JP3902339B2 - 軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法 - Google Patents

軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術及びその課題】
軽量気泡コンクリートパネル等のコンクリート製品は、その製品寸法が大きいために、製造後、出荷されるまでの間、屋外において保管される場合が多い。
【0003】
ここで、軽量気泡コンクリートパネルは、セメント、石灰及び珪酸質の粉末などからなる混合物に、水を適当量添加混合し、次いで発泡剤であるアルミニウム等の金属粉末を加えて攪拌、或いは空気を混入する等の方法によって気泡を含有せしめた後、凝固硬化させ、さらにオートクレーブに移して高温高圧にて水蒸気養生することにより製造されている。
【0004】
このようにして製造された軽量気泡コンクリートパネルは、その表面及び内部に多数の気泡を有しているため、コンクリート製品の中では吸水性が高い。そのため、該軽量気泡コンクリートパネルを屋外において保管すると、その間に降雨に濡れ、変色及び吸水を来たし、変色による製品外観品質の低下、及び吸水によりパネル重量が増加し、該パネルによる壁面の構築等の施工作業性が悪化すると言う課題が生じていた。
【0005】
そこで、従来においては、軽量気泡コンクリートパネルは、出来得る限り出荷時点まで屋内において保管する、或いは一部の製品においては、一枚ごと或いは複数枚ごとにビニールシートで覆う等の方策が採られていた。
しかし、屋内保管を完全に実施するには、広大な製品置場の全てに屋根を設置する必要があり、その設備投資が莫大となると共に、出荷後に現場において一時的にせよ屋外保管された場合には、その時点において同様の課題が発生してしまう。また、製品をビニールシートで覆う方法にあっては、施工時までの製品の吸水、また汚れの付着を防止できる方法ではあるが、施工時に製品から取り去ったビニールシートの処理が、環境上、昨今においては大きな課題となる。
【0006】
なお、施工後においては、軽量気泡コンクリートパネルにより構築された壁面には、表面仕上材、例えば有機質系ではアクリル、酢酸ビニルなどの合成樹脂エマルジョン、また無機質系では白色セメントを主体としたモルタルなどが塗布され、恒久的な防水処理がなされるために、軽量気泡コンクリートパネルの吸水性の高さは問題とはならない。
【0007】
本発明は、上述した軽量気泡コンクリートパネルの現状に鑑み成されたものであって、その目的は、軽量気泡コンクリートパネル自体に短期の撥水効果を持たせ、製造後、施工時までの間に該パネルが吸水による変色及び重量増加をきたさないようにすることにある。
なお、軽量気泡コンクリートパネルに、恒久的な撥水効果を持たせるために、撥水性物質を塗布、或いは内添する技術が存在する(特開昭49-60326、特開昭55-42272、特開昭55-104984 、特公昭62-14514、特公昭58-49507、特開昭62-7683 、特許第2765322 号等)が、これらと上記した本発明の目的とは、根本的に相違する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記した目的を達成すべく試験・研究を重ねた結果、軽量気泡コンクリートパネルの外面に、特定のシリコーン系撥水剤を水により希釈分散し、所定量塗布することによって該パネルに短期の撥水効果を経済的に持たせることができることを見いだし、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、粉末状とした珪酸質物質及び石灰質物質とを主原料とし、気泡を含有せしめた後に凝固硬化させ、さらに高温高圧にて水蒸気養生されて製造される軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法において、該パネルの外面に、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤、又はアルキルアルコキシシランとシロキサンを主成分とする撥水剤を水により希釈分散し、その有効成分換算で.3〜6.0g/m2 塗布した軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法とした。
【0010】
上記した本発明にかかる軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法によれば、軽量気泡コンクリートパネル自体が短期の撥水効果を有するものとなるため、製造後、出荷されるまでの間に例え屋外において保管されても、また出荷後、施工時までの間に現場において屋外保管されても、降雨を吸収することなく撥水するため、吸水による変色及び重量増加をきたすことがない
このことは、吸水性が高いにも係わらず、その製品寸法が大きいために、製造後、屋外保管を余儀なくされることの多い軽量気泡コンクリートパネルにおいては、需要者に、降雨の吸収による濡れ、及び変色等のない品質の良好な製品を提供できることとなり、その実用的な効果は非常に大きい。
また、本発明にかかる軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法によれば、該パネル自体に短期の撥水効果を持たせたものであるため、ビニールシート等で覆う方策とは異なり、梱包材等の後処理の問題も発生しない。
【0011】
ここで、上記本発明において、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤、又はアルキルアルコキシシランとシロキサンを主成分とする撥水剤と言ったシリコーン系撥水剤をパネル外面に塗布することとしたのは、表面仕上材として使用されている例えばアクリル、酢酸ビニルなどの合成樹脂エマルジョンを使用すると、表面に塗膜が形成され、該塗膜が軽量気泡コンクリートパネルの内部に含有されている水分の気化乾燥を著しく阻害するためである。
即ち、本発明の目的は、軽量気泡コンクリートパネルの製造後、施工されるまでの間、降雨の吸水による品質低下を防ぐことにあるため、その撥水処理は、製造後まもなく行うことが好ましい。しかし、製造直後の軽量気泡コンクリートパネルは、その含水率が高いために、気化乾燥を阻害するような合成樹脂エマルジョンは不適であり、塗膜を形成せず、経済的であり、しかも撥水性能の優れたシリコーン系撥水剤を塗布することとした。
【0012】
また、シリコーン系撥水剤には、本発明において使用するアルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤、又はアルキルアルコキシシランとシロキサンを主成分とする撥水剤の他、シリコネートを主成分とする撥水剤、或いはシロキサンを主成分とする撥水剤があるが、短期の撥水効果及び経済性を考慮し、本発明においては、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤、又はアルキルアルコキシシランとシロキサンを主成分とする撥水剤を使用することとした。
【0013】
更に、上記本発明においては、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤、又はアルキルアルコキシシランとシロキサンを主成分とする撥水剤の塗布量を、その有効成分換算で.3〜6.0g/m2 としたのは、.3g/m2 に満たない塗布量では、軽量気泡コンクリートパネルに短期(1か月程度)の撥水効果を持たせることが出来ないことが試験により判明したためであり、また6.0g/m2 を越える量を塗布することは、必要以上の撥水効果を軽量気泡コンクリートパネルに付与することとなり、経済的ではないと共に、施工後の表面仕上材、特に表面仕上材がモルタルである場合には、該モルタルの付着強度を塗布した撥水剤が阻害することがあるためである。
【0014】
なお、上記シリコーン系撥水剤の塗布の時期は、本発明の目的からして、保管前の、製造後まもない時期において行われることが好ましい。また、塗布方法は、スプレー、ローラー或いはフローコーター等、いずれの塗布方法によって行っても良い。
【0015】
【試験例】
以下、上記した本発明にかかる軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法を見出すに至った試験例につき説明する。
【0016】
先ず、本発明の目的を達成するためには、製造後まもない時点での処理が必要であるため、含水率の高いパネルの気化乾燥を阻害しない(塗膜を形成しない)撥水剤を使用することを前提とした。
塗膜を形成しない撥水剤としては、脂肪酸系、パラフィン系、シリコーン系の撥水剤があるが、撥水性及び経済性を考慮し、シリコーン系撥水剤を使用することとした。
【0017】
市販されているシリコーン系撥水剤5種類を入手し、該撥水剤を用いて好ましい撥水剤の種類及びその塗布量を特定するため、下記の試験を実施した。
【0018】
〔試験例1〜35〕
−屋外暴露における表面の撥水性評価試験−
絶乾かさ比重が0.5のオートクレーブ養生により製造された軽量気泡コンクリートパネル(厚さ0.1m×幅0.4m×長さ0.6m)の表面に、各々入手した5種類のシリコーン系撥水剤を、表1に示した塗布量(有効成分換算)となるように各々エアー吹き付けにて塗布した。
【0019】
その後、降雨のあたる屋外において各パネルを保管し、表面の撥水性を、経時的に表面滴下(2ml滴下)により確認した。
なお、経時は、塗布直後を0日とし、以降、10日、20日、30日及び60日の時点とした。また、表面撥水性の評価は、目視にて行い、滴下後、水滴の跡が全く残らない場合は◎、水滴の跡が微かに残る場合は○、水滴の跡がはっきり残る場合は△、撥水が無い場合は×と評価した。
評価結果を表1に併記する。
【0020】
また、屋外保管30日間の降雨時のパネルの変色の有無を観察し、撥水剤を塗布したことによる撥水効果(吸水による変色の有無)を確認した。
なお、評価は、外観について目視で行い、降雨の吸収による変色が全く無い場合は◎、変色が僅かにある場合は○、変色がかなり有る場合は×と評価した。
さらに、撥水剤を塗布することによるコストを評価した。
このコストの評価は、従来、一部の製品について行われていたビニールシートによる梱包コストを下回る場合は○、同等の場合は△、ビニールシートによる梱包コストを越える場合は×と評価した。
各々の評価結果を表1に併記する。
【0021】
【表1】
Figure 0003902339
【0022】
なお、本試験中における降水量は、屋外保管開始から10日目にかけて67mm、11日目〜20日目にかけて55mm、21日目〜30日目にかけて42mm、31日目〜60日目にかけて110mmの降雨があり、総降水量は274mmであった。この降水量は、同時期(2月下旬〜4月下旬)の平均降水量よりもかなり高いものであった。
【0023】
上記試験例から、シリコーン系撥水剤中、特にアルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤、又はアルキルアルコキシシランとシロキサンを主成分とする撥水剤が、軽量気泡コンクリートパネルに短期の撥水性を付与するのに好ましい撥水剤であることが分かった。
また、その塗布量は、有効成分換算で少なくとも0.3g/m2 パネル表面に塗布すれば、30日程度の間(一般的に、製造後、出荷されるまでの最長期間)、撥水性をパネル表面に付与でき、降雨の吸収による変色を阻止できることが分かった。
また、上記シリコーン系撥水剤を、その有効成分換算で.0g/m2 を越える量パネル表面に塗布しても、必要以上に(30日を遙に越える期間)撥水性をパネル表面に付与するだけで、経済的ではないことが分かった。
【0024】
以上の試験結果から、吸水性を有する軽量気泡コンクリートパネルの外面に、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤、又はアルキルアルコキシシランとシロキサンを主成分とする撥水剤を、その有効成分換算で.3〜6.0g/m2 塗布した軽量気泡コンクリートパネルとすることにより、該パネルに短期の撥水効果を持たせることができ、製造後、出荷されるまでの間、例え屋外において保管されても、また出荷後、施工時までの間、現場において屋外保管されても、降雨を吸収することなく撥水し、吸水による変色をきたすことがない軽量気泡コンクリートパネルを提供できるとする、本発明を完成させた。
【0025】
【発明の効果】
以上、説明した本発明にかかる軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法は、該パネル自体が短期の撥水効果を有するものとなるため、その製品寸法が大きいために、製造後、屋外保管を余儀なくされることの多い軽量気泡コンクリートパネルを、需要者に、降雨の吸収による濡れ、及び変色等のない良好な品質状態のままで提供できることとなり、その実用的な効果は非常に大きい。

Claims (1)

  1. 粉末状とした珪酸質物質及び石灰質物質とを主原料とし、気泡を含有せしめた後に凝固硬化させ、さらに高温高圧にて水蒸気養生されて製造される軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法において、該パネルの外面に、アルキルアルコキシシランを主成分とする撥水剤、又はアルキルアルコキシシランとシロキサンを主成分とする撥水剤を、その有効成分換算で0.3〜6.0g/m 2 塗布したことを特徴とする、軽量気泡コンクリートパネルの短期の保管方法
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