JP3908378B2 - 超音波探傷装置および超音波探傷方法 - Google Patents

超音波探傷装置および超音波探傷方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は超音波探傷装置に係り、特に蒸気タービンのロータホイールの羽根植込み部に発生したクラック等の欠陥を検査する際に複数個の超音波探触子を同時に操作して検出精度を高めるようにした超音波探傷装置および超音波探傷方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
蒸気タービンではタービン運転中、ロータの回転に伴って強大な遠心力等が作用すると、ロータホイールの羽根が植込まれている部分(以下、羽根植込み部と称する)に過大な応力が生じ、そこにクラックが発生することがある。このため、ロータホイールの羽根植込部については定期検査において健全性を確認するために非破壊検査法、特に超音波探傷法による検査が実施されている。この検査ではロータホイールの全周に羽根が取り付けられており、超音波探触子の走査は全周にわたって行う必要がある。
【0003】
検査のためにタービン車室から取り出したロータの一例を図10に示している。ロータ1にはそれぞれのロータホイール2に多数の羽根3が環状列をなして装着されている。一列の羽根3が植込まれるロータホイール2と他の列の羽根3が植込まれるロータホイール2とは互いに接近し、超音波探触子(図示せず)をロータホイール2の側面に接触させて行う走査は羽根3に阻まれてすべて思いどおりにはできない。
【0004】
また、図11はロータホイール2の超音波探傷のために超音波探触子を全周走査によって操作する様子を示している。超音波探触子4はロータホイール2の一方の側面に置かれ、そこから超音波ビームUをロータホイール2の羽根植込み部5に向けて入射させる。この超音波ビームUは図12(a)(b)に示すように、羽根植込み部5に達して、もしそこに軸方向のクラック6が存在すれば、超音波ビームUがその軸方向のクラック6で反射され、反射波が超音波ビームUを発した超音波探触子4に到達することで、欠陥として検知される。この走査はロータホイール2の全周にわたって行い、また一方の側面での走査と同様な方法で反対側の側面でも実施する。
【0005】
また、反射エコーが検知された場合、さらに詳細な検査を行うために図13に示すように送波用超音波探触子4aおよび受波用超音波探触子4bを配置して再度全周にわたって走査する。送波用超音波探触子4aから発せられた超音波ビームUは図14(a)(b)に示すように、羽根植込み部5に達し、軸方向のクラック6で反射され、この反射波U´が受波用超音波探触子4bに到達することにより欠陥として検知される。この方法はピッチキャッチ法と呼ばれており、高感度で内部の欠陥を検出することが可能である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したロータホイール2の側面に1個の超音波探触子4を配置して全周走査する場合、手探傷では探触子を植込部コーナー部を安定してねらうことが難しく、十分な欠陥検出精度を得られない場合がある。また、存在する欠陥の角度によっては検出が難しい場合があり、欠陥の大きさを特定する際にも能力上問題がある。
【0007】
一方、ロータホイール2の側面に2個の送波用および受波用超音波探触子4a、4bを配置して全周走査するものは、特に内側部分のロータホイール2の走査において羽根3が操作の妨げになるなどして、精密な配置条件を保ってそれぞれの超音波探触子4a、4bを置くことができず、望ましい探傷手法でありながら、十分な検出精度が得られていないという問題がある。
【0008】
ロータホイール2の超音波探傷は蒸気タービンの定期点検期間中に、たとえば3本ないし4本ロータ1の全段落について検査する必要があるが、能率の面で劣る現状の装置では点検期間中という限られた時間にすべて検査できないこともあり、走査に置いて無駄な時間を費やさず、能率よく作業を進めることが求められている。また、ロータホイール2の直径寸法が変わるのに応じて超音波探触子4a、4bの配置条件を変更するときも、短時間のうちに最適な配置条件を確立することが可能な極めて簡便な方法が求められている。
【0009】
そこで、本発明の目的は走査における能率を格段に向上させ、しかも検出感度を良好に保持でき、最適な配置条件を短時間で確立できるようにした超音波探傷装置および超音波探傷方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために請求項1に係る発明は、ロータの外周部をまわして装着されるガイドレールと、
前記ロータのロータホイールの両側面に該ロータホイールを挟んで互いに向き合い、各々が支持脚の下部にローラを有して前記ロータの外周部に沿ってそれぞれ周方向に移動可能に設けられた第1および第2の探触子保持器と、
前記第1および第2の探触子保持器の双方を前記ロータホイールの羽根を超えた位置で互いに結ぶように設けられ、前記ロータホイールの両面で前記第1および第2の探触子保持器を前記ロータの周方向に連動して動作させると共に前記ロータの軸方向に伸縮自在に構成されたリンク機構とを備え、
前記第1および第2の探触子保持器の各々には、一方が送波用、他方が受波用として機能し、前記ロータホイールの羽根植込み部に生じた欠陥を検出する一対の超音波探触子が配設されており、
使用時、前記リンク機構を前記ロータの軸方向に伸縮させて前記探触子保持器の支持脚下部のローラを前記ガイドレール上に置くと共に該ガイドレールに沿って滑らせるように該ローラ内側側面を該ガイドローラの側面に当て、かつ該ローラの外周部を前記ロータの表面と接するように設置したことを特徴とする。
【0011】
上記構成からなる超音波探傷装置においてはリンク機構で互いに結ばれた第1および第2の探触子保持器をロータホイールの両面で連動して動作させることができる。これによりロータホイールの両面を同時に走査することが可能で、また、前記リンク機構が前記ロータの軸方向に伸縮自在に構成されることにより、前記ローラに装着されたガイドレールの位置に合わせて、前記探触子保持器の支持脚下部のローラを前記ガイドレール上に置くように調節することができるため、ロータホイールの片面づつ走査する方法と比べて能率を格段に向上させることができる。また、支持脚の各ローラがそれの側面でガイドレールに当り、外周部でロータの表面と接して滑ることから、第1および第2の探触子保持器がロータの軸方向にふれながら動くのを防ぐことができ、超音波探触子を常時ロータホイールと接触させることが可能である。
【0012】
さらに、請求項2に係る発明は第1および第2の探触子保持器が伸縮自在な2本の支持脚と、支持脚間にわたして設けられ、超音波探触子を横方向に移動可能に、かつ回動可能に保持するアームとを備え、超音波探触子がロータホイールの半径方向および周方向に各々個別に位置を変えられ、しかも超音波ビームの入射方向および反射波の受波方向をそれぞれ単独に定められるようにしたことを特徴とするものである。
【0013】
上記構成からなる超音波探傷装置においては超音波探触子がロータホイールの半径方向および周方向に各々個別に位置を変えることができ、しかも超音波ビームの入射方向および反射波の受波方向をそれぞれ単独に定めることができる。これによりどのような形状のロータに対しても最適な配置条件のもとで高い検出感度を保って探傷することが可能である。
【0014】
また、請求項3に係る発明は第1の探触子保持器の2個の超音波探触子と第2の探触子保持器の2個の超音波探触子とをロータホイールを挟み互いに向き合うように設け、一の超音波探触子から超音波ビームをロータホイールの羽根植込み部に存在する欠陥に向けて入射し、反射波を他の超音波探触子で受波するようにしたことを特徴とするものである。
【0015】
上記構成からなる超音波探傷装置においてはロータホイールの羽根植込み部に存在する欠陥を様々な方向から探傷することにより的確に検出することができる。
【0018】
また、請求項に係る発明は第1および第2の探触子保持器が2本の支持脚の外面にそれぞれ設けられた可動フックおよび固定フックと、固定フックから可動フックにかけてロータの外周部をまわして巻装され、互いに間隔をあけて装着される多数のローラを有するバンドと、可動フックと連結して設けられ、バンドの緩みを取り除く緊締手段とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
上記構成からなる超音波探傷装置においてはバンドの各ローラが内側側面でガイドレールあるいはパッキンに当り、外周部でロータの表面と接して滑るので、第1および第2の探触子保持器がロータの軸方向にふれながら移動するのを防ぐことができ、超音波探触子を常にロータホイールと安定して接触させることが可能である。
【0020】
さらに、請求項に係る発明は第1および第2の探触子保持器が2本の支柱と、支柱間にわたして設けられ、それぞれ超音波探触子を横方向に移動可能に、かつ回動可能に保持するアームとを備えることを特徴とするものである。
【0021】
上記構成からなる超音波探傷装置においては支持脚に代わる簡素な支柱で構成しているので小形でしかも安価な装置を提供することができる。
【0022】
また、請求項に係る発明は第1および第2の探触子保持器が逆Y字状の支柱と、支柱の両側に横方向に延ばして設けられ、それぞれ超音波探触子を横方向に移動可能に、かつ回動可能に保持するアームとを備えることを特徴とするものである。
【0023】
上記構成からなる超音波探傷装置においては支持脚に代わる簡素な支柱で構成しているので、小形で、しかも安価な装置を提供することができる。
【0024】
さらに、請求項に係る発明は請求項1の超音波探傷装置を用いてロータホイールの羽植込み部の欠陥を超音波探傷するに際して、前記超音波探触子の位置および角度を決定する際、別に用意する試験対象ロータの羽根植込部の形状を模擬した矩形の小型試験片を用いてその小型試験片に導入された人工欠陥に対してさまざまな条件で探傷を行い、あらかじめ最適な探傷条件設定を行うことを特徴とするものである。
【0025】
上記手法による超音波探傷方法においては超音波探傷装置を前記ロータに装着する前にロータを使うことなく、製作が容易な矩形の小型試験片を用いて超音波探触子の位置、首振り角、探傷感度を調整することができる。
【0030】
さらに、請求項に係る発明は請求項記載のロータシャフトの外周部をまわして装着されたガイドレールに沿って請求項1記載の超音波探傷装置を前記超音波探触子がロータホイール側面から離れないように走査させ、羽根植込部に生じた欠陥を検出することを特徴とするものである。
【0031】
上記手法による超音波探傷方法においては前記超音波探傷装置はガイドレールに沿って移動し、前記超音波探触子がロータホイール側面から離れることなく走査できるので、360度連続して安定した探傷データを得ることができる。
【0032】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1において、超音波探傷装置はロータホイール2の両側面に当接して置かれる、2個の超音波探触子11a、11bおよび11c、11dを保持するための第1の探触子保持器12aおよび第2の探触子保持器12bを有する。この第1および第2の探触子保持器12a、12bはロータホイール2を挟み正確に向き合って配置されている。また、第1および第2の探触子保持器12a、12bは超音波探触子11a、11bおよび11c、11dによる走査の間、それぞれの動きを連動させるために羽根3を超えた位置でリンク機構13によって互いに結ばれている。
【0033】
さらに、超音波探傷装置はロータ1の外周部をまわして装着される2本のガイドレール14a(他方の14bは図示せず)を備えている。第1および第2の探触子保持器12a、12bはこのガイドレール14a、14b上に搭載されており、走査の間、第1および第2の探触子保持器12a、12bに備えられる後記のローラがそれに沿って滑るように構成されている。
【0034】
一方、図2および図3に第1の探触子保持器12aおよびリンク機構13の詳細を示している。この第1の探触子保持器12aはそれぞれローラ15を備えた伸縮自在に構成される、2本の入れ子式支持脚16a、16bと、この2本の支持脚16a、16bの最上部にわたすブリッジ材17と、支持脚16a、16bの縦方向のほぼ中間にわたす横方向のアーム18と、このアーム18に装着される、超音波探触子11a、11bを保持するためのそれぞれ締結ナット19を備えたホルダ20a、20bとから構成されている。
【0035】
上記の2本の支持脚16a、16bに装着したローラ15はそれの内側側面がガイドレール14aの側面に当たる一方、外周部がロータ1の表面と接している(図2参照)。また、2個のホルダ20a、20bはアーム18のロータ半径方向に自由に滑らせることができると共に、ホルダ20a、20bの枢軸を中心として回動させて任意の角度ψで締結ナット19を用いて固定することができるようになっている。
【0036】
さらに、リンク機構13は図3に示すように第1の探触子保持器12aのブリッジ材17に固定された第1のリンク部材21と、第2の探触子保持器12bのブリッジ材17に固定された第2のリンク部材22と、第1のリンク部材21と第2のリンク部材22との間にわたす、伸縮自在に構成される横方向の2本の入れ子式連結部材23とからなる。
【0037】
一方、第1の探触子保持器12aとロータホイール2を挟んで向き合う第2の探触子保持器12bは上記の第1の探触子保持器12aと同様な構成を備えている。これらの構成中、アーム18およびホルダ20a、20bは図3に示すように対称位置に取り付けられる。
【0038】
本実施の形態は上記構成からなり、ロータホイール2の超音波探傷にあたり、ロータホイール2の側面に近いロータ1の外面にそれぞれガイドレール14a、14bを装着する。なお、ロータ1の表面に形成される、たとえば凸形状のパッキンが利用できるときはこの作業は省略することができる。次に、この2本のガイドレール14a、14bに合わせてリンク機構13の連結部材23の長さを調節しながら、それぞれ支持脚16a、16bに備えられるローラ15a、15bをガイドレール14a、14b上に置いてロータホイール2を挟んで向き合う位置に第1および第2の探触子保持器12a、12bをセットする。
【0039】
このとき、ロータ1の直径寸法がロータホイール2の両側で異なるときは寸法の小さい方の支持脚16aを長く延ばして第1および第2の探触子保持器12a、12bの傾きをなくしてロータホイール2の側面に倣う正しい姿勢を保つようにする。また、この支持脚16a、16bの長さを調節するとき、第1および第2の探触子保持器12a、12bのすべての超音波探触子11a、11bおよび11c、11dがロータホイール2の半径方向に同じ位置で揃うように位置決めする。
【0040】
次に、羽根植込み部5の頂部に超音波ビームに向ける送波用超音波探触子11aおよび反射波を受ける受波用超音波探触子11bの位置および角度ψを定めるべく、超音波探触子11a、11bを支えているホルダ20a、20bを周方向に移動させる。ロータホイール2の直径が小さく、羽根植込み部5までの距離を短くする必要があるときは互いの位置が近づくように、それぞれホルダ20a、20bを動かし、ロータホイール2の直径が大きく、羽根植込み部5までの距離を長くしなければならないときは互いの位置が離れるように、それぞれホルダ20a、20bを周方向に動かす。
【0041】
また、ホルダ角度の微妙な調節は枢軸21a、21bを中心としてホルダ20a、20b自身を回動させて所定の角度ψを保てるように調節する。超音波ビームの方向が羽根植込み部5の頂部に正しく向いていることを確かめて締結ナット19を締め付けてホルダ20a、20bを固定する。こうして、第1の探触子保持器12aおよび第2の探触子保持器12bの双方について超音波探触子11a、11bおよび11c、11dの位置および角度ψを調節した後、それぞれ2個の超音波探触子11a、11bをロータホイール2に接触させて走査する。
【0042】
この走査中第1および第2の探触子保持器12a、12bの各ローラ15は、それの側面でガイドレール14a、14bに当り、外周部でロータ1の表面と接して滑ることから、第1および第2の探触子保持器12a、12bがロータ1の軸方向にふれながら動くのを防ぐことができる。これにより超音波探触子11a、11bおよび11c、11dを常時ロータホイール2と接触させることが可能になる。
【0043】
本実施の形態においてはリンク機構13で互いに結ばれた第1および第2の探触子保持器12a、12bはロータホイール2の両面で連動して動作させることが可能であって、各探触子保持器12a、12bに備えられる超音波探触子11a、11bおよび11c、11dによりロータホイール2の両面を同時に全周にわたり走査することができ、片面ずつ操作する方法と比べて能率を格段に向上させることが可能である。
【0044】
また、送波用超音波探触子11aからの超音波ビームがクラック等で反射し、その反射波が別の受波用超音波探触子11bに送波されるので、羽根植込み部5に存在する微小なクラックを様々な方向から探傷することで、より的確に検出することができる。
【0045】
さらに、ロータ1の段落毎にロータホイール2の直径寸法が変わるのに応じて超音波探触子11a、11bの配置条件を変更するときも、伸縮自在の脚部16a、16bの長さを調節し、また、超音波探触子11a、11bを保持するホルダ20a、20bの位置および角度を調節することで、短時間のうちに最適な配置条件を確立することが可能である。
【0046】
このように本発明の形態によれば、ロータホイール2の両面で第1および第2の探触子保持器12a、12bを連動して動かすことができ、それぞれの超音波探触子11a、11bおよび11c、11dでのロータホイール2の両面を同時に全周にわたり走査することにより能率を格段に向上させることができる。
【0047】
また、段落毎にロータホイール2の直径寸法が変わるのに応じて超音波探触子11a、11bの配置条件を変更するときも、最適な配置条件を短時間で確立することができる。
【0048】
さらに、本発明の望ましい実施の形態を説明する。図4および図5(a)において、超音波探傷装置は上記実施の形態と同様なそれぞれ2個の超音波探触子11a、11bおよび11c、11dを保持する第1の探触子保持器12aおよび第2の探触子保持器12bを有する。この第1および第2の探触子保持器12a、12bの双方はそれの上部に配置されるリンク機構13によって互いに結ばれている。
【0049】
本実施の形態の支持脚16a、16bはそれの外面に可動フック24aおよび固定フック24bを有する。この可動フック24aと固定フック24bとの間にロータ1の外周部をまわして多数のローラ25を有するバンド26a、26bが設けられている。このバンド26a、26bは可動フック24aをブリッジ材17側に引き寄せたとき、各ローラ25の内側側面がパッキン27の側面に当たり、外周部がロータ1の表面と接するようになっている(図5(b)参照)。可動フック24aはバンドの緩みを取り除く緊締手段としてブリッジ材17にわたす締結ねじ28と、この締結ねじ28と螺合する締結ナット29とを備えている。
【0050】
本実施の形態は上記構成からなり、ロータホイール2の超音波探傷にあたり、2条のパッキン27に合わせてリンク機構13の長さを調節しながら、それぞれ支持脚16a、16bの各ローラ15をパッキン27上に置いてロータホイール2を挟んで向き合う位置に第1および探触子保持器12a、12bをセットする。次に、2本のバンド26a、26bをロータ1の外面をまわして可動フック24aと固定フック24bとの間に掛けわたす。このとき、バンド26a、26bの各ローラ25をパッキン27上に正しく置く。
【0051】
次に、可動フック24aの締結ナット29を回してバンド26a、26bの緩みを除き、各ローラ25をロータ1の表面に軽く押し付ける。
【0052】
こうして、第1および第2の探触子保持器12a、12bを固定した後、送波用超音波探触子11aからの超音波ビームが羽根植込み部5の頂部に、また欠陥からの反射波が受波用超音波探触子11bにそれぞれ向くように、超音波探触子11a、11bの位置および角度を調節する。この調節作業は上記実施の形態のものと同様に進めることができる。
【0053】
特に、本実施の形態においてはロータディスク2の全周走査中、4本の支持脚16a、16bの各ローラ15a、15bと共に、2本のバンド26a、26bに備えられる各ローラ25がそれの側面でパッキン27に当たり、外周部でロータ1と接して滑るので、第1および第2の探触子保持器12a、12bがロータ1の軸方向にふれながら移動するのを防ぐことができる。これにより超音波探触子11a、11bおよび11c、11dを常に安定にロータホイール2と接触させることができ、1回の走査により正確なデータを得ることが可能になる。
【0054】
このように本実施の形態によれば、上記実施の形態の効果に加えて、第1および第2の探触子保持器12a、12bがロータ1の軸方向にふれながら移動するのを防ぐことができ、超音波探触子11a、11bおよび11c、11dを常に安定してロータホイール2と接触させることが可能である。
【0055】
さらに、本発明の望ましい他の実施の形態を説明する。図6において、第1の探触子保持器30はそれぞれローラ15を備えた2本の支柱31a、31bと、この2本の支柱31a、31bの最上部にわたすブリッジ材32と、支柱31a、31bの縦方向のほぼ中間にわたす横方向のアーム33とから構成されている。
【0056】
本実施の形態では超音波探触子11a、11bはホルダを介さずに直接アーム33に締結ナット19を用いて固定されている。なお、これは上記実施の形態と同様にホルダを用いてアーム33に固定してもよい。
【0057】
また、図示しない第2の探触子保持器も第1の探触子保持器30と同様に構成される。さらに、第1の探触子保持器30および第2の探触子保持器の双方はリンク機構13によって互いに結ばれている。
【0058】
本実施の形態は上記構成からなるもので、第1の探触子保持器30および第2の探触子保持器が簡素な支柱31a、31b等からなり、小形で、しかも安価な装置を提供することができる。ホルダを用いずに超音波探触子11a、11bを直接アーム33に保持するので、双方が接触しない範囲でぎりぎりまで近づけることができ、小容量の蒸気タービンの、特に直径寸法が小さいロータホイール2を探傷する場合にその特徴を活かし、有効な働きを得ることが可能である。
【0059】
さらに、本発明の望ましい他の実施の形態を説明する。図7において、第1の探触子保持器34はそれぞれローラ15を備えた逆Y字状の支柱35と、この支柱35の縦方向のほぼ中間にあって横方向に延びる2本のアーム36とから構成されている。本実施の形態においても超音波探触子11a、11bはホルダを介さずに直接アーム36に締結ナット19を用いて固定されている。
【0060】
また、図示しない第2の探触子保持器も第1の探触子保持器34と同様に構成され、第1の探触子保持器34および第2の探触子保持器の双方はリンク機構(図示せず)によって互いに結ばれている。
【0061】
本実施の形態は上記構成からなるもので、上記実施の形態(図6参照)と同様に小形で、しかも安価な探触子保持器を提供することができる。
【0062】
また、ホルダを用いずに超音波探触子11a、11bをアーム36に保持するので、特に直径寸法の小さいロータホイール2を探傷するような場合にその特徴を活かし、有効な働きを得ることが可能である。
【0063】
さらに、本発明の他の実施の形態を説明する。図8において、超音波探触子11a、11bの最適な配置条件を得る校正用探触子保持器37はそれぞれローラ38を備えた2本の支柱39と、この支柱39の間にわたされるアーム40とから構成されている。超音波探触子11a、11bはアーム40に締結ナット19を用いて固定されている。さらに、校正用探触子保持器37は校正用試験片41を有する。この校正用試験片41は超音波探触子11a、11bの最適な配置条件を得るために探傷対象のロータホイールの羽根植込み部を模擬して作られている。
【0064】
上記構成からなる校正用探触子保持器37は次のように用いる。欠陥検出の成否の鍵を握るのは超音波探触子11a、11bの配置条件であり、最適な配置条件を羽根植込み部を模擬して作る校正用試験片41を用いた走査によって調べる。超音波ビームを、たとえば超音波探触子11aから校正用試験片41の頂部に向けて発射する。校正用試験片41の頂部には予め傷(人工欠陥)が作られており、超音波ビームはその傷で反射され、この反射波が超音波探触子11bに到達する。
【0065】
様々な頂部−超音波探触子間距離L、傷の位置、深さなどについて予め位置および角度ψをどの値としたとき感度がよく、他の値では感度が低いかを数多く調べる等の方法で必要なデータを得てこれを実機におけるロータホイールの走査に利用する。
【0066】
本実施の形態においては数多くの探傷条件を模擬した試験により予め得たデータを用いることで、実機で超音波探触子11a、11bの最適な配置条件を見出す方法と比べて走査準備のために要する時間を大きく短縮することができる。
【0067】
さらに、本発明の実施の形態を説明する。図9(a)(b)(c)において超音波探触子11a、11b、11c、11dはそれぞれロータホイール2の両側面から羽根植込部に向けられて配置されている。
【0069】
【発明の効果】
以上説明したように本発明はロータホイールの両側面にロータホイールを挟んで互いに向き合う第1および第2の探触子保持器を設け、それぞれの探触子保持器に2個の超音波探触子を横方向に移動可能、かつ回動可能に装着し、第1および第2の探触子保持器の双方を羽根を超えた位置でリンク機構で互いに連結するようにしたので、第1および第2の探触子保持器をロータホイールの両面で連動して動作させることが可能で、ロータホイールの両面を同時に走査することができる。また、前記リンク機構を前記ロータの軸方向に伸縮自在に構成することで前記ロータに装着されたガイドレールの位置に合わせて調整することができる。したがって、本発明によれば、ロータホイールの片面ずつ操作する方法と比べて能率を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超音波探傷装置の実施の形態を示す斜視図。
【図2】図1に示される超音波探傷装置の正面図。
【図3】図1に示される超音波探傷装置の側面図。
【図4】本発明の他の実施の形態を示す正面図。
【図5】(a)は図4に示されるバンドの詳細を示す側面図。(b)はローラの詳細を示す側面図。
【図6】本発明の他の実施の形態を示す正面図。
【図7】本発明の他の実施の形態を示す正面図。
【図8】本発明に係る校正用探触子保持器および試験片による校正方法を説明するための図。
【図9】(a)(b)(c)は本発明に係る超音波探触子の配置を示すための図。
【図10】従来のタービンロータの一例を示す斜視図。
【図11】従来のタービンロータの超音波探傷方法を示す摸式図。
【図12】(a)(b)は従来の走査方法における超音波ビームの挙動を説明するための図。
【図13】従来の別の超音波探傷方法を示す摸式図。
【図14】(a)(b)は従来の別の走査方法における超音波ビームの挙動を説明するための図。
【符号の説明】
1 ロータ
2 ロータホイール
11a、11b、11c、11d 超音波探触子
12a、30、34 第1の探触子保持器
12b 第2の探触子保持器
13 リンク機構
16a、16b 支持脚
18、33、36 アーム
26a、26b バンド
31a、31b、35 支柱

Claims (8)

  1. ロータの外周部をまわして装着されるガイドレールと、
    前記ロータのロータホイールの両側面に該ロータホイールを挟んで互いに向き合い、各々が支持脚の下部にローラを有して前記ロータの外周部に沿ってそれぞれ周方向に移動可能に設けられた第1および第2の探触子保持器と、
    前記第1および第2の探触子保持器の双方を前記ロータホイールの羽根を超えた位置で互いに結ぶように設けられ、前記ロータホイールの両面で前記第1および第2の探触子保持器を前記ロータの周方向に連動して動作させると共に前記ロータの軸方向に伸縮自在に構成されたリンク機構とを備え、
    前記第1および第2の探触子保持器の各々には、一方が送波用、他方が受波用として機能し、前記ロータホイールの羽根植込み部に生じた欠陥を検出する一対の超音波探触子が配設されており、
    使用時、前記リンク機構を前記ロータの軸方向に伸縮させて前記探触子保持器の支持脚下部のローラを前記ガイドレール上に置くと共に該ガイドレールに沿って滑らせるように該ローラ内側側面を該ガイドローラの側面に当て、かつ該ローラの外周部を前記ロータの表面と接するように設置したことを特徴とする超音波探傷装置。
  2. 前記第1および第2の探触子保持器が伸縮自在な2本の支持脚と、前記支持脚間にわたして設けられ、前記超音波探触子を横方向に移動可能に、かつ回動可能に保持するアームとを備え、前記超音波探触子が前記ロータホイールの半径方向および周方向に各々個別に位置を変えられ、しかも超音波ビームの入射方向および反射波の受波方向をそれぞれ単独に定められるようにしたことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
  3. 前記第1の探触子保持器の2個の超音波探触子と前記第2の探触子保持器の2個の超音波探触子とを前記ロータホイールを挟み互いに向き合うように設け、一の前記超音波探触子から超音波ビームを前記ロータホイールの羽根植込み部に存在する欠陥に向けて入射し、反射波を他の前記超音波探触子で受波するようにしたことを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
  4. 前記第1および第2の探触子保持器が2本の前記支持脚の外面にそれぞれ設けられた可動フックおよび固定フックと、前記固定フックから前記可動フックにかけて前記ロータの外周部をまわして巻装され、互いに間隔をあけて装着される多数のローラを有するバンドと、前記可動フックと連結して設けられ、前記バンドの緩みを取り除く緊締手段とを備えることを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
  5. 前記第1および第2の探触子保持器が2本の支柱と、前記支柱間にわたして設けられ、それぞれ前記超音波探触子を横方向に移動可能に、かつ回動可能に保持するアームとを備えることを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
  6. 前記第1および第2の探触子保持器が逆Y字状の支柱と、前記支柱の両側に横方向に延ばして設けられ、それぞれ前記超音波探触子を横方向に移動可能に、かつ回動可能に保持するアームとを備えることを特徴とする請求項1記載の超音波探傷装置。
  7. 請求項1の超音波探傷装置を用いてロータホイールの羽植込み部の欠陥を超音波探傷するに際して、前記超音波探触子の位置および角度を決定する際、別に用意する試験対象ロータの羽根植込部の形状を模擬した矩形の小型試験片を用いてその小型試験片に導入された人工欠陥に対してさまざまな条件で探傷を行い、あらかじめ最適な探傷条件設定を行うことを特徴とする超音波探傷方法。
  8. 請求項1記載のロータシャフトの外周部をまわして装着されたガイドレールに沿って請求項1記載の超音波探傷装置を前記超音波探触子がロータホイール側面から離れないように走査させ、羽根植込部に生じた欠陥を検出することを特徴とする超音波探傷方法。
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