JP3897861B2 - 熱風炉制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、熱風炉の制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱風炉は、高炉へ送り込む熱風を供給するための高炉の付帯設備の一つである。図1は、熱風炉の構造を示す模式図である。図1において、熱風炉1は燃焼室2と蓄熱室3とからなっている。熱風炉蓄熱室3の内部には蓄熱煉瓦9が積まれており、4の部位はドーム、5の部位は珪石煉瓦下部と呼ばれている。先ず、燃焼室2において、高炉から排出される高炉ガス(Bガスという)と、そして、コークスガス(Cガス)、転炉ガス(LDガス)などの成分が入ったガス(Mガスという)とを混合し、供給口6からカロリを調整したMixガスを、供給口7から燃焼用空気を流入して燃焼させ、その燃焼排ガスによって蓄熱室3内部の蓄熱煉瓦9を加熱する。次いで、加熱によって高温になった蓄熱室3に、供給口8から約150〜200℃の温度の冷風空気を通風すると、冷風空気は蓄熱煉瓦9の熱を奪って約900〜1300℃の温度の熱風になる。図2に、熱風炉の送風制御系の模式図を示す。一基送風の場合には、冷風バタフライ弁(CB1)が全開となり、混冷バタフライ弁(MB)の開度を調整して、冷風を混ぜる(これを混冷という)ことによって熱風の温度制御を行う。また二基送風の場合には、一方の熱風炉の冷風バタフライ弁(CB1)が全開となり、もう一方の熱風炉の冷風バタフライ弁(CB2)の開度を調整することによって熱風の温度制御を行う。
【0003】
通常、熱風炉は3〜4基で構成され、現在では、送風サイクルを1/2ずらして送風を行う2基燃焼、2基送風のスタガードパラレル送風と呼ばれる操業が一般的である。次に、スタガードパラレル操業について説明する。図3はスタガードパラレル送風の概念図、即ち、4基の熱風炉の各バタフライ弁のタイミングを表した図である。各熱風炉の燃焼および送風時間ならびに待ち時間はタイマーで定められている。
【0004】
図3において、熱風炉1(図3においてHSS1で示す)の燃焼前半は熱風炉2(図3においてHSS2で示す)と熱風炉3(図3においてHSS3で示す)の2基送風状態になっている。このとき、先行して送風しているHSS2は、単体で送風設定温度を保つことができないので、後行のHSS3の高温の熱風で補うことによって、送風温度を調整している。その後、タイマー設定された時刻においてHSS2の送風が終了した後は、HSS3による1基送風状態になる。このときには、HSS3の熱風はまだ高温状態であるので、HSS3のMB弁を開き冷風を混ぜることによって、送風温度の制御を行なう。燃焼および送風が交互に行われる熱風炉の操作中に、上述した動作が繰り返し行われる。
【0005】
従来、熱風炉の制御方法に関しては、燃焼および送風からなる1つのサイクルが終了した後の熱風炉に残っている蓄熱量を算出し、このように算出された熱量を差し引いた熱量を次回サイクルに投入することからなる制御方法が一般的に用いられている。このような制御方法として、特開昭55−79814号公報には、熱風炉内部の高さ方向における3点以上の温度実測値から現時点での炉内残熱量を求め、送風開始前の蓄熱量を求め、そして、このようにして求められた炉内残熱量および送風開始前の蓄熱量から今回投入する燃焼ガス量を求めることが開示されている(以下、先行技術1という)。
【0006】
しかしながら、先行技術1においては、投入すべき燃焼ガス量を求めることはできるけれども、熱風炉蓄熱室内部の煉瓦温度の制御を行うことができないという問題点がある。
【0007】
更に、上述した先行技術1の問題点を解決するために、特公平6−37651および特公平7−100806には、送風終了時の熱風炉の蓄熱量、蓄熱量の変化、煉瓦温度をファジィ理論に基づく判断関数に変換して、各判断関数に対応するそれぞれの操作量を定め、実測に基づいて、各操作量を求め、そして、それ等を合成して今回投入する必要熱量を求めることが開示されている(以下、先行技術2という)。
【0008】
先行技術2においては、前回もしくはそれ以前の送風終了直後の実績を元に、次回投入熱量を求めている。しかしながら、実際の操業においては、送風設定温度、送風流量等の操業条件が大きく変わる場合がしばしばある。従って、現状の蓄熱量から次回サイクルの操作量を求める先行技術2の方法では、指定された送風設定温度を維持することができなくなり、または、極度の熱余り状態になって、熱効率の低下を招くという問題点がある。
【0009】
また近年では、製鉄所内のエネルギー需要を適正化する観点から、必ずしも高い送風温度を必要としない操業を行なう場合がある。このような操業形態では当然のことながら投入熱量は減り、その分、熱風炉蓄熱室内部の蓄熱煉瓦温度も低くなる。熱風炉蓄熱室内部の蓄熱煉瓦部位には設備保護のために制約温度条件がついている部分がある。特に、珪石煉瓦下部は、変態点温度573℃以下の温度になると急激に熱膨張率が変化して、煉瓦の崩壊を招く可能性がある。このような低温送風操業は過去の操業において経験がないので、上述した先行技術で用いられているようなオペレータの操業知識をルール化し、熱風炉の制御を行なうことができないという問題点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従って、この発明の目的は、上述した先行技術の問題点を解決して、熱風炉蓄熱室内部の煉瓦温度を適切な温度に保ち、現実の操業に適した熱風炉制御が可能な、熱効率の高い熱風炉制御方法を提供するにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上述した問題点を解決すべく鋭意研究を重ねた。その結果、熱風炉の現在の操業状態、または、変更された操業条件の下で、数サイクル後の熱風炉の挙動を予測し、その予想された状態と、そして、現在の熱風炉蓄熱室内部の煉瓦温度、熱風出口温度の平均値および送風設定温度とから次回サイクルの修正操作量を求めることによって、熱風炉蓄熱室内部の煉瓦温度を適切な温度に保ち、現実の操業に適した熱風炉制御が可能な、熱効率の高い熱風炉制御方法を得ることができることを知見した。
【0012】
この発明は、上記知見に基づきなされたものであって、熱風炉の燃焼および送風制御において、
燃焼時には、燃焼排ガスと熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との燃焼時用熱交換モデルを、送風時には炉内に送られる冷風と熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との送風時用熱交換モデルをそれぞれ作成し、
前記燃焼時および送風時用熱交換モデルを数値計算により解くことによって、熱風炉の燃焼および送風のシミュレーションを行う熱風炉シミュレータを作成し、
前記熱風炉シミュレータで、前回の操業実績である送風終了直後の蓄熱室内煉瓦温度分布、高炉から排出される高炉ガスであるBガスのカロリー、コークスガスや転炉ガスなどの成分が入ったMガスのカロリー、M/B、前記Bガスと前記Mガスとを混合したMixガスの流量および空燃比を初期値として、送風設定温度、送風流量、燃焼送風時間の操業諸元の下で、前記燃焼時用熱交換モデルを用いて、熱風炉燃焼期における前記煉瓦の各部温度の時間変化を計算する燃焼期のシミュレーションを行い、
該燃焼期のシミュレーションが終了した後、前記送風時用熱交換モデルを用いて、熱風炉送風期における前記煉瓦の各部温度の時間的変化、熱風出口温度および混冷流量を計算する送風期のシミュレーションを行い、
前記燃焼期および前記送風期のシミュレーションを所定回数繰り返し行い、
(A)数サイクル先の送風終了直後の一点以上の前記煉瓦温度の変化量と、
(B)熱風出口平均温度、
あるいは、
(A)数サイクル先の送風終了直後の一点以上の前記煉瓦温度の変化量と、
(C)混冷流量の変化量、
とを用いて、予め設定されたルールマップに基づいて前記数サイクル先の熱風炉の状態が熱余り状態かまたは熱不足の状態かを表す熱傾向指数を算出し、
(D)前記熱傾向指数と、
(E)前回の送風終了直後の一点以上の前記煉瓦温度と、
(F)熱風出口平均温度と送風設定温度との差、
あるいは、
(D)前記熱傾向指数と、
(E)前回の送風終了直後の一点以上の前記煉瓦温度と、
(G)混冷流量、
から、予め設定されたルールマップに基づいてMixガスの修正カロリーを算出し、
そして、前記修正カロリー前記熱傾向指数と前回の送風終了直後の一点以上の煉瓦温度とに基づいて修正ガス流量を算出して、
前記修正カロリーと前記修正ガス流量とから、M/BとMixガス流量を計算し、かくして、該M/BとMixガス流量とを今回の操作量として投入することに特徴を有するものである。
【0013】
更に、本発明者等は、熱風炉の燃焼および送風をシミュレーションする熱風炉シミュレータを用いて現状の操業諸元、または、操業諸元の変更があった場合の熱風炉の挙動をシミュレートし、与えられた操業諸元の下で送風設定温度を維持し、且つ、蓄熱室内部の蓄熱煉瓦の制約温度条件を満たす、最も効率的な投入熱量を、熱風炉シミュレータを用いることによって算出することができることを知見した。
【0014】
別の発明は、上記知見に基づきなされたものであって、熱風炉の燃焼および送風制御において、
燃焼時には、燃焼排ガスと熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との燃焼時用熱交換モデルを、送風時には炉内に送られる冷風と熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との送風時用熱交換モデルをそれぞれ作成し、
前記燃焼時および送風時用熱交換モデルを数値計算により解くことによって、熱風炉の燃焼および送風のシミュレーションを行う熱風炉シミュレータを作成し、
前記熱風炉シミュレータで、前回の操業実績である送風終了直後の蓄熱室内煉瓦温度分布、高炉から排出される高炉ガスであるBガスのカロリー、コークスガスや転炉ガスなどの成分が入ったMガスのカロリー、M/B、前記Bガスと前記Mガスとを混合したMixガスの流量および空燃比を初期値として、送風設定温度、送風流量、燃焼送風時間の操業諸元の下で、前記燃焼時用熱交換モデルを用いて、熱風炉燃焼期における前記煉瓦の各部温度の時間変化を計算する燃焼期のシミュレーションを行い、
該燃焼期のシミュレーションが終了した後、前記送風時用熱交換モデルを用いて、熱風炉送風期における前記煉瓦の各部温度の時間的変化、熱風出口温度、混冷流量および出熱量を計算する送風期のシミュレーションを行い、
前記燃焼期および前記送風期のシミュレーションを、熱風炉の挙動が定常状態になるまで繰り返し行い、
前記熱風炉シミュレータによって算出された前記定常状態における熱風出口平均温度と送風設定温度との差ΔT 1a 、および、前記熱風炉シミュレータによって算出された送風終了直後の珪石煉瓦下部温度と珪石煉瓦下部制約温度との差ΔT 2a を計算し、
前記差ΔT 1a が、送風設定温度が維持できる熱風出口平均温度の最小値と送風設定温度との差ΔT min と、前記最小値から過去の操業事例から算出した許容範囲内の温度と送風設定温度との差ΔT max との範囲内にあるかどうかの判断と、珪石煉瓦下部温度が前記制約温度より高く、かつ、前記差ΔT 2a が予め与えられた温度差の範囲ΔT limit より小さいかどうかの判断とを行い、
前記差ΔT 1a が前記範囲内にあり、珪石煉瓦下部温度が前記制約温度より高く、かつ、前記差ΔT 2a が前記温度差の範囲ΔT limit より小さい場合は、出熱量初期値と前記送風期のシミュレーションにより求めた前記出熱量との差から余剰または不足の熱量ΔQを求め、
前記熱量ΔQと前回投入した熱量Q(t−1)とから今回熱風炉に投入する熱量Q(t)を算出し、
前記熱量Q(t)に基づき、前回の送風終了直後のドーム温度および珪石煉瓦下部温度について、予め設定されたルールマップに従って修正ガスカロリーを算出し、
前記修正ガスカロリーと前回投入したガスカロリーとから今回投入するMixガスカロリーを算出し、
前記MixガスカロリーからM/Bを算出し、
前記Mixガスカロリーと今回投入する熱量とから今回投入するMixガス流量を算出し、
そして、前記M/BとMixガス流量を熱風炉に投入することに特徴を有するものである。
【0015】
さらに、別の発明は、請求項2記載の発明において、前記差ΔT 1a が前記範囲内にないか、珪石煉瓦下部温度が前記制約温度以下か、または、前記差ΔT 2a が前記温度差の範囲ΔT limit 以上の場合は、送風時間の修正値を算出し、前記修正値に従って再度熱風炉シミュレータを実行することに特徴を有するものである。
【0016】
【発明の実施の形態】
この発明の方法において、熱風炉シミュレータは、前回の操業実績データである、蓄熱室内部の煉瓦温度分布、燃焼ガスであるMixガスカロリーおよびMixガス流量、ならびに、操業諸元である送風設定温度および送風流量を入力することにより、数サイクル先の熱風炉の操業状態を予測する。
【0017】
この発明の方法において、熱風炉熱傾向指数算出処理は、熱風炉シミュレータによって予測された数サイクル先における熱風炉の状態量である、1点以上の蓄熱室内部の煉瓦温度の変化量と、そして、熱風出口平均温度または混冷流量変化量とを用いて、数サイクル後の熱風炉の蓄熱状態が熱余り傾向になるのか、熱不足傾向になるのかを判断し、熱傾向指数という形で算出する。
【0018】
この発明の方法において、修正操作量算出処理は、(1) 熱風炉熱傾向指数算出処理において算出された熱傾向指数、(2) 熱風炉の前回送風終了直後の1点以上の煉瓦温度、および、(3) 熱風出口温度の平均値と送風設定温度との差、または、混冷流量に関して、それぞれ判断関数を作成し、このようにして作成した判断関数に基づいて燃焼ガスであるMixガスの修正カロリおよび修正ガス流量を算出する。
【0019】
この発明の別の方法において、熱風炉シミュレータは、前回の操業実績データである、蓄熱室内部の蓄熱煉瓦温度分布、燃焼ガスカロリー、燃焼ガス流量、ならびに、操業諸元である送風設定温度、送風流量を入力することにより、与えられた条件の下で、熱風炉の挙動が定常状態になるまでシミュレーションを行なう。
【0020】
この発明の別の方法において、修正送風時間を求める送風時間伸縮処理は、熱風炉シミュレータによってシミュレーションされた、送風終了直後の蓄熱室内部珪石煉瓦下部温度と珪石煉瓦下部制約温度条件との間の差、および、シミュレーションによる熱風出口平均温度と送風設定温度との間の差から、送風設定温度を維持しかつ珪石煉瓦下部温度の制約条件を満たすことの出来る修正送風時間を算出する処理を行なう。
【0021】
この発明の別の方法において、修正熱量算出処理は、上記送風時間伸縮処理によって算出された、修正送風時間の下で熱風炉シミュレータによる送風シミュレーションを行ない、そのとき使用される熱量と、修正を行なう前の送風時間の下で使用された熱量から、余剰または不足分の熱量を算出する処理を行なう。
【0022】
この発明の別の方法において、修正ガスカロリ、修正燃焼ガス量算出処理は、上記修正熱量算出処理において求められた、余剰または不足分の熱量から、Mixガスのカロリーと流量を算出し、Mixガスのカロリーに関してはBガスとMガスの割合M/Bを算出する処理を行なう。
【0023】
次に、この発明を、図面を参照しながら説明する。
図4は、この発明の方法の第1実施態様のアルゴリズムを示すフローチャートである。3−1において、この発明の初期値となる、前回操業実績の取り込みと、そして、操業諸元である高炉に送り込む熱風の送風設定温度および送風流量の入力処理ならびに熱風炉シミュレータを用いて何サイクル先の熱風炉の状態を予測するかを示すサイクル数の入力処理とを行なう。
【0024】
前回操業実績は対象となる熱風炉に関する前回サイクルの操業実績データで、熱風炉操業実績データベースなどから取り出す。必要なデータは次の1〜6の通りである。
1.送風終了直後の蓄熱室内煉瓦温度分布
熱風炉シミュレータの初期値となる値で、蓄熱室内部の温度計で測定されたデータである。測定点として、
(1)蓄熱室ドーム温度、
(2)珪石煉瓦下部温度、
(3)蓄熱室上部(上段)温度、
(4)蓄熱室上部(中段)温度、
(5)蓄熱室上部(下段)温度、
(6)蓄熱室下部温度、
の6点におけるデータをとる。
2.熱風出口平均温度
3.Bガスカロリ、Mガスカロリ
4.M/B
燃焼ガスであるMixガスは、BガスとMガスとを混合してカロリの調整を行う。M/Bはその割合を表し、下式(1)で求めることができる。
【0025】
【数1】
Figure 0003897861
【0026】
Cmix :Mixガスのカロリー[KCal/Nm3]
CM :Mガスのカロリー[KCal/Nm3]
CB :Bガスのカロリー[KCal/Nm3]
5.Mixガス流量
6.空燃比
操業諸元は、次の7〜9のデータを入力する。
7.送風設定温度
8.送風流量
9.燃焼送風時間
これ等は、前回操業時の諸元と変化がなければ前回の値を入力し、操業諸元に変更があれば変更された値を入力すればよい。
【0027】
サイクル数は操業諸元である燃焼および送風時間を考慮して入力する。燃焼および送風時間は通常各々約120分であるので、一日先の状態を予測するとすれば、サイクル数は5回となる。
【0028】
3−2において、シミュレーションの回数を示すカウンタLを初期化する。
3−3において、3−1において取り込まれた1、3〜6項の前回実績データ1.送風終了直後の蓄熱室内煉瓦温度分布
3.Bガスカロリ、Mガスカロリ
4.M/B
5.Mixガス流量
6.空燃比
を初期値として、3−1において入力された操業諸元の下で熱風炉シミュレーションを行なう。
【0029】
この発明における実施態様の1つとして、熱風炉シミュレータにおいては、燃焼時には燃焼ガス、送風時には炉内に送られる冷風と熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との熱交換モデルを下式(2)および(3)のように作成し、それを数値計算により解くことによって、熱風炉の燃焼、送風シミュレーションを行っている。熱風炉の燃焼、送風のシミュレーションを行なうシミュレータであればどのようなものであっても良い。
【0030】
【数2】
Figure 0003897861
【0031】
【数3】
Figure 0003897861
【0032】
但し
a :煉瓦比表面積 m2/m3
Cs :煉瓦真比熱 KCal/Nm3
Tg :ガス温度℃
Ts :煉瓦温度℃
【0033】
【数4】
Figure 0003897861
【0034】
p:ガス圧力
ε:煉瓦空間率
ρs:煉瓦みかけ密度
Kg/m3U:総括伝熱係数 KCal/m3hr℃
シミュレータは始めに入力されたBガスカロリおよびMガスカロリ、M/Bから求められる燃焼ガスであるMixガスカロリおよびMixガス流量、ならびに、燃焼時間のデータを用いて熱風炉燃焼期のシミュレーションを行ない、熱交換モデルを用いて、熱風炉内部の煉瓦の各部温度の時間変化を計算する。燃焼期のシミュレーションが終了した後、シミュレータは、送風期のシミュレーションを行ない、熱交換モデルを用いて、熱風炉内部の煉瓦温度の時間的変化、熱風出口温度、通風量、混冷流量の計算を行なう。
【0035】
送風時の混冷流量、通風量の変化量は下式(4)および(5)によって計算される。
1.1基送風時
(1) 炉の通風量
【0036】
【数5】
Figure 0003897861
【0037】
(2) 混冷流量
【0038】
【数6】
Figure 0003897861
【0039】
但し、
VHS(t) :熱風炉の通風量時間変化
Vblast(t) :混冷流量時間変化
VBF:送風流量
THS(t) :熱風炉の熱風出口温度変化
Tblast :冷風温度
TBF:送風設定温度
CpHS :熱風比熱
Cpblast :冷風比熱
CpBF:送風比熱
2.2基送風時
(1) 先行(低温側)炉の通風量
【0040】
【数7】
Figure 0003897861
【0041】
(2) 後行(高温側)炉の通風量
【0042】
【数8】
Figure 0003897861
【0043】
但し、
VHSf(t) :先行熱風炉の通風量時間変化
THSb(t) :後行熱風炉の通風量時間変化
VBF:送風流量
THSf(t) :先行熱風炉の熱風出口温度変化
THSb(t) :後行熱風炉の熱風出口温度変化
Tblast :冷風温度
TBF:送風設定温度
CpHSf:先行炉熱風比熱
CpHSb:後行炉熱風比熱
Cpblast :冷風比熱
CpBF:送風比熱
(シングル送風時は1基送風のみ)パラレル操業時の1基送風から2基送風への切り替えは、1基送風時に送風設定温度が保てなくなった段階で行われる。なお、以上のようにして求められた量の積算値は、送風時間で積分することによって、容易に求めることができる。
【0044】
上述した燃焼期および送風期のシミュレーションが終了した後、この燃焼、送風サイクルにおける熱効率を計算し、燃焼期、送風期の熱風炉内部の煉瓦温度の時間変化、熱風温度の時間変化、通風量、混冷流量および熱効率をシミュレーション結果として出力する。
【0045】
3−4においては、3−3において計算された燃焼時、送風時の熱風炉内部の煉瓦温度の時間変化、熱風温度の時間変化、通風量、混冷流量および熱効率などのシミュレーション結果を記憶領域にLの値と共に格納する。格納されたシミュレーション結果は、後で行われる修正操作量の算出において利用される。
【0046】
3−5においては、熱風炉燃焼および送風シミュレーションが指定した回数まで行われたかどうかを調べる。まだ、指定された回数まで行われていない場合には、3−6へ行き、カウンタLをL=L+1として、3−7へ行く。
【0047】
3−7においては、(L−1)回目のシミュレーション結果のデータから送風終了直後の熱風炉内部の煉瓦温度を取り出し、L回目シミュレーションの初期値として、指定された回数までシミュレーションを繰り返す。以上のように、N回シミュレーションを行うことによって、現状の操業状態からN回後の熱風炉状態をシミュレーションすることができる。
【0048】
3−8においては、与えられた前回サイクルの実績と操業諸元とを用いて操業をN回行った場合において、熱風炉全体が熱余りの状態になるのか、または、熱不足の状態になるのかを判断するための目安となる値を計算する。目安となる状態量として、N回行った熱風炉シミュレーションの送風終了直後の1点以上の蓄熱室内煉瓦温度の変化量と、そして、熱風出口平均温度または混冷流量の変化量とを用いる。蓄熱室内煉瓦温度の変化量に関しては、実際の操業において管理している煉瓦温度の変化量を用いるのが望ましい。本発明の実施例においては、珪石煉瓦下部温度の変化量を用いた。珪石煉瓦下部の部位の煉瓦は、主な成分として珪石質を有しているので、変態点温度である573℃より温度が下がると急激な熱膨張が生じて、煉瓦が崩壊する可能性がある。従って、珪石煉瓦下部温度を少なくとも600℃以上に保つような操業をしなくてはならないために、熱風炉の操業においては常時温度を管理する必要がある。もう一方の状態量に関しては、熱風出口平均温度または混冷流量の変化量のいずれの状態量をとっても構わないが、本実施例においては、混冷流量の変化量を用いた。熱風炉が熱余り傾向になれば、熱風出口から出る熱風の温度を送風設定温度に至るまで下げるので、混冷流量が増加傾向となる。逆に、熱不足傾向になれば、熱風出口から出る熱風の温度が下がってくるので、それに伴い混冷流量が減少傾向となる。上述したように、N回のシミュレーションを実行した熱風炉シミュレータからの出力である、炉壁温度変化量と混冷流量変化量とを用いて、与えられた前回実績および操業諸元の下で、熱風炉が熱余り傾向になるのか、または、熱不足傾向になるのかを判断する。
【0049】
珪石煉瓦下部温度変化量および混冷流量変化量は下記の計算によって求められる。珪石煉瓦下部温度の変化量は下式(8)に示すように、N回目シミュレーションの送風終了直後の珪石煉瓦下部温度と、そして、1回目シミュレーションの送風終了直後の珪石煉瓦下部温度との差を計算することによって得られる。
【0050】
珪石煉瓦下部温度変化量=N回目シミュレーション時の珪石煉瓦下部温度
−1回目シミュレーション時の珪石煉瓦下部温度 (8)
同様に、混冷流量の変化量は下式(9)に示すように、N回目シミュレーションの混冷流量と、そして、1回目シミュレーションの混冷流量との差を計算することによって得られる。
【0051】
混冷流量変化量=N回目シミュレーション時の混冷流量−1回目シミュレーシ
ョン時の混冷流量 (9)
3−9においては、3−8において計算された、珪石レンガ下部温度の変化量および混冷流量の変化量を用いて、与えられた操業条件の元でN回操業を行うと、熱風炉全体の挙動がどの程度熱余り状態になるか、または、熱不足の状態になるのかを表す傾向指数を計算する。この発明の実施態様の1つとして、傾向指数の計算など諸量の算出にはファジイ推論を用いた。その他にも例えばニューラルネットワークを用いて、過去の操業事例を学習させても同様の効果が得られる。ファジイ推論の利点は、ルールの記述が言語レベルで行えるので、非常にわかりやすく、メンテナンス性に優れていることである。本発明の実施例において用いたファジイ推論形式は簡略推論法と呼ばれているもので、ファジイルールの前件部はメンバーシップ関数で構成されており、そして、後件部は実数値である。そのためルールのメンテナンスが非常に楽であるという利点がある。簡易推論法に関しては、「講座ファジイ制御(日刊工業新聞社)」17頁に詳しい。
【0052】
図5に熱傾向指数を推論するファジイルールマップを示す。このファジイルールマップは例えば、「もし珪石煉瓦下部温度の変化量が正に大きく、且つ、混冷流量の変化量が正に大きければ、今後炉に熱が多く溜る傾向であると予想される」などを表しており、IF---THEN 〜形式のルールを表している。前件部はマップの縦横軸で、変数として混冷流量の変化量、珪石煉瓦下部温度の変化量があり、それぞれの量に応じたファジイ変数のラベルがついている。ファジイ変数のラベルは混冷流量の変化量、珪石煉瓦下部温度の変化量のいずれにおいても3段階あり、それぞれPB(変化量が正の方向に大きい)、Z(変化なし)、NB(変化量が負の方向に大きい)からなっており、それぞれ図6、7に示すようなメンバーシップ関数に対応している。THEN〜部分(以下、後件部という)は、マップ中に記された数値であって、それぞれのラベルに応じた熱傾向指数を表しており、熱余りの傾向の場合は正の数値、熱不足の場合は負の数値で表現されている。
【0053】
ここで図5に示すファジイルールマップを用いた熱傾向システムの計算方法を説明する。例えば、1回目シミュレーション時の混冷流量が 250 Nm3/min、珪石煉瓦下部温度が650 ℃、N回目シミュレーション時の混冷流量が 200 Nm3/min、珪石煉瓦下部温度が635℃の場合、
混冷流量変化=200 250= 50Nm3/min (10)
珪石煉瓦下部温度変化= 635 650= 15℃ (11)
となる。発火するファジイルールマップ中のルールは以下のようになる。
・発火ルール1
IF 混冷流量変化=Z and 珪石煉瓦下部温度変化=NB
THEN 熱傾向指数= 0.5
発火度合= 0.21
・発火ルール2
IF 混冷流量変化=NB and珪石煉瓦下部温度変化=NB
THEN 熱傾向指数= 1
発火度合= 0.03
・発火ルール3
IF 混冷流量変化=Z and 珪石煉瓦下部温度変化=Z
THEN 熱傾向指数=0.0
発火度合=0.66
・発火ルール4
IF 混冷流量変化=NB and 珪石煉瓦下部温度変化=Z
THEN 熱傾向指数= 0.5
発火度合=0.09
以上の結果の重み付き平均を下式(12)のように計算することによって熱傾向指数を求める。
【0054】
【数9】
Figure 0003897861
【0055】
以上の計算によって、N回後の熱風炉全体の状態は熱余りの傾向でその指数は0.3 と計算される。
3−10においては、3−9において計算された熱傾向指数、前回の送風終了直後の1点以上の煉瓦温度、および、熱風出口平均温度と送風設定温度との差、または、混冷流量に関して判断関数を作成し、これ等に基づいて燃焼ガスであるMixガスの修正カロリを算出する。
【0056】
この発明の実施態様の1つの例として、蓄熱室内煉瓦温度は珪石煉瓦下部温度を用いて、熱風出口平均温度と送風設定温度との差から修正ガスカロリおよび修正ガス流量を算出する場合について説明する。
【0057】
図8に熱傾向指数と珪石煉瓦下部温度とによるMixガスカロリ修正ルールマップを示す。このルールマップは例えば、「熱傾向指数が正に大きくかつ珪石レンガ下部温度が高いならガスカロリを3アクション減らす」などの修正ルールを表している。
【0058】
3−8において説明したように、珪石煉瓦下部温度には設備上の制約温度条件があり、少なくとも600℃以上の温度を保つような操業をしなければならないので、操業において常時温度を管理する必要がある。そのための判断関数を作成する。
【0059】
前件部は縦軸に珪石煉瓦下部温度、横軸に熱傾向指数であり、各々の量に応じたファジイ変数のラベルがついている。珪石煉瓦下部温度、熱傾向指数共に3つのラベルがついており、珪石煉瓦下部温度に関しては、H(高い)、G(ちょうど良い)、L(低い)であり、熱傾向指数に関しては、PB(Positive Big:熱余り傾向大)、Z(Zero:変化なし)、NB(Negative Big :熱不足傾向大)である。それぞれ、図9、10のメンバーシップ関数に対応している。後件部はMixガスカロリの修正値で1アクションは 10 KCal/Nm3と対応している。また、−は何もしないという意味である。珪石煉瓦下部温度の他に管理する煉瓦の温度があれば、以上示したようなルールマップを追加すれば良い。
【0060】
図11に熱傾向指数と、そして、熱風出口平均温度と送風設定温度との差とによるMixガスカロリ修正ルールマップを示す。このルールマップも煉瓦温度の場合と同様に、「もし熱風出口平均温度と送風設定温度との差が小さくて、熱傾向指数が正に大きいならば、カロリを1アクション増やす」などの修正ルールを示している。熱風出口温度平均値と送風設定温度との差、および、熱傾向指数は、現状の操業からどの程度燃焼ガスカロリが調整できるかを求めるためのものである。このマップにおいて熱風出口温度平均値と送風設定温度との差は、送風設定温度を維持するためには、現在、熱風炉がどの程度の熱量の余裕があるかを示す指標となる。この熱風出口温度平均値と送風設定温度との差、および、熱傾向指数を評価することによって、どの程度燃焼ガスカロリを調整することができるかを算出することが出来る。熱傾向指数、および、熱風出口温度平均と送風設定温度との差には、それぞれの量に応じたファジイ変数のラベルがついている。ファジイ変数のラベルは熱傾向指数、および、熱風出口温度平均と送風設定温度との差は、共に3段階あり熱傾向指数については、PB(Positive Big:熱余り傾向大)、Z(Zero:変化なし)、NB(Negative Big :熱不足傾向大)である。熱風出口温度平均と送風設定温度との差については、H(Height:高い)、G(Good:ちょうど良い)、L(Low :低い)である。これらのファジイラベルは図12、図13に示すようなメンバーシップ関数に対応している。
【0061】
珪石煉瓦下部温度および熱傾向指数、熱風出口平均温度と送風設定温度との差および熱傾向指数に関して、各々作成したMixガスカロリ修正ルールの出力を合成して、修正ガスカロリを求める。以下に修正ガスカロリ算出の例を示す。
【0062】
例えば、3−9で算出された熱傾向指数が−0.182で、熱風出口温度と送風設定温度との差が120℃、珪石煉瓦下部温度が650℃の場合、発火するルールは、
・発火ルール1
IF珪石煉瓦下部温度=Hand熱傾向指数= Z
THEN修正ガスカロリー=−1.0 Action
発火度合:0.818
・発火ルール
IF熱風出口温度−送風設定温度=Hand熱傾向指数= Z
THEN修正ガスカロリー=−2.0Action
発火度合:0.818
・発火ルール
IF熱風出口温度−送風設定温度=Hand熱傾向指数=NB
THEN修正ガスカロリー= 1.0 Action
発火度合:0.182
以上の結果の重み付き平均をとることによって、下式(13)によって修正ガスカロリーが求まる。
【0063】
【数10】
Figure 0003897861
【0064】
以上により、修正ガスカロリーは単位を10.0KCal/Nm3とすると、
修正ガスカロリー= 1.45×10.0= 14.50KCal/Nm3 (14)
となり、14.50KCal/Nm3減少させるということになる。
【0065】
修正ガス流量の算出は、以上によって算出された修正ガスカロリーと熱傾向指数を用いて、ガスカロリーを修正することによって影響の出る蓄熱室内部の1つ以上の煉瓦温度に関して、判断関数を作成することによって行う。この場合も、煉瓦温度は珪石レンガ下部温度を用いる。図14に修正ガスカロリーアクション数と炉壁温度によるMixガス流量修正ルールを、図16に熱傾向指数と珪石レンガ下部温度とによるMixガス流量修正ルールを示す。修正ガスカロリーアクション数、珪石レンガ下部温度には各々の量に応じたファジイ変数のラベルがついている。修正ガスカロリーアクション数には、各々PB(Positive Big :修正カロリー正に大)、Z(Zero:修正カロリーなし)、NB(Negative Big:修正カロリー負に大)があり、図15のメンバーシップ関数に対応している。珪石レンガ下部温度に関しては図10のメンバーシップ関数の場合と同様である。以下にMixガスの修正ガス流量の算出例を示す。
【0066】
例えば、珪石レンガ下部温度が650℃、修正ガスカロリーが−1.45Action、熱傾向指数が−0.182の場合、発火するルールは、
・発火ルール1
IF珪石煉瓦下部温度=Hand修正ガスカロリーアクション=NB
THEN修正ガス流量=0.5Action
発火度合:0.483
・発火ルール2
IF珪石煉瓦下部温度=Hand修正ガスカロリーアクション=Z
THEN修正ガス流量=−1.0Action
発火度合:0.517
・発火ルール3
IF珪石煉瓦下部温度=Hand熱傾向指数=NB
THEN 修正ガス流量=0.0Action
発火度合:0.182
・発火ルール4
IF珪石煉瓦下部温度=Hand熱傾向指数=Z
THEN修正ガス流量=−1.0Action
発火度合:0.818
以上の結果の重み付き平均をとることによって、下式(15)によって修正ガス流量が求まる。
【0067】
【数11】
Figure 0003897861
【0068】
修正ガス流量を−単位1000.0Nm3/Hとすると、
修正ガス流量= 0.547×1000.0= 547Nm3/H (16)
減少させるということになる。
【0069】
3−11では3−10で計算された修正ガスカロリーと修正ガス流量とを用いて操作量を変更する。現在の燃焼ガスのカロリーは975KCal/Nm3であれば修正投入ガスカロリーは、
修正投入ガスカロリー=975−14.5960.5KCal/Nm3 (17)
となり、M/BはBガスカロリー915.0KCal/Nm3 、Mガスカロリー2564.0KCal/Nm3であれば上記式(1)を用いて、
【0070】
【数12】
Figure 0003897861
【0071】
のように計算される。また、燃焼ガス流量が98000Nm3/Hであれば、
燃焼ガス流量=98000−54797453Nm3/H (19)
以上のように計算されたM/Bと燃焼ガス量とを今回投入操作量とする。
【0072】
図17に、この発明の方法の第2実施態様のアルゴリズムを示すフローチャートを示す。18−1において、この発明の方法のアルゴリズムの初期値となる前回操業実績の取り込みと高炉に送り込む、熱風の送風設定温度と送風流量の操業諸元の入力の処理を行う。取り込むデータは上述した第1実施態様の場合と同一である。
【0073】
18−2において、1回目の処理であることを示すFlagを立てる。
18−3において、送風時間伸縮処理のために、前回のシミュレーション結果(初めて4−2に入る場合には4−1で取り込まれた実績値)のうち熱風出口平均温度と珪石煉瓦下部温度とを、それぞれ前回熱風出口平均温度、前回珪石煉瓦下部温度として保存しておく。
【0074】
18−4においては、18−1において取り込んだ前回実績データ、即ち、
・送風終了直後の蓄熱室内煉瓦温度分布、
・Bガスカロリ、Mガスカロリ、
・M/B、
・ガス流量、
・空燃比
を初期値として、18−1において入力した操業諸元の下で熱風炉シミュレーションを行う。
【0075】
第2実施態様の熱風炉シミュレータは、熱風炉の燃焼および送風をシミュレーションするもので、初期値として入力した前回実績データと操業諸元の下で、定常状態までのシミュレーションを行うものである。
【0076】
18−5において、熱風炉シミュレータから出力された、熱風出口平均温度と送風設定温度との差ΔT 1a 、および、熱風出口平均温度と前回熱風出口平均温度との差ΔT 1b を計算する。
【0077】
18−6においては、18−5におけると同様に、熱風炉シミュレータから出力された、送風終了直後の蓄熱室内部の煉瓦温度の内、珪石煉瓦下部温度と珪石煉瓦下部制約温度との差ΔT 2a 、および、珪石煉瓦下部温度と前回珪石煉瓦下部温度との差Δ 2b を計算する。
【0078】
18−7において、Flagが1回目である場合には、18−8に行き、熱風炉シミュレータの出熱量を出熱量初期値として保存する。18−9においては、18−5において求めたΔT 1a を用いて、与えられた操業諸元の下で熱風炉シミュレーションした結果、送風設定温度を維持できるか、まだ送風設定温度を維持するまで余裕があるかの判断を行う。その判断基準として以下の送風設定温度が維持できる熱風出口平均温度の最小値と送風設定温度との差ΔT min と、熱風出口平均温度の最小値からある許容範囲内の温度と送風設定温度との差T max を過去の操業事例から求める。ここで、もしΔT 1a ΔT min より小さければ、与えられた操業諸元の下では送風設定温度を維持できないと判断でき、またΔT 1a ΔT max より大きければ、送風設定温度に対して余裕があると判断できる。ΔT 1a がその範囲内に入っていればYesとして18−10へ行き、範囲外であればNoとして18−11へ行く。
【0079】
18−10において、与えられた操業諸元の下での熱風炉シミュレーションの結果、珪石煉瓦下部温度が珪石煉瓦下部制約温度条件を満たすかどうかの判断をする。シミュレーションによって算出された珪石煉瓦下部温度が制約温度より高く、且つ、珪石煉瓦下部温度と制約温度との差ΔT 2a があらかじめ与えられた温度差の範囲ΔT limit より小さい場合はYesとして18−13へ行き、そうでなければNoとして18−11へ行く。
【0080】
18−11において、2回目以降のシミュレーションであることを示すFlagを立てて、18−12へ行く。
18−12においては、18−9、18−10において判断された結果から送風時間の伸縮処理を行う。送風時間の伸縮処理には以下の場合が考えられる。
・(ケース1)送風設定温度が維持できない場合
→送風時間を縮める。
・(ケース2)送風設定温度まで余裕がある場合
→送風時間を伸ばす。
・(ケース3)珪石煉瓦下部温度が制約温度条件を満たさない場合
→送風時間を縮める。
以上のケースの中で、ケース1、2の場合、送風時間の修正値Δt1[min]は以下の式(20)で求める。
【0081】
Δt1=−(α1 ΔT 1a +β1 ΔT 1b ) (20)
但し、α1 、β1 は修正係数1を示す。またケース3の場合は、以下の式(21)で送風時間の修正値Δt2[min]を求める。
【0082】
Δt2 =−(α2 ΔT 2a +β2 ΔT 2b ) (21)
但し、α2 、β2 は修正係数2を示す。以上の式で求められた送風修正時間を送風時間に加えて18−3へ行き、再度熱風炉シミュレータを実行する。18−13においては、18−8において保存しておいた出熱量初期値と今回の送風期のシミュレーションで求めた出熱量の差を求めることによって、余剰または不足の熱量ΔQ[kcal]を求めることができる。
【0083】
ΔQ=出熱量初期値−出熱量 (22)
以上で求められた熱量ΔQ[kcal]と前回投入した熱量Q(t-1)[kcal] から今回熱風炉に投入する熱量Q(t)[kcal] は以下の式によって求めることができる。
【0084】
Q(t) =Q(t-1) −ΔQ (23)
18−4においては、18−13において求めた今回投入する熱量から、実際の操作量である燃焼ガスカロリー、燃焼ガス流量を求める。
【0085】
はじめに修正ガスカロリーΔK[kcal/Nm3]を求める。修正ガスカロリーは前回の送風終了直後のドーム温度、珪石レンガ下部温度について図18および図19に示すようなメンバーシップ関数を作成し、図20に示すようなファジィルールから求める。図18および図19のメンバーシップ関数は各々H(高い)、G(ちょうど良い)、L(低い)という温度に応じたラベルが付けられている。図20はドーム温度、珪石レンガ下部温度のファジィラベルに応じた修正ガスカロリーがマップとなって示されている。
【0086】
求められた修正ガスカロリーΔK[kcal/Nm3]と前回投入したガスカロリーK(t-1)[kcal/Nm3] より、今回投入する燃焼ガスカロリーK(t)[kcal/Nm3] は式(24)によって算出される。
【0087】
K(t) =K(t-1) +ΔK (24)
算出された燃焼ガスカロリーより上記式(1) を用いてBガス、Mガス比を算出する。
【0088】
また、燃焼ガス流量は、今回投入する熱量Q(t)[kcal] が式(25)のような関係があるので、今回投入する燃焼ガス流量V(t)[Nm3]は式(26)によって求めることができる。
【0089】
Q(t) =K(t) V(t) (25)
V(t) =Q(t)/K(t) (26)
以上によって求められたBガス、Mガス比と燃焼ガス流量を熱風炉に投入することによって、操業諸元に最適且つ蓄熱室内レンガの制約条件を満たした制御を行うことができる。
【0090】
【実施例】
次に、この発明の方法を実施例によって説明する。
図21にこの発明の実施例についての概略説明図を示す。図21に示すこの発明の実施例においては、操業途中で送風設定温度を1100℃から1080℃に変更した。図中に示したように、送風設定温度を1100℃から1080℃まで変更し、その他の操業条件は同一で、5サイクル先の珪石煉瓦下部温度、熱効率をこの発明の方法のアルゴリズムで予測すると、点線で示したように、珪石煉瓦下部温度は上昇傾向になり、それに伴い熱効率も悪化する。この5サイクル先の熱風炉の挙動から、この発明の修正操作量算出アルゴリズムを用いて、修正ガスカロリおよび修正ガス流量を算出し、それを操作量として投入したときの熱風炉の挙動を図中に実線で示す。図中に示されているように、この発明の方法によって制御した場合には、珪石煉瓦下部温度、熱効率は何れも、送風設定温度変更前の水準と変わらない状態で操業を行うことができた。
【0091】
【発明の効果】
この発明の方法によると、従来は不可能であった熱風炉の現在の操業状態または変更された操業条件の下で、数サイクル後の熱風炉の挙動を予測し、その予想された状態と、そして、現在の熱風炉蓄熱室内部の煉瓦温度、熱風出口温度の平均値および送風設定温度とから次回サイクルの修正操作量をもとめることによって、現実の操業に適した熱風炉制御を行うことができ、更に、与えられた操業諸元の下で送風設定温度を維持し、且つ、蓄熱室内部の煉瓦の制約温度条件を満たす、最も効率的な投入熱量をもとめることができ、その結果として熱効率が向上し、熱風炉蓄熱室内部の煉瓦温度も適当な温度に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、熱風炉の構造を示す模式図である。
【図2】図2は、熱風炉の送風制御系を示す模式図である。
【図3】図3は、スタガードパラレル送風の概念図である。
【図4】図4は、この発明の方法の第1実施態様のアルゴリズムを示す図である。
【図5】図5は、熱傾向指数ファジイルールマップを示す図である。
【図6】図6は、混冷流量変化メンバーシップ関数を示す図である。
【図7】図7は、珪石煉瓦下部温度変化メンバーシップ関数を示す図である。
【図8】図8は、Mixガスカロリ修正ルール1を示す図である。
【図9】図9は、熱傾向指数メンバーシップ関数を示す図である。
【図10】図10は、珪石煉瓦下部温度メンバーシップ関数を示す図である。
【図11】図11は、Mixガスカロリ修正ルール2を示す図である。
【図12】図12は、熱傾向指数メンバーシップ関数を示す図である。
【図13】図13は、熱風出口温度平均と送風設定温度差メンバーシップ関数を示す図である。
【図14】図14は、Mixガス流量修正ルール1を示す図である。
【図15】図15は、修正ガスカロリアクションメンバーシップ関数を示す図である。
【図16】図16は、Mixガス流量修正ルール2を示す図である。
【図17】図17は、この発明の方法の第2実施態様のアルゴリズムを示す図である。
【図18】図18は、ドーム温度メンバーシップ関数を示す概略説明図である。
【図19】図19は、珪石煉瓦下部温度メンバーシップ関数を示す概略説明図である。
【図20】図20は、修正ガスカロリー算出ファジィルールを示す概略説明図である。
【図21】図21は、実施例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
1.熱風炉
2.燃焼室
3.蓄熱室
4.ドーム
5.珪石煉瓦下部
6.Mixガス供給口
7.空気供給口
8.冷風供給口
9.蓄熱煉瓦

Claims (3)

  1. 熱風炉の燃焼および送風制御において、
    燃焼時には、燃焼排ガスと熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との燃焼時用熱交換モデルを、送風時には炉内に送られる冷風と熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との送風時用熱交換モデルをそれぞれ作成し、
    前記燃焼時および送風時用熱交換モデルを数値計算により解くことによって、熱風炉の燃焼および送風のシミュレーションを行う熱風炉シミュレータを作成し、
    前記熱風炉シミュレータで、前回の操業実績である送風終了直後の蓄熱室内煉瓦温度分布、高炉から排出される高炉ガスであるBガスのカロリー、コークスガスや転炉ガスなどの成分が入ったMガスのカロリー、M/B、前記Bガスと前記Mガスとを混合したMixガスの流量および空燃比を初期値として、送風設定温度、送風流量、燃焼送風時間の操業諸元の下で、前記燃焼時用熱交換モデルを用いて、熱風炉燃焼期における前記煉瓦の各部温度の時間変化を計算する燃焼期のシミュレーションを行い、
    該燃焼期のシミュレーションが終了した後、前記送風時用熱交換モデルを用いて、熱風炉送風期における前記煉瓦の各部温度の時間的変化、熱風出口温度および混冷流量を計算する送風期のシミュレーションを行い、
    前記燃焼期および前記送風期のシミュレーションを所定回数繰り返し行い、
    (A)数サイクル先の送風終了直後の一点以上の前記煉瓦温度の変化量と、
    (B)熱風出口平均温度、
    あるいは、
    (A)数サイクル先の送風終了直後の一点以上の前記煉瓦温度の変化量と、
    (C)混冷流量の変化量、
    とを用いて、予め設定されたルールマップに基づいて前記数サイクル先の熱風炉の状態が熱余り状態かまたは熱不足の状態かを表す熱傾向指数を算出し、
    (D)前記熱傾向指数と、
    (E)前回の送風終了直後の一点以上の前記煉瓦温度と、
    (F)熱風出口平均温度と送風設定温度との差、
    あるいは、
    (D)前記熱傾向指数と、
    (E)前回の送風終了直後の一点以上の前記煉瓦温度と、
    (G)混冷流量、
    から、予め設定されたルールマップに基づいてMixガスの修正カロリーを算出し、
    そして、前記修正カロリー前記熱傾向指数と前回の送風終了直後の一点以上の煉瓦温度とに基づいて修正ガス流量を算出して、
    前記修正カロリーと前記修正ガス流量とから、M/BとMixガス流量とを計算し、かくして、該M/BとMixガス流量とを今回の操作量として投入することを特徴とする熱風炉制御方法。
  2. 熱風炉の燃焼および送風制御において、
    燃焼時には、燃焼排ガスと熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との燃焼時用熱交換モデルを、送風時には炉内に送られる冷風と熱風炉蓄熱室内部の煉瓦との送風時用熱交換モデルをそれぞれ作成し、
    前記燃焼時および送風時用熱交換モデルを数値計算により解くことによって、熱風炉の燃焼および送風のシミュレーションを行う熱風炉シミュレータを作成し、
    前記熱風炉シミュレータで、前回の操業実績である送風終了直後の蓄熱室内煉瓦温度分布、高炉から排出される高炉ガスであるBガスのカロリー、コークスガスや転炉ガスなどの成分が入ったMガスのカロリー、M/B、前記Bガスと前記Mガスとを混合したMixガスの流量および空燃比を初期値として、送風設定温度、送風流量、燃焼送風時間の操業諸元の下で、前記燃焼時用熱交換モデルを用いて、熱風炉燃焼期における前記煉瓦の各部温度の時間変化を計算する燃焼期のシミュレーションを行い、
    該燃焼期のシミュレーションが終了した後、前記送風時用熱交換モデルを用いて、熱風 炉送風期における前記煉瓦の各部温度の時間的変化、熱風出口温度、混冷流量および出熱量を計算する送風期のシミュレーションを行い、
    前記燃焼期および前記送風期のシミュレーションを、熱風炉の挙動が定常状態になるまで繰り返し行い、
    前記熱風炉シミュレータによって算出された前記定常状態における熱風出口平均温度と送風設定温度との差ΔT 1a 、および、前記熱風炉シミュレータによって算出された送風終了直後の珪石煉瓦下部温度と珪石煉瓦下部制約温度との差ΔT 2a を計算し、
    前記差ΔT 1a が、送風設定温度が維持できる熱風出口平均温度の最小値と送風設定温度との差ΔT min と、前記最小値から過去の操業事例から算出した許容範囲内の温度と送風設定温度との差ΔT max との範囲内にあるかどうかの判断と、珪石煉瓦下部温度が前記制約温度より高く、かつ、前記差ΔT 2a が予め与えられた温度差の範囲ΔT limit より小さいかどうかの判断とを行い、
    前記差ΔT 1a が前記範囲内にあり、珪石煉瓦下部温度が前記制約温度より高く、かつ、前記差ΔT 2a が前記温度差の範囲ΔT limit より小さい場合は、出熱量初期値と前記送風期のシミュレーションにより求めた前記出熱量との差から余剰または不足の熱量ΔQを求め、
    前記熱量ΔQと前回投入した熱量Q(t−1)とから今回熱風炉に投入する熱量Q(t)を算出し、
    前記熱量Q(t)に基づき、前回の送風終了直後のドーム温度および珪石煉瓦下部温度について、予め設定されたルールマップに従って修正ガスカロリーを算出し、
    前記修正ガスカロリーと前回投入したガスカロリーとから今回投入するMixガスカロリーを算出し、
    前記MixガスカロリーからM/Bを算出し、
    前記Mixガスカロリーと今回投入する熱量とから今回投入するMixガス流量を算出し、
    そして、前記M/BとMixガス流量を熱風炉に投入することを特徴とする熱風炉制御方法。
  3. 前記差ΔT 1a が前記範囲内にないか、珪石煉瓦下部温度が前記制約温度以下か、または、前記差ΔT 2a が前記温度差の範囲ΔT limit 以上の場合は、送風時間の修正値を算出し、前記修正値に従って再度熱風炉シミュレータを実行することを特徴とする、請求項2記載の熱風炉制御方法。
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