JP3910686B2

JP3910686B2 - 等速ジョイント用グリース組成物

Info

Publication number: JP3910686B2
Application number: JP16885897A
Authority: JP
Inventors: 久幸大沢; 実石島
Original assignee: NSK Ltd; Kyodo Yushi Co Ltd
Current assignee: NSK Ltd; Kyodo Yushi Co Ltd
Priority date: 1997-06-25
Filing date: 1997-06-25
Publication date: 2007-04-25
Anticipated expiration: 2017-06-25
Also published as: JPH1112589A

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、等速ジョイント用グリース組成物に関するものである。潤滑されるべき等速ジョイントには極めて高い面圧がかかり、またジョイントは複雑なころがり運動を行うため、異常振動がしばしば発生する。従って、本発明は特に、このような等速ジョイントを効率よく潤滑し、有効に摩擦を低減して振動の発生を防止し得る等速ジョイント用グリース組成物に関するものである。
【０００２】
【従来の技術】
従来、このような等速ジョイントに用いられている潤滑グリースとしては、カルシウムコンプレックス石けんを増ちょう剤とするグリースや、リチウム石けんを増ちょう剤とし、例えば、硫化油脂、トリクレジルホスフェート、及びジチオリン酸亜鉛からなる群から選択された硫黄−リン系極圧剤を含有したグリースがある。また、最近ではウレアグリースに有機モリブデンを添加したグリースも使用されている。
最近の自動車工業においては、軽量化かつ居住空間の確保の点から、ＦＦ車が急激に増加し、これに不可欠な等速ジョイント（ＣＶＪ）が広く用いられている。このＣＶＪの中で、プランジング型等速ジョイント、特に、トリポード型等速ジョイント（ＴＪ）は、ある角度の付いた状態で、回転時に複雑なころがりすべり運動を行うため、軸方向に転がり抵抗を生じ、発進及び加速時の車体の横揺れ、特定速度での車内でのビート音及び／又はこもり音の起振源となっている。この問題の解決のため、種々の等速ジョイント（ＣＶＪ）自体の構造の改良もなされているが、ジョイントの占めるスペース、重さ、及びコスト面でその改良は難しく、振動低減性能に優れたグリースが要求されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、等速ジョイントの振動を低減するグリース組成物を提供することである。
本発明の他の目的は、等速ジョイントを効率よく潤滑し、有効に摩擦を低減し振動の発生を防止し得るプランジング型等速ジョイント用グリース組成物を提供することである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、等速ジョイントの摩擦を低減し、振動を防止するグリース組成物の開発研究を種々行った結果、基油、ウレア系増ちょう剤、モリブデンジチオカーバメート、エステル系合成油、酸化ワックス化合物、及び特定の硫黄−リン系極圧剤を含有するグリース組成物が、実際の等速ジョイントを用いた軸力試験において、従来の等速ジョイント用グリースとは異なり、振動の発生を顕著に防止し得ることを確認し、本発明を完成するに至った。
本発明の上記目的は以下の成分を含む等速ジョイント用グリース組成物により効果的に達成することができる。
(a) 基油、
(b) ウレア系増ちょう剤、
(c) モリブデンジチオカーバメート、
(d) エステル系合成油、
(e) 金属を含まない酸化ワックス及び金属を含まない酸化ワックスエステルからなる群から選択される少なくとも１種の酸化ワックス化合物、及び
(f) 硫黄の含有量が１０〜３０％、リンの含有量が0.５〜５％である金属を含まない硫黄−リン系極圧剤。
【０００５】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する(a) 成分の基油としては、鉱物油、エーテル系合成油、炭化水素系合成油等の普通に使用されている潤滑油またはそれらの混合油が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本発明に使用する(b) 成分のウレア系増ちょう剤としては、例えば、ジウレア化合物、ポリウレア化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ジウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとモノアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルジイソシアネート、フェニルジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、オクタデカンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート等が挙げられ、モノアミンとしては、オクチルアミン、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、ｐ−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【０００６】
ポリウレア化合物は、例えば、ジイソシアネートとジアミンとの反応で得られる。ジイソシアネートとしては、ジウレア化合物の生成に用いられるものと同様のものが挙げられ、ジアミンとしては、エチレンジアミン、プロパンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサンジアミン、オクタンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、キシレンジアミン等が挙げられる。
特に好ましいウレア系増ちょう剤は、オクチルアミン、ステアリルアミン等の脂肪族系アミン、又はこれらの混合物と、ジイソシアネート化合物との反応によって得られる、ジウレア化合物である。
【０００７】
本発明に使用する(c) 成分のモリブデンジチオカーバメートの好ましい例としては、下記の式（１）で表されるものが挙げられる。
（Ｒ¹Ｒ²Ｎ−ＣＳ−Ｓ)₂−Ｍｏ₂ＯｍＳｎ
（式中、Ｒ¹及びＲ²は独立して、炭素数１〜２４、好ましくは３〜１８のアルキル基を表し、ｍは０〜３、ｎは４〜１であり、ｍ＋ｎ＝４である。）
本発明に使用する(d) 成分のエステル系合成油としては、ゴムの可塑剤や潤滑油として知られている、アジピン酸ジ−２−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−２−エチルヘキシル、フタル酸ジ−２−エチルヘキシルが挙げられる。これらのうちアジピン酸ジ−２−エチルヘキシルが特に好ましい。
本発明に使用する(e）成分としては、金属を含まない酸化ワックス及び金属を含まない酸化ワックスエステルからなる群から選択される少なくとも１種の酸化ワックス化合物が使用されるが、金属を含まない酸化ワックスが特に好ましい。このような金属を含まない酸化ワックスとしては、錆止め剤として公知のもの、例えば、ALOX 600（ALOX Corporation製酸化ワックス）、ALOX 800、ALOX 102、等が挙げられる。また、金属を含まない酸化ワックスエステルとしては、上記酸化ワックスのメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、ペンチルエステル、ヘキシルエステル、例えば、錆止め剤として公知の、ALOX 350（ALOX Corporation製酸化ワックスエステル）、ALOX 152、ALOX 162、等が挙げられる。
【０００８】
本発明に使用する(f）成分の硫黄−リン系極圧剤は、硫黄の含有量を１０〜３０％、リンの含有量を0.５〜５％に調整することにより、優れた摩耗防止性能や焼け付き防止性能を発揮させることができる。硫黄成分が上記範囲より多いとジョイントが腐食し易くなり、リン成分が上記範囲より多いとジョイントの摩耗防止効果が得られなくなる。また両者とも上記範囲より少ない場合は、摩耗防止性能や焼け付き防止性能を十分に発揮させるのが困難になる。
【０００９】
本発明の等速ジョイント用グリース組成物は、上記成分に加えて、酸化防止剤、錆止め剤、防食剤等を含有することができる。
本発明の等速ジョイント用グリース組成物は、好ましくは、グリース組成物の全重量に対して、(a) 成分の基油：３0.０〜９7.８重量％、(b) 成分のウレア系増ちょう剤：１〜２５重量％、(c) 成分のモリブデンジチオカーバメート：0.１〜１０重量％、(d) 成分のエステル系合成油：0.５〜１０重量％、(e) 成分の酸化ワックス化合物：0.５〜１５重量％、(f) 成分の硫黄−リン系極圧剤：0.１〜１０重量％を含んでいる。
【００１０】
本発明の等速ジョイント用グリース組成物は、さらに好ましくは、グリース組成物の全重量に対して、(a) 成分の基油：５5.０〜９4.０重量％、(b) 成分のウレア系増ちょう剤：３〜２０重量％、(c) 成分のモリブデンジチオカーバメート：0.５〜５重量％、(d) 成分のエステル系合成油：１〜５重量％、(e) 成分の酸化ワックス化合物：１〜１０重量％、(f) 成分の硫黄−リン系極圧剤：0.５〜５重量％を含んでいる。
(b) 成分の含有量が１重量％未満では、増ちょう効果が少なくなり、グリース化しにくくなり、２５重量％より多いと、得られた組成物が硬くなりすぎ、所期の効果が得られにくくなる。(c) 成分の含有量が0.１重量％未満、(d) 成分の含有量が0.５重量％未満、(e) 成分の含有量が0.５重量％未満、(f) 成分の含有量が0.１重量％未満では、所期の効果を十分に得ることが困難になり、一方(c) 成分の含有量が１０重量％より多く、(d) 成分の含有量が１０重量％より多く、(e) 成分の含有量が１５重量％より多く、(f) 成分の含有量が１０重量％より多い場合にも効果の増大はない。
【００１１】
【実施例】
次に本発明を実施例および比較例により説明する。
〔実施例１〜４、比較例１〜６〕
容器に基油４３1.８ｇとジフェニルメタン−４，４′−ジイソシアネート５2.３ｇをとり、混合物を７０〜８０℃に加熱した。別容器に基油４３1.７ｇ、オクチルアミン２7.０ｇ、ステアリルアミン５7.２ｇをとり、７０〜８０℃に加熱後、先の容器に加えよく攪拌しながら、３０分間反応させた。その後攪拌しながら、１６０℃まで昇温し、放冷し、ベースウレアグリースを得た。このベースグリースに、表１に示す配合で、添加剤を添加し、適宜基油を加え、得られる混合物を、三段ロールミルにて、ちょう度No. 1.5 グレードに調整した。
【００１２】

これらのグリースにつき以下に示す試験方法で物性の評価を行い、得られた結果を表１に併記する。
＜ちょう度＞ＪＩＳＫ２２２０ 5.３による
＜滴点＞ＪＩＳＫ２２２０ 5.４による
＜軸力試験＞
下記条件にて、実ジョイントの軸力試験を行い、軸力を測定した。

【００１３】
【表１】

【００１４】
【表２】

【００１５】
1) モノアミンとして、オクチルアミンとステアリルアミンを混合使用したジウレア化合物を用いたジウレアグリース
2) モリブデンジチオカーバメート（商品名：Molyvan A R.T.Vanderbilt 社製)
3) モリブデンジチオカーバメート（商品名：Molyvan 822 R.T.Vanderbilt 社製)
4) アジピン酸ジ−２−エチルヘキシル（商品名：サンソサイザーDOA 新日本理化社製）
5) 酸化ワックス（商品名：ALOX 600 ALOX Corporation製）
6) 酸化ワックスエステル（商品名：ALOX 350 ALOX Corporation製）
7) 硫黄−リン系極圧剤（商品名：Anglamol 99 日本ルーブリゾール(Lubrizol)社製）
＊市販モリブデンジチオカーバメート入りグリース

Claims

(a) 基油、
(b) ウレア系増ちょう剤、
(c) モリブデンジチオカーバメート、
(d) アジピン酸ジ−２−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−２−エチルヘキシル、及びフタル酸ジ−２−エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも１種のエステル系合成油、
(e) 金属を含まない酸化ワックス及び金属を含まない酸化ワックスエステルからなる群から選択される少なくとも１種の酸化ワックス化合物、及び
(f) 硫黄の含有量が１０〜３０％、リンの含有量が0.５〜５％である金属を含まない硫黄−リン系極圧剤からなる等速ジョイント用グリース組成物。
全組成物中、ウレア系増ちょう剤の含有量が１〜２５重量％、モリブデンジチオカーバメートの含有量が0.１〜１０重量％、アジピン酸ジ−２−エチルヘキシル、セバシン酸ジ−２−エチルヘキシル、及びフタル酸ジ−２−エチルヘキシルからなる群から選択される少なくとも１種のエステル系合成油の含有量が0.５〜１０重量％、酸化ワックス化合物の含有量が0.５〜１５重量％、硫黄−リン系極圧剤の含有量が0.１〜１０重量％である、請求項１記載の等速ジョイント用グリース組成物。