる情報再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、映像・音声や文字などの情報をデジタル情報データとして配信するシステムが実用化されつつある。
例えば、ニュース情報やスポーツ中継などはインターネットを伝送路として盛んに配信されている。
インターネットの伝送路によって配信される映像・音声や文字などのデジタル情報データの再生をリアルタイムで行おうとすると、配信される映像・音声情報などのデジタル情報データの通信速度は少なくともある一定速度以上の実効速度(即ち、平均的な通信速度)が必要である。
一方、次世代携帯電話と呼ばれる移動体通信システムなどにおいては、デジタル情報データの配信に十分な実効速度が得られるようになってきている。
【0003】
これらの伝送路(即ち、デジタル放送、インターネット、移動体通信システムなどによるデジタル情報データの伝送路)を利用すれば、情報再生装置が、例えば、車両などの移動体中にあっても、リアルタイムに映像や音声などの情報を取得して再生することが可能になりつつある。
また、映像・音声や文字などの情報をそのままデジタル情報データとして放送するシステムなども実用化されつつある。
【0004】
また、車両などの移動体に用いる伝送路としては、DSRC(Dedicated Toll Range Communication:狭域通信システム)と呼ばれる通信システムも利用可能である。
DSRCは、現在ETC(ElectronicToll Collection System)とよばれる高速道路の料金収受システムに用いられている通信システムに用いられる通信システムで、道路上の限られた領域(通信エリア)で1〜4Mbpsの高速通信を行うことの出来るシステムであり、近年インターネットとの接続手段として用いることが検討されている。
【0005】
なお、本発明に関連すると思われる2つの特許文献(特許文献1および特許文献2)がある。
特許文献1は、例えば、降雨等による突発的な伝送路誤りが生じた際に、デジタル放送の受信側において生じる放送サービスの中断を抑制し得る「デジタル放送に用いられる情報伝達方法あるいはデジタル放送送出装置」に関するもものであって、「デジタル放送の送出側は、主情報よりも時間的に先行する副情報を、主情報に多重化して送出する一方、受信側は、主情報が使用可能状態にあるときには主情報を取得し、また、伝送路誤りに起因して主情報が使用不能状態にあるときには副情報を取得する」ことが記載されている。
【0006】
また、特許文献2は、種々の双方向の特徴をもたらす放送デジタルラジオサービスを与える装置および方法に関するものであり、「デジタル番組サービスをデコーダに放送するための装置であって、少なくとも一つのデータストリーム内で輸送するために複数のプログラム部分をパケット化するためのパケットタイザと、プログラムサービスのプレレートより大きな全体レートで少なくとも一つのデータストリーム内において前記パケット化されたプログラム部分を通信するための手段とからなり、前記デコーダは、前記パケット化されたプログラム部分を回復するべく、バッファ内にプログラム部分の少なくとも一部を記憶するべく、およびバッファ充満レベルに達したときバッファ内のプログラム部分を削除するべく適応するところの装置」が記載されている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−32404号公報
【特許文献2】
特表2002−510161号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
車両などの移動体に用いられるデジタル情報データ(例えば、映像・音声情報)の配信システムにおいて問題になるのは、伝送路を常時確保するのが難しい点である。
移動体通信システムや放送システムにおいては、例えば、トンネル内にある場合や、雷などの天候によって電波環境が悪化した場合などに、伝送路が一時的に遮断(切断)される。
また、DSRCなどはそもそも限られたエリアのみで通信を行うシステムなので、移動中の車両では継続して伝送路を確保することが出来ない。
従来の情報再生装置では、伝送路が切断されると、そのたびに配信システムから配信されるデジタル情報データ(映像・音声)の再生が中断されるので、提供されている映像・音声の連続性を損ない、視聴者に不快感を与えてしまうという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、インターネット、デジタル放送システム、移動体通信システム、あるいはDSRCなどのデジタル情報提供システムから情報提供サービスを受けているときに、伝送路が一時的に中断されることによって生じる再生情報の中断を防止し、視聴者が不快感を持つことを軽減できる情報再生装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る情報再生装置は、移動体に搭載され、デジタル情報データを電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、
上記情報提供システムから配信されるデジタル情報データを受信するデータ受信部と、上記データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、上記データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部を備えている。
【0011】
さらに、上記移動体の移動速度を検出する移動速度検出部と、上記移動体に載置された地図データベースと、上記地図データベース上における移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段を備えている。
【0012】
さらに、上記地図データベースを用い、上記情報提供システムから配信されるデジタル情報データの伝送路が切断された場合に、上記移動速度検出部が検出する移動速度と上記現在位置検出手段が検出する現在位置情報に基づいて、切断された伝送路が再接続されるまでの再接続時間を予想する再接続予想時間計算部と、上記データ記録部の未出力の記録データ量と上記再接続予想時間計算部が予想した再接続予想時間に応じて上記データデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えているものである。
【0013】
また、本発明に係る情報再生装置は、移動体に搭載され、路側上で離散的に配置された複数の路側通信装置と該複数の路側通信装置に対してデジタル情報データを供給するデータサーバとを有し、上記複数の路側通信装置は、各路側通信装置が担う通信エリア内を走行する移動体に対して上記データサーバから供給されるデジタル情報データに加えて、次ぎの通信エリアまでの距離情報を電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、
上記情報提供システムの各路側通信装置から電波によって配信されるデジタル情報データおよび次の通信エリアまでの距離情報を受信するデータ受信部と、
上記データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、上記データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部と、上記移動体の移動速度を検出する移動速度検出部と、上記データ受信部が受信する次ぎの通信エリアまでの距離情報と上記移動速度検出部が検出する移動体の移動速度に基づいて、切断された伝送路が再接続されるまでの再接続予想時間を計算する再接続予想時間計算部と、上記データ記録部の未出力の記録データ量と上記再接続予想時間計算部から出力される再接続予想時間とに応じて、上記データデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えたものである。
【0014】
また、本発明に係る情報再生装置は、移動体に搭載され、路側上で離散的に配置された複数の路側通信装置と該複数の路側通信装置に対してデジタル情報データを供給するデータサーバとを有し、上記複数の路側通信装置は、各路側通信装置が担う通信エリア内を走行する移動体に対して上記データサーバから供給されるデジタル情報データに加えて、移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、
上記情報提供システムの各路側通信装置から電波によって配信されるデジタル情報データおよび次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を受信するデータ受信部と、上記データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、上記データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部と、上記データ記録部の未出力の記録データ量と上記データ受信部が受信する上記予想所要時間情報とに応じて、上記データデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えたものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
一般的に、映像情報を再生する場合、その再生速度に対する視聴者の感受性は、例えば、通常の再生速度よりも10%程度の遅い再生速度で再生しても、あまり違和感(不自然さ)は感じられない。
さらに、映像情報に付帯する音声情報については、再生速度を落とすことによって低域に移動するスペクトラムを本来のスペクトラムに近づくように補正してやると、ほとんどの場合、違和感はなくなる。
本発明は、このような視聴者の特性を利用したものである。
【0016】
本発明による情報再生装置は、伝送路の一時的な切断のために、情報提供システムが配信しているデジタル情報データを受信できなくなったとき、伝送路を介して既に受信し、データ記録部に蓄積されているデータ量が伝送路切断期間の補間に十分な量である場合は、データ記録部に蓄積されているデータを本来(通常)の速度でアナログ信号に変換して再生し、そうでない場合は、データ記録部に蓄積されているデータを本来の速度より遅く再生する。
こうすることにより、伝送路が切断されても、一定時間の間は情報再生装置のデータ記録部に蓄積されているデータを継続して再生することができ、再生される情報が中断するのを抑制することができる。
その際、視聴者が不自然さを感じないように再生速度が設定される。
本発明は、このような基本的な考え方に基づいてなされたものである。
【0017】
以下、本発明の参考例および一実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、各図間において、同一符号は、同一あるいは相当のものを表す。
参考例1.
この参考例は、本発明の基本となる参考例であって、本参考例による情報再生装置は、自動車や列車などの移動体に搭載され、映像、音声、文字などのデジタル情報データが電波によって配信される情報提供システム(例えば、デジタル放送システムあるいはインターネットシステム)を利用する情報再生装置に関するものである。
図1は、参考例1による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
図において、10はデータ受信部、20はデータ記録部、30はデータデコード部、40は変換速度設定部である。
【0018】
本参考例による情報再生装置の動作について説明する。
データ受信部10は、デジタル放送システムあるいはインターネットシステムなどの情報提供システム(図示せず)から電波によって配信される映像、音声、文字などのデジタル情報データを受信し、受信したデジタル情報データをデータ記録部20に出力する。
データ記録部20は、データ受信部10から出力されるデジタル情報データを一旦記録してからデータデコード部30に順次出力すると共に、未出力の記録データ量(即ち、データデコード部30に出力されず、データ記録部20に残っているデータ量)を計数し、計数された未出力の記録データ量を出力する。
【0019】
尚、データ記録部20は、バッファ機能を有しており、データデコード部30からの読み出し要求に応じて記録しているデジタル情報データを順次出力する。
データデコード部30は、変換速度設定部40が設定する変換速度に基づいて、データ記録部20から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換する。
即ち、データデコード部30は、データ受信部10が受信するデジタル情報データをアナログ信号で再生する。
なお、その際、データデコード部30は、映像情報に付帯する音声情報について、変換速度を落とすことによって低域に移動した音声周波数のスペクトラムを本来のスペクトラム(即ち、変換前の通常のスペクトラム)に近づくように補正する。
この補正により、データデコード部30で再生される音声を視聴者が聞いても、不自然さを感じることはなくなる。
【0020】
変換速度設定部40は、データ記録部20から出力される未出力の記録データ量に応じて、データデコード部30の変換速度を設定する。
例えば、変換速度設定部40は、以下の条件式により、本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比rを計算し、計算されたrの値に基づいて、データデコード部30のデータ変換速度を設定する。
条件式
r=1 [Q≧Tmax]・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
r=Q/Tmax [Tmax>Q>(Tmax×rmin)] ・・・・・式(2)
r=rmin [Q≦(Tmax×rmin)]・・・・・・・・・・式(3)
【0021】
上式において、
Qは、データ記録部20から変換速度設定部40へ出力される未出力の記録データ量(即ち、データデコード部30に出力されず、データ記録部20に残っているデータ量)であって、そのデータ量を、データデコード部30において本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)で変換するときの変換時間で表した数値である。
rは、データデコード部30の本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比を表す数値である。
Tmaxは、実験的に求めた値であり、伝送路が切断された際に、ほとんどの場合において再接続される時間である。
minは、実験的に求めた値であり、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感じないで視聴することのできる本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比を表す数値の下限値である。
【0022】
上記の条件式に示すように、本参考例による情報再生装置の変換速度設定部40は、データ記録部20が計数する未出力の記録データ量に応じて、データデータデコード部30における変換速度を設定する。
ここで、式(1)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が多く、そのデータ量Q(データデコード部30において本来の変換速度で変換するときの変換時間で表した数値)がTmax(伝送路が切断された際に、ほとんどの場合において再接続される時間)以上の場合には、データデコード部30における変換速度を本来の変換速度(伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に設定することを示している。
【0023】
即ち、伝送路が切断されて、データ記録部20に記録されているデジタル情報データが一時的に途絶えても、データ記録部20に“ Q≧Tmax ”の関係で表されるデータ量が残っておれば、ほとんどの場合、データデコード部30からの出力が途絶えることはない。
何故ならば、データ記録部20においてデータデコード部30が変換するべきデジタル情報データがなくなる前に伝送路が再接続され、データ記録部20に新たなデジタル情報データが入力されてくるからである。
【0024】
また式(2)は、データ記録部20における未出力の記録データ量(Q)が、“ Tmax>Q>(Tmax×rmin ) ”の関係にあるとき、変換速度設定部40が設定する変換速度を、“r=Q/Tmax”の条件を満足するようにデータデコード部30の変換速度を設定することを示している。
このように、未出力の記録データ量(即ち、データ記録部に残っているデータ量)変換速度を設定すれば、データデコード部30からの出力が途絶えることはほとんどなく、かつ、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴できる。
【0025】
また、式(3)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が少なく、“ Q≦Tmax×rmin ”の関係にあるときは、変換速度設定部40が設定する変換速度を“ r=rmin ”の条件を満足するように設定することを示している。
即ち、再生された情報をほとんどの人が不自然さを感じないで視聴することのできる下限の変換速度に設定する。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30で再生される(即ち、データテコード部30で変換される)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴することができる。
【0026】
なお、図2は、本参考例の形態による情報再生装置において、データ記録部20に記録されるデジタル情報データのデータ量Q(即ち、未出力の記録データ量)が変化する様子を概念的に示したものである。
図2から判るように、データ量Qが初期状態(データ量Q=0)からTmax×rminを越えるまでは、一定速度(1−rmin)でデータが増える。
QがTmax×rminを越えてからは、Qが大きくなるにつれてQが増える速度が遅くなり、Q=TmaxになるとQは増えなくなる。
この状態で伝送路の切断が発生すると、データ記録部20に蓄積(記録)されているデータを用いて、データデコード部30の変換を継続し、伝送路の切断が解除して、通信が再会すれば、Q=Tmaxになるまで所定の速度でデータ記録部20にデータが蓄積される。
【0027】
以上説明したように、変換速度設定部は、データ記録部に記録されているデータ量に応じて、データデコード部30の変換速度を本来の変換速度より変化させ、データデコード部からの出力が途絶えないように、また、変換速度が小さくなり過ぎて視聴者が不自然を感ずることがないようにする。
【0028】
参考例2.
図3は、参考例2による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
図において、10はデータ受信部、20はデータ記録部、30はデータデコード部、40は変換速度設定部、50は情報再生装置を搭載した移動体の移動速度を検出する移動速度検出部である。
データ受信部10、データ記録部20、データデコード部30は、前述の参考例1による情報再生装置のものと同等のものであり、同様の動作を行う。
【0029】
本参考例による情報再生装置は、前述の参考例1による情報再生装置において、さらに、情報再生装置を搭載した移動体の移動速度を検出する移動速度検出部50を備えている。
そして、変換速度設定部41はデータ記録部20から出力される未出力の記録データ量(即ち、データ記録部20に記録されているデータ量)と移動速度検出部50が検出する移動体の速度とに応じて、データデコード部30の変換速度を設定することを特徴とする。
なお、移動速度検出部50における移動体の速度検出手段としては、例えば、移動体が一般的な自動車であれば、スピードメータなどから出力されている速度パルスを用いて検出すれものであればよい。
【0030】
データデコード部30は、変換速度設定部41が設定する変換速度に基づいてデータ記録部20から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換する。
即ち、データ受信部10が受信したデジタル情報データをアナログ信号で再生する。
なお、その際、データデコード部30は、映像情報に付帯する音声情報について、変換速度を落とすことによって低域に移動した音声周波数のスペクトラムを本来のスペクトラムに近づくように補正する。
参考例1の場合と同様に、この補正により、データデコード部30で再生される音声を視聴者が聞いても、不自然さを感じることはなくなる。
【0031】
変換速度設定部41は、データ記録部20から出力される未出力の記録データ量と移動速度検出部50が検出する移動体の移動速度に応じて、データデコード部30の変換速度を設定する。
例えば、変換速度設定部41は、以下の条件式により、本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比rを計算し、計算されたrの値に基づいて、データデコード部40におけるデータ変換速度を設定する。
条件式
r=1 [Q≧(L/v)] ・・・・・・・・・・・・・式(4)
r=Q/(L/v) [(L/v)>Q>((L/v)×rmin)]・・・式(5)
r=rmin [Q≦((L/v)×rmin)]・・・・・・・・式(6)
【0032】
上式において、
Qは、データ記録部20から変換速度設定部40へ出力される未出力の記録データ量であって、そのデータ量を、データデコード部30において本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)で変換するときの変換時間で表した数値である。
rは、データデコード部30の本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比を表す数値である。
Lは、実験的に求めた値であり、伝送路が切断された際に、ほとんどの場合において再接続されるまでの移動体の移動距離である。
minは、実験的に求めた値であり、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感じないで視聴することのできる本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比を表す数値の下限値である。
なお、本参考例は、参考例1におけるTmaxを、距離のパラメータLと移動体の移動速度vより動的に求めるようにしたものである。
【0033】
上記の条件式に示すように、本参考例による情報再生装置の変換速度設定部41は、データ記録部20が計数する未出力の記録データ量と移動速度検出部50が検出するに移動体の移動速度に応じて、データデコード部30の変換速度を設定する。
ここで、式(4)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が多く、そのデータ量Q(データデコード部30において本来の変換速度で変換するときの変換時間で表した数値)が(L/v)(伝送路が切断された際に、ほとんどの場合において再接続されるまでの間に移動体が移動する時間)以上の場合には、データデコード部30における変換速度を本来の変換速度(伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に設定することを示している。
【0034】
即ち、伝送路が切断されてデータ記録部20に記録されるデジタル情報データが一時的に途絶えても、データ記録部20に“ Q≧(L/v) ”の関係で表されるデータ量が残っておれば、データデコード部30が本来の変換速度で変換しても、ほとんどの場合、データデコード部30からの出力が途絶えることがない。
【0035】
また式(5)は、データ記録部20における未出力の記録データ量(Q)が、“ (L/v)>Q>((L/v)×rmin) ”の関係にある時、変換速度設定部40が設定する変換速度を、“ r=Q/(L/v) ”の条件を満足するように設定することを示している。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30からの出力が途絶えることはほとんどなく、かつ、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴できる。
【0036】
また、式(6)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が少なく、“ Q≦(L/v)×rmin ”の関係にあるときは、変換速度設定部40が設定する変換速度を、“r=Q/(L/v)”の条件を満足するように設定することを示している。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30で再生される(即ち、データテコード部30で変換される)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴することができる。
【0037】
なお、図4は、本参考例による情報再生装置において、データ記録部20に記録されるデジタル情報データのデータ量Q(即ち、未出力の記録データ量)が変化する様子を概念的に示したものである。
図から判るように、初期状態(データ量Q=0)からQが(L/v)×rminを越えるまでは、一定速度(1−rmin)でデータが増える。
Qが(L/v)×rminを越えてからは、Qが大きくなるにつれてQが増える速度が遅くなり、Q=L/vになるとQは増えなくなる。
この状態で伝送路の切断が発生すると、データ記録部20に蓄積(記録)されているデータを用いて、データデコード部30の変換を継続し、伝送路の切断が解除して、通信が再会すれば、Q=L/vになるまで所定の速度でデータ記録部20にデータが蓄積される。
【0038】
以上説明したように、本参考例による情報再生装置の変換速度設定部は、データ記録部に記録されているデータ量と移動速度検出部が検出する移動体の移動速度とに応じて、データデコード部の変換速度を本来の変換速度より変化させることが可能であり、伝送路が一時的に中断してデジタル情報データを受信できなくなっても、データデコード部から出力される再生信号が途絶えないようにするための変換速度をより正確に求めることができ、また、変換速度が小さくなり過ぎて視聴者が不自然を感ずることがないようにする。
【0039】
実施の形態1.
図5は、実施の形態1による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
図において、10はデータ受信部、20はデータ記録部、30はデータデコード部、42は変換速度設定部、50は情報再生装置を搭載した移動体の移動速度を検出する移動速度検出部である。
また、60は再接続予想時間計算部、70はナビゲーションシステム等に用いられる地図データベース、75は移動体の現在位置検出手段である。
【0040】
本実施の形態による情報再生装置は、前述の参考例1による情報再生装置において、さらに、移動体の移動速度を検出する移動速度検出部50と、移動体に載置された地図データベース70と、地図データベース70上における移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段75と、地図データベース70を用い、図示しない情報提供システムから配信されるデジタル情報データの伝送路が切断された場合に、移動速度検出部50が検出する移動速度と現在位置検出手段が検出する現在位置情報に基づいて、切断された伝送路が再接続されるまでの再接続時間を予想する再接続予想時間計算部60とを備え、変換速度設定部42は、データ記録部20から出力される未出力の記録データ量と再接続予想時間計算部60が予想した再接続予想時間に応じて、データデコード部30の変換速度を設定することを特徴とする。
【0041】
データデコード部30は、変換速度設定部42が設定する変換速度に基づいてデータ記録部20から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換する。
即ち、データ受信部10が受信したデジタル情報データをアナログ信号で再生する。
なお、その際、データデコード部30は、映像情報に付帯する音声情報について、変換速度を落とすことによって低域に移動した音声周波数のスペクトラムを本来のスペクトラムに近づくように補正する。
参考例1の場合と同様に、この補正により、データデコード部30で再生される音声を視聴者が聞いても、不自然さを感じることはなくなる。
【0042】
伝送路が切断されて、図示しない情報提供システムからのデジタル情報データを受信できなくなると、再接続予想時間計算部60は、地図データベース70と移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段を用いて、次に良好な伝送路が得られる(即ち、伝送路の切断状態が解消され、情報提供システムからのデジタル情報データを良好に受信できる)と予測される地点までの距離を算出する。
例えば、現在地がトンネル内などの電波を遮蔽する地点であれば、トンネルの出口までの距離を算出する。
そして、移動速度検出部50より入力された移動体の移動速度を用いて、次に良好な伝送路が得られるまでの所要時間(再接続予想時間:Trcv)を計算し、変換速度設定部42に出力する。
【0043】
変換速度設定部42は、データ記録部20から出力される未出力の記録データ量と再接続予想時間計算部60で計算された再接続予想時間Trcvとに応じて、データデコード部30の変換速度を設定する。
例えば、変換速度設定部42は、以下の条件式により、本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比rを計算し、計算されたrの値に基づいて、データデコード部30におけるデータ変換速度を設定する。
条件式
r=1 [Q≧Trcv] ・・・・・・・・・・・・・・式(7)
r=Q/Trcv [Trcv>Q>(Trcv×rmin)]・・・・式(8)
r=rmin [Q≦(Trcv×rmin)]・・・・・・・・式(9)
【0044】
上式において、
Qは、データ記録部20から変換速度設定部40へ出力される未出力の記録データ量であって、そのデータ量を、データデコード部30において本来の変換速度で変換するときの変換時間で表した数値である。
rは、データデコード部30の本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比を表す数値である。
rcvは、再接続予想時間計算部60で計算された再接続予想時間である。
minは、実験的に求めた値であり、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感じないで視聴することのできる本来の変換速度に対する変換速度の比を表す数値の下限値である。
なお、本実施の形態は、参考例1におけるTmaxを、地図データベースと現在位置情報により動的に求めるようにしたものである。
【0045】
上記の条件式に示すように、本実施の形態による情報再生装置の変換速度設定部42は、データ記録部20が計数する未出力の記録データ量と再接続予想時間計算部60で計算された再接続予想時間に応じて、データデータデコード部30の変換速度を設定する。
ここで、式(7)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が多く、そのデータ量Q(データデコード部30において本来の変換速度で変換するときの変換時間で表した数値)がTrcv(再接続予想時間)以上の場合には、データデコード部30における変換速度を本来の変換速度(伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に設定することを示している。
【0046】
即ち、伝送路が切断されてデータ記録部20に記録されるデジタル情報データが一時的に途絶えても、データ記録部20に“ Q≧Trcv ”の関係で表されるデータ量が残っておれば、データデコード部30が本来の変換速度で変換しても、ほとんどの場合、データデコード部30からの出力が途絶えることがない。
【0047】
また、式(8)は、データ記録部20における未出力の記録データ量(Q)が、“T cv>Q>(Trcv×rmin) ”の関係にある時、変換速度設定部42が設定する変換速度を、“ r=Q/Trcv ”の条件を満足するように設定することを示している。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30からの出力が途絶えることはほとんどなく、かつ、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴できる。
【0048】
また、式(9)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が少なく、“ Q≦(Trcv×rmin ”の関係にあるときは、変換速度設定部40が設定する変換速度を、“r=Q/(L/v)”の条件を満足するように設定することを示している。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30で再生される(即ち、データデコード部30で変換される)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴することができる。
【0049】
なお、図6は、本実施の形態による情報再生装置において、データ記録部20に記録されるデジタル情報データのデータ量Q(即ち、未出力の記録データ量)が変化する様子を概念的に示したものである。
図から判るように、初期状態(データ量Q=0)からQがTrcv×rminを越えるまでは、一定速度(1−rmin)でデータが増える。
QがTrcv×rminを越えてからは、Qが大きくなるにつれてQが増える速度が遅くなり、Q=TrcvになるとQは増えなくなる。
この状態で伝送路の切断が発生すると、データ記録部20に蓄積(記録)されているデータを用いて、データデコード部30の変換を継続し、伝送路の切断が解除して、通信が再会すれば、Q=Trcvになるまで所定の速度でデータ記録部20にデータが蓄積される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態による情報再生装置の変換速度設定部は、データ記録部に記録されているデータ量と再接続予想時間計算部が計算する再接続予想時間に応じて、データデコード部の変換速度を本来の変換速度より変化させることにより、データデコード部から出力される再生信号を中断させないための変換速度を移動体の道路走行状況に応じて極めて正確に求めることができ、また、変換速度が小さくなり過ぎて視聴者が不自然を感ずることがないようにする。
【0051】
実施の形態2.
図7は、実施の形態2による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
また、図8は、本実施の形態による情報再生装置が利用するDSRC(Dedicated Toll Range Communication)と呼ばれる通信システム(情報提供システム)の構成例を示す図である。
まず、図8に示された通信システム(情報提供システム)について説明する。
図8において、80、81、82・・・は、路側上で離散して配置されている路側通信装置、90はこれらの各路側通信装置に映像や音声などのデジタル情報データを提供するデータサーバである。
図8に示したようなDSRCを用いた情報提供システム(例えば、映像・音声情報配信システム)においては、各路側通信装置は、それぞれ担う通信エリア内を走行する移動体(例えば、車両100)に対して、電波によりデジタル情報データの配信を行う。
【0052】
通常、各通信エリアはそれぞれ離れて設置されているので、伝送路は間欠的に確保される。
言い換えれば、情報提供システムから配信されるデジタル情報データが一時的に切断され、車両100はデジタル情報データを受信できなくなることがある。
図8に示した情報提供システムでは、各路側通信装置は映像・音声データ等のデジタル情報データに加えて、次の通信エリアまでの距離情報を走行する移動体に搭載された情報再生装置に送信している。
【0053】
次に、図7を用いて本実施の形態による情報再生装置の構成と動作を説明する。
図7において、10はDSRCを用いた情報提供システム(図示せず)の各路側通信装置から電波により配信されるデジタル情報データおよび次の通信エリアまでの距離情報を受信して出力するデータ受信部、20はデータ受信部10から出力されるデジタル情報データを一旦記録するデータ記録部、30はデータ記録部に対してデータの読み出し要求を行うと共に、データ記録部20から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部、42はデータデコード部30の変換速度を設定する変換速度設定部、50は情報再生装置を搭載した移動体の移動速度を検出する移動速度検出部である。
【0054】
なお、データデコード部30は、データ記録部20から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生する際に、映像情報に付帯する音声情報について、変換速度を落とすことによって低域に移動した音声周波数のスペクトラムを本来のスペクトラムに近づくように補正する。
参考例1の場合と同様に、この補正により、データデコード部30で再生される音声を視聴者が聞いても、不自然さを感じることはなくなる。
【0055】
また、61は再接続予想時間計算部であって、受信部10から出力される次の通信エリアまでの距離情報と移動速度検出部50が検出した移動体の移動速度が入力され、入力された次の通信エリアまでの距離情報と移動体の移動速度を用いて、次に伝送路が開通するまでの所要時間(即ち、再接続予想時間)を計算し、計算された再接続予想時間を変換速度設定部42に出力する。
変換速度設定部42は、データ記録部20から出力される未出力の記録データ量と再接続予想時間計算部61が計算した再接続予想時間に応じてデータデコード部30の変換速度を設定する。
【0056】
例えば、変換速度設定部42は、以下の関数により、本来の変換速度(即ち、伝送路切断がなくい場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比rを計算し、計算されたrの値に基づいてデータデコード部30におけるデータ変換速度を設定する。
条件式
r=1 [Q≧Trcv]・・・・・・・・・・・・・・・式(10)
r=Q/Trcv [Trcv>Q>(Trcv/rmin)]・・・・・式(11)
r=rmin [Q≦(Trcv/rmin)] ・・・・・・・・式(12)
【0057】
上式において、
Qは、データ記録部20から変換速度設定部40へ出力される未出力の記録データ量であって、そのデータ量を、データデコード部30において本来の変換速度で変換するときの変換時間で表した数値である。
rは、データデコード部30の本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比を表す数値である。
rcvは、再接続予想時間計算部61で計算された「再接続予想時間」である。
minは、実験的に求めた値であり、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感じないで視聴することのできる本来の変換速度に対する変換速度の比を表す数値の下限値である。
なお、本実施の形態は、参考例1におけるTmaxを、路側通信装置より配信される次の通信エリアまでの距離情報と移動体の移動速度より求めるようにしたものである。
【0058】
上記の条件式に示すように、本実施の形態による情報再生装置の変換速度設定部42は、データ記録部20が計数する未出力の記録データ量と再接続予想時間計算部61で計算された再接続予想時間に応じて、データデータデコード部30の変換速度を設定する。
ここで、式(10)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が多く、そのデータ量Q(データデコード部30において本来の変換速度で変換するときの変換時間で表した数値)がTrcv(再接続予想時間)以上の場合には、データデコード部30における変換速度を本来の変換速度(伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に設定することを示している。
【0059】
即ち、伝送路が切断されてデータ記録部20に記録されるデジタル情報データが一時的に途絶えても、データ記録部20に“ Q≧Trcv ”の関係で表されるデータ量が残っておれば、データデコード部30が本来の変換速度で変換しても、ほとんどの場合、データデコード部30からの出力が途絶えることがない。
【0060】
また、式(11)は、データ記録部20における未出力の記録データ量(Q)が、“Trcv>Q>(Trcv×rmin) ”の関係にある時、変換速度設定部42が設定する変換速度を、“ r=Q/Trcv ”の条件を満足するように設定することを示している。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30からの出力が途絶えることはほとんどなく、かつ、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴できる。
【0061】
また、式(12)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が少なく、“ Q≦(Trcv×rmin )”の関係にあるときは、変換速度設定部42が設定する変換速度を、“r=rmin ”の条件を満足するように設定することを示している。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30で再生される(即ち、データデコード部30で変換される)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴することができる。
なお、本実施の形態による情報再生装置において、データ記録部20に記録されるデジタル情報データのデータ量Q(即ち、未出力の記録データ量)が変化する様子を概念的に示せば、図6と同じになる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態による情報再生装置は、デジタル情報データと次ぎの通信エリアまでの距離情報を電波によって配信する情報提供システムを利用している。
そして、変換速度設定部は、データ記録部に記録されているデータ量と再接続予想時間計算部が計算する再接続予想時間(即ち、情報提供システムから配信される次ぎの通信エリアまでの距離情報と移動体の移動速度に基づいて再接続予想時間計算部が計算する再接続予想時間)に応じて、データデコード部から出力される再生信号を中断させないための変換速度を容易に求めることができる。
また、変換速度が小さくなり過ぎて視聴者が不自然を感ずることがないようにする。
【0063】
実施の形態3.
図9は、実施の形態3による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
また、本実施の形態による情報再生装置が利用する情報提供システムは、基本的には前述の図8に示したDSRC(Dedicated Toll Range Communication)と呼ばれる通信システム(情報提供システム)と同じであるが、各路側通信装置は映像・音声データ等のデジタル情報データに加えて、当該通信エリアを走行中の移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を移動体に搭載の情報再生装置に送信している点が異なる。
各路側通信装置は、本実施の形態による情報再生装置を搭載した移動体(車両)が各路側通信装置の通信エリアに入る直前に、移動体が各路側通信装置の通信エリアから次の路側通信装置の通信エリアまで走行するのに要する所要時間を計数する機能を持っており、映像・音声などのデジタル情報データに加えて、移動体が次の通信エリアに到達するまでの予想所要時間を情報再生装置に送信する。
【0064】
次に、図9を用いて本実施の形態による情報再生装置の構成と動作を説明する。
図9において、10はDSRCを用いた情報提供システム(図示せず)の各路側通信装置から電波により配信されるデジタル情報データおよび当該通信エリアを走行中の移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を受信して出力するデータ受信部、20はデータ受信部10から出力されるデジタル情報データを一旦記録するデータ記録部、30はデータ記録部に対してデータの読み出し要求を行うと共に、データ記録部20から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部、43はデータデコード部30の変換速度を設定する変換速度設定部、50は情報再生装置を搭載した移動体の移動速度を検出する移動速度検出部である。
【0065】
なお、データデコード部30は、データ記録部20から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生する際に、映像情報に付帯する音声情報について、変換速度を落とすことによって低域に移動した音声周波数のスペクトラムを本来のスペクトラムに近づくように補正する。
参考例1の場合と同様に、この補正により、データデコード部30で再生される音声を視聴者が聞いても、不自然さを感じることはなくなる。
【0066】
変換速度設定部43は、データ記録部20から出力される未出力の記録データ量とデータ受信部10から出力される予想所要時間(即ち、当該通信エリアを走行中の移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間)に応じてデータデコード部30の変換速度を設定する。
【0067】
例えば、変換速度設定部43は、以下の関数により、本来の変換速度(即ち、伝送路切断がなくい場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比rを計算し、計算されたrの値に基づいてデータデコード部30におけるデータ変換速度を設定する。
条件式
r=1 [Q≧Trcv] ・・・・・・・・・・・・・式(13)
r=Q/Trcv [Trcv>Q>(Trcv/rmin)]・・・・式(14)
r=rmin [Q≦(Trcv/rmin)] ・・・・・・・式(15)
【0068】
上式において、
Qは、データ記録部20から変換速度設定部43へ出力される未出力の記録データ量であって、そのデータ量を、データデコード部30において本来の変換速度で変換するときの変換時間で表した数値である。
rは、データデコード部30の本来の変換速度(即ち、伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に対する変換速度の比を表す数値である。
rcvは、情報提供システムの路側通信装置より提供される「当該通信エリアを走行中の移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間」である。
minは、実験的に求めた値であり、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感じないで視聴することのできる本来の変換速度に対する変換速度の比を表す数値の下限値である。
なお、本実施の形態は、参考例1におけるTmaxを、路側通信装置より配信される次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間としたものである。
【0069】
上記の条件式に示すように、本実施の形態による情報再生装置の変換速度設定部43は、データ記録部20から出力される未出力の記録データ量とデータ受信部10から出力される次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間に応じて、データデータデコード部30の変換速度を設定する。
ここで、式(13)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が多く、そのデータ量Q(データデコード部30において本来の変換速度で変換するときの変換時間で表した数値)がTrcv(当該通信エリアを走行中の移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間)以上の場合には、データデコード部30における変換速度を本来の変換速度(伝送路の切断がない場合の通常の変換速度)に設定することを示している。
【0070】
即ち、伝送路が切断されてデータ記録部20に記録されるデジタル情報データが一時的に途絶えても、データ記録部20に“ Q≧Trcv ”の関係で表されるデータ量が残っておれば、データデコード部30が本来の変換速度で変換しても、ほとんどの場合、データデコード部30からの出力が途絶えることがない。
【0071】
また、式(14)は、データ記録部20における未出力の記録データ量(Q)が、“Trcv>Q>(Trcv×rmin) ”の関係にある時、変換速度設定部43が設定する変換速度を、“ r=Q/Trcv ”の条件を満足するように設定することを示している。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30からの出力が途絶えることはほとんどなく、かつ、再生された(即ち、データテコード部30で変換された)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴できる。
【0072】
また、式(15)は、データ記録部20における未出力の記録データ量が少なく、“ Q≦(Trcv×rmin )”の関係にあるときは、変換速度設定部43が設定する変換速度を、“r=rmin ”の条件を満足するように設定することを示している。
このように変換速度を設定すれば、データデコード部30で再生される(即ち、データデコード部30で変換される)情報を、ほとんどの人が不自然さを感ずることなく視聴することができる。
なお、本実施の形態による情報再生装置において、データ記録部20に記録されるデジタル情報データのデータ量Q(即ち、未出力の記録データ量)が変化する様子を概念的に示せば、図6と同じになる。
【0073】
以上説明したように、本実施の形態による情報再生装置は、デジタル情報データと移動体が次ぎの通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を電波によって配信する情報提供システムを利用している。
そして、変換速度設定部は、データ記録部に記録されているデータ量とデータ受信部から出力される移動体が次ぎの通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報に応じて、データデコード部から出力される再生信号を中断させないための変換速度を容易に求めることができる。
また、変換速度が小さくなり過ぎて視聴者が不自然を感ずることがないようにする。
【0074】
【発明の効果】
この発明による情報再生装置は、移動体に搭載され、デジタル情報データを電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、
情報提供システムから配信されるデジタル情報データを受信するデータ受信部と、データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部を備えている。
【0075】
さらに、移動体の移動速度を検出する移動速度検出部と、移動体に載置された地図データベースと、地図データベース上における移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段を備えている。
さらに、地図データベースを用い、情報提供システムから配信されるデジタル情報データの伝送路が切断された場合に、移動速度検出部が検出する移動速度と現在位置検出手段が検出する現在位置情報に基づいて、切断された伝送路が再接続されるまでの再接続時間を予想する再接続予想時間計算部と、データ記録部の未出力の記録データ量と再接続予想時間計算部が予想した再接続予想時間に応じてデータデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えている。
【0076】
この発明によれば、変換速度設定部は、データ記録部の未出力の記録データ量(即ち、データ記録部に蓄積されているデータ量)と再接続予想時間計算部が予想した再接続予想時間に応じてデータデコード部の変換速度を設定するので、データデコード部から出力される再生信号の中断を抑制するための変換速度を移動体の道路走行状況に応じて非常に正確に求めることができる。
【0077】
また、この発明による情報再生装置は、移動体に搭載され、路側上で離散的に配置された複数の路側通信装置と該複数の路側通信装置に対してデジタル情報データを供給するデータサーバとを有し、複数の路側通信装置は、各路側通信装置が担う通信エリア内を走行する移動体に対してデータサーバから供給されるデジタル情報データに加えて、次ぎの通信エリアまでの距離情報を電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、
情報提供システムの各路側通信装置から電波によって配信されるデジタル情報データおよび次の通信エリアまでの距離情報を受信するデータ受信部と、データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部と、移動体の移動速度を検出する移動速度検出部と、データ受信部が受信する次ぎの通信エリアまでの距離情報と上記移動速度検出部が検出する移動体の移動速度に基づいて、切断された伝送路が再接続されるまでの再接続予想時間を計算する再接続予想時間計算部と、データ記録部の未出力の記録データ量と上記再接続予想時間計算部から出力される再接続予想時間とに応じて、データデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えるので、デジタル情報データと次ぎの通信エリアまでの距離情報を電波によって配信する情報提供システムを有効に利用して、データデコード部から出力される再生信号の中断を抑制するための変換速度を容易に求めることができる。
【0078】
また、この発明による情報再生装置は、移動体に搭載され、路側上で離散的に配置された複数の路側通信装置と該複数の路側通信装置に対してデジタル情報データを供給するデータサーバとを有し、複数の路側通信装置は、各路側通信装置が担う通信エリア内を走行する移動体に対してデータサーバから供給されるデジタル情報データに加えて、移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、情報提供システムの各路側通信装置から電波によって配信されるデジタル情報データおよび次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を受信するデータ受信部と、データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部と、データ記録部の未出力の記録データ量とデータ受信部が受信する上記予想所要時間情報とに応じてデータデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えるので、デジタル情報データと移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を電波によって配信する情報提供システムを有効に利用して、データデコード部から出力される再生信号の中断を抑制するための変換速度を容易に求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
【図2】 参考例1による情報再生装置において、記録データ量が変化する様子を概念的に示したものである。
【図3】 参考例2による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
【図4】 参考例2による情報再生装置において、記録データ量が変化する様子を概念的に示したものである。
【図5】 実施の形態1による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
【図6】 実施の形態1による情報再生装置において、記録データ量が変化する様子を概念的に示したものである。
【図7】 実施の形態2による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
【図8】 実施の形態2による情報再生装置が利用する情報提供システムを説明するための図である。
【図9】 実施の形態3による情報再生装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10、11、12 データ受信部
20 データ記録部
30 データデコード部
40、41、42、43 変換速度設定部
50 移動速度検出部
60、61 再接続予想時間計算部
70 地図データベース
75 現在位置検出手段
80、81、82 路側通信装置
90 データサーバ
100 移動体(車両)

Claims (4)

  1. 移動体に搭載され、デジタル情報データを電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、
    上記情報提供システムから配信されるデジタル情報データを受信するデータ受信部と、
    上記データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、
    上記データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部と、
    上記移動体の移動速度を検出する移動速度検出部と、
    上記移動体に載置された地図データベースと、
    上記地図データベース上における移動体の現在位置を検出する現在位置検出手段と、
    上記地図データベースを用い、上記情報提供システムから配信されるデジタル情報データの伝送路が切断された場合に、上記移動速度検出部が検出する移動速度と上記現在位置検出手段が検出する現在位置情報に基づいて、切断された伝送路が再接続されるまでの再接続時間を予想する再接続予想時間計算部と、
    上記データ記録部の未出力の記録データ量と上記再接続予想時間計算部が予想した再接続予想時間に応じて上記データデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えたことを特徴とする情報再生装置。
  2. 移動体に搭載され、路側上で離散的に配置された複数の路側通信装置と該複数の路側通信装置に対してデジタル情報データを供給するデータサーバとを有し、上記複数の路側通信装置は、各路側通信装置が担う通信エリア内を走行する移動体に対して上記データサーバから供給されるデジタル情報データに加えて、次ぎの通信エリアまでの距離情報を電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、
    上記情報提供システムの各路側通信装置から電波によって配信されるデジタル情報データおよび次の通信エリアまでの距離情報を受信するデータ受信部と、
    上記データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、
    上記データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部と、
    上記移動体の移動速度を検出する移動速度検出部と、
    上記データ受信部が受信する次ぎの通信エリアまでの距離情報と上記移動速度検出部が検出する移動体の移動速度に基づいて、切断された伝送路が再接続されるまでの再接続予想時間を計算する再接続予想時間計算部と、
    上記データ記録部の未出力の記録データ量と上記再接続予想時間計算部から出力される再接続予想時間とに応じて、上記データデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えたことを特徴とする情報再生装置。
  3. 移動体に搭載され、路側上で離散的に配置された複数の路側通信装置と該複数の路側通信装置に対してデジタル情報データを供給するデータサーバとを有し、上記複数の路側通信装置は、各路側通信装置が担う通信エリア内を走行する移動体に対して上記データサーバから供給されるデジタル情報データに加えて、移動体が次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を電波によって配信する情報提供システムを利用する情報再生装置であって、
    上記情報提供システムの各路側通信装置から電波によって配信されるデジタル情報データおよび次の通信エリアへ到達するまでの予想所要時間情報を受信するデータ受信部と、
    上記データ受信部が受信するデジタル情報データを一旦記録し、記録されたデジタル情 報データを順次出力すると共に、未出力の記録データ量を計数して出力するデータ記録部と、
    上記データ記録部から出力されるデジタル情報データをアナログ信号に変換して再生するデータデコード部と、
    上記データ記録部の未出力の記録データ量と上記データ受信部が受信する上記予想所要時間情報とに応じて、上記データデコード部の変換速度を設定する変換速度設定部とを備えたことを特徴とする情報再生装置。
  4. 上記デジタル情報データは映像情報データと音声情報データからなり、上記データデコード部は、上記映像情報データを変換して再生する際に、上記音声情報データのスペクトラムを変換前の通常のスペクトラムに近づくように補正することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の情報再生装置。
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