JP3908119B2 - 有機金属錯体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、有機金属錯体に関し、特に核酸の結合および切断薬として有用な有機金属錯体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
DNAを切断し得る遷移金属錯体が、「ケミカルヌクレアーゼ」として広く知られている(Pyle & Barton (1990) Prog. Inorg. Chem. 38: 413、Sigman et al. (1987) Acc. Chem. Res. 26: 98、Stubbe & Kozarich (1987) Chem. Rev. 87: 1107等)。これらの錯体はDNAに強く結合し、ついで種々の条件下でDNAを切断する。例えば、遷移金属錯体は、アクリジンオレンジ(Lippard etal. (1984) J. Am. Chem. Soc. 106: 6102)、X線照射(Grokhovsky & Zubarev (1991) Nucl. Acids Res. 19: 257)、または光分解条件下(Rudnicki et al. (1991) Bioorg. Med. Chem. Lett. 1: 451、またはThorp et al. (1995) J. Am. Chem. Soc. 117: 11673)等のDNA切断モチーフと連動してDNAを切断することができる。
【0003】
さらに、上記遷移金属錯体は、抗癌作用をも有している場合がある(Bruhn et al. (1987) Prog. Inorg. Chem. 38: 477、Sherman & Lippard (1987) Chem Rev. 87: 1153等)。例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン(すなわち、白金錯体)が、精巣および卵巣の癌の治療に日常的に使用されてきた(Christian (1992) Semin. Oncol. 19: 720、Barnard (1989) J. Plat. Met. Rev. 33: 162)。加えて、多くのシスプラチン誘導体が、副作用を低減し耐性を減少させた新規な抗癌剤として開発されてきた(Reedijk (1996) J. Chem. Soc., Chem. Commun. 801、Hambley (1997) Coord. Chem. Rev. 166: 181)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、新規な有機金属錯体および当該有機金属錯体の核酸の結合および切断薬としての用途を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、核酸の結合および切断薬として有用な有機金属錯体に関する。
【0006】
本発明の1つは、式
【0007】
【化5】
Figure 0003908119
【0008】
(式中、MはPt、Pd、Ni、CoまたはCuであり、Xは(A1およびA2原子を含んで)アリール、ヘテロアリール、シクリル(cyclyl)またはヘテロシクリル(heterocyclyl)であり、Yはハロゲン、トシレート、メシレート、トリフレート、ピロホスフェート、またはカルボキシレートであり、A1およびA2はそれぞれ独立してNまたはCであり、A3またはA4はそれぞれ独立してN、SまたはOであり、かつ、A1、A2、A3およびA4は一緒になって1つの正電荷を有しており(例えばN+ のように、電荷は4原子のうちの1つにより担われている)、R1およびR2はそれぞれ独立してアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシル、アリールオキシル、ヘテロアリールオキシル、アルコキシルカルボニル、アリールオキシルカルボニルまたはヘテロアリールオキシルカルボニルである。)
で表される有機金属錯体である。
【0009】
式(I)に含まれる有機金属錯体の一部は、MがPtであることを特徴とするものである。これらの錯体では、Xはピリジニルであり、A1およびA2の1つはNであり、Yはハロゲンであり、R1およびR2はそれぞれ独立してアルキルである。本発明の有機金属錯体の一例は、PtCl(DMSO)[η2−C54SN(O)]である。
【0010】
【化6】
Figure 0003908119
【0011】
上記のアルキル、アリール、ヘテロアリール、シクリル(cyclyl)、ヘテロシクリル(heterocyclyl)、アルコキシル、アリールオキシル、ヘテロアリールオキシル、アルコキシルカルボニル、アリールオキシルカルボニルまたはヘテロアリールオキシルカルボニルは、置換されたものおよび無置換のものを含む。ここで、アルキルとは、1〜6個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状の炭化水素基である。また、「置換された」とは、1つまたは複数の置換基(それらは同一であってもよいし異なっていてもよい)で水素原子が置換されていることをいう。このような置換基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、ニトロ、C1〜C6のアルキル、C1〜C6のアルケニル、C1〜C6のアルコキシル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル(heterocyclyl)等が挙げられ、アルキル、アルケニル、アルコキシル、アリール、ヘテロアリールおよびヘテロシクリル(heterocyclyl)は、さらにC1〜C6のアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、シアノまたはニトロで置換されていてもよい。「アリール」とは、少なくとも1つの芳香族環を含む炭化水素環系をいう。アリールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル、ナフチル、ピレニル等が挙げられる。「ヘテロアリール」とは、O、NまたはSのような少なくとも1つのヘテロ原子を含む少なくとも1つの芳香族環を有する炭化水素環系をいう。ヘテロアリールとしては、特に限定されるものではないが、例えば、ピリジニル、カルバゾリル、インドリル等が挙げられる。
【0012】
式(I)の有機金属錯体の塩もまた、本発明の範囲に含まれるものである。そのような塩は、例えば、錯体上の正電荷の置換基(例えばスルホキシド)と陰イオンとにより形成することができる。このような陰イオンの例としては、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、亜硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩等がある。同様に、正電荷置換基は陽イオンと塩を形成することができる。陽イオンは、特に限定されるものではないが、好適には、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、テトラメチルアンモニウム等のアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0013】
本発明はまた、核酸の結合および切断方法である。当該方法は、核酸を上記有機金属錯体の1つまたは複数と接触させる工程を含むものである。核酸の切断は、核酸に結合した有機金属錯体のUV照射によって達成することができる。ここで、核酸とは、DNAまたはRNAを含むプリン体であり、1本鎖、2本鎖または一部が1本鎖で一部が2本鎖であってもよい。具体的には、本発明の方法は、5〜8のpH値を有する緩衝液中において行われ、前記切断は、300nmを超過する波長のUV光を用いて行われる。
【0014】
本発明のその他の特徴、目的および効果は、特許請求の範囲および発明の詳細な説明の記載から明らかになるであろう。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、有機金属錯体および核酸の結合および切断薬としてのその用途に関するものである。本発明の有機金属錯体は、ここに述べる合成方法を含む周知の方法により製造することができる。
【0016】
有機金属錯体は、例えば、以下の方法により製造することができる。すなわち、メルカプトおよび酸化物で置換したへテロアリールをK2PtCl4溶液に添加する。添加は暗所で行う。次いで、R1、R2置換スルホキシドを当該溶液に添加し、所望の有機金属錯体を製造する。下記式は、本発明の有機金属錯体の合成工程を示すものである。
【0017】
【化7】
Figure 0003908119
【0018】
本発明の有機金属錯体は、核酸の結合または切断薬として用いることができる。一般には、該有機金属錯体は、核酸のプリン体のヘテロアリール環に結合する。結合は、遷移金属と窒素等のヘテロ原子間の配位結合によるものである(錯体1を参照)。該有機金属錯体は、アデニンの6位のアミノと結合する。UV照射なしでは、質量分析により、結合から生じる核酸切断のシグナルが見られないことが示された。UV照射を行うと、分子内環化が起こり、核酸切断が誘導される。さらに、遷移金属錯体はまた、外部塩基(例えば、ピペリジン)の存在下で、グアニンを標的にする。錯体は、特にグアニンの2位のアミノと結合するばかりでなく、外部塩基の存在下でUV照射のもと切断反応も生じさせる(後述する実施例を参照)。
【0019】
切断された核酸産出物(切れ目の入った核酸)は、少なくとも1つの切れ目、すなわち、2つの隣接する塩基が共有結合していない部分、を有しており、それは、変性ポリアクリルアミドゲルを用いることにより検出することができる(Molecular Cloning, 2nd Ed. Sambrook et al. eds. Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。ゲル電気泳動もまた、蛍光または放射性ラベルで標識した切れ目の入った核酸を、分離、検出することができる。
【0020】
本発明の遷移金属錯体は、インビトロで核酸(例えばDNA)を結合および切断することができる。金属錯体と細胞DNAとの選択的相互作用により腫瘍細胞が死滅することが知られている(Reedijk (1992) Inorganica Chimica Acta 198−200: 873、Wong & Giandomenico (1999) Chem Rev 99: 2351)。ゆえに、本発明は、有効量の少なくとも1つの本発明の前記遷移金属錯体および医薬的に許容される担体を含む腫瘍治療用医薬組成物をも提供するものである。本発明の範囲にはまた、腫瘍治療の必要な患者に有効量の前記錯体を投与する方法も含まれるものである。ここで、「有効量」とは、患者に治療効果を発現させるために必要な前記錯体の量をいう。
【0021】
さらに、前記遷移金属錯体はまた、短い核酸フラグメントを生成するための核酸鋏として用いることができる。質量分析、マイクロアレイ等の種々の新技術は、分析または配列決定に、短い核酸フラグメントを利用している(例えば、Nordhoff (1996) Trends Anal. Chem. 15: 240、Ramsay (1998) Nat. Biotechnol. 16: 40、Marshall & Hodgson (1998) Nat. Biotechnol 16: 27等)。ゆえに、本発明の遷移金属錯体は、これらの新技術に対して有用である。前記錯体は、例えば、癌またはウイルス疾患の検査において、遺伝子チップに用いることができる。
【0022】
以下の実施例は、単に例示と解釈されるべきものであって、いかなる場合においても本発明の開示を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本開示に基づいて容易に本発明を最大範囲まで利用することができる。ここに引用した文献は、その全範囲がここに引用されるものである。
【0023】
【実施例】
有機プラチナ錯体PtCl(DMSO)[η 2 −C 5 4 SN(O)]の合成
2−メルカプトピリジンN−オキシド・ナトリウムのN,N−ジメチルホルムアミド溶液(10ml)に、K2PtCL4(415mg、1.00mmol)の水溶液(100ml)を暗所で1.0時間かけてゆっくり添加した。ついで、得られた溶液にジメチルスルホキシド(DMSO)(1.0ml)を添加し、3日間撹拌した。得られた溶液の溶媒を減圧下除去して生成物を得た。生成物はシリカゲルを充填したカラムクロマトグラフィー(溶離液はCH2CL2100%)を用いて精製し、黄色粉末のPtCl(DMSO)[η2−C54SN(O)](錯体1)を得た(408mg、0.940mmol、収率94%)。
【0024】
元素分析(PtC710NO22):
(計算値)C:19.34、H:2.32、N:3.22、
(分析値)C:19.56、H:2.18、N:3.10。
【0025】
質量分析(FAB、195Pt、37Cl)m/z:
436(M+)、399(M+−Cl)、305(M+−L)。
【0026】
結晶構造:単位格子を2分子で構成、C142012244Pt2
M=869.64、三斜昌系、空間群P1、格子定数:
a=10.249(3)Å、b=10.963(5)Å、c=11.083(3)Å、
α=82.71(3)°、β=76.183(21)°、γ=76.64(3)°、
V=1171.1(7)A3、Z=2、Dc=2.462gcm-3、T=298K、
λ=0.71069Å、μ(Mo/Ka)=12.6336nm-1
Enraf−noniusCAD4回折計:20max=45.0°、
3259回復観測、1861観測(R=0.057、ωR(F2)=0.059)。
【0027】
PtCl(DMSO)[η2−C54SN(O)]の構造を単結晶X線回折分析により確認した。1−ヒドロキシピリジン−2−チオンは、Pt金属原子と等価の3つの電子(すなわち、1つの電子はチオレートの中心、2つの電子は酸素原子)が付与されていた。
【0028】
1本鎖DNA切断
種々のpHでの切断:
スーパーコイル環状φX174RFIDNA原液(50μM/塩基対)、錯体1(5.0μM)、およびリン酸緩衝液(0.10M、pH5.0、6.0、7.0および8.0)を含む反応混合物(10ml)をパイレックス(登録商標)バイアル中で37℃で予め保温した。ついで、室温で、反応混合物に350nmのUV光(32−W)を2時間照射した。ゲルローディング緩衝液(0.25%ブロモフェノールブルー、0.25%キシレンシアノールおよび30%グリセロール)を添加後、反応混合物を1%アガロースゲルにロードし、臭化エチジウムにより染色した。ゲルを312nmのUV透照器で視覚化し、FB−PDC−34カメラで撮影した。スーパーコイル環状DNAおよび切断DNAがゲルから明瞭に観測された。結果は、反応混合物のpHが5.0、6.0または7.0のときは切断DNAのみが観測され、反応混合物のpHが8.0のときはスーパーコイル環状DNAと切断DNAの両方が観測されることを示した。
【0029】
種々の錯体濃度での切断:
スーパーコイル環状φX174RFIDNA原液(50μM/塩基対)、錯体1(0.050〜100μM)、およびリン酸緩衝液(0.10M、pH6.0)を含む反応混合物(10ml)をパイレックス(登録商標)バイアル中で37℃で事前保温した。ついで、室温で、反応混合物に350nmのUV光(32−W)を2時間照射した。ゲルローディング緩衝液(0.25%ブロモフェノールブルー、0.25%キシレンシアノールおよび30%グリセロール)を添加後、反応混合物を1%アガロースゲルにロードし、臭化エチジウムにより染色した。ゲルを312nmのUV透照器で視覚化し、FB−PDC−34カメラで撮影した。スーパーコイル環状DNA(I型)および切断DNA(II型)がゲルから明瞭に観測された。結果を表1にまとめた。
【0030】
【表1】
Figure 0003908119
【0031】
結果は、錯体1は、pH依存的(pH5.0〜8.0)にDNAを切断し、酸性(pH5.0〜7.0)でその効果が強い。意外なことに、本有機金属錯体は、1.0μMの濃度でさえ非常に強いDNA切断活性を示した。さらに、暗所では1本鎖DNAの切断は起こらなかった。
【0032】
座位特異的DNA切断
pBR322DNAの501〜660フラグメントから160−bp dsDNAフラグメントを取得して、ポリメラーゼ連鎖反応により増殖し(Bailly & Waring (1995) J.Am. Chem. Soc. 117: 7311、Bailly et al. (1993) J. Am. Chem. Soc. 115: 3784およびSayers & Waring (1993) Biochemistry 32: 9094)、γ−[32P]−ATPおよびT4ポリヌクレオチドキナーゼで5’−末端をラベルした。5’−末端ラベル32P−DNA溶液、リン酸緩衝液(0.10M、pH6.0)および錯体1(20〜100μM)を含む反応混合物をパイレックス(登録商標)バイアル中で37℃で30分間保温した。反応混合物に、室温、好気性環境下で2時間、350nmのUV光を照射した。0.30NのNaCN(pH=11)を用い、37℃で8時間処理することにより、DNAフラグメントに結合した有機金属錯体を除去した(Schwartz et al. (1990) J. Am. Chem. Soc. 112: 3673、Zou et al. (1994) Biochemistry 33: 5404)。次いで、反応混合物をゲルローディング緩衝液または95%エタノールで処理し、反応を停止させた。いくつかの試料はピペリジン処理を施してエタノールにより沈殿させ、ピペリジン水溶液(1.0M、60μl)に95℃で30分間再懸濁させた。ついで、全ての試料に対し、連続して凍結乾燥、水処理(30μl)、凍結乾燥、およびゲルローディング緩衝液(80%ホルムアルデヒド、0.25%ブロモフェノールブルーおよび0.25%キシレンシアノール)への再懸濁を施した。マクサム−ギルバートマーカーによる分析を、10%ポリアクリルアミド/8.0Mウレアゲルを用いて行った。300Vの電圧で60分間、電圧を600Vに上げてさらに8.0時間、電気泳動を行った。ゲルは、コダックX−Omat Ar・5フイルムを増感紙に用いて、−70℃で24時間露出することにより可視化した。DNAフラグメントの相対強度の定量を、マイクロテックスキャナおよびNIH1.60イメージプログラムを用いて行った。
【0033】
検出したDNAフラグメントをオートラジオグラムでマクサム−ギルバートマーカーと比較し、コンピュータ分析プログラムにより定量化した。錯体1は、プリン残基では熱ピペリジン処理により(Armitage (1998) Chem. Rev. 98: 1171)、アデニン残基ではピペリジン処理なしで、DNAを切断することが結果より示された。
【0034】
DNA結合および切断メカニズム
二重らせんオリゴヌクレオチドd(ATAT)2を調製し、錯体1を含むリン酸緩衝液(pH=6.0、1:1)に添加した。溶液を暗所で2時間静置した。LC−マスクロマトグラフィにおけるESI(electron spray ionization)検出器の分析でシグナル650.1(M+H+)の中間体が、57%の収率で検出された。ついで、溶液に、350nmのUV光を、室温で2時間照射した。シグナル456.1(M+H+)の産出物が検出された。結果より、錯体1は最初にアデニンのC−6アミノに結合し、中間体を生成することがわかった。DMSOを除去し、錯体1のN−7窒素原子とプラチナ間の共有結合を形成することにより、オリゴヌクレオチド切断が生じ、分子内の環化が起こった。比較例は、切断反応がUV照射により開始することを示した。
【0035】
下記式は、当該反応を表したものである。
【0036】
【化8】
Figure 0003908119
【0037】
比較として、2’−デオキシグアノシンおよび錯体1を含む反応を行った。錯体1は、グアニンのC−2アミノに結合してPt−N共有結合を形成した。グアニンのPtとN−7窒素原子間の距離および幾何学的不整合により、分子内環化は起こらなかった。結果として、グアニン部位における切断は、外部塩基(例えば、ピペリジン)の補助を必要とすることがわかった。別の実験では、過剰の錯体1が2’−デオキシグアノシン溶液に添加され、ピペリジン処理された。LCマスクロマトグラフィにおけるESI検出器の分析でシグナル1063.9(M+H+)の中間体が、42%の収率で検出された。中間体は、暗所によらずに350nm−UV光を照射して、シグナル792.0(M+H+)の環化生産物を、80%の収率で生成することができた。下記式は、当該反応を表したものである。
【0038】
【化9】
Figure 0003908119
【0039】
上記結果により、錯体1が、制御された条件下で良好なDNA結合剤または効果的な切断剤となり、またUV光が開始剤として機能して、プリン残基における切断が誘発されることがわかった。
【0040】
本明細書に開示した技術的特徴の全ては、様々に組み合わせて利用することができる。本明細書に開示したそれぞれの特徴は、同一の、等価の、同様の目的を達成する他の特徴に置き換えてもよい。したがって、開示したそれぞれの特徴は、別途明白に記述しない限り、包括的な等価のまたは同様の特徴の単に例示に過ぎないものである。
【0041】
当業者は、上記記載から、本発明の本質的特徴を容易に達成することができ、その概念および範囲から外れることなく、本発明を種々変更し修正して、種々の用途や状態に適応させることができる。従って、他の実施形態もまた本出願の特許請求の範囲に含まれるものである。

Claims (9)


  1. Figure 0003908119
    式中、Yはハロゲンであり、R およびR はそれぞれ独立してアルキルである、
    で表される有機金属錯体。

  2. Figure 0003908119
    で表される有機金属錯体。
  3. 核酸の切断に用いられる、請求項1または2に記載の有機金属錯体。
  4. 前記核酸の切断が、前記有機金属錯体へのUV照射によって行われる、請求項3に記載の有機金属錯体。
  5. 前記UVが、300nmを超過する波長を有する、請求項4に記載の有機金属錯体。
  6. 前記核酸がDNAまたはRNAである、請求項3〜5のいずれか1項に記載の有機金属錯体。
  7. 前記核酸の切断が、5〜8のpH値を有する緩衝液中において行われる、請求項3〜6のいずれか1項に記載の有機金属錯体。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載の有機金属錯体の有効量、および医薬的に許容される担体を含む、医薬組成物。
  9. 腫瘍の治療に用いられる、請求項8に記載の医薬組成物。
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