JP3894472B2 - 押釦スイッチ用部材とその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、携帯電話、PDA等の携帯端末、電話機、カーステレオ、車載用ボードコンピュータ、オーディオ、計測器、パーソナルコンピュータ、ホームシアター用リモコン等の入力装置に用いられ、この入力装置のキートップ部にそれぞれを識別する或いはスイッチ機能を表示する表示部を有する押釦スイッチ用部材に関するものであり、より詳しくは、暗い所で表示部を照らし出すことのできる照光式の押釦スイッチ用部材とその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の入力装置に用いられる押釦スイッチ用部材は、夜間時の使用において押釦スイッチの機能を示した表示部を照光するいわゆる照光機能
が必要とされている。
【0003】
例えば、携帯電話機等の入力装置に使用される押釦スイッチ30では、図14又は図15に示したように、操作キーを構成する複数のキートップ部31を一体に形成したカバー基材32と回路基板33とが向かい合った状態で、目的とする入力装置の筐体内に組み込まれて押釦スイッチ30のスイッチ機能を実現できるようにしている。そして、暗い所でも押釦スイッチ30の機能がわかるように、各々の操作キーとなるのキートップ部31の天面部又は裏面部には、それぞれのスイッチ機能に応じた文字、符号又は図柄等の表示を施した表示部34が設けられており、回路基板33上に設けたLED35や電球36等の光源から発せられる直射光及びこの直射光が周辺の部材に反射して生じる反射光がキートップ部31の裏面部から天面部に透過することで、表示部34の表示内容が浮かび上がって視認できるようになっている。これにより、夜間時でも支障なく携帯電話等を使用することができる。
【0004】
また、より均一な明るさが要求される場合には、図16又は図17に示したように、LED35とキートップ部31との間に薄板上の導光部材37を挿入したり、光源として面発光するEL(エレクトロルミネセンス)シート38を使用することで発光表面積を大きくすることが試みられていた。
【0005】
しかしながら、LED35、電球36、ELシート38等の光源及び光源からの直射光を導く導光部材37は、回路基板33上の接点部39とキートップ部31との接触動作を阻害することのないよう、キートップ部31から離れた所に配置されているため、光源35,36,38や導光部材37と表示部34とが離れた位置関係となり、LED35や電球36の数を増やしたり、導光部材37を補ったり、或いはELシート38を用いた場合にあっては、部品点数が増加することによる設計の困難性が高くなる割には、暗い所で表示部34の表示内容を確認するだけの十分な光量を供給できない場合が生じ、その実効性に乏しかった。
【0006】
特に、電池駆動する携帯電話機にあっては、低消費電力が求められており、少ない数の光源で十分な光量を確保することが望まれるが、上述した従来の方法では光源から発せられる光の一部しか表示部34の視認性向上に寄与できず、大きな消費電力を使用しても視認性を向上することができないといった矛盾が生じていた。
【0007】
さらに、キートップ部31とこれに対応する固定基板33に設けた接点部39の間に、光源35,36,38や導光部材37を設けるため押釦スイッチ30の厚みを薄くすることができず、ひいては入力装置や機器本体の厚みを薄くすることに制約が生じると共に重量の増加を招くこととなっていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、以上のような不具合を解消するため、特開平11−232954号公報又は特開2000−285760号公報に記載された発明のように、キートップ部の天面部に自発光する面発光体を設けて表示部の近傍に光源を取り付けることで、光の拡散と障害物による光量の損失を防ぐ工夫が行われているものが知られている。
【0009】
そして、これらの面発光体は高誘電有機物質中に、無機の発光体粉末を分散させた、有機分散型EL(無機EL)であるため、駆動のために交流を印加している。
【0010】
また、表示部がキートップ部の天面部に位置するため、透明絶縁性基体上に透明電極、表示部或いは第2の電極を予め設け、絞り加工等によって成形するが、透明絶縁性基体が延伸されるに伴い、電極材料等も延伸され、透明電極の抵抗値の上昇を抑える工夫がなされている。
しかしながら、これら表示部が発光する従来の押釦スイッチ用部材は、有機分散型EL(無機EL)を使用しているため、携帯端末等の直流電源しか所有していない機器は、これを交流変換し、さらに昇圧しなければならず、余分な部品及びそのスペースを必要とするため、限られた製品にしか使用できなかった。さらに、交流で駆動されているため、振動やノイズの発生があり、携帯電話等では、使用に不快感や通信障害などの不具合が生じている。
【0011】
また、エネルギー的にも、特には電池駆動する携帯端末等では、より低消費電力が求められるが、電気−光変換効率も低く、電池の寿命を早めており、使い勝手が悪かった。
【0012】
さらに、電極材料は透明導電セラミックス層をスパッタリングで設け、或いは高価な粉末を有機バインダーに分散させてなる透明電極を用いているため、成形時に抵抗値が甚だ大きくなり、表示部が点灯しないという不利不具合があるため、工業的に実用のレベルに達していない。
【0013】
そこで、この発明は、以上のような従来のキートップ部の表示部を照光する押釦スイッチ用部材の問題を解消するために考えられたものであって、光エネルギーを無駄なく表示部の照光に使用することで、消費電力を押さえながらも輝度むらのない表示部の照光が実現でき、直流で駆動する面発光体を使用することで厚みの薄くて軽い押釦スイッチ用部材とその製造方法を提供することを課題としている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、回路基板上の固定接点に対向して配置される可動接点を前記固定接点に接触させる方向に押圧するためのキートップ部と、該キートップ部を所定の位置に配して前記回路基板上に取り付けるためのカバー基材とを有する押釦スイッチ用部材であって、前記キートップ部は、芯材と該芯材を被覆する透明絶縁性フィルムと、スイッチ機能を表示する表示部とを有し、該表示部は、前記透明絶縁性フィルムの裏面に設けられた透明電極と、該透明電極の裏面に設けられて打ち抜かれた抜き型部を有する不透明着色層と、前記抜き型部内に形成されると共に前記不透明着色層の裏面に形成される電気化学発光体で成形された発光体層と、該発光体層及び前記不透明着色層の裏面に設けられたベース電極とから成り、前記ベース電極の電極端子、前記透明電極の電極端子、及び、前記不透明着色層を前記キートップ部以外の部分まで延長して配置した押釦スイッチ用部材としたことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加えて、前記ベース電極が導電性粒子と絶縁性樹脂とからなる導電性インクであることを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1の構成に加えて、前記透明電極は透明絶縁性基体に透明導電性ポリマー層を形成してなり、該透明電極に接して前記発光層体が形成されていることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成に加えて、前記透明導電性ポリマー層が着色されていることを特徴としている。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4いずれか1つの構成に加えて、前記押釦スイッチ用部材の外表面の少なくとも一部分に無機酸化物層が形成されていることを特徴としている。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項5の構成に加えて、前記無機酸化物層の外表面に有機物層を設けてなることを特徴としている。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6の構成に加えて、前記無機酸化物層がポリシラザンを転化してなるものであることを特徴としている。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7のいずれか1つの構成に加えて、前記ベース電極と前記キートップ部の心材との間に吸湿層を設けたことを特徴としている。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項8の構成に加えて、前記ベース電極と前記キートップ部の心材との間に酸素吸収層を設けたことを特徴としている。
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の構成に加えて、前記ベース電極と前記吸湿層との間に酸素吸収層を設け、前記ベース電極、前記酸素吸収層、前記吸湿層、前記キートップ部の芯材の順で積層したことを特徴としている。
【0024】
請求項11に記載の発明は、請求項1乃至10のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材の製造方法であって、前記ベース電極が導電性粒子と絶縁性樹脂とからなる導電性インクによって形成され、該導電性インクを塑性流動状態で賦形したことを特徴としている。
【0025】
請求項12に記載の発明は、請求項1乃至10のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材の製造方法であって、前記発光体層、前記透明電極、前記ベース電極或いは前記表示部の模様部又は地部を構成する着色層のうち、少なくとも3種を平面状の透明絶縁性フィルム上に形成した後、キートップ部と電極端子部とを賦形してなることを特徴としている。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について図1乃至図13によって説明する。
【0027】
[発明の実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1に係る押釦スイッチ用部材を示した要部断面図である。
【0028】
図1に示した実施の形態1に係る押釦スイッチ用部材1は、文字、符号又は図柄等によるスイッチ機能を表示した表示部2をキートップ部3の天面部側に設けたものであって、表示部2に自発光する面発光体4を採用したものである。
【0029】
実施の形態1に係る押釦スイッチ用部材1には、回路基板5上の固定接点6に対向させて配置される可動接点7が設けられている。具体的には、キートップ部3の裏面部中央に設けた押圧突部8の先端に可動接点7を形成し、キートップ部3を回路基板5側へ押圧することにより可動接点7が固定接点6へ接触できるようにしている。
【0030】
また、キートップ部3の外周部でかつ押釦スイッチ用部材1と回路基板5との間には、所定の位置に配された複数のキートップ部3を一体に形成したシリコーンゴム等の弾性材料のカバー基材(図示せず)が設けられており、キートップ部3を押圧した際にカバー基材の一部が回路基板5側に弾性変形して、キートップ部3から手を離した際にカバー基材の弾性復元力によりキートップ部3が元の位置に復帰できるようにしている。
【0031】
押釦スイッチ用部材1は必要により複数のキートップ部3が配置されており、エルゴノミックデザイン等の点から、3次元の複雑な形状を有している場合が多く、キートップ部3の天面部は、キートップ部3以外の部分より隆起した形状となり、入力装置の筐体に設けられた開口部(図示せず)から突出している。表示部2は数字、文字又は図柄等が採用され、キートップ部3の識別機能或いはキートップ部3のスイッチ機能の説明を示すものが使われる。これら表示部2は、例えば文字色(模様部)と文字以外の背景色(地部)との色差によって識別されるが、必要に応じて視認性のよい色合いが選択されることとなる。
【0032】
例えば、1つのキートップ部3に数字とアルファベット等複数の表示部2を有し、これを切り替えて、別々の発光色で発光させることにより、多くの機能を有するキートップ部3の操作を区別することができ、スイッチ機能をより操作し易くできる。表示部2は、暗い所での視認性を向上させるため、又は入力確認のため照光されるが、文字が照光したり、背景が照光したり、文字及び背景の両方を照光する等、そのデザインは自由に決定される。照光の輝度は、発光色により異なるが、おおよそ10〜100ニト(nt)である。
【0033】
キートップ部3の実質的な形状を決定するキートップ部3の芯材22の材料は硬質又は軟質樹脂或いはエラストマー等から選ばれる。熱可塑性又は熱硬化性のいずれでもよく、フィルム状、ペレット状、液状等素材の形態に限定されることもないが、液状熱硬化性樹脂は注入作業が容易であり好ましい。
【0034】
キートップ部3の裏面部を除いた押釦スイッチ用部材1の外周表面には、透明絶縁性フィルム9が被覆されており、この透明絶縁性フィルム9の裏面にはキートップ部3の側面からキートップ部3の天面部に達する範囲で、面発光体4の一方の電極となる透明電極10が設けられている。透明電極10の裏面及び透明電極10が設けられていない透明絶縁性フィルム9の裏面には、遮光性及び絶縁性を有する不透明着色層11が設けられている。
【0035】
そして、不透明着色層11には表示部2の文字、符号又は図柄等の形態に合わせた抜き型部12が形成されている。不透明着色層11の裏面には、抜き型部12を含めたキートップ部3の天面部の大きさより僅かに小さな大きさの発光体層13を設けている。したがって、抜き型部12は発光体層13で埋められ、文字、符号又は図柄等からなる模様部が形成され、この模様部と抜き型部12の周囲の不透明着色層11からなる地部とによって表示部2のデザインが完成されることになる。そして、発光体層13の裏面には、もう一方の電極を形成するベース電極14を設けている。
【0036】
また、ベース電極14及び不透明着色層11の裏面とキートップ部3の芯材22との間には、酸素吸収層18と吸湿層17とが重なるようにして形成されている。これにより、発光体層13を酸素と湿度から保護してその品質を長期に維持できるようにしている。
【0037】
表示部2自体が発光する構造は、表示部2の領域を均一に発光させ、樹脂の成形体との複合化が容易な、LEC(Light Emitting Electrochemical Cell、電気化学発光)体からなり、直接、可視発光するものや、可視光外、例えば紫外発光をし、これを可視発光に変換したもの等が含まれる。
【0038】
LECは対向する少なくとも一方が透明の2電極(透明電極10とベース電極14)間に、約0.5〜50μmの発光体層13を挟持させた構造で、発光体層13はポリチオフェン、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリビニレン等の誘導体、共役ポリマーやオリゴマーと或いはレーザー色素等とエチレンオキサイド、フォスファゼン、プロピレンオキサイド、ジメチルシロキサン、オキシメチレン、エピクロロヒドラン、オキセタン、テトラヒドロフラン1,3−ジオキソラン、エチレニミン、エチレンサクシネート、エチレンスルホネート、オキシエチレンメタクリレート、オキシエチレンシクロトリスホスファゼン等のポリマー或いはオリゴマーの電解質物質とトリフロロメタンスルホン酸リチウム塩等の金属塩を混合したものである。この他、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウム、銀、銅、コバルト、亜鉛、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、フェニルアンモニウム等と、ハロゲン、過塩素酸、硝酸、硫酸、燐酸、ホウ酸等の無機酸やトリフロロメタンスルホンアミド、酢酸、トルエンスルホン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機酸とからなる塩が挙げられる。
【0039】
混合には、電解質の中を、先の塩のカチオン、アニオンが移動できる状態にするため、共役ポリマーと電解質とが相をなし、セルの大きさが10〜100nm程度の網状に形成するため、トルエン、ピルジン、アセトニトリル、オクチルシアノアセテート、シクロヘキサノン、アルコール類、水等の単体或いは混合溶媒にて溶解混合されるが、溶媒と電解質、溶媒と共役ポリマー及び電解質と共役ポリマーの相溶性が重要である。
【0040】
透明電極10とベース電極14とに直流の3〜6Vの電圧を印加すると、塩のカチオン、アニオンはそれぞれ陰極と陽極に移動し、近傍の共役ポリマーを電気化学ドーピングする。その結果、P型及びN型半導体を電気化学的にバランスよく生成し、共役ポリマーに電子或いは正孔を効率よく供給することになり、発光する(例えば、WO96/00968)。
【0041】
このように、LECは構造がシンプルかつ、膜厚制御が容易で、低消費電力であるという特徴がある。
【0042】
表示部2に、発光体層13自体の発光色を使うこともできるが、発光体層13と透明電極10の間は透明電極10を支持する基体上に設けられた透明着色層15、或いは発光体層13に接する透明電極10を着色した着色透明電極10aによって、発光色以外の所望の色を選択することができる。透明着色層15は、カラーフィルターに用いられるアゾ顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、アリザリンレーキ等のような所望波長の透過をする色素や、ベンゾピラノン、キノリジン、エチルピリジニウムパークロレート、エチルベンズオキサゾリウムパークロレート誘導体等の色変換色素を用い、波長そのものを変換するものが使用できる。色変換は、エネルギーの高い短波長の低い長波長に変換することが効率がよい。
【0043】
次に、実施の形態1に係る押釦スイッチ用部材1の製造方法について説明する。
【0044】
まず、平らな透明絶縁性フィルム9を一番下にして、この透明絶縁性フィルム9のキートップ部3が位置する箇所に、キートップ部3の天面の幅とほぼ等しい帯状の透明電極10を形成し、この透明電極10の上からキートップ部3の天面部に該当する箇所を中心にして遮光性及び絶縁性を有する不透明着色インクによるネガ印刷を行うことで、キートップ部3の裏面部を除いた押釦スイッチ用部材1の外周表面を覆うに十分な大きさの不透明着色層11を形成する。この際、不透明着色層11のキートップ部3の天面部が位置する箇所には、スイッチ機能を表示した表示部2の模様部の形状を象った抜き型部12を形成しておく。
【0045】
次に、不透明着色層11の上には、抜き型部12を含めたキートップ部3の天面部の大きさより僅かに小さな大きさに発光材料を印刷して発光体層13を形成する。これにより、抜き型部12には発光体層13が充填される。さらに、発光体層13の上に発光体層13とほぼ同じ大きさのベース電極14を形成して、発光体層13が不透明着色層11の抜き型部12に留まるようにすることで、賦形加工前の印刷済みシート(図示せず)が完成する。
【0046】
表示部2の模様部と地部及び不透明着色層11等の形成は、通常の透明、不透明インクをスクリーン印刷、インクジェット印刷、熱転写印刷、グラビア印刷、吹き付け塗装、ディップコーティング、スピンコーティング、蒸着等の手法を用いて行えばよい。また、印刷基体の色をそのまま利用することもできる。
【0047】
次に、前述した賦形加工前の印刷済みシートを圧空・真空成形やプレス成形等により所望のキートップ部3の形状に合わせた賦形加工を行い、キートップ部3の芯材22が設けられる凹部を有する賦形シートを作成する。このとき、透明電極10とベース電極14の抵抗値が大きく変化しないように、透明電極10の屈曲部は十分な丸みを確保することが必要である。
【0048】
次に、賦形加工によって成形された賦形シートの凹部にベース電極14に接して酸素吸収層18とこの酸素吸収層18に接する吸湿層17とを形成した後、その上から芯材22となる熱硬化性樹脂を注入して金型内で硬化させる。その後、キートップ部3の押圧突部8の先端に導電性インクを塗布することで可動接点7を形成して実施の形態1に係る押釦スイッチ用部材1が完成する。
【0049】
透明電極10としては、所望形状になった透明絶縁性成形体、例えばアクリル樹脂を射出成形したもの等に、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛等のセラッミクを電子ビーム蒸着、イオンプレーティング、スパッタリング等の手法で透明導電層を形成することができる。又は、セラミックの微粒子を透明絶縁性樹脂溶液に混合した透明導電性インクをスクリーン印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング等一般的な印刷塗布方法によって、形成することができる。或いは、前記したセラミックの微粒子を透明絶縁性樹脂に混合した樹脂コンパウンドを直接成形したものであっても構わない。おおよそ、その表面抵抗は10〜3000Ω/□で、光線透過率は50〜90%である。
【0050】
予め所望形状に成形された成形体(芯材)上に透明電極10を形成することも可能であるが、工業的利用上の便宜からは膜厚の制御等を考慮すると、予め透明絶縁性フィルム9上に透明導電層を設けることが好ましく、厚みが25〜500μm程度のポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアクリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフロロエチレンプロピレン、ポリクロロトリフロロエチレン、ポリビニリデン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミド、ポリアリレート、或いはスチレン系、ポリエステル系、ポリアミド系熱可塑エラストマーや、それらの共重合物、アロイ等の変性物の他、数種のフィルムをラミネーションした複層品等が使用できる。
【0051】
透明絶縁性フィルム9が後述する加工法により延伸されると、透明導電層である透明電極10も合わせて延伸されることから、導電性が低下するが、透明絶縁性フィルム9と同じ樹脂をバインダーとした透明導電性インクは、密着性又は加工特性が近いために好ましい。さらに、導電性フィラーを分散させた透明導電性インクは導電性フィラーの連鎖により導電性をもたらすが、延伸率が50%以上の成形体に対しては、容易に連鎖が壊れやすいため、そのもの自体が導電性である導電性ポリマーは非常に好都合である。
【0052】
これら導電性ポリマーは、ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリフェニレンビニレン、ポリセレノフェン、ポリアズレン、ポリピレン、ポリカルバゾール、ポリピリダジン、ポリナフチレン、ポリフルオレンやそれらのアルキル化やアルコキシル化等の置換基を導入したポリエチレンジオキシチオフェン、ポリチエニレンビニレン、ポリ(3メチルチオフェン)、ポリ(3,4−ジメチルチオフェン)、ポリ(3−チオフェン−β−エタンスルフォネール)、ポリメチルピロール、ポリ(3へキシルピロール)、ポリ(3−メチル−4−ピロールカルボン酸メチル)、ポリシアノフェニレンビニレン、ポリジメトキシフェニレンビニレン誘導体、或いはポリイソプレン変成物等の共役系導電性ポリマーが挙げられる。
【0053】
このうち、ドーパントの影響もあるが、酸素や湿度に安定性が高く、透明性があり導電性が高い、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン誘導体が好ましい。
【0054】
導電性ポリマー単体では、十分な抵抗を得ることができないため、ドーピングする必要があり、アクセプターとしてヨウ素、臭素等のハロゲン、PF5、AsF5、BF3等のルイス酸、HF、HCl、H2SO4等のプロトン酸やパラトルエンスルホン酸、パラメトキシエチルトルエンスルホン酸等の有機酸、FeCl3、TiCl4等の遷移金属化合物、テトラシアノジメタン、テトラシアノテトラアザナフタレン、クロラニル等の有機物質或いはドナーとしてのLi、Na、K等のアルカリ金属、Ca、Sr、Ba等のアルカリ金属土類等が挙げられる。
【0055】
湿度、温度による安定性を高めるため、脱ドープには注意が必要で、電解質アニオン、カチオンは避ける方がよく、導電性ポリマーとの配位結合や共重合等は固定に対し有効な方法である。特に、ドーパントをAB2型のモノマーを出発原料とし、中心核分子から順次結合させて合成されたデンドリマーやポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン等のオリゴマー、ポリマー或いはフラーレン分子を官能基に導入し、これを担持することは簡便であり、透明絶縁性成形体やフィルムへの密着性が高まることから、特に望ましい。また、このような担体を中心に多官能となったドーパントは、導電的には、導電性ポリマー分子間をブリッジさせ、安定化し抵抗を下げることにもなるため、非常に有用である。導電性ポリマーが封止された状態では脱ドープの影響は非常に小さくなるので、成形体中に収めるようにする方がよい。
【0056】
さらに、導電性を低下させるためには、導電性ポリマーを延伸し、導電性ポリマーの分子間距離を縮めることは有用で、賦形時の延伸を利用することができる。
【0057】
導電性ポリマーは、その前駆体モノマーを酸化剤や触媒を用いて重合する化学的重合法、非共役ポリマーからなる中間体を熱処理して得る方法、或いは芳香族化合物をモノマーとして電気化学的に酸化又は還元して重合する電解重合法等があるが、これに限定されるものではない。
【0058】
透明絶縁性フィルム9上には、導電性ポリマーの低分子品を蒸着等で設けるか、水或いは溶剤に溶解した状態又は分散したエマルジョン状態で、一般的な印刷塗布方法で形成することができる。その膜厚は、おおよそ0.1〜25μm程度である。導電性ポリマーの場合は膜厚と抵抗は非オーミックである場合が多く、厚くしても、それに見合った抵抗減少が得られない場合が多く、光線透過率が悪くなるだけである。そのため、前もって必要な厚みを決定しておく必要がある。
【0059】
必要であれば、不透明な電極上にそれ自体が発光する表示部2を設け、さらに前述した手法で透明導電層を形成し、保護のためオーバーコート層16を設けることも可能であるが、湿度等に敏感な発光体層13を保護するためには十分な性能を有するコートを施す必要があり、例えば透湿度の低い樹脂を厚く設けることが望まれる。
【0060】
透明絶縁性フィルム9の裏面に透明電極(透明導電層)10を使用する場合は、透明絶縁性フィルム9を外側にすると、連続した透明絶縁性フィルム9で表示部2を保護することができ、簡便で有用性が高い。例えば、発光色をそのまま利用する場合、透明絶縁性フィルム9、不透明着色層11、透明電極(透明導電層)10、発光体層13の順に設けることにより達成される。
【0061】
発光色以外の色を利用する場合は、透明絶縁性フィルム9、不透明着色層11、着色透明電極10a、発光体層13の順で設けること等により達成される。着色透明電極10aは、導電性ポリマー又は透明導電性インクのバインダーに有機色素を少量加えて作ることができる。
【0062】
エルゴノミックデザインから、複雑な3次元構造のデザインが要求され、押釦スイッチ用部材1は真空成形、ブロー成形、プレス成形等の成形方法によって賦形される。成形体の形状はおおよそ、キーピッチが5〜30mm、キートップ部3の大きさが3〜20mmの断面を有する四角柱又は円柱、キートップ部3の高さは2〜15mmである。キートップ部3の天面部も曲率を持つものが多いが、発光する表示部に過大な変形応力を加えることは避けるべきである。
【0063】
表示部2はキートップ部3の天面部近傍にあり、キートップ部3以外の押釦スイッチ用部材1の部分は、固定基板5に載置又は貼付されるため、平面形状をしている。
【0064】
賦形時には、特にはキートップ部3の側面が延伸されるため、透明絶縁性フィルム9、透明電極(透明導電層)10はこれに適した材料でなければならず、破断や抵抗上昇の無いものが選ばれる。導電性ポリマーはこれに適した材料であり、特に延伸率が高い表示部2の周囲の導電性ポリマーを厚く形成し、抵抗上昇を抑えることができる。表示部2の背景部(地部)又はキートップ部3の側面が不透明の場合は、後述する導電性インクによって補うことも可能である。しかし、100%を超えるような過度の延伸が行われた時は、抵抗が約10倍上昇する恐れがある。この場合、導電性ポリマーに線径が0.5μm以下の微細な導電性繊維を混合することにより、導電性を維持することができる。この場合の導電性繊維のアスペクト比は、10以上望ましくは20以上、さらに望ましくは50以上がよい。
【0065】
ポリアクリロニトリル系等のカーボンファイバーを裂いたもの、酸化亜鉛、チタン酸カリウム等のセラミックスウィスカーにカーボンコート又は銀メッキを施したもの等が挙げられるが、柔軟なものがよく、アクリル、レーヨン、ポリエステル、フェノール等の合成繊維に銀メッキ等を施したもの、或いはシングルウォールナノチューブ、マルチウォールナノチューブ等が挙げられ、ナノチューブは線径が0.2μm以下の導電性繊維で非常に都合がよい。 配合量は所望の抵抗値によって決定されるが、0.1〜20wt%である。径が細いほど及び配合量が少ないほど透明性が高いことはいうまでもない。
【0066】
この透明電極10と対向するベース電極14は、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の金属又は合金、或いはタングステンカーバイト、炭化珪素、酸化スズ、酸化インジウム等のセラミックスを蒸着膜で、又はフラーレンを光重合、電子線照射重合、プラズマ重合、電解重合等で形成できる。これら微粒子の他、カーボンブラック、グラファイト等の導電性フィラーをエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂等の絶縁性樹脂溶液に混合した導電性インクによっても形成できる。
【0067】
透明電極10と同様に、延伸による抵抗変化を抑えるため、絶縁性樹脂からなるバインダーを延性のあるポリアミド、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等の分子量の大きな熱可塑性樹脂とすることは延伸性が高くなるので好ましい。さらに、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂を塑性流動状態で成形することは、バインダーを延伸して導電粒子の連鎖を破壊することがないのでより好ましい。熱可塑性樹脂の場合は、80〜150℃程度の低温で塑性状態となる融点、軟化点を有するものがよい。或いは、少量の溶剤、可塑剤を加え必要ならば、賦形後乾燥させる。熱硬化樹脂の場合は未硬化状態のものを用い、賦形後硬化させる。粘度調整、流れ調整のため、必要であれば熱可塑性樹脂と混合しても構わない。
【0068】
絶縁性樹脂を導電性ポリマーとした場合は、バインダー自体も導電性となることから導電性フィラーの連鎖が壊れても導通を維持することができるので使用することも可能で、さらに、導電性繊維又は可撓性のあるカーボンナノチューブを混合した場合は、バイパス効果で抵抗を下げ維持することができるので、好ましい。
【0069】
透明電極10とベース電極14との2つの対向電極は抵抗の観点から、全面に渡り設けても構わないが、発光体層13、透明着色層15、不透明着色層11又はその他の絶縁層によって、絶縁する必要がある。この時、成形体の基体樹脂と同じ材質を使うことは、密着性、延伸性の点から好ましい。これとは別に、表示部2を部分的に設ける場合は、通常のリソグラフィー法又はアディティブ法により形成することができ、非導電性ポリマー部分に導電性インクによる形成層を設けると、両者を絶縁する必要が無く、簡便で好ましい。複数の表示部2を選択して発光する時等、回路パターンが複雑になり、交差する場合は、ジャンパー等を設け対処する等、一般的な回路基板等の形成時に用いられる配線ルールを活用することも可能である。
【0070】
押釦スイッチ用部材1への給電は、キートップ部3以外の部分にベース電極14の電極端子及び透明電極10の電極端子を設け、載置する回路基板5にそれと対向する位置にある電極端子とを、直接接触させ、必要ならば弾性体により押圧する方法や、キートップ部3の賦形時に同時に電極端子部分を加工し突起を設ける方法、或いは導電弾性体を介する方法が簡便であるが、カードエッジコネクターを用いる方法や、絶縁性接着剤に導電粒子を分散させた異方導電性接着剤等で接合する方法も選択できる。いずれにしろ、ベース電極14の電極端子及び前記透明電極10の電極端子を押釦スイッチ用部材1のキートップ部3以外の部分に設けることで、表示部2を含めたキートップ部3のデザインの自由度を高めることに寄与している。
【0071】
発光体層13の寿命は、湿度や酸素により影響されるため、成形体は有機材料でできている場合が多くガス透過があり、特別な配慮が必要である。それらの性能は水蒸気透過率が3(g/m2/24H、40℃、JIS7129K)以下、酸素透過率が1(cc/m2/24H/atm、0%RH、JIS7126K)以下が必要で、発光体層13の寿命が500H以上であることが必要である。水分や酸素のバリア層としては、発光する意匠パターンを形成した成型体又はその中間材料、例えば、透明絶縁性フィルム上に酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムその他の無機酸化物を真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理気相成長法、或いはプラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、光化学気相成長法等の化学気相成長法を用いて形成できる。または、ダイヤモンド状の硬質炭素膜をプラズマCVD法或いはイオン化蒸着法で形成することができる。
【0072】
必要ならば、予めコロナ放電処理、グロー放電処理等により粗面化したり、アルコール系、ウレタン系、エステル系のアンカーコート剤を用いることも可能である。無機酸化物を形成する場合、酸化剤としての酸素が膜中に残り易くなるため、完全酸化させず、少な目の酸素で低酸化し、後ほど不活性ガスで希釈した酸素で完全化する方法は緻密な膜形成に有効的である。或いは、メチルシラノールの単量体又は多量体のアルコール溶液を、アミノシラノールを触媒とし塗布乾燥させ、必要ならばアンカーコート剤を用いて、成形することができる。或いは、アルコキシシランの加水重合物溶液を、酸又はアルカリを触媒として微粒子を含むゾル状態を作り、熟成しゲル状態を経由した後、加熱するゾルゲルコーティング法も用いることができる。
【0073】
ゾルゲル法では、一部有機基が残存するため、溶剤可溶なパーヒドロポリシラザンを大気中で加熱し酸化珪素に転化すると、有機基がなく緻密な膜が形成されるので非常に有効である。ポリシラザンを気相又は液相で付着させ、室温から120℃程度の温度で数分加熱し、大気中に放置することによって処理することができる。ポリシラザン法は、真空操作の工程が無く、簡便に緻密な酸化物層を形成することが良いので好ましい。
【0074】
緻密な無機酸化物層はガス透過を抑制することができるが、無機化した表面は水分を呼び易いため、さらに表面を有機化することが望ましい。メチルシラノールを用いた場合は、表面にメチル基が向くため有効である。その他無機酸化物表面にクロロプロピルトリメトキシシランやメルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等或いはクロロシランやアルコキシシランで有機化することが好ましい。ダイヤモンド状の硬質炭素膜の場合は、表面が炭素と水素とからなっており、撥水性が高く好ましい。
【0075】
真空成形等で形成された押釦スイッチ用部材1は、予め中空のポケット部を設けておき、ここに成形後、熱硬化性液状樹脂等を注入し、表示部2を封止し、金型により所望の形状に整え、芯材22を形成する。この際、ポリアミド樹脂等の吸湿性の成形品やフィルム或いはシリカゲル、ゼオライト、酸化バリウム等の乾燥剤を封入し、表示部2が吸湿するのを防ぐ吸湿層17を設けることは好ましい。また、鉄粉、ビタミンC、カテコール等の酸素吸収剤の他、ポリメチルフェニルシラン等のポリシランは酸素透過性がよくかつ多くの酸素を吸収できることから効率がよく、これらの酸素吸収層18を設けることは特に好ましい。
【0076】
[発明の実施の形態2]
図2は、この発明の実施の形態2に係る押釦スイッチ用部材を示している。
【0077】
図2に示した実施の形態2に係る押釦スイッチ用部材1は、文字、符号又は図柄等による表示部2をキートップ部3の中間部に設けたものであって、表示部2に自発光する面発光体4を採用したものである。
【0078】
実施の形態2に係る押釦スイッチ用部材1には、回路基板5上の固定接点6の配置に合わせてこの固定接点6と対向する位置に可動接点7を配するように弾性変形可能なドーム部23の内面に可動接点7を設けた接点シート部材24と、この接点シート部材24のドーム部23の中央部を押圧できる押圧突部8を有したキートップ部3が一体に形成されている。
【0079】
そこで、透明絶縁性フィルム9の表面には、所望のキートップ形状に成形された第1樹脂成形体19が一体に設けられており、透明絶縁性フィルム9の裏面には、透明電極10が設けられている。
【0080】
透明電極10に裏面には、キートップ部3の天面部に当たる箇所に透明な着色インクで表示部2の模様部を形成した透明着色層15が形成されている。表示部2はキートップ部3の天面部の一部分に形成されるが、透明着色層15の裏面及び透明着色層15の周囲の透明電極10の裏面には、発光材料からなる発光体層13が設けられている。また、発光体層13の裏面には銀ペーストによるべース電極14が設けられている。ベース電極14の裏面には、吸湿層17を介してキートップ部3の裏面中央部に当たる箇所に押圧突部8を設けた芯材である第2樹脂成形体20を一体に形成している。
【0081】
なお、実施の形態2における各部材の材料については、実施の形態1と同様であるため、実施の形態1の説明を参照のこと。
【0082】
次に、実施の形態2に係る押釦スイッチ用部材の製造方法について説明する。
【0083】
まず、透明絶縁性フィルム9の裏面のキートップ3が位置する箇所に、キートップ3の天面の幅とほぼ等しい帯状の透明電極10を形成し、この透明電極10の上に透明な着色インクで表示部2の模様部を形成する。次に、発光材料をキートップ3の裏面側の透明電極10及び表示部2の上に塗布して発光体層13を形成する。次に、発光体層13のキートップ3の裏面部中央に当たる箇所を除いて、遮光性及び絶縁性を有する絶縁性インクを発光体層13の外周部と透明電極10の上に塗布して不透明着色層11を形成する。発光体層13の上には対向電極としてベース電極14を印刷し、不透明着色層11の印刷エリア内に留める。
【0084】
次に、この印刷済みシートを圧空・真空成形やプレス成形等により所望の第2樹脂成形体20の形状に合わせた賦形加工を行い、キートップ部3の芯材となる第2樹脂成形体20が設けられる凹部を有する賦形シートを作成する。
【0085】
次に、賦形加工によって成形された賦形シートの凹部にベース電極14に接する吸湿層17を形成した後、その上から芯材となる熱硬化性樹脂を注入して中央部に押圧突部8を有する第2樹脂成形体20の形状を金型内で造形し硬化させる。
【0086】
その後、芯材である第2樹脂成形体20の押圧突部8の先端に導電性インクを塗布することで可動接点7を形成して第1樹脂成形体19を除いた状態の押釦スイッチ用部材1を完成する。
【0087】
次に、芯材である第2樹脂成形体20を形成した透明絶縁性フィルム9の対応する位置の表面側に、予め所望のキートップ形状に形成した芯材である第1樹脂成形体19を接着固定して、押釦スイッチ用部材1を完成する。
【0088】
実施の形態2にあっては、発光体層13が第1樹脂成形体19と第2樹脂成形体20との間に配置されキートップ部3の中間部の位置に設けられているため、発光体層13が外部雰囲気からより隔離された環境状態に保たれているため、酸素や湿度の影響受けることがなく長期に使用しても発光性能が低下することがない。
【0089】
[発明の実施の形態3]
図3は、この発明の実施の形態3に係る押釦スイッチ用部材を示している。
【0090】
図3に示した実施の形態3に係る押釦スイッチ用部材1は、文字、符号又は図柄等による表示部2をキートップ部3の中間部に設けたものであって、表示部2に自発光する面発光体4を採用したものである。
【0091】
実施の形態3に係る押釦スイッチ用部材1では、透明絶縁性フィルム9は平坦な状態にあり、その表面には所望のキートップの形状に成形された第1樹脂成形体19が一体に設けられており、透明絶縁性フィルム9の裏面には、透明電極10が設けられている。透明絶縁性フィルム9と第1樹脂成形体19との間には、透明な酸素吸収層18が形成されている。
【0092】
透明電極10に裏面には、キートップ部3の天面部に当たる箇所に透明な着色インクで表示部2の模様部を形成した透明着色層15が形成されている。表示部2はキートップ部3の天面部の一部分に形成されるが、透明着色層15の裏面及び透明着色層15の周囲の透明電極10の裏面には、発光材料からなる発光体層13が設けられている。そして、発光体層13の側面部と透明電極10の裏面には、遮光性及び絶縁性を有する不透明着色層11が設けられている。また、発光体層13の裏面及び不透明着色層11の端面を覆うようにして銀ペーストによるべース電極14が設けられている。ベース電極14の裏面には、キートップ部3の裏面中央部に当たる箇所に押圧突部8を設けた芯材である第2樹脂成形体20を一体に形成している。ベース電極14と第2樹脂成形体20との間には、吸湿層17が形成されている。
【0093】
なお、実施の形態3における各部材の材料及び説明のない他の部材については、実施の形態1又は2と同様であるため、同一の構成には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0094】
次に、実施の形態3に係る押釦スイッチ用部材の製造方法について説明する。
【0095】
まず、透明絶縁性フィルム9の裏面の芯材である第2樹脂成形体20が位置する箇所に、第1樹脂成形体19の天面の幅とほぼ等しい帯状の透明電極10を形成し、この透明電極10の上に透明な着色インクで表示部2の模様部を形成する。次に、発光材料をキートップ3の裏面側の透明電極10及び表示部2の上に塗布して発光体層13を形成する。次に、遮光性及び絶縁性を有する絶縁性インクを発光体層13の外周部と透明電極10の上に塗布して不透明着色層11を形成する。発光体層13の裏面には、対向電極としてベース電極14を印刷し、不透明着色層11の印刷エリア内に留める。ベース電極14の裏面には、吸湿層17を介して中央部に押圧突部8を設けた芯材である第2樹脂成形体20を一体に形成する。
【0096】
次に、芯材である第2樹脂成形体20を形成した透明絶縁性フィルム9の対応する位置の表面側に、予め所望のキートップの形状に形成し、透明絶縁性フィルム9と接する部分に酸素吸収層18を設けた芯材である第1樹脂成形体19を接着固定して、押釦スイッチ用部材1を完成する。
【0097】
実施の形態3にあっては、発光体層13が第1樹脂成形体19と第2樹脂成形体20との間に配置されキートップ部3の中間部の位置に設けられているため、発光体層13が外部雰囲気からより隔離された環境状態に保たれているため、酸素や湿度の影響受けることがなく長期に使用しても発光性能が低下することがない。また、透明絶縁性フィルム9、透明電極10、不透明着色層11及びベース電極14が平坦な状態のままであるので、キートップ部3の賦形加工が不要であるため、透明電極10及びベース電極14の導電性の劣化が生じることがない。
【0098】
ところで、実施の形態1乃至実施の形態3にも種々の表示部2のデザインが考えられが、その代表的なものを図4乃至図13に示した。
【0099】
図4に示した表示部2の第1の態様は、上から順番に無機酸化物層21、透明絶縁性フィルム9、透明電極10、抜き型部12を有する不透明着色層11、抜き型部12を埋める透明着色層15、発光体層13及びベース電極14を有している。ここで、透明着色層15が模様部を形成し、不透明着色層11が地部を形成している。
【0100】
図5に示した表示部2の第2の態様は、上から順番に無機酸化物層21、透明絶縁性フィルム9、透明電極10、模様部を形成する不透明着色層11、地部を構成する透明着色層15、発光体層13及びベース電極14を有している。
【0101】
図6に示した表示部2の第3の態様は、上から順番に無機酸化物層21、透明絶縁性フィルム9、透明電極10、抜き型部12を有する地部を構成する不透明着色層11、抜き型部12を埋めて模様部を形成する発光体層13及びベース電極14を有している。
【0102】
図7に示した表示部2の第4の態様は、上から順番に無機酸化物層21、透明絶縁性フィルム9、透明電極10、模様部を形成する透明着色層15と地部を形成する第2透明着色層15a、発光体層13及びベース電極14を有している。
【0103】
図8に示した表示部2の第5の態様は、上から順番に無機酸化物層21、透明絶縁性フィルム9、抜き型部12を有する地部を構成する不透明着色層11、抜き型部12に入り込み模様部を形成する着色透明電極10a、着色透明電極10aを介して抜き型部12を埋める発光体層13及びベース電極14を有している。
【0104】
図9に示した表示部2の第6の態様は、上から順番に無機酸化物層21、透明絶縁性フィルム9、模様部を形成する透明着色層15と地部を形成する不透明着色層11、透明電極10、発光体層13及びベース電極14を有している。
【0105】
図10に示した表示部2の第7の態様は、上から順番に無機酸化物層21、透明絶縁性フィルム9、模様部を構成する不透明着色層11、不透明着色層11の外周を覆い地部を構成する着色透明電極10a、発光体層13及びベース電極14を有している。
【0106】
図11に示した表示部2の第8の態様は、上から順番に無機酸化物層21、透明絶縁性フィルム9、模様部を構成する不透明着色層11と地部を構成する透明着色層15、透明電極10、発光体層13及びベース電極14を有している。
【0107】
図12に示した表示部2の第9の態様は、上から順番にキートップ部3を被覆する無機酸化物層21、芯材である第1樹脂成形体19、オーバーコート層16(透明絶縁層)、型抜き部12を有し地部を構成する不透明着色層11、模様部を構成する透明電極10、発光体層13、ベース電極14及び不透明絶縁性基礎体22を有している。
【0108】
図13に示した表示部2の第10の態様は、上から順番にキートップ部3を被覆する無機酸化物層21、芯材である第1樹脂成形体19、オーバーコート層16(透明絶縁層)、型抜き部12を有し地部を構成する不透明着色層11、模様部を構成する透明着色層15、透明絶縁性フィルム9、透明電極10、発光体層13及びベース電極14を有している。
【0109】
このうち、図4、図6、図7、図8、図9、図12及び図13に示したものは、文字、符号又は図柄等からなる模様部が発光するものであり、図5、図10及び図11に示したものは、文字、符号又は図柄等以外の地部が発光するものである。また、図8と図10に示したものは、透明電極10を着色して透明着色電極10aとしたものであり、この場合には透明着色層15を使用しなくてよいため、製造工程が簡単となり製造コストが低減できる。
【0110】
なお、透明着色層15と不透明着色層11とは、軟質の樹脂やエラストマーをバインダーにし、染料や顔料を混合したもので、透明絶縁性フィルム9に密着し、同じく延伸性のあるものがよく、透明絶縁性フィルム9と同様に樹脂を用いることが好ましい。
【0111】
【実施例】
[実施例1]
実施例1は、この発明の実施の形態1に対応するものである。
【0112】
まず、100μmのポリメチルメタクリレート(アクリプレン、三菱レーヨン(株)製)の片面にスルホン化ポリスチレンをドーピングしたポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(デナトロン4001、長瀬産業(株)製)溶液にその固形分に対し3%のマルチウォールナノチューブ(線径0.01μm、平均線長5μ、ハイペリオン社製)をホモジナイザーを用い分散させ透明な処理液を得た。
【0113】
処理液をフィルムの片面にグラビアコーターにより全面塗布し、1μm厚の透明電極を形成した。このものの全光線透過率70%(JIS−K7105)で、表面抵抗500Ω/□(JIS−K6911)であった。不透明着色層11を遮蔽性のある絶縁性で黒色の着色インクで表示部2の地部をスクリーン印刷で、表示部2及びベース電極14の端子部を除き全面に塗布した。ポリ(2−メトキシ−5−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレンとポリエチレンオキサイドとトリフロロメタンスルホン酸リチウム塩とシクロヘキサノンとエチルアルコールからなるLECインクを地部の開口部分最小限に同様に印刷で18μmの発光体層13を、ついで銀ペースト(ドーデントNH−030A、熱可塑性ポリアミドバインダー、ニホンハンダ(株)製)で発光体層13上に対向電極となるベース電極14とそれに繋がる端子電極を不透明着色層11に設けた。この印刷工程終了後、真空乾燥装置でよく乾燥させ印刷フィルムを得た。
【0114】
直径12mm、深さ78mm、底面R50mmの凹曲面を有する12個のキャビティーを有する金型と、これにより型取りした硬度90度(ショアーA)の弾性体からなる雄型を用い、表示部に断熱のため直径8mmの金属片を置き、赤外線により110℃に加熱し、金属片を取り去り直ちに、印刷フィルムを冷間で圧縮成形した。
【0115】
雄型を取り除いた後、芯材22として酸化バリウム粉末を混合したポリメチルフェニルシランと液状エポキシ樹脂を必要量注型し、図1に示す断面形状を有する第2の雄型により、芯材22に押圧突部8を成形した。
【0116】
次に、電極端子をマスクし、酸素雰囲気中でアルミニウムをイオンプレーティング法により処理し、成形体表面に酸化アルミニウムを形成し、トリメトキシシランを気相法により付着形成し、押釦スイッチ用部材1を得た。
【0117】
押釦スイッチ用部材1の電極端子と回路基板5上の電極端子とを合わせて載置し、発光体層13に直流6Vを印加すると表示部2は全て発光を呈し、輝度は62ニトで、半減期は1225Hであった。
【0118】
[実施例2]
実施例2は、この発明の実施の形態1に対応するものである。
【0119】
まず、100μmのポリメチルメタクリレート(アクリプレン、三菱レーヨン(株)製)の片面にポリアニリンにその構造単位の1/6モルのスルホン化デンドリマー(DSM社のジアミノブタンとシアノエチレンを出発物質としたデンドリマー商品名DAB(PA)8の1モルに、ベンゼンスルホン酸8モルを反応させたもの)を混合したDMF溶液に、その固形分に対し3%のマルチウォールナノチューブ(線径0.01μm、平均線長5μ、ハイペリオン社製、)とアゾ染料(パーマネントレッド4R、山陽色素(株)製)を固形分に対して0.1wt%添加し、ホモジナイザーを用い分散させ透明な赤色の処理液を得た。
【0120】
処理液をフィルムの片面にグラビアコーターにより全面塗布し、1μm厚の赤い透明電極10を形成した。さらに、着色されていない導電性ポリマー溶液を表示部2の周囲に1μmスクリーン印刷により塗布した。このものの全光線透過率は72%(JIS−K7105)で、表面抵抗は600Ω/□(JIS−K6911)であった。不透明着色層11を遮蔽性及び絶縁性のある黒色の着色インクで表示部2の地部をスクリーン印刷で、表示部2及びベース電極14の電極端子部を除き全面に塗布した。ポリ(2−メトキシ−5−エチルヘキシルオキシ)−1,4−フェニレンビニレンとポリ(9,9−ジ−n−ヘキシルフオレニル−2,7′−ジイル)とポリエチレンオキサイドとトリフロロメタンスルホン酸リチウム塩とシクロヘキサノンとエチルアルコールからなるLECインクを地部の開口部分最小限に同様に印刷で20μmの発光体層13を形成した。
【0121】
次に、ビニル基0.15モル%含むポリジメチルシロキサン(KE−78VBS、信越化学工業(株)製)に銀粉末(シルコート、福田金属箔粉工業(株)製)を固形分に対し75wt%含むケロシン溶液からなる導電性インキで、発光体層13上に厚み50μmの対向電極とそれに繋がる電極端子を不透明着色層11に設けた。この印刷工程終了後、60℃の真空乾燥装置でよく乾燥させ印刷フィルムを得た。
【0122】
実施例1と同様の金型で圧縮成形を行い、キートップ部3を賦形すると、この未加硫シリコーンゴムからなる導電性インキも透明絶縁性フィルム9の延伸とともに流動し、賦形させた。
【0123】
芯材22として合成ゼオライト粉末と鉄粉とベンゾイルパーオキサイドを混合したビニルエステル樹脂(デラーケン411、ダウケミカル(株)製)を約0.3cc注型し、120℃でシリコーンゴムと共に反応させ、60℃の真空乾燥装置でよく乾燥させた。さらに、ベンゾイルパーオキサイドを含むビニルエステル樹脂を必要量注型し、図1に示す断面形状を有する第2の雄型により、芯材22に押圧突部8を成形した。
【0124】
電極端子をマスクし、ポリシラザン蒸気に25℃5分間あて、気相法で付着さ、一昼夜、25℃50%RHの層に保存して緻密な酸化ケイ素に転化させた。さらに、この成形体をメルカプトプロピルトリメトキシシランのアルコール溶液(固形分1wt%)に漬け、直ちに乾燥させ、押釦スイッチ用部材1を得た。
【0125】
押釦スイッチ用部材1の電極端子と回路基板5上の電極端子とを合わせて載置し、発光体層13に直流6Vを印加すると表示部2は全て発光を呈し、輝度は60ニトで半減期は1360Hであった。
【0126】
[実施例3]
実施例3は、この発明の実施の形態2に対応するものである。
【0127】
まず、250μmのポリエチレンテレフタレート(ルミラー、東レ(株)製)の片面にインジウム錫酸化物を、一方に酸化ケイ素をイオンプレーティング法により、透明電極10と無機酸化物層21をそれぞれ全面に形成した。このものの全光線透過率は80%(JIS−K7105)で、表面抵抗は100Ω/□(JIS−K6911)であった。
【0128】
熱可塑性ポリエステル(スタフィックスPLC、富士写真フィルム工業(株)製、)に色変換色素としてキノリジン誘導体(NKX−1768、感光色素研究所(株)製)を混合し、透明着色層用のインクを調整した。透明電極10上に、スクリーン印刷により透明着色層15を印刷した。
【0129】
次いで、ポリ[9−(3,6,9−トリオキサデシル)−カルバゾール−3,6−ジイル]とオキシエチレンシクロトリスホスファゼンとトルエンスルホン酸ナトリウム塩とピリジンとからなるLECインクで、透明着色層15を覆うようにインクジェット印刷で1.5μmの発光体層13を形成した。
【0130】
次に、実施例1と同様の黒色インクで、発光体層13の中央部と電極端子を除く部分にスクリーン印刷で絶縁層を形成し、真空乾燥装置でよく乾燥させ印刷フィルムを得た。電極端子部分をマスクし、アルミニウムを蒸着し、さらにその上にカーボンインクからなる導電層を形成した。
【0131】
図2に示すものと同じ断面形状を有する雄型により、芯材である第2樹脂成形体20に押圧突部8を成形し、さらにアクリル樹脂からなるキートップ部3を二液性アクリル接着剤で貼着し、押釦スイッチ用部材1を得た。
【0132】
押釦スイッチ用部材1の電極端子と回路基板5上の電極端子とを合わせて載置し、発光体層13に直流5Vを印加すると表示部2は全て発光を呈し、輝度は75ニトで、半減期は1300Hであった。
【0133】
[実施例4]
実施例4は、この発明の実施の形態3に対応するものである。
【0134】
まず、透明絶縁性フィルム9として、両面プラズマ処理を施した100μmのポリプロピレンフィルムの両面に15μmのエチレンビニルアルコールコポリマーフィルムをラミネートした。緑色の不透明着色インクで表示部2の地部をスクリーン印刷で、表示部2を除き全面に塗布した。その上に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)の構造単位の1/6モルのスルホン化フラーレン(C60及びC70の混合フラーレン、MER社製)と発煙硫酸を反応させたドーパント)を含むポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)溶液をインクジェット印刷により表示部2とそれに繋がる電極端子を形成した。さらに、実施例1で使用した銀ペーストを表示部2の周囲から電極端子部まで、この形成されたポリチオフェン層を覆うように5μmのベース電極14を印刷した。透明電極10の全光線透過率は65%(JIS−K7105)で、表面抵抗は500Ω/□(JIS−K6911)であった
ポリ(p−フェニレン−2,6−ベンゾイミダゾール)とポリエチレンオキサイドとトルエンスルホン酸リチウム塩とからなるLEC用インクを同様にインクジェット印刷により、透明電極10を覆うように、厚さ2.0μmの発光体層13を形成した。次いで、融点86℃の熱可塑性ポリエステル(バイロンGV100、東洋紡(株)製)と銀粉末を混合した導電性インクで、発光体層13のベース電極14とそれに繋がる電極端子を、キートップ部3の表示部2の形成層から離して形成した。この印刷工程終了後、真空乾燥装置でよく乾燥させ印刷フィルムを得た。
【0135】
3mm×5mm、深さ1mmの底面が平坦な有する15個のキャビティーを有する雌型と2.8mm×4.8mm、高さ0.9mmの天面が平坦な形状を有する雄型を用い、表示部2に断熱のため2.6mm×4.6mmの金属片を置き、赤外線により120℃に加熱し、金属片を取り去り直ちに、印刷フィルムを冷間で圧縮成形を行った。キートップ部3を賦形すると、熱可塑性ポリエステルからなる導電性インキも透明絶縁性フィルム9の延伸とともに流動し、賦形された。
【0136】
雄型を取り除いた後、酸素除去剤として50wt%の鉄粉を含む液状エポキシ樹脂を必要量注型し、図3に示すものと同じ断面形状を有する第2の雄型により、芯材である第2樹脂成形体20に押圧突部8を成形した。さらに、アクリル樹脂からなるキートップ部3を二液性アクリル接着剤で貼着した。得られた成形体の電極端子をマスクして、アミノシラノールを触媒とするフェニルシラノール溶液にディップし直ちに40℃で乾燥、反応させ、成形体表面に2μm厚のシリカ層を形成し、均一な押釦スイッチ用部材1を得た。
【0137】
押釦スイッチ用部材1の電極端子と回路基板5上の電極端子とを合わせて載置し、発光体層13に直流4Vを印加すると表示部2は全て発光を呈し、輝度は65ニトで半減期は2300Hであった。
【0138】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1に記載された発明によれば、回路基板上の固定接点に対向して配置される可動接点を前記固定接点に接触させる方向に押圧するためのキートップ部と、該キートップ部を所定の位置に配して前記回路基板上に取り付けるためのカバー基材とを有し、前記キートップ部には、スイッチ機能を表示する表示部と、該表示部に一体の面発光体とを有する押釦スイッチ用部材であって、前記面発光体が電気化学発光体であるので、直流を印可することで表示部自体が電気化学発光し、デザイン的にも視認性がよく、低消費電力で、インバータ等の余分な部品、部材を必要としないことから、軽薄短小の構造が実現でき、しかも優れた経済性をもたらす押釦スイッチ用部材を提供することができる。
また、前記キートップ部は、芯材と該芯材を被覆する透明絶縁性フィルムとを有し、前記面発光体は、ベース電極と該ベース電極に対向する透明電極との間に発光体層を有し、前記ベース電極の電極端子及び前記透明電極の電極端子を前記キートップ部以外の部分まで延長して配置したので、表示部を含めたキートップ部のデザインの自由度が高まるため、押釦スイッチ用部材に対する多様なデザインのニーズに対応できる。
【0140】
請求項2に記載の発明によれば、ベース電極が導電性粒子と絶縁性樹脂とからなる導電性インクであるので、請求項1の効果に加え、ベース電極にキートップ部の賦形時に生じる引っ張り力が作用してもその延伸性により導電特性を維持することができるため、スイッチ機能の信頼性が高まる。
【0141】
請求項3に記載の発明によれば、透明電極は透明絶縁性基体に透明導電性ポリマー層を形成してなり、該透明電極上に接して発光層体が形成されているので、請求項1の効果に加え、透明電極にキートップ部の賦形時に生じる引っ張り力が作用してもその延伸性により導電特性を維持することができるため、スイッチ機能の信頼性が高まる。
【0142】
請求項4に記載の発明によれば、透明導電性ポリマー層が着色されているので、請求項3の効果に加え、表示部を構成する部材を少なくすることができるから製造コストを低減することができる。
【0143】
請求項5に記載の発明によれば、押釦スイッチ用部材の外周表面の少なくとも一部分に無機酸化物層が形成されているので、請求項1乃至4のいずれか1つの効果に加え、湿度や酸素の透過を抑制することができるため、発光体層の品質を良好に保つことができる。
【0144】
請求項6に記載の発明によれば、前記無機酸化物層の外表面にさらに有機物層を設けてなるので、請求項5の効果に加え、無機化した表面の吸水性を抑制することができるため、より発光体層の品質を良好に保つことができる。
【0145】
請求項7に記載の製造方法の発明によれば、無機酸化物層がポリシラザンを転化してなるものであるので、請求項5又は6の効果に加え、アルコキシ基等の有機基がなく緻密な膜が形成されるため、より一層発光体層の品質を良好に保つことができる。
【0146】
請求項8に記載の発明によれば、キートップ部の裏面部の心材と無機酸化物層の間に吸湿層を設けたので、請求項5乃至7のいずれか1つの効果に加え、湿度の透過を効果的に抑制できるため、発光体層の品質を良好に保つことができる。
【0147】
請求項9に記載の発明によれば、キートップ部の裏面部の心材と無機酸化物層の間に酸素吸収層を設けたので、請求項8に記載の効果に加え、酸素の透過を積極的に抑制できるため、より発光体層の品質を良好に保つことができる。
【0148】
請求項11に記載の発明によれば、ベース電極が導電性粒子と絶縁性樹脂とからなる導電性インクによって形成され、塑性流動状態で賦形したので、キートップ部の賦形時に該導電性インクに引っ張り力が作用することがほとんどなくなるため、ベース電極の導電性能が落ちることがない。
【0149】
請求項12に記載の発明によれば、発光体層、透明電極、ベース電極或いは表示部の模様部又は地部を構成する着色層のうち、少なくとも3種を平面状の透明絶縁性フィルム上に形成した後、キートップ部を賦形してなるので、従来の2次成形加工と異なりキートップ部の賦形時に押釦スイッチ用部材の構成部材に引っ張り力が作用することがほとんどなくなるため、ベース電極及び透明電極の導電性能が落ちることがなく、品質の高い照光機能を有する押釦スイッチ用部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る押釦スイッチ用部材を示した要部断面図である。
【図2】同実施の形態2に係る押釦スイッチ用部材を示した要部断面図である。
【図3】同実施の形態3に係る押釦スイッチ用部材を示した要部断面図である。
【図4】この発明に係る押釦スイッチ用部材の表示部の第1の態様を示した要部断面図である。
【図5】同表示部の第2の態様を示した要部断面図である。
【図6】同表示部の第3の態様を示した要部断面図である。
【図7】同表示部の第4の態様を示した要部断面図である。
【図8】同表示部の第5の態様を示した要部断面図である。
【図9】同表示部の第6の態様を示した要部断面図である。
【図10】同表示部の第7の態様を示した要部断面図である。
【図11】同表示部の第8の態様を示した要部断面図である。
【図12】同表示部の第9の態様を示した要部断面図である。
【図13】同表示部の第10の態様を示した要部断面図である。
【図14】従来の光源に発光ダイオードを使用した押釦スイッチ用部材の要部断面図である。
【図15】従来の光源に電球を使用した押釦スイッチ用部材の要部断面図である。
【図16】従来の導光部材を採用した押釦スイッチ用部材の要部断面図である。
【図17】従来の光源にELシートを使用した押釦スイッチ用部材の要部断面図である。
【符号の説明】
1 押釦スイッチ用部材
2 表示部
3 キートップ部
4 面発光体
5 回路基板
6 固定接点
7 可動接点
8 押圧突部
9 透明絶縁性フィルム
10 透明電極
11 不透明着色層(絶縁層)
12 抜き型部
13 発光体層(絶縁層)
14 ベース電極
15 透明着色層(絶縁層)
17 吸湿層
18 酸素吸収層
19 第1樹脂成形体(芯材)
20 第2樹脂成形体(芯材)
21 無機酸化物層
22 芯材
Claims (12)
- 回路基板上の固定接点に対向して配置される可動接点を前記固定接点に接触させる方向に押圧するためのキートップ部と、該キートップ部を所定の位置に配して前記回路基板上に取り付けるためのカバー基材とを有する押釦スイッチ用部材であって、
前記キートップ部は、芯材と該芯材を被覆する透明絶縁性フィルムと、スイッチ機能を表示する表示部とを有し、
該表示部は、前記透明絶縁性フィルムの裏面に設けられた透明電極と、該透明電極の裏面に設けられて打ち抜かれた抜き型部を有する不透明着色層と、前記抜き型部内に形成されると共に前記不透明着色層の裏面に形成される電気化学発光体で成形された発光体層と、該発光体層及び前記不透明着色層の裏面に設けられたベース電極とから成り、
前記ベース電極の電極端子、前記透明電極の電極端子、及び、前記不透明着色層を前記キートップ部以外の部分まで延長して配置したことを特徴とする押釦スイッチ用部材。 - 前記ベース電極が導電性粒子と絶縁性樹脂とからなる導電性インクであることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記透明電極は、透明絶縁性基体に透明導電性ポリマー層を形成してなり、該透明電極に接して前記発光層体が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記透明導電性ポリマー層が着色されていることを特徴とする請求項3に記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記押釦スイッチ用部材の外表面の少なくとも一部分に無機酸化物層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記無機酸化物層の外表面に有機物層を設けてなることを特徴とする請求項5に記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記無機酸化物層がポリシラザンを転化してなるものであることを特徴とする請求項5又は6に記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記ベース電極と前記キートップ部の心材との間に吸湿層を設けたことを特徴とする請求項5乃至7のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記ベース電極と前記キートップ部の心材との間に酸素吸収層を設けたことを特徴とする請求項8に記載の押釦スイッチ用部材。
- 前記ベース電極と前記吸湿層との間に酸素吸収層を設け、前記ベース電極、前記酸素吸収層、前記吸湿層、前記キートップ部の芯材の順で積層したことを特徴とする請求項8に記載の押釦スイッチ用部材。
- 請求項1乃至10のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材の製造方法であって、前記ベース電極が導電性粒子と絶縁性樹脂とからなる導電性インクによって形成され、該導電性インクを塑性流動状態で賦形したことを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。
- 請求項1乃至10のいずれか1つに記載の押釦スイッチ用部材の製造方法であって、前記発光体層、前記透明電極、前記ベース電極或いは前記表示部の模様部又は地部を構成する着色層のうち、少なくとも3種を平面状の透明絶縁性フィルム上に形成した後、キートップ部と電極端子部とを賦形してなることを特徴とする押釦スイッチ用部材の製造方法。
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