JP3896815B2 - ガスタービンの燃焼器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は予混合管を有するガスタービンの燃焼器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、発電用などにガスタービンの利用が増加している。特に燃料にLNGなどを使用し、発電用ガスタービンの廃ガスを廃熱ボイラに導いて蒸気を発生させ、その蒸気を蒸気タービンに導いて発電を行うコンバインドサイクルは熱効率を大幅に高めることができる。一方、大気汚染に対する公害規則は年々厳しくなり、窒素酸化物(NOx)などの大気汚染物質の排出値を低減することが社会的な要請となっている。ガスタービンでは、従来、油燃料による拡散燃焼が主体であったが、最近ではガス系の燃料(LNGなど)が主流になり、燃焼法も拡散燃焼から予混合燃焼へと変わってきている。予混合燃焼とは、予め燃料と空気とを混合させた予混合気を燃焼させる方法で、比較的低温で一様な燃焼をさせるので、NOxの発生の盛んな高温域が少なく、NOx低減効果の大きい燃焼法である。
【0003】
一方、拡散燃焼に対する予混合燃焼の比率の増大および希薄予混合気の燃焼は逆に燃焼の安定性を悪くし、燃焼振動や不安定燃焼を起こし易く、信頼性上大きな問題がある。その理由は、油燃料の拡散燃焼では油滴の径の違い、蒸発速度の違いなどがあって、局所的に見れば発熱量や発熱位置の相当のばらつきがあり、燃焼振動の圧力変動に対する発熱の位相も全体としては揃わないため、燃焼振動が起こりにくいのに対し、ガス系の燃料の予混合燃焼の場合には燃料が均一濃度になっているため、どの位置でもほとんど同じ位相で、しかも、集中的な発熱になり、振動の加振力は集中的で強力なものになるためと思われる。
【0004】
燃焼振動の発生は、燃焼器の損傷や破損につながるため、その発生の抑制や燃焼振動圧力の低減が予混合燃焼の課題となっている。
【0005】
燃焼振動のメカニズムは、必ずしも明らかではないが、気柱共鳴現象の1つではないかと考えられる。図5は考えられるメカニズムの解説のためのフローシートで、何らかの原因で燃焼室への燃料供給量および空気供給量に変動が生じると火炎帯の発熱変動を惹き起すが、それは同時に火炎帯の圧力変動、すなわち、燃焼振動を惹き起す。火炎帯で発生する圧力の疎密波は音速で予混合器内を逆流し、予混合管の基端に到達する。疎密波の山の部分(圧力の高い部分)では、予混合管に流入する圧縮空気と燃料の流量は減少し、谷の部分(圧力の低い部分)では、予混合管に流入する圧縮空気と燃料の流量は増大する。空気流量と燃料流量の疎密波は、エネルギーの疎密波と考えられる。エネルギーの疎密波は、再び予混合管を順流して火炎に到達する。このエネルギーの疎密波は、火炎内の圧力の疎密波と波長が同じで、位相が遅れている。
【0006】
位相の遅れが、周波数の整数倍である場合には共振を起すことになる。すなわち、圧力の高い部分にエネルギーレベルの高い部分が重なり、圧力の低い部分にエネルギーレベルの低い部分が重なると、圧力の高い部分はますます圧力が高くなり、低い部分では圧力がますます低くなり、圧力変動をますます増大させる。
【0007】
以上述べた位相の遅れの量は、予混合管内を流れる気体の流速に依存するが、流速はガスタービンの運転条件により変化し、流速の一定の条件の下で位相の遅れが周波数の整数倍となることがあり、そのような運転条件では運転が著しく困難になる。
【0008】
このような燃焼振動を防止するガスタービン燃焼器が特開平6−273517に開示されている。図6は上記公報に開示された上記発明の説明図である。図において、1はガスタービン燃焼器、2はガスタービン、3は圧縮機、4は燃焼器ライナ、5は燃焼室、6はトランジションピース、7は拡散燃料供給系、8は予混合燃料供給系、9は外筒、10はエンドカバー、11は圧力容器、12は拡散燃焼室ライナ、13は拡散燃焼用燃料ノズル、14は内筒、15は拡散燃焼室、16は予混合器、17は予混合燃焼用燃料ノズル、18は空気流路である。
【0009】
筒状の拡散燃焼室15と、拡散燃焼室15内に周方向に配設され、拡散燃焼室15に燃料を供給する複数個の拡散燃焼用燃料ノズル13と、拡散燃焼室15の周壁に開口し、拡散燃焼室15に燃焼用空気を供給する複数個の空気供給口と、拡散燃焼室15の外周側に位置し、燃料と空気とを予め混合させる予混合器16と、拡散燃焼室15の外周側に周方向に配設され、予混合器16に燃料を供給する複数個の予混合燃焼用燃料ノズル17と、予混合器16の下流側に燃焼ガスを生成するための燃焼室5とを備えたガスタービン燃焼器において、複数個配設されている拡散燃焼用燃料ノズル13の燃料噴出孔の軸方向位置が、相違しているとともに、複数個配設されている予混合燃焼用燃料ノズル17の燃料噴出孔の軸方向位置も、相違している。また、複数個配設されている拡散燃焼用燃料ノズル13の燃料噴出孔における燃料の噴出方向が、相違しているとともに、複数個配設されている予混合燃焼用燃料ノズル17の燃料噴出孔における燃料の噴出方向も、相違していてもよい。
【0010】
このような構成になっているので、燃料ノズルから噴出される燃料の燃焼域に到達する時間が、燃料ノズルによって異なる。したがって、燃料域に供給される混合気の燃料濃度は周方向に不均一となり、発熱量変動の位相が周方向で相違することになるので、燃焼器1内に圧力変動が発生した場合に、圧力変動の増加を防止することができる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、以上述べた発明では、1つの予混合燃焼用燃料ノズル17について見ると、燃料噴出孔の軸方向の位置、または、燃料噴出孔から噴出する燃料の噴出方向は1つである。したがって、位置、または、方向を相違させるためには2以上の予混合器16が設けられるガスタービン燃焼器1に適用することができるのみで、ガスタービン燃焼器1に単一の予混合器16が設けられているものには適用できない。
【0012】
また、ガスタービン燃焼器1に複数の予混合器16が設けられているものについても、それぞれの予混合器16について、予混合燃焼用燃料ノズル17の長さを変えたり、燃料噴出孔の穿設位置を変えたり、燃料の噴出方向を変えたりしなければならないので、部品点数が増加し、コストアップになる。
【0013】
本発明は、従来技術のかかる問題点に鑑み案出したもので、燃料ノズルに軸方向の位置が異なる2以上の燃料噴出孔を穿設したり、燃料ノズルの先端に燃料噴射方向の異なる燃料噴出孔を穿設したりすることにより、ガスタービン燃焼器に単一の予混合器が設けられている場合にも対応可能であり、複数の燃料ノズルはすべて同一構造にすることによりコストダウンが可能であるガスタービンの燃焼器を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本願請求項1記載発明のガスタービンの燃焼器は、燃焼器ライナに囲繞された燃焼室に燃料と空気を予め混合して送る1または2以上の予混合管を接続してなるガスタービンの燃焼器であって、予混合管内に配置される燃焼ノズルには軸方向の位置が異なる2以上の燃料噴出孔が穿設されている。
【0015】
また、本願請求項2記載発明のガスタービンの燃焼器は、燃焼器ライナに囲繞された燃焼室に燃料と空気を予め混合して送る1または2以上の予混合管を接続してなるガスタービンの燃焼器であって、予混合管内に配置される燃焼ノズルの先端には燃料噴射方向が異なる燃料噴出孔が穿設されている。
【0016】
燃料が気体である場合に、特に効果がある。
【0017】
次に本発明の作用を説明する。予混合管に配置される燃料ノズルに軸方向の位置が異なる2以上の燃料噴出孔を穿設してあったり、燃料ノズルの先端に燃料噴射方向の異なる燃料噴出孔を穿設してあったりするので、燃料が各燃料噴出孔から予混合管出口を経て燃焼域(火炎)に到達するまでの時間が異なる。したがって、燃料室内の燃焼振動により引き起こされる予混合管出口におけるエネルギーの疎密波は互いに波長・波高は同じであって、位相のみがずれている。位相のずれの大きさが(π+2nπ、nは整数)である場合には、2つの波は互いに山と谷が重なり合って打ち消し合うので、合成波の波高は0になる。この状態では火炎の燃焼振動がたとえあったとしても、増幅することがなく、気柱共鳴現象は起らない。したがって、火炎の燃焼振動が運転に影響を及ぼすほどのレベルになることがない。
【0018】
予混合管の出口付近におけるエネルギーレベルの疎密波の互いの位相のずれは、ガスタービンの運転条件の変化に対応して変化するが、ガスタービンについて、いくつかの運転条件を選び、それに対応して、燃料ノズルに穿設された燃料噴出孔の軸方向の位置や燃料噴出孔から噴出する燃料の噴出方向を適当に選択すればよい。実際の運転条件が、選択した運転条件から外れている場合には、合成波の波高は0とならないが、小さいので運転に影響を及ぼすような燃焼振動を起すことはない。
【0019】
このように、燃料ノズルに軸方向の位置が異なる2以上の燃料噴出孔を穿設したり、燃料ノズルの先端に燃料噴射方向の異なる燃料噴出孔を穿設したりしてあるので、ガスタービンの燃焼器に単一の予混合器が設けられている場合においても適用が可能であり、複数の燃料ノズルはすべて同一構造なので、コストダウンが可能である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本願請求項1記載発明のガスタービンの燃焼器の部分断面図である。なお、本図において、図6を用いて説明したのと同一の部分には同一の符号を付している。図において、1は燃焼器である。4は燃焼器ライナ、5は燃焼室、9は外筒である。22はパイロットバーナ用ノズル、23はスワラ、25はパイロットバーナである。パイロットバーナ25の燃焼は拡散燃焼である。20は予混合管で、パイロットバーナ25を囲繞して複数個設けられている。予混合管20の基端部にはスワラ23が設けられており、スワラ23を貫通して予混合ノズル21が設けられている。予混合ノズル21にはスワラ23近傍に燃料噴出孔21bが穿設され、先端付近に燃料噴出孔21aが穿設されており、当然に燃料噴出孔21bと燃料噴出孔21aとは軸方向の位置が異なっている。24は火炎、26は燃料噴出孔21a、21bから噴射された燃料である。
【0021】
図2は本願請求項2記載発明のガスタービンの燃焼器の断面図であり、図3は図2の一部拡大図である。本図において、図1と共通の部分については同一の符号を付しており、重複した説明は省略する。すなわち、本図が図1と異なるのは予混合管ノズルの形状のみなので、その部分について説明する。予混合管ノズル21Aは先端に円板状の部材21Bを有している。円板状の部材21Bの前面には複数の燃料噴出孔21cが穿設されており、後面には複数の燃料噴出孔21dが穿設されていて、それぞれ軸線との角度がαおよびβで燃料26を噴出している。なお、先端の部材は円板の代りに球形であってもよい。また、αは0〜90°、βは90〜180°の範囲内にある。
【0022】
次に本実施形態の作用を説明する。燃料ノズル21に軸方向の位置が異なる2以上の燃料噴出孔21a、21bを穿設してあったり、燃料ノズル21Aの先端21Bに燃料噴射方向がαであるものとβである燃料噴出孔21c、21dを穿設してあったりするので、燃料26が各燃料噴出孔21a、21b、21c、21dから予混合管20出口を経て火炎24に到達するまでの時間が異なる。したがって、燃焼室5内の燃焼振動により惹き起される予混合管20出口におけるエネルギーの疎密波は互いに波長・波高は同じであって、位相のみがずれている。位相のずれの大きさが(π+2nπ、nは整数)である場合には、図4に示すように、2つの波は互いに山と谷が重なり合って打ち消し合うので、合成波の波高は0になる。この状態では火炎の燃焼振動がたとえあったとしても、増幅することがなく、気柱共鳴現象は起らない。したがって、火炎の燃焼振動が運転に影響を及ぼすほどのレベルになることがない。
【0023】
予混合管の出口付近におけるエネルギーレベルの疎密波の互いの位相のずれは、ガスタービンの運転条件の変化に対応して変化するが、ガスタービンについて、いくつかの運転条件を選び、それに対応して、燃料ノズルに穿設された燃料噴出孔の軸方向の位置や燃料噴出孔から噴出する燃料の噴射方向を適当に選択すればよい。実際の運転条件が、選択した運転条件から外れている場合には、合成波の波高は0とならないが、小さいので運転に影響を及ぼすような燃焼振動を起すことはない。
【0024】
このように、燃料ノズル21に軸方向の位置が異なる2以上の燃料噴出孔21a、21bを穿設したり、燃料ノズル21Aの先端21Bに燃料噴射方向の異なる燃料噴出孔21c、21dを穿設したりしてあるので、ガスタービン燃焼器1に単一の予混合器20が設けられている場合においても適用が可能であり、複数の燃料ノズル21、21Aはすべて同一構造なので、部品点数が少なく、コストダウンが可能である。
【0025】
本発明は以上述べた実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0026】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のガスタービンの燃焼器は、予混合管内に配置される燃料ノズルには軸方向の位置が異なる2以上の燃料噴出孔が穿設されていたり、ノズルの先端に燃料噴出方向が異なる燃料噴出孔が穿設されていたりするので、それぞれの燃料噴出孔から噴出される燃料が燃焼域に到達する時間が異なり、燃焼振動を起さない。そのうえ燃料ノズルの構造が単一なので、燃焼器に単一の予混合管が設けられている場合にも適用可能であり、複数の予混合管が設けられている場合にも部品点数が少なく、コストダウンが可能になるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】請求項1記載発明のガスタービンの燃焼器の部分断面図である。
【図2】請求項2記載発明のガスタービンの燃焼器の部分断面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】本発明の作動原理の説明図である。
【図5】燃焼振動発生のメカニズムの説明図である。
【図6】従来のガスタービンの燃焼器の断面図である。
【符号の説明】
1 ガスタービンの燃焼器
4 燃焼器ライナ
5 燃焼室
20 予混合管
21、21A 燃料ノズル
21a、21b、21c、21d 燃料噴出孔
26 燃料
Claims (2)
- 燃焼器ライナに囲繞された燃焼室に気体燃料と空気を予め混合して送る1または2以上の予混合管を接続してなるガスタービンの燃焼器であって、予混合管内には上流側端部に燃焼ノズルを囲繞してスワラが配置されており、燃焼ノズルには先端部と、先端と軸方向に離れていて、かつ、スワラの下流側の中間部に、複数の気体燃料噴出孔が穿設されており、燃焼ノズルの先端は予混合管出口よりも引っ込んでいて、先端から噴出する気体燃料についても予混合管内で空気と十分混合するようになっていることを特徴とするガスタービンの燃焼器。
- 燃焼器ライナに囲繞された燃焼室に気体燃料と空気を予め混合して送る1または2以上の予混合管を接続してなるガスタービンの燃焼器であって、予混合管内には上流側端部に燃焼ノズルを囲繞してスワラが配置されており、燃焼ノズル先端部は軸方向を向いた円板状または球状であって、該先端部には燃料噴射方向が斜め下流方向である複数の気体燃料噴出孔と、燃料噴射方向が斜め上流方向である複数の気体燃料噴出孔が穿設されており、燃焼ノズルの先端は予混合管出口よりも引っ込んでいて、先端から斜め下流方向に噴出する気体燃料についても予混合管内で空気と十分混合するようになっていることを特徴とするガスタービンの燃焼器。
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