JP3907530B2 - 無縫製のニットパンツ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、胴部が筒状に周回編成された無縫製のニットパンツに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のニットパンツは、下腹を覆う前身ごろ部と、臀部を覆う後身ごろ部とを別々に編成し、これらを重ね合わせて両側部分と股間部分をぞれぞれ縫製したものが多い。そのために、ニット特有の伸縮性や柔軟性が得られず、特に股下部分には縫いゴロが当たって穿き心地が悪く、フィット感が得られない。そこで、最近では前身ごろ部と後身ごろ部とを縫製せずに筒状に周回編成させた立体形状の無縫製ニットパンツが提案されている(例えば、特許第2963436号参照)。この種のニットパンツには縫製部分がないためニット特有の伸縮性や柔軟性があり、また縫いゴロが当たらないことからフィット感にも優れるといった利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、無縫製のニットパンツは、従来の縫製パンツとは異なって、長く穿いていると両側部分の編地が次第に伸びてしまうという問題がある。図6は無縫製パンツの形状の保持状態を使用の前後で示したものであり、(a)は未使用時のニットパンツ1を、(b)は長く使用しているニットパンツ2をそれぞれ示す。無縫製のニットパンツの場合、未使用時には所定の形状を保っていたニットパンツ1が、長く穿いていると両側部分3a,3bの編地が横方向や下方向に次第に伸びてしまい、穿いた時にだぶついてフィット感が失われたり、だらしない形状になってしまうといった問題があった。
【0004】
そこで、本発明の目的は、無縫製による穿き心地の良さを保持しつつ、両側部分での編地の伸びを抑えることでフィット感が持続できるような無縫製のニットパンツを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に係る無縫製のニットパンツは、胴部が筒状に周回編成された無縫製のニットパンツにおいて、前記胴部の両側部分に縦方向に延びる側面総針部を設け、この側面総針部がニードル針を1/2ピッチ幅に設定して編み目の数を増加した編地によって形成されることを特徴とする。
【0006】
上記の総針部は、ニードル針のピッチ幅を狭くし、その分編み目の数を増やすことで形成することができる。総針部では他の部分に比べて目の詰まった編地が形成されるために、他の部分より編地の伸びが小さくなり、また強度を増してしっかりとした編地となるので、伸び止め効果が働いて初期の形状を長く保持することができる。両側部分の総針部は、ニットパンツの縦方向に長く形成することで、特に伸びやすい縦方向の伸びを効果的に抑えることができる。
【0007】
また、請求項2の発明は、胴部が筒状に周回編成された無縫製のニットパンツにおいて、前記胴部の両側部分に総針部を設けると共に、前記胴部の前面中央部にも同様の総針部を設けたことを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、総針部を胴部の両側部分だけでなく前面の中央部分にも設けることによって、下腹部にも程よいフィット感が得られる。
【0009】
なお、本発明のニットパンツは、男性用のトランクスや女性用の保護的肌着に適用される他、タイツ等にも適用されるものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に基づいて本発明に係る無縫製のニットパンツの実施形態を詳細に説明する。ここで、図1は本発明に係るニットパンツの全体形状を示す斜視図であり、図2は前身ごろ部を示すニットパンツの正面図、図3は後身ごろ部を示すニットパンツの背面図である。
【0011】
図1に示されるように、この実施形態に係る無縫製のニットパンツ10は、ウエスト部11、胴部12および左右の股下部13が編み糸の周回編成によって筒状に形成されたものである。胴部12の両側部分にはニードル針の配列間隔を1/2ピッチ幅に狭めて編み目の数を増やした側面総針部14が設けられ、また胴部12の前面中央部にも同様の前面総針部15が設けられ、さらにニットパンツ10の左右の股下部13にも前記と同様の股下総針部16が設けられている。
【0012】
前記ニットパンツ10は、図2及び図3に示されるように、下腹を覆う前身ごろ部17と、臀部を覆う後身ごろ部18とで形成されているが、これら前身ごろ部17及び後身ごろ部18が筒状に形成されるために、その境目は無縫製である。ウエスト部11はリブ編みによって形成され、胴部12および股下部13は天竺編みによって形成されるが、胴部12の側面総針部14及び前面総針部15と、股下部13の股下総針部16は、全部のニードル針を使って編む総針天竺編みによって形成され、その他の部分はニードル針を一本ずつ抜いて編む1×1の針抜き天竺編みによって形成される。なお、この実施形態では後身ごろ部18の股間部には小さな台形状の後面総針部19が形成され、股間を通じて前身ごろ部17の前面総針部15とつながっている。
【0013】
前記側面総針部14は、胴部12の両側部分において縦方向に沿って細く長く形成されており、下方へ行くにしたがって次第に幅広くなって、そのまま前記股下総針部16につながっている。このように、胴部12の両側部分に縦方向に長い側面総針部14を設けたことで、両側全体が他の部分に比べて目の詰まったしっかりとした編地として形成されることになり、編地の伸びが両脇全体で抑えられることになって伸び止め効果が大きくなる。
【0014】
一方、前記前身ごろ部17の中央部分に設けられた前面総針部15は、下腹部を十分に覆い隠すくらいの大きな山形形状をしており、穿いた時に下腹部に多少の圧迫感を与えることで下腹を引き締める効果がある。この前面総針部15も下端が前記股下総針部16に一体的につながっている。また、後身ごろ部18の股間部に設けられた後面総針部19も股下総針部16とつながっている。このように、ニットパンツ10の両側部、前身ごろ部17、後身ごろ部18のそれぞれに設けられた総針部14,15,19が股下総針部16を介して連続的につながって形成されているので、特にニットパンツ10の両側部及分び下半部での編地の伸びが効果的に抑えられことになり、穿いた時のフィット感がいつまでも持続される他、両側部分でのだらしない伸びを防止することができる。
【0015】
上記のニットパンツ10は、編み機に装備された前後一対のニードルヘッドに編み糸を周回状に供給し、下腹を覆う前身ごろ部17と臀部を覆う後身ごろ部18とを筒状に形成することで、ウエスト部11、胴部12、股下部13が一体に連続的に形成される。この場合、リブ編みによって形成されるウエスト部11から編み出し、次いで天竺編みによって胴部12を筒状に形成したのち、連続して左右の股下部13を天竺編みによって形成し、最後に伏せ目処理を行なって一枚のニットパンツ10に仕上げる。仕上がったニットパンツ10は、一枚ずつ編み落とす場合と、上記の編成を繰り返して何枚も編み続ける場合とがある。
【0016】
上記の総針部14,15,16,19は、ニットパンツ10を筒状に編成する途中の過程で形成される。例えば、編み目の数を2倍に目増やす場合には、その部分の全てのニードル針を使用し、横方向の配列間隔を1/2ピッチ幅に狭めることで形成される。即ち、総針部以外の編地の編成では上述したように、ニードル針を一本ずつ抜いて編む1×1の針抜き天竺編みによって編成されるので一つ一つの編み目は大きくなるが、総針部ではニードル針を全部用いて1/2ピッチ幅に配列間隔を狭めるので編み目の一つ一つの大きさが半分になる一方、編み目の数が倍になるので目の詰んだ編地が形成されることになり、他の部分に比べてしっかりとした地合いの編地が形成される。このように、ニットパンツ10の地合いを部分的に変えることで、その部分の伸びが抑えられしっかりとしたものとなる。また、前身ごろ部17に設けた前面総針部15によって、下腹に程よい圧迫感を与えることができると共に臀部にはゆとり感が得られる。また、本発明の各総針部14,15,16,19は、編み目を割り増すことなく編み目の数を2倍に増やしているので、ニットパンツ10の全体形状を崩すことなく編み上げることができる。この実施形態では胴部12だけでなく、股下部13にも上記と同じような股下総針部16を形成しているので、穿いたときに大腿部にもフィット感が得られる。さらに、股下総針部16を股間に対応して傾斜させているので、フィット感が一段と向上する。
【0017】
次に、上記ニットパンツ10の編成工程を図4及び図5に基づいてさらに詳細に説明する。図4は前身ごろ部17の編成工程を、図5は後身ごろ部18の編成工程を示す。実際にはこの前身ごろ部17と後身ごろ部18とは筒状に形成される。また、便宜的に図中に示された正方形の1マスは1×1の針抜き天竺編みによって形成される一つ一つの編み目を表わし、この正方形の1マスを左右に2つに分けた小さな縦長長方形の1マスは総針天竺編みによって形成される一つ一つの編み目を表わす。先ず、ウエスト部11からリブ編みを始める。ウエスト部11に続いて胴部12を1×1の針抜き天竺編みによって筒状に編成する。そして、筒状に編成していく過程で、上記各総針部14,15,16,19を形成するための総針天竺編み工程を割り込ませる。この総針天竺編み工程では、左右のニードル針に編み目を移し替えることなく、全てのニードル針を使って配列間隔を1/2ピッチ幅に狭め、ニードル針の本数を倍にして編成する。したがって、ニードル針を増やしたことで編み目の数も増やしているが、ピッチ幅が1/2になっているので編み目の大きさもそれに応じて小さなものとなり、目が詰まった状態で編成されることになる。このことは各総針部14,15,16,19の編地の伸び率を他の部分に比べて小さいものとし、穿いたときには両脇や下腹、大腿部に心地よい圧迫感を与えると同時に身体にフィットさせることができる。
【0018】
この実施形態では股下部13全体が股下総針部16によって形成されている他、股間の形状に対応して傾斜させているが、これは図4及ぶ図5に示したように、前面総針部15及び後面総針部19の下部において、左右外側から内側に向かって次第に編み目を止め保持しながら逆三角形状の股部20を形成し、この股部20の下方に左右の股下部13を形成したものである。この股下部13も前述と同様、ニードル針の配列ピッチを1/2に狭めて編成したものであり、股下部13全体が股下総針部16として形成される。なお、前記股部20の下端では前身ごろ部17と後身ごろ部18とが伏編みによって閉じられる。
【0019】
このようにして編成されたニットパンツ10は、無縫製であるのでニット特有の伸縮性や柔軟性が損なわれることがなく、また縫いゴロもできないので着心地が極めて優れている。また、胴部12の両側部分に総針部を設けたことで伸びや弛みが生じにくくなり、肌へのフィット感が増す。さらに、前身ごろ部17にも大きな前面総針部15を形成したことによって後身ごろ部18とは地合いが変化し、下腹には程よい圧迫感が備わる一方、臀部には座った時のゆとり感が得られ、座ったり歩行する際にも大腿部が窮屈になるといったいったことがない。
【0020】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る無縫製のニットパンツによれば、胴部の両側部分に総針部を設けたことによって、両側部分の編地の伸びが他の部分より小さくなり、またしっかりとした編地となるので、両側部分での編地の伸びや弛みなどが抑えられ、初期の形状を長く保持することができる。特に、両側部分の総針部をニットパンツの縦方向に長く形成することで、伸びやすい縦方向の弛みを効果的に抑えることができる。
【0021】
また、本発明では総針部を前身ごろ部の一部にも設けたので、両側部は勿論のこと、下腹部でのフィット感も得られることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るニットパンツの全体形状を示す斜視図である。
【図2】本発明に係るニットパンツの前身ごろ部の形状を示す正面図である。
【図3】本発明に係るニットパンツの後身ごろ部の形状を示す背面図である。
【図4】上記ニットパンツの総針部の形成工程を示す前身ごろ部の正面図である。
【図5】上記ニットパンツの総針部の形成工程を示す後身ごろ部の正面図である。
【図6】無縫製のニットパンツの従来の課題を示す説明図である。
【符号の説明】
10 ニットパンツ
11 ウエスト部
12 胴部
13 股下部
14 側面総針部
15 前面総針部
16 股下総針部
17 前身ごろ部
18 後身ごろ部
19 後面総針部
Claims (3)
- 胴部(12)が筒状に周回編成された無縫製のニットパンツ(10)において、
前記胴部(12)の両側部分に縦方向に延びる側面総針部(14)を設け、この側面総針部(14)がニードル針を1/2ピッチ幅に設定して編み目の数を増加した編地によって形成されることを特徴とする無縫製のニットパンツ。 - 胴部(12)が筒状に周回編成された無縫製のニットパンツ(10)において、
前記胴部(12)の両側部分にウエスト部(11)から股下部(13)まで縦方向に延びる側面総針部(14)を設け、この側面総針部(14)がニードル針を1/2ピッチ幅に設定して編み目の数を増加した編地によって形成されることを特徴とする無縫製のニットパンツ。 - 前記側面総針部(14)と共に前記胴部(12)の前面中央部に前面総針部(15)が設けられる請求項1又は2記載の無縫製のニットパンツ。
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