JP3896463B2 - レーザインジェクション方法および装置 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザインジェクション方法および装置に関し、特に、生細胞に対する外来物質の導入(インジェクション)に好適な高速レーザインジェクション方法および装置に関する。
遺伝子などの外来物質を生細胞に導入する方法として、現在、様々な手法が提案されている。例えば、λファージなどのウイルスベクターを用いた生物学的な方法や、微細な針(マイクロピペット、マイクロシリンジ)により生細胞に外来物質を直接注入したり(マイクロインジェクション)、DNAでコーティングしたナノメートルサイズの金微粒子を高速で生細胞に打ち込む(ジーンガン)機械的方法、細胞に電気的刺激を印加し、細胞の変形を誘起して導入する物理的方法(エレクトロポレーション)などが提案されている。さらに、最近では、レーザ光を細胞に直接照射し、細胞に微細な穴を開けて外来物質を導入する光学的方法も提案されている。
しかし、ウイルスベクター法では遺伝子以外の物質の導入はできず、細胞に対する毒性も懸念され、ウイルスの感染といった安全性の問題が指摘されている。マイクロインジェクション法は、遺伝子以外の外来物質を導入できるが、その操作は煩雑であり、汎用性のある手法とは云い難い。また、ジーンガン法では遺伝子以外の外部物質を導入することはできず、遺伝子の導入効率も低い。エレクトロポレーション法も、その極めて低い遺伝子導入効率(遺伝子を導入できる割合が数千〜数万個の細胞に一つ以下と云われている)が指摘されている。レーザ照射法も、細胞に直接レーザを照射して細胞にダメージを与えることは云うまでもなく、細胞の生存確率を向上させるためにはレーザパワーや波長、パルス幅の最適化も必要であり、しかも操作自身も簡便であるとは云い難い。
このように、生細胞に対する外来物質の導入に関しては、生物学的、機械的、物理的、光学的手法のいずれも、操作性や導入効率、細胞の生存確率などの観点から問題を含んでいることがわかる。さらに、これらの手法は、多数の細胞を対象にした場合に、異なった種類の外来物質をその種類ごとに連続的に高速に導入できる方法とはとても云えないことは明らかである。
上記の手法とは異なり、レーザを集光して発生する衝撃波を、特殊な容器を介して細胞と外来物質を含む水に伝播させ、衝撃波による衝撃力で細胞内に外来物質を導入する方法が提案されている(特許文献1)。より詳しくは、この方法では、衝撃波を発生する液体を内包したチャンバ容器またはバルーン容器を外壁(音響伝播部材)を介して細胞/外来物質を含む対象試料液体に接触させ、パルスレーザ照射により衝撃波を発生させ、対象試料液体にこの衝撃波を効率良く伝播させて、外来物質の導入を行っている。
特開平11−028086号公報
しかしながら、この方法では、衝撃波の発生装置や伝達装置などの装置が大きくなり、かつ、この大きさのために細胞に到達する衝撃波の強度が発生地点よりも大きく減衰してしまい、細胞に効率良く外来物質を導入させることはできない。また、衝撃波発生地点と各細胞との距離を制御することができないため、個々の細胞に対して同一の条件で衝撃波を照射することはできない。さらに、この手法も多数の細胞を対象にした場合に、異なった外来物質をその種類ごとに連続的に高速に導入できる方法とはとても云えないことは明らかである。
人間の遺伝子は約3万種類程度あると考えられており、すでにヒト遺伝子のシークエンスが決まり、ポストゲノム研究として、これらの機能や発現の抑制に関する研究が活発化されている。これら遺伝子の働きは複雑に絡み合っているため人間の疾病に関するメカニズムを解明するためには、高速、高精度に各遺伝子の働きを調べるスクリーニング技術の開発がキーとなっている。また、制ガン剤などに対する薬剤耐性の個人差、つまり個人の体質もこれら遺伝子の個体差によるものと考えられている。創薬においては、これらの遺伝子の発現が各種薬剤や遺伝物質(RNAなど)に対してどのように誘起されるかを3万もの遺伝子を対象に観測することが必要となる。その場合、各遺伝子を細胞に導入して機能発現を観測することになる。かかる理由により、遺伝子などの外来物質を細胞内に導入する技術が重要になるのである。
しかも、上記のようにスクリーニングには、単一種類の遺伝子を細胞に導入するのではなく、極めて多数の種類の遺伝子を細胞に導入する必要があるが、上記各種方法のいずれにおいても、例えば、数千種類もの遺伝子をその種類ごとに生細胞に導入するには膨大な時間と労力を要するのは云うまでもないことである。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、例えば、数千ないし数万種類の遺伝子など、多数の種類の外来物質を、その種類ごとに極めて短時間(例えば、数秒)で生細胞に導入することができるレーザインジェクション方法および装置を提供することを目的とする。
本発明は、レーザ衝撃波を利用して、生細胞自体に直接のレーザ照射による損傷の付与を行うことなく、生細胞に外来物質を導入するようにした。さらに、パルスレーザの高い繰り返し発振特性を利用し、多数の生細胞に対し、外来物質を高速かつ自動的に導入するようにした。
すなわち、本発明は、生細胞を、外来物質を含む水とともに微小セル中に置き、セルにパルスレーザ光を照射し、生細胞を直接照射せずに水中で衝撃波を発生させ、衝撃波による圧力変動効果により細胞膜を過渡的に開かせると同時に外来物質を生細胞に導入するようにした。また、このようなセルを基板上に多数並列作製したセルアレイ上の各セルに対し、高繰り返し周波数で発振するパルスレーザ光を順次照射し、各セル中に存在する生細胞に外来物質を高速かつ自動的に導入するようにした。
本発明によれば、多数の種類の外来物質をその種類ごとに極めて短時間で生細胞に導入することができるレーザインジェクション方法および装置を得ることができる。
本発明は、対象となる生細胞/遺伝子を内包し、レーザ照射が行われるセルアレイの仕様(形態)と、レーザ衝撃波により生細胞に遺伝子を導入する技術に関する。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るセルアレイの構造を示す図である。
セルアレイ1は、基板の表面に、多種類の外来物質を導入できるように多数の空孔(以下「セル」という)3を設けた構造となっている。レーザ照射に際し、各セル3には生細胞や外来物質を含んだ水(以下「試薬溶液」という)5が注液されている。各セル3に存在する生細胞の個数は、数個程度でよい。さらに、このようなセルアレイ1は、試料溶液5が注液された後に、蓋7で完全に密封される。これにより、試料溶液5は閉じ込められた状態となる。
図2は、本発明の一実施の形態に係るレーザインジェクション装置の構成を示すブロック図である。
このレーザインジェクション装置100は、レーザ衝撃波により生細胞に遺伝子を高速に導入する装置であって、パルスレーザ光を発生するレーザ光源101と、レーザ光源101から出力されたレーザ光を対象(セルアレイ1)に集光し、効率良く発生させる光学系103および顕微鏡部105と、セルアレイ1を3次元的に高速かつ高精度に駆動走査する試料ステージ107と、光学系103および顕微鏡部105を通じて対象セル3内部の細胞の位置と集光位置を検出する光検出部109/画像認識部111と、集光位置と細胞位置を最適化するように試料ステージ107をフィードバック制御するステージ制御部113と、上記各部を総合的に制御する制御コンピュータ115と、観察用の照明光を発生する照明用光源117とを有する。光検出部109は、例えば、CCDカメラである。
図3は、レーザインジェクション装置100による、つまり、レーザ衝撃波による生細胞への外来物質の導入過程を説明するための図である。
レーザインジェクション装置100において、パルスレーザ光は、セルアレイ1の一つのセル3に照射される。この時、レーザ集光位置は、光検出部109/画像認識部111およびステージ制御部113によって、対象となる生細胞の近傍になるように調整されている。具体的には、図3(A)に示すように、画像認識部111の視野9内の数個の複数の生細胞11からほぼ等距離の位置にレーザ光が集光するようにレーザ集光位置15を制御コンピュータ115により制御/調整する。
図3(B)に示すように、パルスレーザ光17は、生細胞11を直接照射せずに生細胞11の近傍の水中に集光される。すなわち、生細胞11には直接の光照射によるダメージは全くない。レーザ集光位置15では水のブレークダウン(絶縁破壊)が起こり、これにより衝撃波19が発生する。発生した衝撃波19は瞬時に生細胞11と外来物質13に伝播する。また、セルアレイ1には密封用の蓋7がされ、試料溶液5は閉じ込められた状態になっているため、衝撃波19は「増強」される。本発明者はこの「増幅」作用も見いだしている。さらに、衝撃波発生地点(レーザ集光位置)15と生細胞11との距離が極めて短いために、結果的に生細胞11には強力な衝撃波19による圧力変動が印加され、細胞膜に過渡的な空隙(空孔)が形成される。この空孔を通じて外来物質13が生細胞11内に取り込まれる。
外来物質13が生細胞11内に取り込まれた後、衝撃波19により形成された過渡的な空孔は再び閉じ、生細胞11への外来物質13の導入が完了する(図3(C)参照)。
このようにしてセルアレイ1上の一つのセル3内の生細胞11に外来物質13の導入が完了すると、直ちに試料ステージ107を駆動し、隣接するセル3に対して上記と同様の照射操作を行う。
図4は、操作手順のフローチャートである。
まず、セルアレイ1上の各セル3に試薬溶液(水と生細胞11と外来物質13で出来ている)を注液し、蓋7で密閉する(S1000)。そして、密閉されたセルアレイ1を試料ステージ107上に載置して位置決めを行う(S1100)。
そして、光検出部109/画像認識部111によりセルアレイ1上の一つのセル3内の生細胞11の位置を確認し(S1200)、制御コンピュータ115でレーザ集光位置15を決定する(S1300)。そして、制御コンピュータ115の制御の下、光検出部109/画像認識部111およびステージ制御部113によって、試料ステージ107を駆動制御し、図3(A)に示すように、レーザ集光位置15を調整する(S1400)。
そして、図3(B)および図3(C)に示すように、パルスレーザ光17を照射して衝撃波19を発生させ、発生した衝撃波19を利用して生細胞11に外来物質13を導入する(S1500)。
そして、試料ステージ107を駆動制御し、隣接するセル3を画像認識部111の視野9内に移動させた後(S1600)、ステップS1200に戻る。すなわち、セルアレイ1上のすべてのセル3に対して上記一連の操作を順次繰り返し行う。
レーザは高い繰り返し周波数で発振しているため、レーザを発振させながら試料ステージ107を駆動して2次元/3次元的に走査することにより、多数の細胞に対してそれぞれ異なる外来物質13の導入を迅速に行うことができる。
ここで、セルアレイ1は、化学的に不活性で生細胞11にも影響を与えず、しかも微細加工が比較的容易な材料から出来ている。例えば、その材料は、シリコンやアクリル樹脂などのポリマー、ガラスである。例えば、図1において、セルアレイ1上に並列に形成されている各セル3の大きさは、直径が100μm程度、深さが100μm程度である。
図2において、レーザ光源101は、衝撃波を発生させることができる強度を持ったパルスを供給することができるパルスレーザであり、市販品の各種のレーザでよいが、レーザ光は液体(水)に対して透明でなければならないため、波長が200nm以上のレーザである。具体的には、例えば、パルス幅がナノ秒のNd:YAGレーザ(パルス幅10ns以下、波長1064nm、532nm、355nm、266nm)、ナノ秒パルス発振のエキシマレーザ(パルス幅10〜30ns、波長351nm、308nm、248nm)、ピコ秒パルス発振のNd:YAGレーザ(パルス幅10〜30ps、波長1064nm、532nm、355nm、266nm)、ピコ秒パルス発振のチタンサファイアレーザ(パルス幅10ps以下、波長800nm前後または400nm前後)、さらにパルス幅の短いフェムト秒パルス発振のチタンサファイアレーザ(パルス幅10〜500fs、波長800nm前後または400nm前後)のうちの一つを使用する。さらに、発振繰り返し周波数が高いものほど迅速に導入を行うことができるため、発振繰り返し周波数が1Hz以上で、具体的には、繰り返し周波数が1〜100kHzのナノ・ピコ秒パルス発振のNd:YAGレーザ(波長1064nm、532nm、355nm、266nm)またはピコ・フェムト秒パルス発振のチタンサファイアレーザ(波長800nm前後もしくは400nm前後)が好ましい。
セルアレイ1は、図2に示す試料ステージ107に載置される。このとき、セルアレイ1上のセル3のうち、角の部分に位置するセル3にレーザ光が照射されるように試料ステージ107を駆動して調整する。そして、さらに、光検出部109/画像認識部111により、視野9内の生細胞11の近傍にレーザ集光位置15が来るように、ステージ制御部113によって試料ステージ107をフィードバック制御する。ここで、生細胞の近傍とは、対象とする生細胞11から、例えば、およそ30μm以内の距離を意味する。画像認識部111の視野9内では、数個の複数の生細胞11が観察されるが、例えば、4個の生細胞11が観察された場合は、それぞれの生細胞11からおよそ等距離にある位置をレーザ集光位置15とする。
そして、その後、レーザ照射を開始する。レーザ光は、上記で調整された所定の位置に光学系103および顕微鏡部105を通じて集光される。このレーザ集光位置15では水のブレークダウン(絶縁破壊)が誘起され、このレーザ集光位置15から衝撃波19が発生する。
ここで、レーザ照射から衝撃波19の発生に至るまでの過程と機構について説明しておく。レーザ光は対象とする液体(水)に対して透明であるため、レーザ集光位置15までその強度を減衰されることなく集光される。この時、レーザ集光位置15では以下のようなことが起こる。液体分子はパルスレーザ光17によって多光子励起され(多光子吸収)、イオン化が起こり、初期電子が供給される。この初期電子の量は多くても少なくてもよい。このようにして生成した電子は、直ちにパルスレーザ光17の光電場により加速され、液体分子と衝突し、衝突によりイオン化を生起する(二次電子の供給)。このように発生した二次電子も光電場によって加速され、さらに液体分子に衝突して電子を発生させる。かかる現象がレーザパルス幅の時間内に繰り返し起こり、電子の数はネズミ算的に増加し、しかもそれぞれの電子は光電場によって充分に加速され、大きな運動エネルギを獲得している。かかる過程を「電子なだれ」現象と呼ぶ。この結果、レーザ集光位置15では、高温プラズマが局所的に発生することになる。このようなプラズマの発生によって、光熱効果(光音響効果)によりパルス状の音波が発生するが、プラズマの温度が高いため音波の音圧は極めて大きくなる。このような音波をここでは「衝撃波」と呼ぶ。その音圧は、およそ100MPa(メガパスカル)以下であると考えられる。
このようにして発生した衝撃波(強い音響波つまり圧力波)、換言すれば、レーザによって誘起された衝撃波19は、直ちに対象となる生細胞11に到達する。上記のように、複数の生細胞11と衝撃波発生地点(レーザ集光位置15)とはそれぞれ等距離で近いため、衝撃波19はその強度を減衰させることなく、複数の生細胞11にそれぞれ同様の強度で極めて効率良く到達する。衝撃波19が生細胞11に照射されると、生細胞11は急激な圧力変動を受けることになるため、その細胞膜には過渡的な空隙(空孔)が形成される。あらかじめ生細胞11の外部に存在している外来物質(遺伝子など)13は、試料液体5中を熱運動しており、生細胞11の近傍に来た際に、または、レーザ照射前から生細胞11の近傍にいる外来物質13については、このように過渡的に形成された空孔を通じて生細胞11に導入される(インジェクション)。しかも、それぞれの生細胞11に等しく強い強度で衝撃波19が照射されるため、生細胞11への外来物質13の導入効率は高い。視野9内の生細胞11、つまり、レーザ集光位置15近傍の生細胞11すべてに外来物質13の導入を行うことができる。一つのセル3には数個程度の生細胞11が存在するため、照射位置が1〜2ヶ所のパルスレーザ照射によりセル3に存在するすべての生細胞11に外来物質13を導入することができる。このように、極めて高い導入効率が本手法の一つの特徴である。
図5を用いて、この様子、つまり、生細胞11への外来物質13の導入の様子をより詳しく説明する。図5において、21は細胞内の領域であり、23は細胞外の領域である。動物細胞の細胞膜25は、脂質分子が密に会合した構造で形成されており、より具体的には、脂質二分子膜の構造をとっている。ここで、脂質二分子膜を形成する脂質分子間には強固な共有結合は形成されておらず、脂質分子同士は弱い分子間力で結びつき、会合している。このことが生細胞11の柔軟性を生起している。一方、レーザで誘起される衝撃波19は、数10MPaの音圧を有する圧力波であるため、このような細胞膜25に包まれている生細胞11に衝撃波19が到達すると、弱い力で会合している細胞膜25は、衝撃波19の圧力変動により瞬間的にその構造が「疎」になる。このように疎になった細胞膜25では、細胞膜25を構成する脂質分子間の距離が長くなり、空隙27が形成される。この空隙27を通じて外来物質13は、生細胞11内に導入される。よって、生細胞11には傷害・損傷は生じない。
上記の過程は、セルアレイ1上の一つのセル3に対する導入操作である。すなわち、一つのセル3に対し、上記操作によりパルスレーザ光17を照射すると、生細胞11への外来物質13の導入は完了することになる。その後、直ちに、上記操作で導入が完了した第1のセルに隣接する第2のセルが照射位置に来るように試料ステージ107を駆動する。そして、上記操作をこの第2のセルに対しても全く同様に行うことにより、この第2のセルに対しても全く同様に導入が完了する。
こうして、以下、セルアレイ1上のすべてのセル3に対して、順次上記操作を行えば、セルアレイ1上に存在する各セル3中のすべての生細胞11に対して外来物質13の導入が完遂する。例えば、上記レーザのうち、レーザのパルス発振の繰り返し周波数が1kHz(1秒間に1000パルスを供給する)以上のレーザを用いることにより、1万種類以上の遺伝子を数十秒ないし数分で生細胞11に導入することができる。
以下、本発明のより具体的な実施の形態(実施例)について説明する。なお、本発明は、本実施例に限定して解釈されるものではない。
レーザ光源101として、チタンサファイフェムト秒レーザ(波長800nm、パルス幅150フェムト秒、繰り返し周波数1kHz)を用いた。照射パルスエネルギは、例えば、1μJ(マイクロジュール)以下であった。これを光学系103および顕微鏡部105(顕微鏡対物レンズの開口数1.3)に導入した。試料位置への照射は、メカニカルシャッタによって照射/非照射を制御部から切り替えることができる。
対象となる生細胞11として、例えば、タバコ葉由来培養細胞のBY2を用いた。これに導入する遺伝子として、蛍光物質を発現させる機能を有するGFP(Green Fluorescent Protein)遺伝子を組み込んだプラスミドを用いた。これらを純水で十分に希釈した。
セルアレイ1として、厚さ1mmのガラス基板(1.5cm×1.5cm)上に、微細加工技術を用いて直径100μm、深さ100μmの孔状のセル3を100個(10列×10列)並列に形成したものを作製した。これらすべてのセル3中に、上記生細胞11が1セル当たり4〜6個存在するように、注液し、GFP遺伝子を含む純水で満たした。その後、セルアレイ1と同じサイズのガラス基板を蓋7としてセルアレイ1を密封した。
上記セルアレイ1を試料ステージ107に載置した。一つのセル3内の生細胞11の位置を画像認識し、最適なレーザ集光位置15を決定し、それに合わせて試料ステージ107を駆動制御するのに約50ミリ秒要した。
次に、上記条件で上記手順によりレーザ照射を行った。照射時間は1ミリ秒以下であった。次に、試料ステージ107を駆動し、隣接するセル3が視野9内に納められるようにした。これに要した時間は10ミリ秒であった。このように、一つのセル3内に存在する生細胞11に外来遺伝子物質を導入するのに要した時間は、0.1秒(100ミリ秒)以下であった。
このような操作を順次繰り返し、セルアレイ1上のすべてのセル3に対しレーザ照射を完了した。100個のセル3すべてに対し照射を完了するのに要した時間は、10秒程度であった。
上記手順によりレーザ照射を終えたセルアレイ1に対し、蛍光顕微鏡観察を行った。GFP遺伝子が生細胞11に導入されると、緑色蛍光蛋白質が機能として発現し、生細胞11は緑色の蛍光を放つことが知られている。蛍光顕微観察により、レーザ照射を行ったすべてのセル3に対し、このような緑色蛍光が確認され、レーザ衝撃波によりGFP遺伝子が生細胞11に高速に導入されたことが確認された。
以上説明したように、本発明によれば、パルスレーザ光により発生する衝撃波を、照射位置の最適化と液体閉じ込め効果により、極めて効率良く(対象試料の生細胞に対してほぼ100%)外来物質(本実施例ではGFP遺伝子)を導入できた。さらに、セルアレイを用い、高繰り返し発振レーザをセルアレイ上のセル列に沿って順次走査しながら照射することにより、100個のセル中の生細胞すべてに、極めて高速に外来遺伝子を導入することができる。例えば、実施例に示す遺伝子導入操作を従来の技術で行うと、100回の導入走査に要する時間は数10時間以上と思われ、しかも遺伝子導入効率は低いと考えられる。
なお、本実施例では、単一種類の生細胞に対して単一種類の遺伝子物質を導入したが、本発明は、極めて汎用性が高いものであり、もちろん、実施例以外の細胞と遺伝子の組み合わせに対しても導入が可能である。各セルに対し、遺伝子の種類を逐次変えると、多数の遺伝子に対する高速スクリーニングが可能となる。
このように、本発明は現在のバイオテクノロジーにおいて重要技術となる遺伝子スクリーニングにおいて、極めて優れた導入技術を提供するものである。
本発明に係るレーザインジェクション方法および装置は、多数の種類の外来物質をその種類ごとに極めて短時間で生細胞に導入することができるレーザインジェクション方法および装置として有用である。
本発明の一実施の形態に係るセルアレイの構造を示す図 本発明の一実施の形態に係るレーザインジェクション装置の構成を示すブロック図 本発明の一実施の形態におけるレーザ衝撃波による生細胞への外来物質の導入過程を説明するための図 本発明の一実施の形態における操作手順のフローチャート 本発明の一実施の形態における生細胞への外来物質の導入の様子を説明するための図
符号の説明
1 セルアレイ
3 セル
5 試薬溶液
7 密封用の蓋
9 画像認識部における視野
11 生細胞
13 外来物質
15 決定/調整されたレーザ集光位置
17 パルスレーザ光
19 レーザ誘起衝撃波
21 細胞内の領域
23 細胞外の領域
25 細胞膜
27 空隙
100 レーザインジェクション装置
101 レーザ光源
103 光学系
105 顕微鏡部
107 試料ステージ
109 光検出部
111 画像認識部
113 ステージ制御部
115 制御コンピュータ
117 照明用光源

Claims (8)

  1. フェムト秒パルスレーザ光を発生する工程と、
    前記フェムト秒パルスレーザ光を、生細胞および外来物質を含む溶液が注液されたセルにおける、前記生細胞以外の前記溶液中の位置に集光させる工程と、を具備し、
    前記フェムト秒パルスレーザ光を集光させることにより、前記溶液中で衝撃波を発生させ、前記衝撃波による圧力変動効果により前記生細胞の細胞膜を過渡的に開かせると同時に前記外来物質を前記生細胞に導入することを特徴とするレーザインジェクション方法。
  2. フェムト秒パルスレーザ光を発生する工程と、
    前記フェムト秒パルスレーザ光を、生細胞および外来物質を含む溶液が注液されたセルにおける、前記生細胞以外の前記溶液中の位置に集光させる工程と、
    前記フェムト秒パルスレーザ光を集光させることにより、前記溶液中で衝撃波を発生させ、前記衝撃波による圧力変動効果により前記生細胞の細胞膜を過渡的に開かせると同時に前記外来物質を前記生細胞に導入する工程と、
    を具備することを特徴とするレーザインジェクション方法。
  3. 前記溶液を注液されたセルの内部を観察して、前記生細胞の位置を確認する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1または請求項2記載のレーザインジェクション方法。
  4. 前記セルは、前記溶液が注液された状態で密封されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザインジェクション方法。
  5. 前記フェムト秒パルスレーザ光の集光位置は、前記セル内の前記生細胞の近傍であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザインジェクション方法。
  6. 前記セルは、基板上に多数設けられた微小な空孔であり、各セルに対し、高い繰り返し周波数で発振するフェムト秒パルスレーザ光を順次照射することを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザインジェクション方法。
  7. 前記フェムト秒パルスレーザ光の繰り返し周波数は、1〜100kHzの範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2記載のレーザインジェクション方法。
  8. フェムト秒パルスレーザ光を発生するレーザ光発生手段と、
    前記フェムト秒パルスレーザ光を、生細胞および外来物質を含む溶液が注液されたセルにおける、前記生細胞以外の前記溶液中の位置に集光させる光学手段と、を具備し、
    前記フェムト秒パルスレーザ光を集光させることにより、前記溶液中で衝撃波を発生させ、前記衝撃波による圧力変動効果により前記生細胞の細胞膜を過渡的に開かせると同時に前記外来物質を前記生細胞に導入することを特徴とするレーザインジェクション装置。
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