JP3899829B2 - ポンプ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は非容積型の羽根車を有するポンプに係わり、特に、ポンプの小形化に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポンプを小形化することは、製造業者にとっては製作コストや、運搬・据付経費の低減を図ることが可能である。一方、ポンプ使用者の顧客にとっては、ポンプの据付面積の縮小、ひいてはポンプ機場の建設費の縮減を図ることが可能である。従って、両者にとってポンプ小形化の要求は大きい。その実現には、羽根車の回転数を上げて、高速化することが有効であることはよく知られている。
また、別の手段として、ポンプ回転数は上げることなく同じ仕様の全揚程、吐出し量を満足させつつ羽根車外径を小さくしてポンプを小形化するため、羽根車羽根の出口角度を大きく設定することも考えられている。
【0003】
なお、この種従来技術としては特開平6−123298号公報に記載されたもの等がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、羽根車の回転数を上げて高速化して小形化するには、ポンプのキャビテーションの発生が少ない羽根形状や流路形状の設計(キャビテーション性能の向上)が必要であり、この課題の解決は極めて困難な状況にある。
一方、ポンプ回転数は同一とし、羽根出口角度を大きく設定して同仕様の全揚程、吐出し量を満足させつつ小形化する場合には次のような課題があった。すなわち、羽根出口角を大きくすると羽根単位長さ当たりの負荷が増大し、低流量域で剥離・失速による揚程曲線の不安定部が顕著に現れる傾向にある。この不安定部においては、ポンプの作動点が2ケ以上存在し、吐出し量がそれらの点に移動することが生じ、安定な運転が不可能になるという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、羽根車の回転数を上げる必要がなく、しかも低流量域で剥離・失速による揚程曲線の不安定部が現れるのも抑制しつつ小形化することのできるポンプを得ることにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明のポンプの特徴は、ケーシングと、このケーシング内に設けられ複数の羽根を有する羽根車と、前記ケーシングの内面に設けられ、前記羽根車の入口側とケーシング内面の羽根車存在域内とを連通する複数本の溝と、を備え、前記羽根車の上流側の前記ケーシングには前置案内羽根を設け、この前置案内羽根は、設計流量において羽根車出口における絶対流れの方向がポンプ軸方向に向くように設定されていることにある。このように前置案内羽根を設けた場合でも、前記羽根の出口角は30度以上の値に設定するのが好ましい。
【0015】
本発明のポンプの他の特徴は、ポンプケーシングと、このケーシング内に設けられ複数の羽根を有する羽根車と、ポンプケーシング下流側に配置された吐出ベンド管と、該吐出ベント管を上下に貫通し下端側に前記羽根車を取付けたポンプ軸とを有する立軸ポンプにおいて、前記ケーシングの内面に設けられ、前記羽根車の入口側とケーシング内面の羽根車存在域内とを連通する複数本の溝を備え、この溝はその幅が5mm以上で、溝深さは溝幅より小さくし、前記羽根車の羽根出口角は30〜90度の範囲に設定され、前記吐出ベンド管の断面形状は、その流路曲り中央付近断面において、曲りの内外径差が曲り部の流路幅より小さい楕円形状としたことにある。
【0016】
ここで、前記吐出ベンド管の断面形状は、好ましくは入口側断面及び出口側断面では円形とする。また、前記吐出ベンド管の流路曲りの中央付近断面における断面形状において、ベンドの曲り半径方向Rbの流路幅hを、曲り平面に垂直な方向(半径方向Rbに垂直な方向)の流路幅Wに対し、W=(1.3〜2.0)hとなるように設定すると良い。さらに、前記吐出ベンド管の流路曲りの中央付近断面における流路断面積は吐出ベンド管入口部断面積の1.0倍〜1.2倍に設定すると良い。また、吐出ベンド管の内壁面に主流方向の複数の溝を設置すると良い。
【0017】
【発明の実施の形態】
図2は排水ポンプなどに適用されている典型的な立軸斜流ポンプの構造を示す図である。吸込水槽9の水は、ベルマウス6、シュラウドのないオープン羽根車1、該羽根車1の出口側に設けた後置案内羽根2、吐出ケーシング3、吐出ベンド管4、吐出管8を経て吐出口に導かれる。7はポンプ軸で、このポンプ軸の下端には前記羽根車1が取り付けられている。また、吐出ベント管4にはポンプ軸7を支持するための軸受13が設けられ、更にポンプケーシング121に固定された後置案内羽根2に支持されているハブ21内にもポンプ軸を回転支持する水中軸受(図示せず)が設けられている。
【0018】
羽根車のシュラウド側の羽根出口角は、一般には15〜30度位の角度が適用されている。これは図3に示す揚程曲線(揚程−流量特性曲線)10のように、右上がりの不安定部Fが発生しないようにするためである。
【0019】
すなわち、羽根出口角を大きくすると羽根単位長さ当たりの負荷が増大し、低流量域で剥離・失速による揚程曲線の不安定部(右上がり特性)が、図3に示すように顕著に現れる傾向にある。この不安定部が生ずる吐出し量においては、ポンプの作動点は図に示すように2ケ以上の点(a,b,c)が存在し、吐出し量がそれらの点に移動することが生じ、安定な運転が困難になる。
【0020】
そこで、本発明では、羽根車の回転数を上げる必要がなく、しかも低流量域で剥離・失速による揚程曲線の不安定部が現れるのも抑制しつつ小形化するために、次の対策を講じた。すなわち、ポンプ羽根車羽根の出口角を従来の値より大きな30度以上でかつ90度以下の範囲(羽根車の周方向から測った角度)に設定し、しかもポンプケーシング内面には、羽根入口側とケーシング内面の羽根存在域内とを結ぶ複数本の溝を設けたものである。前記羽根出口角度は、ポンプの小形化と揚程曲線の安定化の双方を考慮すると、好ましくは50〜70度の範囲内とするのが良い。
【0021】
ポンプ羽根車の出す理論揚程は数1で表される。
【0022】
【数1】
Figure 0003899829
【0023】
ここで、Hth:理論揚程、n:回転速度(m/s)、 D2:羽根車外径(mm)、Q:吐出し量(m/s)、g:重力の加速度(m/s)、b:羽根車出口幅、β:羽根車羽根出口角(deg) である。数1から羽根車外径Dに関して求めると次式を得る。
【0024】
【数2】
Figure 0003899829
【0025】
上式によれば、理論揚程Hth、回転数n、吐出し量Q、羽根車出口幅bが一定の場合、出口角βを大とすれば、羽根車外径Dを小さくできることがわかる。従来の一般的なポンプの羽根車羽根出口角度としては、15度から30度の範囲の値が適用されているが、例えば、ポンプ羽根車の平均断面の羽根出口角として27度を適用していたものを、52度にすると、羽根車外径を75%に縮小することができ、断面積にすると約1/2の大きさに小形化できることになる。
【0026】
然るに、このような大きな出口角を羽根車に適用すると羽根が短くなり、羽根に加わる負荷が増大する。従って、設計点より小なる流量(低流量域)では羽根への迎え角が大となり、剥離、失速が起りやすくなる。その結果、図3に示すように、ポンプの揚程曲線10には低流量域において凹み(図のc部付近)が生じ、揚程曲線に右上がり部(図のb部付近)が存在する不安定特性を呈する。
【0027】
しかし、本発明においては、ポンプケーシング内面に、羽根入口側とケーシング内面の羽根存在域内とを結ぶ複数本の溝を設けているので、大きな出口角を羽根車に適用しても、安定な運転が可能である右下がりの安定な揚程曲線を実現することができる。
【0028】
以下、本発明の具体的実施例を説明する。◆
図1は、図2において点線で囲まれた部分Aを拡大して示す図である。ケーシング121内面の羽根車に対峙する羽根前縁付近には、羽根入口側とケーシング内面の羽根存在域内を結ぶ流体圧力の勾配方向の浅い溝が周方向に複数本形成されている。このように構成すると、揚程曲線に不安定部が現れる低流量域においては、ケーシング121内面の羽根122の中程a(溝の下流側終端位置)から低流量時に再循環流が発生する位置b(溝の上流側終端位置)の方向に流体圧力勾配が形成される。この溝124によって、羽根122により圧力の上昇した流体が溝124内を溝の下流側終端位置aから溝の上流側終端位置bに向かって逆流し、低流量時に発生する再循環流の発生場所に噴出して再循環流による旋回および羽根旋回失速の発生が防止される。すなわち、自身が昇圧した流体の一部がケーシングに形成された流路を逆流し、再循環流の発生場所に噴出して再循環流部の入口正流の予旋回及び羽根旋回失速の発生を抑制するので、ポンプの揚程−流量特性曲線の右上がり特性を除去することが可能となり、ポンプの揚程曲線は安定化される。
【0029】
また、本実施例では、図4に示すように、羽根車の羽根122の出口角βは従来の一般的なポンプに適用されている15〜25度より大きな30度以上90度未満の値に設定している。 例えば、比速度1200(m, m/min, min−1)の斜流ポンプ羽根車出口の平均径部における羽根出口角は、従来約27度位が使用されているが、本発明では、例えばその数値の約2倍である52度の羽根出口角が適用される。そうすれば、羽根車外径は、従来のものに対し約25%縮小され、約75%の大きさとなる。これは、ポンプ断面積ではその2乗となるから約1/2となる。
【0030】
羽根車羽根出口角βを大きな値にすると、羽根入口から出口に至る羽根の長さが短くなり、羽根の負荷(羽根の単位長さ当たりの揚程増大)が大きくなり、大きな迎え角において流れは剥離、失速を生じやすくなる。すなわち、図3に示すようにポンプの揚程曲線10の低流量域において、勾配が右上がりとなる凹み部すなわち不安定部が生ずる。しかし、本実施例においては、図1に示すように、ポンプケーシング内面に浅い軸方向の溝124を設けることにより、不安定な揚程曲線を安定な揚程曲線に改善している。従って、大きな出口角βを適用しても揚程曲線の不安定性の出現を抑制して右下がりの安定な揚程曲線が得られるから、本実施例によれば、羽根車の回転数を上げることなく、しかも低流量域で剥離・失速による揚程曲線の不安定部が現れるのも抑制して小形化できるポンプが得られる効果がある。従って、本実施例によれば、羽根車の外径(或いはポンプの外径)を大幅に縮小して、大幅なポンプの小形化を実現できる。
【0031】
なお、前記溝124は、羽根車羽根の入口側外周部に対峙するケーシング121内面に、羽根入口側の低流量時再循環流発生場所とケーシング内面の羽根存在域内とを流体圧力の勾配方向に結ぶ構成にすると共に、該溝の幅は5mm以上の浅い溝(溝の深さは溝幅より小さくすると良い)を周方向に多数形成し、該溝の下流側終端位置は、溝の上流側終端位置に再循環流が発生するのを抑制するために必要な圧力の流体を取り出す位置とするのが良い。
【0032】
前記溝124の好ましい構成を述べる。溝幅Wの合計値を溝の部分のケーシング周長で割った値をWR(幅比)、溝全体の体積を羽根車体積で割った値をVR(体積比)、溝幅 Wを溝深さDで割った値をWDR(幅深さ比)、溝の羽根入口から下流の長さと溝の深さとの比をDLDRとし、溝形状を決定する指標をJE No.として以下の式で求め、この指標JE No.が0.03〜0.5、好ましくはの0.15〜0.2の範囲となるように、前記溝の形状を構成すると良い。
JE No. = WR × VR × WDR × DLDR
例えば、前記溝124の幅が5mm以上で、周方向に複数設けられた溝幅の合計が、該溝が存在するケーシング内面周長に対し約30〜50%とし、かつ前記溝の深さは、2mm以上で、該溝が存在するケーシング内面直径の約0.5〜1.6%になるように形成すると良い。
【0033】
更に、前記軸方向(圧力勾配方向)の溝を周方向に接続する周方向溝を羽根入口付近のケーシング内面に設けることにより、前記軸方向溝が原因で発生し易い騒音の発生を抑制することも可能になる。
【0034】
図5は、図2に示す後置案内羽根2の部分の構成を詳細に示す図である。羽根車1の下流側に設けられたハブ21には前記案内羽根2(2a,2b)が設けられており、前記ハブ21の案内羽根取付け面(ハブ面21a)には、案内羽根2高さの1/3以下の羽根高さを有する中間羽根(小羽根或いはリブ)20が、後置案内羽根(2a,2b)間に設けられている。図6は羽根車出口の速度三角形を示す図で、従来の一般的な羽根出口角β2Cが15〜25度のもの((a)図参照)であるのに対して、本実施例では、例えばβを52度と大きくとると((b)図参照)、羽根車出口の絶対速度の周方向成分Cu2が大きくなる。このため、案内羽根2で必要な転向角がα2Cからαへと大きくなり、案内羽根2の負荷が大きくなる。一方、案内羽根2は一種の曲がりディフューザであり、負荷が大であるとハブ21側で剥離し、損失増大を伴う場合がある。それを回避するために前記中間羽根20は有効に作用する。すなわち、中間羽根20は、案内羽根のハブ側の負荷を軽減し、ハブ側の弦節比を大きくして流れの案内効果を大とし、剥離の発生を抑制して損失の増大を抑える機能を有している。従って、本実施例によれば、羽根122の大きな出口角度βを適用しても損失増大を回避することができ、高い効率を得ることができる。
【0035】
図7は本発明を適用することにより、ポンプの軸方向長さを短縮した例を示す図である。この例でも、羽根車の前縁付近に対峙するケーシング内面には、図1に示す複数の浅い溝124が同様に設けられている。一般にポンプでは、羽根車出口の動圧を静圧に回復させるため、羽根車の下流側に後置案内羽根2(図2参照)が設けられている。これに対し、この例では、羽根車の前方(上流側)に前置案内羽根11がケーシング121の内面に設けらている。この前置案内羽根11の機能は、動圧を静圧に圧力回復させるのではなく、流れを増速させ転向させることにある。なお、ケーシングに固定された前置案内羽根11の中心部側にセラミックス製などの水中軸受を設け、ポンプ軸7の下方端部7aをこの水中軸受により支持する構成とすることも可能である。
【0036】
前置案内羽根11と羽根車羽根との速度三角形を図8に示す。破線で示した速度三角形は前置案内羽根を設けず、後置案内羽根のみを設けた場合を示し、実線で示した速度三角形は図7のように前置案内羽根11を設けた場合を示している。前置案内羽根の場合、羽根車に流入する流れは案内羽根によりCに増速且つ転向され、羽根車には相対速度Wで流入し、羽根車内で減速され相対速度Wで流出する。この図に示すように、羽根車出口の絶対速度Cは軸方向を向いており、したがって、羽根車下流側で後置案内羽根により減速させて圧力回復させるようにする必要はない。このように、羽根車上流側のケーシングに設けた前置案内羽根を、設計流量において羽根車出口における絶対流れの方向がポンプ軸方向に向くように設定することにより、後置案内羽根が不要となり、ポンプ軸方向長さを短くすることが可能となる。
【0037】
なお、前置案内羽根は増速翼列であり、後置案内羽根の減速翼列に比べ一般的に損失を小さくできる。従って、前置案内羽根11の軸方向長さも短く設定可能となる。また、案内羽根はベルマウス6と羽根車1間の既存の流路内に設置できるので、ポンプのベルマウス6、案内羽根11及び羽根車1からなるポンプ主要部の軸方向長さは、後置案内羽根2を設置する場合に比べ、後置案内羽根2の分だけ実質的に軸方向長さを短くすることが可能である。
また、図8からわかるように、羽根入口の速度三角形において、羽根車羽根への相対流入角βは従来の流入角β1Cに比べ小さくなる。また、羽根出口速度三角形において、羽根出口の流出角βも従来のβ2Cに比べ小さくなる。従って、羽根車の羽根長さを長く設定することが可能で、従来の羽根車に比べ負荷が軽減されるから、揚程曲線に不安定部が発生する可能性が低減される。更に、例え揚程曲線に不安定部が発生するような場合でも、ケーシングに設けた溝124の効果により揚程曲線は安定化される。
【0038】
以上述べたように、本実施例によればポンプの軸方向長さを大幅に短縮できるとともに、安定な揚程曲線を得ることができる。
【0039】
図9は本発明を適用することにより、ポンプのメンテナンスを容易に実施できるように工夫した例である。すなわち、羽根車1、案内羽根2、軸部7、軸保護管12及び軸受部13(上軸受13a、下軸受13b)を一体に組み合わせて水力部Hとし、それ以外の部分であるベルマウス6、ケーシング121、吐出管3、吐出ベンド管4などにより構成される流路形成部材(固定流路部)Sに、上方から挿入して(b)図のように、水力部を組立て或いは取外し自在な構成としたものである。この例でも前記例と同様に、羽根車羽根に対峙するケーシング122内面には上述の浅い複数の溝124が形成され、また羽根車羽根は大きな出口角を持つように設定されている。
【0040】
このように、水力部Hと固定流路部Sとに分離し、水力部を固定設置された流路形成部材から一体部品として外部に取外すようにすることにより、ポンプを排水機場等に据え付けた後でも、点検、保守、修理等の必要性が特に大きい水力部Hを容易にポンプ外部に取り出すことができ、メンテナンス作業を極めて容易におこなうことができる。
【0041】
また、図9の例で、羽根車側の水中軸受14を省略し、原動機側に設けた2個の気中軸受13(13a,13b)のみにより軸を支承する構造とすることも可能である。これは本発明により羽根車が小形・軽量化できるので、上記軸受13からオーバーハングさせる軸方向長さを大とすることが可能になることから採用できる構造である。水中軸受を省略することにより、ポンプが気中運転した場合の信頼性を格段に向上でき、しかもセラミックス軸受などの高価な水中軸受を設置しなくてよいから、ポンプのコスト低減を図ることができる。
なお、前記図7に示したように、前置案内羽根11を設ける構造にすれば、更にポンプ軸方向長さを短縮できるから、より容易に水中軸受を廃した構造を採用可能となる。
【0042】
上記実施例の作用を説明する。羽根車で昇圧した液体の一部は、ケーシングに形成された圧力勾配方向の溝124を上流側に逆流して再循環流の発生場所に噴出する。すなわち、溝124から旋回のない流れが、羽根車からの逆流(再循環流)が形成する旋回成分を抑制し、羽根車へ流入する主流に予旋回が発生するのを抑制できる。これにより、羽根旋回失速の発生を抑制するので、ポンプの揚程−流量特性曲線に右上がり特性が発生するのを抑え、右下がりの安定な揚程曲線を得ることが可能となる。
【0043】
また、羽根車羽根出口角に大きな値(30〜90度)を適用することによりポンプの回転数を上げることなくポンプを小形化することができる。更に、前置案内羽根11を適用することによりポンプの全長を大幅に短縮することが可能となる。
【0044】
また、羽根車、案内羽根及び軸部からなる部品を一体に組み合わせた水力部と、それ以外の吐出管、吐出ベンド管、ケーシング等の流路形成部材とに分割し、水力部を流路形成部材に対し取付け取外し可能に構成することにより、ポンプの保守・点検等のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0045】
更に、羽根車を小形・軽量化することができるため、原動機側の2個の軸受13a,13bでオーバーハングさせる構造とすることができ、これによって高価な水中軸受を設ける必要がなく、しかもポンプの気中運転も可能となる。
【0046】
なお、本発明のように、羽根出口角を30度以上に大きくすると、ポンプ内の流速が速くなり、流動損失が増大しやすく、効率が低下し易くなる。これを解決するための効果的な手段を図10〜図12により説明する。
【0047】
図10は、図9に示す吐出ベンド4に改良を加えた例を示すものである。吐出ベンド管4は案内羽根2の出口側から吐出口に向かって、上下方向に設けられた羽根側部4a,曲り部4b,水平方向に設けられた吐出側部4cの3つの部分に分かれており、各部はフランジで締結され、ベンド流路が形成されている。(a)図の各部分I,J,K,Lにおける断面形状を(b)図に示す。(b)図の各吐出ベンド管断面形状を示す図において、各図の左側が吐出ベンド管の曲がりの内径側である。流路曲りの中央付近断面Jにおける断面形状において、ベンド管の曲り半径方向Rbの流路幅hは、曲り平面に垂直な方向(半径方向Rbに垂直な方向)の流路幅Wより小さな値に、例えばW=(1.3〜2.0)hとなるように設定されている。また、前記吐出ベンド管の流路曲りの中央付近断面における流路断面積は吐出ベンド管入口部断面積の1.0倍〜1.2倍に設定すると良い。ベンド管出口断面であるL部は円形状断面に構成されている。K部における断面形状は、L部の円形状断面と曲り中央付近断面Jの楕円形状とが連続的に滑らかに変化して結ばれるように形成されている。ベンド管の吐出側部4cでは、楕円形状の断面Kから円形の断面Lまで流路は拡大され、流れが減速される。この間の流路においては、流路面積が1.2〜2.0倍に拡大される。流路長さを短くし過大な拡大とならないように流路断面の中央に板状の整流板4c1が挿入されている。
【0048】
このように構成されたポンプでは、吐出ベンド管4の曲り中央付近断面J付近において、曲り流路の内径側面4b1と外径側面4b2とで構成される流路幅hが、通常のベンドの内径すなわちベンド入口径Dbより小となるように形成されている。従って、断面J付近において、ベンド部を通過する流れVに働く遠心力Fcにおいて、曲りの内径側4b1と曲りの外径側4b2とで働く遠心力の差は、流路曲りの半径差が小さいため、通常の場合に比べ小さくなる。
【0049】
一方、流路の出入口面積が一定の場合、すなわち流路において流れの減速や加速がない場合には、曲りによる内外径差のために、流れに働く遠心力に差が生じ、この遠心力差により図11に示すように2次流れが生じる。曲り流路の水力的損失は、この2次流れによる損失が主体である。従って、図10に示すように、曲り流路の内外径差が小さくなるように形成されると、内外径部の流れに働く遠心力差が小さくなり、その結果2次流れが小となり2次流れ損失を小さくできる。
【0050】
また、ベンド部分4cに整流板4c1を設置することにより、流路は急拡大とならず、拡大損失を小さく抑えつつ流れの速度エネルギーを圧力エネルギーに変換することができる。その結果、ポンプ効率を低下することなしにポンプの小形化を図ることが可能となる。
【0051】
本発明のポンプのように羽根車の羽根出口角を大きく設定して小形化したポンプでは、流路内の流速が増大し損失が大きくなりやすい。従って、上述のようなベンド管を適用すると吐出ベンド管における損失の増大が抑制され、従来のポンプと同等あるいはそれ以上の効率を得ることが可能となる。
また、図10に示すように、羽根車1と軸受13(13b)との軸方向距離Lb、すなわち軸のオーバーハング長さは、従来ポンプの場合より格段に小さく設定することができる。その結果、ポンプ軸径の縮小、原動機の設置高さの低減等が可能となり、ポンプ製作費の低減を図ることができる。
【0052】
図12は、吐出ベンド管4の内面壁に、流れ方向の多数の溝125を形成するようにしたものである。溝の深さ、幅、本数の幾何学的パラメータは、前述のJE No.が0.03〜0.5となるように形成する。溝125は、吐出ベンド入口断面部Iから出口断面部Mまでの間の流路壁に設けられている。或いは、少なくとも図12のJ部からL部(曲がり部の中心付近)に形成すると良い。更に、この図12の例では羽根車部分のポンプケーシング121と吐出ベンド管4との間に吐出ケーシング3が設けられており、この吐出ケーシング3の部分は円錐台形状(下流側に向かって流路面積が拡大するテーパ形状)に構成されている。
【0053】
このように構成された吐出ベンド管4では、流入した流れに残存している旋回成分や曲りによる遠心力作用により生ずる2次流れ等は溝125により主流方向に案内され、流路内を周方向に流れる速度成分は低減される。その結果、2次流れ損失が低減され、高いポンプ効率を維持できる。また、吐出ケーシング3の部分を円錐台形状とすることにより、ポンプ全体を効率良くコンパクト化することができる。
【0054】
【発明の効果】
本発明のポンプによれば、羽根車に対峙するケーシング内面に流体圧力勾配方向の浅い溝を周方向に複数本形成し、かつ羽根車羽根出口角を大きく構成したことにより、羽根入口部の再循環流による予旋回を抑制して揚程曲線の不安定性を防止する一方、ポンプの回転速度を上げることなく大幅な小形化が図れるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポンプの一実施例における羽根車入口部付近の構成を示す要部子午面断面図。
【図2】排水ポンプなどに適用されている典型的な立軸斜流ポンプの構造を示す図。
【図3】ポンプの揚程−流量特性曲線を説明する線図。
【図4】本発明のポンプの一実施例における羽根車羽根の出口角を説明する図。
【図5】図2に示す後置案内羽根2の部分の構成を詳細に示す図で、(a)はその要部の断面図、(b)は(a)図のb−b矢視図。
【図6】ポンプ羽根車の速度三角形を説明する図で、(a)は従来、(b)は本発明の速度三角形を説明する図。
【図7】本発明を適用することにより、軸方向長さを短縮したポンプの例を説明する斜流ポンプの縦断面図。
【図8】図7に示した例の羽根車の速度三角形を説明する図。
【図9】本発明を適用することにより、ポンプのメンテナンスを容易に実施できるように工夫した例を説明する斜流ポンプの縦断面図。
【図10】図9に示す吐出ベンド管に改良を加えた例を示す図で、(a)は縦断面図、(b)は(a)図の各部分I,J,K,Lにおける断面形状を示す図。
【図11】吐出ベンド管の部分における2次流れを説明する図。
【図12】吐出ベンド管の内面壁に、流れ方向の多数の溝を形成するように例を示すもので、(a)は縦断面図、(b)は(a)図のK部における断面形状の一部を示す図。
【符号の説明】
1…羽根車、2(2a,2b)…後置案内羽根、3…吐出ケーシング、4…吐出ベンド管、6…ベルマウス、8…吐出管、9…吸込み水槽、10…揚程−流量特性曲線、11…前置案内羽根、12…軸保護管、13…軸受(13a…上軸受、13b…下軸受)、18…システムカーブ、20…中間羽根(小羽根或いはリブ)、21…ハブ、21a…ハブ面、121…ポンプケーシング、122…羽根、124…圧力勾配方向の溝、125…溝、150…前置案内羽根。

Claims (7)

  1. ケーシングと、このケーシング内に設けられ複数の羽根を有する羽根車と、前記ケーシングの内面に設けられ、前記羽根車の入口側とケーシング内面の羽根車存在域内とを連通する複数本の溝と、を備え、
    前記羽根車の上流側の前記ケーシングには前置案内羽根を設け、この前置案内羽根は、設計流量において羽根車出口における絶対流れの方向がポンプ軸方向に向くように設定されていることを特徴とするポンプ。
  2. 請求項1において、前記羽根出口角を30度以上の値に設定したことを特徴とするポンプ。
  3. ポンプケーシングと、このケーシング内に設けられ複数の羽根を有する羽根車と、ポンプケーシング下流側に配置された吐出ベンド管と、該吐出ベント管を上下に貫通し下端側に前記羽根車を取付けたポンプ軸とを有する立軸ポンプにおいて、
    前記ケーシングの内面に設けられ、前記羽根車の入口側とケーシング内面の羽根車存在域内とを連通する複数本の溝を備え、この溝はその幅が5 mm 以上で、溝深さは溝幅より小さくし、前記羽根車の羽根出口角は30〜90度の範囲に設定され、前記吐出ベンド管の断面形状は、その流路曲り中央付近断面において、曲りの内外径差が曲り部の流路幅より小さい楕円形状としたことを特徴とするポンプ。
  4. 請求項3において、前記吐出ベンド管の断面形状は、入口側断面及び出口側断面では円形としたことを特徴とするポンプ。
  5. 請求項3において、前記吐出ベンド管の流路曲りの中央付近断面における断面形状において、ベンドの曲り半径方向Rbの流路幅hは、曲り平面に垂直な方向(半径方向Rbに垂直な方向)の流路幅Wに対し、
    W=( 1.3 2.0 h
    となるように設定されていることを特徴とするポンプ。
  6. 請求項3において、前記吐出ベンド管の流路曲りの中央付近断面における流路断面積は吐出ベンド管入口部断面積の 1.0 倍〜 1.2 倍に設定したことを特徴とするポンプ。
  7. 請求項3において、吐出ベンド管の内壁面に主流方向の複数の溝を設置したことを特徴とするポンプ。
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