JP3896497B2 - 生態系廃棄物の発酵処理方法及び処理コンポスト並びに処理装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、生態系廃棄物(例えば食堂などの残飯・生ごみその他の有機廃棄物)を超好熱菌の増殖で高温(例えば100℃以上)、加圧(例えば0.2MPa以下)下において、急速発酵処理することを目的とした生態系廃棄物の発酵処理方法及び処理コンポスト並びに処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、好熱菌を使用して、残飯・生ごみ等の有機廃棄物を処理する装置が提案されている(特開2001−47019)。
【0003】
また、この特許出願人は、先に超好熱菌を利用した生態系廃棄物処理方法及び処理装置の発明を特許出願した(特願2001−108028)。
【0004】
【発明により解決しようとする課題】
前記公知の発明(特開2001−47019)は、断熱槽内で、有機廃棄物が発酵処理され、30分で65℃、90分内外で100℃を超えるとされているが、有機廃棄物は徐々に加熱される物で、水分の蒸発も急激でなく、一般の加熱蒸発と大差がない。そこで、有機廃棄物の細胞膜の破壊とか、原形質の露出などが少なく又は比較的緩徐に行われるので、前記好熱菌の栄養分として利用される速度が遅く、そのために増殖速度が遅い(前記90分で100℃位)などの問題点があった。
【0005】
即ち、10分〜20分で超好熱菌を2倍以上に増殖させるためには、これに見合う栄養源を与えなければならないが、有機廃棄物は分解しないと菌の栄養源にはならない。また、この特許出願人の先願は、非常に効果が上がっているが、高圧(例えば5〜6気圧)を使用するために、断熱槽を耐圧構造にしなければならない問題点があるので、前記先願発明を比較的低圧下で使用することができない問題点があった。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明は、急速加熱(例えば1分以内で100℃以上)するので、急速に蒸気を発生することになり、有機物の細胞膜は破壊され、原形質が露出する。従って有機物の投入、急速蒸発、細胞膜破壊、原形質の露出、超好熱菌の増殖という一連の操作がスムースに進行することが判明した。そこでこの発明によれば、超好熱菌の増殖がスムースになる結果、温度上昇が速くなり(例えば1分以内で100℃以上、0.2MPa以下)、これにより、生態系廃棄物を急速処理できることになり、前記従来の問題点を解決したのである。
【0007】
また、前記原形質の露出については、高圧処理が不必要であることが判明したので、例えば0.1MPa〜0.2MPaでも所期の目的を達成することが判明した。
【0008】
即ち、方法の発明は、超好熱菌を高濃度に含むコンポストと生態系廃棄物とを断熱系内で撹拌混合して、低温菌、中温菌により急速に70℃付近まで昇温させ、これにより廃棄物の原形質を露出させて、超好熱菌と接触させることにより超好熱菌が増殖し、その発生熱で、前記生態系廃棄物の温度を130℃以上に上昇させて、水分も蒸発させ、圧力も0.2MPaに上昇し、前記超好熱菌が栄養分を得て温度は130℃〜180℃まで上昇するので、処理すべき廃棄物を前記処理中の廃棄物の温度が低下しない程度の量宛供給し、自動高速発酵処理を行うと共に、前記水分蒸発による蒸気を取り出し、発酵処理状態を検出することにより、前記生態系廃棄物の高速発酵処理を自動制御することを特徴とした生態系廃棄物の発酵処理方法。であり、自動制御は、排出する蒸気を熱交換し、これにより生じる液量を検出して、生態系廃棄物の投入量及び投入速度を制御するものであり、自動制御は、生態系廃棄物の投入速度と、発酵物の撹拌速度の制御とするものである。
【0009】
次に、他の発明は、請求項1記載の方法により超好熱菌で発酵処理して製造したことを特徴とする生態系廃棄物の処理コンポストである。
【0010】
また、装置の発明は、請求項1記載の発明を実施する装置であって、断熱的に構成され、中央部に透過孔を有する仕切り円板で数区分に区画された円筒槽内に、側面円弧状のスクレーパーの中心側を円筒槽の中央部に架設した回転軸に固定し、前記スクレーパーの円筒槽壁側を、回転軸と少角度をなして槽壁に当接した撹拌手段を内装し、前記円筒槽の一側に生態系廃棄物の送入手段を連設すると共に、前記円筒槽内で発生した蒸気の排出手段及び熱交換手段を連結し、前記円筒槽の他側へコンポスト排出手段を連結し、前記各手段の自動制御系を付設したことを特徴とする生態系廃棄物の発酵処理装置であり、送入手段は、搬入バルブを備えたスクリューコンベアとしたものである。更に、自動制御系は、熱交換手段から生成された液量を検出し、その出力を生態系廃棄物の送入手段に入力し、その動力を可変にさせるものである。
【0011】
この発明は、大量の生態系廃棄物を極めて短時間に連続処理することができる。また、高温処理のために、通常の菌類は悉く死滅しており、この発明のコンポストは、細菌はもとより、害虫その他の小動物も死滅しているので、極めて清浄な状態である。
【0012】
従来、大量にある廃棄物の菌類による発酵処理で屋外に設置した場合、大型のクレーンなどで切り返しといわれる酸素供給と菌類の混合を時折行う手法では、広大な敷地面積を必要とするのみならず、腐敗臭の発生が避けられない。また、コスト的にも非常に高いのが現状である。処理槽を用意し、菌類を用いて大量の処理を行う場合、例えば日産数トンの処理を行う場合、処理の早い物であっても6時間以上掛かり、またバッチ処理であるため処理の前後に搬入・搬出のための時間が掛かり、結果的には1日1回の処理を行うのが限度であった。例えば食品加工場から大量に発生する生ごみの処理を可能とする処理槽は、その廃棄物の量の2倍以上の容量が必要であり、処理が早い装置であっても、数千リットルの容量の処理槽を用意しなければならず、防臭装置も大型化が必要であった。
【0013】
従来の好気性菌による処理の場合、好気性菌による発酵熱で処理物は緩やかに温度上昇し(70℃〜80℃に達するのにしばしば5〜8時間)、生態系廃棄物に付着、又は生息している菌類の増殖が考えられ、添加した廃棄物処理用菌類以外の菌の増殖環境が成立し、特に動物などの体内菌は、内部から増殖し、腐敗菌などが増殖し臭気を発生したり、悪玉菌の増殖も考えられる。また60℃以上の温度になった場合であっても緩やかに時間を掛けて温度上昇を行った場合、活動不可能な環境になった段階で多くの菌はシストなどの保護膜を作り活動を停止し、生命を維持し、常温に戻ると再び活動を行うので、高温殺菌したことにはならない。そのため従来の好気性菌による処理は、処理菌以外の菌類が増殖してくるため、新たに培養された好気性菌を毎回添加するか、隔日に補給しなければ効率の良い発酵が困難になる場合もあった。
【0014】
従来の方式は、直径1〜10ミクロンメータ前後の菌類に対し巨大な栄養の偏った補食物や大量の水を与え、菌類による発酵をさせようとしていた。しかし例えば1ccに通常の発酵に必要な菌類の数は1〜2億存在しなければならないといわれているが、体積密度で菌類の存在は1ccに0.01%から0.1%しか存在しないことになり、更に生ごみの場合は水分量が50%以上であるので、菌類による栄養分の補食発酵の機会は非常に少ない。更に菌の移動能力は非常に小さいと考えられているので、特に撹拌のスピードが遅かったり、不均一撹拌の場合は更に補食チャンスが少なくなる。また、外部の菌類から保護する役目のテッシュー(tissue)、細胞壁(cell wall)、細胞膜(cell membrance)によって囲まれており、これらは生ごみが新鮮であればあるほど強靱であるので、これらの破壊には時間が掛かる。つまり発酵速度の低減につながる。前記公知の発明は、前記理由により温度の上昇が緩徐であって、生ごみを栄養源とすることの効率が悪い。また、特許出願人の先願は、高圧を要件としていたので、耐圧槽を必要とし、連続処理が難しかった。
【0015】
従来発見されている超好熱菌は、95℃〜130℃程度で高圧下の環境で活動している。1970年代後半に、深海で活動している火山の近くの噴泉の栄養豊富なところに生息している超好熱菌が発見されているが、これは非常に気圧が高い海水下であるので、温度は100℃以上であった。また高温高圧蒸気を通すボイラー間の中でも発見されている。前記のほか、陸上の100℃以上の噴泉(高圧高温水)の水の中から発見されている。これらは高温の水分の存在するところで発見されている。水の場合は1気圧で100℃になると水分が気化し、加えられた熱エネルギーを奪うので温度上昇はしない。しかし、気圧を上げると水の気化温度は上昇するので、温度の高いところ、即ち圧力の高いところで超好熱菌の活動条件が整っていたと考えられる。
【0016】
超好熱菌の生息する菌床と、生ごみを槽に入れ、密閉・断熱・撹拌を行うと発酵により発酵熱が発生し、内部温度が上昇する。この生ごみに含まれた水分と生成された水分とがその発酵熱により蒸発・ガス化し、内部圧力が増し、水の気化点(沸点)が上昇することを利用して、100℃以上温度上昇させることができる。
【0017】
この発明では、超好熱菌の活動環境を水分の少ない環境にし、気化する水分の量を減らし、気化熱によって奪う熱エネルギー量を少なくする。更に、超好熱菌は古生菌とも呼ばれ、酸素のない環境で生息する性質を持っているので、外気を入れないように密閉し、超好熱菌が生成する二酸化炭素で充満させる。前記、菌類の発酵によって生成される水分は、発酵熱によって蒸発させる。次に、発生させた蒸気又はガスは常時回収し、槽内気圧を0.1MPa程度とすることによって、0.1MPa程度で0℃から200℃まで槽内温度を上昇させることができた。
【0018】
0℃から200℃に槽とその内容物を温度上昇させるには、槽とその内容物が比熱1であった場合、200cal/gの熱エネルギーが必要である。またその水分量を蒸発するに必要なエネルギー量は539cal/gである。そこで、菌床の水分量を10%に調整する。発酵によって生成される水分量は10〜40%(菌床成分の割合によって異なる。炭水化物や脂質の量が多いと、酸化によって生成水分量が増加する)である。仮に、40%とすると、水分の蒸発に要する必要熱エネルギーは270cal/gである。従って、槽内温度を0℃〜200℃に上昇させるのに必要な熱エネルギーは約500cal/gである。また、槽内の構造体の温度上昇と槽外に漏出するエネルギーを考慮すると、2倍の1kcal/g以上の熱エネルギーが必要である。
【0019】
一方、発熱源である超好熱菌と菌床は密閉・断熱され、発生ガスの回収装置を取り付けた槽内で、撹拌によって菌類の分散・補食・槽内熱伝達のスピードを引き出すことができる。また、温度上昇時間を短縮するには、菌の数を増やすか、撹拌スピードを上昇させるか、又は両方を行うことが好ましい。
【0020】
また、エネルギー密度を高めるには、炭水化物(水分の無いもの又は少ないもの、蜂蜜、黒砂糖など)、脂質(植物油(廃油)、牛脂、動物の脂身、粉乳等)の高カロリー成分を混入すると良い。
【0021】
通常の有機廃棄物は、細胞膜や細胞壁テッシューと呼ばれる菌類にとって破壊しづらい膜で覆われており、材質としてはペプチドグリカンなどのメッシュ状に形成された固いタンパク質を多層に重ねた物で覆われているといわれている。また、植物や動物の細胞の平均サイズは、10ミクロンメータ程度で、常温下では、1ミクロンメータから10ミクロンメータの菌が通常これを突き破ることはできないといわれている。
【0022】
一方、動物の肉等の細胞は、50℃〜60℃以上になると溶融するといわれている。また植物の細胞膜については、60℃〜80℃で溶融破壊されるといわれている。しかし細胞内は水分量が多く、植物で60%〜90%以上、動物で50%〜70%以上の含水量といわれている。従って、熱の伝導率が悪く発酵温度上昇が遅いことは明らかである。従って、従来はこれらの膜の破壊が速やかにできなかった。概して従来の処理方法であると、水分量の多い物は処理が困難であった。例えばおからや野菜等は処理困難な物とされていた。
【0023】
この発明では、100℃以上に温度上昇した0.1MPaの槽の中に直接生ごみ等を入れる。例えば180℃に温度上昇し、超好熱菌と菌床を高速撹拌している槽に生ごみ等の廃棄物を適量入れる。廃棄物は、全体の温度低下を生じない量入れる。この場合、熱した天ぷら油に水滴を入れたときのような激しい爆発が起きる。槽内を1気圧としておくと、細胞内や細胞組織内に含まれている水分が、撹拌によって短時間で加熱され、細胞内の水分がガス化し内圧が上がり蒸気爆発を起こし、細胞や細胞膜を破壊する。前記天ぷら油のなべでは、爆発した物は外に飛んでしまい熱が奪われてしまうか、又は通常衣が付いているので内部温度は上昇はなされず100℃以下になっている。この発明では、密閉した槽内で高速撹拌させているので熱伝導率は良く、槽内温度が180℃であったならば、廃棄物の温度も180℃で均一な温度になるので、効率よく水蒸気爆発を起こすことができる。
【0024】
槽内の菌床の量を投入物に比べて十分大きくすると、熱容量が増すと共に、菌床の撹拌発酵する熱エネルギーの出力が増大するので、投入物によって温度が下がらないようにできると共に、連続投入が可能となる。
【0025】
この発明では、細胞組織内の水分が爆発的に高温ガス化するので、内圧が上がる。そこで、この圧力を利用し、排気口から常時水蒸気を排出すると、投入物から発生する水蒸気量とのバランスがとれるので、内圧が安定する。
【0026】
この発明で発生したガスは、槽に設置された排出口から排出され、熱交換器を経て常温に戻して液化する。この発明で使用されている菌では液化された物は水溶性窒素成分(主としてアンモニア)を含む液体となった。これは液体窒素肥料として用いることができる。また同時に生成された炭酸ガスは気中に放出する。この液体を熱交換器から直接容器に収納すれば臭気を外部に放出しなくなり、屋内でも取り扱うことができる。
【0027】
この発明は、積極的に発熱量を増大させ、かつ発熱したエネルギーは熱エネルギーとして保温を行う。
【0028】
第一に、断熱処理を行うと図に示すように温度は直線的に上昇する。断熱をしていない場合には、温度が上がるほど放熱が大きくなり温度カーブが曲がってしまう。つまり熱ロスであり、温度上昇時間が長くなるのである。また、外気温が下がると上昇時間が長くなる。
【0029】
第二に、菌床の発酵熱エネルギーを増大させるために、前記のように1kcal/g以上の熱エネルギーを持たせる。不足分はなるべく水分が少なく熱エネルギーが大きい材料を入れ、発熱量を増やす。例えば廃油を入れるとか、白身の肉を入れるとかの手段により、大きな熱エネルギーを確保できる。
【0030】
第三に、菌類と補食物の遭遇の可能性を高めるため脱水を行い、更には同時に細胞組織をばらばらにして、かつ細胞質を原形質の水分を除いた栄養分が濃厚かつ高エネルギー密度になっている物質に変え、これを菌類に与え発熱の効率化を図る。
【0031】
第四に、脱水を行うと比熱が下がるので熱伝導率がよくなり、高温にすぐに回復することができるが、熱容量が小さくなるので、撹拌する菌床の量を大きくして熱容量を大きくし、かつ発熱量を大きくする。
【0032】
第五に、撹拌スピードを増し単位時間内の菌類と補食物の衝突回数を多くし発酵の速度を増し、発熱量を増大させるので、より発熱量を増大させればより多くの廃棄物の処理が可能となる。
【0033】
この発明では、高温でガス化し高圧になった力を利用し、排気口から強制的に排気するので、槽内の脱水は容易である。排気口にバルブを付けて排出量を調節すれば槽内の水分量は変化する。廃棄物の水分量を予め計測しておけば、熱交換器から出る液量と比較して調整することにより、コンポストの水分量の調整ができる。発酵は酵素の作用で低温の化学反応を行っていることである。またこの発明の槽は、密閉しているので、いわゆる「質量恒存則」が成り立つ。従って、液量で(本来入っていた水分の重量を除いて)で発酵速度も推測することができる。
【0034】
この発明で使用する超好熱菌は、予め製造しておいて、生態系廃棄物を処理する場合にスターターとして使用する。その製造方法は次の通りであるが、生態系廃棄物を処理する断熱槽を用いて製造することもできる。
【0035】
超好熱菌を製造するには、密閉可能な高圧槽内に、高速撹拌機構を設置し、前記高圧槽内へ、種子、果実、ミルク、蜂蜜、黒砂糖などから選択した原形質の高エネルギー、高成長栄養溶液と、おがくず、籾殻、おから、コンポストなどから選択した適度な水分(例えば水分40%〜50%)を含む物質と、超好熱菌が付着(又は保有)されている藁、枯れ草、山間の土壌、温泉周辺の草木などから選択した有機物と、雑多な菌類を含む有機栽培の畑の付又は低温菌、中温菌の混合した菌体との少なくとも一方を前記高圧槽内に同時に投入し、高速撹拌により、低温菌の増殖を図り、前記高圧槽内の温度上昇(例えば30℃〜50℃)に伴って、中温菌の増殖による温度上昇(例えば40℃〜70℃)を図り、高圧槽内から蒸気の発生が開始されたところで(以上は好気性発酵と見られる)、高圧槽を密閉すると共に、中温菌から高温菌の活動領域まで温度上昇させ(例えば60℃〜90℃)、前記肉類その他の高栄養の細胞膜を破壊させて原形質を露出させ、超好熱菌の増殖に必要な栄養を補給してその増殖を盛んにする。このように、100℃以上の嫌気性発酵になると、その高温により、低温菌はもとより、中温菌その他の雑菌も悉く死滅し、超好熱菌のみの高濃度(例えば1cc中107〜108)コンポストができる(特願2001−004719による)。
【0036】
前記のようにして製造した超好熱菌の溶液を、前記処理すべき生態系廃棄物と共に密閉撹拌槽に入れて撹拌すると、前記生態系廃棄物に含まれている低温菌、中温菌によって急速に昇温し、例えば70℃以上になると、前記廃棄物の原形質が露出して、予め混入してある超好熱菌に接触するので、超好熱菌は栄養分を得て急増殖して、更に温度と圧力を高めるので(例えば130℃以上、0.2MPa)、残余の廃棄物も悉く栄養化して超好熱菌が更に増殖する。このようにして超好熱菌が2倍以上に増殖したならば(通常1分間)、130℃以上になるので、撹拌槽内の温度低下を来さない程度の量の生態系廃棄物を投入する。前記撹拌槽内の温度が160℃前後になれば、超好熱菌は定量的に増殖し、定量的に熱量を発生するので、生態系廃棄物を定量的に送入し、瞬時に160℃まで昇温させることができる。
【0037】
前記における超好熱菌の増殖は、短時間に行われ、膨大なエネルギーを発生するが、このエネルギーは前記廃棄物の昇温と、その水分蒸発に使用され、急速な水分蒸発により、前記廃棄物の細胞膜は爆発的に破壊され、そのまま原形質が超好熱菌の栄養分となる。従って、前記増殖、発熱、及び蒸発は、一連の変化として自動化されているが、膨大な水蒸気により撹拌槽内圧力が高くなるので、これを0.2MPa以下に抑えるべく、水蒸気を排出し、この水蒸気を熱交換器に通せば、高温水と肥液を得ることができるので、高温水は暖房その他に使用し、エネルギーの有効利用となり、肥液は窒素分を多量に含む肥料として有効であり、適宜使用する。
【0038】
前記一連の自動処理は、例えば肥液量を検出すれば、撹拌槽内の発酵処理状態がわかるので、予め行った実験データに基づき、例えば槽内温度を150℃〜160℃に調節し、処理を定常化するための廃棄物の送入量を定めておけば、全自動処理方法を完成することができる。
【0039】
前記は一貫自動処理についての制御の一例を説明したが、前記の他に、発生水蒸気量、撹拌槽内の内圧又は温度、コンポストの排出量などを検出して、廃棄物の送入量、撹拌羽根の回転数などを制御し、全自動処理をすることもできる。
【0040】
また、超好熱菌は、100℃以上180℃位までの間で嫌気性増殖できるが、安定自動処理を行うには、廃棄物の品質、撹拌槽の構造、容量などを勘案し、その条件を適宜選定する必要がある。
【0041】
前記における超好熱菌は、スタート時に超好熱菌を高濃度に含むコンポストを加入するのみで、爾後は自己増殖菌を用いるので、全自動処理の中途に、又は一旦停止後の再始動時に補給する必要はない。
【0042】
【発明の実施の形態】
この発明は、生態系廃棄物を超好熱菌で発酵処理してコンポストを製造する処理方法、処理コンポスト及び処理装置に関するものである。
【0043】
この発明の処理方法は、食堂又は食品工場などの生態系廃棄物(以下、「有機廃棄物」という。)を円筒状の撹拌槽に投入すると共に、適量の超好熱菌を添加し、撹拌スクレーパーを回転して前記有機廃棄物と超好熱菌とを混合する。この場合にスタート直後は低熱菌、ついで中熱菌の好気性発酵により、急速に温度が上昇し、前記混合物の温度が60℃〜70℃に達すると超好熱菌が急速に増殖して100℃以上になると共に、有機廃棄物の水が蒸気に変わる際、有機廃棄物の原形質が露出して超好熱菌の栄養分となるので、その増殖は急速に進行し、温度が100℃になってからは、10分位で2倍に増殖し、その発生熱で更に温度上昇するなど、相乗効果で従来考えられなかった速度(10分〜30分)でコンポスト化できる。前記のように一旦高濃度コンポストができると、次は廃棄物を混入するのみで1分位で130℃以上になり、爾後自動的に発酵が継続される。
【0044】
前記で発生した蒸気は、撹拌槽から取り出して熱交換器に導き、熱交換により高温水(例えば90℃以上)を得ると共に、蒸気の液化物(肥料)が生成される。
【0045】
この発明は、撹拌装置を内装した撹拌槽を横架し、該撹拌槽の一側に有機廃棄物送入装置と蒸気排出パイプを連結し、前記撹拌槽の他側にコンポスト排出装置を設け、前記蒸気排出パイプに熱交換器を乾燥すると共に、前記熱交換器で生成される液肥量と温度を検出して撹拌槽内の温度と圧力とを知ることにより、有機廃棄物の送入又は停止を制御するようにしたものである。また、前記方法により得たコンポストに関する発明である。前記高温水は冷暖房に使用することができる。
【0046】
前記発明の処理方法などの制御は、生成される液肥量の検出でも良いけれども、撹拌槽内の温度と圧力を検出して、これを一定に全て制御しても同様である。
【0047】
【実施例1】
この発明の実施例を図1について説明する。有機廃棄物に超好熱菌を添加して撹拌すると、超好熱菌の作用によって槽内温度は急激に130℃以上に達する。この場合に有機廃棄物は、その水分が急速に蒸発するので、各有機廃棄物の細胞膜が破壊されて、その原形質が露出する。そこで原形質は超好熱菌の栄養分となるので、前記超好熱菌の増殖は更に促進される。前記は130℃以上のコンポストの中へ廃棄物を適量宛供給する結果、急激(1分位)な温度上昇ができる。
【0048】
このようにして、槽内有機廃棄物の超好熱菌が2倍となったならば、新しい有機廃棄物を送入し、撹拌槽の入り口側に残留している発酵物と混合する。
【0049】
前記のようにして超好熱菌の増殖と、槽内温度の上昇及び水蒸気の発生量は一致するので、水蒸気を熱交換器に通し、冷却して液肥が生成されると、液肥量と水蒸気量は比例するので、液肥量と温度を検出すれば、槽内における水蒸気の発生量がわかり、これにより超好熱菌の増殖状態も分かるので、全自動処理における処理速度をコントロールすることができる。前記において槽内温度と圧力を検出しても良い。
【0050】
【実施例2】
この発明の装置の実施例を、図2、3、4に基づいて説明する。断熱壁よりなる円筒状の撹拌槽1の内部に、回転軸2を回転自在に架設し、前記撹拌槽1内を、中央部に内容物通過用の透過孔3aを有するリング仕切板3を所定間隔で固定し、区画1a、1b、1c…1xを設け(図4)、前記区画内における回転軸2へ夫々側面円弧状のスクレーパー4a、4b、4c、4d…4xの中心側を固定する。即ち各スクレーパー4a、4b、4c、4d…4xは、前記回転軸2へ放射状に固定してあって、その外端縁は、撹拌槽1の内側へ、回転軸2と僅かな角度θ(例えばθは10度〜20度)をなして当接させてある(図5(c))。従って、回転軸2を回転すると、各スクレーパー4は、有機廃棄物に前進方向(コンポストの出口5側)への移動力を付与する。前記区画1aの外側には、蒸気排出パイプ6が連結してあり、蒸気パイプ6は、乾燥度調整バルブ7を介して熱交換器8の一側に連結し、熱交換器8には冷却水パイプ9と、高温水パイプ10及び液肥パイプ11が夫々連結してある。
【0051】
前記撹拌槽1の入り口側には、有機廃棄物の送入コンベア12と搬入バルブ13が設置してある。図中29、30はバルブ、31はモータ、32は投入パイプである。
【0052】
前記実施例の動作について説明する。エネルギー密度1kcal/gの有機物300kg、超好熱菌の菌床200リットルを撹拌機1に投入しつつ、モータ14により回転軸2を130rpmで回転すると、前記菌床と有機物とが均一に混入しながら矢示15の方向へ前進する。この場合に有機物を菌床の混合物は、撹拌されながら、矢示16、17、18、19、20のように各リング仕切板3の透過孔3dを通過する。一方、低温菌及び中温菌の増殖により、45℃/時の速度で温度上昇し、60℃〜70℃付近からは、超好熱菌の増殖により槽内温度が急激に100℃以上160℃位まで上昇する(前記昇温は図2のように直線的に温度t1である)。そこで温度低下を来さない範囲で有機廃棄物を投入する。
【0053】
この場合に、水蒸気が発生するので、この水蒸気は乾燥度調整バルブ7を介して矢示21のように熱交換器8に導き、冷却水との熱交換により生じた液肥は、液肥パイプ11を介し矢示22のように外界へ取り出され、冷却水パイプ9から矢示23のように供給された冷却水は、熱交換後、高温水となって高温水パイプ10から矢示24のように取り出される。この高温水は冷暖房その他に使用することができる。また発電に使用することもできる。
【0054】
前記実施例において、回転軸2が図5(c)中矢示26の方向へ回転すると、スクレーパー4aは、矢示27の方向へ移動するので、撹拌槽1内の有機廃棄物は、前記スクレーパー4aの前進に従って矢示28の方向へ反転し、撹拌槽1の内壁の有機廃棄物にとび付けられるので、有機廃棄物は反転を繰り返し、急速に均一混合する。この場合に、有機廃棄物は次々に送られるので、前のスクレーパーの次へはコンポストが供給される。
【0055】
また、撹拌槽1で発酵処理された有機廃棄物は、図3、4に示すように出口5から矢示25のようにコンポストとして取り出される。この場合にコンポストの水分は3%〜10%であった。
【0056】
前記のようにして、撹拌槽1内の温度と圧力をほぼ一定温度t2(温度130℃〜160℃、圧力0.2MPa)に保つように、水蒸気の排出量と、有機廃棄物の投入量を制御すれば、この発明の装置を安定して運転することができる。
【0057】
この発明の処理装置は、起動時に時間が掛かるが(1時間〜2時間)、一旦連続運転開始となれば、10分〜30分で有機廃棄物廃棄物を水分3%〜10%のコンポストに処理することができる。
【0058】
また、処理を一時中止する場合においても、撹拌槽の出入り口及び水蒸気バルブを閉鎖すれば、12時間経っても20℃〜30℃程度の温度低下がみられるのみであり、最初の起動よりも早く正常運転に戻すことができる(図2)。
【0059】
図2において、起動時のIゾーンは有機廃棄物投入、IIゾーンは起動時の温度上昇、IIIゾーンは定温・定圧の連続運転、IVゾーンは一旦休止を示すもので、連続運転後は温度低下の少ないことを表している。
【0060】
前記実施例においては、130℃、0.2MPaの定温・定圧運転について述べたが(温度変動範囲t3は小さい)、100℃〜180℃ならば実施可能である。
【0061】
一般に有機物は、60℃以上で細胞膜の破壊が開始されるので、100℃〜160℃で急速に水蒸気が発生すると、有機物の原形質が露出し、超好熱菌の栄養分として容易に消化されるので、超好熱菌の増殖に支障なく、10分〜20分に1回の割合で分裂増殖することが認められた。
【0062】
前記実施例における有機物投入などの自動制御は、液肥量の検出により行ったが、撹拌槽内の温度、圧力等の検出によって行うこともできる。
【0063】
【発明の効果】
この発明によれば、超好熱菌の増殖熱を利用して有機廃棄物を急速加熱し、水蒸気の爆発的発生によって有機物の原形質を露出して超好熱菌の栄養分とすることができるので、急激な増殖を可能にし、高い効率と、生態系廃棄物を能率的に処理しうる効果がある。
【0064】
この発明の装置は、全自動かつ自動制御であるから、設計通りの能力を保有し、しかも低圧であるから、対圧槽その他の機器が不必要となり、能力に比較して極めて低廉に提供しうる効果がある。
【0065】
この発明のコンポストは、殺菌されており、優れた肥料となり、かつ土壌改良になるなどの効果があり、処理副産物として膨大な高温水(例えば90℃〜95℃で温室暖房に利用)と、液肥を生成し、その上環境保全(焼却炉のように多量のCO2を出さない)にも有用であるなどの諸効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施例のブロック図。
【図2】同じく温度特性を示すグラフ。
【図3】同じく装置の実施例の概念図。
【図4】同じく装置の実施例の説明図。
【図5】(a) 同じく装置の実施例の一部断面図。
(b) 同じくスクレーパーの配置を示す側面図。
(c) 同じくスクレーパーの作用を示す説明図。
【符号の説明】
1 撹拌槽
2 回転軸
3 リング仕切板
4 スクレーパー
5 出口
6 蒸気パイプ
7 乾燥度調整バルブ
8 熱交換器
9 冷却水パイプ
10 高温水パイプ
11 液肥パイプ
12 送入コンベア
13 搬入バルブ
Claims (7)
- 超好熱菌を高濃度に含むコンポストと生態系廃棄物とを断熱系内で撹拌混合して、低温菌、中温菌により急速に70℃付近まで昇温させ、これにより廃棄物の原形質を露出させて、超好熱菌と接触させることにより超好熱菌が増殖し、その発生熱で、前記生態系廃棄物の温度を130℃以上に上昇させて、水分も蒸発させ、圧力も0.2MPaに上昇し、前記超好熱菌が栄養分を得て温度は130℃〜180℃まで上昇するので、処理すべき廃棄物を前記処理中の廃棄物の温度が低下しない程度の量宛供給し、自動高速発酵処理を行うと共に、前記水分蒸発による蒸気を取り出し、発酵処理状態を検出することにより、前記生態系廃棄物の高速発酵処理を自動制御することを特徴とした生態系廃棄物の発酵処理方法。
- 自動制御は、排出する蒸気を熱交換し、これにより生じる液量を検出して、生態系廃棄物の投入量及び投入速度を制御することを特徴とした請求項1記載の生態系廃棄物の発酵処理方法。
- 自動制御は、生態系廃棄物の投入速度と、発酵物の撹拌速度の制御とすることを特徴とした請求項1記載の生態系廃棄物の発酵処理方法。
- 請求項1記載の方法により超好熱菌で発酵処理して製造したことを特徴とする生態系廃棄物の処理コンポスト。
- 請求項1記載の発明を実施する装置であって、断熱的に構成され、中央部に透過孔を有する仕切り円板で数区分に区画された円筒槽内に、側面円弧状のスクレーパーの中心側を円筒槽の中央部に架設した回転軸に固定し、前記スクレーパーの円筒槽壁側を、回転軸と少角度をなして槽壁に当接した撹拌手段を内装し、前記円筒槽の一側に生態系廃棄物の送入手段を連設すると共に、前記円筒槽内で発生した蒸気の排出手段及び熱交換手段を連結し、前記円筒槽の他側へコンポスト排出手段を連結し、前記各手段の自動制御系を付設したことを特徴とする生態系廃棄物の発酵処理装置。
- 送入手段は、搬入バルブを備えたスクリューコンベアとしたことを特徴とする請求項5記載の生態系廃棄物の発酵処理装置。
- 自動制御系は、熱交換手段から生成された液量を検出し、その出力を生態系廃棄物の送入手段に入力し、その動力を可変にすることを特徴とした請求項5記載の生態系廃棄物の発酵処理装置。
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