JP3898557B2 - ケーブルボルトの定着装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてトンネルを構築する際に、トンネル天端部の地山を補強するために用いられるケーブルボルトの定着装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
岩盤にトンネルを構築する場合、地山自体が持っている支保機能を活用してトンネルを構築する、所謂、NATM工法が広く採用されており、掘削されたトンネル掘削壁面部分の地山を補助的に支保するために、トンネル掘削壁面から地山にロックボルトを打ち込んだり、トンネル掘削壁面に吹き付けコンクリートを施すことが行われている。
【0003】
また、上記トンネル構築方法において、掘削されるトンネルの断面形状が大きい場合には、図3に示すように、まず、この大断面のトンネルTの掘削に先行してトンネル掘削機(TBM)により導坑T1を掘削し、この導坑T1を拡幅して本坑となる上記トンネルTを構築している。そして、このような工法では、導坑T1の掘削壁面を支保を行う期間は、該導坑T1の掘削後、トンネルTを掘削するまでの間であるから、該導坑T1の周辺地山の緩みや崩落を防止するには、ロックボルトではなくケーブルボルトBを導坑T1内から上方に向けて放射状に打設することが行われている。
【0004】
この際、本坑となるトンネルTの側壁等をケーブルボルトによって補強する場合には、半永久的な補強構造とする必要があるために、地山に打設したケーブルボルトをトンネル内からセンターホールジャッキ等を用いて張引することによりプレストレスを与えておき、この状態でトンネル掘削壁面から突出しているケーブルボルトの端部を定着金具によってトンネル掘削壁面に固定して地山を圧密状態に支保する必要があるが、上記のような先進導坑T1内から地山に打設するケーブルボルトBの場合には、本坑となるトンネルTが掘削されるまでの間の地山の補強であり、また、天端側の地山が導坑T1内側へと多少変動してこの変動によりケーブルボルトBに自然と多少のプレストレスが付与されるので、手間のかかる上記のような強制的なプレストレスの付与は通常、行われていない。
【0005】
そして、このようなケーブルボルトBをトンネル掘削壁面に定着させるには、従来から図6に示すように楔作用を利用した定着金具Aや図7に示すように圧締めにより定着する定着金具A1が用いられている。
【0006】
前者の定着金具Aは、中央部にケーブルボルトBの挿通孔21a を設けたアンカープレート21と、複数の楔片24a を組み合わせて中央にケーブルボルトの端部挟着孔27を形成するように構成している楔体24と、中央部に基端面から先端面に向かって徐々に拡径したテーパ孔23を貫設してなるソケット体22とからなり、アンカープレート21をトンネル掘削壁面tに当てがってその挿通孔21a に掘削壁面tから突出しているケーブルボルトBの端部bを挿通させると共に、アンカープレート21の挿通孔21a からトンネル内に突出したケーブルボルトBの端部bをアンカープレート21の下面に重ね合わせたソケット体22のテーパ孔23に嵌め込んでいる楔体24のケーブルボルト挟着孔27に挿通させた状態にして該楔体24をソケット体22のテーパ孔23に打ち込むことによりケーブルボルトBの端部bを挟着させ、ソケット体22とアンカープレート21を介してケーブルボルトBの端部bをトンネル掘削壁面tに定着させるように構成している。
【0007】
また、後者の定着金具A1は、上記アンカープレート21と、中央部にケーブルボルトBの挿通孔31を有し且つカシメにより変形する筒状の圧締め金具30とからなり、アンカープレート21をトンネル掘削壁面tに当てがって該トンネル掘削壁面tから突出しているケーブルボルトBの端部bをアンカープレート21のケーブルボルト挿通孔21a から圧締め金具30の挿通孔31を通じて挿通させ、この圧締め金具30を外周面側からカシメてその挿通孔31を縮径させることによりケーブルボルトBの端部bを挟着させるように構成している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前者の定着金具Aによれば、楔体24はハンマー等の叩打によってソケット体22のテーパ孔23に食い込んで係止状態を保持しているが、本坑となるトンネルTを発破等によって掘削する時にその振動で楔体24に緩みが発生し、ケーブルボルトBは上述したようにトンネル天端面から上方に向けて打設されていてその端部bがトンネル内に向かって下向きに突出しているため、楔体24はケーブルボルトBの端部bから外れて下方に落下し、ソケット体22やアンカープレート21も順次落下して作業員等に危害を及ぼす虞れがあって危険であると共に楔体24が離脱すると地山を支保する機能がなくなるという問題点があった。
【0009】
一方、後者によれば、地山が振動しても圧締め金具30がカシメによって強固にケーブルボルトBに固着しているために上述したような問題点は生じないが、圧締め金具30をカシメてケーブルボルトBを定着させるには大型の工具を必要となり、その取扱いに困難をきたして作業能率が低下するばかりでなく、上述した先進導坑T1のような狭い坑内では圧締め金具30のカシメによるケーブルボルトBの定着作業が困難であるという問題点があった。
【0010】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、地山に打設したケーブルボルトの端部を簡単に定着させることができると共に振動等によってその定着が解消される虞れもなく、確実にケーブルボルトの定着を保持しておくことができるケーブルボルトの定着装置を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のケーブルボルトの定着装置は、請求項1に記載したように、中央部に上端面から下端面に向かって徐々に拡径したテーパ孔を貫設してなるソケット体と、中央部にケーブルボルト挟着孔を設けてなる楔体とからなり、地山に穿設したボルト孔内に挿入、固定しているケーブルボルトにおける上記ボルト孔の開口端からの突出端部に、上記ソケット体のテーパ孔に嵌め込んだ楔体のケーブルボルト挟着孔を挿通させた状態にして該楔体をソケット体内に打ち込むことにより、ケーブルボルトの突出端部を上記孔の開口端面に定着させるように構成したケーブルボルトの定着装置において、中央にケーブルボルト挿通孔を設けたキャップ体を上記ソケット体に螺合し、このキャップ体と楔体との対向面にスプリングワッシャを圧入した構造としている。
【0012】
一方、請求項2に係る発明は、中央部に上端面から下端面に向かって徐々に拡径したテーパ孔を貫設してなるソケット体と、中央部にケーブルボルト挟着孔を設けてなる楔体とからなり、地山に穿設したボルト孔内に挿入、固定しているケーブルボルトにおける上記ボルト孔の開口端からの突出端部に、上記ソケット体のテーパ孔に嵌め込んだ楔体のケーブルボルト挟着孔を挿通させた状態にして該楔体をソケット体内に打ち込むことにより、ケーブルボルトの突出端部を上記孔の開口端面に定着させるように構成したケーブルボルトの定着装置において、ケーブルボルトの端部に受け金具を固着し、この受け金具と楔体との対向面にスプリングワッシャを圧入した構造としている。
【0013】
上記請求項1又は請求項2に記載の発明において、請求項3に係る発明は、上記スプリングワッシャに代えてコイルスプリングを用いていることを特徴とする。
【0014】
また、ケーブルボルトの端部が突出している孔壁の開口端面に着座させて該開口端面に定着力を支持させるソケット体においては、その基端面を直接、孔壁の開口端面に受止させた定着構造としておいてもよいが、請求項4に係る発明においては、孔壁の開口端面に対する着座面積がソケット体の基端面よりも大きい平面十字形状に形成しているアンカープレートをソケット体に重ね合わせておき、このアンカープレートを介してソケット体を孔壁の開口端面に受止させるように構成している。この場合、請求項5に記載したように、ソケット体とアンカープレートとを一体に固着しておくことが望ましい。
【0015】
【作用】
大断面のトンネルを構築するに先立って掘削された先進導坑の天端面等におけるケーブルボルト打設位置にボルト孔を穿設し、このボルト孔にケーブルボルトを挿入して孔内に充填したモルタル等の定着材の固化によって固定する。しかるのち、孔の開口端から坑内に向かって突出しているケーブルボルトの突出端部にソケット体のテーパ孔を挿通させることによって該ソケット体の基端面をボルト孔の開口端周囲の掘削壁面に当接、受止させる。
【0016】
この場合、ソケット体の基端面に、中央にケーブルボルト挿通孔を有し且つソケット体よりもボルト孔の開口端周囲の掘削壁面に対する着座面積が大きいアンカープレートを一体的に固着しておけば、ソケット体とアンカープレートとを同時に作業性よく配設することができると共に着座面積の大きいアンカープレートによって掘削壁面に安定的に且つ強固に定着、支持させることができる。
【0017】
次いで、このソケット体のテーパ孔内に楔体を挿入し、該楔体の中央部に設けているケーブルボルト挟着孔にケーブルボルトの上記突出端部を挿通させた状態にして楔体をソケット体のテーパ孔内に打ち込むと、楔体がソケット体のテーパ孔のテーパ面によって截頭円錐形状の外周面が押圧されて縮径し、ケーブルボルト挟着孔が縮小してケーブルボルトの突出端部を挟着する。この状態にすると、ソケット体又はこのソケット体に一体に固着しているアンカープレートがケーブルボルトの突出端部の周囲の掘削壁面に着座した状態を保持する。さらに、地山に緩み等が生じようとしても、その緩み方向が掘削壁面をトンネル内に向かって変位させる方向であるから、掘削壁面に着座しているソケット体がケーブルボルトの突出端側に押し進められ方向に押圧力を受け、その押圧力によって楔体がソケット体のテーパ孔内に一層強固に食い込む方向に作用して地山の緩み等を確実に抑止した状態を保持する。
【0018】
しかしながら、トンネルを掘削する際の発破時の振動や、地震の発生による震動がアンカープレートを定着させている上記定着装置に作用すると、ソケット体のテーパ孔に対する楔体の摩擦係止力が解かれて楔体に緩みが生じ、一旦、楔体が緩むと、ソケット体のテーパ孔がその大径側を下向きに開口させているので、楔体が再びソケット体のテーパ孔に食い込むことなく直ちに、アンカープレートを下向き突出端部を伝って落下し、同時にソケット体とアンカープレートも落下することになる。
【0019】
このため、本発明においては、ソケット体又はケーブルボルトに押え部材を取付け、この押え部材によって楔体の下面に頂面を受止して楔体がソケット体のテーパ孔から抜け出るのを防止している。従って、この押え部材により楔体がソケット体から離脱するのを確実に防止することができ、この楔体やソケット体、アンカープレートがトンネル内に落下することなくケーブルボルトの突出端部に装着した状態を保持し得ると共に、楔体を上方、即ち、ソケット体のテーパ孔内に向かって移動させようとする振動時や地山の緩みの発生時には、楔体が上述したようにソケット体のテーパ孔内に食い込んで、再び、ケーブルボルトを定着させた状態に復帰するものである。
【0020】
上記押え部材としては、ソケット体に螺合し且つ中央にケーブルボルト挿通孔を設けているキャップ体と、このキャップ体と楔体との対向面に圧入したスプリングワッシャとから構成しておくことによって、ソケット体のテーパ孔に楔体を打ち込んでケーブルボルトを定着させた後に、キャップ体をソケット体の外周面に螺合させれば、或いは、予め、ソケット体と楔体、スプリングワッシャ、キャップ体を一体に組み込んでおき、この定着装置をケーブルボルトに突出端部に挿着したのちキャップ体を螺合させれば、楔体がスプリングワッシャを介してキャップ体に受止されて抜け止めが確実に防止された構造となるのは勿論、スプリングワッシャの弾性力によって楔体が常にソケット体のテーパ孔に対して食い込む方向に押圧されてソケット体との係止状態を保持し、ケーブルボルトを強固に且つ安定した状態で定着させておくことができる。
【0021】
この場合、楔体はソケット体のテーパ孔内に打ち込むことなく挿入した状態にしてキャップ体をソケット体に締め込むことにより、該楔体をソケット体のテーパ孔に食い込ませることができる。なお、スプリングワッシャに代えて、コイルスプリングを用いてもよい。
【0022】
また、上記押え部材としては、ソケット体側に固定させることなく、ケーブルボルトの突出端部に固着させた構造としておいてもよい。即ち、ケーブルボルトの突出端部に固着させる受け金具と、この受け金具と楔体との対向面に圧入したスプリングワッシャ又はコイルスプリングとから構成しておいてもよい。この場合、上記押え部材の作用に加えて、連続的な振動により万一、楔体がソケット体のテーパ孔に対する瞬間的な離脱を繰り返しても楔体がソケット体がケーブルボルトを伝って下方に移動することなく常に所定の位置に保持しておくことができる。
【0023】
なお、上記いずれの押え部材においても、キャップ体や受け金具と共にスプリングワッシャやコイルスプリングを使用しているが、このようなスプリングワッシャやコイルスプリングを用いることなく楔体の頂面を受止する部分を弾性的に受止するように形成したキャップ体や受け金具を使用してもよい。
【0024】
【発明の実施の形態】
本発明の具体的な実施の形態を図面について説明すると、図1、図2において、トンネル掘削機で掘削されたトンネルT1の周辺地山の岩盤を補強するために、トンネル掘削壁面tの天端面から地山内に放射状に埋入、固定しているケーブルボルトBにおけるトンネル掘削壁面tの天端面からトンネルT1内に突出している突出端部bをトンネル掘削壁面tに固定するための定着装置Aは、アンカープレート1と、中央部に上端面(基端面)と下端面(先端面)間に亘って貫通しているテーパ孔3を有するソケット体2と、このソケット体2のテーパ孔3内に打ち込むことによってトンネル掘削壁面tからトンネルT1内に突出している上記ケーブルボルトBの突出端部bを挟着、固定する楔体4と、この楔体4の下端面(頂面)を受止して楔体4がソケット体2のテーパ孔3から抜け出るのを防止する押え部材5とから構成している。
【0025】
詳しくは、上記アンカープレート1は、一定厚みを有する平面十字形状に形成されていてその中央部にケーブルボルトBの挿通孔1aを上下面間に亘って貫通した状態で設けてある。また、この平面十字形状のアンカープレート1の面積は従来の正方形状のアンカープレートの面積と略同じ面積に形成している。このアンカープレート1を平面十字形状に形成した理由は、トンネル掘削壁面tから岩盤にケーブルボルトBを打設した後、トンネル掘削壁面tに吹き付けコンクリートを施工する場合に、該アンカープレート1の周辺部に隙間(巣)ができ難くするためである。
【0026】
ソケット体2はケーブルボルトBを挿入、打設するためにトンネル掘削壁面tから岩盤地山に穿設したボルト孔Cよりも大径の筒形状に形成されてあり、その中央部に上端面から下端面に向かって徐々に拡径した截頭円錐形状のテーパ孔3を貫通状態で設けていると共に下部外周面に雄螺子部6を刻設している。このテーパ孔3の上端開口部の径は上記アンカープレート1のケーブルボルト挿通孔1aと同径もしくはやや大径に形成されている。また、ソケット体2はアンカープレート1と別体にしておいてソケット体2の上端面に重ね合わせてもよいが、取扱性、施工性を容易にするために、アンカープレート1のケーブルボルト挿通孔1aにそのテーパ孔3の上端開口部を連通させた状態でアンカープレート1の下面中央部上に該ソケット体2の上端面を溶接によって一体に固着している。
【0027】
楔体4は図2に示すように、複数個(図においては3個)の楔片4a、4a、4aを組み合わせることによって上記ソケット体2のテーパ孔3と同一形状の截頭円錐形状に形成してあり、これらの組み合わした状態においては、その中央部に上下端面間に亘って貫通した断面円形状のケーブルボルト挟着孔7を形成するように構成している。なお、隣接する楔片4a、4a間の対向面間を連結片(図示せず)によって互いに拡縮可能に連結しておいてもよい。
【0028】
一方、押え部材5は、内周面に上記ソケット体2の螺子部6に螺合させる雌螺子部8を設けたキャップ体5Aと、このキャップ体5Aの天板部内面と上記楔体4の下面(頂面)との間に介在させるスプリングワッシャ9とからなり、さらに、キャップ体5Aの天板部中央に、ケーブルボルトBの上記突出端部bを挿通させる挿通孔10を設けている。
【0029】
このように構成したケーブルボルトの定着金具の使用態様を説明すると、まず、上記図3において説明したように、掘削されるトンネルTの断面形状が大きい場合には、この大断面のトンネルTの掘削に先行してトンネル掘削機(TBM)により小径のトンネル(導坑)T1を掘削する。この際、このトンネルT1の天端部の地山を補強するために、該トンネルT1内から上方に向けて複数本のケーブルボルトBを放射状に打設する。
【0030】
地山に対するケーブルボルトBの打設手順は、まず、ケーブルボルトBの打設位置に穿孔機(図示せず)によって所定深さまでケーブルボルトBよりも大径のボルト孔Cを穿設したのち、該ボルト孔C内に注入ホースを使用してモルタル等の定着材Dを充填し、この定着材Dが固化する前にケーブルボルトBをボルト孔C内に挿入する。上記ケーブルボルトBは施工前にはドラムに巻回されてあり、このドラムから所定長引き出しながら、上記ボルト孔C内に挿入して該ボルト孔Cからトンネル内に所望長、突出した部分を切断することにより、ボルト孔Cに打設される。なお、ボルト孔C内に注入ホースとケーブルボルトBとを同時に挿入して注入ホースをボルト孔Cから引き抜きながら定着材を充填してもよい。また、違う方法として、ボルト孔C内にケーブルボルトと併せて注入ホースおよびエア抜きホースを同時に挿入してエア抜きホースから空気を抜きながら注入してもよい。エア抜きホースから定着材が吐出するまで空気を注入することにより確実に定着材が充填される。この方法ではホースを埋め殺す。
【0031】
次いで、ボルト孔CからトンネルT1内に突出しているケーブルボルトBの口元をモルタルで仕上げると共に、該ケーブルボルトBが充填材Dの固化によって固定されたのち、ケーブルボルトBの突出端部bに定着装置Aを装着してケーブルボルトBの突出端部bをトンネル掘削壁面tに定着、支持させる。
【0032】
この定着装置Aの装着は、まず、上端面にアンカープレート1を一体に固着させているソケット体2を、アンカープレート1に設けている挿通孔1aから該ソケット体2のテーパ孔3にケーブルボルトBの突出端部bを挿通させることによりアンカープレート1の上端面がボルト孔Cの開口端周辺のトンネル掘削壁面tに当接、受止させた状態に着座させる。
【0033】
この状態にしてソケット体2のテーパ孔3内に楔体4をそのケーブルボルト挟着孔7にケーブルボルトBの突出端部bを挿通させながら挿入し、該楔体4の外周テーパ面をソケット体2のテーパ孔3に押し付けてケーブルボルト挟着孔7を縮径させることによりケーブルボルトBを挟着させると共に楔体4の外周テーパ面とソケット体2のテーパ孔3との摩擦力により楔体4をソケット体2に係止させ、引き続いて押え部材5のキャップ体5Aをソケット体2の下端部に被せて雌雄螺子部6、8を螺合させることにより、キャップ体5Aの天板部内面上に予め配設しておいたスプリングワッシャ9を楔体4の下端面に押接させ、このスプリングワッシャ9の弾発力によって楔体4を上方に押圧してソケット体2のテーパ孔3に食い込ませた状態にする。
【0034】
なお、定着装置Aの装着手順としては、ケーブルボルトBの突出端部bに、上記のようにソケット体2と楔体4及び定着装置Aのキャップ体5Aを順次、配設することは、先に、ケーブルボルトBの突出端部の周囲に配設したソケット体2を保持しておく必要があってその作業が一人の作業員では困難であるので、ソケット体2と楔体4と押え部材5とを予め一体に組み込んでおき、これらを同時に装着することが望ましく、本発明においては同時装着が可能に構成している。
【0035】
即ち、アンカープレート1を一体に固着しているソケット体2のテーパ孔3内に、予め、楔体4を挿入しておくと共に、天板内面上にスプリングワッシャ9を載置しているキャップ体5Aの雌螺子部8の上端部のみをソケット体2の下端部外周に刻設している雄螺子部6の下端部に螺合させてスプリングワッシャ9上に載置している楔体4の外周テーパ面がソケット体2のテーパ孔3から僅かに離間させた状態、又は、楔体4の外周テーパ面がソケット体2のテーパ孔3に軽く接した状態にして楔体4のケーブルボルト挟着孔7がケーブルボルトBよりも大径にしておく。
【0036】
このように、ソケット体2と楔体4及び押え部材5とを一体に組み込んだ状態にしてソケット体2の上端面に固着しているアンカープレート1のケーブルボルト挿通孔1aをトンネル掘削壁面tから下方に向かって突出しているケーブルボルトBの突出端部bに合わせて該突出端部bを挿通孔1aからソケット体2のテーパ孔3及び楔体4のケーブルボルト装着孔7に挿通させてキャップ体5Aの中央挿通孔10から下方に突出させ且つアンカープレート1をボルト孔Cの開口端周縁部のトンネル掘削壁面tに着座させた状態とし、この状態にしてキャップ体5Aを回動操作してソケット体2に螺進させることにより楔体4をスプリングワッシャ9を介してソケット体2のテーパ孔3に圧接させ、楔体4をテーパ孔3に接して押し上げることによりケーブルボルト装着孔7を縮径させてケーブルボルトBを挟着させるものである。
【0037】
この状態にすると、アンカープレート1がケーブルボルトBの突出端部の周囲のトンネル掘削壁面tに着座し且つ楔体4を介してケーブルボルトBをトンネル掘削壁面tに定着させた状態を保持する。ソケット体に一体に固着しているアンカープレート1がケーブルボルトBの突出端部bの周囲のトンネルT1掘削壁面tに着座した状態を保持する。
【0038】
さらに、トンネル掘削壁面tの周辺の地山に緩み等が生じようとしても、ボルト孔C内に定着材Dによって固着されているケーブルボルトBの打設先端部(ボルト孔Cの奥底部)が緩みが生じない岩盤中に固定されているから、このケーブルボルトBはトンネルT1側に移動することなく、トンネル掘削壁面tの周辺の地山のみがトンネルT1側に向かって変位しようとし、その変位しようとする圧力がアンカープレート1に作用してソケット体2のテーパ孔3とケーブルボルトBの突出端部bを挟着した楔体4がソケット体2のテーパ孔3内に一層食い込む方向に移動しようとし、従って、定着装置Aを常にトンネル掘削壁面tに着座した状態にして地山の緩みを確実に防止することができるものである。
【0039】
また、トンネル掘削時の発破により振動や地震動が定着装置Aに作用しても、ソケット体2に取付けているキャップ体5Aによってスプリングワッシャ9を介して楔体4がソケット体2から離脱するのを防止することができると共に、楔体4がスプリングワッシャ9の弾発力によって常にソケット体2のテーパ孔3に係止した状態を保持して定着装置A全体が下方に落下するのを防止することができるものである。
【0040】
図4は本発明の別な実施の形態を示すもので、上記実施の形態においては、押え部材5をキャップ体5Aとスプリングワッシャ9とから構成し、キャップ体5Aをソケット体2の外周面に螺合させることによって楔体4をソケット体2のテーパ孔3に係止させると共に該楔体4を縮径させてそのケーブルボルト挟着孔7によりケーブルボルトBの突出端部bを挟着させるように構成しているが、この図4に示す実施の形態においては、押え部材5としてケーブルボルトBの突出端部bに挿通状態で固定する受け金具5Bと、この受け金具5Bと楔体4との対向面に圧入するスプリングワッシャ9とから構成している。その他の構造については上記実施の形態と同様であるので、同一部分には同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0041】
上記押え部材5を構成している受け金具5Bは、図5に示すように円板形状に形成している金属板の中央部にケーブルボルトBの突出端部bが挿通可能な中央孔11を設けていると共に、この中央孔11の周縁に内方に向かって複数片の弾性突片12を一体に形成してなり、これらの弾性突片12を下方に向かった緩やかに傾斜させていると共にその突出端で囲まれた孔部の径をケーブルボルトBの径よりも僅かに小径に形成している。
【0042】
そして、この押え部材5によって楔体4をソケット体2のテーパ孔3に食い込ませてケーブルボルトBの端部bをトンネル掘削壁面tに定着させるには、ソケット体2と一体のアンカープレート1を上記実施の形態と同様に、ボルト孔Cから突出しているケーブルボルトBの端部bにその挿通孔1aを挿通させてボルト孔Cの開口端周辺のトンネル掘削壁面tに当接、受止させると共にソケット体2のテーパ孔3からこのソケット体2に挿入している楔体4のケーブルボルト装着孔7に上記ケーブルボルトBの端部bを挿通させた状態にする。
【0043】
そして、押え部材5を構成している受け金具5B上にスプリングワッシャ9を載置した状態で、受け金具5Bの中央孔11にケーブルボルトBの突出端部bを挿通させて該受け金具5BをケーブルボルトBの突出端部bに沿って上方に押し上げる。この際、受け金具5Bの中央孔11の周縁に突設している複数片の弾性突片12はその先端をケーブルボルトBの突出端部bの外周面に押接させてさらに下方に弾性的に屈曲し、ケーブルボルトBの突出端部bに係止しながら受け金具5Bが上方に移動する。
【0044】
この受け金具5Bの上動によって楔体4がスプリングワッシャ9を介してソケット体2のテーパ孔3に食い込む方向に押圧され、ケーブルボルト挟着孔7が縮径してケーブルボルトBを強固に挟着することができるものである。なお、この定着装置Aにおいても、ソケット体2のテーパ孔3に楔体4を打ち込んで該楔体4のケーブルボルト挟着孔7を縮径させることによりケーブルボルトBの突出端部bを挟着させたのち、受け金具5BをケーブルボルトBの突出端部bに装着してもよく、或いは、アンカープレート1と一体のソケット体2のテーパ孔3内に楔体4を挿入した状態にし、且つこの楔体4の下面にスプリングワッシャ9を介して上記受け金具5Bを配設した状態にしてケーブルボルトBの突出端部bにアンカープレート1のケーブルボルト挿通孔1aから受け金具5Bの中央孔11を挿通させ、しかるのち、受け金具5Bを突出端部bに沿って上動させることによりソケット体2に楔体4を食い込ませ、ケーブルボルトBの突出端部bをトンネル掘削壁面tに定着させてもよい。
【0045】
さらに、受け金具5Bはその中央孔11の周縁に突設している複数片の弾性突片12をケーブルボルトBの周面に係止させてケーブルボルトBからの抜け止めを行っているが、中央孔をケーブルボルトBよりもやや大径に形成しているリング形状の受け金具を使用してこの受け金具をボルトによりケーブルボルトBに固定するように構成しておいてもよい。
【0046】
また、以上のいずれの実施の形態においても、スプリングワッシャ9を採用しているが、このスプリングワッシャ9に代えて一定高さのコイルスプリングを使用してもよく、さらにまた、このようなスプリングワッシャ9やコイルスプリングを使用することなく、キャップ体5Aや受け金具5Bによって直接、楔体4の下面を押圧するように構成しておいてもよい。
【0047】
【発明の効果】
以上のように本発明のケーブルボルトの定着装置によれば、請求項1に記載したように、中央部に上端面から下端面に向かって徐々に拡径したテーパ孔を貫設してなるソケット体と、中央部にケーブルボルト挟着孔を設けてなる楔体とからなるケーブルボルトの突出端部を上記孔の開口端面に定着させるように構成したケーブルボルトの定着装置において、上記ソケット体又はケーブルボルトに楔体の下面を押圧して該楔体がソケット体のテーパ孔から抜け出るのを防止する押え部材を取付けてた構造としているので、地山に穿設したボルト孔内に挿入、固定しているケーブルボルトにおける上記ボルト孔からの突出端部に対して、トンネル内の狭い空間部においても容易に装着することができると共に不測に楔体がソケット体のテーパ孔に対して緩みが生じても、押え部材によって楔体がケーブルボルトの突出端部から下方に脱落するのを確実に防止することができ、常に、ケーブルボルトの突出端部に装着した状態を保持してケーブルボルトの確実な定着と共に安全性を高めることができる。
【0048】
さらに、上記押え部材として、ソケット体に螺合し且つ中央にケーブルボルト挿通孔を設けているキャップ体と、このキャップ体と楔体との対向面に圧入したスプリングワッシャとから構成しているので、ソケット体のテーパ孔に楔体を打ち込んでケーブルボルトを定着させた後にキャップ体をソケット体の外周面に螺合させることによって、或いは、予め、ソケット体と楔体、スプリングワッシャ、キャップ体を一体に組み込んでおき、この定着装置をケーブルボルトに突出端部に挿着したのちキャップ体を螺合させることによって、楔体をスプリングワッシャを介してキャップ体に受止させてケーブルボルトの突出端部からの抜け止めを確実に防止したケーブルボルトの定着構造を簡単に形成することができると共に、スプリングワッシャの弾性力によって楔体が常にソケット体のテーパ孔に対して食い込む方向に押圧されてソケット体との係止状態を保持し、ケーブルボルトを強固に且つ安定した状態で定着させておくことができる。
【0049】
また、請求項2に係る発明によれば、上記押え部材として、ソケット体に取付けることなくケーブルボルトの突出端部に装着、固定した受け金具と、この受け金具と楔体との対向面に圧入したスプリングワッシャとから構成しているので、この受け金具を介してケーブルボルトの突出端部に楔体やソケット体が支持された構造となり、従って、ソケット体の上端面又は該上端面に重ね合わせているアンカープレートを常にボルト孔の開口端周辺の掘削壁面に座着させておくことができ、安全性と共により確実なケーブルボルトの定着を行うことができる。
【0050】
なお、請求項3に記載したように、スプリングワッシャに代えてコイルスプリングを採用しても上記同様の作用効果を奏することができる。
【0051】
また、上記アンカープレートとして、請求項4に記載したように、中央部にケーブルボルトの挿通孔を設けている平面十字形状に形成しておくことによって、岩盤地山にケーブルボルトを打設した後、トンネル掘削壁面に吹き付けコンクリートを施工する場合に、該アンカープレートの周辺部に隙間(巣)ができ難くすることができるものであり、その上、このアンカープレートをソケット体の上端面に一体に固着しているので、トンネル掘削壁面から下方に突出しているケーブルボルトの突出端部に対するアンカープレートとソケット体との装着が同時に行うことができ、ケーブルボルトの定着作業が能率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ケーブルボルトを定着させている定着装置の縦断側面図、
【図2】 その分割斜視図、
【図3】 ケーブルボルトを打設しているトンネルの簡略縦断正面図、
【図4】 本発明の定着装置の別な実施の形態を示す縦断側面図、
【図5】 その受け金具の平面図、
【図6】 従来例を示す縦断側面図、
【図7】 別な従来例を示す縦断側面図。
【符号の説明】
A 定着装置
B ケーブルボルト
C ボルト孔
T1 トンネル
1 アンカープレート
2 ソケット体
3 テーパ孔
4 楔体
5 押え部材
5A キャップ体
9 スプリングワッシャ
Claims (5)
- 中央部に上端面から下端面に向かって徐々に拡径したテーパ孔を貫設してなるソケット体と、中央部にケーブルボルト挟着孔を設けてなる楔体とからなり、地山に穿設したボルト孔内に挿入、固定しているケーブルボルトにおける上記ボルト孔の開口端からの突出端部に、上記ソケット体のテーパ孔に嵌め込んだ楔体のケーブルボルト挟着孔を挿通させた状態にして該楔体をソケット体内に打ち込むことにより、ケーブルボルトの突出端部を上記孔の開口端面に定着させるように構成したケーブルボルトの定着装置において、中央にケーブルボルト挿通孔を設けたキャップ体を上記ソケット体に螺合し、このキャップ体と楔体との対向面にスプリングワッシャを圧入していることを特徴とするケーブルボルトの定着装置。
- 中央部に上端面から下端面に向かって徐々に拡径したテーパ孔を貫設してなるソケット体と、中央部にケーブルボルト挟着孔を設けてなる楔体とからなり、地山に穿設したボルト孔内に挿入、固定しているケーブルボルトにおける上記ボルト孔の開口端からの突出端部に、上記ソケット体のテーパ孔に嵌め込んだ楔体のケーブルボルト挟着孔を挿通させた状態にして該楔体をソケット体内に打ち込むことにより、ケーブルボルトの突出端部を上記孔の開口端面に定着させるように構成したケーブルボルトの定着装置において、ケーブルボルトの端部に受け金具を固着し、この受け金具と楔体との対向面にスプリングワッシャを圧入していることを特徴とするケーブルボルトの定着装置。
- スプリングワッシャに代えてコイルスプリングを用いていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケーブルボルトの定着装置。
- ソケット体の上端面に、ケーブルボルトが挿入、固定した孔壁の開口端面に受止させる平面十字形状のアンカープレートを重ね合わせていると共にこのアンカープレートの中央部にソケット体のテーパ孔と連通したケーブルボルト挿通孔を設けていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケーブルボルトの定着装置。
- アンカープレートをソケット体の上端面に一体に固着していることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項4に記載のケーブルボルトの定着装置。
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