JP3906116B2 - 受信装置、および通信システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、受信装置、および通信システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ディジタル無線通信においては、高速伝送が要求されるため、シンボルレートが高い伝送が必要となっている。そこで、送信データをマルチキャリア化して、キャリアあたりのシンボルレートを下げることが行われている。この場合において、マルチキャリア化にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式またはMC−CDM(Multi Carrier - Code Division Multiplexing)方式を用いることにより、周波数利用効率を向上させることができる。
【0003】
このうち、MC−CDM方式の送信装置は、周波数領域拡散に用いられる拡散符号として、互いに直交した符号を使用することにより、拡散変調した送信信号をコード(符号)多重して送信し、シンボルレートの高い伝送を実現している。
【0004】
この互いに直交した拡散符号の数の最大値、すなわち、送信信号の最大コード多重数は、通信システムの回線容量を表す値であり、拡散符号の生成方法により自ずと定まる理論値である。
【0005】
ところが、実際の移動体通信環境下においては、マルチパスの影響により周波数選択性フェージングが発生する。すなわち、各サブキャリアに異なる回線変動が発生する。受信装置においては、回線変動を補償するために、回線推定を行って受信信号に対して回線補償を施すが、回線変動のみを完全に補償するとかえって雑音の影響を大きくする場合があり、誤り率特性の観点から、回線変動のみを完全に補償する方式が用いられることは少ない。そのため、送信時には、互いに符号間の直交性を保っていた拡散符号がフェージングの影響を受けることにより、完全な直交性を保てなくなり、互いに符号間干渉を引き起こすようになる。よって、実機では、送信信号における多重可能なコード数は、フェージングの影響により、理論値よりも制限された小さい値となっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の装置においては、送信装置は、実機の送信信号における多重可能なコード数を知ることができないため、このコード多重数を越える多重を行ってしまった場合、送信信号は互いに符号間干渉を引き起こすという問題がある。このとき、コード多重数は増加しているため、形式的には通信システムの回線容量が増大しているということもできるが、実質的には、受信側において信号の分離がうまくゆかず、データの誤り率が増大するため、回線容量が大幅に低下している。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、送信装置において送信に最適なコード多重数の決定をすることができ、通信システムの回線容量を増大させることができる受信装置、および通信システムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明のマルチキャリア通信システムは、複数の直交符号を用いて送信装置および受信装置間でマルチキャリア通信を行う場合において、マルチキャリア受信装置の受信信号の回線変動補償後に存在する前記直交符号間における符号直交性のくずれ度合いを推定する推定手段と、前記推定手段によって推定された符号直交性のくずれ度合いに基づいてマルチキャリア送信装置の送信信号の符号多重数を決定する決定手段と、を有する構成を採る。
【0013】
この構成によれば、受信信号の回線変動補償後に存在する符号直交性のくずれ度合いに基づいて送信信号の符号多重数を決定するため、送信装置において送信に最適なコード多重数の決定をすることができ、通信システムの回線容量を増大させることができる。
【0014】
本発明のマルチキャリア受信装置は、複数の直交符号を用いるマルチキャリア通信を行うマルチキャリア受信装置であって、受信信号の前記直交符号間において存在する符号直交性のくずれ度合いを推定する推定手段と、前記推定手段によって推定された符号直交性のくずれ度合いに基づいてマルチキャリア送信装置における送信信号の符号多重数を決定する決定手段と、前記決定手段によって決定された符号多重数をマルチキャリア送信装置に報知する報知手段とを有し、前記推定手段において符号直交性のくずれ度合いを推定される受信信号は、回線変動補償後の受信信号である構成を採る。
【0015】
この構成によれば、直交符号間において存在する符号直交性のくずれ度合いに基づいて送信信号の符号多重数を決定する受信装置を提供するため、送信装置において送信に最適なコード多重数の決定をすることができ、通信システムの回線容量を増大させることができる。また、コード多重数という少ない情報を報知するので、通信システムに対する負荷を小さくすることができる。また、この構成によれば、回線変動補償後の受信信号から符号直交性のくずれ度合いを推定するので、回線変動補償後に最終的に残留する符号直交性のくずれ度合いを推定することができる。
【0016】
本発明のマルチキャリア受信装置は、複数の直交符号を用いるマルチキャリア通信を行うマルチキャリア受信装置であって、受信信号の前記直交符号間において存在する符号直交性のくずれ度合いを推定する推定手段と、前記推定手段によって推定された符号直交性のくずれ度合いをマルチキャリア送信装置に報知する報知手段とを有し、前記推定手段において符号直交性のくずれ度合いを推定される受信信号は、回線変動補償後の受信信号である構成を採る。
【0017】
この構成によれば、直交符号間において存在する符号直交性のくずれ度合いを推定する受信装置を提供するため、送信装置において送信に最適なコード多重数の決定をすることができ、通信システムの回線容量を増大させることができる。また、コード多重数を送信側が決定するので、複数の受信装置にコード多重した信号を送信する場合でも、最適なコード多重数を決定することができる。また、この構成によれば、回線変動補償後の受信信号から符号直交性のくずれ度合いを推定するので、回線変動補償後に最終的に残留する符号直交性のくずれ度合いを推定することができる。
【0024】
本発明のマルチキャリア受信装置は、上記の構成において、前記符号直交性のくずれを補償することができる回線変動補償値を算出する第1算出手段をさらに有し、前記推定手段は、実際に受信信号の回線変動補償に用いる回線変動補償値および第1算出手段によって算出された回線変動補償値に基づいて前記符号直交性のくずれ度合いを推定する構成を採る。
【0025】
この構成によれば、符号直交性のくずれを補償することができる回線変動補償値を符号直交性の保たれた状態とみなすことができるので、実際に受信信号の回線変動補償に用いる回線変動補償値から符号直交性のくずれ度合いを推定することができる。
【0026】
本発明のマルチキャリア受信装置は、上記の構成において、前記符号直交性のくずれを補償する回線変動補償値を算出する第1算出手段と、前記受信信号の誤り率を軽減する回線変動補償値を算出する第2算出手段と、をさらに有し、前記推定手段は、第1算出手段および第2算出手段によって算出された回線変動補償値に基づいて前記符号直交性のくずれ度合いを推定する構成を採る。
【0027】
この構成によれば、符号直交性のくずれを補償することができる回線変動補償値を符号直交性の保たれた状態とみなすことができるので、受信信号の誤り率を軽減する回線変動補償値から符号直交性のくずれ度合いを推定することができる。
【0028】
本発明のマルチキャリア受信装置は、上記の構成において、第1算出手段の回線変動補償は、ORC法である構成を採る。
【0029】
この構成によれば、ORC法により、符号直交性のくずれを補償することができるため、回線変動補償値を正確に求めることができる。
【0030】
本発明のマルチキャリア受信装置は、上記の構成において、受信側で既知の信号に受信信号の回線変動を推定して得られる回線変動推定値および受信信号の誤り率を軽減する回線変動補償値を乗じた信号を生成する第1生成手段と、前記既知の信号に前記回線変動推定値および前記符号直交性のくずれを補償する回線変動補償値を乗じた信号を生成する第2生成手段と、をさらに有し、前記推定手段は、第1生成手段および第2生成手段によって生成された信号に基づいて前記符号直交性のくずれ度合いを推定する構成を採る。
【0031】
この構成によれば、第1生成手段により、雑音の影響を除かれて符号直交性のくずれのみが残留する回線変動補償後の受信信号状態を作り出すことができ、第2生成手段によって雑音も符号直交性のくずれもない受信信号状態を作り出すことができるので、これらから回線変動補償後の符号直交性のくずれ度合いを正確に推定することができる。
【0032】
本発明のマルチキャリア受信装置は、上記の構成において、受信信号に受信信号の誤り率を軽減する回線変動補償値を乗じた信号を生成する第1生成手段と、前記受信信号に前記符号直交性のくずれを補償する回線変動補償値を乗じた信号を生成する第2生成手段と、をさらに有し、前記推定手段は、第1生成手段および第2生成手段によって生成された信号に基づいて前記符号直交性のくずれ度合いを推定するようにした。
【0033】
この構成によれば、雑音の影響が少ない場合、受信信号を用いて符号直交性のくずれ度合いを推定するため、容易に推定処理を行うことができる。
【0034】
本発明のマルチキャリア受信装置は、上記の構成において、第2生成手段の回線変動補償は、ORC法である構成を採る。
【0035】
この構成によれば、ORC法により、符号直交性のくずれを補償することができる回線変動補償値を正確に求めることができる。
【0036】
本発明のマルチキャリア受信装置は、上記の構成において、前記推定手段は、次の式を用いて前記符号直交性のくずれ度合いを示す符号間干渉電力を推定する構成を採る。
【数3】
【0037】
本発明のマルチキャリア受信装置は、上記の構成において、前記推定手段は、次の式を用いて前記符号直交性のくずれ度合いを推定する構成を採る。
【数4】
【0038】
これらの構成によれば、送信装置において送信に最適なコード多重数の決定をすることができ、通信システムの回線容量を増大させることができる。
【0040】
本発明の通信端末装置は、上記いずれかに記載のマルチキャリア受信装置を有する構成を採る。
【0041】
この構成によれば、上記と同様の作用効果を有する通信端末装置を提供することができる。
【0042】
本発明の基地局装置は、上記いずれかに記載のマルチキャリア受信装置を有する構成を採る。
【0043】
この構成によれば、上記と同様の作用効果を有する基地局装置を提供することができる。
【0048】
【発明の実施の形態】
MC−CDM方式において、送信信号において多重可能なコード数の最大値は、マルチパスが原因で発生する周波数選択性フェージングの影響により制限される。このコード多重数の最大値は、通信システムの回線容量を意味しており、非常に重要なパラメータであるにもかかわらず、従来、最適なコード多重数を決定できる手段はなかった。
【0049】
このコード多重数の最大を求めるためには、符号間(自セル)干渉電力の影響を雑音や他セルからの干渉と分離して推定することが必要である。
【0050】
そこで、本発明者は、本来、振幅変動補償または位相変動補償等の回線変動補償に用いられることを用途とする回線補償値を用いることにより、自セル内の符号間干渉を推定できることに想到し、さらに、これをデータ伝送時のコード多重数に反映することに思い至った。このように、本発明は、全く新規な発想に基づくものである。
【0051】
すなわち、本発明の骨子は、データのマルチキャリア化に用いる複数の直交符号の自セル内の符号間干渉のレベル(以下、単に符号間干渉レベルという)を推定し、送信装置の送信信号のコード多重数を決定することである。
【0052】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0053】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るマルチキャリア受信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0054】
図1に示すマルチキャリア受信装置は、アンテナ101、無線(RF)受信部102、ガードインターバル(GI)除去部103、S/P変換部104、離散フーリエ変換(DFT)部105、P/S変換部106、復号部107、回線補償部108、逆拡散部109、復調部110、回線推定部111、および符号間干渉推定部112を有する。
【0055】
図1において、無線受信部102は、アンテナ101で受信された信号にダウンコンバート等の所定の無線処理を施す。GI除去部103は、RF受信部102から出力された受信信号からGIを除去する。S/P変換部104は、GI除去後の受信信号を並列データに変換する。DFT部105は、並列データとなった受信データに離散フーリエ変換を施す。P/S変換部106は、フーリエ変換後のデータを直列データに変換する。復号部107は、P/S変換部106の出力に対し、スクランブル復号化処理を行う。回線推定部111は、復号部107の出力信号から位相変動および振幅変動の回線推定を行い、回線推定値を回線補償部108に出力する。回線補償部108は、回線推定部111から出力された回線推定値を用い、復号部107から出力された信号に対し、位相変動および振幅変動の補償を行う。逆拡散部109は、回線補償後のデータに逆拡散処理を施す。復調部110は、逆拡散後のデータにディジタル復調処理を施し、受信データを得る。符号間干渉推定部112は、後述の符号間干渉レベルを推定し、推定結果を無線送信部(図示せず)およびアンテナ(図示せず)を介して、マルチキャリア送信装置に報知する。
【0056】
次いで、上記構成を有するマルチキャリア受信装置の動作について説明する。
【0057】
MC−CDM通信方式では、送信側は、互いに直交する拡散符号を用いて送信信号のコード多重を行っている。このように多重されて送信された信号を、本実施の形態に係るマルチキャリア受信装置は、アンテナ101で受信し、RF受信部102、ガードインターバル(GI)除去部103、S/P変換部104、離散フーリエ変換(DFT)部105、P/S変換部106、および復号部107を介し、所定の処理を施す。
【0058】
回線推定部111は、パイロット信号を用い、伝搬路における送信信号の位相変動または振幅変動等の回線変動を推定する回線推定値を回線補償部108に出力する。この各サブキャリアに加わる回線変動は、マルチパスの影響、すなわち、周波数選択性フェージングが原因で発生する。図2に示すように、周波数選択性フェージングL1は、例えば、中心周波数f1、f2、f3、f4のサブキャリアS1、S2、S3、S4にそれぞれ異なる回線変動を発生させるため、サブキャリアごとに回線推定値が求められる。
【0059】
回線補償部108は、回線推定部111において推定された回線変動に基づいて復号部107から出力される各サブキャリアに後述するEGC(Equal Gain Combining)法またはMMSEC(Minimum Mean Square Error Combining)法等による回線変動(位相変動、振幅変動)の補償処理を行い、逆拡散部109に出力する。
【0060】
回線補償部108から出力された信号は、逆拡散部109および復調部110を介し、所定の逆拡散処理および復調処理が施される。
【0061】
符号間干渉推定部112は、回線補償部108から出力されるサブキャリア成分の回線補償値(wm)および回線推定部111から出力される回線推定値(hm)に基づいて符号間干渉レベルを推定し、推定結果を無線送信部(図示せず)およびアンテナ(図示せず)を介して、マルチキャリア送信装置へ報知する。
【0062】
図3は、符号間干渉推定部112の内部構成の一例を示すブロック図である。
【0063】
図3において、符号間干渉推定部112は、ORC係数算出器151および符号間干渉レベル算出器152を有する。ORC係数算出器151は、回線推定部111から出力される回線推定値(hm)を用いて後述のORC法による回線補償値であるORC係数を算出し、符号間干渉レベル算出器152に出力する。符号間干渉レベル算出器152は、回線補償部108から出力されるサブキャリア成分の回線補償値(wm)およびORC係数算出器151から出力されるORC係数を用いて符号間干渉レベルを算出し、出力する。詳しい符号間干渉レベルの推定方法については、後述する。
【0064】
図4は、上記のマルチキャリア受信装置から報知された符号間干渉レベルを受け取るマルチキャリア送信装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0065】
図4に示すマルチキャリア送信装置は、コード多重数制御部201、コード多重部204、符号化部205、S/P変換部206、IDFT部207、P/S変換部208、GI挿入部209、RF送信部210、アンテナ211、およびコード多重数決定部212を有する。また、コード多重数制御部201は、内部にコード多重数分だけの変調器202、拡散器203を有する。
【0066】
図4において、変調器202は、送信データにディジタル変調処理を施す。拡散器203は、変調後の信号に拡散処理を施す。コード多重部204は、コード多重数分だけ変調器202、拡散器203を内部に有するコード多重数制御部201から出力される信号をコード多重する。符号化部205は、コード多重された後の信号に対し、スクランブル符号化処理を施す。S/P変換部206は、直列データである符号化部205の出力を並列データに変換する。IDFT部207は、S/P変換部206から出力されたデータに逆離散フーリエ変換処理を施す。P/S変換部208は、IDFT部207の出力を直列データに変換する。GI挿入部209は、IDFT部207から出力された信号にGIを挿入する。RF送信部210は、GI挿入部209の出力に対し、D/A変換、アップコンバート等の所定の無線処理を施し、アンテナ211から送信する。
【0067】
一方、コード多重数決定部212は、上記のマルチキャリア受信装置から報知される符号間干渉レベルをアンテナ(図示せず)および無線受信部(図示せず)を介して受け取り、この値に基づいてコード多重数を決定し、コード多重数制御部201に出力する。コード多重数決定部212は、符号間干渉レベルに対応するコード多重数を示す相関テーブルまたは相関式を有しており、これに基づいて、報知された符号間干渉レベルに対応するコード多重数を求める。
【0068】
次に、上記構成により実現される符号間干渉レベルの推定方法およびその効果について理論的考察も含めて説明する。
【0069】
送信信号に影響を及ぼす周波数選択性フェージングは、図2に示すように、中心周波数の異なる各サブキャリアに異なる回線変動を発生させる。よって、マルチキャリア受信装置が受信する信号は、
【数5】
と表される。
【0070】
回線推定部111は、パイロット信号を用い、後述するEGC法またはMMSEC法等の処理を行い、伝搬路における送信信号の位相変動または振幅変動等の回線変動を推定する回線推定値をサブキャリアごとに求め、回線補償部108に出力する。
【0071】
回線補償部108は、回線推定部111において求められた回線推定値に基づいてサブキャリアごとに回線変動補償を行うため、回線変動補償された後の信号は、
【数6】
と表される。
【0072】
回線補償・逆拡散合成の方法としては、代表的なものとして、ORC法、EGC法、またはMMSEC法の3つがある(S. Hara, R. Prasad, "Design and performance of multicarrier CDMA system in frequency-selective Rayleigh fading channels", IEEE Trans. Veh. Tech., vol.48, vol.5, pp.1584-1595, Sept. 1999.参照)。この3つの回線変動補償法のプロセスは、以下に示すようなメリットおよびデメリットがある。
【0073】
ORC法は、(式3)に示すように、回線変動の逆特性を各サブキャリアに乗算することにより回線補償を行い、その後、逆拡散合成を行う。
【数7】
【0074】
よって、回線推定部111において妥当な回線推定値が求まっている場合は、符号間直交性が回復されるので、理論的には符号間干渉レベルを0にできる。しかし、実際には、フェージングの影響により信号強度が弱くなったサブキャリアの強度を回復する際に、同時に雑音成分も大きくする雑音強調を引き起こすため、却って信号特性を劣化させる場合もあるので、実際にはあまり用いられない。
【0075】
EGC法は、(式4)に示すように、回線変動の位相変動のみを補償し、振幅の変動を補償しない。
【数8】
【0076】
よって、振幅変動を補償しないため、ORC法で問題となる雑音強調を引き起こすことはないが、符号間の直交性は完全に回復できない。すなわち、符号間干渉は残留する結果となる。また、振幅を補償しない方法なので、ディジタル変調に16QAM等の多値変調を用いている場合、信号特性が劣化する。
【0077】
MMSEC法は、(式5)に示すように、送信データシンボルと受信データシンボルとの誤差を最小となるように回線補償を行う。
【数9】
【0078】
よって、誤り率特性は良好だが、符号間直交性は完全には回復されず、符号間干渉は残留する。
【0079】
なお、本実施の形態では、回線補償部108における回線補償においてORC法は使用しない。
【0080】
EGC法またはMMSEC法の回線変動補償をすることにより、符号間干渉の影響をある程度軽減することはできるが、これを完全に除去することはできない。また、たとえ送信信号の電力を上げたとしても、自セル干渉は残存するため、やはり符号間干渉を除去することができない。
【0081】
この3つの方法をまとめると、ORC法は、理論的に符号間の直交性を完全に回復させることができるが、雑音強調の問題があり、一方、EGC法およびMMSEC法は、符号間の直交性を完全に回復させることはできないが、データの誤り率特性を優先した回線補償式となっていると言うことができる。
【0082】
別の見方をすれば、ORC法で用いられる回線補償値は、符号間の直交性を理想状態に戻すことができる演算子であり、演算子自体が符号間の完全な直交状態を表しているということができる。一方、EGC法およびMMSEC法の回線補償値は、実機の回線補償に使用される演算子であり、実機装置の回線補償後の信号の符号間直交性の状態を示しているということができる。
【0083】
そこで、本発明では、本来は、回線変動補償を目的とするプロセスを応用し、符号間干渉を推定する。
【0084】
すなわち、(式6)に示すように、ORC法を符号の直交性の基準として考え、基準となるORC法の回線補償値と実際に用いるEGC法あるいはMMSEC法の回線補償値からORC法の回線補償値を減じて差をとり、さらに分散をとることにより、この分散を残存する符号間干渉の影響、すなわち、符号間干渉電力と見ることとする。
【数10】
【0085】
ここで、pmhmは、受信側で既知の信号に回線推定値を乗じた値であり、回線変動は生じているが、雑音の影響はない受信信号を示している。また、(式6)のpmhmの代わりに実際の受信信号を用いても良い。
【0086】
また、(式7)に示すように、(式6)の右辺をpmhmで除して、回線補償の演算子のみを取り出した値を用いて符号間干渉レベルを推定しても良い。
【数11】
【0087】
このように、本実施の形態によれば、データのマルチキャリア化に用いる複数の符号の自セル内の符号間干渉レベルを推定し、送信信号のコード多重数を決定するため、送信装置において送信に最適なコード多重数の決定をすることができ、通信システムの回線容量を増大させることができる。
【0088】
なお、ここでは、コード多重数決定部がマルチキャリア送信装置に搭載されている場合を例にとって説明したが、コード多重数決定部は、必ずしも送信側にある必要はなく、マルチキャリア受信装置に搭載され、決定されたコード多重数を受信側が送信側に報知し、送信側はこの報知情報に基づいてコード多重数を制御する形態であっても良い。
【0089】
本発明に係る受信装置および受信装置は、通信端末装置および基地局装置に搭載することも可能であり、これにより上記と同様の作用を有する通信端末装置および基地局装置を提供することができる。
【0090】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、送信装置において送信に最適なコード多重数を決定することができ、通信システムの回線容量を増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態1に係るマルチキャリア受信装置の構成の一例を示すブロック図
【図2】周波数選択性フェージングがマルチキャリアに及ぼす影響を説明するための図
【図3】本発明の実施の形態1に係るマルチキャリア受信装置の符号間干渉推定部の内部構成の一例を示すブロック図
【図4】本発明の実施の形態1に係るマルチキャリア送信装置の構成の一例を示すブロック図
【符号の説明】
108 回線補償部
111 回線推定部
112 符号間干渉推定部
151 ORC係数算出器
152 符号間干渉レベル算出器
201 コード多重数制御部
212 コード多重数決定部
Claims (13)
- 複数の直交符号を用いて送信装置および受信装置間でマルチキャリア通信を行う場合において、
マルチキャリア受信装置の受信信号の回線変動補償後に存在する前記直交符号間における符号直交性のくずれ度合いを推定する推定手段と、
前記推定手段によって推定された符号直交性のくずれ度合いに基づいてマルチキャリア送信装置の送信信号の符号多重数を決定する決定手段と、
を有することを特徴とするマルチキャリア通信システム。 - 複数の直交符号を用いるマルチキャリア通信を行うマルチキャリア受信装置であって、
受信信号の前記直交符号間において存在する符号直交性のくずれ度合いを推定する推定手段と、
前記推定手段によって推定された符号直交性のくずれ度合いに基づいてマルチキャリア送信装置における送信信号の符号多重数を決定する決定手段と、
前記決定手段によって決定された符号多重数をマルチキャリア送信装置に報知する報知手段とを有し、
前記推定手段において符号直交性のくずれ度合いを推定される受信信号は、回線変動補償後の受信信号であることを特徴とするマルチキャリア受信装置。 - 複数の直交符号を用いるマルチキャリア通信を行うマルチキャリア受信装置であって、
受信信号の前記直交符号間において存在する符号直交性のくずれ度合いを推定する推定手段と、
前記推定手段によって推定された符号直交性のくずれ度合いをマルチキャリア送信装置に報知する報知手段とを有し、
前記推定手段において符号直交性のくずれ度合いを推定される受信信号は、回線変動補償後の受信信号であることを特徴とするマルチキャリア受信装置。 - 前記符号直交性のくずれを補償することができる回線変動補償値を算出する第1算出手段をさらに有し、
前記推定手段は、
実際に受信信号の回線変動補償に用いる回線変動補償値および第1算出手段によって算出された回線変動補償値に基づいて前記符号直交性のくずれ度合いを推定する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のマルチキャリア受信装置。 - 前記符号直交性のくずれを補償する回線変動補償値を算出する第1算出手段と、
前記受信信号の誤り率を軽減する回線変動補償値を算出する第2算出手段と、をさらに有し、
前記推定手段は、
第1算出手段および第2算出手段によって算出された回線変動補償値に基づいて前記符号直交性のくずれ度合いを推定する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のマルチキャリア受信装置。 - 第1算出手段の回線変動補償は、ORC(Orthogonality Restoring Combining)法であることを特徴とする請求項4または請求項5記載のマルチキャリア受信装置。
- 受信側で既知の信号に受信信号の回線変動を推定して得られる回線変動推定値および受信信号の誤り率を軽減する回線変動補償値を乗じた信号を生成する第1生成手段と、
前記既知の信号に前記回線変動推定値および前記符号直交性のくずれを補償する回線変動補償値を乗じた信号を生成する第2生成手段と、をさらに有し、
前記推定手段は、
第1生成手段および第2生成手段によって生成された信号に基づいて前記符号直交性のくずれ度合いを推定する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のマルチキャリア受信装置。 - 受信信号に受信信号の誤り率を軽減する回線変動補償値を乗じた信号を生成する第1生成手段と、
前記受信信号に前記符号直交性のくずれを補償する回線変動補償値を乗じた信号を生成する第2生成手段と、をさらに有し、
前記推定手段は、
第1生成手段および第2生成手段によって生成された信号に基づいて前記符号直交性のくずれ度合いを推定する、
ことを特徴とする請求項2または請求項3記載のマルチキャリア受信装置。 - 第2生成手段の回線変動補償は、ORC法であることを特徴とする請求項7または請求項8記載のマルチキャリア受信装置。
- 請求項2から請求項11のいずれかに記載のマルチキャリア受信装置を有することを特徴とする通信端末装置。
- 請求項2から請求項11のいずれかに記載のマルチキャリア受信装置を有することを特徴とする基地局装置。
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