JP3905712B2 - 通信経路の最適化方法、通信経路の生成装置、および通信経路の最適化プログラム - Google Patents
通信経路の最適化方法、通信経路の生成装置、および通信経路の最適化プログラム Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、通信経路の最適化方法、通信経路の生成装置、および通信経路の最適化プログラムに関し、特に、災害無線中継車配置のためのロバスト最適化(Robust Optimization of Locating Mobile Relay Stations for Radio Communication)を実現可能な通信経路の最適化方法、通信経路の生成装置、および通信経路の最適化プログラムに関する。
【0002】
【従来の技術】
1995年に発生した阪神大震災は、広域の都市災害として社会に大きな打撃を与えた。マルチメディア時代の入り口で遭遇したこの大災害では、多種多様で膨大な量の情報が発生し、その伝達において通常の電話に加え、携帯電話、ファックス、防災行政無線、アマチュア無線、衛星通信、さらにはインターネットやパソコン通信等の様々なメディアが活用された。
【0003】
災害時に発生する多種多様の情報を処理するメディアの中で、行政が災害の状況を早期かつ正確に把握するための通信手段の確保は、災害への対策や社会への正確な情報伝達という観点で重要である。国や自治体では、こうした重要性を踏まえて、防災無線システムの高度化(郵政省)や防災用移動端末の開発(三重県)等に取り組んでいる。災害発生時の情報伝達においては、輻輳等による通信障害及び装置そのものの破壊や故障を想定して2重3重の通信系列を持つことが必要とされる。
【0004】
災害発生時の基本的な通信方法として、災害現地に派遣した観測車と対策本部の間を複数の中継車で結び、防災無線帯域の周波数帯を活用した無線通信方式がある。これは通信インフラの発達した都市型災害でも、インフラの整備されていない地方や発展途上国での災害でも同様に活用可能であり、災害影響範囲の広域化にも対応可能な方法である。
【0005】
観測車と対策本部との間を結ぶ中継車の配車は、地形による電波伝播の条件、地勢や幹線道路状態による配車の容易性、複数観測車の分散状態へ対応可能性等を考慮して決定しなくてはならない。また、特定の観測車との通信を行う際、送受信信号の混信や、情報が本来の経路以外で伝わることによる混信をさけるため、各中継車の送受信周波数を決定する必要がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
災害現場ではいかなる障害や2次災害が発生するとも限らない。1台の中継車が使用不能になっても、通信経路が途絶しないロバスト性も合わせて求められる。災害発生直後には、2次災害の発生により中継車が破壊されたり、故障する場合や、配置候補地へのルートが不通となる場合等の可能性が高い。
【0007】
このような実際問題に対処するためには、通信経路のロバスト性と伝送品質の保証を実現できることが望まれる。通信経路の最適化において、最も重要な中継器が使用不能になっても高い精度で通信が可能であるような配置および/または周波数割り付けが行われることが望まれる。
通信経路の最適化において、最も重要な中継器が使用不能になっても高い精度で通信が可能であるような配置および/または周波数割り付けを求めるに際して、計算の効率化が行われることが望まれる。
上記の問題をミニマックス型の意思決定問題として定式化し、汎用的な解法をベースとして解くことが望まれている。
【0008】
なお、特開平6−315023号公報には、次の予備パス網設計方法が記載されている。その予備パス網設計方法は、伝送路へ複数収容される現用パスおよび予備パスのパス切替を行なうクロスコネクト装置と、故障伝送路の現用パスを救済するために接続可能な予備パスを探索し切替経路を決定する網管理装置とを有する通信網に対して、予備パス設置量の初期値を算出し、その後、削除を行なうことにより最適化を図る予備パス網設計方法において、伝送路が故障した場合の現用パスの救済に必要な量のパスを複数のルートへ割り付ける処理を各伝送路について行ない、それらを積み上げた値を予備パス設置量の初期値とすることを特徴としている。
【0009】
本発明の目的は、通信経路のロバスト性と伝送品質の保証を実現できる、通信経路の最適化方法、通信経路の生成装置、および通信経路の最適化プログラムを提供することである。
本発明の他の目的は、通信経路の最適化において、最も重要な中継器が使用不能になっても高い精度で通信が可能であるような配置と周波数割り付けを行うことができる、通信経路の最適化方法、通信経路の生成装置、および通信経路の最適化プログラムを提供することである。
本発明の更に他の目的は、通信経路の最適化において、最も重要な中継器が使用不能になっても高い精度で通信が可能であるような配置と周波数割り付けを求めるに際して、計算の効率化を行うことのできる、通信経路の最適化方法、通信経路の生成装置、および通信経路の最適化プログラムを提供することである。
本発明の更に他の目的は、上記の問題をミニマックス型の意思決定問題として定式化し、汎用的な解法をベースとして解くことが可能な、通信経路の最適化方法、通信経路の生成装置、および通信経路の最適化プログラムを提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
その課題を解決するための手段が、下記のように表現される。その表現中の請求項対応の技術的事項には、括弧()つき、番号、記号等が添記されている。その番号、記号等は、請求項対応の技術的事項と実施の複数形態のうちの少なくとも一つの形態の技術的事項との一致・対応関係を明白にしているが、その請求項対応の技術的事項が実施の形態の技術的事項に限定されることを示されるためのものではない。
【0011】
本発明の通信経路の最適化方法は、第1通信局(S)と第2通信局(C)との間の無線通信を中継するための複数の中継局(R)を最適に配置するための通信経路の最適化方法であって、(a) 前記複数の中継局(R)が配置されたときの前記第1通信局(S)と前記第2通信局(C)との間の伝送品質および通信経路数の少なくともいずれか一方を評価値として設定するステップと、(b) 前記設定された評価値を算出するステップと、(c) 前記算出された評価値に基づいて、前記複数の中継局(R)の配置を最適化するステップとを備え、前記(b)において、前記設定された評価値を算出する際には、前記複数の中継局(R)のうちの最も重要なN(Nは1以上の整数)台の中継局(R)を求め、前記最も重要なN台の中継局(R)を通過しない通信経路についてのみの前記設定された評価値を算出する。
【0012】
本発明の通信経路の最適化方法において、前記(b)は、前記複数の中継局(R)のそれぞれが使用される通信経路数を計算することを含み、前記通信経路数の計算は、前記複数の中継局(R)、前記第1通信局(S)および前記第2通信局(C)間の通信可能性を表す行列を用いて行われる。
【0013】
本発明の通信経路の最適化方法において、前記(b)は、前記複数の中継局(R)、前記第1通信局(S)および前記第2通信局(C)間の伝送品質を表す行列を用いて、前記第1通信局(S)と前記第2通信局(C)との間の伝送品質を計算することを含む。
【0014】
本発明の通信経路の最適化方法において、前記(c)における前記複数の中継局(R)の配置の最適化は、発見的手法により行う。
【0015】
本発明の通信経路の最適化方法において、前記発見的手法は、シミュレーティド・アニーリングである。
【0016】
本発明の通信経路の最適化方法は、第1通信局(S)と第2通信局(C)との間の無線通信を中継するための複数の中継局(R)を最適に配置するための通信経路の最適化方法であって、(d) 前記複数の中継局(R)の配置に関する方針Xを生成するステップと、(e) 前記方針Xの前記複数の中継局(R)のうち最重要中継局J(X)を求めるステップと、(f) 前記方針Xから前記最重要中継局J(X)を除いた場合の評価値G(X−J(X))を求めるステップと、(g) 前記評価値G(X−J(X))が最大となるX=Xoptを求めるステップと、(h) 前記方針Xoptを出力するステップとを備えている。
【0017】
本発明の通信経路の最適化方法は、第1通信局(S)と第2通信局(C)との間の無線通信を中継するための複数の中継局(R)のそれぞれへの周波数割り当てを最適に行うための通信経路の最適化方法であって、(i) 前記複数の中継局(R)のそれぞれへの周波数割り当てに関する方針Xを生成するステップと、(j) 前記方針Xの前記複数の中継局(R)のうち最重要中継局J(X)を求めるステップと、(k) 前記方針Xから前記最重要中継局J(X)を除いた場合の評価値G(X−J(X))を求めるステップと、(l) 前記評価値G(X−J(X))が最大となるX=Xoptを求めるステップと、(m) 前記方針Xoptを出力するステップとを備えている。
【0018】
本発明の通信経路の最適化方法は、第1通信局(S)と第2通信局(C)との間の無線通信を中継するための複数の中継局(R)を最適に配置するとともに前記複数の中継局(R)のそれぞれへの周波数割り当てを最適に行うための通信経路の最適化方法であって、(n) 前記複数の中継局(R)の配置と周波数割り当てに関する方針Xを生成するステップと、(o) 前記方針Xの前記複数の中継局(R)のうち最重要中継局J(X)を求めるステップと、(p) 前記方針Xから前記最重要中継局J(X)を除いた場合の評価値G(X−J(X))を求めるステップと、(q) 前記評価値G(X−J(X))が最大となるX=Xoptを求めるステップと、(r) 前記方針Xoptを出力するステップとを備えている。
【0019】
本発明の通信経路の最適化方法において、更に、(s) 前記方針Xoptに従って、前記複数の中継局(R)を配置するステップとを備えている。
【0020】
本発明の通信経路の最適化方法において、更に、(t) 前記方針Xを採用したときの前記複数の中継局(R)の配置の容易性を示すU(X)を求めるステップと、(u) 前記評価値G(X−J(X))と前記U(X)の和を前記方針Xの評価値F(X)とするステップと、(v) 前記F(X)が最大となるX=Xoptを求めるステップとを備え、前記(d)、(l)、(q)に代えて、前記(t)、(u)および(v)を実行する。
【0021】
本発明の通信経路の最適化方法において、更に、(aa) 前記中継局(R)をh台経由して、前記第1通信局(S)と前記第2通信局(C)を結ぶ経路の伝送品質の総和を示す第1の値(Fupi (h))を求めるステップと、(ab)前記第1通信局(S)から特定の前記中継局(Rj)が経路として前記h台目となるような経路全体での前記第1通信局(S)から前記特定の前記中継局(Rj)までの伝送品質を示す第2の値(Gupi (h))を求めるステップと、(ac) 前記第2通信局(C)から前記特定の前記中継局(Rj)が経路として前記h台目となるような経路全体での前記第2通信局(C)から前記特定の前記中継局(Rj)までの伝送品質を示す第3の値(Gdni (h))を求めるステップと、(ad) 前記第2の値(Gupi (h))と前記第3の値(Gdni (h))に基づいて、前記特定の前記中継局(Rj)を経由して前記第2通信局(C)から前記第1通信局(S)へ至る全ての経路での伝送品質の和を示す第4の値(I1(i、j))を求めるステップと、(ae) 前記第1の値(Fupi (h))に基づいて、前記第1通信局(S)と前記第2通信局(C)を結ぶ通信経路の伝送品質の総和を示す第5の値(Is(i))を求めるステップとを備え、前記最重要中継局J(X)は、前記第4の値(I1(i、j))および前記第5の値(Is(i))に基づいて求められる。
【0022】
本発明の通信経路の生成装置は、第1通信局(S)と第2通信局(C)との間の無線通信を中継するための複数の中継局(R)が最適に配置された通信経路の生成装置であって、前記複数の中継局(R)が配置されたときの前記第1通信局(S)と前記第2通信局(C)との間の伝送品質および通信経路数の少なくともいずれか一方を評価値として設定する評価値設定部と、前記設定された評価値を算出する評価値算出部と、前記算出された評価値に基づいて、前記複数の中継局(R)の配置を最適化する最適化部とを備え、前記評価値算出部が前記設定された評価値を算出する際には、前記複数の中継局(R)のうちの最も重要なN(Nは1以上の整数)台の中継局(R)を求め、前記最も重要なN台の中継局(R)を通過しない通信経路についてのみの前記設定された評価値を算出する。
【0023】
本発明の通信経路の最適化プログラムは、本発明の通信経路の最適化方法の各ステップをコンピュータに実行させるための通信経路の最適化プログラムである。
【0024】
本発明によれば、通信経路の最適化において、最も重要な中継器が使用不能になっても高い精度で通信が可能であるような配置および/または周波数割り付けを、自動的に計算することができる。
本発明によれば、通信経路のロバスト性と伝送品質の保証を実現できる。最も重要な中継器が使用不能になっても、高い伝送品質で通信経路が確保される。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照して、本発明の通信経路の最適化方法の一実施形態として、ロバストな通信経路最適化手法について説明する。
【0026】
本実施形態では、災害発生時の迅速かつ正確な情報収集のために、広範囲に派遣した観測車からの情報を複数の中継車を介して対策本部まで伝送する無線通信システムにおける、中継車の配置問題を取り上げる。伝送品質の高い経路を確立するための中継車の配置と、混信を回避するための通信周波数の割り当てを最適に決定することに関するモデル化手法と解法について述べる。本実施例の特徴は、情報収集時に中継車が故障するという現実の問題を考慮して、どの1台が使用不能になっても、通信経路が確保でき、高い伝送品質と通信経路数を総合して伝送能力を最も低下させる中継車の故障の影響を最小にするミニマックス型の意思決定問題として定式化できる。これは、非線型整数計画問題となり、シミュレーティドアニーリングを基本として、行列演算による計算の効率化を組み込んだ解法を提案する。具体的な数値例でその有効性を検証した結果を示す。
【0027】
複数の中継器を用いる通信経路の設定においては、混信の防止と、最も重要な中継器が使用不能になった場合でも通信可能性が保証されることが必要である。各中継器の送受信周波数と、中継器の配置の設定に際しては、中継器の設置候補となる地点間での伝送品質などを考慮し、ロバストな最適配置を計算によって求めることが必要となる。
【0028】
このように、最も重要な中継器が使用不能になった場合でも通信経路が確保される中継器の配置と周波数割り当てを決定する問題としては、例えば、次の2つの例が考えられる。
【0029】
(例1)
災害発生時の情報伝達においては、通信インフラが使用不能になる場合がある。災害現地に派遣した観測車両と対策本部の間を複数の中継車両で結び、防災無線帯域の周波数帯を使用して無線通信を行うことが考えられる。このとき、混信を避けるために送受信周波数を異なったものに設定する必要がある。また、二次災害等により中継車両が使用不能になる場合があるため、使用頻度の高い中継車両が使用不能になった場合でも、高い伝送品質で通信経路が確保されていることが必要となる。
【0030】
(例2)
指揮統制システムにおいて、指揮統制装置とレーダ装置が複数の中継装置を介して通信を行う。このとき、混信を避けるために送受信周波数を異なったものに設定する必要がある。また、ある中継装置が故障または破壊された場合でも確実に通信を行うために、重要度の高い中継装置が使用不能になった場合でも、高い伝送品質で通信経路が確保されていることが必要となる。
【0031】
本実施形態は、後述する説明で明らかとなるように、上記の(例1)および(例2)のいずれにも適用可能であるが、ここでは(例1)を想定して説明する。
【0032】
本実施形態は、上記の問題に対し、「どの1台の中継器が使用不能になっても、通信経路が確保されるように周波数割り当ておよび中継器の配置を決定する」方法に関するものである。
【0033】
まず、本実施形態のアイデアの概略を説明すると以下の▲1▼〜▲5▼の通りとなる。
▲1▼各中継器の周波数割り当てと配置の両方を、SA(シミュレーティド・アニーリング)などの発見的手法により最適化する。
▲2▼最適化においては、伝送品質または通信経路数を評価値とし、これらの最大化を考える。
▲3▼評価値を計算する際には最も重要な中継装置を求め、その中継装置を通過しない経路の伝送品質または通信経路数を評価値とする。
▲4▼上記の最適化計算の際に、各中継器が何本の通信経路に使われているかを計算する必要がある。このときに、各装置間の通信可能性を表す行列を用いて、この通信経路数を高速に計算する。
▲5▼各装置間の伝送品質を表す行列を用いて、伝送品質を計算する。
【0034】
なお、以下の本実施形態では、▲1▼各中継器の周波数割り当てと配置の両方の最適化を、SA(シミュレーティド・アニーリング)などの発見的手法により行うとして説明するが、SAに限定されず、例えば、GA(遺伝的アルゴリズム)、反復解法により行うことができる。
【0035】
また、以下の本実施形態では、「どの1台の中継器が使用不能になっても、通信経路が確保されるように周波数割り当ておよび中継器の配置を決定する」方法として説明するが、「どの1台」に代えて、「どのN台」であってもよい。または、「周波数割り当て」および「中継器の配置」のいずれか一方を決定する方法であってもよい。
【0036】
本実施形態では、災害発生時に複数の決められた観測地点に配置された観測車と対策本部及び、その間の伝送信号を中継する複数の中継車からなる無線通信システムにおいて、中継車の配置場所及び中継車の送受信周波数を決定する問題を取り扱う。その際に、配置した中継車のうち1台が使用不能となることを許容した問題、即ち単一故障でシステムの機能を喪失しないというロバスト性を保証する設計問題と捉える。これは、災害発生直後には2次災害の発生により中継車が破壊される場合や配置候補地へのルートが不通となる場合等の可能性が高いという、実際問題に対処するためである。
【0037】
この問題は、任意の中継車の1台の故障に対して、通信経路を最大限確保するとともに、伝送品質を最大にすることである。このため、無線通信システムにおける観測車、中継車と本部との間の通信経路の設定に関し、通信の伝送能力を伝送品質と通信経路の冗長度の統合した形でモデル化し、無線通信システムの伝送上最も重要な中継車の故障が発生した条件下で伝送能力を最大化するミニマックス型の最適問題として定式化する。また、本実施形態は現実の通信で課題となる混信のない通信経路確立のための中継車での周波数決定も合わせて解決することが特徴である。非線型整数計画問題を解く必要があり、シミュレーティドアニーリングを基本として、行列演算による計算の高速化を組み込んだ解法を提案する。具体的な数値例でその有効性を検証した結果を示す。
【0038】
最適配置問題は、ORの分野で古くから研究されている。実務応用を狙ったものに限定しても、ボロノイ図による学校やポストの最適配置、被覆モデルによるネットワーク上の施設配置等がある。また、配置の意思決定に対して、競合相手を導入した競争立地モデルについては、ショッピングモールの小売吸引力を扱う問題や、ハブ空港配置をシュタッケルベルグ問題として扱った2段階最適化問題がある。
【0039】
これらは、問題の理論的なアプローチのために、現実の課題での運用条件の本質的な部分を抽出して、理論的な厳密性と汎用性を持たせていることで価値が高い。
【0040】
これに対し、本実施形態では、現実問題の直接的な解決に主眼を置き、災害時の通信経路確保という社会的ニーズの強い問題を取り上げ、課題の性質を忠実に定式化することを目指した。現実問題として考えざるを得ない「重要な設備の故障」をミニマックス型の課題として取り組み、設備設置の条件や考慮すべき評価基準も実運用を忠実に反映した。
【0041】
以下、[1]では、問題を具体的に説明し、[2]で最適化問題として数学的に定式化し、[3]では、シミュレーティドアニーリング法を基本とする解法について説明する。[4]では、典型的なモデルに対して実行した結果により、解の性質や解探索時間についての評価を行う。
【0042】
[1] 中継車配置の課題
[1.1] 中継車の配置
広域災害が発生し、公共の通信手段が輻輳や被害により使用不能となった状況を仮定する。災害発生の場合、被害状況を迅速かつ正確に把握するために観測車を派遣する。観測車は、被害状況が大局的に把握できるように広範囲に分散するように派遣される。大局的把握を行うための観測装置としては、他にハイテク気球やヘリコプター等もあるが、台風被害などの悪天候状況下では使用が限定される。車両は空からの観測に比べるとアクセス性や大局性では劣るものの、基本的な手段として有効である。
【0043】
観測車には、本部からの指令を受け情報を送信するための通信機が搭載される。指令や情報は、音声の場合と画像等のデータの場合がある。災害における観測範囲としては、阪神大震災や有珠山噴火の100〜200km2以上が対象となる。本部が県庁に置かれた場合、観測点から本部までの距離は直線距離で50〜100km以上となる。一方、通常の実効放射電力レベル(1kW)で基地局のアンテナ高さが100mとすると30dbの受信強度を得るには40km以下、10dbでも85km以下が条件となる(通信周波数150MHzの場合)。
【0044】
従って、観測車と本部との間を中継する中継車が必要になる。現実的な出力と環境を考慮すると、観測車と中継車、中継車同士、中継車と本部の距離はそれぞれ30km以下となる。中継車の配置数は少ないほどよいので、1台の中継車が複数の観測車と本部との中継を担当することも可能とする。ただし、以下に説明するように、災害現場ではいかなる障害や2次災害が発生するとも限らない。1台の中継車が使用不能になっても、通信経路が途絶しないロバスト性も合わせて求められる。
以上のことから、災害の状況収集において以下を決定することが課題の一つである。
【0045】
[課題1]
固定された複数位置の観測車と本部との間に中継車を複数配置し、多段の中継により観測車と本部の情報伝達を可能にするように、複数の中継車位置を決定する。配置に際しては、伝送品質や経路の冗長性、配置の容易性等を考えて適切な場所を選定する。
【0046】
ここで、伝送品質とは、正常に通信される確率であり、経路の距離や地形条件から決められるものである。経路の冗長性とは、複数経路数であり、1台の中継車の故障に対しても通信を継続できる性質である。伝送品質と経路の冗長性を統合して伝送能力と呼ぶ。配置の容易性とは、各中継車の指定の配置場所への到着させやすさを意味し、地形、道路の混雑状況や道路幅等から決定されるものである。
【0047】
観測車と対策本部を結ぶ中継車の配置の例を図1に示す。以降の議論の便宜上、本部側を上位側、観測車を下位側と呼ぶ。観測指令は上位側から下位側へのメッセージの流れになり、観測情報は下位側から上位側に流れる。
【0048】
[1.2] 周波数の割付
通信の成立条件は、中継車同士が電波の届く距離にあるということに加えて、送信側の中継車の無線機と受信側の無線機の周波数が同じに設定してあることが必要である。
【0049】
中継車には、上位側との連絡用、下位側との連絡用の2台の無線機を搭載する。1台の中継車が使用できる周波数は配置している間中固定である。データ通信の場合には、必要なデータを全て受信し蓄えてから送信することも可能であるため無線機は1台でもよい。しかし音声通信の場合には、蓄えを行うと人間にとって不自然な遅延が発生するために、受信しながら送信する必要がある。従って2台の無線機が必要になる。
【0050】
受信しながら送信するため、送信と受信の周波数が同じであると1台の中継装置の中で混信が起きる。上位側用と下位側用とで異なる周波数を用いることが必要になる。
【0051】
このため、使用する周波数の種類についても考察が必要となる。特定の観測車と本部との通信経路を確立する際に、本部→中継車R1→中継車R2→観測車,という場合を考える。本部の周波数をf1とし、中継車の周波数を(上位側、下位側)で表すことにする。最低の周波数種類で経路を確立するには、中継車R1,中継車R2,観測車の周波数をそれぞれ(f1、f2),(f2、f1),f1とすればよい。中継車が多くなっても2種類の周波数を交互に使うことで経路の確率が可能と思われる。
【0052】
しかし、現実にはこの方式では混信が発生する場合がある。
中継車R1,R2,R3,R4が(f1、f2),(f2、f1),(f1、f2),(f2、f1)という周波数で通信する場合を考える。この時、中継車R1からの出力が中継車R2に届くと同時に中継車R4にも届く可能性がある。R1からR2,R3を経由したメッセージとR4に直接届くメッセージとには若干の遅延関係があるため、これにより中継車R4において混信が発生する。R1やR4が本部,観測車であっても同様である。混信の例を図2に示す。
【0053】
中継車導入の原則から考えると、中継車R1と中継車R4は十分離れていることが期待されるが、第1.1項で説明したように、中継機は1台で複数の観測車との中継を受け持つ場合があり、かつ伝送品質がなるべく高くなるように配置されるので、観測地点が多い場合や観測地点間の位置関係が複雑な場合には必ずしも中継車R1と中継車R4が離れていないことも考えられる。
【0054】
従って一般には、2種類以上の周波数を用いて、各中継車の位置を決定する際に中継車に搭載する2台の無線機の周波数を混信が起きないように決定する必要がある。
【0055】
次に、周波数の決定の際、本部から特定の観測車S1への経路が複数存在する方がより冗長的な配置であるが、複数の経路がある場合に経路間での混信をおこさない工夫について説明する。
【0056】
図3に、複数経路が定義できる配置の例を示す。
通信は音声によるものとする。本部は、観測車との通信を行う前にこれから使う経路を定義するデータDとして、経路として使用する中継車と観測車のID番号を並べたデータを送信することにより経路を1つに決定する。1例を以下に示す。
D=(経路の定義;path=(R1,R3,R5,S1)).
【0057】
データを受信した中継車は、データの命令が経路の定義であることを認識し、データ内の経路を表すID番号を調べる。自分が経路に含まれていなければ、音声データを受信しても下位側への送信は行なわない。自分が経路に含まれていた場合には、送信周波数を用いて送信する。
【0058】
経路を定義するデータを送信し直すことにより、異なる経路を使用することが可能である。
【0059】
なお、複数の観測車との交信での混信については、以下の理由により考慮する必要がない。即ち、複数の相手と同時に交信することは、音声を使用する場合には無用である。1回のタイミングでは本部からある1つの観測車に対してのみ交信することとする。これにより、複数の観測車との通信による混信の問題もなくなる。
【0060】
以上、混信を回避するための方針を図4にまとめる。
図4に示すように、1つの通信経路内での混信を回避するために、各中継車毎に送受信周波数を割り当てる。また、1つの観測車と本部との間の複数経路間の混信を回避するために、通信開始時に、これから使用する経路を1つに決めるデータを送信する。また、複数の観測車との間の経路間の混信を回避するために、本部と複数の観測車との同時交信は行なわない。
【0061】
第2の課題は以下のようになる。
【0062】
[課題2]
固定された複数の観測車と本部とを中継する複数の中継車を配置する際に、各中継車の使用する2種類の周波数と観測車の周波数とを決定する。決定に当たっては、経路の冗長度が高くなることと、決定される経路の伝送品質が高くなることを目的とする。
【0063】
[2] 最適配置問題の定式化
[2.1] 最適性の定義
前節で説明した課題に対する最適化について説明する。最適化とは、指定された台数の中継車の位置と、中継車と観測車の周波数を以下の最適性に基づいて最大化することである。
【0064】
[最適性] 任意の1台の中継装置が故障した場合にも、重要な観測車との通信経路数が多く、かつ経路の伝送品質が高くできること。最適性の評価指標は、冗長な経路数及び経路の伝送品質であり、これをまとめて伝送能力と呼ぶ。
【0065】
[2.2] 中継車配置と周波数決定の記号表現
記号Siにより観測車を表し、Rjにより中継車を表すものとする。中継車の配置場所は、事前に候補地として選定しておくN種類の場所に限定されるものとし、このうちのM箇所に実際に配置するものとする。観測車はL種類の場所に配置されているとする。本部はCで表す。
【0066】
中継車のj番目の配置場所はPr jで表し、観測車のi番目の配置場所はPs iで表す。本部の場所はPcで表す。
【0067】
中継車、観測車の状態を表す変数を以下のように定義する。中継車の配置を表す変数rjは、j=1,・・・,Nについてj番目の配置候補場所に実際に中継車を配置する場合には1、しない場合には0をとる。使用周波数は、j番目の場所の中継車が上位側との通信に使う周波数をfup(j)、下位側との周波数をfdn(j)とする。周波数は、H種類(F={f1,・・・,fH})の中から選択する。配置されない場所j’での周波数はfup(j’)=fdn(j’)=0とする。これらを、
【数1】
と表す。
【0068】
観測車については、L種類の場所にすべて配置されているので、配置を表す変数は定義しない。使用周波数は、観測車Siについてfs(i)∈F(1≦i≦L)とする。
【数2】
本部の使用周波数はfc(c)=fH(固定)とする。
【0069】
また、決定すべき変数をまとめてXで表し、方針と呼ぶ。方針Xは中継車の配置と周波数、観測車の周波数をまとめたものであり、
【数3】
である。
【0070】
方針Xを決めることにより、Cから各Siへの通信経路の集合が定まる。これをR(X;Si)と表す。R(X;Si)のk番目の経路をEk(X;Si)と表す。Ek(X;Si)∈R(X;Si)である。
【0071】
方針Xを決める際の配置評価関数をF(X)と表す。ある1つの中継車をJとし、方針Xで使用した中継車のうちJが使用不能になることをX−Jと表す。X−Jは、rJ=0,fup(J)=fdn(J)=0とすることに相当する。
【0072】
J以外の中継車を用いて構成できる経路評価関数をG(X−J)と表現する。
方針Xで最も重要な中継車をJ(X)とすると、方針Xの評価関数は、
F(X)=G(X−J(X))+U(X)
で表される。ここで、最も重要な中継車J(X)とは、中継車J(X)が使用不能となった時に経路評価関数G(X−J)が最小となる中継車である。また、U(X)は、Xで定まる場所へ中継車を配置する容易性であり、道路状況等から定まる。
【0073】
第[1]節で説明したように、本実施形態での意思決定は、方針Xとして、最も重要な中継車J(X)が1台使用不能になった場合の配置評価関数F(X)=G(X−J(X))+U(X)を最大とするXを求めることであり、これは以下のようにミニマックス型の課題として定式化できる。
【0074】
[課題の定式化]Xopts.t.
F(Xopt)=maxXG(X−J(X))+U(X)となる方針Xoptを求める。ここで、J(X)はG(X−J(X))=minJG(X−J)を満たすものである。
【0075】
評価関数に使われるG(X),U(X)の具体的な内容については次項で説明する。
表現した記号を図5、図6、図7にまとめる。
【0076】
[2.3] 評価関数の定義
第2.2項で説明した評価関数の内容を具体的に示す。まず、評価関数に必要なパラメータを整理する。上位側中継車Rj1と下位側Rj2の間の伝送品質をaj1,j2と表す。0≦aj1,j2≦1である。ただし、aj1,j2>0の場合には必ずaj1,j2>θとする。θは伝送の最低品質を決めるしきい値であり、これ以下の伝送品質は全て0とおく。aj1,j2は、中継車rj1とrj2の間の距離、遮る山や建物の有無等の地形条件で決まる係数であり、場所毎に設定しておく。aj1,j2がしきい値以下となる距離を通信限界距離という。
【0077】
ただし、中継車の配置有無や周波数の整合による条件として、rj1・rj2=0の場合にはaj1,j2=0とする。また、fdn(j1)≠fup(j2)(Rj1がRj2の上位側)の場合にもaj1,j2=0とする。
【0078】
同様に、本部Cと中継車Rjとの伝送品質ac,j,観測車Siと中継車Rjとの伝送品質aj,siも定義する。
【0079】
方針Xに対する本部Cから観測車Siとのk番目の通信経路Ek(X;Si)を
【数4】
と表す。第(1)式に含まれる中継車RjをSiへの通信経路に包含されるという。最後のRjPkにおいてPkとなっているのは、経路に含まれる中継車数Pは経路k毎に異なるためである。
【0080】
経路Ek(X;Si)の伝送品質T(Ek(X;Si))は、
【数5】
である。
【0081】
CからSiまでの経路の総数をV(X;Si)とする。V(X;Si)は、T(Ek(X;Si))>0となる経路の個数である。T(Ek(X;Si))を、本部Cから観測車Siまでの経路総数V(X;Si)分並べたベクトルを
【数6】
と表す。
【0082】
また、場所Pr jに配置する容易性をbjとする。方針Xを採用することによる配置の容易性U(X)は、
【数7】
で与えられる。容易性bjは、中継車が場所Pr jへ行くことの容易性であり、本部からのアクセスする際の道幅の広さや途中の道路の混雑状況等、配置を検討する際に収集できる情報から、人間が総合的にランクA,B,C程度に分類してAは10点、Bは7点、Cは3点のように設定する。事前の情報がなければ等しくAランクとしておけばよい。
【0083】
経路評価関数G(X)は、lpノルム‖・‖pを用いて、
【数8】
と定義する。ただし、方針Xにより全ての観測車との通信経路が確立できない場合には、経路評価関数G(X)の値は0とする。また、
【数9】
である。これは、p=1の場合には、各成分の絶対値の和をとることに相当し、p=∞の場合には絶対値が最大の成分をとることに相当する。
【0084】
即ち、(4)式は、配置と周波数の決定において、経路数と各観測車への経路の伝送品質に関する[最適性]の基準を表現した伝送能力を表し、pの値によって通信経路数と伝送品質のどちらをどれだけ重視するかを制御できる。
【0085】
[2.4] 最重要中継車の定義
本実施形態の課題では、最重要中継車が使用不能になった場合の伝送能力を問題にする。最重要中継車とは、前節で述べたように経路評価関数G(X−J)が最小になる中継車Jである。
この定式化が、通常考えられる「経路全体の伝送能力」を最大にする定式化に比べ防災無線中継車の配置という課題において優れている点を図8および図9を参照して説明する。
図8(a)および(b)は、中継車の位置が固定された2種類の周波数割り当てのパターンを示している。図9に示すように、p=1での「経路全体の伝送能力」を最大にする評価関数に従うと、図8(a)の方針の方が評価値が高くなる。しかし、この方針は、1台の中継車が使用不能になると通信経路がなくなる場合があるという意味でロバストでない。
一方、本実施形態の定式化に従うと、図8(b)の方針の方が評価値が高くなる。図8(b)の方針ではどの1台が使用不能になっても通信経路を確保したロバストな方針である。
【0086】
[3] 最適化の解法
[3.1] 中継車配置と周波数決定の解探索の流れ
中継車配置と周波数の割り当ての標準的なステップは以下の(ステップ1)〜(ステップ6)のようになる。
【0087】
[中継車配置と周波数割り当て]
(ステップ1) 方針Xを一つ決める。決め方は、方針Xの生成で詳述する([方針Xの生成方法])。
(ステップ2) 方針Xに対する配置の容易性U(X)を(3)式により求める。
(ステップ3) 方針Xの中からminJG(X−J)に基づき最重要中継車J(X)を求める([最重要中継車選択])。方針Xからその中継車J(X)を取り除く。残りをX−J(X)と表す。
【0088】
(ステップ4) (4)式に基づき、方針Xから中継車J(X)を除いた場合の評価値G(X−J(X))を求める([経路評価関数計算])。
(ステップ5) 評価値G(X−J(X))+U(X)を方針Xの評価値F(X)とする。
【0089】
(ステップ6) F(X)が最大となるX=Xoptが求まるまで、ステップ1から繰り返す。
【0090】
ただし、(ステップ3)から(ステップ4)の処理は、方針Xを変更する繰り返しの中で何度も計算されるため、高速性が必要となる。本実施形態では、行列演算によりこの部分を高速化した。評価は第3.3節の[最重要中継車選択と経路評価関数計算]で説明する。
【0091】
[3.2] 方針の生成方法
方針Xは、中継車の配置を表す離散的な変数{rj}と、周波数を表す離散的な変数{fup(j),fdn(j),fs(i)}から構成される。いずれの変数も数理解析的に生成する適切な方法がないため、組み合わせ問題を戦略的に計算する方法であるシミュレーティドアニーリングを採用する。方針の初期値Xt=T0はランダムに生成し、以降の方針Xt=T0+1は、Xt=T0から以下の(ステップ1)〜(ステップ6)のように生成する。
【0092】
[方針Xの生成方法]
(ステップ1) 方針Xt=T0でrj=1である中継車Rjもしくは観測車Siの一つをランダムに選択する。
(ステップ2) 中継車Rjを選択した場合には、変数rj,fup(j),fdn(j)のうちどれか1つを、それぞれ確率Pr(r),Pr(fup),Pr(fdn)に従って選択する。ただし、Pr(r)+Pr(fup)+Pr(fdn)=1である。観測車を選択した場合には、fs(i)を確率1で選択する。
【0093】
(ステップ3) 変数rjを選択した場合には、Xt=T0においてrj’=0であるj’をランダムに1つ選択し、rj=0,rj’=1と置き換える。さらに、fup(j’)=fup(j),fdn(j’)=fdn(j)とし、fup(j)=0,fdn(j)=0とする。
【0094】
(ステップ4) fup(j)を選択した場合には、f∈{f2,…,fH}の中からf>fdn(j)を満たすようにランダムに選択し、fup(j)=fとする。
(ステップ5) fdn(j)を選択した場合には、
f∈{f1,f2,…,fH−1}の中から、f<fup(j)を満たすようにランダムに選択し、fdn(j)=fとする。
【0095】
(ステップ6) fs(i)を選択した場合には、
f∈{f1,f2,…,fH−1}の中からランダムに選択し、fs(i)=fとする。
【0096】
ここで、解探索の効率化のために、中継車が使用する周波数は、fup(j)>fdn(j)となる条件を付加した。この条件は解空間を限定するが、経路にループが生じず、本部から観測車までの間に存在しうる中継車が最大H−1台になることで、解探索を効率化することができる。
【0097】
[3.3] 伝送品質と経路数の計算方法
最適な方針Xの探索に際し、(4)式及び最重要中継車選択は、上記方針X生成の中で毎回評価されるため、高速に計算できる必要がある。
本実施形態では、(4)式がp=1の場合を行列計算で表現し、行列計算の途中結果を利用してJ(X)を求め、効率的にG(X−J(X))の計算が出来るように工夫した。以下、その手法について説明する。
本手法の正当性については、後述するとともにその計算の具体性を示す。
【0098】
[準備]
【数10】
を、本部Cと各中継車との伝送品質を表すベクトルとする。(・)tは転置ベクトルを表す。
【0099】
【数11】
を、観測車Siと各中継車との伝送品質を表すベクトルとする。
【0100】
【数12】
を、上位側中継車Rj1と下位側中継車Rj2との伝送品質を表すN×N行列とし、隣接行列と呼ぶ。
【0101】
【数13】
をq番目の成分のみが1で他は0であるN次元列ベクトルとすると、
【数14】
は、中継車Rqの上位側にありRqと直接通信可能な各中継車との伝送品質を表すベクトルである。また、
【数15】
は、中継車Rqの下位側にありRqと直接通信可能な各中継車との伝送品質を表すベクトルである。
行列
【数16】
のi,jの成分は、h台の中継車を経由して中継車Riから中継車Rjに行く全経路の品質の総和である。
【0102】
[最重要中継車選択と経路評価関数計算]
(ステップ1) 観測車i=1,…,Lについて、以下のステップ2からステップ11を繰り返す。
(ステップ2)
【数17】
を計算する。
【0103】
(ステップ3)
【数18】
を計算する。
【0104】
(ステップ4) ステップ3と同様の計算により、
Fupi (2),Gupi (2),…,Fupi (H−1),Gupi (H−1)を順次計算する。
ここで、
【数19】
は、中継車をh台経由して、観測車Siと本部を結ぶ経路の伝送品質の総和である。また、
【数20】
の第j成分は、観測車Siから中継車Rjが経路としてちょうどh台目となるような経路全体での伝送品質(観測車Siから中継車Rjまでの)の総和を表す。
【0105】
ここで、Gup、Gdnを考えるのは、中継車のうち最も重要なものを除く処理が必要であるためであり、中継車の1台が壊れるという前提がなければ、Fupだけでよい。
【0106】
(ステップ5) ΣH−1 h=1Fupi (h),ΣH−1 h=0Gupi (h)を計算する。ただし、
【数21】
とする。
【0107】
(ステップ6)
【数22】
を求める。
【0108】
(ステップ7) Gdn (2)=Gdn (1)・ARを求める。
(ステップ8) ステップ7と同様の計算により、Gdn (2),Gdn (3),…,Gdn (H−1)を順次計算する。ここで、
【数23】
の第j成分は、本部Cから中継車Rjが経路としてちょうどh台目となるような経路全体での伝送品質(本部Cから中継車Rjまでの)を表す。
【0109】
(ステップ9) ΣH h=0Gdn (h)を計算する。ただし、
【数24】
とする。
【0110】
(ステップ10) 1≦j≦Nについて、ΣH h=0Gupi (h)とΣH h=0Gdni (h)の第j成分同士を掛けたものをI1(i,j)とする。I1(i,j)は、中継車Rjを経由して本部から観測車Siへ至る全ての経路での伝送品質の和を表す。
【0111】
(ステップ11) Is(i)=ΣH−1 h=1Fupi (h)を求める。Is(i)は、観測車Siと本部を結ぶ通信経路の品質の総和である。
【0112】
(ステップ12) 全ての観測車iについてI1(i,j)が求まったら、G(X−j)=ΣL i=1(Is(i)−I1(i,j))を求める。ただし、あるiについてIs(i)=I1(i,j)となる場合には、G(X−j)=0とする。
【0113】
(ステップ13) 全てのjについて、G(X−j)が最小となるjをJ(X)とし、F(X)=G(X−J(X))+U(X)とする。
【0114】
なお、本計算量は、中継車候補地数をN、観測車台数をLとするとO(N2・L)のオーダーとなり、少ない計算量で計算することができる。
【0115】
[4] 計算結果
解法の能力を評価するために、図10に示す基本条件で検証を行った。
なお、本実験では観測車が本部からほぼ等距離にあることから、観測車の周波数は全てf1に固定した。
【0116】
中継車の配置候補位置と初期配置、本部、観測車の配置例を図11に示す。△が観測車位置、□が本部の位置を表す。○が中継車を置ける候補地であり●の部分が実際に中継車を配置した場所を示す。白抜きの文字は中継車番号であり、左右の数字は、上位側、下位側の周波数番号である。1辺の長さを1.0とする。中継車同士、中継車と本部や観測車を結ぶ点線は、周波数条件と通信限界距離条件を満たし通信可能であることを示す。初期状態では、本部と観測車を結ぶ経路は全く確立していない。
【0117】
通信限界距離を0.52に設定し30万回の繰り返し計算を行った。距離0.52とは、図で示した格子点の1×4,2×3の格子範囲が通信可能になることに相当する距離であり、通信限界距離をこれ以下にすると経験上基本条件ではほとんど解が求まらないという限界ぎりぎりの値である。最重要中継車は図中四角で囲んだ。位置(1.0,0.25)の観測車と本部を結ぶ複数の通信経路の中で、最も伝送品質の高い経路を図12に太線で示す。図12の中で、最重要中継車である中継車5(位置(0.375,0.375)の中継車)が使用不能になった場合の経路例を図13に太線で示す。全ての観測車との通信経路が最低1本確保されており、ロバストな通信経路が確立できている。
【0118】
さらに30万回繰り返し計算をした結果を図13に示す。図12と比較すると、図12では本部との中継に4台の中継車を経由し、全5種類の周波数を用いて通信経路を求めているのに対し、図14の結果では3台の中継車と4種類の周波数で経路を確立している。使用周波数の種類が少ないということは、中継車の数が同じ場合特定の周波数で通信できる中継車数の期待値が大きい。従って、通信経路数が多くなり、伝送能力の高い方針となっている。
【0119】
本部と観測車の位置関係を変えた場合の結果例を図15に示す。ここでは、通信限界距離0.6で計算した。
本計算は、30万回のシミュレティドアニーリングの繰り返しにおいて、PentiumII(200MHz)クラスのPCを用いて約4分で計算を終了することができた。
【0120】
[5] おわりに
広域の災害において、広範囲からの情報を迅速かつ正確に収集するための通信手段の確立は今後ますます重要になってくると思われる。その際、防災無線の周波数帯による無線通信の確立は、衛星通信やインターネット、携帯電話等の近年急激に発展してきているインフラを利用した方法に比べ基礎的ではあるものの、系列の多重化という観点から必要不可欠であり、安定かつ効率のよい利用方法を確立しておくべき分野である。
【0121】
本実施形態では、広域に分散した観測車と本部とを結合するために、送受信周波数を事前に決定した中継車を中間点に配置する問題を最適化した。最適化の観点は、災害時の使用ということを考慮して「最も重要な中継車両が使用不可になる」という想定でも通信経路が確立でき、伝送品質が最大となるように位置と周波数とを決定することである。この問題を、ミニマックス型の意思決定問題として定式化した。
【0122】
現実問題の中継車数と配置可能な候補地数を考慮すると、定式化した問題は大規模なロバスト最適化問題ととらえられる。これを汎用的な解法であるシミュレーティドアニーリング法をベースとして戦略的に解く方式を考えた。ミニマックス型は2段階意思決定になり、使用不可となる中継車を選択する部分は、計算の効率化のために行列演算による数理的な手法により高速化した。
典型的なデータにより解探索の効率を評価した。結果は納得のできる配置であり、災害時の短時間に人間が方針を決定する支援として計算機により自動計算できる有効性が確認できた。
【0123】
次に、本実施形態で用いた行列を用いた伝送精度の計算法について説明する。
【0124】
伝送経路最適化問題においては、最適化計算を行う際に伝送精度の計算が必要となる。本節では、行列とベクトルを用いて伝送精度を計算する方法について述べる。
【0125】
1.1 通信可能性の行列表示
中継車Rの台数をK台、観測車Sの台数をl台とする。
Riのup側とRjのdown側の通信精度をaijとおく。また、Riのup側と本部Cの通信精度をai0とおき、RjとSlの通信精度をak+1,jとおく。このとき、各装置間で通信不可能であれば、aij=0とおく。
行列ARを
【数25】
で定めると、行列ARは中継車R間の通信精度を表す行列となる。この行列はAを以下「R−接続行列」と呼ぶ。
【0126】
ak+1,jをjについて横に並べたベクトル
【数26】
は、Siと各中継車Rの通信精度を表すベクトルとなる。このベクトルsiを以下「Siの接続ベクトル」と呼ぶ。
【0127】
ai,0をiについて縦に並べたベクトル
【数27】
は、本部Cと各中継車R間の通信精度を表すベクトルとなる。このベクトルcを以下「本部Cの接続ベクトル」と呼ぶ。
【0128】
R−接続行列Arの第K行の下側に観測車Sの接続ベクトルをi=1,2,…,lの順に挿入した行列を
Asとおく:
【数28】
この行列Asを以下「S−接続行列」と呼ぶ。
【0129】
R−接続行列ARの第1列の左側に本部Cの接続ベクトルを挿入した行列をACとおく:
【数29】
この行列ACを以下「C−接続行列」と呼ぶ。
【0130】
なお、aijを各装置間の通信精度と定義したが、0−1変数を用いることによって通信の可/不可を表すことができる。この場合、得られる結果は通信精度ではなく伝送経路数となる。
【0131】
(例1)
図16に示すようなネットワークの場合、接続ベクトルおよび接続行列は以下のようになる。
【数30】
【数31】
【数32】
【数33】
ただしこの例での通信精度は、通信可能ならば1,通信不可能ならば0とした。
【0132】
1.2 行列演算による伝送精度計算
第i成分のみが1で残りの成分が0であるようなK次元横ベクトルを単位ベクトルejと呼ぶ:
【数34】
【0133】
また、第j成分のみが1で残りの成分が0であるようなK次元縦ベクトルを単位ベクトルfjと呼ぶ:
【数35】
【0134】
これらの単位ベクトルと接続行列の演算を考える。C−接続行列に単位ベクトルeiを左から掛けると以下の結果が得られる。
【数36】
【0135】
aij(j=1,2,…,K)はRiのup側とRjのlow側間の通信精度を表す。また、ai0はRiのup側と本部C間の通信精度を表す。従って、ベクトルeiACはRiのup側と通信可能な装置との通信精度を表すベクトルとなっている。
【0136】
次に一般のK次元横ベクトルu=(u1,u2,…,uK)とC−接続行列の演算を考える。
【数37】
なので、
【数38】
となる。eiACはRiのup側で通信可能な装置との通信精度を表すベクトルであった。ベクトルuの第i成分uiがRiへの通信精度の総和、すなわち
【数39】
をあらわすとき、ベクトルuieiACの第k成分は
【数40】
となり、Riへ精度の総和がuiで送られてきた情報を、Rkへ伝送するときの通信精度の総和を表す。また、ベクトルuieiACの第0成分はRiへ精度の総和がuiで送られてきた情報を本部Cへ伝送するときの通信精度の総和を表す。従ってベクトル
【数41】
は、各中継車Rへ精度の総和がuで送られてきた情報を、次の中継装置(または本部C)へ伝えるときの通信精度の総和を表すベクトルとなっている。
【0137】
以上を踏まえ、次の二つの線型写像fup,gupを定義する。
写像fupは、横ベクトルu∈RKに対して、ベクトルuACの第0成分が対応する写像とする。式(10)および式(11)より、
【数42】
と表される。
【0138】
次に写像gupは、横ベクトルu∈RKに対して、ベクトルuACの第0成分を削除したベクトルが対応する写像とする。式(10)および式(11)より、
【数43】
と表される。
【0139】
写像fupは精度の総和がuで伝わった情報が、一回中継されて本部Cへ伝送されるときの通信精度の総和を与える。一方、写像gupは、精度の総和がuで伝わった情報が、一回中継されて他の中継車Rへ伝送されるときの通信精度の総和を表すベクトルを与える。
【0140】
特にベクトルuとして、Sjの接続ベクトルsjをとると、fup(sj)はSjから1個の中継車Rを介して各中継車Rへ情報を伝送する際の通信精度ベクトルを表す。同様に、gup(sj)はSjから1個の中継車Rを介して各中継車Rへ情報を伝送する際の通信精度ベクトルを表す。
このことから、fk up(sj)はSjからk個の中継車Rを介して本部Cへ情報を伝送する際の通信精度を表し、gk up(sj)はSjからk個の中継車Rを介して各中継車Rへ情報を伝送する際の通信精度ベクトルを表す。ただし、fk upおよびgk upは、それぞれ写像fup,gupのk乗を表す。またf0 upは、観測車Sから直接本部Cへつながる経路はないものと仮定するので恒等的に0とし、g0 upは恒等写像を表すものとする。
【0141】
例2
図16の例1の場合、写像fup,gupの計算をすると以下のようになる。
【数44】
【0142】
これより
【数45】
【数46】
【0143】
この例では0−1変数を用いているので、得られた数値は通信精度ではなく伝送経路数を表す。上記結果より、観測車Sから1個の中継車Rを介して本部Cに至る経路が1本、1個の中継車Rを介してR4に至る経路が2本存在することが計算された。これは図17の内容と一致する。
【0144】
さらに、
【数47】
であるから、
【数48】
【数49】
となり、観測車Sから2個の中継車Rを介して本部Cに至る経路は2本あり、2個の中継車Rを介して観測車Sと通信可能な中継車Rは存在しないことが計算される。これについても図17の内容と一致する。
【0145】
上記の例2からわかるとおり、
【数50】
は、SjからN回以下の中継を介して本部Cに情報を伝送する際の通信精度の総和を表す。また
【数51】
の第i成分はSjからN回以下の中継を介してRiに情報を伝送する際の通信精度の総和を表す。中継車Rの総数がK以下で、伝送経路にループがない場合には、中継回数はK回以下なので、N=Kとすれば
【数52】
はSjから本部Cへ至る全ての経路についての精度の総和であり、
【数53】
の第i成分は、SjからRiに至る全ての経路についての通信精度の総和を表すことになる。
【0146】
次に、S−接続行列に(縦)単位ベクトルfjを掛ける演算について考える。
【数54】
aijは、各中継車RからRjのlow側へ情報を伝達する際の通信精度を表す。
【0147】
また、一般のK次元縦ベクトルv=t(v1,…,vK)とAsの積は、
【数55】
であることから次式のようになる。
【数56】
【0148】
vjが中継車Rを通る通信経路の、Rj以降の通信精度の総和を表すとすれば、ベクトルvjASfjの第i成分はvjaijとなり、RiまたはSiからRjを介して通信する場合の、通信精度の総和を表すことになる。
【0149】
以上を踏まえ、2つの線形写像flowおよびglowを次のように定める。写像flowは、(縦)K次元ベクトルv∈RKに対して、ベクトルASvの第K+1〜K+1成分を並べたベクトルを対応させる写像とする。式(20)および式(21)より、
【数57】
となる。また、写像glowは、K次元ベクトルv∈RKに対して、ベクトルASvの第1〜K成分を並べたベクトルを対応させる写像とする。式(20)および式(21)より、
【数58】
表される。
【0150】
写像flowは、観測車Sから発信された情報が、精度vの1回の中継を経て他に伝送される場合の通信精度の総和を表す。また、写像glowは、各中継車Rから発信された情報が、精度vの1回の中継を経て他に伝送される場合の通信精度の総和を表す。
【0151】
特にvとして本部Cの接続ベクトルcをとると、flow(c)は本部Cから1個の中継車Rを介して観測車Sへ情報を伝送する際の通信精度を表す。同様に、glow(c)本部Cから1個の中継車Rを介して各中継車Rへ情報を伝送する際の通信精度ベクトルを表す。
【0152】
このことから、fk low(c)は本部Cからk個の中継車Rを介して観測車Sへ情報を伝送する際の通信精度を表し、gk low(c)は本部Cからk個の中継車Rを介して各中継車Rへ情報を伝送する際の通信精度ベクトルを表す。ただし、fk lowおよびgk lowは、それぞれ写像flow、glowのk乗を表す。また、f0 lowは、観測車Sから直接本部Cへつながる経路はないものと仮定するので恒等的に0とし、g0 lowは恒等写像を表すものとする。
【0153】
例3
再び図16例1の場合、写像flow、glowの計算をすると以下のようになる。
【数59】
【0154】
これより
【数60】
【数61】
【0155】
この例では0−1変数を用いているので、得られた数値は通信精度ではなく伝送経路数を表す。上記結果より、本部Cから1個の中継車Rを介して観測車Sに至る経路が1本、1個の中継車Rを介してR1およびR2に至る経路がそれぞれ1本ずつ存在することが計算された。これは図18の内容と一致する。
【0156】
さらに、
【数62】
であるから、
【数63】
【数64】
となり、本部Cから2個の中継車Rを介して観測車Sに至る経路は2本あり、2個の中継車Rを介して本部Cと通信可能な中継車Rは存在しないことが計算される。これについても図18の内容と一致する。
【0157】
上記の例3からわかるとおり、
【数65】
の第i成分は、本部CからN回以下の中継を介してSiに情報を伝送する際の通信精度の総和を表す。また
【数66】
の第i成分は本部CからN回以下の中継を介してRiに情報を伝送する際の通信精度の総和を表す。中継車Rの総数がK以下で、伝送経路にループがない場合には、中継回数はK回以下なので、N=Kとすれば
【数67】
の第i成分は、本部CからSiへ至る全ての経路についての精度の総和であり、
【数68】
の第i成分は、本部CからRiに至る全ての経路についての通信精度の総和を表すことになる。
【0158】
以上の例2、例3より、
【数69】
の第i成分を
【数70】
の第i成分を
【数71】
と書くとき、Riを通り、Sjと本部Cと結ぶ全ての通信経路の通信精度の総和は
【数72】
で与えられる。なお、接続行列を0−1で設定すれば、式(30)はRiを通り、Siと本部Cをつなぐ経路の総数を与えることに注意する。
【0159】
例4
図16の例1の場合、各中継車Rを通る経路数の計算は以下のようになる。
例2より、
【数73】
【数74】
【数75】
【数76】
である。これより、中継車R1〜4を通る経路数ベクトルで書くと(1,1,1,2)となる。これは図19の内容一致する。
【0160】
また、経路総数については、
【数77】
となり、これについても図19の内容と一致する。
【0161】
次に、行列計算による伝送能力計算の具体例について説明する。
[最重要中継車選択と評価関数計算のアルゴリズム]について、図8(b)の方針に基づき具体的に説明する。ただし、伝送品質を0.9=a、0.8=b、0.7=cと記号表現し、a×bをabと表す。また、中継車を配置していない候補地はないものとして除いてある。
【0162】
【数78】
【0163】
【数79】
【0164】
【数80】
【0165】
【数81】
【0166】
【数82】
【0167】
【数83】
【0168】
【数84】
【0169】
【数85】
【0170】
【数86】
【0171】
【数87】
【0172】
【発明の効果】
本発明のネットワークシステムによれば、サーバの負荷を上昇させることなく、ユーザが任意の時間にデータを取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、観測車と対策本部を結ぶ中継車の配置の例を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、回避されるべき混信が発生する例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、複数の通信経路が定義できる例を示す図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、混信内容とその回避法を示す図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、表現する記号をまとめた第1の図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、表現する記号をまとめた第2の図である。
【図7】図7は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、表現する記号をまとめた第3の図である。
【図8】図8(a)は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、中継車の位置が固定された周波数割り当ての第1の例を示し、図8(b)は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、中継車の位置が固定された周波数割り当ての第2の例を示している。
【図9】図9は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、図8(a)、(b)のケースにおける評価値とロバスト性を示す図である。
【図10】図10は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、解法の能力を評価するための検証が行われたときの基本条件を示す図である。
【図11】図11は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、検証が行われたときの中継車の配置候補位置と初期配置、本部、観測車の配置例を示す図である。
【図12】図12は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、検証が行われたときの選択された観測車と本部を結ぶ最も伝送品質の高い経路を示す図である。
【図13】図13は、図12において、最も重要な中継車が使用不要になった場合の経路例を示す図である。
【図14】図14は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、検証の際の繰り返し計算数が多いときの結果例を示す図である。
【図15】図15は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、検証の際の本部と観測車の位置関係を変えたときの結果例を示す図である。
【図16】図16は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、通信可能性の行列表示を説明するためのネットワークの一例を示す図である。
【図17】図17は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、行列演算による伝送精度計算を説明するためのネットワークの一例を示す図である。
【図18】図18は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、行列演算による伝送精度計算を説明するためのネットワークの他の例を示す図である。
【図19】図19は、本発明の一実施形態の通信経路の最適化方法において、行列演算による伝送精度計算を説明するためのネットワークの更に他の例を示す図である。
【符号の説明】
R1 中継車
R2 中継車
R3 中継車
R4 中継車
R5 中継車
R6 中継車
S1 観測車
S2 観測車
S3 観測車
S4 観測車
C 対策本部
J 最重要中継機
Claims (16)
- 第1通信局と第2通信局との間の無線通信を中継するための複数の中継局を最適に配置するための通信経路の最適化方法であって、
(a) 前記複数の中継局が配置されたときの前記第1通信局と前記第2通信局との間の伝送品質および通信経路数の少なくともいずれか一方を評価値として設定するステップと、
(b) 前記設定された評価値を算出するステップと、
(c) 前記算出された評価値に基づいて、前記複数の中継局の配置を最適化するステップと
を備え、
前記(b)において、前記設定された評価値を算出する際には、前記複数の中継局のうちの最も重要なN(Nは1以上の整数)台の中継局を求め、前記最も重要なN台の中継局を通過しない通信経路についてのみの前記設定された評価値を算出する
通信経路の最適化方法。 - 請求項1記載の通信経路の最適化方法において、
前記(b)は、前記複数の中継局のそれぞれが使用される通信経路数を計算することを含み、前記通信経路数の計算は、前記複数の中継局、前記第1通信局および前記第2通信局間の通信可能性を表す行列を用いて行われる
通信経路の最適化方法。 - 請求項1記載の通信経路の最適化方法において、
前記(b)は、前記複数の中継局、前記第1通信局および前記第2通信局間の伝送品質を表す行列を用いて、前記第1通信局と前記第2通信局との間の伝送品質を計算することを含む
通信経路の最適化方法。 - 請求項1から3のいずれか1項に記載の通信経路の最適化方法において、
前記(c)における前記複数の中継局の配置の最適化は、発見的手法により行う
通信経路の最適化方法。 - 請求項4記載の通信経路の最適化方法において、
前記発見的手法は、シミュレーティド・アニーリングである
通信経路の最適化方法。 - 第1通信局と第2通信局との間の無線通信を中継するための複数の中継局を最適に配置するための通信経路の最適化方法であって、
(d) 前記複数の中継局の配置に関する方針Xを生成するステップと、
(e) 前記方針Xの前記複数の中継局のうち最重要中継局J(X)を求めるステップと、
(f) 前記方針Xから前記最重要中継局J(X)を除いた場合の評価値G(X−J(X))を求めるステップと、
(g) 前記評価値G(X−J(X))が最大となるX=Xoptを求めるステップと、
(h) 前記方針Xoptを出力するステップと
を備えた通信経路の最適化方法。 - 第1通信局と第2通信局との間の無線通信を中継するための複数の中継局のそれぞれへの周波数割り当てを最適に行うための周波数割り当て決定方法であって、
(i) 前記複数の中継局のそれぞれへの周波数割り当てに関する方針Xを生成するステップと、
(j) 前記方針Xの前記複数の中継局のうち最重要中継局J(X)を求めるステップと、
(k) 前記方針Xから前記最重要中継局J(X)を除いた場合の評価値G(X−J(X))を求めるステップと、
(l) 前記評価値G(X−J(X))が最大となるX=Xoptを求めるステップと、
(m) 前記方針Xoptを出力するステップと
を備えた周波数割り当て決定方法。 - 第1通信局と第2通信局との間の無線通信を中継するための複数の中継局を最適に配置するとともに前記複数の中継局のそれぞれへの周波数割り当てを最適に行うための通信経路の最適化方法であって、
(n) 前記複数の中継局の配置と周波数割り当てに関する方針Xを生成するステップと、
(o) 前記方針Xの前記複数の中継局のうち最重要中継局J(X)を求めるステップと、
(p) 前記方針Xから前記最重要中継局J(X)を除いた場合の評価値G(X−J(X))を求めるステップと、
(q) 前記評価値G(X−J(X))が最大となるX=Xoptを求めるステップと、
(r) 前記方針Xoptを出力するステップと
を備えた通信経路の最適化方法。 - 請求項6または8に記載の通信経路の最適化方法において、
更に、
(s) 前記方針Xoptに従って、前記複数の中継局を配置するステップと
を備えた通信経路の最適化方法。 - 請求項6、8及び9のいずれか1項に記載の通信経路の最適化方法において、
更に、
(t) 前記方針Xを採用したときの前記複数の中継局の配置の容易性を示すU(X)を求めるステップと、
(u) 前記評価値G(X−J(X))と前記U(X)の和を前記方針Xの評価値F(X)とするステップと、
(v) 前記F(X)が最大となるX=Xoptを求めるステップと
を備え、
前記(g)、(q)に代えて、前記(t)、(u)および(v)を実行する
通信経路の最適化方法。 - 請求項6、及び8から10のいずれか1項に記載の通信経路の最適化方法において、
更に、
(aa) 前記中継局をh台経由して、前記第1通信局と前記第2通信局を結ぶ経路の伝送品質の総和を示す第1の値を求めるステップと、
(ab) 前記第1通信局から特定の前記中継局が経路として前記h台目となるような経路全体での前記第1通信局から前記特定の前記中継局までの伝送品質を示す第2の値を求めるステップと、
(ac) 前記第2通信局から前記特定の前記中継局が経路として前記h台目となるような経路全体での前記第2通信局から前記特定の前記中継局までの伝送品質を示す第3の値を求めるステップと、
(ad) 前記第2の値と前記第3の値に基づいて、前記特定の前記中継局を経由して前記第2通信局から前記第1通信局へ至る全ての経路での伝送品質の和を示す第4の値を求めるステップと、
(ae) 前記第1の値に基づいて、前記第1通信局と前記第2通信局を結ぶ通信経路の伝送品質の総和を示す第5の値を求めるステップと
を備え、
前記最重要中継局J(X)は、前記第4の値および前記第5の値に基づいて求められる
通信経路の最適化方法。 - 第1通信局と第2通信局との間の無線通信を中継するための複数の中継局が最適に配置された通信経路の生成装置であって、
前記複数の中継局が配置されたときの前記第1通信局と前記第2通信局との間の伝送品質および通信経路数の少なくともいずれか一方を評価値として設定する評価値設定部と、
前記設定された評価値を算出する評価値算出部と、
前記算出された評価値に基づいて、前記複数の中継局の配置を最適化する最適化部と
を備え、
前記評価値算出部が前記設定された評価値を算出する際には、前記複数の中継局のうちの最も重要なN(Nは1以上の整数)台の中継局を求め、前記最も重要なN台の中継局を通過しない通信経路についてのみの前記設定された評価値を算出する
通信経路の生成装置。 - 請求項1から6、及び8から11のいずれか1項に記載の通信経路の最適化方法の各ステップをコンピュータに実行させるための通信経路の最適化プログラム。
- 請求項7に記載の周波数割り当て決定方法において、
更に、
(t) 前記方針Xを採用したときの前記複数の中継局の配置の容易性を示すU(X)を求めるステップと、
(u) 前記評価値G(X−J(X))と前記U(X)の和を前記方針Xの評価値F(X)とするステップと、
(v) 前記F(X)が最大となるX=X opt を求めるステップと
を備え、
前記(l)に代えて、前記(t)、(u)および(v)を実行する
周波数割り当て決定方法。 - 請求項14に記載の周波数割り当て決定方法において、
更に、
(aa) 前記中継局をh台経由して、前記第1通信局と前記第2通信局を結ぶ経路の伝送品質の総和を示す第1の値を求めるステップと、
(ab) 前記第1通信局から特定の前記中継局が経路として前記h台目となるような経路全体での前記第1通信局から前記特定の前記中継局までの伝送品質を示す第2の値を求めるステップと、
(ac) 前記第2通信局から前記特定の前記中継局が経路として前記h台目となるような経路全体での前記第2通信局から前記特定の前記中継局までの伝送品質を示す第3の値を求めるステップと、
(ad) 前記第2の値と前記第3の値に基づいて、前記特定の前記中継局を経由して前記第2通信局から前記第1通信局へ至る全ての経路での伝送品質の和を示す第4の値を求めるステップと、
(ae) 前記第1の値に基づいて、前記第1通信局と前記第2通信局を結ぶ通信経路の伝送品質の総和を示す第5の値を求めるステップと
を備え、
前記最重要中継局J(X)は、前記第4の値および前記第5の値に基づいて求められる
通信経路の最適化方法。 - 請求項7、14、及び15のいずれか1項に記載の周波数割り当て決定方法の各ステップをコンピュータに実行させるための周波数割り当て決定プログラム。
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