JP3908975B2 - 冷却装置及び冷却方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、冷却部より自圧返送された冷媒を2段の熱交換手段により、過冷却好ましくは、凝固点付近の温度まで冷却して、これを冷媒として再び冷却部に供給する冷却装置、及び冷却方法に関する。本発明は、特に、超電導トランス、超電導マグネット、超電導コイル、あるいは超電導ケーブルなどの高温超電導部材などを低温に冷却するための技術として有用である。
【0002】
【従来の技術】
高温超電導を利用した超電導部材を冷却するにあたっては、冷媒(冷却媒体)として比較的安価な液体窒素(大気圧下での沸点は約77Kである。)を使用することが多い。
【0003】
この場合、一般的には真空断熱されたクライオスタットと称される大気に実質的に開放された冷却用容器に超電導部材を収容しておき、その冷却用容器内に約77Kの大気圧飽和液体窒素を注入してその液体窒素中に高温超電導部材を浸漬させ、冷却・保持するのが通常である。
【0004】
一方、高温超電導部材においては、若干でも温度が下がれば、安定な超伝導状態を維持できるなど、超電導特性に有利なことが知られている。
【0005】
そこで、特許第3208069号公報には、超電導部材を収容した冷却用容器に冷媒となる液体窒素を供給する際に、減圧手段によって内部が減圧され温度65Kとなった液体窒素を貯留する減圧用容器内の熱交換器に、温度77Kの液体窒素を導いて熱交換により冷却して、大気圧で過冷却状態の冷媒として供給する方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の冷却方法では、供給される冷媒が大気圧付近の圧力であるため、過冷却温度域を十分利用できない。また、上記に用いる冷却装置において、減圧用容器内の熱交換器に液体窒素を導くための送液ポンプを用いて液体窒素の加圧を行っているので、第2熱交換手段における冷却熱負荷が大きくなり、冷却効率が悪くなる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、冷媒を加圧・過冷却状態で使用することにより、被冷却物を効率良く冷却することができる冷却装置、及び冷却方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の冷却装置は、被冷却物を大気圧より加圧した冷媒で冷却する冷却部と、その冷却部から自圧返送された冷媒を冷却側に導いて被冷却側の流体を冷却する第1熱交換手段と、その第1熱交換手段の冷却側からの流体を加圧した後に前記第1熱交換手段の被冷却側に供給する加圧手段と、前記第1熱交換手段で冷却された流体を被冷却側に導いて前記第1熱交換手段の冷却側より低圧に気相部が減圧された冷却側の流体で冷却する第2熱交換手段と、その第2熱交換手段の冷却側の気相部を減圧する減圧手段とを備え、前記第2熱交換手段で冷却された過冷却温度、好ましくは凝固点近傍の温度の流体を加圧冷媒として前記冷却部に供給することを特徴とする。
【0009】
上記において、前記第1熱交換手段の冷却側の流体又は冷却側に供給される流体を、流量調整しつつ前記第2熱交換手段の冷却側へ導く経路を備えることが好ましい。
【0010】
一方、本発明の冷却方法は、冷却部にて被冷却物を大気圧より加圧した冷媒で冷却し、その冷却部から自圧返送され第1熱交換手段の冷却側に導いた冷媒で被冷却側の流体を冷却して自身が加温された流体を導出し、その流体を加圧した後、前記第1熱交換手段の被冷却側に供給して前記冷却を行ってから第2熱交換手段の被冷却側に導くと共に、その第2熱交換手段の冷却側の気相部を減圧手段により前記第1熱交換手段の冷却側より低圧に減圧しながら、その冷却側の流体で前記被冷却側に導かれた流体を冷却し、過冷却温度、好ましくは凝固点近傍の温度の加圧冷媒として前記冷却部に供給することを特徴とする。
【0011】
上記において、前記第1熱交換手段の冷却側の流体又は冷却側に供給される流体を、流量調整しつつ前記第2熱交換手段の冷却側へ導くことが好ましい。特に、前記第1熱交換手段の冷却側の流体を、流量調整しつつ前記第2熱交換手段の冷却側へ導くことが好ましい。
【0012】
また、前記冷媒は液体窒素又は液体空気であることが好ましく、液体窒素であることがより好ましい。
【0013】
[作用効果]
本発明の冷却装置によると、加圧手段の入口側流体と出口側流体とを第1熱交換手段にて熱交換させることで、第2熱交換手段にて冷却される被冷却側流体の予冷が行われるため、第2熱交換手段における熱負荷が低減される。従って、過冷却温度、好ましくは凝固点近傍の温度で、しかも大気圧より加圧した冷媒で被冷却物を効率良く冷却することができるようになる。
【0014】
前記第1熱交換手段の冷却側の流体などを流量調整しつつ前記第2熱交換手段の冷却側へ導く経路を備える場合、第2熱交換手段の冷却側が第1熱交換手段の冷却側より減圧されているため、その差圧を利用して容易に流体を第2熱交換手段へと流動させることができる。
【0015】
一方、本発明の冷却方法によると、上記の如き作用効果により、冷媒を加圧・過冷却状態で使用することにより、被冷却物を効率良く冷却するすることができる。
【0016】
前記第1熱交換手段の冷却側の流体又は冷却側に供給される流体を、流量調整しつつ前記第2熱交換手段の冷却側へ導く場合、第2熱交換手段の冷却側が第1熱交換手段の冷却側より減圧されているため、その差圧を利用して容易に流体を第2熱交換手段へと流動させることができ、簡易な装置構成で補給することができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の冷却装置の一例を示す概略構成図である。
【0018】
本発明の冷却装置は、図1に示すように、被冷却物34の冷却部33、第1熱交換手段10、加圧手段15、第2熱交換手段20、及び減圧手段25を備え、2段の冷却によって凝固点近くの過冷却温度まで冷却した流体を冷媒として冷却部33に再び供給するものである。
【0019】
冷却部33は、被冷却物34を大気圧より加圧した過冷却冷媒で冷却するものであればよく、冷媒貯留型冷却槽、ジャケット型冷却槽、ヘリカルコイル型冷却槽など何れの構造でもよい。本実施形態では、図1に示すように、冷媒を容器内部に貯留する冷媒貯留型冷却槽を用いる例を示す。冷却部33での冷却は、凝固点近傍の温度(過冷却温度)の加圧冷媒で行うことができる。
【0020】
被冷却物34としては、超電導トランス、超電導マグネット、超電導コイル、あるいは超電導ケーブルなどの高温超電導部材などがある。
【0021】
第1熱交換手段10としては、流体の貯留部13に熱交換部12が浸漬される型式のものが例示できる。自圧返送された冷媒は冷却側となる流体の貯留部13に導かれ、熱交換部12内の被冷却側の加圧流体と熱交換することで、被冷却側の加圧流体が冷却される。
【0022】
冷媒としては、液体窒素が好ましい。貯留部13に貯留される冷却側の流体は、流量調整のための弁11を介して貯留部13に導入され、貯留部13では流体が大気圧付近の圧力(例えば1.2barA)で維持されている。貯留部13では冷却側の流体が蒸発し、それによって流体温度が略一定に保たれる(例えば79K)。蒸発した冷却側の流体は、経路19から排出される。
【0023】
貯留部13の流体は、一部が導出されて、流量の緩衝機能を有するキャッチタンク14に導かれ、更に加圧ポンプなどの加圧手段15に導かれる。この加圧手段15では、冷却部の条件により2〜20barAの任意の圧力まで加圧が行われる。本発明では、この圧力から供給経路での圧力損失により低下する圧力にて、最終的に冷媒を冷却部33に供給することができる。
【0024】
加圧手段15で加圧された流体は、低温液体を貯留するコールドエバポレータ16に貯留される。コールドエバポレータ16に一旦、高圧の流体を貯留することにより、加圧ポンプの一時的な停止時のバックアップが可能となる。
【0025】
本発明のように冷却部33に供給した冷媒を自圧返送して再使用(リサイクル)する場合、第1熱交換手段10の貯留部13で蒸発する冷媒、及び後述の第2熱交換手段20の貯留部23で蒸発後に排気される冷媒が、リサイクル中に消費されるため、これを外部から補給する必要がある。本実施形態では、コールドエバポレータ16に対して冷媒を補給する例を示す。一方、冷却部33から自圧返送される冷媒の量と、上記冷媒の消費量とが同じ場合は、キャッチタンク14を経て加圧手段15で加圧される流体は無くなり、外部から補給した冷媒のみが、第1熱交換手段10と第2熱交換手段20とを経て、冷却部33に供給されることになる。
【0026】
このコールドエバポレータ16からの流体は、第1熱交換手段10の熱交換部12に導かれるが、その際の温度は、例えば加圧圧力が6.8barAの場合、約98Kまで上昇している。この流体は、第1熱交換手段10により冷却側の流体で冷却された後、排出されて第2熱交換手段20の熱交換部22に導かれる。
【0027】
この第2熱交換手段20としては、流体の貯留部23に熱交換部22が浸漬される型式のものが例示でき、貯留部23の冷却側の流体と熱交換部22内の被冷却側の流体と熱交換することで、被冷却側の流体がさらに冷却される。
【0028】
本実施形態では、第1熱交換手段10の冷却側の流体(又は冷却側に供給される流体)を、流量調整しつつ第2熱交換手段20の冷却側へ導く経路17を備える例を示す。当該流量調整は、弁18の開度調整により行うことができる。
【0029】
第2熱交換手段20の貯留部23には冷却側の流体が貯留され、第1熱交換手段10の冷却側より低圧に気相部が減圧されている。具体的には約0.2barAに減圧するのが好ましい。この減圧は、第2熱交換手段20の冷却側の気相部を減圧する減圧手段25により行うことができる。減圧手段25としては、バキュームポンプ、ブロアー、エジェクターなどを用いればよい。この第2熱交換手段20では、貯留部23の圧力に応じた温度(ほぼ飽和蒸気圧温度)に冷却側の流体が冷却される(例えば温度66K)。このような供給冷媒の温度としては、被冷却側の流体が凝固点近傍の温度まで過冷却されるのが好ましい。
【0030】
本発明では、図1の破線で示すように、第1熱交換手段10の冷却側に供給される流体(又は冷却側の流体)を、別の加圧手段30で加圧しつつ第2熱交換手段20の被冷却側へ導くことが可能な経路31を更に備えていてもよい。また、このような経路31への冷媒の流通を、弁11側の経路への流通と切り換え可能としたり、両経路への流量配分を調節できるようにしてもよい。
【0031】
また、本発明において、冷却部33が実用超伝導ケーブルのような長い被冷却体を冷却する場合には、例えば図2に示すような断熱配管を使用するのが好ましい。つまり、供給する加圧した冷媒の流路41(往路)に被冷却体(図示省略)を内蔵し、その流路41の外側に真空断熱層42を介して戻り冷媒の流路43(復路)を設けると共に、その流路43の外側に真空断熱層44を更に設けたものが好ましい。この多重同軸真空断熱管を利用することにより、外部からの熱浸入を大幅に抑え、加圧冷媒の温度上昇を小さくすることができる。
【0032】
一方、本発明の冷却方法は、以上のように、冷却部33にて被冷却物34を大気圧より加圧した冷媒で冷却し、その冷却部33から自圧返送され第1熱交換手段10の冷却側に導いた冷媒で被冷却側の流体を冷却して自身が加温された流体を導出し、その流体を加圧した後、前記第1熱交換手段10の被冷却側に供給して前記冷却を行ってから第2熱交換手段20の被冷却側に導くと共に、その第2熱交換手段20の冷却側の気相部を減圧手段25により前記第1熱交換手段10の冷却側より低圧に減圧しながら、その冷却側の流体で前記被冷却側に導かれた流体を冷却し、凝固点近傍の過冷却温度の加圧冷媒として前記冷却部33に供給するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の冷却装置の一例を示す概略構成図
【図2】本発明により冷媒供給する際に使用可能な配管の一例の半断面を示す斜視図
【符号の説明】
10 第1熱交換手段
15 加圧手段
17 経路(冷却側)
20 第2熱交換手段
25 減圧手段
30 加圧手段(補助用)
33 冷却部
34 被冷却物
Claims (5)
- 被冷却物を大気圧より加圧した冷媒で冷却する冷却部と、その冷却部から自圧返送された冷媒を冷却側に導いて被冷却側の流体を冷却する第1熱交換手段と、その第1熱交換手段の冷却側からの流体を加圧した後に前記第1熱交換手段の被冷却側に供給する加圧手段と、前記第1熱交換手段で冷却された流体を被冷却側に導いて前記第1熱交換手段の冷却側より低圧に気相部が減圧された冷却側の流体で冷却する第2熱交換手段と、その第2熱交換手段の冷却側の気相部を減圧する減圧手段とを備え、前記第2熱交換手段で冷却された過冷却温度の流体を加圧冷媒として前記冷却部に供給する冷却装置。
- 前記第1熱交換手段の冷却側の流体又は冷却側に供給される流体を、流量調整しつつ前記第2熱交換手段の冷却側へ導く経路を備える請求項1記載の冷却装置。
- 冷却部にて被冷却物を大気圧より加圧した冷媒で冷却し、その冷却部から自圧返送され第1熱交換手段の冷却側に導いた冷媒で被冷却側の流体を冷却して自身が加温された流体を導出し、その流体を加圧した後、前記第1熱交換手段の被冷却側に供給して前記冷却を行ってから第2熱交換手段の被冷却側に導くと共に、その第2熱交換手段の冷却側の気相部を減圧手段により前記第1熱交換手段の冷却側より低圧に減圧しながら、その冷却側の流体で前記被冷却側に導かれた流体を冷却し、過冷却温度の加圧冷媒として前記冷却部に供給する冷却方法。
- 前記第1熱交換手段の冷却側の流体又は冷却側に供給される流体を、流量調整しつつ前記第2熱交換手段の冷却側へ導く請求項3記載の冷却方法。
- 前記冷媒が液体窒素又は液体空気である請求項3又は4に記載の冷却方法。
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