JP3909041B2 - 電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去方法および除去装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気めっき用溶性電極内に堆積した鉄系スラッジの除去方法および除去装置に関する。
特に、乾電池用途および テレビブラウン管用途などに用いられる鋼帯へのニッケルめっき時に溶性電極内部に発生した鉄系スラッジの除去方法および除去装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼帯にニッケルめっきを施す電極には、電極自体が溶けて消耗する溶性電極と電極自体は消耗しない不溶性電極とがあるが、乾電池用途等に使用されるメッキ厚の厚いニッケルメッキ製品を製造する場合には、メッキ効率に優れた溶性電極が多用されている。
鋼帯にニッケルめっきを施す際に、この溶性電極に発生するスラッジは、電極の電気抵抗を上昇させてめっきの生産性を阻害することから、このスラッジを除去する方法に関して従来から種々の提案がなされている。
【0003】
一般的な溶性電極は、アノードバックと呼ばれる化繊布で電極本体が覆われており、小径化した(1φ以下)ニッケル粒が電極の外へ飛び出し、シンクロールなどへのかみ込みを防止している。
例えば、特開平9−241894号公報には、 このアノードバスケット底部にエアーバブリングを施せるようにエアー配管を配設することにより電極内部に溜まったスラッジを洗い流す方法が開示されている。
しかし、電極内部に発生したスラッジ(Fe(OH)3)は、この膨潤したアノードバックを通過することはなく、アノードバックの内側にトラップされる。
また、一般にスラッジはニッケル粒まわり或は電極内壁面に強固に固着しており、エアーバブリングしてもスラッジがアノードバックの外側に流出してくることはなく、電極内部に発生したスラッジを系外へ排出できなかった。
【0004】
また、発生したスラッジを除去する装置に関する従来技術として、例えば、特開2002−241998号公報「 電着装置 および 電着方法 」 や 特開平7−286299号公報 「 電気めっき用アノードスライム除去装置 」 などがあるが、フィルタを用いる場合には、スラッジの平均粒子径は5μ程度と細かい上粘着性があるため、フィルタがきわめて詰まり易く頻繁に逆洗する必要があるうえ、沈降槽を用いる場合には効率よくスラッジを分離できるが、めっき浴中に含まれるホウ酸が沈降分離時の温度低下のためスラッジとともに溶解度が低くなり析出してくるなどといった問題があった。
【0005】
【特許文献1】
特開平9−241894号公報
【特許文献2】
特開2002−241998号公報
【特許文献3】
特開平7−286299号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、溶性電極内部に堆積した鉄系スラッジを溶解し系外に排出することによりめっき生産性の向上と電極の延命化を図ることができる電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去方法および除去装置を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために、鋭意検討の結果なされたものであり、溶性電極を設置したラインタンク内のめっき液を一旦系外に排出し、スラッジを溶解することができる酸を供給し、溶性電極内部に堆積した鉄系スラッジを溶解し系外に排出してスラッジを除去することにより、めっき生産性の向上と電極の延命化を図ることができる電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去装置を提供するものであり、その要旨とするところは特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)溶性電極が設置されているラインタンク内のめっき液を一旦系外に排出し、該ラインタンクに鉄系スラッジを溶解することができる酸を供給して、電気めっき用溶性電極内に堆積した鉄系スラッジを溶解・イオン化して系外に排出する鉄系スラッジ除去装置であって、前記酸を循環タンクと前記ラインタンクとの間を循環させる第1の循環ポンプ(A)と、前記酸を循環タンクと前記溶性電極との間を循環させる第2の循環ポンプ(B)とを有することを特徴とする電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去装置。
(2)前記電気めっきがニッケルめっきであり、かつ、前記酸が硫酸、塩酸、クエン酸、りんご酸のいずれかであることを特徴とする(1)に記載の電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去装置。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について、図1乃至図6を用いて詳細に説明する。
図1乃至図3は、本発明が対象とする電気めっき装置を示す図である。
図1は、一般に電池用途やテレビブラウン管用途などに使用されるニッケルめっき鋼帯の製造プロセスの一部を示している。
図1において、鋼帯1は右側から左側に進行し、めっき前に、ピックルタンク2にて、例えば、pH1未満の硫酸水溶液などの強酸水溶液に浸漬することによって、表面を活性化させて鋼帯の清浄度を強化する。
次に、リンスタンク3によって、鋼帯1上に付着している余剰な酸を取り除いた後に、ニッケルめっきセクション6にて、必要な電流を溶性電極5に供給することにより鋼帯1の表面にニッケルめっきが施される。
ニッケルめっきセクション6には、ラインタンクが3タンク設置されており、本実施形態では、それぞれのラインタンクに溶性電極5が設置されている。
【0009】
図2は、本発明に用いる各ラインタンクに設置される溶性電極を例示する図である。
鋼帯1は通電ロール4およびシンクロール10によってラインタンク9内を搬送され、鋼帯1を挟むように設置された複数の溶性電極5に整流器7およびブスバー(銅帯)8を介して通電することによりめっきが施される。
本実施形態における鋼帯1は 厚み 0.15mm 、板厚 860mmのものをラインスピード 80mpmで通板しており、溶性電極5の電極長 は1.8m、 電極幅 1.2mとしている。
【0010】
溶性電極5は、チタン製のメッシュバスケットの内部に6〜15mmφ程度のニッケルペレットを充填したもので、例えば、実公平3-1484号公報に開示されているような可溶性ペレットの定量切り出し装置などを用いてバスケット内にニッケル粒を供給する。
本実施形態に用いるめっき浴は、ワット浴と呼ばれるめっき浴を用い、硫酸ニッケル:340±10g/l、塩化ニッケル: 70±10g/l、ホウ酸 : 45±10g/lの組成とし、浴温 60±5℃としている。
図2には一つの溶性電極用の整流器7および配線用のブスバー(銅帯)8を例示しており、本実施形態では、溶性電極の数に応じて20V-4000Aの整流器7が、1タンクあたり4式設置されており、これが3タンク分設置されている。
【0011】
図3は、本発明に用いる溶性電極を例示する詳細図である。
図3に示すように、本実施形態における溶性電極は、ニッケル粒14の充填されたチタンメッシュ(背面はメッシュなし)の籠の外側を化繊布(アノードバック13)で覆った構造となっており、チタン製のカゴは、チタン製ラス網12とチタン製背板11から構成されている。
鉄系スラッジ15は、めっき操業を行う際に発生し、図3に示すようにニッケル粒14の周囲に付着・堆積している。
この電極内部に発生した鉄系スラッジ15をX線回折により分析してみるとFeO(OH)、Fe(OH)SO4・2H2O、Fe5O7(OH)・4H2Oなど3価の鉄系水和物である。
この鉄系スラッジ15は電気を通しにくいため、図3に示すようにニッケル粒14の周囲に付着・堆積すると、電極内の通電性を阻害するため、電極内部の抵抗が増す。このため、一定電圧で流すことのできる電流量(めっき量)が低下するため、必要めっき厚を確保するためには、鋼板の通板スピードを低下しなければならない。
【0012】
また、鉄系スラッジが、例えば電極下部などに塊状態に堆積した場合には、スラッジの堆積によりめっき液による電極の冷却がなされないので、局所的に電極温度が上昇し、電極(チタン)が溶損してしまう場合がある。
このような問題を解決するため、本来であれば連続的に電極内部の液をフィルタでろ過することが考えられるが、ニッケル粒が充填された状態で、電極内部に堆積したスラッジを電極外に排出することができなかった。
そこで、本発明らは、溶性電極5が設置されているラインタンク9内のめっき液を一旦系外に排出し、ラインタンク9に鉄系スラッジ15を溶解することができる酸を供給して該スラッジを溶解・イオン化して系外に排出することを特徴とする電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去方法を見出した。
この方法は、めっき装置の停止中に、ラインタンク9内のめっき液を一旦すべて抜いて系外に排出する。この段階でもスラッジは電極内部に堆積したままであるため、ラインタンク9内に硫酸などのスラッジを溶解することのできる酸を供給する。ここで酸はクエン酸、りんご酸などの有機酸でも、塩酸、硫酸などの無機酸などでもいずれでもかまわない。
なお、ニッケルは上記の酸では溶解しないので、ニッケル粒14が溶出することはない。
【0013】
これにより、ニッケル粒14の周りに固着した鉄系スラッジ、および電極内部に強固に固着した鉄系スラッジ15も容易にイオン化し、酸水溶液中に浮遊するため、電極内部のスラッジを鉄イオンという形に変えて系外に排出できる。
図4および図5は、本発明の電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去方法および除去装置の実施形態を例示する図である。
図4に示すように、本実施形態においては、循環ポンプAにより、循環タンク16とめっき液を排出したラインタンク9との間に硫酸を循環させると同時に、図5に示すように、循環ポンプBにより、溶性電極5とラインタンク9との間に硫酸を循環させることによって、系全体に満遍なく硫酸を循環させることができるので、溶性電極5の内部に堆積したスラッジを効率よく溶解・イオン化することができる。
この時、電極内のスラッジを効率よくイオン化するためにエアーバブリングしてもよく、スラッジを溶解しにくい酸の場合には酸を加温することが好ましい。
【0014】
【実施例】
硫酸濃度 40 g/lの溶液を 18m3程度を循環タンクに作液し、ラインタンク( 10m3 = 3タンク)に循環ポンプAを用い硫酸を送液し、ラインタンクに溜まった硫酸はヘッド差により循環タンクに戻り液全体が循環する。
また、電極の内外も循環ポンプBを用いて循環することにより短時間で電極内スラッジを溶解することができた。循環ポンプAは10m3/min程度とした。
循環パイプは樹脂製で電極の両サイドに配置しパイプに設けた穴から硫酸を吹付る。 循環ポンプBは50l/min 程度の循環量のものを使用した。
スラッジの溶解性はスラッジが溶解した結果として発生する鉄イオン濃度を測定し、鉄イオン濃度の経時変化を管理することで洗浄完了の目安にした。
本実施例の場合、ライン硫酸温度:19℃、硫酸量:18m3 、洗浄(循環)時間:2h で電極12枚分を洗浄した結果、硫酸中鉄イオン濃度は 3.4 g/l増加した。
このため 1電極あたり5.1kgの鉄分が溶解したものと考えられる。
図6は、本発明を用いて溶性電極を洗浄する前後の電流値の変化を示す図であり、●印が洗浄前を示し、○印が洗浄後を示す。
この結果同一電圧をかけたときの電流量が著しく増えており、電極内部のスラッジが減少したことで電極内部の抵抗が減少したものと考えられる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、溶性電極を設置したラインタンク内のめっき液を一旦系外に排出し、スラッジを溶解することができる酸を供給し、溶性電極内部に堆積した鉄系スラッジを溶解し系外に排出してスラッジを除去することにより、めっき生産性の向上と電極の延命化を図ることができる電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去方法および除去装置を提供することができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明が対象とする電気めっき装置を示す図である。
【図2】 本発明に用いる各ラインタンクに設置される溶性電極を例示する図である。
【図3】 本発明に用いる溶性電極を例示する詳細図である。
【図4】 本発明の電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去方法および除去装置の実施形態を例示する図である。
【図5】 本発明の電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去方法および除去装置の実施形態を例示する図である。
【図6】 本発明を用いて溶性電極を洗浄する前後の電流値の変化を示す図である。
【符号の説明】
1・・・鋼帯、2・・・ピックルタンク、3・・・リンスタンク、
4・・・通電ロール、5・・・溶性電極、6・・・ニッケルめっきセクション、7・・・整流器、8・・・ブスバー(銅帯)、9・・・ラインタンク、
10・・・シンクロール、11・・・チタン製背板、12・・・チタン製ラス網、
13・・・アノードバッグ、14・・・ニッケル粒、15・・・鉄系スラッジ、
16・・・循環タンク、A・・・第1の循環ポンプ、B・・・第2の循環ポンプ
Claims (2)
- 溶性電極が設置されているラインタンク内のめっき液を一旦系外に排出し、該ラインタンクに鉄系スラッジを溶解することができる酸を供給して、電気めっき用溶性電極内に堆積した鉄系スラッジを溶解・イオン化して系外に排出する鉄系スラッジ除去装置であって、前記酸を循環タンクと前記ラインタンクとの間を循環させる第1の循環ポンプ(A)と、前記酸を循環タンクと前記溶性電極との間を循環させる第2の循環ポンプ(B)とを有することを特徴とする電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去装置。
- 前記電気めっきがニッケルめっきであり、かつ、前記酸が硫酸、塩酸、クエン酸、りんご酸のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の電気めっき用溶性電極の鉄系スラッジ除去装置。
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