JP3892541B2 - 二重相反境界要素法による地下比抵抗構造解析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電気探査における地下比抵抗構造の解析方法に関し、更に詳しく述べると、二重相反境界要素法を応用することにより、逐次修正を行うことなく直接的に地下比抵抗構造を求める方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気的地下探査法は、地盤の電気的性質、例えば比抵抗などに着目してその分布を求めるものであり、電流電極から電流を流して測線上の多数の電位電極での電位を測定することにより、地下の比抵抗分布を求めて地下構造を推定する方法である。種々の技術改良の結果、近年、地下の複雑な二次元・三次元の地下比抵抗構造の探査が可能になりつつある。
【0003】
電気探査法の解析方法としては、逐次修正型(繰り返し修正型)の逆解析が主流である。これは、まず何らかの地下構造を仮定し(情報が無い場合には、地下を平均的な比抵抗を有する均質構造と仮定する場合も含む)、仮定した比抵抗構造(初期モデル)から有限要素法などのシミュレーション計算により求まる理論値、と実際に測定された値(測定電位)とを比較し、その残差が小さくなるように地下構造モデルの修正を順次繰り返す方法である。
【0004】
このような逐次修正型の逆解析には次のような問題があった。
▲1▼何度もモデルを修正する必要が生じるため、計算に多くの時間を必要とし、高価である。
▲2▼逆解析の出発点となる初期モデルが必要であり、初期モデルが不適切であると逐次改良過程が発散する等、解析過程が不安定になる。
▲3▼逐次改良過程が発散しなくても、一般に指摘されているように、地下構造モデルが残差極小値(ローカルミニマ)に収束し、真の残差最小値に収束しない場合があり、解の一義性が保証されない。
▲4▼逐次修正型では、収束安定性や残差極小値などの問題を緩和するために地下構造モデルそれ自体やモデルの改良過程に多くの制約を設けることが多く、結果としてデータの持つ情報が十分に生かしきれない。
これらのことから、解析時間が短く、且つ解の唯一性に優れた直接的な逆解析法の開発が望まれていた。
【0005】
ところで最近、二重相反境界要素法を使用することで、解析領域の境界上の電位分布から境界内部の比抵抗分布の相対的変化の様子を直接的に求めることが可能となった。これは、比抵抗の変化にかかわる項をポアソン方程式の駆動項とし、その駆動項に二重相反法を導入してポアソン方程式を解く手法である。この方法によれば、地盤に電流を流した際に常に発生する一次電位と地下の構造(不均質性)に起因する二次電位の影響を分離し、数値計算上効率的に地下の不均質性の影響を評価するもので、繰り返し計算を行う必要が無いという利点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、二重相反境界要素法を地下構造の解析に用いるためには、次のような問題が残されていた。
▲1▼解析で求まるのは、地下比抵抗構造の相対的な変化率であり、比抵抗の絶対値分布が求まらない。
▲2▼地下の不均質性を、境界部に置いた仮想点電荷で表現するために、仮想点電荷の付近で数値積分が不安定になる。この影響は、測線(測定用に電極を配置した範囲のことであり、解析的には境界条件を与えることのできる境界)付近に比抵抗異常がある場合には、精度の低下となって現れる。
【0007】
また、これまでの技術開発は全空間を仮定しており、地表面を想定していないため、従来の方法を特に地表からの探査、あるいはボーリング孔等に挿入した地中電極と地表電極を組み合わせて使用する探査に適用する場合には、更に次のような問題が生じる。
▲3▼実際に電流が流れることができるのは地表面より下部であるという条件(半空間の条件)を解析的に導入しないと解が不安定になる。
▲4▼全空間あるいは地表面が平坦な場合の半空間の場合には、ポアソン方程式の一般解は簡単に求まるが、地形が複雑な場合に簡単には半空間の条件を取り込むことができない。通常、地表面は平坦ではなく、山岳地方などの地下探査が多いことを考慮すると、実用的には地形が複雑でも解析精度が低下しないような工夫が必要である。
▲5▼地表探査の場合には、解析対象領域を電極で取り囲むことができないので、測線の両端部での解析精度の低下が大きい。
【0008】
本発明の目的は、これらの技術的課題を解決し、二重相反境界要素法を電気的地下探査データの解析に適用するための改良を行い、実際の電気的地下探査に適用するための実用的な手順、方法を開発することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電流電極に供給した電流に対する電位電極での測定電位を測線上の各測点で測定し、比抵抗が不均一であっても等方性と見なせる導電場が次のポアソン方程式
∇2 Ψ=∇Ψ・∇R
但し、Ψは電位、Rは対数比抵抗
で表されることを利用して、その右辺の対数比抵抗にかかわる駆動項bを
とおき、二重相反境界要素法を適用することにより前記駆動項bを境界積分に変換し、境界上の測定電位Ψから対象領域内の比抵抗分布∂R/∂x,∂R/∂yを求める電気的地下探査解析方法である。
【0010】
本発明に係る二重相反境界要素法による地下比抵抗構造の解析方法は、上記の方法において、
電気探査による電位測定の際に電極を設置した範囲を、測定点と同数の境界要素に分割し、
供給した電流と測定電位との組について地下の不均質性を表す仮想電荷αと、ベースとなる平均的な地下の比抵抗分布を表す仮想電荷βを境界要素に配置し、
地中の見掛け比抵抗の平均値ρave から仮想電荷βに対応する電位の一般解を求め、
該仮想電荷αを各要素毎に要素上あるいはその外側に均等に分布する電荷密度の積分値とすると共に、電位の測定点で電位が既知、地表面上の電位の測定点と測定点の間で法線方向の電流が0、より好ましくは地表面上の電位の測定点と測定点との間のみならずその測定範囲から外れた測線の周辺部でも法線方向の電流が0という境界条件で境界型微分方程式を解くことで前記仮想電荷αを求め、
解析対象領域を格子状に分割し、
ポアソン方程式の近似関数の行列表現〔f〕と前記仮想電荷αとから
{b}=〔f〕{α}
によりポアソン方程式の駆動項bの分布を求め、
各格子点上での電位Ψの水平及び鉛直方向の偏微分係数∂Ψ/∂x,∂Ψ/∂yを求め、
その電位の偏微分係数と前記駆動項bの分布から対数比抵抗Rの偏微分係数∂R/∂x,∂R/∂yを求め、
次に対数比抵抗の偏微分係数を積分して対数比抵抗の相対分布を求め、
変化率分布を平均値が0になるように規格化し、その規格化した相対値分布と別に求めた平均比抵抗から解析領域の絶対値比抵抗分布を求める。
【0011】
ここで地形が平坦でない場合には、地形の影響はあるが地下構造は均一と仮定し、別に求めた平均比抵抗ρave を用いて有限要素法あるいは境界要素法などにより地形の影響を含むポアソン方程式の一般解を求める。また測線が長い場合には、測線をサブ測線に分割し、サブ測線同士は探査深度相当以上互いに重複させて電位分布を求め、サブ領域毎に解析結果を求め、そのサブ領域の解析結果をつなぎ合わせて全領域の比抵抗分布を求める。
【0012】
更に、上記の方法で求めた二重相反境界要素法による地下比抵抗構造は、電気的地下探査における逐次修正型の逆解析法の初期モデルとして使用することができ、それによって逐次修正型の解析を効率良く実施することが可能となる。
【0013】
解析方法の基本原理について、以下に述べる。不均質ではあるが等方性の地盤では、電位Ψと導電率σの関係は、次のポアソン方程式で記述される。
∇・ρ∇φ=0 in Ω
σ∇2 Ψ+∇σ・∇Ψ=0 … (1)
その境界条件は、
Ψ=Ψmea on Γ1
p(=∂Ψ/∂n)=pmea on Γ2
Γ=Γ1 +Γ2
である。ここで、Ψは解析領域Ωで定義される電位であり、Γは全境界、Γ1 は電位が既知の境界、Γ2 は駆動項(ここでは印加電流)が既知の境界を示す。またΨmea 及びpmea はそれぞれ測定値である。
【0014】
次に、上記(1) 式に対してR=ln(1/σ)(Rは対数比抵抗:導電率の逆数の対数)なる変換を行えば、
∇2 Ψ=∇Ψ・∇R … (2)
となる。このポアソン方程式の駆動項(右辺)は、地盤の不均質性に起因する項である。因に地盤が均質であれば、∇R=0であり、(2) 式の右辺は0となり、ラプラス方程式となる。
【0015】
ここで、駆動項を次式のように、bi (xi ,yi )とおく。
∇2 Ψ=∇Ψ・∇R=bi (xi ,yi ) … (3)
なお、bi (xi ,yi )は二次元直交座標(x,y)で記述された解析面内の任意の点iにおける地盤の不均質性に対応する量である。この(3) 式に、二重相反法を適用することにより、不均質性の影響bi を解くことができる。
【0016】
まず、解析領域Ω内で(3) 式を満たす電位Ψを非斉次方程式の特解ψと斉次方程式の一般解φの和で次式のように表す。
Ψ(x,y)=ψ(x,y)+φ(x,y) … (4)
更に、任意の点i(xi ,yi )における特解と一般解を次式のように表す。
【0017】
【数1】
【数2】
【0018】
なお、(5) 式、(6) 式は、それぞれ地下不均質性を表現するための仮想電荷αをL個、またベースとなる平均的な地下の比抵抗分布を表現するための仮想電荷βをM個置いた場合に相当する。従って、電位Ψは、(5) 式と(6) 式との和として、次式で表される。
Ψ(xi ,yi )={ψ* }i t {α}+{φ* }i t {β} … (7)
ここでφ* は、ラプラス方程式の基本解であり、解析領域の次数により以下のように決まる。
二次元空間の場合: φ* im=−1/2π(lnrim) … (8)
三次元空間の場合: φ* im=1/(4πrim) … (9)
なお、rimは、地下不均質性を解析する点iからm番目のβまでの距離である。また、ψ* はポアソン方程式の特解の中から選ぶことができる。二次元問題に用いる特解の例としては以下のようなものがある。
ψ* il=ril 2 /4+ril 3 /9+ril 4 (lnril−3/2 )/ 16 … (10)
ψ* il=ril 3 /9(1/rmax ) … (11)
なお、rilは、地下不均質性を解析する点iからl番目のαまでの距離であり、rmax は点iから最も離れたαまでの距離である。
【0019】
次に二重相反法では、(10)式、(11)式を特解とするポアソン方程式は、
∇2 ψ* il=fil=1+ril+Ψ* il … (12)
∇2 ψ* il=fil=ril/rmax … (13)
である。ここでfilは近似関数と呼ばれる。
【0020】
パラメータα(仮想電荷α)の数と位置、及び特解やその近似関数が決定されると、地下の不均質性を表現する(3) 式の駆動項は近似関数(12)式あるいは(13)式を用いて、
【数3】
又は、行列表現により
{b}=〔f〕{α} … (15)
と表される。ところで、解析領域が全空間であるか、地表面が平坦な半空間の場合には、βは均質媒質中の電位の理論解との比較から比較的容易に求まる。次にαは解析領域の境界部で測定される電位分布から(7) 式を用いて求めることができる。従って、(14)式あるいは(15)式は、地下の不均質性を示すbが二重相反法を用いることにより境界積分に変換されたことを示している。
【0021】
次に、bi の分布を地下比抵抗の分布に変換する方法について説明する。bi は(3) 式を書き下した次式から分かる通り、地下の点iにおける対数比抵抗Rの水平方向(x方向)と垂直方向(y方向)の変化に関する量である。
既に仮想電荷の大きさであるαとβが求まっている場合には、(4) 式、(5) 式、(6)式より、解析領域内の任意の点での電位Ψのx方向及びy方向の偏微分を計算できる。そこで、複数の電流源について測定した場合には、1番目の電流源に対応する電位Ψとbの分布から求まる関係を次式のように表す。
【数4】
また2番目の電流源に対応する電位Ψとbの分布から求まる関係も同様に次式のように表す。
【数5】
二次元空間の場合は、少なくとも二つ以上の電流源を用いて測定すれば、(17)式と(18)式を連立させることで対数比抵抗Rのx方向とy方向の単位長さ当たりの変化率が求まる。通常は、精度を向上させるために全電流源に対して式を立て、最小二乗法により決定する。このようにして求まる変化率をx及びy方向に積分することで、対数比抵抗Rの相対的な変化の状況が分かる。
【0022】
以上が、解析の基本原理である。
【0023】
本発明では、実際の電気的地下探査に利用するために、地下の不均質性を表すパラメータαを、境界要素の中点に点状に置かれた電荷ではなく、要素上もしくはその外側に均質に分布する電荷密度α′の積分値とする。これによりαに関する数値積分において積分特異点の問題を回避でき、特異点の存在により計算精度が低下するのを防止することができる。この場合、(14)式は、
【数6】
のように表せる。ここで∫fildΓは要素区間におけるfilの積分値である。
【0024】
また地形を含む半空間の条件を解析過程に導入し、且つ測線周辺部の精度低下を防ぐために、新たに「地表面ではその法線方向には電流は流れない」という条件を、測線上及び測線の外周部に追加する。これにより地形が平坦でない場合も含めて、半空間の条件が解析過程の中に導入できる。なお、この計算のために必要となる特解の法線方向の微係数は、次式で表される。
ここで、nは法線方向の単位ベクトルであり、nx とny はそのx方向とy方向の成分である。また、X=xl −xi 、Y=yl −yi である。従って、電位の測定点で電位が既知、地表面上の電位の測定点と測定点の間及び測線の周辺部で法線方向の電流が0という境界条件で境界積分方程式を解けば、次式のようになる。
〔K〕〔{Ψ}−{ψ* }i t {α}〕
−〔G〕〔{∂Ψ/∂n}−{∂ψ* /∂n}i t {α}〕=0 …(21)
ここで、G及びKは境界要素法で一般に用いられているシステム行列であり、境界要素上の電位及び電流から求まる量である。この(21)式からパラメータαが求まる。
【0025】
求めた比抵抗の相対変化から比抵抗の絶対値に変換するには、まず、全測定データから見掛け比抵抗を計算し、それを平均して平均比抵抗ρave を求める。次に、相対変化量の平均値を求め、相対変化量が平均値をとる部分において、比抵抗値が先に求めた平均比抵抗になるように規定して、全解析領域の比抵抗を求める。なお、解析領域内に比抵抗の絶対値が既知の場所があれば、それを基準にしてもよい。これによって、比抵抗の絶対値分布が求まる。
【0026】
【発明の実施の形態】
実際の解析手順は、例えば次のように行う。図1に解析のフローチャートを示す。
(1)通電電流Iと地形補正済みの測定電位Vから、次式を用いて見掛け比抵抗ρa を計算する。
ρa =k・V/I
但し、kは電極配置係数と呼ばれる係数であり、測定に用いる電極配置毎に異なる値である。測量によって地形が分かり、地下が均質で地形のみの影響を受けるものと仮定し、有限要素法等のシミュレーションで電位を計算して地形が平坦な場合との比を補正係数として地形補正済みの測定電位Vを求める。
(2)測線が長すぎる場合や比抵抗値の変化が大きすぎる場合は、解析測線を幾つかのサブ測線に分割に分割する。その際、サブ測線同士は、探査深度相当以上互いに重複させる。
(3)サブ測線毎に見掛け比抵抗の平均値ρave を計算する。
(4)地表面が平坦な場合や地中電極のみの測定の場合には、見掛け比抵抗の平均値ρave から解析的に電位の一般解を求める。地形が平坦でない場合は有限要素法などのシミュレータに地形とρave を入力して地形の影響を含む一般解を求める。一般解は、地形の影響はあるが、地下構造は均一であることを反映しており、パラメータβに対応している。
(5)測定電位Ψと一般解との差をψ* として、測定電位Ψ及び境界条件∂Ψ/∂n、∂ψ* /∂nと共に(21)式に代入してパラメータαを決める。
(6)(14)式より解析領域内のbの分布を計算する。bの計算密度は、データが通常有する情報量を考慮して、平均電極間隔の1/2程度とする。
(7)サブ測線に含まれる全ての電流源に対して、(16)式を作成し、最小二乗法的に、各点における∂R/∂xと∂R/∂yを計算する。
(8)解析領域の一隅を基準として、∂R/∂xと∂R/∂yを積分し、解析面内のRの変化率分布を計算する。
(9)変化率分布を平均値が0になるように規格化し、それとρave からサブ測線に対応する解析領域の比抵抗分布を計算する。これによって比抵抗の絶対値分布が求まる。
(10)サブ領域の比抵抗分布をつなぎ合わせて最終解析結果とする。
【0027】
また、複雑な構造が解析された場合には、その部分のの解析結果を初期モデルとし、更に追加解析を続ければよい。その追加解析には、要素を更に細かくした本発明方法を適用してもよいが、逐次修正型の逆解析を適用してもよい。
【0028】
なお、サブ領域に分割すると、遠方の実質的に不要なデータを計算に用いないために解析精度の低下を防止でき、またデータ数が少なくなるために解析時間を短縮できる利点がある。
【0029】
【実施例】
図2は測線をサブ測線に分割して測定・解析を行う場合の一例を示している。二極法電極配置で測定した電位データをΨ、電極間隔をa、電流の強さをIとすると、見掛け比抵抗ρa は、
ρa =2πa・Ψ/I
で表される。見掛け比抵抗は、慣例的に図2の(a)に示す位置に表示される。即ち電流電極Cと電位電極Pとの中点の真下、深度a(=電極間隔)の位置である。この位置はあくまでも電極の位置と探査深度を考慮して定めたものであり、表示された見掛け比抵抗がその位置の実際の比抵抗を示している訳ではない。電極の位置と電極間隔を変えて測定を行い見掛け比抵抗を記入していくと、図2の(b)に示すような見掛け比抵抗疑似断面図が得られる。測定深度数(電極間隔を変化させる数)をNとする。まず1番目の電極から電流を流して2番目から(N+1)番目までのN点の電極で電位を測定する。次に2番目の電極から電流を流して3番目から(N+2)番目までのN点の電極で電位を測定する。これを繰り返す。測線の終盤のN点ではデータ数が1つずつ減っていく。最後に測線の終点の1点前の電極を電流電極として終点での電位を測定する。
【0030】
測線の全長が長過ぎる場合には、必要な探査深度を考慮して一つのサブ測線の範囲を定めて、図2の(c)に示すように、全測線をサブ測線に分割する。その際、岩石の質、種類などの違いから、比抵抗が同じような範囲で区切られるようにサブ測線を決めると、解析したときに精度が向上するため好ましい。また複数のサブ測線に分割する場合には、図2の(c)に示されているように、重複部分を設けてデータの欠落を防止する(重複部分は一度測定するだけでよい)。測線の全長に対して深度は浅くなり、無駄なデータを取り込まないために、解析時間を短縮できるばかりでなく、解析精度が向上する結果が得られる。
【0031】
各測定点で電位データが得られるが、解析の際には、その測定範囲の各測定点の間で法線方向の電流成分が0、即ち∂Ψ/∂n=0(地盤から空中へは電流は漏れでない)という境界条件のみならず、測定範囲の外側でも同様の境界条件を付加して行う。これによって測点範囲の両端近傍での解析精度の低下を防ぐ。パラメータ(仮想電荷)αは、隣り合う測定点間で電荷密度α′が均等に分布しているものとして解析を行う。解析の方法は、前記した通りである。
【0032】
上記の例は2極法電極配置の例であるが、本発明はそれ以外のポール・ダイポール配置、ダイポール・ダイポール配置などにも適用できることは言うまでもない。
【0033】
解析結果の一例を図3に示す。図3の(a)に示すように、比抵抗ρ=50Ω・mの地盤中に、比抵抗ρ=30Ω・mの矩形領域が2箇所、間隔をおいて並ぶように存在しているとした場合を仮定する。ここで符号sは地表面を表している。本発明方法により解析した結果を図3の(b)に2次元表示で示す。明らかに2つの領域を区別することができ、地下の比抵抗分布を直接的に求めることが出来た。
【0034】
【発明の効果】
本発明によれば、繰り返し計算を行うことなく短い解析時間で、直接的且つ一義的に地下比抵抗の絶対値分布が求まる。その際、地下の不均質性を、均等に分布している電荷密度によって表現しているために、数値積分が不安定になることはなく、精度の低下が生じない。また本発明では、実際に電流が流れることができるのは地表面より下部であるという条件を解析的に導入しているため解が安定し、地形の影響を含めて解析できる。
【0035】
特に、測線上の各測定点の間のみならず、測線の周辺部(測定範囲の両端よりも外側の測線の延長上)でも法線方向の電流が0(言い換えれば、∂Ψ/∂n=0)という境界条件を加えると、測線の両端近傍部での解析精度の低下を抑えることができる。
【0036】
本発明方法によって一義的に地下比抵抗構造が求まるため、更に精度が要求される場合には、それを繰り返し型解析の初期モデルとして用いることで、繰り返し型解析の欠点を解消できる。即ち、初期モデルが適切なものとなるために、繰り返しの回数は少なくて済み、解が発散する恐れもなく、効率よく精度のよい地下構造の解析を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法の一例を示す解析手順のフローチャート。
【図2】測線をサブ測線に分割して測定・解析を行う場合の一例を示す説明図。
【図3】本発明方法による解析結果の一例を示す説明図。
Claims (5)
- 電流電極に供給した電流に対する電位電極での測定電位を測線上の各測点で測定し、比抵抗が不均一であっても等方性と見なせる導電場が次のポアソン方程式
∇2 Ψ=∇Ψ・∇R
但し、Ψは電位、Rは対数比抵抗
で表されることを利用して、その右辺の対数比抵抗にかかわる駆動項bを
とおき、二重相反境界要素法を適用することにより駆動項bを境界積分に変換して、境界上の測定電位Ψから対象領域内の比抵抗分布∂R/∂x,∂R/∂yを求める電気抵抗分布の同定方法において、
電気探査による電位測定の際に電極を設置した範囲を、測定点と同数の境界要素に分割し、
供給した電流と測定電位との組について地下の不均質性を表す仮想電荷αと、ベースとなる平均的な地下の比抵抗分布を表す仮想電荷βを境界要素に配置し、
地中の見掛け比抵抗の平均値ρave から仮想電荷βに対応する電位の一般解を求め、
該仮想電荷αを各要素毎に要素上もしくはその外側に均等に分布する電荷密度の積分値とすると共に、電位の測定点で電位が既知、地表面上の電位の測定点と測定点の間で法線方向の電流が0という境界条件で境界型微分方程式を解くことで前記仮想電荷αを求め、
解析対象領域を格子状に分割し、
ポアソン方程式の近似関数の行列表現〔f〕と前記仮想電荷αとから
{b}=〔f〕{α}
によりポアソン方程式の駆動項bの分布を求め、
各格子点上での電位Ψの水平及び鉛直方向の偏微分係数∂Ψ/∂x,∂Ψ/∂yを求め、
その電位の偏微分係数と前記駆動項bの分布から対数比抵抗Rの偏微分係数∂R/∂x,∂R/∂yを求め、
次に対数比抵抗の偏微分係数を積分して対数比抵抗の相対分布を求め、
変化率分布を平均値が0になるように規格化し、その規格化した相対値分布と別に求めた平均比抵抗ρave から解析領域の絶対値比抵抗分布を求める
ことを特徴とする二重相反境界要素法による地下比抵抗構造解析方法。 - 境界型微分方程式を解く際に、地表面上の電位の測定点と測定点との間のみならず、その測定範囲から外れた測線の周辺部でも法線方向の電流が0という境界条件を付加する請求項1記載の相反境界要素法による地下比抵抗構造解析方法。
- 地形が平坦でない場合に、地形の影響はあるが地下構造は均一と仮定し、別に求めた平均比抵抗ρave を用いて有限要素法又は境界要素法により地形の影響を含むポアソン方程式の一般解を求める請求項1又は2記載の二重相反境界要素法による地下比抵抗構造解析方法。
- 測線をサブ測線に分割し、サブ測線同士は探査深度相当以上互いに重複させて電位分布を求め、請求項1乃至3の解析方法でサブ領域の解析結果を求め、そのサブ領域の解析結果をつなぎ合わせて全領域の比抵抗分布を求める二重相反境界要素法による地下比抵抗構造解析方法。
- 請求項1乃至4で求めた二重相反境界要素法による地下比抵抗構造を、電気的地下探査における逐次修正型の逆解析法の初期モデルとして使用する地下比抵抗構造解析方法。
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