JP3893852B2 - 密閉型圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、冷暖房、あるいは冷蔵庫等の冷却装置に用いられる密閉型圧縮機の振動の低減手法に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷凍空調用の密閉圧縮機としては、レシプロ式のもの、ロータリ式のもの、スクロール式のものがあり、いずれの方式も家庭用、業務用の冷凍空調分野で使用されてきている。現在はコスト、性能面等でそれぞれの特徴を活かして成長してきている。
【0003】
中でも圧縮機構および電動機構を容器に収納した圧縮機は、防音とメンテナンスフリーを意図したいわゆる密閉型圧縮機で代表され、スクロール圧縮機とロータリ圧縮機とが主流になっている。ロータリ圧縮機は従来、図6に示すように縦向きに設置する縦型のものが広く使用されている。このものは、密閉容器10が溶接された脚11によって支えられている。密閉容器10内には、電動機部20と圧縮機構部30とを備えている。密閉容器10には、蒸発器側と接続される吸入管12と、吸入管12に接続されるアキュームレータ13と、凝縮器側と接続される吐出管14とを備えている。インバータ等により15Hz〜150Hzの周波数で運転される電動機部20は、固定子21と回転子22から構成され、固定子21は、密閉容器10内で固定され、回転子22は、固定子21内に回動自在に設けられている。圧縮機構部30は、シリンダー31と、クランク軸32の偏心部33によりシリンダー31内を回転するピストン34と、シリンダー31とピストン34によって形成される空間を圧縮空間と吸入空間に分離する図示しないベーンと、シリンダー31及びピストン34の両端面を閉塞する上下軸受36、37によって構成され、電動機部20によって発生された駆動力がクランク軸32の偏心部33を通して伝達されている。
【0004】
また、圧縮機、その他振動体の振動低減手法として、実公昭53−8961号公報に示されている図7のように、密閉容器10に動吸振器15を装着した構造のものが考案されていた。
【0005】
また、回転式圧縮機の振動低減手法として、実公昭61−241471号公報に示されている図8および図9のように、密閉型圧縮機の重心を通り、クランク軸32の軸心と直角な線分と交わる密閉容器10の側壁に180°対向させた2つの錘40を取り付けたものが考案されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の圧縮機では、密閉容器の振動値を積極的に低減させる手法は採られていなかったので、圧縮機の密閉容器の振動が問題となっていた。
【0007】
また、動吸振器を装着した実公昭53−8961号公報記載の構成では、動吸振器は一般に任意の設定周波数においては非常に大きい振動低減効果が得られるが、それ以外の周波数では振動を低減できない。圧縮機がインバータ電源で駆動され、回転周波数が幅広く変化する場合、圧縮機の振動も変化するため、従来用いられてきた動吸振器では設定周波数以外の周波数では効果がなくなり、動吸振器の設定周波数以上で圧縮機が駆動される場合は逆に振動が大きくなる場合があった。
【0008】
また、圧縮機の振動は回転周波数の成分だけではなく、その高次の成分も相当大きいため、その高次振動成分と、動吸振器を取り付けたことにより新たに発生する圧縮機系の共振周波数が一致し、ある回転周波数では圧縮機の高次振動成分が増幅され大きな振動音が発生するなど、動吸振器の設置に関しては使用範囲が限定されていた。
【0009】
また、密閉容器の側壁に180°対向させた2つの錘を取り付けた実公昭61−241
471号公報記載の構成では、密閉型圧縮機が空調装置に用いられるとき、錘が室外機のファンに接触しないようにしながら、かつ配管とも干渉しないように密閉型圧縮機を室外機の中に配置することは、著しく困難であった。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の密閉型圧縮機は、電動機部と、この電動機部により駆動される圧縮機構部と、前記電動機部と前記圧縮機構部を収納した密閉容器と、それを支える脚から構成された密閉型圧縮機であって、前記密閉型圧縮機の外部の片側に配置された前記脚に錘を取り付けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の密閉型圧縮機は、前記錘を棒とすることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の密閉型圧縮機は、前記錘を板とすることを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の密閉型圧縮機は、前記錘に鉄を用いたことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の密閉型圧縮機は、前記錘にコンクリートを用いたことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の密閉型圧縮機は、前記錘に制振鋼板を用いたことを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の密閉型圧縮機は、前記錘を放熱板として使用することを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の密閉型圧縮機は、前記板の先端に質量部を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の密閉型圧縮機は、前記板の先端にリアクトルを備えることを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の密閉型圧縮機は、前記板を前記密閉容器に対して水平に取り付けたことを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の密閉型圧縮機は、前記錘を前記脚にボルトで取り付けたことを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の密閉型圧縮機は、前記錘の慣性モーメントを前記密閉型圧縮機に対して2倍以上にすることを特徴とする。
【0022】
請求項13記載の密閉型圧縮機は、密閉型圧縮機を、1気筒ロータリ式としたことを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
第1の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、密閉型圧縮機の外部の片側に配置された脚に錘を取り付けたものである。これにより、全運転周波数に対して振動を低減させることができると共に、密閉型圧縮機が空調装置に用いられるとき、錘の室外機内での配置を容易にし、収納性を向上するものである。
【0024】
第2の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、錘として棒を取り付けたものである。これにより、錘の固有振動数を圧縮機の回転数および圧縮機の高次振動成分よりも大きく設定することができるので、より振動を低減させることができる。
【0025】
第3の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、錘として板を取り付けたものである。
これにより、錘の回転方向の固有振動数をより大きく設定することができるので、回転方向の振動をより低減させることができる。
【0026】
第4の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、錘として鉄を用いるものである。これにより、錘をより安価に製造することができる。
【0027】
第5の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、錘としてコンクリートを用いるものである。これにより、錘が腐食により圧縮機から脱落することを効果的に防止することができる。
【0028】
第6の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、錘として防振鋼板を用いるものである。これにより、より効果的に振動を抑制することができる。
【0029】
第7の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、錘を放熱板として使用するものである。これにより、電動機部と圧縮機構部から発生する熱を逃がすことができる。圧縮機の温度を下げることによりモータ効率を向上させ、かつ室外機の凍結を防止することができる。
【0030】
第8の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、板を取り付けたことに加えて、板の先端に質量部を持つものである。これにより、より効果的に振動を防止することができる。
【0031】
第9の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、板を取り付けたことに加えて、板の先端にリアクトルを取り付けたものである。これにより、密閉型圧縮機が空調装置に用いられるとき、室外機の電装部を小さくすることができる。
【0032】
第10の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、板を密閉容器に対して水平に取り付けたことをものである。これにより、電動機部から発生する熱をより効果的に逃がすことができ、モータ効率を更に向上させることができる。
【0033】
第11の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、錘を脚にボルトで取り付けたものである。これにより、密閉型圧縮機の故障による交換を容易に行うことができる。
【0034】
第12の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、錘の慣性モーメントを密閉型圧縮機に対して2倍以上にするものである。これにより、密閉型圧縮機が空調装置に用いられるとき、アキュームレータおよび吐出管の振動値を、配管が破壊する値以下にまで抑制することができる。
【0035】
第13の発明の実施の形態である密閉型圧縮機は、密閉型圧縮機をレシプロ式およびスクロール式圧縮機に比べて回転方向振動が大きい1気筒ロータリ式とするものである。これにより、より効果的に振動を低減させることができる。
【0036】
【実施例】
以下本発明の一実施例について図面を参照して説明する。従来の技術で説明したものと同じ部品は、同じ番号を符して説明を省略する。
【0037】
(実施例1)
図1および図2において、錘40を取り付けたロータリ式密閉型圧縮機を示す。板の錘40が脚11にボルト41により取り付けている。上記構成において、圧縮機が駆動されるとピストン34の転動に従って、冷媒ガスがアキュームレータ13、吸入管12を通って圧縮機構部30で吸入、圧縮され、吐出管14から吐出される。その際、圧縮機構部30においては、吸入、圧縮の工程に伴いシリンダー31内の吸入、圧縮空間では大きなガス圧力変動が発生するので、クランク軸32に働くトルクも大きく変動する。
【0038】
ここで、圧縮機中心をZ軸とした円筒座標系をとる。クランク軸32に働くトルク変動はZ軸周りの回転方向の振動に作用し、振動値はねじり強制振動方程式に従う。
【0039】
【数1】
【0040】
ただし、は回転周波数、はZ軸周りの慣性モーメント、Cは圧縮機の固定状態により決まるねじり減衰係数、Kは圧縮機の固定状態により決まるねじりバネ係数、はガス圧力変動により発生するトルク変動である。このとき、ある半径位置での圧縮機の振動値Aは次のように表せる。
【0041】
【数2】
【0042】
トルク変動は、圧縮機構部30の構成では小さくすることができず一定であるために、振動値Aを低減するには圧縮機の慣性モーメントを大きくすることが必要である。
【0043】
従来の圧縮機では、圧縮機の慣性モーメントが密閉容器10内の圧縮機を構成する各要素により、慣性モーメントが決まってしまうため、圧縮機の振動も一意的に定まってしまっていた。
【0044】
図3において、従来の圧縮機と錘40を取り付けた圧縮機のアキュームレータ13の回転方向振動を比較したものを示す。錘40を取り付けたことにより、圧縮機の慣性モーメントが増大し、全運転周波数において振動を低減させることができる。
【0045】
錘40を板としていることにより、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、錘40の回転方向の断面係数が大きくなり、固有振動数もより大きく設定することができるので、回転方向の振動をより効果的に防止することができる。
【0046】
また、錘40をボルト41により脚11に取り付けることにより、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、圧縮機の故障による交換を容易に行うことができる。
【0047】
錘40を脚11に取り付けることにより、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、密閉型圧縮機が空調装置に用いられるとき、室外機内での錘40の配置を容易にし、収納性を向上するものである。
【0048】
また、錘40を鉄とする事も可能である。これにより、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、錘40を安価に製造することができる。
【0049】
また、錘40をコンクリートとすることも可能である。これにより、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、錘40が腐食により圧縮機から脱落することを防止することができる。
【0050】
また、錘40を制振鋼板とすることも可能である。これにより、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、より効果的に圧縮機の振動を抑制することができる。
【0051】
また、錘40を放熱板として利用すれことも可能である。これにより、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、圧縮機から発生する熱を逃がすことができる。従って、電動機部20の温度が下がり、モータ効率が向上するうえに、室外機の凍結も防止することができる。
【0052】
また、錘40の慣性モーメントを密閉型圧縮機に対して2倍以上にすることにより、密閉型圧縮機が空調装置に用いられるとき、アキュームレータおよび吐出管の振動値を、配管が破壊する値以下にまで抑制することができる。
【0053】
また、密閉型圧縮機を、レシプロ式およびスクロール式圧縮機に比べて回転方向振動が大きい1気筒ロータリ式にすることにより、より効果的に振動を低減させることができる。
【0054】
(実施例2)
図4および図5において、錘40を取り付けたロータリ式密閉型圧縮機を示す。板の錘40が脚11にボルト41により取り付けている。更に、錘40の先端に質量部42を取り付けたものである。上記構成において、錘40が質量部42を持つ場合と質量部42を持たない場合、同じ慣性モーメントであれば、質量部42を持つ場合の方が錘40を軽く構成することができる。つまり、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、錘40を軽くしつつ同様の効果を得ることができる。
【0055】
また、密閉型圧縮機が空調装置に用いられるとき、力率を改善させるために室外機の電装部に取り付けられているリアクトルを、質量部42の代わりに用いることも可能である。これにより、全運転周波数において圧縮機の振動を低減させることができることに加えて、室外機の電装部を小さくすることができる。
【0056】
【発明の効果】
上記実施例から明らかなように、本発明は、密閉型圧縮機の外部の片側に配置された脚に錘を取り付けたものである。この構成によれば、全運転周波数に対して振動を低減させることができると共に、密閉型圧縮機が空調装置に用いられるとき、錘の室外機内での配置を容易にし、収納性を向上するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1を示す密閉型圧縮機の断面図
【図2】 本発明の実施例1を示す密閉型圧縮機の平面図
【図3】 アキュームレータの回転方向振動を従来例と本実施例で比較した図
【図4】 本発明の実施例2を示す密閉型圧縮機の断面図
【図5】 本発明の実施例2を示す密閉型圧縮機の平面図
【図6】 従来の密閉型圧縮機の断面図
【図7】 実公昭53−8961号公報に示されている振動低減例の側面図
【図8】 実公昭61−241471号公報に示されている振動低減例の断面図
【図9】 実公昭61−241471号公報に示されている振動低減例の平面図
【符号の説明】
10 密閉容器
11 脚
12 吸入管
13 アキュームレータ
14 吐出管
15 動吸振器
20 電動機部
21 固定子
22 回転子
30 圧縮機構部
31 シリンダー
32 クランク軸
33 偏心部
34 ピストン
36 上軸受
37 下軸受
40 錘
41 ボルト
42 質量部
Claims (13)
- 電動機部と、この電動機部により駆動される圧縮機構部と、前記電動機部と前記圧縮機構部を収納した密閉容器と、それを支える脚から構成された密閉型圧縮機であって、前記密閉型圧縮機の外部の片側に配置された前記脚に錘を取り付けたことを特徴とする密閉型圧縮機。
- 前記錘を棒とすることを特徴とする請求項1記載の密閉型圧縮機。
- 前記錘を板とすることを特徴とする請求項1記載の密閉型圧縮機。
- 前記錘に鉄を用いたことを特徴とする請求項1〜3いずれか一項記載の密閉型圧縮機。
- 前記錘にコンクリートを用いたことを特徴とする請求項1または3記載の密閉型圧縮機。
- 前記錘に制振鋼板を用いたことを特徴とする請求項1または3記載の密閉型圧縮機。
- 前記錘を放熱板として使用することを特徴とする請求項1、3、または6いずれか一項記載の密閉型圧縮機。
- 前記板の先端に質量部を備えることを特徴とする請求項3記載の密閉型圧縮機。
- 前記板の先端にリアクトルを備えることを特徴とする請求項3記載の密閉型圧縮機。
- 前記板を前記密閉容器に対して水平に取り付けたことを特徴とする請求項3記載の密閉型圧縮機。
- 前記錘を前記脚にボルトで取り付けたことを特徴とする請求項1〜10いずれか一項記載の密閉型圧縮機。
- 前記錘の慣性モーメントを前記密閉型圧縮機に対して2倍以上にすることを特徴とする請求項1〜11いずれか一項記載の密閉型圧縮機。
- 密閉型圧縮機を、1気筒ロータリ式としたことを特徴とする請求項1〜12いずれか一項記載の密閉型圧縮機。
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