JP3897837B2 - 電磁流量計 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術】
本発明は測定管を非満水状態で流下する流体の流量を計測する電磁流量計の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
出願人は先に、非満水状態での流量計測を水位を直接計測しないで、電磁流量計の原理に基づいて計測する電磁流量計を特開平5−223605号公報で提案した(以下これを第1の従来技術と言う。)
この第1の従来技術では、流路を横切って水平方向に対向配置された一対の電極と、管路の上部に設けた第1の励磁コイルと、管路の下部に設けた第2の励磁コイルを有する。
【0003】
各励磁コイルは交互に切替えて励磁され、異なる磁束密度分布を流路に発生する。この異なる磁束密度分布で得られる二つの誘起電圧(出力)から補正演算することにより、水位を求めることなく、非満水状態の流量を算出する。
【0004】
第1の従来技術を図3〜図5に従って、より詳しく説明する。
図3(a),(b)と図4において、1は断面が円形の流路、2,2は流路1の中心を通る垂直線に対し対称の位置に設けた一対の電極、3Aと3Bは第1と第2の励磁コイルで、それぞれ異なる磁束密度分布BAとBBを異なる期間(時間)の間に発生する。符号4は、このような構造の流量検出器を示す。
【0005】
5は励磁回路で、タイミング回路6の信号に応じて、第1と第2の励磁コイル3Aと3Bとを交互に励磁する。7は電極2,2間に誘起した電圧を増幅して出力する増幅器、S1は切替スイッチで、タイミング回路6の信号で切替作動し、前記2つの励磁コイル3Aと3Bの励磁時期の切替と同期して切替作動し、第1の励磁コイル3Aが励磁されているときにa側に、第2の励磁コイル3Bが励磁されているときにb側に切替えられる。
【0006】
8Aと8Bは切替スイッチS1のa接点とb接点の信号を入力してサンプルアンドホールドする第1と第2のサンプルアンドホールド回路、9はCPU回路、10はサンプルアンドホールド回路8A,8Bからのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器、11は補正演算回路で、前記の補正演算を行うプログラムを備えている。12は演算結果としての流量信号Q′を出力する出力端子である。
【0007】
CPU回路9の補正演算回路11は内蔵ROMを有し、この内蔵ROMには補正プログラムと補正基準データが記憶されている。
次に図3,図4の従来技術の電磁流量計による非満水状態の流れの流量計測手順を、図5に基づいて説明する。
【0008】
手順1.流量を計測すべき流路と同じ断面形状の流路1を用い、この流路の勾配を一定にして水位hを変え、その水位のときの流量Qに応じた出力OAとOBとを予め計測しておく(図5(a))。なお、出力OAとOBは電磁流量計の原理による流量検出器4を用い、同じ流量Qを異なる磁束密度分布BAとBBでそれぞれ計測したときの流量信号である。
【0009】
磁束密度分布BAは第1の励磁コイル3Aだけに励磁電流を流したときの磁束密度分布で、磁束密度分布BBは第2の励磁コイル3Bだけに励磁電流を流したときの磁束密度分布である。
【0010】
手順2.被測定流体が流れている流路の未知の流量Q′を前記流量検出器4で計測し、出力OA′とOB′を得る。
手順3.OB′とOA′の比OB′/OA′を求め、手順1で求めたOBとOAとの比OB/OAがOB′/OA′と同じ値になる流量Qαを手順1のデータから求め、この流量Qαのときの手順1の出力OAαから、手順1における流量Qαの条件のときの感度K=OAα/Qαを算出する(図5(b)〜(d))。
【0011】
手順4.手順2で計測した出力OA′と、手順3で得た感度OAα/Qαとから、未知の流量Q′を次の式で算出する。
Q′=OA′・Qα/OAα
なお、流量検出器4を用いて一定の流路勾配でいくつかの流量Qについて測定した出力OAとOBのうちの一方の出力OAと、出力比OB/OAを流量Qと共に補正基準データとして補正演算回路11のROMに記憶しておいて利用する。
【0012】
また、前記未知の流量Q′を計測したときの出力OA′とOB′とから前記ROMに記憶した補正基準データを用いて未知の流量Q′を算出する補正演算プログラムを補正演算回路11のROMに記憶しておいて活用する。
【0013】
出願人は上記第1の従来技術の他に、堰と電磁流量計を組み合わせた流量計を特開平5−273015号公報で提案した(以下これを第2の従来技術と言う。)
この第2の従来技術では、流管に堰又はパーマポーラスフリュームを設け、堰又はパーマポーラスフリュームの上または上流部の流管に水平方向に対向配置された一対の電極と、流管の上部又は下部の少なくとも一方に設けられて上下方向の磁界を発生する励磁コイルを設けたもので、電極に生じる流速に比例した電圧から流量を演算する。この電磁流量計も水位を直接測定しないで流量を計測する。
【0014】
他の従来技術として、満水型の電磁流量計の下流側に、その流量計の流管内が必ず流体で満たされて満水状態になるように、その開口部が流量計の流管上面より高くなるような曲がり管や堰などを付加して非満水管路の流量を測定しようとするものが公知である(以下これを第3の従来技術と言う)。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
非満水状態の流量を計測する用途は、下水管で広く要求されている。実際の下水管などでは、流下する汚水の水位は管路直径のせいぜい20%程度であることが多く、少ないときにはわずか数%になることも珍しくない。
【0016】
このような小流量を断面が円形の管路に流すと、水理的に流れの状態が不安定になり流量計としての計測値の再現性が悪くなる。また、流速分布が動水勾配の影響で変化するため、その補正が必要となり、設置環境に制約を受けたり補正操作のために流量計の構成が複雑となりコストアップとなる。従って、第1の従来技術では実用精度が良くなく、設置条件の制約が大きく、しかも比較的高価になるという問題点があった。
【0017】
第2の従来技術では、堰やパーマポーラスフリュームが流れの障害物となって、ごみや土砂などが管路低部に推積したり、異物が引っかかったりして流体の自然流下を妨げるため、維持管理に問題点があった。
【0018】
第3の従来技術では、管路の下流端に管路を満水状態にするための曲がり管や堰板などを設置しているため、流量計の上流側の非常に長い距離にわたって、この流量計を取り付けない場合と比較して管路の水位が上昇し、場合によっては管路から流体があふれたりするという問題点があった。このような問題点を避けるために管路径を太くする必要が発生する場合には、必然的に工事費の増加につながるという問題点を派生する。
【0019】
近時、環境の保護の立場とか、社会資本の整備の立場から下水・排水施設の整備と管理が重要な課題となっている。
下水・排水の適切な処理、設備の維持管理、新しい設備の計画にはその流量の正確な計量が不可欠であり、そうした流量計の実現が切望されている。
【0020】
そこで、本発明は、前記第1の従来技術を改良して、前述の問題点を解消できる非満水用の電磁流量計を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、流路を横切って水平方向に対向配置された1対の電極と、円形断面の測定管の上部に設けた第1の励磁コイルと、測定管の下部に設けた第2の励磁コイルを有し、第1の励磁コイルと第2の励磁コイルを交互に切替えて励磁して、それぞれ異なる磁束分布を異なる期間の間に流路に発生するとともに、この異なる磁束分布で前記1対の電極間に得られる二つの誘起電圧に基づいて流量を演算する非満水用の電磁流量計であって、
電磁流量計検出器(4)の下流側に、電磁流量計検出器(4)の測定管(1)とほぼ同じ口径の円形断面の曲がり管(13,13A)を設け、その曲がり部の底面の一部(14)を前記測定管(1)の底面より上方に位置させたことを特徴とする電磁流量計である。
【0022】
また、請求項2の発明は、請求項1の電磁流量計において、曲がり管(13,13A)の上方への持ち上がり寸法が、測定管(1)の口径のほぼ0.1〜0.2であることを特徴とするものである。
【0023】
また、請求項3の発明は、請求項2の電磁流量計において、曲がり管(13A)の下流端が上方への最大持ち上がり位置にあって、曲がり管(13A)がこの下流端で切断されて開口していることを特徴とするものである。
そして、請求項4の発明は、請求項2の電磁流量計において、底面の一部が峠のように滑らかに上方へ持ち上げられていて、流体が円滑に流れるように形成されていることを特徴とするものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の電磁流量計の好ましい実施の形態で、4は前記第1の従来技術における非満水用の電磁流量計検出器で、わずかに傾斜してほぼ水平に配置された円形断面の測定管1の上部に設けた第1の励磁コイルと、測定管1の下部に設けた第2の励磁コイルと、流路を横切って水平方向に対向配置された1対の電極を有し、第1の励磁コイルと第2の励磁コイルを交互に切替えて励磁して、それぞれ異なる磁束分布を異なる期間の間に流路に発生させるとともに、この異なる磁束分布で前記1対の電極に発生する二つの誘起電圧に基づいて、非満水状態の流量を演算部で算出する。
【0025】
13は曲がり管で、測定管1とほぼ同一口径の円形断面の管で測定管1の下流側に連結されているが、測定管1に対してねじ止め等の構造で着脱可能に結合することもできる。
【0026】
曲がり管13は、その底面の一部が峠のように上方へ持ち上げられている。符号14はこの持ち上げられた峠の部分を示す。なお、この持ち上げられた部分は底面が滑らかに持ち上げられていて、流体が円滑に流れるように形成されている。
【0027】
曲がり管13の底面の最上部における持ち上げ寸法は測定管としての流路の口径Dの0.1〜0.2倍に定めてある。
なお図1で符号15で示す破線は流下する流体の水面を示す。
【0028】
また、16と17はそれぞれ測定管1の上流側と曲がり管13の下流側に連結された上流側配管と下流側配管である。
曲がり管13の上方への持ち上がり寸法は、上流の測定管1や配管16が常時満水状態になる程大きく持ち上げる極端な曲がりを要請しない。持ち上がり寸法は、測定管1の口径Dのおおむね0.1倍以上で十分に安定した計測動作が期待できることが実験で確認することができた。
【0029】
従って、曲がり管13の持ち上がり寸法は測定管1の底面からせいぜい0.1Dから多くても0.2D程度で十分である。
実際の下水道や排水路での流下流量の水位は、通常、せいぜい0.2D程度であって、曲がり管13を付加して水面を少々持ち上げても、峠部分14の上流管の水位は、通常で最大0.4D程度にしかならない。
【0030】
【実施例】
図2は本発明の電磁流量計の他の実施例で、4は図1の実施態様と同様に円形断面の測定管1等を有する電磁流量計検出器で、その下流側に円形断面の曲がり管13Aが連結されている。この曲がり管13Aは測定管1の口径とほぼ同じ口径で、測定管1から離れて下流にいく程上方に曲げられて、その底面が上方に持ち上げられている。
【0031】
そして、曲がり管13の底面が測定管1の底面から0.1D〜0.2D持ち上げられたところで、曲がり管13が切断されて開口し、この開口13aから流体が符号18で示すように流出する。
【0032】
【発明の効果】
本発明の電磁流量計は、上述のように構成されているので、曲がり管の底面の一部を、電磁流量計検出器の底面より持ち上げるようにしたので、検出器の流路における水位が一定以上確保でき、流量計測の安定性を期待でき、計測精度が向上する。
【0033】
また、検出器(4)の下流に設けた曲がり管(13,13A)の底面を持ち上げることで、上流の動水勾配が一律に小さくなるため、広い管路勾配に設置しても実質的な動水勾配の範囲が狭くなる。また、同様に小さな接続断差などがあって、下流側が持ち上がっていて、その上流があたかもダム湖の水面のように滑らかになっていると、その影響が殆ど打ち消されるから流量計の設置条件の制約が緩和される。
【0034】
さらにまた、動水勾配の悪影響を除くための補正操作が簡略化または省略できるから、流量計の構成が簡単になり、コストを安価にできる。
また、計側部における水位を上昇させるにもかかわらず、流路断面が曲がり管の部分についても縮径(縮小)されることがないから、第2の従来技術のように大きな異物が引っ掛かったり、することがないため、メンテナンスの頻度が少なくて済み、維持管理が容易になる。
【0035】
さらにまた、上流側の水位上昇を最小限に押さえられるから、流体が配管から溢れたりする危険性が減る。このことは、管路設計時の安全性見積りに余裕を持たせることを意味し、管路の工事費用が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電磁流量計の実施の形態の側面略図である。
【図2】本発明の他の実施例の側面略図である。
【図3】従来技術の電磁流量計の検出器で、(a)は正面図、(b)は同図(a)のA−A断面図である。
【図4】従来技術の電磁流量計のブロック図である。
【図5】従来技術による非満水状態の流量を計測する手順を説明する線図で、(a)は流量対出力線図、(b)は流量対出力比を示す線図、(c)は未知の流量から得た出力比から同一水位の流量Qαを求める手順を説明する図、(d)は出力曲線OAから感度Kを求める手順を説明する図である。
【符号の説明】
1 測定管
2 電極
3A 第1の励磁コイル
3B 第2の励磁コイル
4 電磁流量計検出器
13,13A 曲がり管
14 曲がり管の底面の一部
15 水面
16 上流側配管
17 下流側配管
Claims (4)
- 流路を横切って水平方向に対向配置された1対の電極と、円形断面の測定管の上部に設けた第1の励磁コイルと、測定管の下部に設けた第2の励磁コイルを有し、第1の励磁コイルと第2の励磁コイルを交互に切替えて励磁して、それぞれ異なる磁束分布を異なる期間の間に流路に発生するとともに、この異なる磁束分布で前記1対の電極間に得られる二つの誘起電圧に基づいて流量を演算する非満水用の電磁流量計であって、
電磁流量計検出器(4)の下流側に、電磁流量計検出器(4)の測定管(1)とほぼ同じ口径の円形断面の曲がり管(13,13A)を設け、その曲がり部の底面の一部(14)を前記測定管(1)の底面より上方に位置させたことを特徴とする電磁流量計。 - 曲がり管(13,13A)の上方への持ち上がり寸法が、測定管(1)の口径のほぼ0.1〜0.2であることを特徴とする請求項1記載の電磁流量計。
- 曲がり管(13A)の下流端が上方への最大持ち上がり位置にあって、曲がり管(13A)がこの下流端で切断されて開口していることを特徴とする請求項2記載の電磁流量計。
- 底面の一部が峠のように滑らかに上方へ持ち上げられていて、流体が円滑に流れるように形成されていることを特徴とする請求項2記載の電磁流量計。
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