JP3890265B2 - 飛行時間型二次イオン質量分析法による核酸チップの分析方法 - Google Patents

飛行時間型二次イオン質量分析法による核酸チップの分析方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の核酸プローブが基板上にマトリクス状に配置した、言謂、核酸チップを用いた標的核酸の検出、分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
DNAチップ、RNAチップ等、各種の核酸プローブ分子を基板上にマトリクス状に配置したもの、所謂、核酸チップは、ゲノム解析、あるいは、遺伝子の発現解析などの目的に利用されるようななってきた。また、それら核酸チップを利用した解析の結果は、癌、遺伝病、生活習慣病、感染症等の診断、予後予想、治療方針の決定等に重要な指標を提供するものと期待されている。
【0003】
核酸チップの作製方法には、幾つかの手法が知られている。DNAチップを例にとって説明すると、フォトリソグラフィーを用いて、直接基板上にDNAプローブを逐次的に合成していく方法(米国特許第5405783公報等)、あるいは、予め合成したDNA、または、cDNA(コンプリメンタリーDNA)を、基板上に供給し結合する方法(米国特許第5601980公報、特開平11‐187900号公報、Science Vol.270, 467, 1995等)が代表的なDNAチップの作製法である。
【0004】
一般的には、前記二種の方法によって核酸チップは作製され、このチップ上に固定されている核酸プローブと、検出を目的とする核酸分子、所謂、標的核酸を含有する検体溶液とをハイブリダイゼーション条件においた後、核酸チップ上のプローブ核酸と標的核酸のハイブリッド体形成の有無を何らかの手段によって検出することによって、所望の標的核酸の検出、分析が達成される。
【0005】
その際、解析の信頼性、すなわち、定量性、再現性を保証するためには、核酸チップの各マトリクスに存在するハイブリッドの量、つまり、密度を知ることが重要である。加えて、ハイブリダイゼーションの際に、標的核酸溶液(検体)に溶解している標的核酸の存在量、すなわち、濃度を知るためには、ハイブリダイゼーションに先立ち、マトリクス中のプローブ核酸の量、すなわち、同様に密度を知ることが、また、重要である。すなわち、仮に、標的核酸の溶解濃度が高く、ハイブリダイゼーションが十分起こり得るとしても、マトリクス中のプローブ核酸の密度が低い場合には、ハイブリッド量はプローブ核酸の密度に依る制限を受ける。その際には、見掛け上、標的核酸の溶解濃度は、実際の値と比較して、少なく見積もられる可能性がある。すなわち、マトリクス中の核酸プローブ密度と、ハイブリッド量の双方を、確度よく把握することが、実際の検体に含有される、標的核酸の濃度を正確に知る際に必要となる。
【0006】
また、実際にどのようなマトリクス形状(形状、サイズ、状態)で存在するかを知ること(イメージング)も、やはり、定量性、再現性の確保といった見地から重要である。さらに、後述するように、チップ作製に利用される基板に、マトリクスの位置を明示するための物理的アドレスを設けていない場合、例えば、インクジェット法によってプローブ溶液を微小な液滴として供給するような手法でバイオチップを作製した際、物理的アドレスがないため、検出の手段によっては、バイオチップ上のどのプローブ部分を分析しているか、判断に迷うという問題をかかえることにもなる。その場合、採用している検出手段そのものが、マトリクス位置の顕影化を可能とするものであることが必要となる。
【0007】
しかし、バイオチップ上のプローブは、原理的には単分子膜レベルとされており、基本的に、マトリクス位置の顕影化を含めた生体関連物質の分析には、きわめて高感度な表面解析技術が必要となる。
【0008】
前記の要件を満足する高感度な表面解析技術の一つとして、プローブ自体にアイソトープラベルを施す方法が知られてはいるが、ラベル化の手法が煩雑であり、利用されるアイソトープラベル自体、被爆源となる危険性を有し、そのため、特殊な施設、装置が必要等の理由で、汎用性の観点で難点を有している。
【0009】
別の方法として、プローブを蛍光標識する方法、または、プローブと特異的に結合する物質に蛍光標識を施し、これとプローブを結合させる方法、すなわち、DNAチップにおいては、蛍光ハイブリダイゼーション法が考えられる。しかしながら、標識に利用する蛍光色素の安定性、蛍光クエンチング、あるいは、蛍光色素の基板表面への非特異的吸着、さらには、特異的結合(ハイブリダイゼーション)の定量性(安定性、再現性)等、高い定量性を達成する上では、種々の問題が存在しており、プローブ自体の存在量を定量的に把握するには、なお課題が残る。
【0010】
その他、一般的な検出対象に利用可能な高感度表面分析手段として、FT−IR(フーリエ変換赤外分光)法を用いたATR法、XPS(X線光電子分光)法等があるが、いずれも、生体関連物質である、核酸チップの核酸プローブ自体の定量的分析、核酸チップ上に形成されているハイブリッド体の定量的分析、あるいは、イメージングには十分な感度を有しているとはいえない。特に、核酸チップの作製用基板として、一般的なガラスを用いる場合には、例えば、FT−IR(ATR)法では、基板のガラス自体に起因する吸収の影響、また、XPS法では、ガラス自体は絶縁性材料であるため、チャージアップの影響等があり、有効な分析手段とはいえない。
【0011】
さらに、他の高感度表面分析手段としては、動的二次イオン質量分析法(dynamic-SIMS)があるが、この手法では、二次イオンを生成する過程で、有機化合物を小さいフラグメントイオン、または粒子にまで分解している。そのため、質量スペクトルから得られる化学構造情報は多くなく、例えば、構成する塩基は共通した四種しかない核酸関連物質のような有機物の分析には、得られる情報は不十分であり、汎用的に利用するには適していない。
【0012】
これに対して、同じく二次イオン質量分析法の一手法として知られている、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF−SIMS)法は、固体試料の最表面にどのような原子または分子が存在するかを調べるための分析方法であり、下記する特長を持つ。すなわち、109atoms/cm2(最表面1原子層の1/105に相当する量)の極微量成分の検出能があること、有機物、無機物のどちらにも適用できること、表面に存在するすべての元素や化合物を測定できること、試料表面に存在する物質からの二次イオンのイメージングが可能なことである。
【0013】
以下に、この飛行時間型二次イオン質量分析法の原理を簡単に説明する。
【0014】
高真空中において、高速のイオンビーム(一次イオン)を固体試料表面に照射すると、スパッタリング現象によって表面の構成成分が真空中に放出される。この過程で発生する正または負の電荷を帯びたイオン(二次イオン)を、電場によって一方向に収束し、一定距離だけ離れた位置で検出する。スパッタの際には、試料表面の組成に応じて、様々な質量をもった二次イオンが発生するが、一定の電界中では、質量の軽いイオンほど早く、反対に重いイオンほど遅い速度で飛行する。そのため、二次イオンが発生してから、検出器に到達するまでの時間(飛行時間)を測定することで、発生した二次イオンの質量を分析することができる。
【0015】
一方、dynamic−SIMS法では、既に述べたように、イオン化の際、有機化合物は小さいフラグメントイオンまたは粒子にまで分解してしまうため、質量スペクトルから得られる化学構造情報、例えば、質量範囲は限定されるのに対し、TOF−SIMS法では、一次イオン照射量が著しく少ないため、有機化合物は化学構造を保った状態でイオン化され、幅の広い質量範囲で測定される質量スペクトルから有機化合物の構造をより直接的に知ることができる。加えて、固体試料表面の最も外側で発生した二次イオンのみが、真空中へ放出されるので、試料の最表面(深さ数Å程度)の情報を、選択的に得ることができる。
【0016】
前記測定原理を採用するTOF−SIMS装置には、大きく分けて、セクター型とリフレクトロン型のふたつのタイプがある。この二方式間の違いの一つは、被分析試料を固定するホルダの電気的な接地方法である。セクター型では、装置の機構上、固定ホルダに数kVの正または負の電圧を印加することで、発生した二次イオンを質量分析計に導いているのに対し、リフレクトロン型では、固定ホルダは接地し、二次イオン引き出し電極に数kVから数10kVの正または負の電圧を印加することで、二次イオンを質量分析計に導いている。
【0017】
TOF−SIMS法では、正の一次イオンが多用されるが、一次イオンの極性にかかわらず正の二次イオンと負の二次イオンが発生する。また、一次イオンの極性に依らず、一般的な測定条件では、一次イオンの照射により二次電子が発生し、二次電子の発生量は一次イオン量に比べて多量であるために、結果として、被分析試料の表面は正に帯電し易く、この帯電電荷が過剰(所謂、チャージアップ状態)になると、定量的な測定に支障をきたすことになる。このチャージアップに関して、装置構成を考えると、セクター型装置を用いて、絶縁物の負の二次イオンを測定する場合に、最も大きく正に帯電し得るといえる(発生した二次電子がすべて、上記の正電圧を印加した二次イオン引き出し電極に向かってしまうため)。
【0018】
上記チャージアップの正帯電を中和するため、セクター型、リフレクトロン型の両タイプとも、帯電中和用のパルス型電子銃を装備することが多い。このパルス型電子銃による、具体的な帯電中和方法は、一次イオン(サブ〜数nsecパルス)照射、正または負の二次イオンの飛行時間計測を行った後、次の一次イオンパルスを照射するまでの間に、上記パルス型電子銃からの電子線を被分析試料に一定時間照射する工程を設けるものである。なお、パルス型電子線から電子線を被分析試料に照射する間は、セクター型においては、試料ホルダへの電圧印加、また、リフレクトロン型においては、二次イオン引き出し電極への電圧印加はともに停止され、それぞれ接地される。
【0019】
この帯電中和方法により、チャージアップした正帯電は緩和され(若しくは解消し)、絶縁物の分析が可能となることが多い。なお、セクター型装置を使った絶縁物の測定で、負の二次イオンを測定する場合に、最も大きく正に帯電し易いため、帯電中和のマージンは、この測定形態が最も狭い。いずれにしても、チャージアップを回避するには、常時、試料ホルダが電気的に接地されているリフレクトロン型装置を使う方が、セクター型装置を使うよりも(一般的には)有利である。特に、被分析試料の導電率が低い場合(抵抗率が高い、もしくは、誘電率が高いと言い換えることができる)、例えば、ガラス等の場合には、リフレクトロン型装置の方が、定量的な測定に適しているといえる。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
さて、リフレクトロン型であれ、セクター型であれ、TOF−SIMS法は、極めて感度の高い分析方法であるため、チャージアップの影響が少ない被分析試料、例えば、導電性に優れた金基板上に単分子膜レベルで形成されたオリゴヌクレオチドを分析することが可能である(Proceeding of the 12thInternational Conference on Secondary Ion Mass Spectrometry 951, 1999)。該文献には、基板上に固定化されたDNA、および、PNAのTOF−SIMS法による分析結果が報告されており、TOF−SIMS法によって検出されるフラグメントイオンとして、DNAプローブの場合には、リン酸バックボーン由来のPO2 -とPO3 -イオン、塩基由来の(チミン−H)-イオン、また、PNAプローブの場合には、やはり(チミン−H)-イオンを、検出した事例が挙げられている。
【0021】
しかしながら、上述のTOF−SIMS法を検出手段として、一般的に用いられている方法であるDNAチップを用いて、標的DNAを検出することにより、所望の遺伝子情報を得ようとすると、
(1)TOF−SIMS法は表面近傍のごく薄い層のみが検出されること、
(2)プローブDNAと標的DNAから生起するフラグメントイオン種が同一である、という二つの理由により、標的DNAとのハイブリッド体の有無を特異的に検出することが困難であるという問題を生ずることになる。
【0022】
この課題は、例えば、DNAチップの場合、プローブ形成後と、ハイブリッド形成後に、それぞれ、チップを分析すれば、ハイブリッド形成に付随して、検出されるフラグメントイオンの増強を把握することにより、ある程度は解決できる可能性がある。但し、本質的に検出されるフラグメントイオンが同一であるため、量的な分析における曖昧さを完全に克服することはできない。加えて、分析を二度にわたって実施しなければならないという操作上の手間、さらに、一旦プローブチップを分析環境(超高真空)下におくことに伴い、ハイブリダイゼーションによる標的DNAの検出に先立ち、核酸プローブにダメージを与える可能性があり、この二つの問題が、新たに生起することになる。
【0023】
上述する問題を回避する手段の一つとして、プローブとして、PNA(ペプチド核酸)を固相に結合して、標的核酸とハイブリッド体を形成させる方法がある(J. C. Feldner et al:SIMS XIII国際会議; 2001年11月11日〜16日、奈良)。この方法を採用すると、プローブに利用するペプチド核酸は、塩基部分はDNAと同じではあるが、リン酸バックボーンを持たないので、標的核酸のリン酸バックボーンに由来するフラグメントイオンを検出することで、PNAプローブと標的核酸とのハイブリッド形成の確認を行うことが可能となる。
【0024】
しかしながら、DNAと比較して、ペプチド核酸自体、作製に要する費用は高いため、ペプチド核酸をプローブとしたチップを利用して、遺伝子情報の取得に要するコストは高いものとなり、実用的な観点では、大きな難点となる。また、各プローブ、および、各標的物資の分子量、鎖長等は必ずしも同じではなく、前記のリン酸バックボーンに由来するフラグメントイオン、ペプチド鎖バックボーンに由来するフラグメントイオンの相違のみを利用する手法では、定量性の観点でも、本質的な課題を残すことになる。
【0025】
従って、プローブと標的核酸とのハイブリッド体を形成した状態でも、その検出効率が優れ、同時に定量的な検出が可能なフラグメントイオンを供出可能なプローブ核酸の標識方法が望まれていた。
【0026】
検出効率が優れたフラグメントイオンの供出方法に関連して、特開昭61−11665号公報には、電気泳動法、液体クロマトグラフィー法、高速ゲルろ過法により分子量分離した核酸断片に、S、Br、I、等の非金属元素、または、Ag、Au、Pt、Os、Hg等の金属元素を導入して、これらの元素を原子吸光分析法、プラズマ発光分析法、または、質量分析法によって同定する手段を設けた核酸塩基検出装置に関する記載がなされている。但し、前記の手法を実施する際に利用される、質量分析装置に関する具体的な記載、さらには、特に、ハロゲン原子の核酸への導入方法に関する記載は含まれていない。
【0027】
一方、チップ上の核酸ハイブリッド体の量的把握を別の観点からみると、実際に核酸プローブ領域として形成されているマトリクス自体の存在位置を、分析により決定する必要もある。例えば、特開平11−187900号公報に記載されているDNAチップの作製方法、すなわち、予め合成されたDNAプローブの溶液をインクジェット法で基板表面へ吐出、結合させる方法を採用する際、基板として、作製されているマトリクス(吐出されたDNAが結合されたスポット)の位置を示す位置マーカーを設けていない汎用の基板を利用する場合がある。そのような位置マーカーを設けていない基板を利用する場合には、TOF−SIMS法によって、DNAプローブのスポット位置をイメージングしつつ、同時に、イメージングされたスポットにおけるフラグメントイオンの分析を行うことが望ましい。しかしながら、上記特開平11−187900号公報には、DNAプローブのスポット位置をイメージングすることの必要性を想起させる記載はなく、また、特開昭61−11665号公報には、核酸分子に標識した元素を利用する質量分析法には言及しているが、TOF−SIMS法に応用して、チップ上でのハイブリッド体のイメージング方法と標的核酸の量的分析に関しては全く記載されていない。
【0028】
さて、TOF−SIMS法により核酸チップのイメージングと、核酸チップ上の核酸(ハイブリッド体を含む))の量的分析を行おうとした際、スポットのサイズ、あるいは、検出効率等を勘案すると、イメージングされるエリアの面積は、例えば、300μm×300μm以上が望ましいが、DNAチップの作製に利用する基板として、汎用されるガラス等の比較的抵抗率の高い基板を用いる際、300μm×300μmの範囲を、一次イオンビーム直径を必要な解像度を得るため、一次イオンビームの照射スポットを5μmとし、テレビ受像機の走査線のように、一定の方向にビームを順次スキャン(ラスタースキャン)し、二次元的画像を得ようとすると、チャージアップの影響が大きく、良好な画像を得ることができないことになる。
【0029】
本発明は前記の課題を解決するものであり、本発明の目的は、複数の核酸プローブが基板上にマトリクス状に配置された核酸チップ、特には、比較的抵抗率の高い基板を利用する核酸チップにおいて、核酸プローブに対して、その標的核酸がハイブリダイゼーションしたハイブリッド体を構成した状態とした上で、核酸プローブと標的核酸とを同時にTOF−SIMS法を用いて分析する際、核酸プローブと標的核酸とを明確に弁別して、量的把握を行うことが可能で、さらには、核酸チップ上の比較的面積の大きな部分について、核酸プローブと標的核酸のハイブリッドの二次元的イメージングを簡便に行うことが可能な分析方法を提供することにある。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討を進めたところ、TOF−SIMS法を用いて、核酸プローブに対して、その標的核酸がハイブリダイゼーションしたハイブリッド体を構成した状態とした上で、核酸プローブと標的核酸とを同時に分析する際、核酸プローブと標的核酸に、それぞれ異なる物質を用い、一分子当たり、それぞれ既定の数の標識を予め施し、この個々の標識物質に関して、TOF−SIMS法を用いて分析することで、比較的抵抗率の高い基板上に核酸プローブが固定された核酸チップ上、比較的面積の大きな部分に対しても、核酸プローブと標的核酸のハイブリッド形成のイメージングと、個々の量的把握を同時に行うことが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0031】
すなわち、本発明にかかる核酸チップ上の核酸の分析方法は、
複数の核酸プローブが基板上にマトリクス状に配置された核酸チップの分析方法であって、
前記核酸プローブに対して、その標的核酸がハイブリダイゼーションしたハイブリッド体を構成した状態とした上で、核酸プローブと標的核酸とを同時に分析する際、
前記核酸プローブと前記標的核酸は、それぞれ既定の数の、異なる物質で予め標識し、
飛行時間型二次イオン質量分析法により、個々の標識物質を分析することを介して、標識された核酸プローブと、標識された標的核酸の分析を行うことを特徴とする核酸チップ上の核酸の分析方法である。その際、前記標識物質は、
核酸プローブ、および、標的核酸を構成する物質ではないことが好ましい。より具体的には、前記標識物質として、
核酸プローブ、および、標的核酸を構成する物質に由来する二次イオンと明確に区別される二次イオンを発生できる物質を選択することが好ましい。
【0032】
また、本発明の方法では、該飛行時間型二次イオン質量分析法による分析は、個々の標識物質の量的な分析である形態とすることができる。また、該飛行時間型二次イオン質量分析法による分析に際し、
一次イオンの照射は、前記核酸チップ表面の特定の面積を有する測定領域に対して、その測定領域の面積と比較して、相対的に小さな面積を有する照射スポットとして、順次パルス的に照射して、
該パルス的な一次イオン照射によって発生する二次イオンを、それぞれのパルス照射毎に飛行時間的に質量分析する測定法を選択することが可能である。その際、前記パルス的な一次イオン照射において、
照射スポット位置を、非連続的パターンに基づいて、順次移行させ、
それぞれのパルス照射毎に測定される、発生された二次イオンの質量分析の結果を、前記一次イオンの照射スポット位置パターンに基づいて、再構成して二次元的画像化を行うこともできる。なお、前記非連続的パターンは、
ランダムなパターンであることが好ましい。あるいは、前記非連続的パターンは、
特定のプログラムされたパターンであることも好ましい。
【0033】
本発明の方法においては、前記核酸プローブと前記標的核酸とをそれぞれ標識する、各標識物質の既定の数は、標識物質、標識方法に応じて適宜選択されるものである。核酸プローブと標的核酸のハイブリッド形成を阻害しない範囲に、各標識物質の既定の数を選択することが望ましい。ハイブリッド形成を阻害しない形態の標識物質、標識方法を利用できる際には、
核酸プローブ、ならびに、標的核酸の各一分子当たり、
少なくとも1以上で、各核酸を構成する塩基鎖長を超えない範囲に選択することができる。なかでも、これら核酸が合成オリゴヌクレオチドである際には、各標識物質の既定の数は、
核酸プローブ、ならびに、標的核酸の各一分子当たり、1〜5個の範囲に選択されることが望ましい。
【0034】
本発明の方法においては、前記核酸プローブと前記標的核酸とをそれぞれ標識する、各標識物質は、
互いに異なるハロゲン原子を選択することができる。この場合、各標識物質に選択される前記ハロゲン原子は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選択される二種である。例えば、各標識物質に選択される前記ハロゲン原子は、
前記核酸プローブならびに前記標的核酸を構成するヌクレオチドの塩基に結合されている形態とすることが好ましい。その際、前記核酸プローブならびに前記標的核酸を構成するヌクレオチドの塩基に結合されているハロゲン原子は、
核酸プローブ、ならびに、標的核酸それぞれと、相補的な塩基配列を有する核酸とのハイブリッド形成の阻害を誘起しない、ヌクレオチド塩基上の位置に結合されていることがより好ましい。そのためには、各標識物質に選択される前記ハロゲン原子は、
ピリミジン塩基の5位、あるいは、プリン塩基の8位のいずれかに結合されていることがさらに好ましい。
【0035】
例えば、前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、少なくとも、合成DNA鎖部分を有し、
各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、前記合成DNA鎖部分になされ、
該合成DNA鎖部分をDNA自動合成装置で合成する際、使用される複数種の核酸塩基用合成ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−3’−フォスフォロアミダイト型合成ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされている形態を選択することができる。その際、前記ハロゲン原子が核酸塩基上の修飾部位に結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−3’−フォスフォロアミダイト型合成ユニットは、下記の4種の構造式のいずれかで示される合成ユニットの群から選択されることが好ましい。
【0036】
【化2】
Figure 0003890265
【0037】
(式中、Xは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、
DMTOは、ジメトキシトリチル基、
iPrは、イソプロピル基、
CNEtは、2−シアノエチル基を、それぞれ表す。)
あるいは、前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、少なくとも、合成RNA鎖部分を有し、
各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、前記合成RNA鎖部分になされ、
該合成RNA鎖部分をRNA自動合成装置で合成する際、
使用される複数種の核酸塩基用合成ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合したリボヌクレオシド−3’−フォスフォロアミダイト型合成ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされている形態を選択することができる。また、前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、少なくとも、合成PNA鎖部分を有し、
各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、前記合成PNA鎖部分になされ、
該合成PNA鎖部分をPNA自動合成装置で合成する際、
使用される複数種の核酸塩基用合成ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合した核酸塩基結合ペプチドアナログ型合成ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされている形態を選択することもできる。さらには、前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、RNAを鋳型として調製されるcDNAであり、
各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、鋳型のRNAに基づき、DNAプライマーを用いて、逆転写酵素による伸展合成される該cDNAの塩基鎖部になされ、
該逆転写酵素による伸展合成の際、
使用される複数種の核酸塩基の三リン酸ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−5’−三リン酸ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされている形態を選択してもよい。あるいは、前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、ゲノムDNAを鋳型として誘導調製されるDNA断片であり、
各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、鋳型のゲノムDNAに基づき、DNAプライマーを用いて、DNAポリメレースによる伸展合成される該DNA断片の塩基鎖部になされ、
該DNAポリメレースによる伸展合成の際、
使用される複数種の核酸塩基の三リン酸ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−5’−三リン酸ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされている形態を選択してもよい。同様に、前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、ゲノムDNAを鋳型として誘導調製されるcRNAであり、
各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、鋳型のゲノムDNAに基づき、プライマーを用いて、RNAポリメレースによる伸展合成される該cRNの塩基鎖部になされ、
該RNAポリメレースによる伸展合成の際、
使用される複数種の核酸塩基の三リン酸ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合したリボヌクレオシド−5’−三リン酸ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされている形態を選択してもよい。
【0038】
その他、本発明の方法においては、前記核酸プローブと前記標的核酸とをそれぞれ標識する、各標識物質の少なくとも一つは、
金属、または、金属化合物のいずれかから選択されることも可能である。その際、前記金属、または、金属化合物中の金属元素は、
Au、Ag、Cu、Ni、Co、Cr、Al、Ta、Pt、Pd、Zn、Sn、Ru、Rhからなる群から選択されることが好ましい。また、前記金属化合物は、有機金属錯体であることがより好ましい。その場合には、前記有機金属錯体は、
Au、Ag、Cu、Ni、Co、Cr、Al、Ta、Pt、Pd、Zn、Sn、Ru、Rhからなる群から選択される金属元素を含む錯体であることがより好ましい。
【0039】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について、より詳細に説明する。
【0040】
本発明の分析方法は、TOF−SIMS法を用いて、上記ハイブリッド形成時のイメージングと、量的分析を行うにあたり、プローブ核酸と、標的核酸を、それぞれ既定の数の、異なる物質で標識し、該異なる物質のフラグメントイオンをTOF−SIMS法によって検出、分析することを特長とする。
【0041】
その際、利用する標識物質が、プローブ核酸、および、標的核酸を構成する物質、核酸などの構成要素と異なっていれば、標識物質に由来する二次イオンと核酸に起因するフラグメントイオと明確に分別可能であるので好ましい。
【0042】
また、プローブ核酸と、標的核酸の、それぞれの標識物質の数が既定の数であることにより、それぞれの核酸を量的に把握することが可能となる。
【0043】
本発明では核酸チップのイメージング方法として、一次イオンを、該核酸チップ表面の特定の面積を有する部分に対して、該面積に対して相対的に小さな面積を有するスポットとしてパルス的に順次照射して、該パルス照射によって発生する二次イオンを、それぞれのパルス照射ごとに飛行時間的に質量分析する方法を用いるが、その際、チャージアップの影響を排除する方法として、一次イオンのパルス照射を、非連続的パターンに基づいて行い、得られたそれぞれの質量分析の結果を、一次パルス照射のパターンに基づいて再構成して画像化することが極めて有効で望ましい形態である。
【0044】
その場合、非連続的パターンとして、ランダムなパターン、あるいは、非連続的なパターンを例としてあげることができる。
【0045】
標識物質としては、限定的ではないが、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子を例にあげることができる。
【0046】
ハロゲン原子はイオン化効率が比較的高いので、その二次イオンを用いての検出の感度の向上が期待できるとともに、一次イオン強度を低減することによりチャージアップの影響も、その分排除でき、後述する方法と合わせて、抵抗率の高い基板上での大面積のイメージングが可能となる。
【0047】
ハロゲン原子による標識数に関しては、特に限定されず、標識の位置、標識方法も、それが可能であり、後の核酸プローブと標的核酸とのハイブリッド形成(ハイブリダイゼーション)を阻害しければ、いかような方法も可能である。実際には、ひとつのヌクレオチドに対し一個所の標識が現実的であり、その意味では、ハロゲン原子による標識を用いる際、標識の既定の数は、1から上記標的核酸のヌクレオチド数までのいずれかであることが望ましく、例えば、核酸が合成オリゴヌクレオチドの場合には、標識の手間、コスト、また、ハロゲン原子のイオン化効率の高さ等を勘案して、1〜5個であれば、さらに望ましいといえる。
【0048】
また、PCR法のように酵素的伸長反応を利用して、標識の導入を図ろうとする場合、標識が蛍光色素のように比較的大きな分子の場合には、立体障害等により、標識の導入数には上限がある。一方、標識がハロゲン原子である場合は、顕著な立体障害を引き起こすこともなく、例えば、伸長反応に用いる核酸塩基ユニットとして、ハロゲン修飾体を用いると、伸長産物において、一種類の塩基(例えばアデニン)を全て標識することも可能である。従って、標識にハロゲン原子を選択する場合は、標識数を定量的に把握できるとともに、感度、標識導入方法の点からも望ましいといえる。
【0049】
TOF−SIMS法を用いる際には、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子の各二次イオンは、高い感度で検出可能であり、また、後述の方法によれば、標的核酸にも、上記4種のハロゲン原子を導入可能なので、本発明には、これらのハロゲン原子が利用できる。
【0050】
ハロゲン原子の標的核酸への導入方法についても、特に限定されないが、よく知られている例としては、ハロゲン原子を標的核酸のヌクレオチドの塩基に結合させる方法をあげることができる。本発明でも、この方法を好適に用いることができる。その際、ハロゲン原子が標的核酸の、該標的核酸がプローブ核酸とハイブリッドを形成する際に、該ハイブリッド形成を阻害しない位置に結合していることが望ましい。そのような修飾位置は、ピリミジン塩基の5位、プリン塩基の8位である。ただし、標的核酸の全てのヌクレオチド塩基のハロゲン原子がこの位置に結合していることは必ずしも必須ではない。
【0051】
ハロゲン原子の標的核酸への導入のより具体的な方法としては、標的核酸が合成DNAの場合、DNAをDNA自動合成装置で合成する際に、ハロゲン原子を結合した合成ユニット、すなわち、以下に構造式で示す2’−デオキシリボヌクレオシド−3’−フォスフォロアミダイトを用いる方法を例としてあげることができる。
【0052】
【化3】
Figure 0003890265
【0053】
(式中、Xは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、
DMTOは、ジメトキシトリチル基、
iPrは、イソプロピル基、
CNEtは、2−シアノエチル基を、それぞれ表す。)
また、核酸プローブが合成RNAの場合には、RNAをRNA自動合成装置で合成する際に、ハロゲン原子を結合した合成ユニット、すなわち、リボヌクレオシド−3’−フォスフォロアミダイトを用いればよく、そのような合成ユニットの例として、以下に構造式の化合物をあげることができる。
【0054】
【化4】
Figure 0003890265
【0055】
(式中、Xは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、
DMTOは、ジメトキシトリチル基、
iPrは、イソプロピル基、
CNEtは、2−シアノエチル基
Meは、メチル基、
TBDMSは、t−ブチルジメトキシシリル基を、それぞれ表す。)
さらに、核酸プローブが合成PNAの場合では、PNAをPNA自動合成装置で合成する際に、ハロゲン原子を結合した合成ユニット、すなわち、核酸塩基結合ペプチドアナログを用いれば好適である。
【0056】
また、標的核酸がcDNAの場合には、cDNAを逆転写酵素によって伸展合成する際に、ハロゲン原子を結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−5’−三リン酸を用いる方法がハロゲン原子導入法の例としてあげることができる。
【0057】
標的核酸がゲノムDNAから誘導されたDNAの場合には、ハロゲン原子の該DNAへの導入が、該DNAをDNAポリメレースによって伸展合成する際に、ハロゲン原子を結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−5’−三リン酸を用いる方法を例としてあげることができ、標的核酸がcRNAの場合には、ハロゲン原子の該cRNAへの導入が該cRNAをRNAポリメレースによって伸展合成する際に、ハロゲン原子を結合したリボヌクレオシド−5’−三リン酸を用いて行うことができる。
【0058】
加えて、上記の各鎖の伸展反応には、PCR反応、またはRT‐PCR(逆転写PCR)反応を用いることも可能である。
【0059】
本発明が対象とする核酸チップのプローブ核酸種は、特に限定されるものではなく、DNA、RNA、PNA(ペプチド核酸)、cDNA(コンプリメンタリーDNA)、cRNA(コンプリメンタリーRNA)、オリゴデオキシヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド等を用いることができる。
【0060】
本発明の分析方法に利用可能な標識物質の他の例として、Au、Ag、Cu、Ni、Co、Cr、Al、Ta、Pt、Pd、Zn、Sn、Ru、Rh等の金属、または、これらの錯体、有機(金属)錯体をあげることができる。有機金属錯体の核酸への導入法方法は、例えば、Science, Vol. 262, 1025, 1993に記載されている方法を採用することができる。
【0061】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。なお、これら実施例は本発明にかかる最良の実施形態の一例ではあるものの、本発明はかかる形態に限定されるものではない。
【0062】
(実施例1)
核酸プローブアレイの作製
特開2001−066305号公報に開示した方法で、ガラス基板を利用する核酸プローブアレイを作製した。
【0063】
(1)基板洗浄
25.4mm×25.4mm×1mmの合成石英基板をラックに入れ、純水で10%に稀釈した超音波洗浄用洗剤(ブランソン:GPIII)に一晩浸した。その後、該洗剤中で20分間超音波洗浄を行い、その後、水洗により洗剤を除去した。純水ですすいだ後、純水の入った容器中でさらに超音波処理を20分間行った。次に、予め80℃に加温した1N水酸化ナトリウム水溶液に、この基板を10分間浸した。引き続き水洗、純水洗浄を行って、そのまま乾燥せず、洗浄済基板として、次工程に供した。
【0064】
(2)表面処理
アミノ基を結合したシランカップリング剤、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン KBM603(信越化学工業)の1wt%水溶液を室温下で2時間攪拌し、該シラン化合物の分子内のメトキシ基を加水分解した。この溶液に、上記(1)で得た洗浄済基板を室温で1時間浸漬した後、純水で洗浄し、窒素ガスを基板の両面に吹き付けて乾燥させた。次に、基板を120℃に加熱したオーブン中で1時間ベークして、最終的に基板表面にアミノ基を導入した。
【0065】
次いで、N−マレイミドカプロイロキシスクシンイミド(同仁化学研究所:以下、EMCS)2.7mgを、ジメチルスルホキシド(DMSO)/エタノールの1:1(容量比)溶液に濃度が0.3mg/mlとなる様に溶解した。前記シランカップリング処理を行った石英基板を、このEMCS溶液中に室温で2時間浸漬して、シランカップリング処理によって基板表面に導入されているアミノ基と、EMCSのスクシイミド基を反応させた。この反応に伴い、基板表面にはEMCS由来のマレイミド基が存在することになる。EMCS溶液から引き上げた基板は、前記DMSO/エタノール混合溶媒、及びエタノールで順次洗浄した後、窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。
【0066】
(3)プローブDNAの合成
DNA合成業者(ベックス)に依頼し、40塩基長となる、配列番号1の一本鎖核酸(dTの35量体に対し、その3’末端側に5−フルオロ−3’−デオキシウリジン:U(F)が5個連結されたもの)を合成した。なお、配列番号1の一本鎖DNAの5’末端には、合成時にチオールモディファイア(グレンリサーチ)を用いて、スルファニル基(SH)を導入した。DNA合成後、脱保護、DNAの回収は定法により行い、また、精製には、HPLCを用いた。合成から精製までの一連の工程は、すべて合成業者に依頼して行った。
【0067】
なお、前記3’末端側のU(F)の導入は、下記に構造を示すフォスフォロアミダイト(グレンリサーチ)を用いて行った。
【0068】
【化5】
Figure 0003890265
【0069】
なお、チミンに代えて導入されている、このU(F)のフッ素置換位置である5位は、ハイブリダイゼーションには影響がないことが知られており、従って、dTの40量体と同様のハイブリダイゼーション反応を起こす。
配列番号:1
5’HS−(CH26−O−PO2−O−TTTTTTTTTT TTTTTTTTTT TTTTTTTTTT TTTT U(F)U(F)U(F)U(F)U(F)T 3’
(4)サーマルジェットプリンターによるDNA吐出、および基板への結合
(3)に記載する配列番号1の一本鎖DNAを、それぞれ最終濃度10μM、5μM、2.5μM、1.25μM、0.625μMで、グリセリン7.5wt%、尿素7.5wt%、チオジグリコール7.5wt%、アセチレンアルコール(商品名:アセチレノールEH;川研ファインケミカル(株)社製)1wt%を含む溶液に溶解した。
【0070】
一方、サーマルジェット法の一種であるバブルジェット法を用いたバブルジェットプリンターBJF−850(キヤノン)用のプリンターヘッドBC−50(キヤノン)を、数100μlの溶液を吐出可能とするべく改造した(なお、「バブルジェット」は、キヤノン株式会社の登録商標(商標登録第 4203791 号)である。)。この改造を施したヘッドを、平板である石英基板上へ、インク吐出が可能となるよう改造した吐出描画機に搭載した。このヘッドの改造タンク部に、前記DNA溶液を数100μl注入し、吐出描画機にEMCS処理基板を装着して、EMCS処理表面にスポッティングした。なお、スポッティング時の吐出量は4pl/dropletで、スポッティングの範囲は、基板の中央部に10mm×10mmの範囲に、200dpi、すなわち、127μmのピッチで吐出した。この条件ではスポッティングされたドットの直径は約50μmであった。
【0071】
スポッティング終了後、基板を30分間加湿チャンバー内に静置し、基板表面のマレイミド基と、核酸プローブ5’末端のスルファニル基(−SH)とを反応させ、DNAプローブを固定させた。次いで、基板を純水で洗浄し、1MのNaClを含む50mMリン酸緩衝液(pH=7.0、以下溶液A)中に保存した。DNA結合基板(DNAチップ)は、TOF−SIMSによる分析直前に窒素ガスを吹き付けて乾燥し、真空デシケーター中でさらに乾燥した。
【0072】
(実施例2)
ハイブリダイゼーション反応、および、TOF−SIMS法によるイメージングと定量的分析
(1)モデル標的核酸の合成
予め、5’末端側の5個アデニン塩基に臭素原子による修飾を施したモデル標識核酸(配列番号:2、dAの40量体)を、合成業者(ベックス)に依頼して合成した。この5’末端側の5個の臭素修飾塩基は、下に構造を示す、8−ブロモ−3’−デオキシアデノシンフォスフォロアミダイト(グレンリサーチ)を用いて、自動合成機による合成時に導入した。脱保護、DNAの回収は、定法により行い、また、精製にはHPLCを用いた。合成から精製までの一連の工程はすべて合成業者に依頼して行った。なお、配列中のA(Br)が臭素修飾デオキシアデノシンを示す。また、修飾位置であるアデニンの8位は、ハイブリダイゼーションを阻害しない位置であることが知られている。
配列番号:2
5’ A(Br)A(Br)A(Br)A(Br)A(Br)AAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA AAAAAAAAAA 3’
【0073】
【化6】
Figure 0003890265
【0074】
(2)ブロッキング、および、ハイブリダイゼーション
実施例1で作製したDNAチップを、2%牛胸腺アルブミン(BSA)を含む溶液A中に室温下、3時間浸漬し、チップ表面をブロッキング(核酸等の非特異的吸着を目的とする)し、溶液Aでリンスした。その後、上記配列番号:2のモデル標的核酸を50nMの濃度で溶解した溶液Aに浸漬し、45℃で15時間ハイブリダイゼーションを行った。次いで、純水(室温)でリンスした後、窒素ガスを吹き付けて乾燥し、TOF−SIMSの分析まで真空デシケーター中で保存した。
【0075】
(3)TOF−SIMSによる分析
ハイブリダイゼーションを行ったDNAチップのイメージング、および、分析をION TOF社製TOF−SIMS IV型装置を用いて行った。
【0076】
以下に、測定に用いた装置、条件をまとめて示す。
【0077】
<一次イオン>
一次イオン:25kV Ga+、ランダムスキャンモード
一次イオンのパルス周波数:2.5kHz(400μsec / shot)
一次イオンパルス幅:1ns
一次イオンビーム直径:5μm
<二次イオン>一次イオンの照射パターンについて再構成しイメージング
二次イオン検出モード:negative
測定領域:300μm×300μm
二次イオンimageのpixel数:128×128
積算回数:256
(4)結果
図1に、(2)でハイブリダイゼーションを行った、核酸プローブ濃度5μMのDNA溶液により作製したDNAチップを、TOF−SIMS IV型装置で上記条件に基づき分析し、得られたデータに基づき、プローブDNA由来のフッ素イオンと、標的DNA由来の臭素イオンとについて、それぞれ二次元的なイメージングを行った結果を示す。図1−1は、フッ素イオン、図1−2、1−3は、それぞれ、79Br-イオン、81Br-イオンに対するイメージング画像である。
【0078】
図2に、実施例1に記載する、異なる核酸プローブ濃度のDNA溶液により作製したDNAチップ5種について、ハイブリダイゼーション後、それぞれ、各チップ上のひとつのスポットにおいて、TOF−SIMS測定で検出される、フッ素イオン、79Br-イオン、81Br-イオンのカウント数を、用いた核酸プローブ濃度に対してプロットしたものである。
【0079】
図1から、本発明による分析方法により、核酸チップ上の核酸プローブ、および、核酸プローブとハイブリッド体を形成した標的核酸を、それぞれに修飾してある修飾原子を利用することで、ハイブリッド形成後に同時に、かつ、個別にイメージング可能であることが判る。図示しなかったが、イメージを加算することにより、核酸プローブと標的核酸の双方を含むハイブリッド体そのもののイメージングも可能である。また、各核酸分子に由来するリン酸バックボーン由来のフラグメント、核酸塩基由来のフラグメント等も、併せて観察することも可能である。
【0080】
次に、図2から、ぞれぞれのスポットについて、固定されているプローブ核酸量、および、標的核酸量に関して、同時に、かつ、個別な量的把握が可能であることが判る。
【0081】
(実施例3)
標的DNA濃度に相違がある検体によるハイブリダイゼーションのイメージング、および、量的分析
実施例1に記載する、プローブ核酸濃度10μMのDNA溶液で作製したDNAチップに対して、同じく実施例2に記載する臭素修飾の標的DNAを、500nM、50nM、5nM、1nM、0.2nMの濃度で含有する条件で、それぞれハイブリダイゼーションを行い、TOF−SIMS法によるイメージングと量的分析をおこなった。
【0082】
図3に、量的分析結果に基づき、標的DNA濃度に対して、TOF−SIMS測定で検出される、フッ素イオン、79Br-イオン、81Br-イオンのカウント数をプロットした結果を示す。図3から、DNAチップ上のプローブ濃度(フッ素イオンのカウント数)は、各基板についてほぼ一定であり、一方、用いた標的核酸濃度に従って、ハイブリッド体の量が変化することが、臭素イオンのカウント数から量的に把握可能であることがわかる。
【0083】
(実施例4)
ゲノム由来の標的DNAに対するハイブリダイゼーション後のイメージング、および、量的分析:モデル系
(1)ゲノム由来の標的DNA検出用核酸チップの作製
Nature Biotechnology Vol. 18, 438, 2000には、ヒト口腔扁平上皮癌の二つのセルライン、HSC4とHSC5における、ゲノムDNAのエキソン7の変異を検出するため、オリゴヌクレオチド・チップの作製と、このDNAチップを用いて、該エキソン7から誘導された蛍光標識cDNAの検出に関して記載されている。
【0084】
本実施例では、この文献に記載する検出方法に準じて、フッ素標識を施したオリゴヌクレオチド・チップを作製し、また、臭素標識を施したモデル標的オリゴヌクレオチドを合成し、両者のハイブリダイゼーションを行った。
【0085】
以下に、具体的な手順について述べる。
【0086】
(1) フッ素標識DNAプローブの合成と、DNAチップの作製
フッ素標識核酸プローブとして、上記HSC4のエキソン7に含まれる塩基配列の一部(コドンNo.248を含む部分)に相補的な塩基配列を有し、5’末端に基板への結合のためのスルファニル基を導入し、また、チミンに代えて、フッ素標識デオキシウリジンを計5個結合した、配列番号:3のDNAを、実施例1に記載すると同様の合成法で作製した。さらに、この配列番号:3のDNAを用いて、実施例1と同様の手順でDNAチップを作製した。なお、チップ作製時に用いる溶液中のプローブDNA濃度は10μMとした。
配列番号:3
5’ HS−(CH26−O−PO2−O−GAU(F)GGGCCU(F)CCGGU(F)U(F)CAU(F)G 3’
(2) ゲノム由来の臭素標識モデル標的DNAの合成と、ハイブリダイゼーション
臭素標識モデル標的DNAとして、配列番号:3のDNAの塩基配列と相補的な配列を有し、アデノシンに代えて、臭素修飾デオキシアデノシンを合計5個結合した、配列番号:4の標識モデルDNAを、実施例2に記載すると同様の合成法で作製した。この臭素標識モデル標的DNAと(1)に記載のDNAチップを、同じく実施例2と同様のハイブリダイゼーション条件(標的DNA濃度50nM)においた。その後、TOF−SIMS法による分析を行った。
配列番号:4
3’ CTA(Br)CCCGGA(Br)GGCCA(Br)A(Br)GTA(Br)C 5’
(3) TOF−SIMS法によるイメージングと、量的分析
実施例2と同様な条件で、ブロッキング、および、ハイブリダイゼーションを行い、ハイブリダイゼーション後のDNAチップのTOF−SIMSでのイメージング、および、量的分析を行った。
【0087】
表1に、量的分析結果で得られた、フッ素イオン、79Br-イオン、81Br-イオンのカウント数データを示す。
【0088】
【表1】
Figure 0003890265
【0089】
表1に示す結果は、実施例2、および、実施例3の同じハイブリダイゼーション、分析条件における分析結果と、ほぼ同様の結果を示しており、本発明の分析方法により、実際のプローブDNA、および、標的DNAと同様に、4種の塩基が混合した塩基配列のセットに関しても、それぞれ、別個のハロゲン標識を施すことにより、プローブDNAと標的DNAとを、個別に検出、分析可能であることが確認された。
【0090】
(実施例5)
ゲノム由来の標的DNAのハイブリダイゼーション後のイメージングと、量的分析
本実施例では、実施例4で作製した、ゲノム由来の標的DNAの分析用DNAチップを用いて、実際に、ゲノム由来の標的DNAのイメージング、量的分析について例示する。
【0091】
(1)ゲノム由来の臭素標識標的DNAの調製
配列番号:5
E7S: 5’ −ACTGGCCTCATCTTGGGCCT− 3’
(exon 7, sense)
配列番号:6
E7A: 5’ − TGTGCAGGGTGGCAAGTGGC− 3’
(exon 7, anti−sense)
【0092】
【化7】
Figure 0003890265
【0093】
5−ブロモ−2’−デオキシウリジン三リン酸(Br−dUTP)
まず、配列番号:5、6のPCRプライマー(HSC4、HSC5に共通:ベックスに合成依頼)を用いて、HSC4のゲノムからエキソン7の部分をPCR反応で合成した。すなわち、20ngのゲノムDNAと、各0.4μMのセンス・プライマー、アンチセンス・プライマーを含む50μlのPCRミクスチャーを94℃(30sec)、60℃(45sec)のサイクルを40回繰り返して、PCR増幅を行った。得られる増幅産物の鎖長は、171ヌクレオチドと設計されている。
【0094】
次に、増幅産物の一部を鋳型として、0.2μMのセンス・プライマー(配列番号:4)と、上に構造を示す、臭素標識ヌクレオチドの一種である、5−ブロモ−2’−デオキシウリジン三リン酸(シグマ・アルドリッチ・ジャパン)を10μMで用いて、他の三種の核酸塩基を加えて、ssPCR(一本鎖PCR)を行った。PCRサイクルは96℃(30sec)、50℃(30sec)、60℃(4min)、25サイクルである。なお、得られた臭素標識一本鎖DNAは、ゲルろ過によって精製した。なお、センス・プライマーより伸長される鎖部は、チミン塩基に代えて、全ての臭素標識のウリジンとなった。
【0095】
(2) ブロッキング、および、ハイブリダイゼーション
実施例4で作製したDNAチップを、実施例2と同様な方法よりブロッキングした後、純水でリンスし、以下のハイブリダイゼーションに用いた。
【0096】
(2)で合成したゲノム由来の臭素標識一本鎖DNAを10nMの濃度で溶解した、20%ホルムアミドを含む6×SSPE(0.9M NaCl、 60mM NaH2PO4、 6mM EDTA)中に、ブロッキングを施したDNAチップを浸漬し、80℃で10min加熱し、ついで、45℃で15時間ハイブリダイゼーションを行った。その後、2×SSPEを用いて、55℃で洗いの操作を加えた。次に、純水(室温)で軽くリンスし、ハイブリダイゼーションを行ったDNAチップを、窒素ガスを吹き付けて乾燥した後、TOF−SIMS法による分析まで真空デシケーター中で保存した。
【0097】
(3) TOF−SIMS法によるイメージング、量的分析
実施例2と同様な条件で、ハイブリダイゼーション後のDNAチップのTOF−SIMSでのイメージング、および、量的分析を行った。
【0098】
表2に、量的分析結果で得られた、フッ素イオン、79Br-イオン、81Br-イオンのカウント数データを示す。
【0099】
【表2】
Figure 0003890265
【0100】
表2から、本発明の分析方法を応用することで、フッ素標識プローブを具えたDNAチップ上で、ゲノムから誘導し、かつ、臭素ラベルをほどこした標的DNAのハイブリダイゼーションを行った後、TOF−SIMS法によって、DNAチップ上に固定されているプローブDNA、および、標的DNA双方を。個別に検出、分析が可能であることが示された。
【0101】
なお、本実施例とほぼ同様の手順により、mRNAから誘導したcDNAに対しても、ハロゲン原子による標識を施した核酸プローブの作製とチップ化、および、別のハロゲン標識を施した標的DNAのPCR調製を行うことで、ハイブリダイゼーションを行った後、核酸プローブと、標的DNAを、TOF−SIMS法による個別のイメージング、および、分析も可能である。
【0102】
【発明の効果】
本発明の分析法により、飛行時間型二次イオン質量分析法を用いて、核酸チップ上でハイブリッドを形成したプローブ核酸と標的核酸に関して、それぞれ別個の標識物質、例えば、ハロゲン原子で予め標識しておくことで、ハイブリッドを形成した後、プローブ核酸と、標的核酸を、標識している別個の標識物質に起因する二次イオンの測定を介して、個別にイメージングするとともに、量的分析することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例2のイメージング結果を示し、それぞれ、図1−1は、F-イオン、図1−2は、79Br-イオン、図1−3は、81Br-イオンのイメージングを示す。
【図2】実施例2の量的分析結果に基づき、核酸チップ上にスポットする核酸プローブ溶液中の核酸プローブ濃度に対して、ハイブリダイゼーションを行った後、核酸プローブの標識F-イオン、標的DNAの標識79Br-イオン、81Br-イオンの測定量をプロットしたグラフを示す。
【図3】実施例3の量的分析結果に基づき、核酸チップ上の核酸プローブにハイブリダイゼーションさせる検体溶液中の標的DNA濃度に対して、ハイブリダイゼーションを行った後、核酸プローブの標識F-イオン、標的DNAの標識79Br-イオン、81Br-イオンの測定量をプロットしたグラフを示す。

Claims (25)

  1. 複数の核酸プローブが基板上にマトリクス状に配置された核酸チップの分析方法であって、
    前記核酸プローブに対して、その標的核酸がハイブリダイゼーションしたハイブリッド体を構成した状態とした上で、核酸プローブと標的核酸とを同時に分析する際、
    前記核酸プローブと前記標的核酸は、それぞれ既定の数の、異なる物質で予め標識し、
    飛行時間型二次イオン質量分析法により、個々の標識物質を分析することを介して、標識された核酸プローブと、標識された標的核酸の分析を行うことを特徴とする核酸チップ上の核酸の分析方法。
  2. 前記標識物質として、
    核酸プローブ、および、標的核酸を構成する物質に由来する二次イオンと明確に区別される二次イオンを発生できる物質を選択することを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 該飛行時間型二次イオン質量分析法による分析は、
    個々の標識物質の量的な分析であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 該飛行時間型二次イオン質量分析法による分析に際し、
    一次イオンの照射は、前記核酸チップ表面の特定の面積を有する測定領域に対して、その測定領域の面積と比較して、相対的に小さな面積を有する照射スポットとして、順次パルス的に照射して、
    該パルス的な一次イオン照射によって発生する二次イオンを、それぞれのパルス照射毎に飛行時間的に質量分析する測定法を選択することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. 前記パルス的な一次イオン照射において、
    照射スポット位置を、非連続的パターンに基づいて、順次移行させ、
    それぞれのパルス照射毎に測定される、発生された二次イオンの質量分析の結果を、前記一次イオンの照射スポット位置パターンに基づいて、再構成して二次元的画像化を行うことを特徴とする請求項4に記載の方法。
  6. 前記非連続的パターンは、
    ランダムなパターンであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  7. 前記非連続的パターンは、
    特定のプログラムされたパターンであることを特徴とする請求項5に記載の方法。
  8. 前記核酸プローブと前記標的核酸とをそれぞれ標識する、各標識物質の既定の数は、
    核酸プローブ、ならびに、標的核酸の各一分子当たり、
    少なくとも1以上で、各核酸を構成する塩基鎖長を超えない範囲に選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
  9. 各標識物質の既定の数は、
    核酸プローブ、ならびに、標的核酸の各一分子当たり、1〜5個の範囲に選択されることを特徴とする請求項8に記載の方法。
  10. 前記核酸プローブと前記標的核酸とをそれぞれ標識する、各標識物質は、
    互いに異なるハロゲン原子を選択することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 各標識物質に選択される前記ハロゲン原子は、
    フッ素、塩素、臭素、ヨウ素から選択される二種であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
  12. 各標識物質に選択される前記ハロゲン原子は、
    前記核酸プローブならびに前記標的核酸を構成するヌクレオチドの塩基に結合されていることを特徴とする請求項10又は11に記載の方法。
  13. 前記核酸プローブならびに前記標的核酸を構成するヌクレオチドの塩基に結合されているハロゲン原子は、
    核酸プローブ、ならびに、標的核酸それぞれと、相補的な塩基配列を有する核酸とのハイブリッド形成の阻害を誘起しない、ヌクレオチド塩基上の位置に結合されていることを特徴とする請求項12に記載の方法。
  14. 各標識物質に選択される前記ハロゲン原子は、
    ピリミジン塩基の5位、あるいは、プリン塩基の8位のいずれかに結合されていることを特徴とする請求項13に記載の方法。
  15. 前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、少なくとも、合成DNA鎖部分を有し、
    各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、前記合成DNA鎖部分になされ、
    該合成DNA鎖部分をDNA自動合成装置で合成する際、使用される複数種の核酸塩基用合成ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−3’−フォスフォロアミダイト型合成ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  16. 前記ハロゲン原子が核酸塩基上の修飾部位に結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−3’−フォスフォロアミダイト型合成ユニットは、下記の4種の構造式のいずれかで示される合成ユニットの群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の方法。
    Figure 0003890265
    (式中、Xは、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、
    DMTOは、ジメトキシトリチル基、
    iPrは、イソプロピル基、
    CNEtは、2−シアノエチル基を、それぞれ表す。)
  17. 前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、少なくとも、合成RNA鎖部分を有し、
    各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、前記合成RNA鎖部分になされ、
    該合成RNA鎖部分をRNA自動合成装置で合成する際、
    使用される複数種の核酸塩基用合成ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合したリボヌクレオシド−3’−フォスフォロアミダイト型合成ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  18. 前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、少なくとも、合成PNA鎖部分を有し、
    各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、前記合成PNA鎖部分になされ、
    該合成PNA鎖部分をPNA自動合成装置で合成する際、
    使用される複数種の核酸塩基用合成ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合した核酸塩基結合ペプチドアナログ型合成ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  19. 前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、RNAを鋳型として調製されるcDNAであり、
    各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、鋳型のRNAに基づき、DNAプライマーを用いて、逆転写酵素による伸展合成される該cDNAの塩基鎖部になされ、
    該逆転写酵素による伸展合成の際、
    使用される複数種の核酸塩基の三リン酸ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−5’−三リン酸ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  20. 前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、ゲノムDNAを鋳型として誘導調製されるDNA断片であり、
    各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、鋳型のゲノムDNAに基づき、DNAプライマーを用いて、DNAポリメレースによる伸展合成される該DNA断片の塩基鎖部になされ、
    該DNAポリメレースによる伸展合成の際、
    使用される複数種の核酸塩基の三リン酸ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合した2’−デオキシリボヌクレオシド−5’−三リン酸ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  21. 前記核酸プローブまたは前記標的核酸は、ゲノムDNAを鋳型として誘導調製されるcRNAであり、
    各標識物質に選択される前記ハロゲン原子の導入は、鋳型のゲノムDNAに基づき、プライマーを用いて、RNAポリメレースによる伸展合成される該cRNの塩基鎖部になされ、
    該RNAポリメレースによる伸展合成の際、
    使用される複数種の核酸塩基の三リン酸ユニットの少なくとも一つに、該ハロゲン原子が前記核酸塩基上の修飾部位に結合したリボヌクレオシド−5’−三リン酸ユニットを選択することで、該ハロゲン原子の導入がなされていることを特徴とする請求項14に記載の方法。
  22. 前記核酸プローブと前記標的核酸とをそれぞれ標識する、各標識物質の少なくとも一つは、
    金属、または、金属化合物のいずれかから選択されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
  23. 前記金属、または、金属化合物中の金属元素は、
    Au、Ag、Cu、Ni、Co、Cr、Al、Ta、Pt、Pd、Zn、Sn、Ru、Rhからなる群から選択されることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  24. 前記金属化合物は、有機金属錯体であることを特徴とする請求項22に記載の方法。
  25. 前記有機金属錯体は、
    Au、Ag、Cu、Ni、Co、Cr、Al、Ta、Pt、Pd、Zn、Sn、Ru、Rhからなる群から選択される金属元素を含む錯体であることを特徴とする請求項24に記載の方法。
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