JP3892281B2 - 引き戸 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数枚の戸板を相互に連動させて開閉する構造を有した引き戸に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、引き戸の戸板単体での幅をできるだけ小さくして全開時における引き戸の収容スペースの幅寸法を節約するとともに全開時における開口部を広くする目的で、複数枚の戸板を相互に連動させて開閉する構造を有した引き戸が開発されている。代表的なものとしては、3枚の戸板それぞれから軸を面板方向と直交する方向に突出させ、前記軸にリンクメンバを直接取り付ける構成のものが広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、このように戸板から軸を突出させてリンクメンバを直接取り付けるのでは、引き戸の開放の際、戸板は軸に当たる位置までしか移動できず、全開時における開口部がそれだけ小さくなり、開口部を広く取る効果が減殺されてしまう。
【0004】
本発明は以上に述べた問題を解決するために、全開位置において隣り合う戸板の一端面を面一ないし略面一とすることを可能にしたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明に係る引き戸は、互いに平行な複数枚の戸板をリンク機構を介して相互に連動させるように連結し、これらの戸板がほぼ完全に重合する全開位置と全閉位置との間で移動可能に構成したものであって、前記リンク機構が、少なくとも、第1の戸板に平行で第1の戸板の運動をこの第1の戸板に隣接する第2の戸板に伝える第1のリンクメンバと、第1の戸板の裏側に設けられ第1のリンクメンバの回転中心をなす第1の回転軸と、第2の戸板の裏側に設けられる第2の回転軸と、前記第1のリンクメンバと前記第2の回転軸とを第4の回転軸を介して連結する第1の連結部材と、第2の戸板に平行で一端部を前記第2の回転軸及び前記第1の連結部材を介して第2の戸板に接続している第2のリンクメンバと、第3の戸板又は壁体の裏側に設けられ第2のリンクメンバの回転中心をなす第3の回転軸と、前記第2のリンクメンバの他端部と前記第3の回転軸とを連結する第2の連結部材とを具備するものであり、全閉位置から全開位置まで移動させる際に第1の戸板が前記第2の回転軸の軸心を越えてこれら第1及び第2の戸板の全開位置側の端面が略面一となる位置まで移動できるように前記第1の連結部材を前記第1の戸板に向かって開口した形状に構成しているとともに、第2の戸板が前記第3の回転軸の軸心を越えてこれら第2及び第3の戸板又は壁体の全開位置側の端面が略面一となる位置まで移動できるように前記第2の連結部材を前記第2の戸板に向かって開口した形状に構成していることを特徴とする。
【0006】
このようなものであれば、従来の戸板から回転軸を突出させてリンクメンバを直接取り付ける構成のものと異なり、戸板が回転軸に当たって移動が止まることなく回転軸の軸心を越えて移動できるので、回転軸の軸心から戸板の端面までの距離分だけ多く戸板を移動させて全開位置を隣り合う戸板の一端面を面一ないし略面一にする位置にすることができ、従って全開時における引き戸の収容スペースの幅寸法を節約しつつ開口部をより大きくすることができるようになる。
【0007】
本発明に好適に適用できる具体的な実施態様としては、3枚の戸板を前記リンク機構を介して連結し、第1及び第3の戸板の所定位置に前記第1及び第3の回転軸をそれぞれ設けるとともに、第2の戸板には回転軸を少なくとも上下方向に移動可能に設けたものや、2枚の戸板を前記リンク機構を介して壁体に連結し、第1の戸板及び壁体の所定位置に前記第1及び第3の回転軸をそれぞれ設けるとともに、第2の戸板には前記第2の回転軸を少なくとも上下方向に移動可能に設けたものが挙げられる。
【0008】
このような引き戸の厚さが増大しないようにしつつ、このような連結部材を小さいものにできるようにするには、前記連結部材が、戸板に向かって開口したコの字状又はL字状をなすものであるようにすればよい。
【0009】
このような形状であれば、隣接する戸板の間隔を連結部材の挿入に必要な最小限度に設定するだけで戸板の移動を干渉しないようにする効果を実現できるからである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0011】
本実施形態に係る引き戸Dは、全閉位置Sにある状態を裏側から見た斜視図を図1、全閉位置Sにある状態の平面図を図2、全開位置Oにある状態を裏側から見た斜視図を図3、全開位置Oにある状態の平面図を図4、分解斜視図を図5にそれぞれ示すように、第1の戸板1と、第2の戸板2と、第3の戸板3とをリンク機構を介して相互に連動させるように連結したものである。
【0012】
第1の戸板1、第2の戸板2、及び第3の戸板3は、それぞれ略矩形板状をなすものであり、それぞれ平行に配置してある。全閉位置Sにおいては、図1及び図2に示すように、第1の戸板1の全開位置O側の側端部の前方(裏側から見て奥)に第2の戸板2の全閉位置S側の側端部を、第2の戸板2の全開位置O側の側端部の前方(裏側から見て奥)に第3の戸板3の全閉位置S側の側端部をそれぞれ重合させて位置させた状態である。全開位置Oにおいては、これら第1の戸板1、第2の戸板2、及び第3の戸板3は略完全に重合している。また、本実施形態では通常この引き戸Dの開閉操作は第1の戸板1を全開位置Oと全閉位置Sとの間で水平移動させて行うようにし、この第1の戸板1の水平移動に連動して第2の戸板2が全開位置Oと全閉位置Sとの間で移動するようにしてある。また、第3の戸板3は、通常図示しないストッパ等を用いて建物の床体または壁体などに固定してある。
【0013】
しかして、本実施形態に係る引き戸Dは、第1の戸板1、第2の戸板2、及び第3の戸板3をリンク機構を介して相互に連動させるように連結したものである。具体的にこのリンク機構は、第1リンクメンバ4と、第2リンクメンバ5と、第1の回転軸X1と、第2の回転軸X2と、第3の回転軸X3と、第4の回転軸X4と、第1連結部材6と、第2連結部材7とからなる。これらリンク機構を構成する部材は、図1〜図4に示すように、すべて引き戸Dの裏側に配置してある。第1リンクメンバ4の一端部は第1の回転軸X1を介して第1の戸板1に回転可能に連結され、他端部は第2の回転軸X2、第4の回転軸X4、及び第1連結部材6を介して第2の戸板2に回転可能に連結されるようにしている。一方、第2リンクメンバ5の一端部は第2の回転軸X2及び第1連結部材6を介して第2の戸板2に回転可能に連結され、他端部は第3の回転軸X3及び第2連結部材7を介して第3の戸板3に回転可能に連結されるようにしている。第1の回転軸X1は、第1の戸板1の所定位置に設けられ、その軸心が第1リンクメンバ4の回転中心をなすようにしている。第2の回転軸X2は第2の戸板2に上下に移動可能に設けられている。第3の回転軸X3は第3の戸板3の所定位置に設けられ、その軸心が第2リンクメンバ5の回転中心をなすようにしている。第4の回転軸X4は第2の軸X2と同軸をなすように第1連結部材6に設けられている。第1連結部材6は第1リンクメンバ4と第2の回転軸X2との間に介在してこれらを連結している。また、第1連結部材6は第2リンクメンバ5と第2の回転軸X2との間にも介在してこれらを連結している。第2連結部材7は第2リンクメンバ5と第3の回転軸X3との間に介在してこれらを連結している。そして、第1連結部材6は、第1の戸板1を第2の回転軸X2の軸心を越えて全開位置Oと全閉位置Sとの間で移動できるように構成してあり、第2連結部材7は、第2の戸板2を第3の回転軸X3の軸心を越えて全開位置Oと全閉位置Sとの間で移動できるように構成してある。
【0014】
本実施形態では、このように構成したリンク機構において、第1の回転軸X1、第2の回転軸X2、及び第3の回転軸X3それぞれの軸心を3つの頂点とする三角形は、戸板の位置に関わらず、第1の回転軸X1と第2の回転軸X2との間の距離と、第2の回転軸X2と第3の回転軸X3との間の距離が等しい二等辺三角形をなし、この等しい二辺に沿って第1リンクメンバ4及び第2リンクメンバ5を配置してある。従って、第2の回転軸X2は第1の回転軸X1と第3の回転軸X3とを結ぶ線分の垂直二等分線上にある。なお、本実施形態では、第1の回転軸X1と第3の回転軸X3との高さ位置は一致させてあり、前記垂直二等分線は鉛直方向に延びる。また、第2の回転軸X2はこれら第1の回転軸X1及び第3の回転軸X3より上方に配置してある。
【0015】
さらに詳述すると、第1リンクメンバ4は、細長い板状をなし、第1の戸板1の裏側に、この第1の戸板1と平行に配置している。そして、前述したようにその一端部を第1の回転軸X1を介して第1の戸板1に、他端部を第4の回転軸X4、第1連結部材6及び第2の回転軸X2を介して第2の戸板2にそれぞれ回転可能に連結している。なお、本実施形態では、一端部に第1の回転軸X1を挿し通すための第1軸挿通孔4aを、他端部には第1連結部材6と連結するための第4軸挿通孔4bをそれぞれ設けてある。また、第1の戸板1との間には中空のパイプ状をなすスペーサ41を介在させてこの第1リンクメンバ4が奥行き方向に動かないようにしてある。
【0016】
第2リンクメンバ5は、細長い板状をなし、第1の戸板と第2の戸板2との中間にこれら第1の戸板及び第2の戸板2と平行に配置している。そして、前述したようにその一端部を第1連結部材6及び第2の回転軸X2を介して第2の戸板2に、他端部を第2連結部材7及び第3の回転軸X3を介して第3の戸板3にそれぞれ回転可能に連結している。なお、本実施形態では、図1、図5、図6及び図7に示すように、その一端部に第1連結部材6を、他端部に第2連結部材7をそれぞれ一体に設けてある。
【0017】
第1の回転軸X1は、本実施形態ではその一端部に雄ねじ部を、他端部にはねじ頭部を備えてなるものであり、この雄ねじ部を、第1の戸板1の下端部の全開位置O側の端部の所定位置に設けられた雌ねじ穴H1にねじ止めして固定するようにしてある。そして、前記ねじ頭部と第1の戸板1とにより第1リンクメンバ4の下端部を挟み、第1リンクメンバ4をこの第1の回転軸X1の軸心を中心として回転できるように取り付けてある。
【0018】
第2の回転軸X2は、本実施形態ではその先端部に転動輪Tを設けてあり、この転動輪Tが第2の回転軸X2の軸心を中心として回転するようにしてある。そして、この転動輪Tを、第2の戸板2の上部の全開位置O側の端部に設けた鉛直方向に延びる溝M1に嵌め込み、この転動輪Tと連動して上下に移動可能に第2の戸板2に取り付けるようにしてある。また、この第2の回転軸X2は、後述する第1連結部材6の第2軸受け部材61の先端部に固定してある。そして、この第1連結部材6と一体に設けた第2リンクメンバ5の一端をこの第2の回転軸X2と連動させるようにしてある。なお、前記溝M1には、第2の回転軸X2及び転動輪Tが奥行き方向に動かないようにするために、転動輪Tの第2の回転軸X2側の面に対向する面を有する押さえ壁M1aを設けてある。
【0019】
第3の回転軸X3は、本実施形態ではその一端部に雄ねじ部を、他端部にはねじ頭部を備えてなるものであり、この雄ねじ部を、第3の戸板3の下端部の全開位置O側の端部の所定位置に設けられた雌ねじ穴H2にねじ止めして固定するようにしてある。そして、前記ねじ頭部と第3の戸板3とにより後述する第2連結部材7の基板71を挟み、第2連結部材7に一体に設けた第2リンクメンバ5をこの第3の回転軸X3の軸心を中心として回転できるように取り付けてある。なお、本実施形態では、図1に示すように、前記ねじ頭部の突出を抑え、引き戸D全体の厚さを抑えるために、この第3の回転軸X3を挿し通すための前記基板71に設けた第3軸挿通孔71aの周辺の部分71bを、雌ねじ穴H2周辺に形成した座繰り部31に収納可能に構成してある。
【0020】
第4の回転軸X4は、第1リンクメンバ4を第1連結部材6を介して第2の戸板2に回転可能に連結するためのものである。また、その一端部に雄ねじ部を、他端部にはねじ頭部を備えてなるものである。そしてこの雄ねじ部を、前記第1リンクメンバ4に設けた挿通孔4bに挿し通し、第1連結部材6の後述する第4軸受け部材62に設けた雌ねじ穴62aにねじ止めするようにしてある。そして、前記ねじ頭部と前記第4軸受け部材62とにより第1リンクメンバ4を挟み、第1リンクメンバ4の一端をこの第4の回転軸X4と連動させるように取り付けてある。
【0021】
第1連結部材6は、図1〜図4に示すように、戸板と平行な板状をなす第2軸受け部材61と、同じく戸板と平行な板状をなす第4軸受け部材62と、側板63とからなり、側板63の一端を第2軸受け部材61の全開位置O側の側端、他端を第4軸受け部材62の全開位置O側の側端にそれぞれ連結して断面視コの字状をなすようにしてある。また、図6及び図7に示すように、第2軸受け部材61の先端部には第2の回転軸X2を固定してある。第4軸受け部材62の先端部には第4の回転軸X4を第2の回転軸X2と同軸に固定するための雌ねじ穴62aを備えている。全開位置Oにおいては、第1の戸板1と第2の戸板2との中間に第2軸受け部材61、第1の戸板1を挟んで第2軸受け部材61と反対側に第4軸受け部材62、第1の戸板の側端面1aとわずかに隙間をおいて側板63がそれぞれ位置し、第1の戸板1に向かって開口する形状をなす。すなわち、第1の戸板1は第2の回転軸X2の後方(裏側から見て手前)に位置する。ここで、第1の戸板1と第2軸受け部材61との間隔、及び第2軸受け部材61と第2の戸板2との間隔はわずかである。すなわち、第1の戸板1と第2の戸板2との間隔は、第2軸受け部材61の厚みと略同一であり、この第2軸受け部材61を挿入し得る略必要最低限に設定している。そして、図3及び図4に示すように、連結材63の側面63aは、全開位置Oにおいては第3の戸板3の側面3aと面一になるようにしてある。一方、全閉位置Sにおいては、前述したように第1の戸板1の全開位置O側の側端部の前方(裏側から見て奥)に第2の戸板2の全閉位置S側の側端部を重合させて配置した状態であり、第1連結部材6は第2の戸板2の上部の全開位置O側の端部に位置する。このとき、図1及び図2に示すように、第1の戸板1は第2の回転軸X2の後方(裏側から見て手前)にはない。
【0022】
第2連結部材7は、図1〜図4に示すように、基板71と、側板72とからなり、側板72の一端を基板71の全開位置O側の側端に連結して、断面視L字状をなすようにしてある。側板72の他端は第2リンクメンバ5の全開位置O側の側端に連結してある。全開位置Oにおいては、第2の戸板2と第3の戸板3との中間に基板71、第2の戸板の側端面2aとわずかに隙間をおいて側板72がそれぞれ位置し、第2の戸板2に向かって開口している。第2の戸板2と基板71との間隔、及び基板71と第3の戸板3との間隔はわずかである。すなわち、第2の戸板2と第3の戸板3との間隔は、基板71の厚みと略同一であり、この基板71を挿入し得る略必要最低限に設定している。本実施形態では、基板71及び側板72にはそれぞれ第2の戸板2の正面2b及び側面2aに対向する内向き面71c、72bを備えている。すなわち、第2の戸板2は第3の回転軸X3の後方(裏側から見て手前)に位置する。また、図6及び図7に示すように、基板71の先端部に第3の回転軸X3を挿し通すための第3軸挿通孔71aを備えている。そして、この第2連結部材7の側板72の側面72aも、図3及び図4に示すように、全開位置Oにおいては第3の戸板3の側面3aと面一になるようにしてある。一方、全閉位置Sにおいては、前述したように第2の戸板2の全開位置O側の側端部の前方(裏側から見て奥)に第3の戸板3の全閉位置S側の側端部を重合させて配置した状態であり、第2連結部材7は第3の戸板3の下端部の全開位置O側の端部に位置する。このとき、図1及び図2に示すように、第2の戸板2は第3の回転軸X3の後方(裏側から見て手前)にはない。
【0023】
この引き戸Dを開閉する方法を以下に示す。まず、第1の戸板1を全開位置Oに向けて平行に移動させる。すると、第1の戸板に固定して設けた第1の回転軸X1も移動する。一方、前述のように、第3の戸板3は移動しないように固定してあるので、この第3の戸板3に固定して設けた第3の回転軸X3も移動しない。従って、第1の回転軸X1と第3の回転軸X3との間の間隔が狭まる。すると、第1リンクメンバ4により連結された第1の回転軸X1と第2の回転軸X2との距離、及び第2リンクメンバ5により連結された第2の回転軸X2と第3の回転軸X3との距離を一定に保つために、第1リンクメンバ4が第1の回転軸X1を中心に、第2リンクメンバ5が第3の回転軸X3を中心にそれぞれ回転し、第2の回転軸X2を第1の回転軸X1と第3の回転軸X3とを結ぶ線分の垂直二等分線に沿って上方に移動させる。この垂直二等分線は、第1の回転軸X1の移動距離の半分だけ平行移動する。このとき、第2の戸板2は第2の回転軸X2の先端に備えられた転動輪Tに溝M1を押され、第1の回転軸X1を固定した第1の戸板1の移動距離の半分だけ平行移動する。そして、第1の戸板1が全開位置Oに移動すると、この第1の戸板1に連動して第2の戸板2も全開位置Oに移動する。このとき、前述したように全閉位置Sにおいては第2の回転軸X2の後方には第1の戸板1はなく、第3の回転軸の後方には第2の戸板2はないのに対して、全開位置Oにおいてはこれも前述したように第2の回転軸X2の後方に第1の戸板1が、第3の回転軸の後方に第2の戸板2がそれぞれある。従って、全閉位置Sから全開位置Oにこの引き戸Dを移動すると、第1の戸板1は第2の回転軸X2、第2の戸板2は第3の回転軸X3の軸心を越える。この引き戸Dを全開位置Oから全閉位置Sに移動させるには、逆に第1の戸板1を全閉位置Sに向けて移動させれば、同様に、このリンク機構の作用により第2の戸板2は連動して全閉位置Sに向かって移動し、第1の戸板1が全閉位置Sに到達すると第2の戸板2も全閉位置Sに到達する。
【0024】
以上詳述したように、第1の戸板1が第2の回転軸X2の軸心を越えて、また、第2の戸板2が第3の回転軸X3の軸心を越えてそれぞれ全閉位置Sから全開位置Oに移動できるように第1連結部材6及び第2連結部材7を構成した。その結果、第2の回転軸を第2の戸板から面板方向に突出させて第1リンクメンバ及び第2リンクメンバに、第3の回転軸を第3の戸板から面板方向と直交する方向に突出させて第2リンクメンバにそれぞれ連結させる従来の構成に比べ、回転軸X2又はX3の軸心と戸板1又は2の側端との距離分だけ多く戸板1又は2を移動でき、さらに第1〜第3の戸板1〜3の全開位置O側の端面を略面一にすることができるので、全開位置Oにおける引き戸Dの収容スペースの幅寸法を節約しつつ開口部をより大きくすることができる。
【0025】
そして、第2の戸板2の上部の全開位置O側の端部に設けた第2の回転軸X2に連結された第1連結部材6を、第1の戸板1に向かって開口した断面視コの字状をなして全開位置Oにおいて第1の戸板1の全開位置O側の側端部を迂回するよな形状にしたので、第1の戸板1の移動を干渉しないようにする効果を、第1の戸板1と第2の戸板2との間の間隔をこの第1連結部材6を挿入し得る最小限度に設定し、上下のレール等の障害にならないようにして実現できるとともに、この第1連結部材6が第1の戸板1を迂回する距離を最短にできるので、この第1連結部材6を小さくできる。また、第3の戸板3の下端部の全開位置O側の端部に設けた第3の回転軸X3に連結された第2連結部材7を、第2の戸板2に向かって開口した断面視L字状をなすようにして全開位置Oにおいて第2の戸板2の全開位置O側の側端部を迂回する形状にしたので、第2の戸板2の移動を干渉しないようにする効果を、第2の戸板2と第3の戸板3との間の間隔をこの第2連結部材7を挿入し得る最小限度に設定し、上下のレール等の障害にならないようにして実現できるとともに、この第2連結部材7が第2の戸板2を迂回する距離を最短にできるので、この第2連結部材7を小さくできる。そして、第1の戸板1と第2の戸板2との間の間隔及び第2の戸板2と第3の戸板3との間の間隔を、それぞれ第1連結部材6及び第2連結部材7を挿入し得る必要最低限度に設定したことから、引き戸Dの厚さの増加を必要最小限に抑えることができる。
【0026】
なお、本発明は以上述べたような実施形態に限られない。例えば、第3の戸板でなく、第1の戸板1を固定するように構成し、第3の戸板3を移動させるようにしてもよい。また、第3の戸板を壁体等に固定する代わりに、最初から第2の戸板と壁体とをリンクメンバを介して連結するようにし、第1の戸板及び壁体に回転軸を固定して、第2の戸板に回転軸を上下方向に移動可能に取り付けるように構成してもよい。これらの実施形態でも、前記実施形態と同様の効果が得られる。
【0027】
また、第2リンクメンバ、第1連結部材、及び第2連結部材を一体に備えるようにする代わりに、第1連結部材を構成し、第2の軸及びその先端に取り付けた車輪と一体をなす車軸受け部材、同じく第1連結部材を構成し、第4の軸を取り付けるための第4軸受け部材、及び第2連結部材を構成し、第3の軸を取り付けるための第3軸受け部材をそれぞれ別体に構成して第1及び第2の戸板の方向に開口した断面視コの字状の第2リンクメンバに取り付ける態様も考えられる。この場合、車軸受け部材、第4軸受け部材、及び第3軸受け部材を断面視L字状にしてそれぞれ第2リンクメンバの側面に固定するようにするとよい。
【0028】
第1連結部材及び第2連結部材の断面形状は、コの字状やL字状にする必要はなく、例えば戸板に向かって開口したU字状や4分の1円弧状等、全開位置において戸板の側端部を迂回できる形状であれば何でもよい。
【0029】
加えて、固定して取り付ける回転軸の高さ位置をそろえる必要はないし、3つの回転軸それぞれの軸心を3つの頂点となす三角形が二等辺三角形となるようにする必要はない。この場合移動可能に構成した回転軸は、この回転軸を取り付けた戸板に対して水平方向にも動き得るが、斜め方向の直線状等、移動可能に構成した回転軸の軌跡に対応してこの回転軸を取り付ける溝を設ければよい。
【0030】
さらに、連結部材の形状は、全開位置において戸板の上部を上方からかぶせるような形状等、戸板を全開位置と全閉位置との間で前記軸の軸心を越えて移動できるように構成してあればよい。
【0031】
そして、4枚以上の戸板をリンク機構を介して連動させるようにしたもの、または3枚の戸板を壁体に連結し、リンク機構を介して連動させるようにしたものを、同様に戸板を全開位置と全閉位置との間で前記軸の軸心を越えて移動できるように構成してもよい。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、以上に詳述したように、引き戸の戸板を連動させるリンク機構を、戸板の運動を隣接する戸板に伝えるリンクメンバと、戸板に連結され、リンクメンバの回転中心をなす回転軸と、前記リンクメンバと前記回転軸との間に介在してこれらを連結する連結部材とを具備するものとし、戸板が前記回転軸の軸心を越えて移動できるように前記連結部材を構成したものである。このように構成したことにより、従来の戸板から回転軸を突出させてリンクメンバを直接取り付ける構成のものと異なり、戸板が回転軸に当たって移動が止まることがなくなるので、回転軸の軸心から戸板の端面までの距離だけさらに戸板を移動させて全開位置を隣り合う戸板の一端面を面一ないし略面一にする位置にすることができ、従って全開時における引き戸の収容スペースの幅寸法を節約しつつ開口部をより大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における引き戸の全閉位置を示す裏側からの斜視図。
【図2】同実施形態における引き戸の全閉位置を示す平面図。
【図3】同実施形態における引き戸の全開位置を示す裏側からの斜視図。
【図4】同実施形態における引き戸の全開位置を示す平面図。
【図5】同実施形態における引き戸の分解斜視図。
【図6】同実施形態における第2リンクメンバ、第1連結部材、及び第2連結部材を示す側面図。
【図7】同実施形態における第2リンクメンバ、第1連結部材、及び第2連結部材を示す正面図。
【符号の説明】
D…引き戸
1…第1の戸板
2…第2の戸板
3…第3の戸板
4…第1リンクメンバ
5…第2リンクメンバ
6…第1連結部材
7…第2連結部材
X1…第1の回転軸
X2…第2の回転軸
X3…第3の回転軸
O…全開位置
S…全閉位置
Claims (4)
- 互いに平行な複数枚の戸板をリンク機構を介して相互に連動させるように連結し、これらの戸板がほぼ完全に重合する全開位置と全閉位置との間で移動可能に構成したものであって、前記リンク機構が、少なくとも、第1の戸板に平行で第1の戸板の運動をこの第1の戸板に隣接する第2の戸板に伝える第1のリンクメンバと、第1の戸板の裏側に設けられ第1のリンクメンバの回転中心をなす第1の回転軸と、第2の戸板の裏側に設けられる第2の回転軸と、前記第1のリンクメンバと前記第2の回転軸とを第4の回転軸を介して連結する第1の連結部材と、第2の戸板に平行で一端部を前記第2の回転軸及び前記第1の連結部材を介して第2の戸板に接続している第2のリンクメンバと、第3の戸板又は壁体の裏側に設けられ第2のリンクメンバの回転中心をなす第3の回転軸と、前記第2のリンクメンバの他端部と前記第3の回転軸とを連結する第2の連結部材とを具備するものであり、全閉位置から全開位置まで移動させる際に第1の戸板が前記第2の回転軸の軸心を越えてこれら第1及び第2の戸板の全開位置側の端面が略面一となる位置まで移動できるように前記第1の連結部材を前記第1の戸板に向かって開口した形状に構成しているとともに、第2の戸板が前記第3の回転軸の軸心を越えてこれら第2及び第3の戸板又は壁体の全開位置側の端面が略面一となる位置まで移動できるように前記第2の連結部材を前記第2の戸板に向かって開口した形状に構成していることを特徴とする引き戸。
- 3枚の戸板を前記リンク機構を介して連結し、第1及び第3の戸板の所定位置に前記第1及び第3の回転軸をそれぞれ設けるとともに、第2の戸板には回転軸を少なくとも上下方向に移動可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の引き戸。
- 2枚の戸板を前記リンク機構を介して壁体に連結し、第1の戸板及び壁体の所定位置に前記第1及び第3の回転軸をそれぞれ設けるとともに、第2の戸板には前記第2の回転軸を少なくとも上下方向に移動可能に設けたことを特徴とする請求項1記載の引き戸。
- 前記連結部材が、戸板に向かって開口したコの字状又はL字状をなすものであることを特徴とする請求項1、2又は3記載の引き戸。
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