JP3892154B2 - 平面アンテナ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、マルチパスによる影響を受けにくくした平面アンテナ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通信衛星を用いた通信システムや放送衛星を用いた放送システムにおいては、電離層を通過するマイクロ波帯の電波が用いられている。また、その受信アンテナとして、小型化の容易なマイクロストリップアンテナ等を用いた平面アンテナ装置が用いられている。
【0003】
一般に、受信アンテナを設計する上で、マルチパスの影響を如何に受けないようにするかが設計上の1つのポイントとなる。たとえば平面アンテナ装置の正面を天頂方向を向けて配置した場合、直接波は仰角が20°程度から90°の範囲で入射するが、反射波は水平面より下からも入射する。たとえば地面や地上の低い位置にある物体で反射した反射波は20°程度以下の低仰角で入射したり、水平面より下方向から入射する場合が多い。
【0004】
マイクロストリップアンテナ等を用いた平面アンテナ装置の場合、それ単体では、平面アンテナ装置の下面側から入射する電波についても感度を有するため、そのままではマルチパスによる影響を受けやすい。
【0005】
たとえばGPS衛星から送信される1.5GHz帯の電波を受信して、キャリア位相をもとにしたディファレンシャルGPS測位を行う場合、マルチパスによって測位精度が大きく影響を受ける。そのため、高い測位精度を維持するためにはマルチパスを極力受けないようにする必要がある。
【0006】
そこで低仰角で入射する電波や水平面より下方向から入射する電波を受けないようにするために、図6に示すようにアンテナの周囲に水平方向に広がるグランドプレーンを設けたり、図8に示すようにアンテナの周囲にチョークリングを設けたりしている。
【0007】
図6および図8において、(A)はアンテナの斜視図、(B)はアンテナの側面図である。図6のように、アンテナの周囲に水平方向に広がる金属板から成るグランドプレーンを設けることによって、アンテナの下面から入射する電波が回り込むのを防止することができる。
【0008】
また、図8に示すように、アンテナの周囲に水平方向に広がる金属板から成るグランドプレーンを設けるとともに、そのグランドプレーンの上面に同心円状の導体壁によるチョークリングを設けることにより、低仰角から入射する電波を阻止することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
上記グランドプレーンは、地面、アンテナケース、マストなどで反射された電波がアンテナのエレメントに直接入射することを防止するが、発明者等の実験によれば、上記グランドプレーンを設けた平面アンテナ装置でも、下面から入射する反射波に対する抑圧が充分ではないことを見いだした。ここで発明者等の行った測定の結果を図7に示す。図において円周方向が方向角、半径方向が放射の強さである。天空を移動する衛星からの電波を受信する場合のように、平面アンテナ装置の正面を天頂方向に向けて配置した場合、図7の上部が仰角90°(天頂方向)、左右が仰角0°(水平方向)、下部が仰角−90°(真下の地面方向)に対応する。この例は右旋円偏波を選択受信する場合であり、図中の実線が右旋円偏波についての放射パターン、破線が左旋円偏波についての放射パターンであり、仰角90°から入射する右旋円偏波に対する放射の強さを0dBとして正規化している。アンテナ特性には可逆性が成り立つので、このアンテナが受信アンテナである場合、上記放射の強さは受信アンテナの感度と言うこともできる。円偏波された電波の反射波はその旋回方向が反転するため、右旋円偏波の地面等での反射波は左旋円偏波の電波としてアンテナの背面から入射される。
【0010】
このように、仰角−60°や−90°(真下方向)方向からの反射波に対する感度は−10dB〜−15dBと大きく、このアンテナの使用目的によっては充分とは言えない結果が得られた。
【0011】
これは、グランドプレーンに入射した電波がグランドプレーン自体から再放射されたり、アンテナケース(ハウジング)下部により反射されて、グランドプレーンに沿って伝搬し、グランドプレーンの表面側(アンテナの上面側)に回り込むことに起因しているものと考えられる。
【0012】
また、図8に示したチョークリングを設ける構造では直接波と反射波に関わらず、すなわち円偏波の旋回方向に関わらず、低仰角からの入射電波をすべて阻止してしまうので、仰角が20°程度から低い範囲で感度が低下するという問題があった。またチョークリングの構造上全体に大型化・重量化してしまうという問題もあった。
【0013】
この発明の目的は、グランドプレーンの裏面側からの入射波に対する感度を充分に抑圧してマルチパスによる影響をより受けにくくした平面アンテナ装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は、基板上に電極を形成してなる平面アンテナと、該平面アンテナの周囲で且つ前記平面アンテナと略同一平面に設けた導体板から成るグランドプレーンとを備えた平面アンテナ装置において、前記平面アンテナに対する、衛星からの電磁波の直接波を受ける直接波入射面とは反対面側の前記グランドプレーンの周辺部に、前記衛星からの電磁波の反射波に共振するチョークを設ける。この構造により、平面アンテナに対する直接波の入射面とは反対面側(グランドプレーンの下面側)から入射する電磁波はグランドプレーンの下面側の周辺部のチョークで共振し、トラップされる。したがって、グランドプレーンの下面側から入射した電波がグランドプレーン自体から再放射されたり、グランドプレーンの裏面側から表面側に回り込んで伝搬したりすることが効果的に防止される。その結果、反射波に対する感度を充分に抑圧できるようになる。
【0015】
またこの発明は、前記チョークを、前記グランドプレーンと該グランドプレーンに平行なリング状の導体板とによって構成し、該リング状の導体板の半径方向の幅を、阻止すべき電磁波の略半波長とする。この構造によれば、上記グランドプレーンとリング状の導体板とは、その径方向に両端が開放された半波長の共振器長を有する共振器として作用し、2つの開放端のうち何れの方向からの入射波に対してもその電磁波をトラップする。
【0016】
またこの発明は、前記チョークを、前記グランドプレーンと、該グランドプレーンに平行なリング状の導体板と、前記グランドプレーンと前記リング状の導体板との間を短絡する導体壁とによって構成し、前記リング状の導体板の縁から前記導体壁までの半径方向の幅を、阻止すべき電磁波の略1/4波長とする。この構造によれば一端開放、他端短絡の共振器として作用し、2つの開放端のうち何れの開放端から入射した電磁波をもトラップする。また上記導体壁はグランドプレーンにほぼ沿った方向(水平線に近い方向)で入射する反射波の伝搬を直接阻止する。
【0017】
【発明の実施の形態】
この発明の第1の実施形態に係る平面アンテナ装置の構成を図1〜図3を参照して説明する。
図1の(A)は平面アンテナ部分の斜視図、(B)は平面アンテナの誘電体板部分の断面図である。平面アンテナ10は、誘電体板1の下面にグランド電極2をほぼ全面に形成し、上面に方形のパッチ電極3を形成していて、これをレードーム4内に設けている。Pa,Pbはそれぞれ給電点であり、パッチ電極3の中心点を中心として幾何学的に90°の位置関係にある。ハイブリッド回路HBはこの2つの給電点Pa,Pbからの信号を90°の位相差をもって合成することによって励振信号を得て、それを受信回路へ導くようにしている。なお、図1においては給電点からハイブリッド回路への給電線を同軸ケーブルのように表したが、このハイブリッド回路HBなどは誘電体板1の下面側に平面回路として設ける。
【0018】
図2は平面アンテナ装置全体の構成を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。同図において5は金属板から成るグランドプレーンであり、平面アンテナ10の周囲に、平面アンテナを構成する誘電体板とほぼ同一平面上に配置している。このグランドプレーン5の下面側にはリング状の導体板(以下「リング状導体板」という。)6を導体壁7を介して取り付けている。導体壁7およびリング状導体板6はグランドプレーン5の全周に亘って連続して設けている。したがってこの導体壁7とグランドプレーン5およびリング状導体板6によって一端が開放され、他端が導体壁7によって短絡された共振器が構成される。等価的にはリング状導体板6の外縁を開放端、導体壁7を短絡端とする共振器がリング状導体板6の外周に沿って配列され、同時にリング状導体板6の内縁を開放端、導体壁7を短絡端とする共振器がリング状導体板6の内周に亘って配列されたものとなる。この平面アンテナ装置11は平面アンテナ10のケース下部をマスト9に取り付けることによって使用する。
【0019】
この平面アンテナ装置はGPS衛星から送信される1.5GHz帯の電波を受信するGPSアンテナであり、リング状導体板6の内径Dを280mm、径方向の幅Wを100mm、導体壁7の高さHを20mm、導体壁7の厚みを5mmとしている。上記W1,W2は1575MHzにおける1/4波長(47.5mm)に等しい。したがって上記共振器は、グランドプレーンの下面側から入射する1.5GHz帯の電波に共振して、それをトラップする。
【0020】
図3は上記平面アンテナ装置の放射パターンの測定例である。図7に示した特性と比較すれば明らかなように、水平線から真下の地面方向にかけて、入射波(反射波)に対する感度が充分に抑圧されている。これによりマルチパスによる影響を受けにくくなっていることが分かる。
【0021】
次に第2の実施形態に係る平面アンテナ装置の構成を図4および図5を参照して説明する。
図4は平面アンテナ装置全体の構成を示す図であり、(A)は斜視図、(B)は側面図である。同図において5は金属板から成るグランドプレーンであり、平面アンテナ10の周囲に、平面アンテナを構成する誘電体板とほぼ同一平面上に配置している。このグランドプレーン5の下面側にはリング状導体板6をスペーサ8を介して取り付けている。リング状導体板6はグランドプレーン5の全周に亘って連続して設けている。上記スペーサ8は合成樹脂製の板材からなり、グランドプレーン5とリング状導体板6との間に接着固定するか、ねじ留め固定する。
【0022】
この構成により、リング状導体板6およびグランドプレーン5によって、両端が開放された共振器として作用する。等価的にはリング状導体板6の外縁と内縁をそれぞれ開放端とする共振器がグランドプレーン5の外周に沿って配列されたものとなる。
【0023】
ここで、リング状導体板6の内径Dは280mm、径方向の幅Wは100mm、スペーサ8の高さHは20mmである。上記Wは1575MHzにおける1/2波長に略等しい。したがって上記共振器は、グランドプレーンの下面側から入射する1.5GHz帯のGPS測位用電波の反射波に共振して、それをトラップする。
【0024】
図5は上記平面アンテナ装置の放射パターンの測定例である。この場合も図7に示した特性と比較して明らかなように、水平線から真下の地面方向にかけて、入射波(反射波)に対する感度が充分に抑圧されている。これによりマルチパスによる影響を受けにくくなっていることが分かる。
【0025】
なお、図4に示した例では板材による複数のスペーサ8を用いて、これらをグランドプレーン5とリング状導体板6との間に等間隔に配置したが、これをリング状導体板6に沿って全周に亘って設けてもよい。その構造によればグランドプレーン5とリング状導体板6との間がスペーサで充填されることになり、比誘電率εrの高いスペーサを設けることによって、グランドプレーン5とリング状導体板6との間に構成される共振器の管内波長を√(εr )とし、所望の周波数に共振させる場合のリング状導体板6の幅Wおよびスペーサの高さHを小さくして全体に容易に小型化を図ることができる。
【0026】
【発明の効果】
請求項1、2に係る発明によれば、平面アンテナに対する直接波の入射面とは反対面側(グランドプレーンの下面側)から入射した電波がグランドプレーン自体から再放射されたり、グランドプレーンの裏面側から表面側に回り込んで伝搬されたりすることが効果的に防止され、また、2つの開放端のうち何れの方向からの入射波に対してもその電磁波がトラップされ、反射波に対する感度を充分に抑圧できるようになる。
【0027】
特に請求項2に係る発明によれば、グランドプレーンとリング状導体板との間を短絡する導体壁が、グランドプレーンにほぼ沿った方向(水平線に近い方向)で入射する反射波の伝搬を直接阻止するので、マルチパスによる影響を充分に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態に係る平面アンテナ装置の平面アンテナ部分の構成を示す図
【図2】同平面アンテナ装置全体の構成を示す図
【図3】同平面アンテナ装置の放射パターンの例を示す図
【図4】第2の実施形態に係る平面アンテナ装置の構成を示す図
【図5】同平面アンテナ装置の放射パターンの例を示す図
【図6】従来の平面アンテナ装置の構成を示す図
【図7】従来の平面アンテナ装置の放射パターンの例を示す図
【図8】従来のチョークリングを設けたアンテナ装置の構成例を示す図
【符号の説明】
1−誘電体板
2−グランド電極
3−パッチ電極
4−レードーム
5−グランドプレーン
6−リング状導体板
7−導体壁
8−スペーサ
9−マスト
10−平面アンテナ
11−平面アンテナ装置
Pa,Pb−給電点
Claims (2)
- 基板上に電極を形成して成る平面アンテナと、該平面アンテナの周囲で且つ前記平面アンテナと略同一平面に設けた導体板から成るグランドプレーンとを備えた平面アンテナ装置において、
前記平面アンテナに対する、衛星からの電磁波の直接波を受ける直接波入射面とは反対面側の前記グランドプレーンの周辺部に、半径方向の幅が前記電磁波の略半波長であり、前記グランドプレーンに平行なリング状の導体板と前記グランドプレーンとによって前記衛星からの電磁波の反射波に共振するチョークを設けたことを特徴とする平面アンテナ装置。 - 前記リング状の導体板の縁から前記導体壁までの半径方向の幅で、前記電磁波の略1/4波長の位置に、前記グランドプレーンと前記リング状の導体板との間を短絡する導体壁を設けた請求項1に記載の平面アンテナ装置。
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