JP3897956B2 - 位置検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両に搭載された撮像装置により得られる画像に基づいて、対象物の位置を検出する位置検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両に撮像装置を搭載し、その撮像装置により得られる画像から対象物の位置を検出し、その対象物と当該車両との衝突の可能性を判定する周辺監視装置が従来より提案されている。このような周辺監視装置では、撮像装置の当該車両への取付は、ほぼ理想的に行われており、撮像装置の光軸と、車両の進行方向とのずれがほとんどないことを前提としている。すなわち、従来の装置は、撮像装置を車両の固定する際に十分に注意を払って、撮像装置の光軸の方向を車両進行方向と正確に一致させた上で、その撮像装置により得られる画像から対象物の位置を検出するように構成されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、車両などの移動体に撮像装置を取り付けた場合、外部応力や熱などの影響で取り付け状態が経年変化し、撮像装置の光軸の方向と、車両進行方向とがずれることが予想される。また車両の軽衝突や走行時に発生する車体の歪みの影響によっても撮像装置の取り付け状態が変化することが考えられる。
【0004】
このようなずれが発生すると、撮像装置の光軸を基準とする撮像装置座標系と、車両進行方向を基準とする実空間座標系とがずれることとなり、撮像装置により得られる対象物像に基づいて検出される対象物位置の誤差が大きくなる。
そこで撮像装置の光軸のずれが発生したことを検出する手法として、3次元位置座標が既知の静止対象物を車両前方に配置し、画像から算出される3次元位置座標と、実際の位置座標とを比較する手法が考えられる。
【0005】
しかし、工場出荷時に撮像装置の取付状態(光軸の方向)の確認、補正作業を行う場合や、販売店で同様の確認、補正作業を行う場合には、長い既知距離の静止対象物の位置検出を行い、ずれの有無の確認をしなければならないため、専用のスペースや設備、確認時間などが必要となる。
【0006】
本発明は上述した点を考慮してなされたものであり、車両進行方向に対する撮像装置の光軸の横方向のずれを示すパン角を、車両走行中に簡単且つ正確に算出し、パン角に起因する検出誤差を補正することにより正確な位置検出を行うことができる位置検出装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、車両に搭載された2つの撮像手段によって得られる画像に基づいて対象物の実空間座標系における位置を検出する位置検出装置において、前記撮像手段により得られる対象物像から、前記撮像手段の光軸を基準とする撮像手段座標系における前記対象物の3次元空間上の位置データを算出する第1の位置データ算出手段と、該第1の位置データ算出手段により静止対象物の時系列位置データを算出し、該算出した時系列位置データに基づいて前記静止対象物の3次元空間上の相対移動軌跡を近似する近似直線を算出する近似直線算出手段と、該近似直線に基づいて、前記撮像手段座標系の座標軸が、前記撮像手段の光軸横方向のずれに伴って回動したとき、その回動の中心となる座標軸に垂直な2つの座標軸を含む平面に、前記近似直線を投影した直線と、前記撮像手段の光軸に平行な座標軸とのなす角を前記撮像手段の光軸のパン角として算出するパン角算出手段と、前記撮像手段座標系における前記対象物の位置データを、前記パン角に応じて補正することにより、前記実空間座標系における位置データを算出する第2の位置データ算出手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、撮像手段により得られる対象物の画像から、撮像手段の光軸を基準とする撮像手段座標系における対象物の3次元空間上の位置データを算出する第1の位置データ算出手段により、静止対象物の時系列の位置データが算出され、該算出された時系列の位置データに基づいて静止対象物の3次元空間上の相対移動軌跡を近似する近似直線が算出され、撮像手段座標系の座標軸が回動したとき、その回動の中心となる座標軸に垂直な2つの座標軸を含む平面に近似直線を投影した直線と、撮像手段の光軸に平行な座標軸とのなす角が撮像手段の光軸のパン角として算出される。そして、撮像手段座標系における対象物の位置データをパン角に応じて補正することにより、実空間座標系における対象物の位置データが算出される。したがって、撮像手段の光軸の横方向ずれを示すパン角を、撮像手段により得られる画像に基づいて簡単かつ正確に算出し、パン角の影響を除いて正確な位置検出を行うことができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の位置検出装置において、前記近似直線算出手段は、前記車両の旋回走行に関するパラメータを用いて、前記第1の位置データ算出手段により算出される前記静止対象物の時系列位置データを補正する旋回走行補正手段を有し、該補正後の時系列位置データに基づいて前記近似直線を算出することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、車両の旋回走行に関するパラメータを用いて、第1の位置データ算出手段により算出された位置データが補正され、該補正後の位置データに基づいて近似直線が算出されるので、パン角算出処理中に車両が旋回した場合でも、正確なパン角の算出を行うことができる。
【0011】
前記車両の旋回走行に関するパラメータは、具体的にはヨー角及び曲率半径である。
前記近似直線算出手段は、前記時系列の位置データの平均位置座標を通り、各データ点からの距離の2乗の平均値が最小となるような直線として、前記近似直線を算出する。
【0012】
また前記パン角算出手段は、撮像手段座標系の座標軸が、前記撮像手段の光軸横方向のずれに伴って回動したときに、その回動の中心となる座標軸(Yc軸)に垂直な2つの座標軸(Xc軸及びZc軸)を含む平面に、前記近似直線を投影した直線と、前記撮像手段の光軸に平行な座標軸(Zc軸)とのなす角として、前記パン角を算出する。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる位置検出装置を含む、車両の周辺監視装置の構成を示す図であり、この装置は、遠赤外線を検出可能な2つの赤外線カメラ1R,1Lと、当該車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサ5と、当該車両の走行速度(車速)VCARを検出する車速センサ6と、ブレーキの操作量を検出するためのブレーキセンサ7と、これらのカメラ1R,1Lによって得られる画像データの基づいて車両前方の動物等の対象物を検出し、衝突の可能性が高い場合に警報を発する画像処理ユニット2と、音声で警報を発するためのスピーカ3と、カメラ1Rまたは1Lによって得られる画像を表示するとともに、衝突の可能性が高い対象物を運転者に認識させるためのヘッドアップディスプレイ(以下「HUD」という)4と、運転者がカメラ1R,1Lのパン角Φの算出を指示するために使用するパン角算出スイッチ8とを備えている。パン角Φは、カメラ1R、1Lの光軸の、車両進行方向に対するずれを示すパラメータであり、後述する図4の処理により算出される。
【0014】
カメラ1R、1Lは、図2に示すように車両10の前部に、車両10の横方向の中心軸に対してほぼ対象な位置に離間して配置されており、2つのカメラ1R、1Lの光軸が互いに平行となり、両者の路面からの高さが等しくなるように固定されている。赤外線カメラ1R、1Lは、対象物の温度が高いほど、その出力信号レベルが高くなる(輝度が増加する)特性を有している。
【0015】
画像処理ユニット2は、入力アナログ信号をディジタル信号に変換するA/D変換回路、ディジタル化した画像信号を記憶する画像メモリ、各種演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)、CPUが演算途中のデータを記憶するために使用するRAM(Random Access Memory)、CPUが実行するプログラムやテーブル、マップなどを記憶するROM(Read Only Memory)、スピーカ3の駆動信号、HUD4の表示信号などを出力する出力回路などを備えており、カメラ1R,1L及びセンサ5〜7の出力信号は、ディジタル信号に変換されて、CPUに入力されるように構成されている。
HUD4は、図2に示すように、車両10のフロントウインドウの、運転者の前方位置に画面4aが表示されるように設けられている。
【0016】
図3は画像処理ユニット2における対象物の位置検出処理の手順を示すフローチャートであり、この処理は、所定時間毎に実行される。
先ずカメラ1R、1Lの出力信号をA/D変換して画像メモリに格納する(ステップS11,S12,S13)。画像メモリに格納される画像は、輝度情報を含んだグレースケール画像である。図5(a)(b)は、それぞれはカメラ1R,1Lによって得られるグレースケール画像(カメラ1Rにより右画像が得られ、カメラ1Lにより左画像が得られる)を説明するための図であり、ハッチングを付した領域は、中間階調(グレー)の領域であり、太い実線で囲んだ領域が、輝度レベルが高く(高温で)、画面上に白色として表示される対象物の領域(以下「高輝度領域」という)である。右画像と左画像では、同一の対象物の画面上の水平位置がずれて表示されるので、このずれ(視差)によりその対象物までの距離を算出することができる。
【0017】
図3のステップS14では、右画像を基準画像とし、その画像信号の2値化、すなわち、実験的に決定される輝度閾値ITHより明るい領域を「1」(白)とし、暗い領域を「0」(黒)とする処理を行う。図6に図5(a)の画像を2値化した画像を示す。この図は、ハッチングを付した領域が黒であり、太い実線で囲まれた高輝度領域が白であることを示している。
【0018】
続くステップS15では、2値化した画像データをランレングスデータに変換する処理を行う。図7(a)はこれを説明するための図であり、この図では2値化により白となった領域を画素レベルでラインL1〜L8として示している。ラインL1〜L8は、いずれもy方向には1画素の幅を有しており、実際にはy方向には隙間なく並んでいるが、説明のために離間して示している。またラインL1〜L8は、x方向にはそれぞれ2画素、2画素、3画素、8画素、7画素、8画素、8画素、8画素の長さを有している。ランレングスデータは、ラインL1〜L8を各ラインの開始点(各ラインの左端の点)の座標と、開始点から終了点(各ラインの右端の点)までの長さ(画素数)とで示したものである。例えばラインL3は、(x3,y5)、(x4,y5)及び(x5,y5)の3画素からなるので、ランレングスデータとしては、(x3,y5,3)となる。
【0019】
ステップS16、S17では、図7(b)に示すように対象物のラベリングをすることにより、対象物を抽出する処理を行う。すなわち、ランレングスデータ化したラインL1〜L8のうち、y方向に重なる部分のあるラインL1〜L3を1つの対象物1とみなし、ラインL4〜L8を1つの対象物2とみなし、ランレングスデータに対象物ラベル1,2を付加する。この処理により、例えば図6に示す高輝度領域が、それぞれ対象物1から4として把握されることになる。
【0020】
ステップS18では図7(c)に示すように、抽出した対象物の面積重心G、面積S及び破線で示す外接四角形の縦横比ASPECTを算出する。面積Sは、ランレングスデータの長さを同一対象物について積算することにより算出し、面積重心Gの座標は、面積Sをx方向に2等分する線のx座標及びy方向に2等分する線のy座標として算出し、縦横比APECTは、図7(c)に示すDyとDxとの比Dy/Dxとして算出する。なお、面積重心Gの位置は、外接四角形の重心位置で代用してもよい。
【0021】
ステップS19では、対象物の時刻間追跡、すなわちサンプリング周期毎に同一対象物の認識を行う。アナログ量としての時刻tをサンプリング周期で離散化した時刻をkとし、図8(a)に示すように時刻kで対象物1,2を抽出した場合において、時刻(k+1)で抽出した対象物3,4と、対象物1,2との同一性判定を行う。具体的には、以下の同一性判定条件1)〜3)を満たすときに、対象物1、2と対象物3、4とは同一であると判定し、対象物3、4をそれぞれ1,2というラベルに変更することにより、時刻間追跡が行われる。
【0022】
1)時刻kにおける対象物i(=1,2)の画像上での面積重心位置座標を、それぞれ(xi(k),yi(k))とし、時刻(k+1)における対象物j(=3,4)の画像上での面積重心位置座標を、(xj(k+1),yj(k+1))としたとき、
|xj(k+1)−xi(k)|<ΔxM
|yj(k+1)−yi(k)|<ΔyM
であること。ただし、ΔxM、ΔyMは、それぞれx方向及びy方向の画像上の変位量の許容値である。
【0023】
2)時刻kにおける対象物i(=1,2)の画像上での面積をSi(k)とし、時刻(k+1)における対象物j(=3,4)の画像上での面積をSj(k+1)としたとき、
Sj(k+1)/Si(k)<1±ΔS
であること。ただし、ΔSは面積変化の許容値である。
【0024】
3)時刻kにおける対象物i(=1,2)の外接四角形の縦横比をASPECTi(k)とし、時刻(k+1)における対象物j(=3,4)の外接四角形の縦横比をASPECTj(k+1)としたとき、
ASPECTj(k+1)/ASPECTi(k)<1±ΔASPECT
であること。ただし、ΔASPECTは縦横比変化の許容値である。
【0025】
図8(a)と(b)とを対比すると、各対象物は同図(b)の方が画像上での大きさが大きくなっているが、対象物1と3とが上記同一性判定条件を満たし、対象物2と4とが上記同一性判定条件を満たすので、対象物3、4はそれぞれ対象物1、2と認識される。このようにして認識された各対象物の(面積重心の)位置座標は、時系列位置データとしてメモリに格納され、後の演算処理に使用される。
なお以上説明した図3のステップS14〜S19の処理は、2値化した基準画像(本実施形態では、右画像)ついて実行する。
【0026】
図3のステップS20では、車速センサ6により検出される車速VCAR及びヨーレートセンサ5より検出されるヨーレートYRを読み込む。
一方ステップS31では、先ず図9に示すように右画像(基準画像)に含まれる対象物像OBJR1に対応する左画像(探索画像)中の対象物像COBJL1を求める。次いで、対象物像OBJR1の面積重心位置と、画像左端との距離dR(画素数)及び対応対象物像COBJL1の面積重心位置と画像左端との距離dL(画素数)を算出し、下記式(1)に適用して、車両10と、対象物との距離zを算出する。ステップS31は、ステップS19の処理に比べて長い時間を要するので、ステップS19より長い周期(例えばステップS11〜S19の実行周期の3倍程度の周期)で実行される。
【数1】
Figure 0003897956
【0027】
ここで、Bは基線長、すなわち図10に示すようにカメラ1Rの撮像素子11Rの中心位置と、カメラ1Lの撮像素子11Lの中心位置との水平方向(x方向)の距離(両カメラの光軸の間隔)、Fはレンズ12R、12Lの焦点距離、pは、撮像素子11R、11L内の画素間隔であり、Δd(=dL−dR)が視差である。
【0028】
図3のステップS21では、パン角算出スイッチ8がオンされたか否かを判別し、オフのときは直ちにステップS23に進む一方、オンのときは、図4に示すパン角算出処理を実行する(ステップS22)。
【0029】
図4の処理を説明する前にパン角算出手法の概要を説明する。
先ずカメラにより得られる画像内の対象物像の座標(x,y)及び式(1)により算出した距離zを下記式(2)に適用することにより、カメラの光軸を基準とするカメラ座標系における座標(Xc,Yc,Zc)を算出する。ここで、カメラ座標系は、図11(a)に示すように、カメラ1R、1Lの取り付け位置の中点の位置(車両10に固定された位置)を原点Ocとし、この原点Ocを通り、カメラ1Rの光軸に平行な軸をZc軸として、図示のように定め、画像内の座標は同図(b)に示すように、画像の中心を原点として水平方向をx、垂直方向をyと定めている。
【数2】
Figure 0003897956
【0030】
式(2)において、(xc,yc)は、右画像上の座標(x,y)を、カメラ1Rの取り付け位置と、原点Ocとの相対位置関係基づいて、原点Ocと画像の中心とを一致させた仮想的な画像内の座標に変換したものである。またfは、焦点距離Fと画素間隔pとの比である。
【0031】
カメラ座標系は、カメラの光軸の方向が車両10の進行方向に対して横方向にずれると、Yc軸を中心として回動(回転移動)するので、そのようなずれの影響を受けない座標系として、車両10の進行方向を基準とした実空間座標系O−X−Y−Zを定義する。実空間座標系は、カメラ光軸の横方向のずれがない、すなわちパン角Φ=0の状態では、図11(c)に示すようにカメラ座標系Oc−Xc−Yc−Zcと一致するが、例えばカメラの光軸が右方向に回動したときは、X軸及びZ軸は、同図(d)に示すように、Xc軸及びZc軸とずれる。
【0032】
図12は、図11(d)に示すような状態を、Y軸の負の方向からみた図である。すなわち図12は、Y軸(Yc軸)の正方向が、紙面の表から裏に向かう方向となるように示されている。この図において、PLは画像面であり、Zc=Fの平面として示される。画像上で座標q=(x0c,y0c)に位置する対象物像について距離z0が算出されると、式(2)により、カメラ座標系における対象物の位置座標Q=(X0c,Y0c,Z0c)が算出される。この座標Qに対応する実空間座標系における位置座標Pを(X0,Y0,Z0)とすると、座標PとQの関係は、下記式(3)で与えられる。
【数3】
Figure 0003897956
ここで、Φは、カメラの光軸(Zc軸)と車両10の進行方向(Z軸)とのなすパン角である。パン角Φは、図12に示すようにZc軸がZ軸に対して右方向に回動したときを正とし、逆に左方向に回動したときを負とする。
【0033】
したがって、カメラ座標系における座標Qを、式(3)を用いて実空間座標系における座標Pに変換するためには、パン角Φを求める必要がある。そこで、次にパン角Φの算出方法を説明する。
車両10が静止対象物に対して直進している状態において、車両10から観測される静止対象物の時系列の位置座標は、図13にQ(N−1),Q(N−2),…,Q(1),Q(0)として示すように、実空間座標系のZ軸からの距離がαで、且つZ軸に平行な直線LQ上に並ぶ。ここで、Q(j)(j=0〜N−1)は、jサンプル期間前の位置座標であり、Q(0)が最新の位置座標である。この直線LQをカメラ座標系で観測すると、傾きを持った直線として認識され、この直線LQとZc軸とのなす角がパン角Φと等しい。なお、直線LQは、3次元空間上では、Zc軸と交わるとは限らないので、パン角Φは、より正確には直線LQをXcZc平面への投影した直線と、Zc軸とのなす角として、算出することができる。
【0034】
実際に走行する車両10から静止対象物の位置を検出すると、得られる位置データは、図13に示すようにきれいに直線LQ上に並ぶことはなく、直線LQの近傍に分布するようなデータが得られる。したがって、本実施形態では、以下に説明する手法で、検出位置データから静止対象物の相対移動軌跡を近似する近似直線LMV(直線LQとして推定される線)を算出し、その近似直線LMVをXcZc平面に投影した直線と、Zc軸とのなす角として、パン角Φを算出する。
【0035】
図14に示すように同一対象物について、(N−1)サンプル期間内に得られた、カメラ座標系におけるN個の位置データ(例えばN=20程度)、すなわち時系列データQ(N−1),Q(N−2),…,Q(1),Q(0)から、対象物と車両10との相対移動軌跡に対応する近似直線LMVを求める。具体的には、近似直線LMVの方向を示す方向ベクトルL=(Lx,Ly,Lz)(|L|=1)とすると、下記式(4)で表される直線を求める。
【数4】
Figure 0003897956
【0036】
ここでuは、任意の値をとる媒介変数であり、Xav,Yav及びZavは、それぞれカメラ座標系における位置データ列のXc座標の平均値、Yc座標の平均値及びZc座標の平均値である。なお、式(4)は媒介変数uを消去すれば下記式(4a)のようになる。
(Xc−Xav)/Lx=(Yc−Yav)/Ly
=(Zc−Zav)/Lz (4a)
【0037】
近似直線LMVは、図14に示す時系列データの平均位置座標Qav(=(Xav,Yav,Zav))を通り、各データ点からの距離の2乗の平均値が最小となるような直線として求められる。
【0038】
より具体的には、平均位置座標Qavから各データ点の座標Q(0)〜Q(N−1)に向かうベクトルD(j)=(DX(j),DY(j),DZ(j))=(Xc(j)−Xav,Yc(j)−Yav,Zc(j)−Zav)と、方向ベクトルLとの内積sを下記式(5)により算出し、この内積sの分散が最大となる方向ベクトルL=(Lx,Ly,Lz)を求める。
s=Lx・DX(j)+Ly・DY(j)+Lz・DZ(j) (5)
【0039】
各データ点の座標の分散共分散行列Vは、下記式(6)で表され、この行列の固有値σが内積sの分散に相当するので、この行列から算出される3つの固有値のうち最大の固有値に対応する固有ベクトルが求める方向ベクトルLとなる。なお、式(6)の行列から固有値と固有ベクトルを算出するには、ヤコビ法(例えば「数値計算ハンドブック」(オーム社)に示されている)として知られている手法を用いる。
【数5】
Figure 0003897956
このようにして、方向ベクトルLが求まると、パン角Φは、下記式(7)で与えられる。
【数6】
Figure 0003897956
【0040】
以上の説明は、N個の時系列位置データを計測中において車両10が直進していることを前提としている。しかしながら、通常は車両10が走行すると僅かではあってもヨー角θrが発生するので、その場合にはヨー角θrの影響を除く補正をする必要がある。以下ヨー角θrの影響、すなわち車両の旋回走行の影響を除く補正をする方法を図15を参照して説明する。
【0041】
図15(a)において、PBは車両10の現在の位置を示し、PAは時間ΔT((N−1)サンプル期間)前の位置を示す。すなわち、車両10が点PAからヨー角θrの旋回走行を行って点PBに達した場合を例にとって説明すると、旋回走行の影響を除くためには、実際には位置PAで観測した静止対象物OBJSの座標を、位置PCで観測した座標に変換する必要がある。位置PCは、現在の車両進行方向を示す直線LPDと、位置PAを通り直線LPDに垂直な直線LHとの交点である。
【0042】
同図(b)は、カメラ1Rにより得られる画像上の静止対象物像を示しており、OBJSA,OBJSB及びOBJSCが、それぞれ位置PA,PB及びPCで観測したときの、対象物像の位置を示している。
ここで、位置PAにおいて静止対象物OBJSを観測したときの、カメラ座標系における座標QOBJAを(X1c,Y1c,Z1c)とし、位置PCにおいて静止対象物OBJSを観測したときの、カメラ座標系のおける座標QOBJCを(X1Rc,Y1Rc,Z1Rc)とすると、座標QOBJAとQOBJCとの関係は下記式(8)で与えられる。ここでr及びTxは、図15(a)に示すように旋回走行の曲率半径及びX方向の補正量であり、下記式(9)及び(10)により算出される。なお、式(9)のDは、位置PAからPBまでの車両10の車両移動量である。
【数7】
Figure 0003897956
式(8)を用いて、時系列データQ(j)に対してヨー角補正を行うことにより、時系列位置データ計測中の車両10の旋回走行の影響(旋回走行に起因する誤差)を除くことができ、正確なパン角Φを算出することができる。
【0043】
図4に戻り、ステップS41では、車速VCARを時間積分することにより、車両移動量Dを算出するとともに、ヨーレートYRを時間積分することより、車両10のヨー角(回頭角)θrを算出し、静止対象物に位置データに対応させて記憶する。
【0044】
ステップS42では、静止対象物についてカメラ座標系の位置データを算出する。ここで「静止対象物」は、例えば信号機や電柱のように、車両走行中に検知される可能性が高く、且つ確実に静止している対象物とし、このような対象物の特徴の有無により判定する。具体的には、以下のような条件を満たすものを「静止対象物」と判定する。
【0045】
1)円形の同一サイズの対象物が並んで存在し、高さが4.5m以上の対象物
2)高さが5m以上の長方形の対象物
次に同一の静止対象物についての位置データの数が所定数N(例えば20)個以上となったか否かを判別し(ステップS43)、データ数<Nである間は、直ちに本処理を終了する。
【0046】
データ数が所定数Nに達すると、ステップS44に進み、ステップS41で算出、記憶した車両移動量D及びヨー角θrに応じた各位置データの補正、すなわち式(8)による補正を実行する。そして、補正後のN個の位置データに基づいて近似直線LMVを算出し(ステップS45)、式(7)によりパン角Φを算出する(ステップS46)。
【0047】
図16は、図15に示すような旋回走行中に、パン角Φを算出するために実際に検出した静止対象物OBJSの時系列位置データDP1、及びヨー角補正後の時系列位置データDP2の例を示す。すなわち、図16のDPA、DPB及びDPCが、それぞれ図15(a)の位置PA,PB及びPCにおいて観測した位置データに対応する。そして、ヨー角補正後の時系列位置データに基づいて近似直線LMVを算出すると、方向ベクトルL=(−0.0015,0.00286,0.9996)となり、パン角Φ=−0.08度となる。この実験に使用したカメラの実際のパン角Φは「0」となるように調整されており、距離に対して横方向の位置で約1%の誤差でパン角Φを算出することができた。なお、この例では時間ΔTは、約1.4秒である。
【0048】
図3に戻り、ステップS23では、画像上の位置座標(xc,yc)及び距離zを式(2)に適用して、カメラ座標系における位置座標(Xc,Yc,Zc)を算出し、次いで、座標(Xc,Yc,Zc)及びステップS22で算出されたパン角Φを、式(3)に適用して実空間座標系における座標(X,Y,Z)を算出し(ステップS24)、本処理を終了する。
【0049】
このように本実施形態では、カメラ座標系における時系列位置データQ(j)に基づいて近似直線LMVを算出し、この近似直線LMVの方向ベクトルLからパン角Φを算出するようにしたので、カメラ1R、1Lの光軸のずれを示すパン角をカメラ1R、1Lにより得られる画像に基づいて正確に算出することができる。さらにパン角Φに応じてカメラ座標系の位置座標を実空間座標系の位置座標に変換するようにしたので、カメラ1R、1Lの光軸が車両進行方向に対して横方向にずれていても、対象物の正確な位置検出を行うことができる。
【0050】
またパン角Φの算出は、ヨー角補正後の時系列位置データを用いるようにしたので、パン角Φの算出処理中に車両10が旋回走行をした場合でも、正確なパン角を算出することができる。
画像処理ユニット2は、図3の処理により算出された対象物の実空間上の位置情報に基づいて、その対象物と車両10との衝突の可能性を判定し、衝突の可能性が高いときは、スピーカ3及びHUD4を介して運転者への警報を発する。
【0051】
本実施形態では、画像処理ユニット2が位置検出装置を構成し、より具体的には、図3のステップS23及び図4のステップS42が、第1の位置データ算出手段に相当し、図4のステップS45及びステップS46が、それぞれ近似直線算出手段及びパン角算出手段に相当し、図3のステップS24が第2の位置データ算出手段に相当し、図4のステップS44が旋回走行補正手段に相当する。
【0052】
なお本発明は上述した実施形態に限るものではなく、種々の変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、2つカメラ1R,1Lの光軸は平行であることを前提としているが、両者が平行でないときは、視差に基づいて算出される距離zがその平行度ずれに応じた一定の誤差を含むので、本出願人による特願平11−345996号に示した手法により、平行度ずれに起因する距離の誤差を求めて、距離zを補正し、補正後の距離zを用いて位置検出を行うことが望ましい。
【0053】
また上述した実施形態では、撮像手段として赤外線カメラを使用したが、例えば特開平9−226490号公報に示されるように通常の可視光線のみ検出可能なテレビカメラを使用してもよい。ただし、赤外線カメラを用いることにより、動物等あるいは走行中の車両などの抽出処理を簡略化することができ、演算装置の演算能力が比較的低いものでも実現できる。
【0054】
また上述した実施形態では、運転者がパン角算出スイッチ8をオンしたときに、パン角算出処理を実行するようにしたが、所定期間(例えば1〜2ヶ月)毎に自動的に実行するようにしてもよいし、あるいは所定期間内にスイッチ8がオンされないときのみ、前回のパン角算出時点から所定期間経過後にパン角算出処理を実行するようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上詳述したように請求項1に記載の発明によれば、撮像手段により得られる対象物の画像から、撮像手段の光軸を基準とする撮像手段座標系における対象物の3次元空間上の位置データを算出する第1の位置データ算出手段により、静止対象物の時系列の位置データが算出され、該算出された時系列の位置データに基づいて静止対象物の3次元空間上の相対移動軌跡を近似する近似直線が算出され、撮像手段座標系の座標軸が回動したとき、その回動の中心となる座標軸に垂直な2つの座標軸を含む平面に近似直線を投影した直線と、撮像手段の光軸に平行な座標軸とのなす角が撮像手段の光軸のパン角として算出される。そして、撮像手段座標系における対象物の位置データをパン角に応じて補正することにより、実空間座標系における対象物の位置データが算出される。したがって、撮像手段の光軸の横方向のずれを示すパン角を、撮像手段により得られる画像に基づいて簡単且つ正確に算出し、パン角の影響を除いて正確な位置検出を行うことができる。
【0056】
請求項2に記載の発明によれば、車両の旋回走行に関するパラメータを用いて、第1の位置データ算出手段により算出された位置データが補正され、該補正後の位置データに基づいて近似直線が算出されるので、パン角算出処理中に車両が旋回した場合でも、正確なパン角の算出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態にかかる位置検出装置を含む、車両の周辺監視装置の構成を示す図である。
【図2】赤外線カメラの取り付け位置を説明するための図である。
【図3】対象物を抽出した位置検出を行う処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】図3の実空間位置算出処理のフローチャートである。
【図5】赤外線カメラにより得られるグレースケール画像を説明するために、中間階調部にハッチングを付して示す図である。
【図6】グレースケール画像を2値化した画像を説明するために、黒の領域をハッチングを付して示す図である。
【図7】ランレングスデータへの変換処理及びラベリングを説明するための図である。
【図8】対象物の時刻間追跡を説明するための図である。
【図9】視差の算出方法を説明するための図である。
【図10】視差から距離を算出する手法を説明するための図である。
【図11】本実施形態における座標系を示す図である。
【図12】カメラの光軸が横方向にずれた場合のカメラ座標系と、実空間座標系との関係を示す図である。
【図13】パン角の算出方法を説明するための図である。
【図14】近似直線の算出方法を説明するための図である。
【図15】車両の旋回走行中に検出した位置データに基づいてパン角を算出する方法を説明するための図である。
【図16】旋回走行中の実測位置データ及びヨー角に応じた補正後の位置データを示す図である。
【符号の説明】
1R、1L 赤外線カメラ(撮像手段)
2 画像処理ユニット(第1の位置データ算出手段、近似直線算出手段、パン角算出手段、第2の位置データ算出手段、旋回走行補正手段)

Claims (2)

  1. 車両に搭載された2つの撮像手段によって得られる画像に基づいて対象物の実空間座標系における位置を検出する位置検出装置において、
    前記撮像手段により得られる対象物像から、前記撮像手段の光軸を基準とする撮像手段座標系における前記対象物の3次元空間上の位置データを算出する第1の位置データ算出手段と、
    該第1の位置データ算出手段により静止対象物の時系列位置データを算出し、該算出した時系列位置データに基づいて前記静止対象物の3次元空間上の相対移動軌跡を近似する近似直線を算出する近似直線算出手段と、
    該近似直線に基づいて、前記撮像手段座標系の座標軸が、前記撮像手段の光軸横方向のずれに伴って回動したとき、その回動の中心となる座標軸に垂直な2つの座標軸を含む平面に、前記近似直線を投影した直線と、前記撮像手段の光軸に平行な座標軸とのなす角を前記撮像手段の光軸のパン角として算出するパン角算出手段と、
    前記撮像手段座標系における前記対象物の位置データを、前記パン角に応じて補正することにより、前記実空間座標系における位置データを算出する第2の位置データ算出手段とを備えることを特徴とする位置検出装置。
  2. 前記近似直線算出手段は、前記車両の旋回走行に関するパラメータを用いて、前記第1の位置データ算出手段により算出される前記静止対象物の時系列位置データを補正する旋回走行補正手段を有し、該補正後の時系列位置データに基づいて前記近似直線を算出することを特徴とする請求項1に記載の位置検出装置。
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