【発明の詳細な説明】
マススペクトロメトリーに基づくDNA診断法
発明の背景
突然変異の検出
全生物(例えば動物、植物及び微生物)の遺伝情報はデオキシリボ核酸(DN
A)でコードされている。ヒトでは、完全ゲノムは24染色体に位置する約10
0,000個の遺伝子から構成される(The Human Genome,T
.Strachan,BIOS Scientific Publishers
,1992)。各ゲノムは、転写及び翻訳による発現後に生細胞内で特定の生化
学機能を果たす特定タンパク質をコードする。DNA配列の変異は突然変異とし
て知られており、生化学活性が変化したり、場合によっては失われたタンパク質
を生じ、遺伝病の原因となる。突然変異にはヌクレオチド欠失、挿入又は置換(
即ち点突然変異)がある。点突然変異には、タンパク質のアミノ酸配列に変異を
生じる「ミスセンス」と、ストップコドンをコードしてタンパク質を切断する「
ナンセンス」がある。
現在知られている遺伝病は3000種を越え(Human Genome M
utations,D.N.CooperとM.Krawczak,BIOS
Publishers,1993)、血友病、タラセミア、デュシェン筋ジスト
ロフィー(DMD)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病及び嚢胞性線
維症(CF)等がある。遺伝病の原因となる遺伝子の突然変異に加え、トリソミ
ー21(ダウン症候群)、トリソミー13(パトー症候群)、トリソミー18(
エドワーズ症候群)、モノソミーX(ターナー症候群)及び他の性染色体異数(
例えばクラインフェルター症候群(XXY))等の染色体異常による先天性欠損
もある。更に、糖尿病、動脈硬化症、肥満、種々の自己免疫疾患及び癌(例えば
結腸直腸、乳房、卵巣、肺)等の多数の疾病は特定のDNA配列が個体に素因を
与えるらしいということが立証されつつある。
ウイルス、細菌、真菌及び他の感染性生物は宿主細胞に含まれる配列とは異な
る特定核酸配列を含む。従って、感染性生物もその特定DNA配列に基づいて検
出及び同定することができる。
約16ヌクレオチドの配列はヒトゲノムのサイズでも統計的
に特異的であるので、比較的短い核酸配列を使用して高等生物における正常及び
欠損遺伝子を検出し、感染性生物(例えば細菌、真菌、原生生物及び酵母)及び
ウイルスを検出することができる。同一種内の各個体の検出用フィンガープリン
トとしてDNA配列を使用することもできる(Thompson,J.S.とM
.W.Thompson編,Genetics in Medicine,W.
B.Saunders Co.,Philadelphia,PA(1991)
参照)。
数種のDNA検出法が現在使用されている。例えば、増幅した核酸フラグメン
トの移動度をゲル電気泳動又は同定しようとする配列に相補的なプローブとのハ
イブリダイゼーションにより既知標準と比較することにより核酸配列を同定する
ことができる。しかし、核酸フラグメントを感受性リポーター官能基(例えば放
射性同位体(32P,35S)、蛍光又は化学発光)で標識しなければ同定すること
ができない。放射性ラベルは危険であり、ラベルが発生するシグナルは経時的に
減衰する。非同位体ラベル(例えば蛍光)は感度が不十分であり、高強度レーザ
ーを使用する間にシグナルが減衰する。更に、標識と電気泳動後に検出するのは
手間と時間がかかり、エラーが発生し易い方
法である。電気泳動は核酸のサイズ又は分子量をゲルマトリックス中の移動度に
直接相関することができないので特にエラーが発生し易い。配列特異効果、二次
構造及びゲルマトリックスとの相互作用がアーチファクトの原因であることが分
かっている。
核酸の検出及び同定のためのマススペクトロメトリーの使用
マススペクトロメトリーは個々の分子を真空中でイオン化し、揮発により「飛
翔」させることにより「計量する」手段である。電場及び磁場の併用作用下でイ
オンは夫々の個々の質量(m)と電荷(z)に応じた飛翔経路をたどる。低分子
量分子の範囲では、マススペクトロメトリーは親分子イオンの質量の測定により
有機分子を分析及び特性決定する日常的物理−有機手段の一つとして多年来用い
られている。更に、この親分子イオンと他の粒子(例えばアルゴン原子)を衝突
させることにより分子イオンを断片化し、所謂衝突誘導解離(CID)により二
次イオンを形成する。断片化パターン/経路から詳細な構造情報が得られること
は非常に多い。技術分野、特に生命科学ではマススペクトロメトリー法の多数の
応用が知られている(例えばMethods in Enzymol.,Vol
.193:
“Mass Spectrometry”(J.A.McCloskey編),
1990,Academic Press,New York参照)。
マススペクトロメトリーは高い検出感度、質量測定精度、CIDとMS/MS
コンフィギュレーション及び速度の組み合わせによる詳細な構造情報並びにオン
ラインコンピューターデータ転送を実現するという明白な分析上の利点があるた
め、核酸の構造分析にマススペクトロメトリーを使用することに関心が寄せられ
ている。この分野を要約した最近の文献としては、K.H.Schram,“M
ass Spectrometry of Nucleic Acid Com
ponents,Biomedical Applications of M
ass Spectrometry”34,203−287(1990)と、P
.F.Crain,“Mass Spectrometric Techniq
ues in Nucleic Acid Research,”Mass S
pectrometry Reviews 9,505−554(1990)が
あり、更に米国特許第5,547,835号及び同5,622,824号にも記
載されている。
しかし、核酸は非常に揮発しにくい高極性バイオポリマーである。従って、マ
ススペクトロメトリー検出は低分子量合成オリゴヌクレオチドに限られ、親分子
イオンの質量を測定することにより既知オリゴヌクレオチド配列を確認するため
、あるいは特に高速原子衝突(FABマススペクトロメトリー)又はプラズマデ
ソープション(PDマススペクトロメトリー)をイオン化及び揮発に使用してM
S/MSコンフィギュレーションでCIDにより二次イオン(フラグメントイオ
ン)を生成することにより既知配列を確認するために使用されている。1例とし
て、オリゴデオキシヌクレオチドの化学合成用保護ダイマーブロックの合成にF
ABを適用した例が記載されている(Kosterら(1987)Biomed
.Environ.Mass Spectrometry 14,111−11
6)。
他のイオン化/脱着技術としては、エレタトロスプレー/イオンスプレー(E
S)及びマトリックス介助レーザーデソープション/イオン化(MALDI)か
ある。ESマススペクトロメトリーはFennら(J.Phys.Chem.8
8:4451−59(1984);PCT出願第WO90/14148号)によ
り開発され、現在の適用例は論文に要約されている(例
えばSmithら(1990)Anal.Chem.62.882−89及びA
rdrey(1992)Electrospray Mass Spectro
metry,Spectroscopy Europe 4:10−18参照)
。テトラデカヌクレオチド(Coveyら(1988)The“Determi
nation of Protein,Oligonucleotide an
d Peptide Molecular Weights by Ionsp
ray Mass Spectrometry,”Rapid Commun.
in Mass Spectrometry 2:249−256参照)及び2
1量体(Methods in Enzymol.,193,“Mass Sp
ectrometry”(McCloskey編),p.425,1990,A
cademic Press,New York)の分子量が公表されている。
マススペクトロメーターとしては、四重極が最も多く使用されている。多重イオ
ンピークが存在し、その全てを質量計算に利用できるため、フェムトモル量の試
料の分子量を非常に正確に測定できる。
他方、MALDIマススペクトロメトリーは飛行時間(TO
F)コンフィギュレーション(Hillenkampら(1990)pp49−
60 in“Matrix Assisted UV−Laser Desor
ption/Ionization:A New Approach to M
ass Spectrometry of Large Biomolecul
es,”Biological Mass Spectrometry,Bur
lingame and McCloskey編,Elsevier Scie
nce Publishers,Amsterdam)を質量分析計として使用
する場合に有利であると思われる。殆どの場合、この技術では多重分子イオンピ
ークが生成されないので、質量スペクトルは一般にESマススペクトロメトリー
よりも単純に思われる。
分子量410,000ダルトンまでのDNA分子は脱着及び揮発されている(
Williamsら,“Volatilization of High Mo
lecular Weight DNA bu Pulsed Laser A
blation of Frozen Aqueous Solutions,
”Science 246,1585−87(1989))が、この技術は非常
に低い分解能しか示していない(オ
リゴチミジル酸18ヌクレオチドまで、Huth−FehreらRapid C
ommun.in Mass Specrom.,6,209−13(1992
);DNAフラグメント500ヌクレオチド長まで,K.Tangら,Rapi
d Commun.in Mass Specrom.,8,727−730(
1994);及び28塩基対の2本鎖DNA(Williamら,“Time−
of−Flight Mass Spectrometry of Nucle
ic Acids by Laser Ablation and Ioniz
ation from a Frozen Aqueous Matrix,”
Rapid Commun.in Mass Specrom.,4,348−
351(1990))。日本特許第59−131909号は電気泳動、液体クロ
マトグラフィー又は高速ゲル濾過により分離した核酸フラグメントを検出する装
置を記載している。DNA中に通常は存在しないS、Br、I又はAg、Au、
Pt、Os、Hg等の原子を核酸に組み込むことによりマススペクトロメトリー
検出を実施している。
本願と同一名義の米国特許第5,622,824号はマスス
ペクトロメトリー検出に基づくDNAシーケンシング方法を記載している。これ
を実施するために、保護、酵素活性特異性又は固定化を利用し、エキソヌクレア
ーゼ消化によりDNAを段階的に片側分解し、ヌクレオチド又は誘導体をマスス
ペクトロメトリーにより検出している。酵素分解前にクローン化DNAフラグメ
ントに数組の定序欠失を作ることができる。こうして、ェキソヌクレアーゼとD
NA/RNAポリメラーゼの組み合わせを使用して質量改変ヌクレオチドを組み
込むことができる。この結果、多重マススペクトロメトリー検出又はエキソヌク
レアーゼの活性の調節が可能になり、分解プロセスを同期させることができる。
本願と同一名義の米国特許第5,605,798号及び5,547,835号は
生物試料における特定核酸配列の検出方法を提供している。これらの方法は、検
出しようとする配列に応じて例えば診断法で使用することができる。これらの方
法は用途が広く、多数の態様に適用できるが、この種の適用の最初の開示である
ため、改善の余地がある。
従って、本発明の目的は生物試料中のDNA分子を配列決定及び検出するため
の改善方法を提供することである。本発明の別の目的は、遺伝病、所定の疾患の
素因、癌及び感染を診断す
るための改善方法を提供することである。
発明の要約
本発明は、マススペクトロメトリーに基づいて核酸を検出及び/又は配列決定
することによる診断法を提供する。MS分析を使用して2本鎖DNAを検出し、
突然変異及び他の診断マーカーを検出する方法を提供する。特に、神経芽細胞腫
を診断し、遺伝関係、HLA適合性、遺伝フィンガープリンティングを検出し、
癌診断のためにテロメラーゼ活性を検出する方法を提供する。
所定の態様ではDNAを固体支持体に直接又はリンカー及び/又はビーズを介
して固定化する。固定化DNAを使用するDNA検出法の3種の例を挙ける。(
1)鋳型の固定化;プライマーのハイブリダイゼーション;プライマーの伸長又
はシーケンシングもしくは診断用プライマー(1本鎖ddNTP)の伸長又はプ
ライマーの伸長とエンドヌクレアーゼ分解(シーケンシング);(2)プライマ
ーの固定化;1本鎖鋳型のハイブリダイゼーション;及びプライマーの伸長又は
シーケンシングもしくは診断用プライマー(1本鎖ddNTP)の伸長又はプラ
イマーの伸長とエンドヌクレアーゼ分解(シーケンシング);
(3)プライマーの固定化;2本鎖鋳型のハイブリダイゼーション;プライマー
の伸長又はシーケンシングもしくは診断用プライマー(1本鎖ddNTP)の伸
長又はプライマーの伸長とエンドヌクレアーゼ分解(シーケンシング)。
所定の態様では選択的に開裂可能なリンカーを介してDNAを支持体に固定化
する。選択的に開裂可能なリンカーの非限定的な例としては光開裂性リンカー、
化学開裂性リンカー及び酵素(例えば制限部位(核酸リンカー)、プロテアーゼ
部位)開裂性リンカーが挙げられる。選択的に開裂可能なリンカーを加えると、
MALDI−TOF MSに適したDNAの全固定化が可能になり、核酸の3’
又は5’末端を介してDNAを支持体に結合でき、増幅DNA又はターゲットプ
ライマーをDNA合成により伸長することができ、更に伸長産物(又はエキソヌ
クレアーゼ分解による分解産物)をMALDI−TOF MS分析に適した寸法
にすることができる(即ち単離又は合成DNAを大きくすることができ、小さい
プライマー又は大きいプライマー配列を使用して遺伝子の小さい制限フラグメン
ト又はその1本鎖をハイブリダイズすることができる)ので、MALDI−TO
F MS分析の機能が広がる。
好ましい態様では、選択的に開裂可能なリンカーはマススペクトロメトリーの
イオン化段階中に開裂される化学又は光開裂性リンカーである。リンカーの例と
しては、ジスルフィド基、ロイビニル基、酸レービルトリチル基及び疎水性トリ
チル基を含むリンカーが挙げられる。他の態様では、酵素開裂性リンカーとして
、RNAヌクレオチドであるか又は制限エンドヌクレアーゼ部位をコードする核
酸を利用できる。他の酵素開裂性リンカーとしては、ピロリン酸基、アルギニン
ーアルギニン基及びリジン−リジン基が挙げられる。他のリンカーも本明細書中
に例示する。
本発明は、DNAの長いフラグメントを配列決定する方法を提供する。このよ
うな配列決定を実施するためには、特定塩基を末端にもつフラグメントをターゲ
ット核酸から生成する。全長核酸でなくフラグメントを分析すると、測定しよう
とするイオンの質量は、一般にマススペクトロメトリーにより検出し易い低質量
範囲にシフトする。例えば、低質量にシフトすると、質量分解能、質量精度及び
特に検出感度が増す。ハイブリダイゼーションイベントとマススペクトロメトリ
ーにより測定したフラグメントの実測分子量から配列情報が得られる(例えば突
然変異の存在及び/又は種類)。好ましい態様では、ハイブリダイゼーション及
び/又はマススペクトロメトリー検出前にフラグメントを固体支持体に捕獲する
。別の好ましい態様では、生成したフラグメントを並べてより大きい核酸の配列
を提供する。
核酸から特定塩基を末端にもつフラグメントを生成する方法の好ましい1例は
、適量のターゲット核酸を適量の特異的エンドヌクレアーゼと接触させ、ターゲ
ット核酸を部分的又は完全に消化することにより実施される。反応が完全に行わ
れないとしても、エンドヌクレアーゼは一般に配列を約50〜70ヌクレオチド
以下の部分に分解する。好ましい態様では、核酸はリボ核酸であり、エンドヌク
レアーゼはG特異的RNアーゼT1、A特異的RNアーゼU2、A/U特異的RN
アーゼPhyM、U/C特異的RNアーゼA、C特異的ニワトリ肝RNアーゼ(
RNアーゼCL3)又はクリサビチンから選択されるリボヌクレアーゼ(RNア
ーゼ)である。別の好ましい態様では、エンドヌクレアーゼはターゲット核酸内
に含まれる少なくとも1個の部位を開裂する制限酵素である。特定塩基を末端に
もつフラグメントを生成するための別の好ましい方法は、増幅と(例えば
連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的低い親和性をもち、ターゲットの指数的増
幅を生じる第1のDNAポリメラーゼと、連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的
高い親和性をもち、重合の塩基特異的停止を生じるポリメラーゼとを適量使用す
る)塩基特異的ターミネーション反応を併用実施する。ターゲット核酸の5’及
び/又は3’末端にタグを付けると、フラグメントを並べ易くなる。
本発明は未知核酸の配列の決定方法として、ターゲット核酸の5’及び/又は
3’末端にタグを付けてもよい方法を提供する。3’末端に非天然タグを付けて
も有用であり、3’不均一性、早期停止及び非特異的伸長の影響を防止又は補償
できる。好ましい態様では、タグはアフィニティータグ(例えばビオチン又は捕
獲核酸にハイブリダイズする核酸)である。アフィニティータグは核酸を固体支
持体に結合し易くするものが最も好ましい。別の好ましい態様では、タグは質量
マーカー(即ち4種のヌクレオチドのいずれの質量にも対応しない質量のマーカ
ー)である。更に別の態様では、タグはポリAテール又は例えば転写反応に起因
し得る天然3’不均一性等の天然タグである。
本発明は、生物試料から得た核酸分子から核酸を複製し、1
種以上のヌクレアーゼ(DNAにはデオキシリボヌクレアーゼ及びRNAにはリ
ボヌクレアーゼ)を使用して特異的に消化する配列分析方法を提供する。対応す
る相補的配列を担持する固体支持体にフラグメントを捕獲させる。ハイブリダイ
ゼーションイベントと捕獲ターゲット配列の実測分子量から遺伝子の突然変異に
関する情報が得られる。マススペクトロメトリーを使用してアレーをスポット毎
に分析することができる。更に、生成したフラグメントを並べると、より大きい
ターゲットフラグメントの配列が得られる。
別の態様では、予想される突然変異を検出しようとする部位の近傍で、3’末
端塩基をもつ少なくとも1個のプライマーをターゲット核酸にハイブリダイズす
る。3種のヌクレオシド三リン酸(NTP)にターミネーターとしての第4のヌ
クレオシド三リン酸を加えた1組のヌクレオシド三リン酸と適当なポリメラーゼ
を反応させる。伸長反応産物をマススペクトロメトリーにより測定し、突然変異
の存在及び種類を調べる。3種のNTPと1種のdd−NTP(又は3種のNT
Pと1種の3’−デオキシNTP)の組み合わせを変えると、ターゲット核酸配
列中の(複合ヘテロ接合体を含む)数種の突然変異を区別する
ことができる。
本発明は、組織又は細胞試料中の新形成/悪性の検出及び診断方法を提供する
。本方法はテロメア反復増幅プロトコール(TRAP)−MSアッセイに基づき、
a)臨床単離物又は被疑細胞培養物等の組織又は細胞試料を得る段階と、
b)試料からテロメラーゼを単離/抽出/精製する段階と、
c)合成DNAのテロメラーゼ特異的伸長を生じる条件下で、場合により固定化
したテロメア反復に相補的な合成DNAプライマーと全4種のdNTPを含む組
成物にテロメラーゼ抽出物を加える段階と、
d)好ましくはチオール化学又はストレプトアビジンに基づく部分等の「リンカ
ー部分」を含むプライマーを使用してテロメラーゼ伸長DNA産物を増幅する段
階と、
e)例えば固体支持体に固定化した相補的結合パートナーを使用してリンカー増
幅プライマーを単離する段階と、
f)場合によりDNAを結晶形成のために条件付けする段階と、
g)試料をイオン化/揮発させることによりMSを実施し、DNA産物を検出す
る段階を含む。テロメラーゼ特異的伸長は新
形成/悪性を表す。この方法を使用すると、特定悪性を検出することができる。
MSを使用してDNA産物を検出すると、試料中のテロメラーゼ活性を表す伸長
産物を同定することができる。所望により、合成DNAはアレー形態でもよい。
本発明は、癌遺伝子の突然変異の検出方法と、新形成を表す形質転換細胞をス
クリーニングするためのその使用を提供する。癌遺伝子に存在する突然変異の検
出は形質転換を表す。本方法は、
a)生物試料を得る段階と、
b)1個のプライマーが固定化のためのリンカー部分をもつようにして形質転換
を表すコドンを含む選択した癌原遺伝子の一部を増幅する段階と、
c)場合によりアレーの形態で固体支持体にリンカー部分を介してDNAを固定
化する段階と、
d)コドンの上流の癌原遺伝子配列に相補的なプライマーをハイブリダイズする
段階と、
e)3dNTP/1ddNTPとDNAポリメラーゼを加え、ハイブリダイズし
たプライマーを次のddNTPロケーションまで伸長する段階と、
f)試料をイオン化/揮発させる段階と、
g)伸長DNAの質量を検出し、質量によって野生型対立遺伝子が存在するか又
は突然変異対立遺伝子が存在するかを判断し、コドンに突然変異対立遺伝子が存
在する場合には新形成であると診断する段階を含む。1態様では、伸長−MS分
析を使用してレトロウイルス(RET)癌原遺伝子における突然変異コドン63
4の存在を検出する。
別の態様では、形質転換細胞で発現される遺伝子の逆転写と増幅を使用して疾
患を診断する方法を提供する。特に、腫瘍細胞では発現されるが、正常骨髄細胞
等の正常細胞では発現されないカテコールアミン生合成酵素であるチロシンヒド
ロキシラーゼの逆転写酵素(RT)−MSを使用して神経芽細胞腫を診断する方
法を提供する。本方法は、
a)組織試料を得る段階と、
b)試料からポリA RNAを単離する段階と、
c)逆転写を使用してcDNAライブラリーを調製する段階と、
d)1個のオリゴプライマーがリンカー部分をもつようにして選択した遺伝子の
cDNA産物又はその一部を増幅する段階と、
e)リンカー部分を介してDNAを固体支持体に固定化するこ
とにより増幅産物を単離する段階と、
f)場合によりDNAを条件付けする段階と、
g)試料をイオン化/揮発させ、選択した遺伝子の発現を表すDNAピークの存
在を検出する段階を含む。例えば、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子の発現は神
経芽細胞腫を表す。
MALDI−TOF MSを使用して2本鎖核酸を直接検出する方法も提供す
る。これらの方法は、
a)増幅法又は1本鎖DNAフラグメントのハイブリダイゼーションにより形成
したMSに適した寸法の2本鎖DNAを単離する段階と、
b)dsDNA:ssDNA比を増加する条件として、低温(即ち4℃)で分析
用試料を調製することと、マトリックス中で高いDNA濃度を使用してデュプレ
クス形成を誘導することのうちの1つ又は全部を含む条件下で分析用2本鎖DN
Aを調製する段階と、
c)例えばイオン化用閾値照射を僅かに上回るレベルにレーザー出力を調節する
ことにより、デュプレクスDNAの維持を助長するように低いイオン加速電圧を
使用して段階b)の試料をイオン化/揮発させる段階と、
d)適当な質量のdsDNAの存在を検出する段階を含む。好ましい態様では、
マトリックスは3−ヒドロキシピコリン酸を含む。検出されるDNAは遺伝異常
、遺伝病、疾患染色体異常の遺伝素因を表す。他の態様では、2本鎖DNAの質
量は欠失、挿人、突然変異を表す。
本発明は、プライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)と呼ぶ方法を提供する。
この方法は単一検出プライマーを使用した後、オリゴヌクレオチド伸長段階を実
施し、MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより容易に分解可能な産物
を得る。産物は多数の反復単位又は反復領域内の第2の部位突然変異に特異的な
数の塩基分だけ長さが異なる。この方法の1例では、ヒト染色体21に位置する
インターフェロン−αレセプター遺伝子のイントロン5におけるAluVpA多
型性と、ヒト染色体7に位置するCFTR遺伝子からのイントロン8のスプライ
ス受容部位のポリTトラクトをモデルシステムとして使用する。この方法は例え
ばマイクロサテライトDNAのPROBE−MS分析を使用して突然変異、家族
関係、HLA適合性及び他の同様のマーカーの種類を決定し、同定するために使
用すると有利である。好ましい態様では、本方法は、
a)2個の個体から生物試料を得る段階と、
b)2個以上のマイクロサテライトDNA反復配列を含む各個体からのDNAの
領域を増幅する段階と、
c)増幅したDNAをイオン化/揮発させる段階と、
d)増幅したDNAの存在を検出し、増幅したDNAの分子量を比較し、分子量
が相違する場合には不一致(即ち野生型と突然変異)、非遺伝又は非適合性と判
断し、フラグメントの寸法が同様の場合には、一致、家族関係又はHLA適合性
の可能性があると判断する段階を含む。
異なるリンカー部分をもつプライマーを固定化に使用し、2種以上のマーカー
を同時に試験することもできる。
突然変異、特に主要疾患の原因となる突然変異又は一般的多型性を検出するた
めの別法として、ループ−プライマーオリゴ塩基伸長法LOOP−PROBEと
呼ぶ方法も提供する。特定態様では、本方法は試料中のターゲット核酸の検出方
法であり、
a)(i)ターゲットコドンのすぐ下流のターゲットDNAの一部に一致する5
’末端と、β−グロビンの場合にはCfol等の固有制限エンドヌクレアーゼ部
位をアンプリコンに導入する配列と、自己相補的な3’末端をもつ第1のプライ
マーと、
(ii)ストレプトアビジンビーズ等の固体支持体にDNAを固定化するための
ビオチン等のタグを含む第2の下流プライマーを使用して試料中のβ−グロビン
等のターゲット核酸配列を増幅する段階と、
c)リンカー部分を介して2本鎖増幅DNAを固体支持体に固定化する段階と、
d)固定化DNAを変性させ、非固定化DNA鎖を単離する段階と、
e)3’末端をポリメラーゼにより伸長できるように、例えば加熱後に約37℃
まで冷却するか又は他の適当な方法により、単離した非固定化DNA鎖の3’末
端の内部相補的配列をアニールする段階と、
f)DNA鎖の3’末端がDNAポリメラーゼにより次のddNTPロケーショ
ン(即ち突然変異ロケーション)まで伸長するように、DNAポリメラーゼ、3
dNTP/1ddNTPを加えてアニールしたDNAを伸長する段階と、
g)伸長した2本鎖ステムループDNAを固有制限エンドヌクレアーゼで開裂し
、開裂したステムループDNAを除去する段階と、
i)(場合によりマトリックスを加えて)伸長産物をイオン化/揮発させる段階
と、
j)伸長したターゲット核酸の存在を検出し、野生型と質量の異なるDNAフラ
グメントが存在する場合にはターゲットコドンに突然変異が存在すると判断する
段階を含む。この方法は他のMS突然変異分析法と比較して特定の突然変異検出
用試薬を使用する必要がないので、プロセスが簡単になり、自動化し易い。また
、分析する特定伸長産物はプライマーから開裂されるので、他の方法よりも短い
。更に、アニーリング効率は添加したプライマーのアニーリングよりも高いので
、より多量の産物を生成できる。この方法は多重化及び種々の検出スキーム(例
えば単塩基伸長、オリゴ塩基伸長及びシーケンシング)に適合可能である。例え
ば、ループ−プライマーの伸長を使用して高度多型性領域内で短い診断シーケン
シングラダーを生成し、例えばHLA型別又は耐性及び種型別を実施することが
できる。
別の態様では、RNA増幅を使用して生物試料中のターゲット核酸を検出する
方法が提供される。本方法では、ターゲット配列に相補的な領域をもち、上流で
T7プロモーター等のプロモーターをコードするプライマーを使用してターゲッ
ト核酸を
増幅する。DNA依存性Rポリメラーゼと適当なリボヌクレアーゼを加えてRN
Aを合成し、MSにより分析する。
本発明は、MSを使用してDNAを配列決定する改善方法を提供する。これら
の方法では、MS分析の前に増幅用サーモサイクリングを使用してシグナルを増
加する。
本発明はMS分析用プライマーも提供する。特に、配列番号1〜22、24、
27〜38、41〜86、89、92、95、98、101〜110、112〜
123、126、128、129に示すヌクレオチド配列の配列のいずれかの全
塩基又は長いオリゴヌクレオチドで少なくとも約20、好ましくは約16個の塩
基を含むプライマーと、配列番号280〜287に示すプライマーを提供する。
プライマーは標識されておらず、場合により好ましくは5’末端に質量改変部分
を含む。
以下、図面、詳細な説明及び請求の範囲により本発明の方法の他の特徴及び利
点を更に説明する。
図面の簡単な説明
図1Aは生物試料から得たターゲット核酸分子(T)内に含まれる1個のター
ゲット検出部位(TDS)でマススペクトロメトリー分析を実施するための方法
を示す図である。スペーサ
ー(S)を介して固体支持体(SS)に特定捕獲配列(C)を結合する。捕獲配
列はターゲット捕獲部位(TCS)として知られるターゲット核酸分子(T)上
の相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択する。スペーサー(S)
は円滑なハイブリダイゼーションを助長する。次いで、TDSに相補的なデテク
ター核酸配列(D)をTDSと接触させる。マススペクトロメトリーによりDと
TDSのハイブリダイゼーションを検出することができる。
図1Bは固体支持体に直接結合することにより少なくとも1個のターゲット検
出部位(ここではTDS1とTDS2)でマススペクトロメトリー分析を実施す
るための方法を示す図である。ターゲット核酸分子(T)上の適当な官能基(L
’)と固体支持体上の適当な官能基(L)の間に形成される可逆的又は不可逆的
結合の形成により、ターゲット検出部位(TDS1及びTDS2)を含むターゲ
ット配列(T)を固体支持体に固定化する。次いで、ターゲット検出部位(TD
S1又はTDS2)に相補的なデテクター核酸配列(ここではD1とD2)をT
DSと接触させる。分子州差に基づいてTDS1とD1及び/又はTDS2とD
2のハイブリダイゼーションを検出及び区別す
ることができる。
図1Cはターゲット(T)核酸配列における野生型(Dwt)及び/又は突然変
異(Dmut)配列の検出方法を示す図である。図1Aと同様に、スペーサー(S
)を介して特定捕獲配列(C)を固体支持体(SS)に結合する。更に、捕獲配
列はハイブリダイゼーションにより検出しようとするターゲット捕獲部位(TC
S)であるターゲット配列(T)上の相補的配列と特異的に相互作用するように
選択する。ターゲット検出部位(TDS)が突然変異Xを含む場合には、マスス
ペクトロメトリーにより検出部位を野生型から区別することができる。突然変異
が分子の中間に位置し、従って野生型デテクターオリゴヌクレオチド(Dwt)を
例えば対照としてのターゲットデテクター配列と接触させる場合に安定なハイブ
リッドを形成しないようにデテクター核酸分子(D)をデザインすることが好ま
しい。突然変異位置に対合塩基をもつ突然変異デテクターオリゴヌクレオチド(
Dmut)をハイブリダイゼーションに使用しても突然変異を検出することができ
る。生物試料から得た核酸分子が特定配列に関してヘテロ接合である(即ちDwt
とDmutを含む)場合には、appと検出しようとするDmutにDwtとDmutを同
時に結合する。
図2は1個のターゲット配列で数個の突然変異を同時に検出する方法を示す図
である。デテクターオリゴヌクレオチドD1、D2及びD3間の分子量差は同時
倹出(多重化)を可能にするために十分大きくなければならない。これは配列自
体(組成又は長さ)によっても得られるし、質量改変官能基M1〜M3をデテク
ターオリゴヌクレオチドに導入しても得られる。
図3は更に別の多重検出フォーマットを示す図である。この態様では、平坦表
面(例えば「チップアレー」)に位置特異的に固定化した種々の特定捕獲配列を
使用することにより区別する。異なるターゲット配列T1〜Tnが存在する場合
には、それらのターゲット捕獲部位TCS1〜TCSnは相補的固定化捕獲配列
C1〜Cnと相互作用する。配列自体又は質量改変官能基M1〜Mnにより適当
に質量差をつけたデテクターオリゴヌクレオチドD1〜Dnを使用することによ
り検出する。
図4は核酸(即ちPCR)増幅を使用して予めデサインしたターゲット捕獲部
位(TCS)をターゲット配列に組み込むフォーマットを示す図である。(例え
ばビオチンとストレプトアビジンをコートした磁性ビーズの相互作用を利用して
)一方の
鎖のみを捕獲し、他方を除去する。ビオチンをプライマー1に結合する場合には
、他方の鎖はTCSにより適当に標識すればよい。検出は上記と同様にマススペ
クトロメトリーにより対応するターゲット検出部位TDSと特定デテクターオリ
ゴヌクレオチドDの相互作用により行なう。
図5は増幅(ここではリガーゼ連鎖反応(LCR))産物を調製し、マススペ
クトロメトリーにより検出する方法を示す図である。プライマー(夫々P1及び
P4)に結合した質量改変官能基(M1及びM2)により質量差をつけることが
できる。マススペクトロメトリーによる検出は直接(即ち固定化及びターゲット
捕獲部位(TCS)を使用せずに)実施することができる。捕獲配列(C)の規
則アレーを構成することにより多重LCR反応を並行して実施することができる
。このフォーマットは連結産物を分離し、質量差が十分である場合にはマススペ
クトロメトリー又は多重化によりスポット毎に同定できる。
図6Aは転写増幅法により増幅した核酸分子のマススペクトロメトリー分析を
示す図である。RNA配列をそのTCS配列を介して捕獲すると、適当なデテク
ターオリゴヌクレオチド(D)を使用することにより上記と同様に野生型及び突
然変異
ターゲット検出部位を検出することができる。
図6Bは質量改変デテクターオリゴヌクレオチドM1−D1及びM1−D2を
使用して同一RNA上の2個の異なる(突然変異)部位を同時に検出するための
多重化を示す図である。
図6Cは質量改変ジデオキシヌクレオシド又は3’−デオキシヌクレオシド三
リン酸とRNA依存性DNAポリメラーゼを使用することにより特定突然変異を
検出するための別の多重化方法を示す図である。あるいは、DNA依存性RNA
ポリメラーゼとリボヌクレオチドリン酸を使用してもよい。このフォーマットは
突然変異の部位(X)に予想される全4種の塩基を同時に検出することができる
。
図7Aは生物試料から得たターゲット核酸分子(T)内に含まれる1個のター
ゲット検出部位(TDS)でマススペクトロメトリー分析を実施するための方法
を示す図である。スペーサー(S)を介して固体支持体(SS)に特定捕獲配列
(C)を結合する。捕獲配列はターゲット捕獲部位(TCS)として知られるT
上の相補的配列に特異的にハイブリダイズするように選択する。TDSの一部に
相補的な核酸分子をTDS内の突然変異部位(X)のTDS5’にハイブリダイ
ズする。完全な1
組のジデオキシヌクレオシド又は3’−デオキシヌクレオシド三リン酸(例えは
pppAdd、pppTdd、pppCdd及びpppGdd)とDNA依存性
DNA又はRNAポリメラーゼを加えると、Xに相補的な1個のジデオキシヌク
レオシド又は3’−デオキシヌクレオシド三リン酸のみを組み込むことができる
。
図7Bは核酸分子内の潜在突然変異部位(M)における突然変異の存在を調べ
るためにマススペクトロメトリー分析を実施する方法を示す図である。このフォ
ーマットは2本鎖ターゲット核酸分子の対立遺伝子(A)及び(B)を同時に分
析することができ、ホモ接合正常、ホモ接合突然変異又はヘテロ接合を診断する
ことができる。Mを含む領域内でA及びBとハイブリダイズする相補的オリゴヌ
クレオチド(夫々(C)及び(D))に対立遺伝子A及びBを各々ハイブリダイ
ズさせる。次いで各ヘテロデュプレクスを1本鎖特異的エンドヌクレアーゼと接
触させ、Mに突然変異の存在を示すミスマッチにがあれば(C)及び/又は(D
)が開裂するので、マススペクトロメトリーにより検出することができる。
図8は逆向きロケーションに2種の異なるプロモーター(例
えばSP6とT7プロモーター)をもつ転写ベクターを使用して検出するために
ターゲットDNAの両鎖を調製する方法を示す図である。このフォーマットはヘ
テロ接合ターゲット検出部位(TDS)を検出するのに特に有用である。SP6
又はT7RNAポリメラーゼを使用すると、両鎖を別々又は同時に転写させるこ
とができる。転写したRNA分子は、適当に質量差をつけたデテクターオリゴヌ
クレオチドを使用して特異的に捕獲し、同時に検出することができる。これは溶
液中で直接実施することもできるし、特異的に固定化した捕獲配列の規則アレー
上で多数のターゲット配列を並行処理することにより実施することもできる。
図9は1種以上のリボヌクレアーゼと対応する相補的配列を担持する固体支持
体に捕獲したフラグメントを使用して図6、7及び8に示したように調製したR
NAを特異的に消化する方法を示す図である。ハイブリダイゼーションイベント
と捕獲したターゲット配列の実測分子量から、遺伝子中の突然変異の有無とその
存在位置に関する情報が得られる。アレーはマススペクトロメトリーを使用して
スポット毎に分析することができる。DNAは制限エンドヌクレアーゼを含むヌ
クレアーゼカクテル
を使用して消化することもできる。個々の特定フラグメントの分子量と野生型フ
ラグメントの分子量の差により突然変異を検出することができる。
図10Aは後記実施例1に記載する実験により得られたUVスペクトルを示す
。パネルi)はハイブリダイゼーション前の26量体の吸収を示す。パネルii
)はハイブリダイゼーション後の遠心分離濾液を示す。パネルiii)は第1回
目の50mMクエン酸アンモニウム洗浄後の結果を示す。パネルiv)は第2回
目の50mMクエン酸アンモニウム洗浄後の結果を示す。
図10Bは3回の洗浄/遠心分離段階後の後記実施例1に記載する実験により
得られた質量スペクトルを示す。
図10Cは後記実施例1に記載する実験により得られた質量スペクトルを示し
、図1Bに模式的に示したフォーマットに従ってハイブリダイズした26量体を
ビーズから脱着できることを示している。
図11は後記実施例1に記載する実験により得られた質量スペクトルを示し、
図1Bに模式的に示したような実験でハイブリダイスした40量体を脱着できる
ことを実証している。検出
効率は、40量体よりも著しく長いフラグメントでも脱着できることを示唆して
いる。
図12は後記実施例2に記載する実験により得られた質量スペクトルを示し、
エレクトロスプレーマススペクトロメトリーにより18量体と19量体を脱着及
び区別できることを示しており、夫々混合物(上段)、18量体(中段)及び1
9量体からのピーク(下段)を示す。
図13は実施例3に記載するような嚢胞性線維症突然変異ΔF508の検出方
法の図である。
図14は実施例3のΔF508ホモ接合正常のDNA伸長産物の質量スペクト
ルである。
図15は実施例3のΔF508ヘテロ接合突然変異のDNA伸長産物の質量ス
ペクトルである。
図16は実施例3のΔF508ホモ接合正常のDNA伸長産物の質量スペクト
ルである。
図17は実施例3のΔF508ホモ接合突然変異のDNA伸長産物の質量スペ
クトルである。
図18は実施例3のΔF508ヘテロ接合突然変異のDNA伸長産物の質量ス
ペクトルである。
図19は実施例4のアポリポタンパク質E遺伝子型別を実施するための種々の
方法の図である。
図20はE3対立遺伝子(図20B)によりコードされる正常アポリポタンパ
ク質Eと、E2及びE4対立遺伝子(図20A)によりコードされる他のイソタ
イプの核酸配列を示す。
図21AはCfol制限エンドヌクレアーゼを使用したアポリポタンパク質E
の種々の遺伝子型の複合制限パターンを示す。
図21Bはアポリポタンパク質Eの種々の遺伝子型について3.5%MetP
hor Agarose Gel中で得られた制限パターンを示す。
図21Cはアポリポタンパク質Eの種々の遺伝子型について12%ポリアクリ
ルアミドゲル中で得られた制限パターンを示す。
図22Aはアポリポタンパク質EのE2、E3及びE4対立遺伝子の制限酵素
分解により得られた91、83、72、48及び35塩基対フラグメントの分子
量を示すチャートである。
図22Bはホモ接合E4アポリポタンパク質E遺伝子型の制限消化産物の質量
スペクトルである。
図23Aはホモ接合E3アポリポタンパク質E遺伝子型の制
限消化産物の質量スペクトルである。
図23BはE3/E4アポリポタンパク質E遺伝子型の制限消化産物の質量ス
ペクトルである。
図24は7.5%ポリアクリルアミドゲルに各増幅試料10%(5μl)を加
えた実施例5のオートラジオグラフである。試料M:AluIで消化したpBR
322;試料1:血清分析でHBV陽性;試料2:同じくHBV陽性;試料3:
血清分析しなかったが、トランスアミナーゼ濃度が増加しており、肝疾患の徴候
を示す;試料4:HCVを含むHBV陰性;試料5:HBV陽性;((−)陰性
対照;陽性(+)対照)。染色は臭化エチジウムを用いて実施した。
図25AはHBV陽性の試料1の質量スペクトルである。20754Daのシ
グナルはHBV関連増幅産物を表す(67ヌクレオチド、計算分子量20735
Da)。10390Daの質量シグナルは[M+2H]2+分子イオンを表す(計
算値10378Da)。
図25Bは血清及びドットブロットアッセイでHBV陰性の核酸(即ちPCR
)に対応する試料3の質量スペクトルである。増幅産物は微量しか生成されてい
ない。しかし、20751
Da(計算質量:20735Da)にはっきり検出される。10397Daの質
量シグナルは[M+2H]2+分子イオンを表す(計算値10376Da)。
図25CはHBV陰性且つHCV陽性の試料4の質量スペクトルである。HB
V特異的シグナルは検出されなかった。
図26は実施例6のリガーゼ連鎖反応(LCR)で使用した相補的オリゴヌク
レオチドの結合部位をもつ大腸菌lacI遺伝子の一部を示す。ここでは野生型
配列を示す。突然変異体は連結部位でもあるbp191に点突然変異を含む(太
字)。突然変異はC→T転位(及びG→A転位)である。この結果、オリゴBと
T−Gミスマッチ(及びオリゴCとA−Cミスマッチが生じる。
図27は臭化エチジウムで染色した実施例6の7.15%ポリアクリルアミド
ゲルである。M:鎖長標準(MspIで消化したpUC19DNA)。レーン1
:野生型鋳型を用いたLCR。レーン2:突然変異鋳型を用いたLCR。レーン
3:(対照)鋳型を用いないLCR。連結産物(50bp)は野生型鋳型を含む
陽性反応のみで生成された。
図28は2種の陽性LCRのプールのHPLCクロマトグラ
ムである。
図29は突然変異鋳型以外は同一条件を使用したHPLCクロマトグラムを示
す。連結産物の小さいシグナルは遊離体の鋳型なし連結又は(G−T、A−C)
ミスマッチでの連結に起因する。「偽陽性」シグナルは図28に示す野生型鋳型
を用いた連結産物のシグナルよりも著しく弱い。連結遊離体を分析すると、オリ
ゴヌクレオチドの2個が5’リン酸化されているので「二重ピーク」となってい
る。
図30(b)は実施例6のPfu DNA−リガーゼ溶液のMALDI−TO
F−MS分析により得られた複合シグナルパターンを示す。(a)は未精製LC
RのMALDI−TOFスペクトルを示す。質量シグナル67569DaはPf
u DNAリガーゼを表すと思われる。
図31は2種の陽性LCRのプールのMALDI−TOFスペクトルを示す(
a)。7523Daのシグナルは未連結オリゴA(計算値7521Da)を表し
、15449Daのシグナルは連結産物(計算値15450Da)を表す。37
74DaのシグナルはオリゴAの[M+2H]2+シグナルである。2000Da
未満の質量範囲のシグナルはマトリックスイオンに起因す
る。スペクトルは図27のレーン1と図28のクロマトグラムに対応する。(b
)は2種の陰性LCR(突然変異鋳型)のプールのスペクトルを示す。7517
DaのシグナルはオリゴA(計算値7521Da)を表す。
図32は(鋳型としてサケ精子DNAを用いた)2種の対照反応産物プールの
スペクトルを示す。2000Da付近の質量範囲のシグナルはTween20に
起因し、予想通り、オリゴAしか検出できなかった。
図33は2種の陽性LCRプールのスペクトルを示す(a)。精製は本文に記
載するように限外濾過とストレプトアビジンDynaBeadsを併用して実施
した。15448Daのシグナルは連結産物を表す(計算値15450Da)。
7527DaのシグナルはオリゴAを表す(計算値7521Da)。3761D
aのシグナルはオリゴAの[M+2H]2+シグナルであり、5140Daのシグ
ナルは連結産物の[M+3H]2+シグナルである。(b)は2種の陰性LCRプ
ール(鋳型なし)のスペクトルを示す。7514DaのシグナルはオリゴAを表
す(計算値7521Da)。
図34は実施例7に記載するような突然変異検出プライマー
のオリゴ塩基伸長の模式図であり、夫々ddTTP(A)又はddCTP(B)
を反応混合物で使用している。理論質量計算値を括弧内に示す。図示配列は最も
一般的な嚢胞性線維症突然変異ΔF508とより低頻度の突然変異Δ1507と
Ile506SerをもつCFTR遺伝子のエキソン10の一部である。
図35は突然変異検出のためにオリゴ塩基伸長プライマー沈殿から直接記録し
たMALDI−TOF−MSスペクトルである。(A)及び(B)のスペクトル
は夫々それ以上伸長反応せずにアニールしたプライマー(CF508)を示す。
パネルCは伸長反応でpppTddを使用した野生型のMALDI−TOFスペ
クトルを示し、DはpppCddをターミネーターとして使用した場合の506
S突然変異をもつヘテロ接合伸長産物を示す。パネルE及びFは伸長反応でpp
pTdd及びpppCddをターミネーターとして使用したΔF508をもつヘ
テロ接合体を示す。パネルG及びHはpppTdd及びpppCddをターミネ
ーターとして使用したヘテロ接合ΔF508突然変異を示す。診断の鋳型は各ス
ペクトルの下に記載し、実測/予想分子量を括弧内に記載する。
図36は未修飾及び7−デアザプリンを含む99量体及び200量体核酸の核
酸増幅用鋳型として実施例8で使用したpRFc1 DNAの配列の部分と、1
9量体順プライマーと、2種の18量体逆プライマーの配列を示す。
図37は未修飾及び7−デアザプリンを含む103量体核酸の核酸増幅に実施
例8で使用したM13mp18 RFI DNAのヌクレオチド配列の部分を示
す。核酸増幅反応で使用した17量体のヌクレオチド配列も示す。
図38は実施例8に記載した増幅産物をMALDI−TOF−MS分析用に精
製及び濃縮したもののポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果を示す。M:鎖長
マーカー、レーン1:7−デアザプリンを含む99量体増幅産物、レーン2:未
修飾99量体、レーン3:7−デアザプリンを含む103量体及びレーン4:未
修飾103量体増幅産物。
図39:5’−[32P]標識プライマー1及び4を用いて実施した核酸(即ち
PCR)反応産物のポリアクリルアミドゲル電気泳動のオートラジオグラム。レ
ーン1及び2:未修飾及び7−デアザプリンで修飾した103量体増幅産物(5
3321及び23520カウント)、レーン3及び4:未修飾及び7−
デアザプリンで修飾した200量体(71123及び39582カウント)、レ
ーン5及び6:未修飾及び7−デアザプリンで修飾した99量体(173216
及び94400カウント)。
図40:a)未修飾103量体増幅産物のMALDI−TOF質量スペクトル
(合計12個の単照射スペクトル)。2本の1本鎖の計算質量値(31768u
と31759u)の平均値は31763uである。質量分解能:18。b)7−
デアザプリンを含む103量体増幅産物のMALDI−TOF質量スペクトル(
合計3個の単照射スペクトル)。2本の1本鎖の計算質量値(31727uと3
1719u)の平均値は31723uである。質量分解能:67。
図41:a)未修飾99量体増幅産物のMALDI−TOF質量スペクトル(
合計20個の単照射スペクトル)。2本の1本鎖の計算質量値は30261uと
30794uである。b)7−デアザプリンを含む99量体増幅産物のMALD
I−TOF質量スペクトル(合計12個の単照射スペクトル)。2本の1本鎖の
計算質量値は30224uと30750uである。
図42:a)未修飾200量体増幅産物のMALDI−TOF質量スペクトル
(合計30個の単照射スペクトル)。2本の
1本鎖の計算質量値(61873uと61595u)の平均値は61734uで
ある。質量分解能:28。b)7−デアザプリンを含む200量体増幅産物のM
ALDI−TOF質量スペクトル(合計30個の単照射スペクトル)。2本の1
本鎖の計算質量値(61772uと61714u)の平均値は61643uであ
る。質量分解能:39。
図43:a)リボ修飾プライマーを用いて増幅した7−デアザプリンを含む1
00量体増幅産物のMALDI−TOF質量スペクトル。2本の1本鎖の計算質
量値(30529uと31095u)の平均値は30812uである。b)加水
分解プライマー開裂後の増幅産物のMALDI−TOF質量スペクトル。2本の
1本鎖の計算質量値(25104uと25229u)の平均値は25167uで
ある。開裂したプライマー(5437uと5918u)の平均値は5677uで
ある。
図44A〜Dは3’ビオチン化によりストレプトアビジンビーズに固定化した
39量体鋳型(配列番号23)から得た4種のシーケンシングラダーのMALD
I−TOF質量スペクトルを示す。実施例9によるシーケンシングでは14量体
プライマー(配列番号24)を使用した。
図45は3’ビオチン化によりストレプトアビジンビーズに固定化した78量
体鋳型(配列番号25)の固相シーケンシングのMALDI−TOF質量スペク
トルを示す。シーケンシングでは18量体プライマー(配列番号26)とddG
TPを使用した。
図46は1本鎖オーバーハングをもつデュプレクスDNAプローブが特定DN
A鋳型を捕獲すると共に固相シーケンシング用プライマーとしても機能すること
を示すスキームである。
図47A〜Dは実施例9に記載するように5塩基オーバーハングを残して3’
ビオチン化18量体(配列番号30)にアニールした5’蛍光標識23量体(配
列番号29)を使用して15量体鋳型(配列番号31)を捕獲し、シーケンシン
グ反応から得たMALDI−TOF質量スペクトルを示す。
図48は慣用DNAシーケンサーを使用した以外は図47に示した反応から得
られた同一産物のスタッキングフルオログラムを示す。
図49は実施例1に記載するようなサイクルシーケンサーを使用して鋳型とし
て生物増幅産物と12量体(5’−TGC ACC TGA CTC−3’(配
列番号34))シーケンシン
グプライマーから生成したシーケンシングラダーのMALDI−TOF質量スペ
クトルを示す。脱プリンに起因するピークと配列に無関係なピークはアステリス
クを付けた。MALDT−TOF MS測定はリフレクトロンTOF MSで行
なった。A)ddATPで停止したシーケンシングラダー;B)ddCTPで停
止したシーケンシングラダー;C)ddGTPで停止したシーケンシングラダー
;D)ddTTPで停止したシーケンシングラダー。
図50はプライマーの後に40塩基までの対応計算分子量をもつ図49で生成
したシーケンシングラターの模式図を示す。計算に使用した分子量は、プライマ
ー3581.4Da、7−デアザ−dATP312.2Da、dTTP304.
2Da、dCTP289.2Da及び7−デアザ−dGTP328.2Daであ
る。
図51はシーケンシング用鋳型として使用したβ−グロビン遺伝子内の増幅2
09bp増幅産物の配列を示す。適当な増幅プライマーの配列と12量体シーケ
ンシングプライマーのロケーションも示す。この配列はプライマーから4塩基後
の位置のホモ接合突然変異体を表す。野生型配列ではこのTはAで置換
される。
図52は実施例11に詳細に記載するようなAluVpA多型性をもつインタ
ーフェロン−レセプター遺伝子のイントロン5の一部である配列を示す。スキー
ムはddGTP、ddCTP又はその両者を停止に使用したプライマーオリゴ塩
基伸長(PROBE)を示す。多型性検出プライマー(IFN)を下線で示し、
停止ヌクレオチドを太字で示す。28人の無関係の個体と5人家族に存在する対
立遺伝子からの理論分子量値を表に示す。全部ではないが大半の13単位対立遺
伝子に存在する2種の第2の部位突然変異を示す。
図53は伸長サイクルPROBE反応産物沈殿から直接記録したMALDI−
TOF−MSスペクトルを示す。インターフェロン−αレセプター遺伝子のイン
トロン5におけるAluVpA多型性を使用した家族試験を示す(実施例11)
。
図54は反応混合物中で停止ヌクレオチドとしてddCを使用したPROBE
産物からの質量スペクトルを示す。母親と子供2のDNAからの約11650D
aの分子量をもつ対立遺伝子は反復単位の1個に第2の部位突然変異が存在する
ことを示唆している。
図55はターミネーターとしてpppCddを使用し、CFTR遺伝子のイン
トロン8の3’末端でポリTトラクトの種々の対立遺伝子を検出するためのPR
OBE法の模式図を示す(実施例11)。
図56は伸長PROBE反応産物沈殿から直接記録したMALDI−TOF−
MSスペクトルを示す。CFTR遺伝子のイントロン8の3’末端にポリTトラ
クトの全3種の一般的対立遺伝子が検出された。(a)T5/T9ヘテロ接合、
(b)T7/T9ヘテロ接合(実施例11)。
図57はa)CfoI単独及びb)CfoIとRsaIを使用して実施例12
に記載するように消化した252量体アポE遺伝子増幅産物(ε3/ε3遺伝子
型)の質量スペクトルを示す。アステリスク:脱プリンピーク。
図58はCfoIで消化し、a)エタノール/グリコーゲンで1回、b)同2
回及びc)イソプロピルアルコール/グリコーゲンで2回沈殿することにより精
製したアポE遺伝子増幅産物(ε3/ε3遺伝子型)の質量スペクトルを示す。
図59はa)ε2/ε3、b)ε3/ε3、c)ε3/ε4及びd)ε4/ε
4遺伝子型からのCfoI/RsaI消化産
物の質量スペクトルを示す。診断フラグメントに点線を引いた。
図60は消化酵素Cfol及びRsaIによる252量体アポE遺伝子増幅産
物の同時消化に基づく未知アポE遺伝子型の迅速同定スキームを示す。
図61はa)ε2/ε3、b)ε3/ε3、c)ε3/ε4及びd)ε4/ε
4遺伝子型のマルチプレクス(コドン112及び158)質量スペクトルPRO
BE結果を示す。E:伸長産物;P:未伸長プライマー。上段:コドン112及
び158領域、多型性部位は太字、プライマー配列は下線で示す。
図62はテロメラーゼ活性を検出するためのTRAPアッセイの質量スペクト
ルを示す(実施例13)。スペクトルはプライマーシグナルの2個を示し、5,
497.3Da(計算値5523Da)に増幅産物TSプライマーと、7,53
7.6Da(計算値7,537Da)にビオチン化bioCXプライマーのシグ
ナルを示し、12,755.8Da(計算値12,452Da)に3個のテロメ
ア反復を含む第1のテロメラーゼ特異的アッセイ産物のシグナルを示し、アッセ
イ産物の質量はTaq DNAポリメラーゼのエキステンダーゼ活性により1d
Aヌクレオチド分だけ(12,765Da)大きい。
図63は図62の高質量範囲を示し、即ち12,775.6Daのピークはこ
れらのテロメア反復をもつ産物を表す。20,322.1Daのピークはテロメ
ラーゼ活性の結果であり、7個のテロメア反復を形成している(1dAヌクレオ
チド分の伸長を含む計算値20,395Da)。1、2、3及び4で示したピー
クは14,674Daの4個のテロメア反復と二次イオン産物を含む。
図64はヒトチロシンヒドロキシラーゼmRNAのRT増幅産物のMALDI
−TOFスペクトルを示し、神経芽細胞腫細胞の存在を示している(実施例14
)。18,763.8Daのシグナルは入れ子増幅産物の非ビオチン化1本鎖6
1量体を表す(計算値18,758.2Da)。
図65(a)はRET癌原遺伝子とdATP、dCTP、dGTP及びddT
TPの混合物のPROBE反応の模式図である(実施例15)。Bはビオチンを
表し、センス鋳型鎖はビオチンとストレプトアビジンを介して固体支持体に結合
される。
図65(b)は野生型、C→T及びC→Aアンチセンス鎖のddT及びddA
反応の予想PROBE産物を示す。
図66は(a)陰性対照、(b)ヘテロ接合患者1(Wt/
C→T)及び(c)ヘテロ接合患者2(Wt/C→A)のPROBE産物質量ス
ペクトルを示し、平均Mr値を報告する。
図67は(a)野生型、(b)G→A、及び(c)G→Tホモ接合、(d)野
生型/G→A、(e)野生型/G→T及び(F)G→A/G→Tヘテロ接合から
のリボ開裂RET癌原遺伝子増幅産物に相当する合成類似体のMALDI−FT
MSスペクトルを示し、最も強い同位体ピータの質量を報告する。
図68は共有二官能性トリチルリンカーを介する核酸固定化の模式図である。
図69は疎水性トリチルリンカーを介する核酸固定化の模式図である。
図70は結合オリゴ(5’−イミノビオチン−TGCACCTGACTC、配
列番号56)を含むマトリックス処理Dynabeadsの上清のMALDI−
TOF質量スペクトルを示す。マトリックスには内部標準(CTGTGGTCG
TGC、配列番号57)を加えた。
図71は結合オリゴ(5’−イミノビオチン−TGCACCTGACTC、配
列番号56)を含むマトリックス処理Dynabeadsの上清のMALDI−
TOF質量スペクトルを示
す。マトリックスには内部標準(CTGTGGTCGTGC、配列番号57)を
加えた。
図72はループ−プライマーオリゴ塩基伸長(ループPROBE)反応で実施
する段階を模式的に示す。
図73AはステムループのCfoI消化後の上清のMALDI−TOF質量ス
ペクトルを示す。図73B〜Dは種々の遺伝子型のMALDT−TOF質量スペ
クトルを示し、HbAは野生型遺伝子型(74B)、HbCは鎌状赤血球症を誘
発するβ−グロビンのコドン6の突然変異(74C)、HbSは鎌状赤血球症を
誘発するβ−グロビンのコドン6の別の突然変異(74D)である。
図74はCKR−5の増幅領域の核酸配列を示す。下線の配列は増幅プライマ
ーに相同の領域に対応する。点線の領域は32bp欠失に対応する。
図75はセンスプライマーckrT7fを示す。T7−RNAポリメラーゼの
結合と分析しようとするCKR−5領域の増幅を助長するようにデザインし、2
4塩基のランダムに選択した配列から始まり、18塩基のT7プロモーターと1
9塩基のCKR−5に相同の配列を含む。
図76は後記実施例21に記載するように生成したCKR−5増幅産物のMA
LDI−TOF質量スペクトルである。
図77は選択したRNアーゼで消化した合成RNA25量体(5’−UCCG
GUCUGAUGAGUCCGUGAGGAC−3’、配列番号62)の陽イオ
ンUV−MALDI質量スペクトルである。合計約20pmolのRNAを含む
4.5μlアッセイの0.6μlアリコートを1.5μlマトリックス(3−H
PA)に固定して各酵素を分析した。5’末端を保存したフラグメントはRNア
ーゼによって異なる種類の矢印で示す(Hahnerら,Proceeding
s of the 44th ASMS Conference on Mas
s Spectrometry and Allied Topics,p.9
83(1996))。
図78は合成RNA20量体の陽イオンUV−MALDI質量スペクトルによ
るRNアーゼCL3及びクサチビンの特異性試験である。予想及び/又は実測開
裂部位を矢印で示す。A、B、Cは正しい開裂部位と対応する単一開裂フラグメ
ントを示す。開裂の不在は?で示し、非特異的開裂はXで示す。
図79はDNA分子(12量体、5’ビオチン化19量体、
22量体及び5’ビオチン化27量体)とストレプトアビジンをコートした磁性
ビーズの混合物の分離を示す。a)マトリックス(3−HPA)1.5μlと混
合した各種約2〜4pmolを含む混合物0.6μlの陽イオンUV−MALD
I質量スペクトル。b)混合物を磁性ビーズとインキュベーション後に捕獲され
たフラグメントを遊離させた以外はa)と同一のスペクトル。
図80はストレプトアビジンをコートした磁性ビーズからの固定化5’ビオチ
ン化49nt in vitro転写産物の溶雌を示す。(a)磁性ビーズとイ
ンキュベーション前の転写産物の陽イオンUV−MALDI質量スペクトル。9
5%ホルムアミド単独(b)、10mM EDTA(c)、10mM CDTA
(d)及び25%水酸化アンモニウム(e)の添加剤で溶離後の固定化RNA転
写産物のスペクトル。EDTAとCDTAは25%水酸化アンモニウムでpH8
に調整した。
図81はRNアーゼU2で15分間消化後の5’ビオチン化49nt in
vitro転写産物の陽イオンUV−MALDI質量スペクトルを示す。a)タ
ーゲットRNA約100pmolを含む25μlアッセイの分離前のスペクトル
。b)磁
性ビーズに固定化した5’ビオチン化フラグメントの単離後のスペクトル。捕獲
したフラグメントは10mM CDTAを含む95%ホルムアミドの溶液で遊離
させた。いずれの場合も試料の1μlアリコートをマトリックス(3−HPA)
1.5μlと混合した。
図82はヒトβ−グロビン遺伝子のコドン5及び6とコドン30と、IVS−
1供与部位における推定突然変異の並行検出を模式的に示す。図82Aはプライ
マーβ2及びβ11を使用したゲノムDNAの増幅を示す。プライマー及び同定
タグのロケーションと野生型及び突然変異配列を示す。図82Bは(コドン5及
び6の上流に結合する)プライマーβ−TAG1と(コドン30及び工VS−1
供与部位の上流に結合する)β−TAG2を使用した単純なPrimer Re
action Oligo Base Extension(PROBE)にお
ける両部位の分析を示す。反応産物はストレプトアビジンをコートした常磁性粒
子に結合したビオチン化捕獲プライマー(夫々cap−tag−1及びcap−
tag−2)を使用して捕獲し、これらのプライマーは夫々β−TAG1及びβ
−TAG2の5’末端に相補的な6個の5’末端塩基と、ユニバーサルプ
ライマーに結合する部分をもつ。
図83は図82に模式的に示したように分析した1個体からのDNA試料のP
ROBE産物の質量スペクトルを示す。
図84はcap−tag−2に結合した配列の質量スペクトルを示す。
図85は図82に示した方法に従い、ターミネーションにddATPを使用し
て1回のシーケンシング反応でβ−TAG1及びβ−TAG2プライマーを使用
した後に分別することにより得られた質量スペクトルを示す。
図86は図82に示した方法に従い、ターミネーションにddCTPを使用し
て1回のシーケンシング反応でβ−TAG1及びβ−TAG2プライマーを使用
した後に分別することにより得られた質量スペクトルを示す。
図87AはケモカインレセプターCKR−5遺伝子のフラグメントの野生型配
列と増幅に使用したプライマー(太字)を示す。CKR−5対立遺伝子における
32塩基対(bp)欠失を下線で示し、停止ヌクレオチドをイクリック体で示す
。図87Bはアデノシンが付加された野生型鎖と付加されていない野生型鎖と、
その長さと分子量を示す。図87Cは同じく32bp
欠失を示す。図87Dは野生型遺伝子のPROBE産物を示し、図87Eは突然
変異対立遺伝子のPROBE産物を示す。
図88は天然ポリアクリルアミドゲル電気泳動(15%)及び銀染色により分
析した種々の無関係個体の増幅産物を示す。野生型CKR−5に対応するバンド
は75bpに現れ、欠失をもつ遺伝子からのバンドは43bpに現れている。7
5bpよりも大きいバンドは非特異的増幅に起因する。
図89Aはヘテロ接合個体にからのDNAのスペクトログラフを示し、質量2
3319Daのピークは野生型CKR−5に対応し、質量13137Da及び1
3451Daのピークは夫々アデノシンが付加された欠失対立遺伝子と付加され
ていない欠失対立遺伝子に対応する。図89BはDNAをT4 DNAポリメラ
ーゼで処理し、付加したアデノシンを除去した以外は図89Aと同一の個体から
得たDNAのスペクトログラフを示す。図89C及び図89Dはホモ接合個体に
由来するスペクトログラフであり、図89Dではアデノシンを除去している。質
量13000Da未満の全ピークは多電荷分子に起因する。
図90Aはヘテロ接合個体から得たDNAで実施したPROBE反応の結果の
質量スペクトルを示す。図90Bはホモ接合
個体で実施したPROBE反応の結果の質量スペクトルを示す。夫々質量660
4Da及び6607Daのピークは野生型対立遺伝子に対応し、質量6275D
aのピークは欠失対立遺伝子に対応する。プライマーは夫々質量5673及び5
676Daに検出される。
図91は3個の異なる鋳型と5個の異なるPROBEプライマーを1回の反応
で同時に使用する実施例24に記載するようなサーモサイクリングプライマーO
ligo Base Extension(tc−PROBE)反応のMALD
I−TOF MSスペクトルを示す。
図92は実施例25に記載するようにp53遺伝子のエキソン5〜8を増幅及
び配列決定するためのシングルチューブプロセスを模式的に示す。質量スペクト
ルは図93のA反応である。
図93は実施例25に記載するようにp53遺伝子のエキソン7の一部を配列
決定するための4回の別々の反応を重ねたプロットを示す。
図94は実施例25に記載するようにp53遺伝子のエキソン7の一部を配列
決定するためにA反応から得られた質量スペクトルを示す。
図95は各反応産物5nLをチップのウェルに移し、MALDI−TOFによ
り測定したp53シーケンシングラダーの質量スペクトルを示す。
図96Aは合成50量体(15.34kDa)と27量体nc(非相補的、8.
30kDa)の混合物のMALDI−TOF質量スペクトルを示す。
図96Bは合成50量体(15.34kDa)と27量体。(相補的、8.3
4kDa)の混合物のMALDI−TOF質量スペクトルを示す。各オリゴヌク
レオチドの終濃度は10μMとした。図96Bの23.68kDaのシグナルは
WC特異的dsDNAに対応する。
図97Aは図96と同様の試料調製を使用したアポリポタンパク質E遺伝子(
ε3遺伝子型)のエキソン4の領域のCfoI/RsaI消化産物のMALDI
−TOF質量スペクトルを示す。
図97BはMALDI−TOF分析用試料を4℃で調製した以外は図97Aと
同一のスペクトルを示す。
図98は、試料を4℃で調製したアポリポタンパク質E遺伝子(ε4遺伝子型
)のエキソン4の252塩基対領域のCfo
I/RsaI同時二重消化産物のMALDI−TOF質量スペクトルを示す。
図99はピンツールマイクロディスペンサーを使用して診断産物の16エレメ
ントアレーをMALDIターゲットに移すことにより15人の患者の小集団試験
で得られた質量スペクトルを示す。
図100は合成20量体RNAのT1消化後にサンプリングしたアリコートの
MALDI質量スペクトルである。
発明の詳細な説明
定義
特に指定しない限り、本明細書中に使用する全科学技術用語は本発明の属する
技術の当業者に一般に理解されている意味をもつ。許可されるならば、同時係属
特許出願及び特許の各々の主題はその開示内容全体を本明細書の一部とする。
本明細書で使用する「生物試料」なる用語は任意生物源(例えばヒト、動物、
植物、細菌、真菌、原生生物、ウイルス)から得られる任意材料を意味する。本
発明の目的では、生物試料は一般に核酸分子を含む。適当な生物試料の非限定的
な例としては、固体材料(例えば組織、細胞ペレット、生検)と生物体
液(例えば尿、血液、唾液、羊膜液、嗽液、脳髄液及び他の体液)が挙げられる
。
本明細書で使用する「連鎖伸長ヌクレオチド」及び「連鎖停止ヌクレオチド」
なる用語は当技術分野で理解されている意味で使用する。例えば、DNAでは連
鎖伸長ヌクレオチドは2’−デオキシリボヌクレオチド(例えばdATP、dC
TP、dGTP及びdTTP)を含み、連鎖停止ヌクレオチドは2’,3’−ジ
デオキシリボヌクレオチド(例えばddATP、ddCTP、ddGTP、dd
TTP)を含む。RNAでは連鎖伸長ヌクレオチドはリボヌクレオチド(例えは
ATP、CTP、GTP及びUTP)を含み、連鎖停止ヌクレオチドは3’−デ
オキシリボヌクレオチド(例えば3’dA、3’dC、3’dG及び3’dU)
を含む。完全な1組の連鎖伸長ヌクレオチドとはdATP、dCTP、dGTP
及びdTTPを意味する。「ヌクレオチド」なる用語も当技術分野で周知である
。
本明細書で使用するヌクレオチドはヌクレオシド一、二及び三リン酸を含む。
ヌクレオチドはホスホロチオエートヌクレオチドやデアザプリンヌクレオチド等
の修飾ヌクレオチドも含む。完全な1組の連鎖伸長ヌクレオチドとはDNA鋳型
を含む4種
の異なる塩基の各々にハイブリダイスすることが可能な4種の異なるヌクレオチ
ドを意味する。
本明細書で使用する上添文字0〜iは質量差を付けたi+1個のヌクレオチド
、プライマー又はタグを表す。場合により、上添文字0は特定反応体の未修飾種
を表し、上添文字iはこの反応体のi番目の質量改変種を表す。例えば2種以上
の核酸を同時に検出したい場合には、i+1個の異なる質量改変デテクターオリ
ゴヌクレオチド(D0,D1,...Di)を使用すると、マススペクトロメトリ
ーにより質量改変デテクターオリゴヌクレオチド(D)の各種を相互に区別する
ことができる。
本明細書で使用する「多重化」とは、(アレーの1スポットで)特定捕獲核酸
フラグメント上の2個以上の分析物(例えば2個以上の(突然変異)遺伝子座)
を同時に検出することを意味する。
本明細書で使用する「核酸」なる用語は、デオキシリボ核酸(DNA)及びリ
ボ核酸(RNA)等の1本鎖及び/又は2本鎖ポリヌクレオチドと、RNA又は
DNAの類似体又は誘導体を意味する。ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオ
エートDNA等の核酸の類似体や、他の同様の類似体及び誘導体も「核
酸」の用語に含まれる。
本明細書で使用する「結合」なる用語は、安定な結合、好ましくはイオン又は
共有結合を意味する。好ましい結合手段はストレプトアビジン又はアビジンとビ
オチンの相互作用;疎水性相互作用;(例えばDynal,Inc.Great
Neck,NY及びノルウェー、オスロから市販されているストレプトアビジ
ンをコートした磁性ビーズであるDYNABEADS等の官能化磁性ビーズを使
用する)磁性相互作用;例えば2つの極性表面間又はオリゴ/ポリエチレングリ
コール間の「湿潤」会合等の極性相互作用;例えはアミド結合、ジスルフィド結
合、チオエーテル結合等又は架橋剤を介する共有結合の形成;並びに酸レービル
又は光開裂性リンカーによる結合である。
2種の核酸配列に関して本明細書で使用する等価なる用語は、2種の該当配列
が同一配列のアミノ酸又は等価タンパク質をコードすることを意味する。2種の
タンパク質又はペプチドについて「等価」という場合には、2種のタンパク質又
はペプチドがタンパク質又はペプチドの活性又は機能を実質的に変えない保存ア
ミノ酸置換を除いて実質的に同一のアミノ酸配列をもつことを意味する。性質に
ついて「等価」という場合には、性質
が同程まで存在する必要はない(例えば2種のペプチドは同一型の酵素活性を異
なる程度で示してもよい)が、活性は実質的に同一であることが好ましい。2種
のヌクレオチド配列に関して「相補的」という場合には、逆向きヌクレオチド間
のミスマッチが好ましくは25%未満、より好ましくは15%未満、更に好まし
くは5%未満、最も好ましくはゼロとなるように2種のヌクレオチド配列を相互
にハイブリダイズできることを意味する。2種の分子は高ストリンジェンシー条
件下でハイブリダイズすることが好ましい。
本明細書で使用するミスマッチ百分率を決定する際のハイブリダイゼーション
のストリンジェンシーは、当業者に理解される通りの条件であり、一般には、
1)高ストリンジェンシー:0.1×SSPE,0.1%SDS,65℃、
2)中ストリンジェンシー:0.2×SSPE,0.1%SDS,50℃、
3)低ストリンジェンシー:1.0×SSPE,0.1%SDS,50℃に実質
的に等価である。他の緩衝液、塩及び温度を使用しても等価ストリンジェンシー
が得られるとみなされる。
本明細書で使用するプライマーとは、請求の範囲に記載する場合には固定化、
ハイブリダイジング、鎖置換、シーケンシングを必要とするマススペクトロメト
リーに適したプライマーを意味する。核酸は十分に低分子量であり、一般に約7
0ヌクレオチド又は70未満であり且つマススペクトロメトリー検出に基づく本
発明のマススペクトロメトリー法で有用であるために十分な寸法でなければなら
ない。これらの方法は核酸の検出及びシーケンシング用プライマーを使用し、こ
のようなプライマーは安定なデュプレクスを形成するために十分な数のヌクレオ
チド、一般に約6〜30、好ましくは約10〜25、より好ましくは約12〜2
0のヌクレオチドを必要とする。従って、本発明の目的では、プライマーはプラ
イマーの配列と用途に依存して約6〜70、より好ましくは12〜70、より好
ましくは約14〜上限70までのヌクレオチド配列である。本発明のプライマー
は、例えば突然変異分析に用いる場合には、診断に有用な遺伝子座の上流となる
ように選択し、目的部位まで又は目的部位を通るシーケンシングを使用して実施
するときに、得られるフラグメントがマススペクトロメトリーにより検出するた
めに十分であり且つ大き過ぎない質量をもつようにする。マス
スペクトロメトリー法では、5’末端に質量タグ又は修飾因子を付け、それ以外
にはプライマーを標識しないことが好ましい。
本明細書で使用する核酸の「条件付け」なる用語は、ヌクレオチド単位当たり
に結合したカチオンの不均〜一性によるピーク広幅化をなくす目的で核酸分子の
ホスホジエステル主鎖を修飾(例えばカチオン交換)することを意味する。核酸
分子をヨウ化アルキル、ヨードアセトアミド、β−ヨードエタノール又は2,3
−エポキシ−1−プロパノール等のアルキル化剤と接触させると、核酸分子のモ
ノチオホスホジエステル結合をホスホトリエステル結合に変換することができる
。同様に、塩化トリアルキルシリルを使用してホスホジエステル結合を無電荷誘
導体に変換してもよい。他の条件付け方法として、脱プリン(MS中の断片化)
感受性を弱めるヌクレオチド(例えはN7−又はN9−デアザプリンヌクレオチ
ド等のプリン類似体)やRNA構成ブロックを組み込んでもよいし、オリゴヌク
レオチドトリエステルを使用してもよいし、アルキル化されるホスホロチオエー
ト官能基を組み込んでもよいし、ペプチド核酸(PNA)等のオリゴヌクレオチ
ド模擬体を使用してもよい。
本明細書で使用する支持体とは、本明細書に記載する材料に
応じて試料を付着する不溶性支持体を意味する。適当な支持体の例としてはビー
ズが挙げられ、例えばシリカゲル、CPG、磁性、アガロースゲル及び架橋デキ
ストロース(即ちSepharose及びSephadex)、セルロース及び
固体支持体マトリックスとして利用できることが当業者に知られている他の材料
からなる。例えば、支持体はシリカゲル、ガラス、磁性体、ポリスチレン/1%
ジビニルベンゼン樹脂(例えばFmoc−アミノ酸−4−(ヒドロキシメチル)
フェノキシメチルコポリ(スチレン−1%ジビニルベンゼン(DVD))樹脂で
あるWang樹脂、クロロトリチル(2−クロロトリチルクロリドコポリスチレ
ン−DVB樹脂)樹脂、Merrifield(クロロメチル化コポリスチレン
−DVB)樹脂)、金属、プラスチック、セルロース、例えば商品名Sepah
dex(Pharmacia)で市販されているもの等の架橋デキストラン、例
えば水素結合多糖型アガロースゲルである商品名Sepharose(Phar
macia)で市販されているもの等のアガロースゲル、並びに当業者に公知の
他の同様の樹脂及び固相支持体の任意のもの又はその組み合わせから形成するこ
とができる。支持体マトリックスは任意の形状又は形態をとるこ
とができ、非限定的な例としては、キャピラリー、ガラス繊維フィルター、ガラ
ス表面、金属表面(鋼、金、銀、アルミニウム、銅及びケイ素)等の平坦支持体
、多重ウェルプレート又は膜を含むプラスチック材料(例えばポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリド)、ピン(例えば組み
合わせ合成又は分析に適したピンのアレー)、平坦表面のピットに形成したビー
ズ(例えばプレートをもつかもたないウェーハシリコン等のウェーハ)、及びビ
ーズが挙げられる。
本明細書で使用する選択的に開裂可能なリンカーとは、選択条件下で開裂され
るリンカーであり、例えば光開裂性リンカー、化学開裂性リンカー及び酵素開裂
性リンカー(即ち制限エンドヌクレアーゼ部位又はリボヌクレオチド/RNアー
ゼ消化)である。リンカーは支持体と固定化DNAの間に挿入する。
核酸分子の単離
核酸分子は技術分野で周知の多数の方法の任意のものを使用して特定生物試料
から単離することができ、特定生物試料に適合するように特定単離方法を選択す
る。例えば、固体支持体から核酸分子を得るためには凍結−融解及びアルカリ溶
解法が有用であり、尿から核酸分子を得るためには熱及びアルカリ溶解
法が有用であり、血液から核酸を得るためにはプロテイナーゼK抽出を使用する
ことができる(例えはRolffら(1994)PCR:Clinical D
iagnostics and Rsearch,Springer参照)。
マススペクトロメトリーを実施するのに十分な量の核酸分子を得るためには、
増幅が必要である。本発明で使用するのに適した増幅法の例としては、クローニ
ング(Sambrookら,Molecular Cloning:A Lab
oratory Manual,Cold Spring Harbor La
boratory Press,1989)、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
(C.R.NewtonとS.Graham,PCR,BIOS Publis
hers,1994)、リガーゼ連鎖反応(LCR)(例えばWeidmann
ら(1994)PCR Methods Appl.Vol.3,pp.57−
64;F.Barany(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.
U.S.A.88:189−93参照)、鎖置換増幅(SDA)(例えばWal
kerら(1994)Nucleic Acids Res.22:2670−
77参照)及び変法(例えばRT−PCR(例えば
Higuchiら(1993)Bio/Technology 11:1026
−1030参照))、対立遺伝子特異的増幅(ASA)並びに転写に基づく方法
が挙げられる。
核酸分子の固体支持体固定化
マススペクトロメトリー分析を容易にするためには、検出しようとする核酸配
列を含む核酸分子を不溶性(即ち固体)支持体に固定化することができる。適当
な固体支持体の例としてはビーズ(例えばシリカゲル、CPG、磁性、Seph
adex/Sepharose、セルロース)、キャピラリー、ガラス繊維フィ
ルター、ガラス表面、金属表面(鋼、金、銀、アルミニウム、銅及びケイ素)等
の平坦支持体、多重ウェルプレート又は膜を含むプラスチック材料(例えばポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリビニリデンジフルオリド)、ピン
(例えば組み合わせ合成又は分析に適したピンのアレー)、又は平坦表面のピッ
トに形成したビーズ(例えばプレートをもつかもたないウェーハシリコン等のウ
ェーハ)が挙げられる。
ターゲット核酸を含む試料は当業者に公知の種々の方法の任意のものにより固
体支持体に移すことができる。例えば、核酸試料を支持体(例えばシリコンチッ
プ)の各ウェルに手で又は
本明細書に記載するようなピンツールマイクロディスペンサー装置により移すこ
とができる。あるいは、圧電ピペット装置を使用すると、ナノリットルオーダー
の少量の試料を支持体に移すことができ、チップ上で高いスループット小型化診
断性能が得られる。
固定化は例えば支持体に予め固定化しておいた捕獲核酸配列と、同様に検出し
ようとする核酸配列を含む核酸分子内に含まれる相補的核酸配列のハイブリダイ
ゼーションを利用して実施することができる(図1A)。相補的核酸分子間のハ
イブリダイゼーションが支持体によって妨げられないようにするために、捕獲分
子は例えば固体支持体と捕獲核酸配列間に少なくとも約5ヌクレオチド長のスペ
ーサー領域を含むことができる。形成されるデュプレクスはレーザーパルスの作
用下で開裂し、脱着を開始することができる。固体支持体に結合した核酸分子は
、天然オリゴリボもしくはオリゴデオキシリボヌクレオチド及び類似体(例えば
チオ修飾ホスホジエステル又はホスホトリエステル主鎖)を介して又は塩基配列
を酵素分解しにくくするPNA類似体(例えばNielsenら,Scienc
e 254:1497(1991))等のオリゴヌクレオチド模擬体を使用
して捕獲塩基配列に結合することができる。
リンカー
ターゲット検出部位はターゲット核酸分子(T)上の適当な官能基(L’)と
捕獲分子上の適当な官能基(L)の可逆的又は不可逆的結合を介して固体支持体
に直接結合することができる(図1B)。可逆的結合はマススペクトロメトリー
の条件下で開裂されるように実施することができる(即ち比較的安定な有機基の
間に電荷移動錯体又はレービル結合等の光開裂性結合を形成する)。
光開裂性リンカーは光にあたると開裂し(例えばGoldmacherら(1
992)Bioconj.Chem.3:104−107参照)、光にあたると
ターゲット物質を放出するリンカーである。光にあたると開裂し、光にあたると
ターゲット物質を放出する光開裂性リンカーは公知である(例えはHazumら
(1981)in Pept.,Proc.Eur.Pept.Symp.,1
6th,Brunfeldt,K(編),pp.105−110はシステインの
光開裂性保護基としてのニトロベンジル基の使用を記載しており、Yenら(1
989)Makromol.Chem 190:69−82はヒドロキ
シプロピルメタクリルアミドコポリマー、グリシンコポリマー、フルオレセイン
コポリマー及びメチルローダミンコポリマーを含む水溶性光開裂性コポリマーを
記載しており、Goldmacherら(1992)Bioconj.Chem
.3:104−107は近紫外線(350nm)を照射すると光分解する架橋剤
を記載しており、Senterら(1985)Photochem.Photo
biol 42:231−237は光開裂性結合を生じるニトロベンジルオキシ
カルボニルクロリド架橋剤を記載している)。好ましい態様では、マススペクト
ロメトリー中に開裂する光開裂性リンカー部分を使用して核酸を固定化する。本
発明の好ましい光開裂性リンカーは実施例に記載する。
更に、L’を第4級アンモニウム基として結合を形成することができ、その場
合には、固体支持体の表面が負電荷をもつようにし、負電荷をもつ核酸主鎖と反
発し、マススペクトロメーターによる分析に必要な脱着を容易にすることが好ま
しい。脱着はレーザーパルスにより生じる熱により行ってもよいし、及び/又は
L’に応じてL’発色団と共鳴するレーザーエネルギーの特異的吸収により行っ
てもよい。
従って、L−L’化学は(例えばメルカプトエタノール又はジチオトレイトロ
ールにより化学的に開裂可能な)ある種のジスルフィド結合、ビオチン/ストレ
プトアビジン系、弱酸性条件下及びマススペクトロメトリー条件下で開裂可能な
トリチルエーテル基のヘテロ二官能性誘導体(例えばKosterら(1990
)“A Versatile Acid−Labile Linker for
Modification of Synthetic Biomolecu
les,”Tetrahedron Letters 31:7095参照)、
ヒドラジニウム/酢酸緩衝液を含むほぼ中性条件下で開裂可能なレブリニル基、
トリプシン等のエンドペプチターゼ酵素により開裂可能なアルギニン−アルギニ
ンもしくはリジン−リジン結合、ピロホスファターゼにより開裂可能なピロリン
酸結合又は例えばリボヌクレアーゼもしくはアルカリにより開裂可能なオリゴデ
オキシヌクレオチド配列間のリボヌクレオチド結合であり得る。
官能基L及びL’は電荷移動錯体を形成し、一過性L−L’結合を形成しても
よい。多くの場合に「電荷移動結合」はUV/visスペクトロメトリーにより
測定できる(例えばR.
Foster著Organic Charge Transfer Compl
exes,Academic Press,1969参照)ので、電荷移動波長
の対応エネルギーにレーザーエネルギーを同調させることができ、こうして固体
支持体から特異的脱着を開始することができる。当業者に自明の通り、この目的
には数種の組み合わせを利用することができ、供与官能基を固体支持体に付け、
検出しようとする核酸分子に結合してもよいし、逆に検出しようとする核酸分子
に供与官能基を付け、固体支持体に結合してもよい。
更に別のアプローチでは、比較的安定な基を均一に形成することにより可逆的
L−L’結合を形成してもよい。レーザーパルスの作用下でラジカル位置に(上
記のような)脱着とイオン化を行なう。当業者に自明の通り、他の有機基を選択
することもでき、これらの基の間の結合を均一開裂するために必要な解離エネル
ギーに応じて対応するレーザー波長を選択することができる(例えばC.Wen
trup著Reactive Molecules,John Wiley &
Sons,1984参照)。
PCR(図4)、LCR(図5)又は転写増幅(図6A)等の
増幅操作中に適当なプライマーを使用することにより、ターゲット捕獲配列(T
CS)にアンカー基L’を組み込んでもよい。
MALDI−TOF MSを使用してエキソヌクレアーゼシーケンシングを実
施する場合には、その5末端を介して固体支持体に固定化した1本鎖DNA分子
を3’向きエキソヌクレアーゼで片側分解し、分解したヌクレオチドの分子量を
順次測定する。逆Sangerシーケンシングにより固定化DNAのヌクレオチ
ド配列が判明する。選択的に開裂可能なリンカーを加えることにより、遊離ヌク
レオチドの質量を測定できるだけでなく、洗浄によりヌクレオチドを除去すると
、固体支持体からDNAを開裂後にMALDI−TOFにより残留フラグメント
の質量も測定することができる。本発明の光開裂性及び化学開裂性リンカー等の
選択的に開裂可能なリンカーを使用すると、MALDI−TOFのイオン化及び
揮発段階中にこの開裂が生じるように選択的することができる。デュプレクスに
分解される2本鎖DNAの5’固定化鎖についても同じことが言える。また、5
’向きエキソヌクレアーゼを使用し、3’末端を介してDNAを固体支持体に固
定化する場合も同様である。
本発明では少なくとも次の3種の固定化態様が考えられる。
1)ターゲット核酸を増幅又は獲得する(プライマーを増幅又は単離させるため
にターゲット配列又は周囲DNA配列は分かっていなければならない)。2)プ
ライマー核酸を固体支持体に固定化し、ターゲット核酸をこれにハイブリダイズ
する(これは試料中のターゲット配列の存在を検出するため又は配列決定するた
めに行う)。3)(増幅又は単離した)2本鎖DNAを所定の鎖との結合を介し
て固定化し、デュプレクスを除去するようにDNAを変性した後、ターゲット部
位の上流に相同部分をもつ高濃度の相補的プライマー又はDNAを加えて鎖置換
を生じ、プライマーを固定化鎖にハイブリダイズする。
プライマー核酸を固体支持体に固定化し、ターゲット核酸をこれにハイブリダ
イズする態様では、開裂性リンカーを加えると、プライマーDNAを5’末端に
固定化して遊離3’−OHを核酸合成(伸長)に使用することができ、ハイブリ
ダイズした鋳型を変性により除去でき、伸長したDNA産物を固体支持体から開
裂してMALDI−TOF MSを実施できるので、「ハイブリダイズした」タ
ーゲットDNAの配列を決定することができる。3)でも同様に、固定化DNA
鎖を鋳型にハイブリダイズして伸長させ、支持体から開裂することができる。こ
のように、ターゲット配列の不変領域に相補的な既知上流DNA配列の固定化プ
ライマーを使用すると、Sangerシーケンシングと後述するプライマーオリ
ゴ塩基伸長(PROBE)伸長反応を実施することができる。ヒトからの核酸を
得、可変領域(遺伝素因もしくは疾患の原因となる欠失、挿入、ミスセンス突然
変異、又はウイルス/細菌もしくは真菌DNAの存在)のDNA配列を検出する
だけでなく、突然変異の実際の配列と位置も決定できる。
他の場合には、ターゲットDNAを固定化し、プライマーをアニールしなけれ
ばならない。このためには、既知配列に基づいてより大きいDNAを増幅した後
、固定化フラグメントをシーケンシングする必要がある(即ち伸長したフラグメ
ントをハイブリダイズするが、上記のように支持体には固定化しない)。これら
の場合には、MALDI−TOFスペクトルはハイブリダイズしたDNAのスペ
クトルであるため、リンカーを加えることは望ましくなく、固定化鋳型を開裂す
る必要がある。
本発明では核酸を固体支持体に固定化するためのリンカーとして当業者に公知
の任意のリンカーを使用して核酸を固体支持体に結合することができる。本発明
で好ましいリンカーは選択
的に開裂可能なリンカー、特に本明細書に例示するようなリンカーである。他の
リンカーとしては、ビスマレイミドエトキシプロパン等の酸開裂性リンカーや、
酸レービルトリチルリンカーが挙げられる。
特にターゲット物質を反応させ易くするように開裂する必要がある場合には、
酸開裂性リンカー、光開裂性リンカー及び感熱性リンカーも使用できる。酸開裂
性リンカーの非限定的な例としてはビスマレイミドエトキシプロパン、アジピン
酸ジヒドラジドリンカー(例えばFattomら(1992)Infectio
n & Immun.60:584−589参照)及び細胞内トランスフェリン
循環経路に入るために十分なトランスフェリン部分を含む酸レービルトランスフ
ェリン結合体(例えばWelhonerら(1991)J.Biol.Chem
.266:4309−4314参照)が挙げられる。
光開裂性リンカー
本発明は光開裂性リンカーを提供する。特に、オリゴヌクレオチドの固相合成
に用いるそのホスホロアミダイト誘導体としての光開裂性リンカーを提供する。
リンカーはo−ニトロベンジル部分とリン酸結合を含み、UV照射すると数分以
内に結合
体を完全に光開裂することができる。使用するUV波長は照射がオリゴヌクレオ
チドを損傷しないように選択され、好ましくは約350〜380nm、より好ま
しくは365nmである。本発明の光開裂性リンは一般に使用されているホスホ
ロアミダイトモノマー(Sinhaら(1983)Tetrahedron L
ett.24:5843−5846;Sinhaら(1984)Nucleic
Acids Res.12:4539−4557;Beaucageら(19
93)Tetrahedron 49:6123−6194;及びMatteu
cciら(1981)J.Am.Chem.Soc.103:3185−319
1参照)と同等の結合効率をもつ。
1態様において、光開裂性リンカーは式I:
[式中、R20はω−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)アルキル又はω−
ヒドロキシアルキルであり、R21は水素、アルキル、アリール、アルコキシカル
ボニル、アリールオキシカ
ルボニル及びカルボキシから選択され、R22は水素又は(ジアルキルアミノ)(
ω−シアノアルコキシ)P−であり、tは0〜3であり、R50はアルキル、アル
コキシ、アリール又はアリールオキシである]をもつ。
好ましい態様において、光開裂性リンカーは式II:
[式中、R20はω−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)アルキル、ω−ヒ
ドロキシアルキル又はアルキルであり、R21は水素、アルキル、アリール、アル
コキシカルボニル、アリールオキシカルボニル及びカルボキシから選択され、R22
は水素又は(ジアルキルアミノ)(ω−シアノアルコキシ)P−であり、X20
は水素、アルキル又はOR20である]をもつ。
特に好ましい態様において、R20は3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキ
シ)プロピル、3−ヒドロキシプロピル又はメチルであり、R21は水素、メチル
及びカルボキシから選択さ
れ、R22は水素又は(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)P−であ
り、X20は水素、メチル又はOR20である。より好ましい態様において、R20は
3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルであり、R21はメチルで
あり、R22は(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)P−であり、X20
は水素である。別のより好ましい態様において、R20はメチルであり、R21は
メチルであり、R22は(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)P−で
あり、X20は3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシである。
別の態様において、光開裂性リンカーは式III:
[式中、R23は水素又は(ジアルキルアミノ)(ω−シアノアルコキシ)P−で
あり、R24はω−ヒドロキシアルコキシ、ω−(4,4’−ジメトキシトリチル
オキシ)アルコキシ、ω−ヒドロキシアルキル及びω−(4,4’−ジメトキシ
トリチル
オキシ)アルキルから選択され、アルキル又はアルコキシ鎖上で1個以上のアル
キル基により置換されていてもいなくてもよく、r及びsは各々独立して0〜4
であり、R50はアルキル、アルコキシ、アリール又はアリールオキシである]を
もつ。所定の態様において、R24はω−ヒドロキシアルキル又はω−(4,4’
−ジメトキシトリチルオキシ)アルキルであり、アルキル鎖上でメチル基により
置換されている。
好ましい態様において、R23は水素又は(ジイソプロピルアミノ)(2−シア
ノエトキシ)P−であり、R24は3−ヒドロキシプロポキシ、3−(4,4’−
ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシ、4−ヒドロキシブチル、3−ヒドロキ
シ−1−プロピル、1−ヒドロキシ−2−プロピル、3−ヒドロキシ−2−メチ
ル−1−プロピル、2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシメチル、4−(4,4’
−ジメトキシトリチルオキシ)ブチル、3−(4,4’−ジメトキシトリチルオ
キシ)−1−プロピル、2−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)エチル、
1−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−2−プロピル、3−(4,4’
−ジメトキシトリチルオキシ)−2−メチル−1−プロピル及び4,4’−ジメ
トキシトリチルオキシメチルから選択される。
より好ましい態様において、R23は(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエ
トキシ)P−であり、r及びsは0であり、R24は3−(4,4’−ジメトキシ
トリチルオキシ)プロポキシ、4−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ブ
チル、3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピル、2−(4,4’
−ジメトキシトリチルオキシ)エチル、1−(4,4’−ジメトキシトリチルオ
キシ)−2−プロピル、3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−2−メ
チル−1−プロピル及び4,4’−ジメトキシトリチルオキシメチルから選択さ
れる。R24は3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシが最も好
ましい。
光開裂性リンカーの製造
A.式I又はIIの光開裂性リンカーの製造
式I又はIIの光開裂性リンカーは下記方法により製造することもできるし、
適当な出発材料を選択することにより下記方法を多少変更するか又は当業者に公
知の他の任意の方法により製造することもできる。式IIの光開裂性リンカーの
詳細な合成手順は実施例に記載する。
X20が水素である式IIの光開裂性リンカーでは、リンカーは次のように製造
することができる。5−ヒドロキシ−2−ニ
トロベンズアルデヒドをハロゲン化ω−ヒドロキシアルキル(例えば臭化3−ヒ
ドロキシプロピル)でアルキル化した後、得られたアルコールを例えばシリルエ
ーテルで保護すると、5−(ω−シリルオキシアルコキシ)−2−ニトロベンズ
アルデヒドが得られる。アルデヒドに有機金属を加えると、ベンジルアルコール
が得られる。使用可能な有機金属としては、(R21がアルキルであるリンカーの
場合には)トリメチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、(R21が水
素であるリンカーの場合には)ホウ水素化ナトリウム等のホウ水素化物、又は(
R21がカルボキシ又はアルコキシカルボニルであるリンカーの場合には)シアン
化カリウム等のシアン化金属が挙げられる。シアン化金属の場合には、その後、
反応生成物であるシアノヒドリンを水又はアルコールの存在下に酸性又は塩基性
条件下で加水分解すると、目的化合物が得られる。
その後、例えばフッ化テトラブチルアンモニウムで脱シリル化して対応するア
ルコールを得た後、塩化4,4’−ジメトキシトリチルと反応させることにより
、得られたベンジルアルコールの側鎖のシリル基を4,4’−ジメトキシトリチ
ル基に交換する。例えば2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダ
イトと反応させると、R22が(ジアルキルアミノ)
式IIの光開裂性リンカーの特定合成例を下記スキームに示し、オリゴヌクレ
オチド合成におけるリンカーの使用も示す。このスキームは単に例示の目的に過
ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。これらの合成変換の実験の詳細は
実施例に記載する。 X20がOR20である式IIのリンカーの合成では、例えば炭酸カリウム及び塩
化シリルとの反応により3,4−ジヒドロキシアセトフェノンの4−ヒドロキシ
を選択的に保護する。アセトフェノンの代わりに安息香酸エステル、プロピオフ
ェノン、ブチロフェノン等を使用してもよい。得られた4−シリルオキシ−3−
ヒドロキシアセトフェノンを次に(R20がアルキルであるリンカーの場合には)
ハロゲン化アルキルで3−ヒドロキシルをアルキル化し、例えばフッ化テトラブ
チルアンモニウムで脱シリル化すると、3−アルコキシ−4−ヒドロキシアセト
フェノンが得られる。この化合物を次にハロゲン化ω−ヒドロキシアルキル(例
えば臭化3−ヒドロキシプロピル)と反応させて4−ヒドロキシルをアルキル化
すると、4−(ω−ヒドロキシアルコキシ)−3−アルコキシアセトフェノンが
得られる。次に側鎖アルコールをエステル(例えば酢酸エステル)として保護す
る。次にこの化合物の5位を例えば濃硝酸で硝酸化すると、対応する2−ニトロ
アセトフェノンが得られる。順序はどちらでもよいが、側鎖エステルを例えば炭
酸カリウムで鹸化し、ケトンを例えばホウ水素化ナトリウムで還元すると、2−
ニト
ロ−4−(ω−ヒドロキシアルコキシ)−5−アルコキシベンジルアルコールが
得られる。
次に塩化4,4’−ジメトキシトリチルと反応させることにより側鎖アルコー
ルを対応する4,4’−ジメトキシトリチルエーテルとして選択的に保護する。
更に例えば2−シアノエチルジイソプロピルクロロホスホロアミダイトと反応さ
せると、R22が(ジアルキルアミノ)(ω−シアノアルコキシ)P−であるリン
カーが得られる。
式IIの光開裂性リンカーの特定合成例を下記スキームに示す。このスキーム
は単に例示の目的に過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。変換の詳細
な実験手順は実施例に記載する。 B.式IIIの光開裂性リンカーの製造
式IIIの光開裂性リンカーは下記方法により製造することもできるし、適当
な出発材料を選択することにより下記方法を多少変更するか又は当業者に公知の
他の方法により製造することもできる。
一般に、式IIIの光開裂性リンカーはω−ヒドロキシアルキル又はアルコキ
シアリール化合物、特にω−ヒドロキシアルキル又はアルコキシベンゼンから製
造される。これらの化合物は市販されているが、ハロゲン化ω−ヒドロキシアル
キル(例えば臭化3−ヒドロキシプロピル)とフェニルリチウム(ω−ヒドロキ
シアルキルベンゼンの場合)又はフェノール(ω−ヒドロキシアルコキシベンゼ
ンの場合)から製造することもできる。ω−ヒドロキシル基を(例えば酢酸エス
テルとして)アシル化した後、塩化2−ニトロベンゾイルで芳香族環をフリーデ
ル−クラフツアシル化すると、4−(ω−アセトキシアルキル又はアルコキシ)
−2−ニトロベンゾフェノンが得られる。順序はどちらでもよいが、ケトンを例
えばホウ水素化ナトリウムで還元し、側鎖エステルを鹸化すると、2−ニトロフ
ェニル−4−(ヒドロキシアルキル又はアルコキシ)フェニルメタノー
ルが得られる。塩化4,4’−ジメトキシトリチルと反応させることにより、末
端ヒドロキシル基を対応する4,4’−ジメトキシトリチルエーテルとして保護
する。その後、ベンジルヒドロキシル基を例えば2−シアノエチルジイソプロピ
ルクロロホスホロアミダイトと反応させると、R23が(ジアルキルアミノ)(ω
−シアノアルコキシ)P−である式IIのリンカーが得られる。
式IIIの他の光開裂性リンカーは上記合成でω−ヒドロキシアルキル又はア
ルコキシベンゼンを2−フェニル−1−プロパノール又は2−フェニルメチル−
1−プロパノールに置き換えることにより製造することができる。これらの化合
物は市販されているが、例えば触媒第1銅イオンの存在下に臭化フェニルマグネ
シウム又は臭化ベンジルマグネシウムを必要なオキシラン(即ちプロピレンオキ
シド)と反応させることにより製造することもできる。
化学開裂性リンカー
種々の化学開裂性リンカーを使用して固定化核酸と固体支持体の間に開裂性結
合を導入することができる。酸レービル結合は3−HPAマトリックス溶液を加
えると核酸の条件付け中に
開裂されるので、マススペクトロメトリー、特にMALDI−TOF MSに好
ましい本発明の化学開裂性リンカーは酸レービルリンカーである。酸レービル結
合は別個のリンカー基(例えば酸レービルトリチル基、図68、実施例16参照
)として導入してもよいし、ジイソプピルシリルを使用して1個以上のシリルヌ
クレオシド間橋を導入することにより合成核酸リンカーに組み込み、ジイソプピ
ルシリルに結合したオリゴヌクレオチド類似体を形成してもよい。ジイソプピル
シリル橋はDNA主鎖中のホスホジエステル結合に置換し、1.5%トリフルオ
ロ酢酸(TFA)又は3−HPA/1%TFA MALDI−TOFマトリック
ス溶液等の弱酸性条件下でDNA分子に1個以上の鎖内切断を導入する。ジイソ
プピルシリルに結合したオリゴヌクレオチド前駆物質及び類似体の製造方法は当
業者に公知である(例えばSahaら(1993)J.Org.Chem.58
:7827−7831参照)。これらのオリゴヌクレオチド類似体は、ジイソプ
ピルシリルを結合したデオキシリボヌクレオシドを使用するソリッドステートオ
リゴヌクレオチド合成法により容易に製造することができる。
核酸条件付け
マススペクトロメトリー分析の前に例えば揮発に必要なレーザーエネルギーを
低減するため及び/又は断片化を最小にするために核酸分子を「条件付け」する
と有用であり得る。条件付けはターゲット検出部位を固定化している間に実施す
ることが好ましい。条件付けの1例は核酸分子のホスホジエステル主鎖の修飾(
例えばカチオン交換)であり、ヌクレオチド単位当たりに結合するカチオンの不
均一性によるピーク広幅化をなくすのに有用であり得る。核酸分子をヨウ化アル
キル、ヨードアセトアミド、β−ヨードエタノール又は2,3−エポキシ−1−
プロパノール等のアルキル化剤と接触させると、核酸分子のモノチオホスホジエ
ステル結合をホスホトリエステル結合に変換することができる。同様に、塩化ト
リアルキルシリルを使用してホスホジエステル結合を無電荷誘導体に変換しても
よい。他の条件付け方法として、脱プリン(MS中の断片化)感受性を弱めるヌ
クレオチド(例えばN7−又はN9−デアザプリンヌクレオチド等のプリン類似
体)やRNA構成ブロックを組み込んでもよいし、オリゴヌクレオチドトリエス
テルを使用してもよいし、アルキル化されるホスホロチオエート官能基を組み込
んでもよいし、PNA等のオリゴヌクレオチド模擬体を使用してもよい。
多重反応
用途によっては、(アレーの1スポットで)特定捕獲核酸フラグメント上の2
個以上の(突然変異)遺伝子座を同時に検出することが有用な場合や、あるいは
種々の固体支持体上のオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド模擬体アレー
を使用することにより並行処理を実施することが有用な場合もある。「多重化」
は数種の異なる方法により実施することができる。例えば、対応するデテクター
(プローブ)分子(例えばオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド模擬体)
を使用することにより1個のターゲット配列上で数個の突然変異を同時に検出す
ることができる。デテクターオリゴヌクレオチドD1、D2及びD3間の分子量
差は同時検出(多重化)を可能にするために十分大きくなければならない。これ
は配列自体(組成又は長さ)によっても得られるし、質量改変官能基M1〜M3
をデテクターオリゴヌクレオチドに導入しても得られる(図2参照)。
核酸の質量改変
例えばオリゴヌクレオチドの5’末端(M1)、ヌクレオ塩基
(又は塩基)(M2,M7)、リン酸主鎖(M3)及びヌクレオシドの2’位(M4
,M6)及び/又は末端3’位(M5)に質量改変部分を結合することができる。
質量改変部分の例としては例えばハロゲン、アジド又はXR型(式中、Xは結合
基であり、Rは質量改変官能基である)のものが挙げられる。こうして、質量改
変官能基を使用してオリゴヌクレオチド分子に規定質量増分を導入することがで
きる。
質量改変官能基はヌクレオチド分子内の種々の位置に配置することができる(
例えば米国特許第5,547,835号及び国際PCT出願第WO94/218
22号参照)。例えは、質量改変部分Mはヌクレオ塩基M2(c7−デアザヌクレ
オシドの場合にはC−7、M7にも)、三リン酸基のαリン酸M3又はヌクレオシ
ド三リン酸の糖環の2’位M4及びM6に結合することができる。例えばα−チオ
ヌクレオシド三リン酸等でホスホジエステル結合(M4)に修飾を加えると、こ
れらの修飾は正しいワトソン−クリック塩基対合を妨げずに例えばアルキル化反
応により完全な核酸分子の1段階合成後部位特異的修飾が得られるという利点が
ある(例えばNakamayeら(1988)Nucl.Acids Res.
16:9947−59参照)。
特に好ましい質量改変官能基は、ポリメラーゼにより核酸に良好に組み込まれる
という理由からホウ素修飾核酸である(例えばPorterら(1995)Bi
ochemistry 34:11963−11969;Hasanら(199
6)Nucleic Acids Res.24:2150−2157;Liら
(1995)Nucl.Acids Res.23:4495−4501参照)
。
更に、例えばヌクレオシド三リン酸の糖環の3’位M5に結合することにより
連鎖停止を変化させるように質量改変官能基を加えることもできる。当業者に自
明の通り、本発明の方法では多数の組み合わせを使用することができる。同様に
当業者に自明の通り、連鎖伸長ヌクレオシド三リン酸を同様に質量改変すること
もでき、官能基及び結合位置については多数の変形及び組み合わせが可能である
。
特定理論の裏付けはないが、XRのRにオリゴ/ポリエチレングリコール誘導
体を使用して質量改変Mを導入することもできる。この場合の質量改変増分は4
4であり、即ちmを0から4に変え、核酸分子(例えば夫々デテクターオリゴヌ
クレオチド(D)又はヌクレオシド三リン酸(図6(C)))に質量単
位45(m=0)、89(m=1)、133(m=2)、177(m=3)及び
221(m=4)を加えるだけで5種の異なる質量改変種を生成することができ
る。オリゴ/ポリエチレングリコールはメチル、エチル、プロピル、イソプロピ
ル、t−ブチル等の低級アルキルでモノアルキル化することもできる。選択結合
基Xについても例示する。他の化学を質量改変化合物で使用することもできる(
例えばOligonucleotides and Analogues,A
Practical Approach,F.Eckstein編,IRL P
ress,Oxford,1991に記載の化学参照)。
更に別の態様では、オリゴ/ポリエチレングリコール以外の種々の質量改変官
能基Rを選択し、適当な結合化学Xを介して結合することができる。単純な質量
改変はF、Cl、Br及び/又はI等のハロゲン又はCN、SCN、NCS等の
擬ハロゲンをHに置換するか、あるいは種々のアルキル、アリールもしくはアラ
ルキル部分(例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、t−ブチル、ヘ
キシル、フェニル、置換フェニル、ベンシル)又は官能基(例えばCH2F、C
HF2、CF3、Si(CH3)3、Si(CH3)2(C2H5)、Si(CH3)
(C2H5)2、Si(C2H5)3)を使用することにより得られる。更に別の質量
改変は核酸分子(例えばデテクター(D))又はヌクレオシド三リン酸を介して
ホモ又はヘテロペプチドを結合することにより得られる。質量増分57の質量改
変種を生成するのに有用な1例はオリゴグリシンの結合であり、例えば74(r
=1、m=0)、131(r=1、m=1)、188(r=1、m=1)、24
5(r=1、m=3)の質量改変が達せられる。単純なオリゴアミドを使用する
こともでき、例えば74(r=1、m=0)、88(r=2、m=0)、102
(r=3、m=0)、116(r=4、m=0)等の質量改変が得られる。本明
細書に記載するもの以外に種々の変形が当業者に自明である。
種々の質量改変デテクターオリゴヌクレオチドを使用して可能な全変異体/突
然変異体を同時に検出することができる(図6B)。あるいは、伸長及び停止ヌ
クレオシド三リン酸の組み合わせを変えてDNA/RNAポリメラーゼ用プライ
マーとして機能するようにデテクターオリゴヌクレオチドをデザイン及び配置す
ることにより、1個の突然変異の部位で全4種の塩基を検出することができる(
図6C)。例えば、増幅プロセス中
に質量改変を組み込んでもよい。
図3は平坦表面(例えば「チップアレー」)に位置特異的に固定化した種々の
特定捕獲配列を使用することにより区別する別の多重検出フォーマットを示す。
異なるターゲット配列T1〜Tnが存在する場合には、それらのターゲット捕獲
部位TCS1〜TCSnは相補的固定化捕獲配列C1〜Cnと特異的に相互作用
する。質量改変官能基M1〜Mnにより適当に質量差をつけたデテクターオリゴ
ヌクレオチドD1〜Dnを使用することにより検出する。
マススペクトロメトリーによるDNAシーケンシング法
本発明で利用可能なマススペクトロメトリーフォーマットとしては、マトリッ
クス介助レーザーデソープションイオン化(MALDI)、エレクトロスプレー
(ESI)(例えば連続又はパルス)等のイオン化(I)技術と関連技術(例え
ばイオンスプレー、サーモスプレー、高速原子衝突)及び質量クラスター衝撃(
MCI)が挙げられ、これらのイオン源はインリニアフィールド飛行時間(TO
F)、単一又は多重四重極型、単一又は多重磁気セクター、フーリエ変換イオン
サイクロトロン共鳴(FTICR)、イオントラップ又はこれらを組み合わせ
たハイブリッドデテクター(例えばイオントラップ−飛行時間)等の検出フォー
マットに適合させることができる。イオン化には凍結分析調製物(MALDI)
又は溶剤組み合わせ(ESI)等の多数のマトリックス/波長組み合わせを使用
することができる。
正常DNA分子は4種のヌクレオチド単位(A、T、C、G)を含み、これら
の各々の質量は固有である(夫々モノ同位体質量313.06、304.05、
289.05、329.05Da)ので、正確な質量測定によりそのDNAの可
能な塩基組成を規定又は限定することができる。各単位分子量は4900Daを
越えないと少なくとも1種の許容組成をもたず、全5量体のうちで非固有の公称
分子量は1種しかないか、8量体では20種ある。これら以上のオリゴヌクレオ
チドでは、このような質量オーバーラップは高分解能FTICR MSで得られ
る〜1/105(〜10ppm)質量精度で分解することができる。25量体A5
T20では、±0.5Daで測定すると組成縮重は20であるが、2ppm精度で
測定すると3(A5T20、T4C12G9、AT3C4G16)まで減る。所定の組成限
定(例えば鎖中の4種の塩基のうちの1種の有無)により、更にこれを
減らすことができる(下記参照)。
非限定的な例としてカーブドフィールドリフレクトロン又は遅延抽出飛行時間
MS装置等の中分解能装置を使用してもシーケンシング又は診断用DNA検出を
改善することができる。これらの装置はいずれも例えばプライマーオリゴ塩基伸
長(PROBE)又は競合的オリゴヌクレオチド単塩基伸長(COSBE)、シ
ーケンシング又は小さい増幅産物の直接検出から生成される≧30量体鎖で9D
a(Δm(A−T))シフトを検出することが可能である。
バイオマス走査
実施例33に記載するこの態様では、2本の1本鎖核酸を固体支持体に各々固
定化する。一方の支持体は野生型配列をコードする核酸を含み、他方の支持体は
突然変異ターゲット配列をコードする核酸を含む。完全ヒトゲノムDNAを1種
以上の制限エンドヌクレアーゼ酵素で消化すると、2本鎖ゲノムDNAの小さい
フラグメント(10〜1,000bp)が生成される。消化したDNAを固定化
1本鎖核酸と共にインキュベートし、試料を加熱してDNAデュプレクスを変性
させる。固定化核酸は相補的DNA鎖に関して他のゲノムDNA鎖と競合し、適
当
な条件下で相補的DNA鎖の一部は固定化核酸とハイブリダイズし、鎖置換を生
じる。高ストリンジェンシー洗浄条件を使用することにより、固定化核酸とゲノ
ムDNA鎖の間に厳密な一致が存在する場合のみ2種の核酸はDNAデュプレク
スとして残存する。固定化核酸にハイブリダイズした状態のDNAをマススペク
トロメトリーにより分析し、質量スペクトル中で適当な質量のシグナルを検出し
、野生型対立遺伝子であるか突然変異対立遺伝子であるかを診断する。こうして
生物試料から完全ゲノムDNAを単離し、所定の突然変異の有無をスクリーニン
グすることができる。種々の1本鎖核酸をアレーフォーマットとして固定化する
ことにより、多数の遺伝子座について一連の突然変異を同時にスクリーニングす
ることができる(即ち多重化)。
更に、低ストリンジェント洗浄条件を使用すると、ハイブリダイズしたDNA
鎖について、ターゲット制限エンドヌクレアーゼフラグメント内の欠失又は挿入
に起因する質量変化をマススペクトロメトリーにより分析することができる。
プライマーオリゴヌクレオチド塩基伸長
後記実施例11に記載するように、プライマーオリゴ塩基伸
長(PROBE)法をマススペクトロメトリーと組み合わせると、シーケンシン
グによって検出することしかできない反復単位の厳密な数(即ち均一配列内のヌ
クレオチドの数)と多型性領域内の第2の部位突然変異を検出することができる
。このように、PROBE法は別個のゲノム部位における検出可能な対立遺伝子
の合計数を増し、多型性情報含有量(PIC)を増し、例えば父親確定又は法廷
用途の統計分析に著しく確実な検証が可能になる。
この方法はデオキシNTPとデオキシ形で存在しないジデオキシNTPの混合
物の存在下にDNAポリメラーゼを使用して可変ヌクレオチドタンデム反復(V
NTR)又は多型性モノヌクレオチド配列に隣接してアニールする検出プライマ
ーの伸長に基づく。DNAを標識せずに、得られる産物をMALDI−TOFマ
ススペクトロメトリーにより評価及び分解する。28人の無関係個体による模擬
日常適用によると、外部較正を使用したこの方法の質量誤差は最悪の場合で0.
83%(56量体)であり、これは約0.1塩基の精度に匹敵し、日常標準質量
偏差は0.1%(0.03塩基)の範囲である。慣用電気泳動法でこのような精
度に達するのは非現実的であり、法医学及び父
親確定試験におけるPROBEとマススペクトロメトリーの価値は明白である。
フーリエ変換マススペクトロメトリーは分解能が非常に高いので、4本のチュ
ーブから塩基を計数する代わりに質量差から配列を解読できるため、Sange
r又はMaxam Gilbertシーケンシング実験の全反応を同時に測定す
ることができる。
更に、エキソヌクレアーゼによる段階的片側分解により生じる隣接塩基間の質
量差を利用して、生成されるフラグメントの完全な配列を解読することができる
。エキソヌクレアーゼ酵素が相から出るときに生成されるヌクレオシド/ヌクレ
オチド混合物はUV又は蛍光測定により区別されないが、dA、dT、dG及び
dCの分子量を区別する分解能が著しく高いのでマススペクトロメトリーには問
題ない。隣接塩基(即ちヌクレオチド)の質量は例えば高速原子衝突(FAB)
又はエレクトロスプレーイオン化(ESI)マススペクトロメトリーを使用して
測定することができる。
後記実施例4及び12に詳細に記載するようにエンドヌクレアーゼ消化で生成
される質量のシフトしたフラグメントを探索
することにより、増幅産物全体を新たに突然変異スクリーニングすることができ
る。
タンデムマススペクトロメトリー(Msn)から得られる部分配列情報は前項
に記載したように組成限定を加えることができる。上記25量体では、衝突によ
り活性化される解離(CAD)により313Da差の2個のフラグメントイオン
が形成されるので、Aヌクレオチドを含まないT4C12G9の可能性はなくなり、
2個以上の単一Aが確認されるため、AT3C4G16も可能な組成から除外される
。
MSnを便用してもっと大きいDNAの完全又は部分配列を決定することもで
き、これを使用して所定の遺伝子領域で新しい突然変異を検出、位置決定及び同
定することができる。正確な質量の酵素消化産物をそれ以上分析する必要はなく
、質量シフトをもつ消化産物をマススペクトロメーターで複雑な混合物からリア
ルタイムで単離することができ、部分的に配列決定し、新しい突然変異の位置を
決定することができる。
表Iは開発されている突然変異/多型性検出試験を示す。突然変異の検出
遺伝病の診断
上記マススペクトロメトリー法を使用して例えば現在知られている3000種
を越える遺伝病(例えば血友病、タラセミア、デュシェン筋ジストロフィー(D
MD)、ハンチントン病(HD)、アルツハイマー病及び嚢胞性線維症(CF)
)の任意のものを診断又は同定することができる。
後記実施例3は、野生型CFTR遺伝子と3塩基対(900ダルトン)しか相
違しない嚢胞性線維症膜貫通伝達調節遺伝子(CFTR)の突然変異(ΔF50
8)のマススペクトロメトリー検出法について記載する。実施例3に詳述するよ
うに、検出は正常又は突然変異対立遺伝子に相補的な3’末端塩基をもつ1対の
プライマーを使用するシングルチューブ競合的オリゴヌクレオチド単塩基伸長(
COSBE)反応を利用する。ポリメラーゼと1塩基上流のヌクレオシド三リン
酸をハイブリダイゼーション及び付加すると、正しくアニールした(即ち3’末
端ミスマッチのない)プライマーのみが伸長し、分子量シフトにより産物を分解
し、マトリックス介助レーザーデソープションイオン化飛行時間マススペクトロ
メトリーにより測定する。
嚢胞性線維症ΔF508多型性では、28量体「正常」(N)及び30量体「突
然変異」(M)プライマーから夫々N及びMホモ接合とヘテロ接合の29及び3
1量体が生成される。プライマーと産物の分子量は比較的小さく(<10kDa
)、これらの質量差は少なくとも1〜300Daヌクレオチド単位であるので、
このような測定には低分解能装置が適している。
実施例11に詳述するようなサーモシーケンスサイクルシーケンシングも遺伝
病の検出に有用である。
遺伝病の原因となる遺伝子の突然変異に加え、トリソミー21(ダウン症候群
)、トリソミー13(パトー症候群)、トリソミー18(エドワーズ症候群)、
モノソミーX(ターナー症候群)及び他の性染色体異数(例えばクラインフェル
ター症候群(XXY))等の染色体異常による先天性欠損もある。この場合には
、該当染色体によりコードされる「ハウスキーピング」遺伝子が異なる量で存在
するので、増幅フラグメントの量と正常染色体構造における量の差をマススペク
トロメトリーにより測定することができる。
更に、糖尿病、動脈硬化症、肥満、種々の自己免疫疾患及び癌(例えば結腸直
腸、乳房、卵巣、肺)等の多数の疾病は特定
のDNA配列が個体に素因を与えるらしいということが立証されつつある。また
、「DNAフィンガープリント」(例えば「ミニ及びマイクロサテライト配列」
等の多型性)の検出も同一性又は遺伝(例えば父親確定又は母親確定)を判定す
るのに有用である。
後記実施例4及び12はE2、E3及びE4対立遺伝子によりコードされるヒ
トアポリポタンパク質Eの3種の異なるアイソフォームの任意のものを同定する
ためのマススペクトロメーターによる方法について記載する。例えば、適当な制
限エンドヌクレアーゼで消化後に得られるDNAフラグメントの分子量を使用し
て突然変異及び/又は特定対立遺伝子の存在を検出することができる。
生物試料に応じて遺伝病、染色体異数又は遺伝素因の診断を出生前又は後に実
施することができる。
癌の診断
本発明は、腫瘍又は癌の存在の早期発見を実現するマススペクトロメーターに
よる好ましい方法を提供する。例えば実施例13に記載するように、テロメア反
復増幅プロトコール(TRAP)と基質プライマーのテロメラーゼ特異的伸長を
併用した
後、反復構造に相補的な第2のプライマーを使用する増幅段階によりテロメラー
ゼ特異的伸長産物を増幅して得た伸長ラダーは、MALDI−TOFマススペク
トロメトリーによりテロメラーゼ活性及び発癌の徴候として容易に検出された。
あるいは実施例14に記載するように、RT−PCRによる腫瘍又は癌関連遺
伝子(例えばヒトチロシン5−ヒドロキシラーゼ)の発現とマススペクトロメト
リーによる増幅産物の分析を使用して腫瘍又は癌を検出することができる(例え
ばチロシン5−ヒドロキシラーゼによるカテコールアミンの生合成は神経芽細胞
腫の特徴である)。
更に、プライマーオリゴ塩基伸長反応とマススペクトロメトリーによる産物の
検出は、実施例15に記載するようにII型多発性内分泌腫瘍症候群(MEN
II)の誘発に関係するRET癌原遺伝子コドン634等の癌遺伝子の存在を検
出するための迅速な手段を提供する。
感染の診断
ウイルス、細菌、真菌及び他の感染性生物は宿主細胞に含まれる配列とは異な
る特定核酸配列を含む。感染性生物に特異的な核酸配列を検出又は定量すること
は感染の診断又は監視に重
要である。ヒト及び動物に感染し、本発明の方法により検出可能な疾患の例とし
ては、Retroviridae(例えばHIV−1(HTLV−III、LA
V又はHTLV−III/LAVともいう。例えばRatnerら(1985)
Nature 313:227−284;Wain−Hobsonら(1985
)Cell 40:9−17参照)、HIV−2(Guyaderら(1987
)Nature 328:662−669;ヨーロッパ特許公開第026952
0号;Chakrabartiら(1987)Nature 328:543−
547;及びヨーロッパ特許出願第0655501号参照)、及び他の単離菌株
(例えばHIV−LP(国際PCT出願第WO94/00562号、発明の名称
“A Novel Human Immunodeficiency Viru
s”参照))等のヒト免疫不全ウイルス);Picornaviridae(例
えばポリオウイルス、A型肝炎ウイルス(例えばGustら(1983)Int
ervirology 20:1−7参照)、エンテロウイルス、ヒトコクサッ
キーウイルス、ライノウイルス、エコーウイルス);Calciviridae
(例えば胃腸炎を誘発する菌種);Togaviridae
(例えばウマ脳脊髄炎ウイルス、風疹ウイルス);Flaviridae(例え
ばデング熱ウイルス、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス);Coronaviri
dae(例えばコロナウイルス);Rhabdoviridae(例えば水泡性
口内炎ウイルス、狂犬病ウイルス);Filoviridae(例えばエボラウ
イルス);Paramyxoviridae(例えばパラインフルエンザウイル
ス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス);Ort
homyxoviridae(例えばインフルエンザウイルス);Bungav
iridae(例えばハンターンウイルス、ブンガウイルス、フレボウイルス及
びナイロウイルス);Arenaviridae(出血熱ウイルス);Reov
iridae(例えばレオウイルス、オルビウイルス及びロタウイルス);Bi
rnaviridae;Hepadnaviridae(B型肝炎ウイルス);
Parvoviridae(パルボウイルス);Papovaviridae(
パピローマウイルス、ポリオーマウイルス);Adenoviridae(大半
のアデノウイルス);Herpesviridae(単純ヘルペスウイルス(H
SV)1及び2、水痘ウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、
ヘルペスウイルス);Poxviridae(痘瘡ウイルス、ワクシニアウイル
ス、ポックスウイルス)及びIridoviridae(例えばアフリカブタ熱
ウイルス)並びに未分類ウイルス(例えば海綿様脳症の病原体、(B型肝炎ウイ
ルスの欠損サテライトであると考えられる)δ肝炎病原体、非A、非B肝炎病原
体(クラス1=体内感染;クラス2=親からの感染(即ちC型肝炎);Norw
alkと関連ウイルス及びアストロウイルス)が挙げられる。
感染性細菌の非限定的な例としては、Helicobacter pylor
is、Borelia burgdorferi、Legionella pn
eumophilia、ミコバクテリア種(例えばM.tuberculosi
s、M.avium、M.intracellulare、M.kansaii
、M.gordonae)、Staphylococcus aureus、N
eisseria gonorrhoeae、Neisseria menin
gitidis、Listeria monocytogenes、Strep
tococcus pyogenes(A群連鎖球菌)、Streptococ
cus agalactiae(B群連鎖球
菌)、Streptococcus(ビリダンス群)、Streptococc
us faecalis、Streptococcus bovis、Stre
ptococcus(嫌気性種)、Streptococcus phhenu
moniae、病原性カンピロバクター種、腸球菌種、Haemophilus
influenzae、Bacillus antracis、coryne
bacterium diphtheriae、コリネバクテリウム種、Ery
sipelothrix rhusiopathiae、Clostridiu
m perfringers、Clostridium tetani、Ent
erobacter aerogenes、Klebsiella pneum
oniae、Pasturella multocida、バクテロイデス種、
Fusobacterium nucleatum、Streptobacil
lus moniliformis、Treponema pallidium
、Treponema pertenue、Leptospira及びActi
nomycesisraelliが挙げられる。
感染性真菌の例としては、Cryptococcus
neoformans、Histoplasma capsulatum、Co
ccidioides immitis、Blastomyces derma
titidis、Chlamydia trachomatis、Candid
a albicansが挙げられる。他の感染性生物(即ち原生生物)としては
、Plasmodium falciparumとToxoplasma go
ndiiが挙げられる。
本発明の方法はターゲット配列の既知配列情報と既知突然変異部位を利用する
が、新しい突然変異を検出することもできる。例えば図8に示すように、1種以
上のヌクレアーゼと対応する相補的核酸配列をもつ固体支持体に捕獲したフラグ
メントを使用して生物試料から得た核酸分子の転写物を特異的に消化することが
できる。ハイブリダイゼーションの検出と捕獲したターゲット配列の分子量は、
遺伝子中の突然変異の有無とその場所に関する情報を提供する。あるいは、1種
以上の特異的エンドヌクレアーゼによりDNAを開裂し、フラグメントの混合物
を形成することができる。野生型と突然変異フラグメントの混合物の分子量を比
較することにより突然変異を検出する。
特定末端をもつフラグメントの生成によるシーケンシング
別の態様では、ターゲット核酸から特定末端をもつフラグメントを生成し、マ
ススペクトロメトリーにより各フラグメントの質量を測定し、フラグメントを並
べてより大きいターゲット核酸の配列を決定することにより、比較的大きいター
ゲット核酸の正確な配列決定が得られる。好ましい態様では、特定末端をもつフ
ラグメントは特定塩基を末端にもつ部分又は完全フラグメントである。
特定塩基を末端にもつフラグメントを生成する方法の1例は、例えば転写反応
後に塩基特異的リボヌクレアーゼを使用する。好ましい塩基特異的リボヌクレア
ーゼはT1−リボヌクレアーゼ(G特異的)、U2−リボヌクレアーゼ(A特異的
)、PhyM−リボヌクレアーゼ(U特異的)及びリボヌクレアーゼA(U/特
異的)から選択される。他の有効な塩基特異的リボヌクレアーゼは実施例16に
記載するアッセイを使用して同定することができる。修飾ヌクレオチドを未修飾
ヌクレオチドと転写反応させることが好ましい。修飾ヌクレオチドと未修飾ヌク
レオチドを約1:1の好ましい比率で組み込むように適当な濃度で転写反応に加
えると最も好ましい。あるいは、修飾ヌクレオチ
ドと未修飾ヌクレオチドで2回別々にターゲットDNAの転写を行い、結果を比
較してもよい。好ましい修飾ヌクレオチドとしては、ホウ素又は臭素修飾ヌクレ
オチド(Porterら(1995)Biochemistry 34:119
63−11969;Hasanら(1996)Nucl.Acids Res.
24:2150−2157;Liら(1995)Nucleic Acids
Res.23:4495−4501)、α−チオ修飾ヌクレオチド及び上述のよ
うな質量改変ヌクレオチドが挙げられる。
特定塩基を末端にもつフラグメントを生成する別の方法は、増幅と塩基特異的
ターミネーション反応を併用実施する。例えば、連鎖停止ヌクレオチドに対して
比較的親和性をもつ酵素による重合が指数的増幅を生じ、連鎖停止ヌクレオチド
に対して比較的高い親和性をもつ酵素が重合を停止してシーケンシング産物を生
じるように、連鎖停止ヌクレオチドに対して各々異なる親和性をもつ少なくとも
2種の異なるポリメラーゼ酵素を使用して増幅とターミネーション反応を併用実
施することができる。
増幅とシーケンシングの併用は、ポリヌクレオチド合成能を
もつ酵素(例えばポリメラーゼ)を使用する任意増幅法を利用することができる
。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく好ましい方法の1例は、1)2個の
1本鎖(ss)DNA分子(鋳型:センス及びアンチセンス鎖)を得るのに適し
た温度及び時間にわたって2本鎖(ds)DNA分子を変性する段階と、2)s
sDNA鋳型を含むプライマーを得るのに適した温度及び時間にわたって少なく
とも1個のssDNA鋳型にハイブリダイズする少なくとも1個のプライマーと
鋳型を接触させる段階と、3)鋳型を含むプライマーを適当な温度及び適当な時
間にわたって(i)完全な1組の連鎖伸長ヌクレオチド、(ii)少なくとも1
個の連鎖停止ヌクレオチド、(iii)連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的低
い親和性をもつ第1のDNAポリメラーゼ及び(iv)連鎖停止ヌクレオチドに
対して比較的高い親和性をもつ第2のDNAポリメラーゼと接触させる段階から
なる3段階の熱処理を含む。
段階1)〜3)は所望量の増幅シーケンシングラダーを得るために十分な回数
(サイクル)順次実施することができる。特定塩基を末端にもつフラグメントの
所望量に応じてサイクルの実施回数を決定する。サイクル数が増すと増幅レベル
は増すが、
その後の検出感度が低下する。従って、約50サイクル以上実施するのは一般に
望ましくなく、約40サイクル未満(例えば約20〜30サイクル)実施すると
より好ましい。
核酸配列を同時に増幅及び連鎖停止するための別の好ましい方法は、鎖置換増
幅(SDA)(例えばWalkerら(1994)Nucl.Acids Re
s.22:2670−77;ヨーロッパ特許公開第0684315号、発明の名
称“Strand Displacement Amplification
Using Thermophilic Enzymes”参照)を利用する。
主にこの方法は、1)2個の1本鎖(ss)DNA分子(鋳型:センス及びアン
チセンス鎖)を得るのに適した温度及び時間にわたって2本鎖(ds)DNA分
子を変性させる段階と、2)ssDNA鋳型を含むプライマーを得るのに適した
温度及び時間にわたって制限エンドヌクレアーゼ(RE)の認識/開裂部位を含
み且つ少なくとも1個のssDNA鋳型にハイブリダイズする少なくとも1個の
プライマー(P)と鋳型を接触させる段階と、3)鋳型を含むプライマーを適当
な温度及び適当な時間にわたって(i)完全な1組の連鎖伸長ヌクレオチド、(
ii)少なくとも1個の連鎖停
止ヌクレオチド、(iii)連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的低い親和性を
もつ第1のDNAポリメラーゼ、(iv)連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的
高い親和性をもつ第2のDNAポリメラーゼ及び(v)プライマー認識/開裂部
位をニックするREと接触させる段階からなる3段階を1サイクルとして含む。
段階1)〜3)は所望量の増幅シーケンシングラダーを得るために十分な回数
(サイクル)順次実施することができる。PCRに基づく方法と同様に、特定塩
基を末端にもつフラグメントの所望量に応じてサイクルの実施回数を決定する。
好ましくは50サイクル未満、より好ましくは約40サイクル未満、最も好まし
くは約20〜30サイクルを実施する。
増幅と連鎖停止反応の併用では約0.5〜約3単位のポリメラーゼを使用する
ことが好ましい。約1〜2単位を使用すると最も好ましい。PCR又は他の熱増
幅法と併用するのに特に好ましいポリメラーゼはTaq DNAポリメラーゼ(
Boehringer Mannheim)、AmpliTaq FS DNA
ポリメラーゼ(Perkin−Elmer)、Deep Vent(exo−)
、Vent、Vent(exo−)及び
Deep Vent DNAポリメラーゼ(New England Biol
abs)、Thermo Sequenase(Amersham)又はexo
(−)Pseudococcus furiosus(Pfu)DNAポリメラ
ーゼ(Stratagene,Heidelberg,ドイツ)、AmpliT
aq、Ultman、9 degree Nm、Tth。Hot Tub及びP
yrococcus furiosus等の熱安定ポリメラーゼである。更に、
ポリメラーゼは5’ー3’エキソヌクレアーゼ活性をもたないことが好ましい。
連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的高い親和性をもつポリメラーゼと比較的
低い親和性をもつポリメラーゼに加え、プルーフリーディング能をもつ第3のD
NAポリメラーゼ(例えばPyrococcus woesei(Pwo)DN
Aポリメラーゼ)も増幅混合物に加え、増幅の忠実度を増進してもよい。
特定塩基を末端にもつフラグメントを生成するための更に別の方法は、適量の
ターゲット核酸を特異的エンドヌクレアーゼ又はエキソヌクレアーゼと接触させ
る。核酸の元の5’及び/又は3’末端にタグを付けてフラグメントを並べ易く
することが好ましい。in vitro核酸転写産物を分析する場合に
は3’末端にタグを付け、3’不均一性、早期停止及び非特異的伸長の影響を最
小限にすると特に好ましい。5’及び3’タグは天然(例えば3’ポリAテール
又は5’もしくは3’不均一性)でもよいし、人工でもよい。好ましい5’及び
/又は3’タグは質量改変に関して上述したものから選択される。
以下、実施例により本発明の方法を更に説明するが、これにより発明を制限す
るものではない。
実施例1
固体支持体に結合したオリゴヌクレオチドの直接MALDI−TOF脱着
CpG(Controlled Pore Glass)1gを3−(トリエ
トキシシリル)エポキシプロパンで官能化し、ポリマー表面にOH基を形成した
。β−シアノエチルホスホロアミダイト(Kosterら(1994)Nucl
eic Acids Res.12:4539)とTAC N保護基(Kost
erら(1981)Tetrahedron 37:362)を使用してDNA
合成器(Milligen,Model 7500)でOH−CPG13mgか
ら標準オリゴヌクレオチド合成を実施し、50ヌクレオチドが「ハイポセティカ
ル」50量体配列に相補的な3’−T5−50量体オリゴヌクレオチド配列を合
成した。メタノール中飽和アンモニアで室温で2時間脱保護すると、DMT基の
測定によるとCPG1g当たり約10μmolの55量体を含むCPGが得られ
た。この55量体を鋳型として使用し、(5’−DMT基をもつ)25量体及び
(DMT基をもたない)40量体とハイブリダイズした。反応容量は100μl
であり、20mM Tris−HCl,pH7.5,10mM MgCl2及び
25mM NaCl溶液(26量体又は40量体)中に鋳型としてのCPG結合
55量体約1nmolと、等モル量のオリゴヌクレオチドを含む。混合物を65
℃に10分間加熱し、30分間で37℃まで冷却した(アニーリング)。ポリマ
ーに結合した鋳型にハイブリダイズしていないオリゴヌクレオチドを遠心分離後
、氷冷50mMクエン酸アンモニウム各100μlで3回洗浄/遠心分離するこ
とによりに除去した。ビーズを風乾し、マトリックス溶液(1:1アセトニトリ
ル/水中3−ヒドロキシピコリン酸/10mMクエン酸アンモニウム)と混合し
、MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより分析した。結果を図10及
び11に示す。
実施例2
18量体と19量体のエレクトロスプレー(ES)デソープション及び区別
2−プロパノール/10mM炭酸アンモニウム(1/9,v/v)中50pm
ol/μlの濃度のDNAフラグメントをエレクトロスプレーマススペクトロメ
ーターにより同時に分析した。
図12に示すように18量体と19量体はエレクトロスプレーマススペクトロ
メトリーにより脱着及び区別できる。
実施例3
1段階ジデオキシ伸長による嚢胞性線維症突然変異ΔF508の検出とMALD
I−TOFマススペクトロメトリーによる分析(競合的オリゴヌクレオチド1塩
基伸長−COSBE)
COSBE法の原理を図13に示し、同図中、夫々Nは正常及びMは突然変異
検出プライマーである。
材料と方法
PCR増幅及び鎖固定化。標準PCR条件(30サイクル:1分間95℃、1
分間55℃、2分間72℃)を使用してエキソン10特異的プライマーで増幅を
実施し、逆プライマーをビ
オチンで5’標識し、カラム精製した(Oligopurification
Cartridge,Cruachem)。増幅後に増幅産物をカラム分離(Q
iagen Quickspin)により精製し、標準プロトコールに従ってス
トレプトアビジンをコートした磁性ビーズ(Dynabeads,Dynal,
ノルウェー)に固定化し、0.1M NaOHを使用してDNAを変性させ、0
.1M NaOH,1×B+W緩衝液とTE緩衝液で洗浄し、非ビオチン化セン
ス鎖を除去した。
COSBE条件。連結したアンチセンス鎖を含むビーズを反応混合物1(10
×Taq緩衝液2μl、Taq Polymerase 1μL(1単位)、2
mM dGTP 2μL及びH2O 13μL)18μlに再懸濁し、80℃で
5分間インキュベート後、反応混合物2(COSBEプライマー各100ng)
を加えた。温度を60℃まで下げ、混合物を5分間のアニーリング/伸長時間に
わたってインキュベートした後、ビーズを25mM酢酸トリエチルアンモニウム
(TEAA)、次いで50mMクエン酸アンモニウムで洗浄した。
プライマー配列。慣用ホスホロアミダイト化学(Sinhaら(1984)N
ucleic Acids Res.12:
4539)を使用してPerspective Biosystems Exp
edite 8900 DNA Synthesizerで全プライマーを合成
した。(各々3’末端の1塩基前に意図的ミスマッチを含む)COSBEプライ
マーは、正常の5’末端から2塩基を除去した以外は従来のARMS研究(Fe
rrieら(1992)Am J Hum Genet 51:251−262
)で使用されているものをしようした。
Ex10 PCR(順):5’−BTO−GCA AGT GAA TCC T
GA GCG TG−3’(配列番号1)
Ex10 PCR(逆):5’−GTG TGA AGG GTT CAT A
TG C−3’(配列番号2)
COSBE Δ−F508−N 5’−ATC TAT ATT CAT CA
T AGG AAA CAC CAC A−3’(28量体)(配列番号3)
COSBE Δ−F508−N 5’−GTA TCT ATA TTC AT
C ATA GGA AAC ACC ATT−3’(30量体)(配列番号4
)。
マススペクトロメトリー。洗浄後、ビーズを18Mohm/
cm H2O 1μLに再懸濁した。マトリックス(Wuら(1993)Rap
id Commun.Mass Spectrom.7:142−146)溶液
(1:1H2O:CH3CN中0.7M 3−ヒドロキシピコリン酸、0.7M二
塩基性クエン酸アンモニウム)と再憑濁したビーズ(Tangら(1995)R
apid Commun Mass Spectrom8:727−730)各
300nLを試料ターゲット上で混合し、風乾した。20個までの試料をプロー
ブターゲットディスクにスポットして未改造Thermo Bioanalys
is(旧Finnigan)Virsions 2000 MALDI−TOF
のソース領域に導入し、ターゲット及び変換ダイノードで夫々5及び20kVの
リフレクトロンモードで運転した。理論平均分子量(Mr(calc))を原子
組成から計算した。市販ソフトウェアを使用し、外部較正を使用してピーク質量
中心を測定し、1.08Daを差し引いて電荷をもつプロトン質量を修正し、実
測Mr(exp)値を得た。
スキーム。結合した鋳型にアニーリング後、N及びMプライマー(夫々850
8.6及び9148.0Da)にdGTPを加えると、可変(V)位置に正しい
ワトソンークリック塩基対
をもつプライマーのみがポリメラーゼにより伸長する。即ち、VがNの3’末端
塩基に対合する場合には、Nは8837.9Da産物(N+1)まで伸長する。
同様に、VがM末端に正しく対合している場合には、Mは9477.3Da M
+1産物まで伸長する。
結果
図14〜18はCOSBE反応産物の代表的な質量スペクトルを示す。ビオチ
ン化アンチセンス鎖を結合する前に増幅産物を精製すると、良好な結果が得られ
た。
実施例4
マススペクトロメトリーによるヒトアポリポタンパク質Eアイソフォームの区別
アポリポタンパク質E(アポE)はリポタンパク質のタンパク成分であり、脂
質代謝に重要な役割を果たす。例えば、コレステロール輸送、リポタンパク質粒
子の代謝、免疫調節及び多数の脂質分解酵素の活性化に関与している。
ヒトアポEでは(E2、E3及びE4対立遺伝子によりコードされる)3種の
アイソフォームがよく知られている。E3対立遺伝子が最もよく知られている。
E2対立遺伝子は血漿中の
コレステロール濃度を低下させることが示されているので、動脈硬化症の発生に
対する防御効果をもつと思われる。E2対立遺伝子の一部をコードするDNAを
配列番号130に示す。最後に、E4アイソフォームはコレステロール濃度の増
加に相関関係があるとされており、動脈硬化症の素因を与える。従って、特定個
体のアポEの存在は心血管病の発生の危険の重要な決定基である。
図19に示すように、アポリポタンパク質EをコードするDNAの試料を被験
体から獲得し、(例えばPCRにより)増幅し、増幅産物を適当な酵素(例えば
CfoI)で消化することができる。得られた制限消化産物をその後、種々の手
段により分析することができる。図20に示すように、アポリポタンパク質Eの
3種のアイソタイプ(E2、E3及びE4)は異なる核酸配列をもち、従って区
別可能な分子量値をもつ。
図21A〜Cに示すように、異なるアポリポタンパク質E遺伝子型は3.5%
MetPhor Agaros Gel又は12%ポリアクリルアミドゲル中で
異なる制限パターンを示す。図22及び23に示すように、種々のアポリポタン
パク質E遺伝子型もマススペクトロメトリーにより正確且つ迅速に決定すること
ができる。
実施例5
血清試料中のB型肝炎ウイルスの検出
材料と方法
試料調製
ウイルスDNAのフェノール/クロロホルム抽出と最終エタノール沈殿は標準
プロトコールに従って実施した。
第1回PCR
血清からのDNA調製物5μlを使用して各反応を実施した。各プライマー1
5pmolとTaq DNAポリメラーゼ(Perkin Elmer,Wei
terstadt,ドイツ)2単位を使用した。各dNTPの終濃度は200μ
Mとし、最終反応容量は50μlとした。10×PCR緩衝液(Pelkin
Elmer,Weiterstadt,ドイツ)は100mM Tris−HC
l,pH8.3,500mM KCl,15mM MgCl2,0.01%ゼラ
チン(w/v)を含むものとした。
プライマー配列:
入れ子PCR:
夫々第1回PCR反応産物1μl又は第1回PCR産物の1:10希釈液を鋳
型として使用して各反応を実施した。各プライマー100pmol、Pfu(e
xo−)DNAポリメラーゼ(Stratagene,Heidelberg,
ドイツ)2.5u、終濃度200μMの各dNTP及び10×Pfu緩衝液(2
00mM Tris−HCl,pH8.75,100mM KCl,100mM
(NH4)2SO4,1%Triton X−100,1mg/ml BSA(S
tratagene,Heidelberg,ドイツ))5μlを最終容量50
μl中で使用した。反応はサーモサイクラー(OmniGene,MWG−Bi
otech,Ebersberg,ドイツ)で92℃1分間、60℃1分間及び
72℃1分間を20サイクル繰り返すプログラムを使用して実施した。オリゴデ
オキシヌクレオチド(MWG−Biotech,Ebersberg,ドイツか
ら購入したHPLC精製品)の配列は以下の通りである。 増幅産物の精製:
各スペクトルを記録するために、(上述のように実施した)各PCR産物50
μlを使用した。以下の手順に従って精製を行った。Ultrafree−MC
濾過装置(Millipore,Eschborn,ドイツ)を製造業者のプロ
トコールに従って使用して限外濾過を行い、8000rpmで20分間遠心分離
した。ストレプトアビジンDynabeads(Dynal,Hamburg,
ドイツ)25μl(10μg/μl)を製造業者の指示に従って調製し、B/W
緩衝液(10mM Tris−HCl,pH7.5,1mM EDTA,2M
NaCl)25μlに再懸濁した。この懸濁液をまだ濾過装置にあるPCR試料
に加え、混合物を15分間周囲温度で静かに震盪しながらインキュベートした。
懸濁液を1.5mlエッペンドルフチューブに移し、Magnetic Par
ticle Collector,MPC(Dynal,Hamburg,ドイ
ツ)により上清を除去した。ビーズを0.7Mクエン酸アンモニウム溶液(pH
8.0)50μlで2回洗浄した(上清は各回毎にMPCを使用して除去した)
。ビーズからの開裂は90℃でホルムアミドを使用して実施することができる。
上清
をspeedvacで約1時間乾燥し、超純水(MilliQUF plus
Millipore,Eschborn,ドイツ)4μlに再懸濁した。この調
製物をMALDI−TOFMS分析に使用した。
MALDI−TOF MS:
試料0.5μlを試料ホルダーにピペットで分注後、すぐにマトリックス溶液
(0.7M 3−ヒドロキシピコリン酸,50%アセトニトリル,70mMクエン
酸アンモニウム)0.5μlと混合した。この混合物を周囲温度で乾燥し、マス
スペクトロメーターに導入した。全スペクトルはリフレクトロン(5keVイオ
ン源、20keV後加速)と337nm窒素レーザーを取り付けたFinnig
an MAT Vision 2000(Finnigan MAT,Brem
en,ドイツ)を使用して陽イオンモードで測定した。40量体と100量体の
混合物で較正を行った。各試料を種々のレーザーエネルギーで測定した。陰性試
料では、増幅産物はレーザーエネルギーの高低に拘わらず検出されなかった。陽
性試料ではレーザーエネルギーを変えても試料スポットの種々の場所で増幅産物
が検出された。
結果
入れ子PCRシステムを使用し、HBVコア抗原(HBVcAg)をコードす
るHBVゲノムのc領域に相補的なオリゴヌクレオチド(プライマー1:相補鎖
のマップ1763位から開始、プライマー2:マップ2032位から開始)を使
用して血液試料中のHBV DNAを検出した。DNAは標準プロトコールに従
って患者血清から単離した。第1回PCRは第1組のプライマーを使用してこれ
らの調製物からのDNAで実施した。HBV DNAが試料中に存在する場合に
は、269bpのDNAフラグメントが生成された。
第2回反応では、第1回PCRで生成されたPCRフラグメント内の領域に相
補的なプライマーを使用した。HBV関連増幅産物が第1回PCRに存在する場
合には、この入れ子PCRで67bpのDNAフラグメントが生成された(図2
5A参照)。入れ子PCRシステムを検出に使用すると、高い感度が得られ、外
部PCRの特異性対照としても有用である(Rolfsら(1992)PCR:
Clinical Diagnostics and Research,Sp
ringer Heiderberg)。精製低下は避けられないが、第2回P
CR
で生成されるフラグメントの量が問題ない検出を確保するために十分高いという
利点もある。
ストレプトアビジンDynabeadsで限外濾過して試料を精製した。この
精製を行ったのは、立体上の理由により短いプライマーフラグメントのほうがビ
ーズに高い効率で固定化されるからである。固定化は非特異的膜吸着による物質
損失を避けるために限外濾過膜に直接行った。固定化後、ビーズをクエン酸アン
モニウムで洗浄し、カチオン交換を行った(Pielesら(1993)Nuc
l.Acids Res.21:3193−3196)。25%アンモニアを使
用して固定化DNAをビーズから分離するとDNAをビーズから非常に短時間で
分離することができ、ナトリウムや他のカチオンも混入しなかった。
入れ子PCRとMALDI TOF分析は血清分析結果を知らずに実施した。
ウイルス力価が不明のため、第1回PCRの各試料は鋳型として夫々未希釈のま
ま及び1:10に希釈して使用した。
試料1はHbs及びHbe抗原試験で陽性であり且つドットブロット分析で陰
性であった慢性活性HBV感染患者から採取
した。試料2はドットブロット分析でHBV陽性であった活性HBV感染と顕著
なウイルス血症をもつ患者からの血清試料とした。試料3は変性血清試料であり
、従って、トランスアミナーゼ濃度を上げると血清分析を実施することができず
、肝疾患が検出されることを示した。オートラジオグラフ分析(図24)でこの
試料の第1回PCRは陰性であった。しかし、HBV感染の多少の徴候があった
。この試料は精製操作後に低レベルの量ではあるが増幅産物を検出できるので、
MALDI−TOF分析に重要である。試料4はHBV感染が治癒した患者から
採取した。試料5及び6は慢性活性HBV感染患者から採取した。
図24は入れ子PCR反応のPAGE分析の結果を示す。試料1、2、3、5
及び6には増幅産物が明白に示される。試料4では増幅産物は生成されず、血清
分析通り、確かにHBV陰性である。陰性及び陽性対照は夫々+及び−で示す。
未希釈鋳型を使用した場合にもレーン2、5、6及び+には増幅アーチファクト
が見られる。これらのアーチファクトは鋳型を1:10に希釈して使用した場合
には生じなかった。試料3では鋳型を希釈しない場合のみに増幅産物を検出でき
た。PAGE分析結果は上述のように試料3を除き、血清分析により得られたデ
ー
タに一致している。
図25Aは上述のように生成及び精製した試料番号1からの入れ子増幅産物の
質量スペクトルを示す。20754Daのシグナルは1本鎖増幅産物を表す(計
算値:20735Da、ビーズから開裂した増幅産物の両鎖の平均質量)。計算
値と実測地の質量差は19Da(0.09%)である。図25Aに示すように、
試料番号1は多量の増幅産物を生成し、はっきり検出された。
図25Bは試料番号3から得られたスペクトルを示す。図24に示すように、
このセクションで生成された増幅産物の量は試料番号からの量よりも著しく少な
い。しかし、増幅産物は質量20751Da(計算値20735)ではっきり現
れている。質量差は16Da(0.08%)である。図25Cに示すスペクトル
は(図24と同様に)HBV陰性の試料番号4から得た。予想通り、増幅産物に
対応するシグナルは検出できなかった。図25に示す全試料をMALDI−TO
F MSで分析した処、全HBV陽性試料で増幅産物が検出されたが、HBV陰
性試料では検出されなかった。これらの結果は数回の独立した実験で再現された
。
実施例6
MALDI−TOFマススペクトロメトリーによるリガーゼ連鎖反応産物の分析
材料と方法
オリゴデオキシヌクレオチド
ビオチン化したものを除き、他の全オリゴヌクレオチドはβ−シアノエチルホ
スホロアミダイト法(Sinha,N.D.ら(1984)Nucleic A
cids Res.12:4539−4577)を使用してMilligen
7500 DNA Synthesizer(Millipore,Bedfo
rd,MA,米国)で0.2μmol規模で合成した。オリゴデオキシヌクレオ
チドは標準プロトコールに従ってRP−HPLC精製及び脱保護した。ビオチン
化オリゴデオキシヌクレオチドはBiometra,Gottingen,ドイ
ツから購入した(HPLC精製物)。使用したオリゴヌクレオチドの配列と計算
分子量は以下の通りである。 オリゴヌクレオチドA及びDの5−リン酸化
これは公表手順に従ってポリヌクレオチドキナーゼ(Boehringer,
Mannheim,ドイツ)を用いて実施し、5’−リン酸化オリゴヌクレオチ
ドを精製せずにLCRに使用した。
リガーゼ連鎖反応
LCRは、大腸菌lacI遺伝子の野生型と、lacI遺伝子のbp191に
単一点突然変異をもつこの遺伝子の突然変異体とを夫々担持した2種の異なるp
Bluescript KIIファージミドを含むリガーゼ連鎖反応キット(S
tratagene,Heidelberg,ドイツ)とPfu DNAリガー
ゼを使用して実施した。
各反応で以下のLCR条件を使用した。最終容量20μlの緩衝液中、鋳型D
NA100pg(0.74fmol)、キャ
リヤーとして音波処理サケ精子DNA500pg、各5’−リン酸化オリゴヌク
レオチド25ng(3.3pmol)、各非リン酸化オリゴヌクレオチド20n
g(2.5pmol)、Pfu DNAリガーゼ4Uを使用し、ss50量体(
1fmol)を鋳型として使用し、この場合にはオリゴCもビオチン化した。全
反応はサーモサイクラー(OmniGene,MWG−Biotech,Ebe
rsberg,ドイツ)で4分間92℃、2分間60℃及び25サイクル20秒
間92℃、40秒間60℃のプログラムに従って実施した。HPLC分析以外は
、ビオチン化連結遊離体Cを使用した。対照実験では、ビオチン化及び非ビオチ
ン化オリゴヌクレオチドは同一のゲル電気泳動結果を示した。反応物を7.5%
ポリアクリルアミドゲルで分析した。連結産物1(オリゴA及びB)の計算質量
:15450Da、連結産物2(オリゴC及びD)の計算質量:15387Da
。
SMART−HPLC
Pharmacia Mono Q,PC 1.6/5カラムを使用してSM
ARTシステム(Pharmacia,Freiburg,ドイツ)でイオン交
換HPLC(IE HPLC)
を実施した。溶離剤は緩衝液A(25mM Tris−HCl,1mM EDT
A及び0.3M NaCl,pH8.0)と緩衝液B(1M NaClとした以
外はAと同様)を使用した。100%Aで5分間流速50μl/minから出発
し、30分間で0→70%Bの勾配を加えた後、2分間で100%Bまで増加し
、100%Bに5分間維持した。野生型又は突然変異鋳型で実施した2種のLC
Rプール(40μl)を注入した。
MALDI−TOF−MS用試料調製
固定化DNAの調製:各スペクトルを記録するために、(上記のように実施し
た)2種のLCRをプールし、2×B/W緩衝液(10mM Tris−HCl
,pH7.5,1mM EDTA,2M NaCl)で1:1に希釈した。試料
にストレプトアビジンDynaBeads(Dynal,Hamburg,ドイ
ツ)5μlを加え、混合物を周囲温度で15分間静かに震盪しながら結合させた
。Magnetic Particle Collector,MPC(Dyn
al,Hamburg,ドイツ)を使用して上清を除去し、ビーズを0.7Mク
エン酸アンモニウム溶液(pH8.0)50μlで2回洗浄した(上清は各回毎
にMPCを使用して除去した)。ビーズを超純水
(MilliQ,Millipore,Bedford,Mabelow)1μ
lに再懸濁した。
限外濾過とストレプトアビジンDynaBeadsの併用:スペクトルを記録
するために、(上記のように実施した)2種のLCRをプールし、2×B/W緩
衝液で1:1に希釈し、製造業者の指示に従って5000NMWL Ultra
free−MCフィルターユニット(Millipore,Eschborn,
ドイツ)で濃縮した。濃縮後、試料を1×B/W緩衝液300μlで洗浄し、ス
トレプトアビジンDynaBeadsを加えた。ビーズをUltrafree−
MC濾過装置で1×B/W緩衝液300μlで1回洗浄し、上記のように処理し
た。ビーズを1×B/W緩衝液30〜500μlに再懸濁し、1.5mlエッペ
ンドルフチューブに移した。上清を除去し、ビーズを0.7Mクエン酸アンモニ
ウム(pH8.0)50μlで2回洗浄した。最後に、ビーズをアセトン30μ
lで1回洗浄し、超純水1μlに再懸濁した。ビーズに固定化後の連結混合物を
下記のようにMALDI−TOF−MS分析に使用した。
MALDI−TOF−MS
ストレプトアビジンをコートした磁性ビーズにDNAを固定
化したものの懸濁液を試料ホルダーにピペットで分注後、すぐにマトリックス溶
液(50%アセトニトリル中0.7M 3−ヒドロキシピコリン酸,70mMク
エン酸アンモニウム)0.5μlと混合した。この混合物を周囲温度で乾燥し、
マススペクトロメーターに導入した。全スペクトルはリフレクトロン(5keV
イオン源、20keV後加速)と窒素レーザー(337nm)を取り付けたFi
nnigan MAT Vision 2000(Finnigan MAT,
Bremen,ドイツ)を使用して陽イオンモードで測定した。Pfu DNA
リガーゼの分析では、溶液0.5μlを試料ホルダーでマトリックス溶液1μl
と混合し、上述のように調製した。未精製LCRの分析では、LCR1μlをマ
トリックス溶液1μlと混合した。
結果
大腸菌lacI遺伝子を単純なモデルシステムとして使用し、リガーゼ連鎖反
応で生成される産物の検出法としてのMALDI−TOF−MSの適合性を調べ
た。この鋳型システムはpBluescript KIIファージミドに大腸菌
lacI野生型遺伝子を含み、同一ファージミドにbp191に単一点突然変異
(C→T転位、配列番号131)をもつ大腸菌lacI
遺伝子を含む。4種の異なるオリゴヌクレオチドを使用した処、大腸菌lacI
野生型遺伝子が存在する場合しか連結しなかった(図26)。
Pfu DNAリガーゼを使用し、各陽性反応で少なくとも1pmolの連結
産物が得られるようにLCR条件を至適化した。連結反応をSMARTシステム
でポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)とHPLCにより分析した(図
27、28及び29)。図27は野生型鋳型による陽性LCR(レーン1)、突
然変異鋳型による陰性LCR(1及び2)及び酵素とオリゴヌクレオチドを含み
、鋳型の代わりにサケ精子DNAを含む陰性対照のPAGEを示す。ゲル電気泳
動は、野生型鋳型を用いた反応でしか連結産物(50bp)が生成されず、点突
然変異をもつ鋳型やサケ精子DNAによる対照反応では増幅産物が生じないこと
を明示している。図28ではHPLCを使用して、同一条件下で野生型鋳型を用
いて実施した2種のLCRのプールを分析した。連結産物ははっきりと現れた。
図29は突然変異鋳型による2種の陰性LCRプールを分析したHPLCの結果
を示す。図27に示すデータと結果をまとめると、このシステムが野生型鋳型を
用いた場合しか有意量の連結産物
を生成しないことは明白であるが、このことはこれらのクロマトグラムからも裏
付けられる。
適当な対照試験を実施し、LCR実験で用いる種々の化合物の保持時間を測定
した。試験した化合物は4種のオリゴヌクレオチド(A、B、C及びD)、(連
結産物と同一配列をもつ)合成ds50量体、野生型鋳型DNA、音波処理サケ
精子DNA及びPfu DNAリガーゼである。
どのような精製操作を実施すればLCR反応をMALDI−TOF−MSによ
り分析できるかを試験するために、未精製LCRのアリコート(図30A)と酵
素ストック溶液のアリコート(図30B)をMALDI−TOF−MSで分析し
た。その結果、未精製LCRの全シグナルはPfu DNAリガーゼのMALD
I−TOF−MS分析で得られたシグナルに対応するので、適切な試料調製は絶
対必要であることが判明した。オリゴAと連結産物の計算質量値は夫々7521
Da及び15450Daである。図30のデータは、酵素溶液が連結遊離体の予
想シグナルに反する質量シグナルを生じ、従って明確なシグナル帰属が不可能で
あることを示す。更に、スペクトルは分析物/マトリックス混合物の結晶化挙動
に悪影響を与える酵素保存用
緩衝液の一部である洗剤Tween20のシグナルも示した。
1精製フォーマットではストレプトアビジンをコートした磁性ビーズを使用し
た。最近の論文に示したように、ビーズに共有結合した相補的DNAフラグメン
トにワトソン−クリック塩基対合により固定化したDNAの直接脱着は可能であ
り、非ビオチン化鎖のみが脱着される(Tangら(1995)Nucleic
Acids Res.23:3126−3131)。固定化dsDNAを使用
するこのアプローチは、非ビオチン化鎖のみが脱着されるように確保できる。非
固定化dsDNAを分析すると、両方の鎖が脱着され(Tangら(1994)
Rapid Comm.Mass Spectrom.7183−186)、2
本の1本鎖の質量鎖に依存して広いシグナルになる。従って、このシステムをL
CRに使用すると、オリゴCの5’末端をビオチン化し、ストレプトアビジンを
コートしたビーズに固定化するならば、計算質量7521Daの非連結オリゴヌ
クレオチドAとオリゴA及びオリゴBからの連結産物(計算質量:15450D
a)のみが脱着される。この結果、LCR遊離体及び産物を簡単且つ明確に同定
できる。
図31Aは(上述のように実施した)LCR産物をストレプ
トアビジンDynaBeadsで精製し、ビーズから直接脱着した2種のプール
から得たMALDI−TOF質量スペクトルを示し、使用した精製法が(図30
に比較して)効率が高いことを示す。未連結オリゴAに相当するシグナルと、連
結産物に対応するシグナルを検出することができた。質量の計算値と実測値の一
致は特筆に値し、連結産物の明確なピーク帰属と正確な検出が可能になる。他方
、突然変異鋳型を用いた2種のLCRプールから得たスペクトルに連結産物は検
出されず、オリゴAしか検出できなかった(図31B)。特定鋳型の不在下で連
結反応を実施すると、LCR条件の特異性及び選択性とMALDI−TOF検出
の感度が更に立証される。図32は陰性対照としてサケ精子DNAのみを使用し
た2種のLCRプールから得たスペクトルを示し、予想通り、オリゴAしか検出
できなかった。
図31Aに示す結果は図27のゲルのレーン1に相関でき、図31Bに示すス
ペクトルは図27のレーン2と等価であり、図32のスペクトルも図27のレー
ン3に対応する。これらの結果は図28及び29に示すHPLC分析に一致する
。ゲル電気泳動(図27)とHPLC(図28及び29)は連結産物が
連結遊離体よりも過剰又はほぼ等量であることを示すが、MALDI−TOFマ
ススペクトロメトリーによる分析は連結産物のほうが弱いシグナルを生じる(図
31A)。
連結産物シグナルの強度が低いのは、24量体と50量体の脱着/イオン化効
率が異なるためであると思われる。50塩基対のデュプレクスのTm値は24塩
基対に比較してかなり高いので、24量体のほうがよく脱着できる。シグナル強
度の低下はオリゴヌクレオチドが長い場合のほうが断片化度が高くなるためであ
るとも思われる。
ストレプトアビジンDynaBeadsによる精製に関係なく、図32は20
00Da付近の領域に微量のTween20を示す。粘性コンシステンシーをも
つ物質は結晶化プロセスに悪影響を与えるので、マススペクトロメトリーに有害
であると思われる。従って、酵素保存用緩衝液の一部であるTween20とグ
リセロールはマススペクトロメーター分析前に完全に除去すべきである。このた
め、DynaBeads処理前に付加的限外濾過段階を含む改善精製法を検討し
た。この試料精製の結果、MALDI−TOFマススペクトロメトリー性能は確
かに著しく改善された。
図33は夫々陽性(図33A)及び陰性(図33B)の2種のLCRプールか
ら得たスペクトルを示す。陽性反応はオリゴC及びDの連結産物に等価の配列を
もつ化学的に合成した1本鎖50量体を鋳型として用いて実施した。オリゴCは
5’ビオチン化した。従って、鋳型は検出されなかった。予想通り、固定化して
連結したオリゴC及びDからはオリゴA及びBの連結産物(計算質量15450
Da)しか脱着できなった。この新たに生成されたDNAフラグメントは図33
Aに15448Daの質量シグナルにより示される。図32Aに比較して、この
スペクトルはこの試料調製法が改善された分解能と強度をもつシグナルを生じる
ことを明白に示している。
実施例7
プライマーの固相オリゴ塩基伸長による突然変異検出及びMALDI−TOFマ
ススペクトロメトリーによる分析(Primer Oligo Base Ex
tension=Probe)
要約
固相オリゴ塩基伸長法は増幅DNAで点突然変異と小欠失と小挿入を検出する
ものである。この方法は、DNAポリメラーゼと3種のdNTPの混合物と欠損
しているジデオキシヌクレ
オチドを使用してアフィニティ捕獲増幅鋳型上の可変ヌクレオチド位置に隣接し
てアニールする検出プライマーの伸長に基づく。得られた産物を標識せずにMA
LDI−TOFマススペクトロメトリーにより評価及び分解する。以下の実験の
目的は、突然変異及び対立遺伝子を迅速且つ確実に決定することであった。
実験の説明
本方法は単一検出プライマーを使用した後、オリゴヌクレオチド伸長段階を実
施し、MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより容易に分解可能な長さ
で突然変異又は野生型対立遺伝子に特異的な数塩基の長さが異なる産物を得た。
CFTR遺伝子のエキソン10を例にとってこの方法を説明する。この遺伝子の
エキソン10は、ホモ接合状態で嚢胞性線維症の臨床表現型を誘導する突然変異
(ΔF508)をもち、これは多数の民族群で最も一般的な突然変異である。
材料と方法
ゲノムDNA
ゲノムDNAは健康個体、ΔF508突然変異のホモ接合又はヘテロ接合個体
及び1506S突然変異のヘテロ接合個体か
ら得た。野生型及び突然変異対立遺伝子は標準Sangerシーケンシングによ
り確認した。
CFTR遺伝子のエキソン10のPCR増幅
PCR増幅用プライマーはCFE×10−F(イントロン9に位置し、ビオチ
ン化した5’−GCAAGTGAATCCTGAGCGTG−3’(配列番号1
3))及びCFE×10−R(イントロン10に位置する5’−GTGTGAA
GGGCGTG−3’(配列番号14))とした。プライマーは8pmolの濃
度で使用した。Taq−ポリメラーゼと10×緩衝液はBoehringer−
Mannheimから購入し、dTNPはPharmaciaから購入した。総
反応容量は50μlとした。PCRのサイクリング条件は5分間95℃から開始
後、1分間94℃、45秒間53℃及び30秒間72℃を40サイクル繰り返し
、5分間72℃の最終伸長時間とした。
増幅産物の精製
増幅産物はQiagenのPCR精製キット(No.28106)を製造業者
の指示に従って使用することにより精製した。TE緩衝液(10mM Tris
,1mM EDTA,pH7.5)50μlで精製物をカラムから溶離した。
2本鎖DNAのアフィニティ捕獲及び変性
ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタープレート(No.1645
684 Boehringer−Mannheim又はNo.95029262
Labsystems)の1個のウェルに精製増幅産物の10μLアリコート
を移した。次いでインキュベーション用緩衝液(80mMリン酸ナトリウム,4
00mM NaCl,0.4%Tween20,pH7.5)10μlと水30
μlを加えた。室温で1時間インキュベーション後、ウェルを洗浄用緩衝液(4
0mM Tris,1mM EDTA,50mM NaCl,0.1%Twee
n20,pH8.8)200μlで3回洗浄した。2本鎖DNAを変性するため
に、ウェルを50mM NaOH溶液100μlで3分間処理し、ウェルを洗浄
用緩衝液200μlで3回洗浄した。
オリゴ塩基伸長反応
アニーリング用緩衝液(20mM Tris,10mM KCl,10mM(
NH4)2SO4,2mM MgSO2,1%Triton X−100,pH8)
50μlで50℃で10分間25pmol検出プライマー(CF508:5’−
CTATATTCATCATAGGAAACACCA−3’(配列番
号15))のアニーリングを実施した。ウェルを洗浄用緩衝液200μlで3回
、TE緩衝液200μlで1回洗浄した。伸長反応はUSB製品DNAシーケン
シングキット(No.70770)の一部のコンポーネントとPharmaci
a製品dNTP又はddNTPを使用して実施した。総反応容量は45μlとし
、水21μl、Sequenase緩衝液6μl、10mM DTT溶液3μl
、0.5mMの3種のdNTP 4.5μl、2mM欠損ddNTP 4.5μ
l、ダリセロール酵素希釈用緩衝液5.5μl、Sequenase2.00.
25μl及びピロホスファターゼ0.25とした。反応溶液を氷上にピペットで
とった後、15分間室温及び5分間37℃でインキュベートした。その後、ウェ
ルを洗浄用緩衝液200μlで3回、70mM クエン酸NH4溶液60μlで
1回洗浄した。
伸長プライマーの変性及び沈殿
伸長したプライマーを10%DMSO(ジメチルスルホキシド)水溶液50μ
lで80℃で10分間変性させた。沈殿のために、酢酸NH4(pH6.5)1
0μl、グリコーゲン(10mg/ml水,Sigma No.G1765)0
.5μl及
び無水エタノール100μlを上清に加え、1時間室温でインキュベートした。
13,000gで10分間遠心分離後、ペレットを70%エタノールで洗浄し、
18Mohm/cmH2O水1μlに再懸濁した。
試料調製及びMALDI−TOFマススペクトロメトリーによる分析
試料調製はマトリックス溶液(1:1H2O:CH3CN中0.7M 3−ヒド
ロキシピコリン酸、0.07M二塩基性クエン酸アンモニウム)と再懸濁DNA
/グリコーゲンペレット各0.3μlを試料ターゲット上で混合し、風乾するこ
とにより実施した。20個までの試料をプローブターゲットディスクにスポット
して未改造Thermo Bioanalysis(旧Finnigan)Vi
sions 2000 MALDI−TOFのソース領域に導入し、夫々ターゲ
ット及び変換ダイノードで5及び20kVのリフレクトロンモードで運転した。
理論平均分子量(Mr(calc))は原子組成から計算し、報告実測Mr(Mr
(exp))値は外部較正を使用して決定した1プロトン化形態の値である。
結果
本実験の目的は、厳密なストリンジェンシーから独立した迅速で確実な突然変
異検出方法を開発し、遺伝病の診断で高品質と高スループットを実現することで
あった。そこで、特殊なDNAシーケンシング(1個の突然変異検出プライマー
のオリゴ塩基伸長)をマトリックス介助レーザーデソープションイオン化(MA
LDI)マススペクトロメトリー(MS)によるミニシーケンシング産物の評価
と併用した。可能な質量測定システムとして飛行時間(TOF)リフレクトロン
構成を選択した。CFTR遺伝子のエキソン10の突然変異はコーカソイド集団
で最も一般的な単一遺伝子疾患である嚢胞性線維症の臨床表現型を誘導すること
があるので、この仮説を証明するために、CFTR遺伝子のエキソン10で試験
を実施した。
図34に示す図は、CFTR遺伝子のエキソン10(配列番号132)の野生
型及び種々の突然変異の理論計算分子量をもつ短い予想シーケンシング産物を示
す。短いシーケンシング産物はddTTP(図34A、配列番号133〜135
)又はddCTP(図34B、配列番号136〜139)を用いて初期DNA鎖
に最終的配列関連停止配列を導入することにより生成
した。健康、突然変異ヘテロ接合及び突然変異ホモ接合個体のMALDI−TO
F−MSスペクトルを図35に示す。全試料はマススペクトロメトリー分析との
間に不一致を示さないことが標準Sangerシーケンシングにより確認された
。種々の分子量の実測精度は予想範囲−21.8及び+87.1ダルトン(Da
)の範囲内であった。従って、各場合に結果を確実に解読することができる。こ
の方法はΔ1507突然変異を明確に検出できるという利点もある。ddTTP
反応では野生型対立遺伝子が検出され、ddCTP反応では3塩基対欠失が検出
される。
本方法はDNAの単一点突然変異又は微小損傷の検出に非常に適している。突
然変異検出プライマーを慎重に選択すると、多重化が可能になり、同等の対立遺
伝子特異的手順で必要な厳密なストリンジェンシーを必要とすることなく遺伝診
断で高スループットと高品質が得られる。遺伝情報の固有性により、突然変異検
出プライマーのオリゴ塩基伸長は本明細書にも記載するように、可変数タンデム
リピート(VNTR)又は他の単一ヌクレオチド多型性(例えばアポリポタンパ
ク質E遺伝子)等のゲノムで各疾患遺伝子又は多型性領域で適用可能である。
実施例8
マトリックス介助レーザーデソープション/イオン化飛行時間(MALDI−T
OF)マススペクトロメトリーによる7−デアザプリン部分を含むポリメラーゼ
連鎖反応産物の検出
材料と方法
核酸増幅
以下のオリゴヌクレオチドプライマーは、標準ホスホロアミダイト化学(Si
nha,N.D.ら(1983)Tetrahedron Let.Vol.2
4,Pp.5843−5846;Sinha,N.D.ら(1984)Nucl
eic Acids Res.Vol.12,Pp.4539−4557)に従
い、Milligen 7500 DNA Synthesizer(Mill
ipore,Bedford,MA,米国)で200nmol規模で合成するか
、又はMWG−Biotech(Ebersberg,ドイツ、プライマー3)
及びBiometra(Goettingen,ドイツ、プライマー6〜7)か
ら購入した。
99量体(配列番号141)及び200量体DNA鎖(配列番号140、修飾
及び未修飾)とリボ及び7−デアザ修飾100量体は、10mmol/L KC
l、10mmol/L(NH4)2SO4、20mmol/L Tris HCl
(pH8.8)、2mmol/L MgSO4、(exo(−)Pseudoc
occus furiosus(Pfu)−緩衝液)、Pharmacia,F
reiburg,ドイツ)、0.2mmol/L各NTP(Pharmacia
,Freiburg,ドイツ)、1μmol/L各プライマー及びexo(−)
Pfu DNAポリメラーゼ(Stratagene,Heidelberg,
ドイツ)1単位を含む100μLの反応容量中でpRFcl DNA(10ng
、ハンブルグ大学S.Feyerabend氏から寄贈)から増幅した。99量
体にはプライマー1及び2、200量体にはプライマー1及び3、100量
体にはプライマー6及び7を使用した。7−デアザプリン修飾核酸を得るために
は、PCR増幅中にdATPとdGTPを7−デアザ−dATPと7−デアザ−
dGTPで置換した。反応は、サーマルサイクラー(OmniGene,MWG
−Biotech,Ebersberg,ドイツ)で95℃で1分間変性、51
℃で1分間アニーリング及び72℃で1分間伸長からなるサイクルを使用して実
施した。全PCRで反応サイクル数は30とした。最終サイクル後に更に10分
間72℃で反応物を伸長させた。
103量体DNA鎖(修飾及び未修飾、配列番号245)は、プライマー4及
び5を使用して100μL反応容量中で他の濃度は変えずにM13mp18RF
I DNA(100ng,Pharmacia,Freiburg,ドイツ)か
ら増幅した。反応は95℃で1分間変性、40℃で1分間アニーリング及び72
℃で1分間伸長からなるサイクルを使用して実施した。夫々未修飾103量体で
は30サイクル、修飾103量体では40サイクル後に試料を更に10分間72
℃でインキュベートした。
5’−[32−P]標識PCRプライマーの合成
プライマー1及び4はT4−ポリヌクレオチドキナーゼ(Epicentre
Technologies)と(γ−32P)−ATP(BLU/NGG/50
2A,Dupont,ドイツ)を製造業者のプロトコールに従って使用して5’
−[32−P]標識した。反応はPCRのプライマー1及び4の10%を標識プラ
イマーに置換し、他の反応条件は変えずに実施した。増幅したDNAを10%ポ
リアクリルアミドゲルでゲル電気泳動により分雛した。適当なバンドを切り出し
、Packard TRI−CARB 460C液体シンチレーションシステム
(Packard,CT,米国)で計数した。
リボ修飾PCR産物からのプライマー分離
Ultrafree−MCフィルターユニット(30,000NMWL)を使
用して増幅DNAを精製した後、0.2mol/L NaOH 100μlに再
溶解し、95℃に25分間加熱した。次に溶液をHCl(1mol/L)で酸性
化し、下記に記載するようにUltrafree−MCフィルターユニット(1
0,000NMWL)を使用してMALDI−TOF分析のために更に精製した
。
増幅産物の精製
全試料はUltrafree−MCフィルターユニット30000NMWL(
Millipore,Eschborn,ドイツ)を製造業者の指示に従って使
用して精製及び濃縮した。凍結乾燥後、増幅産物を超純水5μL(200量体は
3μL)に再溶解した。この分析物溶液をMALDI−TOF測定に直接使用し
た。
MALDI−TOF MS
分析物溶液0.5μLとマトリックス溶液(アセトニトリル/水(1:1,v
/v)中0.7mol/L 3−HPAと0.07mol/Lクエン酸アンモニ
ウム)0.5μLのアリコートを平坦な金属試料支持体上で混合した。周囲温度
で乾燥後、試料をマススペクトロメーターに導入して分析した。使用したMAL
DI−TOFマススペクトロメーターはFinnigan MAT Visio
n 2000(Finnigan MAT,Bremen,ドイツ)とした。ス
ペクトルは5keVイオン源及び20keV後加速で陽イオンリフレクターモー
ドで記録した。装置は窒素レーザー(337nm波長)を取り付けた。システム
の真空度はアナライザー領域で3〜4・10-8
hPaとし、ソース領域で1〜4・10-7hPaとした。修飾及び未修飾DNA
試料のスペクトルは同一相対レーザー出力で得、合成オリゴデオキシヌクレオチ
ド(7〜50量体)の混合物で外部較正を行った。
結果と考察
7−デアザプリンヌクレオチドを含む核酸のPCRによる酵素合成
短い増幅産物の迅速な無ゲル分析にMALDI−TOF MSを利用できるこ
とを立証すると共に、MALDI−TOF条件下における核酸の7−デアザプリ
ン修飾の効果を検討するために、2種の異なるプライマー−鋳型系を使用してD
NAフラグメントを合成した。図36及び37に配列を示す。103量体増幅産
物の2本の1本鎖はほぼ等しい質量であったが(Δm=8u)、99量体の2本
の1本鎖は526uの差があった。化学DNA合成の7−デアサプリンヌクレオ
チド構成ブロックが通常のものよりも約160倍も高価であることと(Prod
uct Information,Glen Research Corpor
ation,Sterling,VA)、標準β−シアノホスホロアミダイト化
学におけるその利用は自明
ではない(Product Information,Glen Resear
ch Corporation,Sterling,VA;Schneider
ら(1995)Nucl.Acids Res.23:1570)ことを考慮す
ると、7−デアザプリンで修飾したプライマーのコストは非常に高いと思われる
。従って、本方法の適用性と範囲を拡大するために、通常入手可能な未修飾オリ
ゴヌクレオチドプライマーを使用して全PCRを実施した。ポリメラーゼ連鎖反
応でdATP及びdGTPをc7−dATP及びc7−dGTPに置き換えると、
99量体及び103量体では約80%、200量体では約90%の7−デアザプ
リン修飾ヌクレオチドを含む産物が得られた。表IIは全PCR産物の塩基組成
を示す。
1「s」及び「a」は2本鎖増幅産物の「センス」及び「アンチセンス」鎖を表
す。2
プリンヌクレオチドの合計量に対する7−デアザプリン修飾ヌクレオチドの百
分率として相対修飾率を示す。
80〜90%の7−デアザプリン修飾率が正確なマススペクトロメトリー検出
に十分であるか否かは判断できなかった。そこで、酵素増幅段階中に全プリンヌ
クレオチドを置換できるか否かを判断することが重要であった。Taq DNA
ポリメラーゼを使用する場合にPCRでdATPをc7−dATPに完全に置き
換えられないことは報告されていた(Seela,F.とA.Roelling
(1992)Nucleic Acids Res.,20,55−61)ので
、これは自明ではなかった。幸運なことに、exo(−)Pfu DNAポリメ
ラーゼは未修飾プリンヌクレオシド三リン酸の不在下で実際にc7−dATP及
びc7−dGTPを受容できることが判明した。取り込みは低率であったので、
増幅産物の収率は低かった(図38)。
これらの結果を確認するために、[32P]標識プライマーによる増幅を繰り返
した。オートラジオグラム(図39)は修飾PCR産物のほうが収率が低いこと
を明示している。ゲルからバンドを切り出し、計数した。全増幅産物で修飾核酸
の収率は対応する未修飾増幅産物に対して約50%であった。更に実験を続けた
結果、exo(−)Deep Vent及びVent
DNAポリメラーセもPCR中にc7−dATPとc7−dGTPを取り込めるこ
とが判明した。しかし、総性能は、増幅中の副生物が最も少なかったexo(−
)Pfu DNAが最良であることが判明した。全3種のポリメラーゼを使用し
た処、等電子体でなくc7−dATPとc7−dGTPを使用したこれらのPCR
は副反応が少なく、よりクリーンなPCR産物を生じることが判明した。増幅副
生物が生じにくいことは、PCR中に合成される長い鋳型によるプライマーミス
マッチの低下により説明できる。7−デアザプリンを含むDNAデュプレクスの
融点が低いことは既に記載されている(Mizusawa,W.ら,(1986
)Nucleic Acids Res.,14,1319−1324)。上記
3種のポリメラーゼ(exo(−)Deep Vent DNAポリメラーゼ、
5Vent DNAポリメラーゼ及びexo(−)(Pfu)DNAポリメラー
ゼ)以外に、大胞菌DNAポリメラーゼ、Sequenase、Taq DNA
ポリメラーゼ及びU AmpliTaq DNAポリメラーゼの大きいKlen
owフラグメント等の他のポリメラーゼも利用できると予想される。更に、RN
Aが鋳型である場合には、SP6又はT7 RNAポリメラーゼ等のRNAポリ
メラーゼを使用しなければならない。
修飾及び未修飾増幅産物のMALDI−TOFマススペクトロメトリー
99量体、103量体及び200量体増幅産物をMALDI−TOF MSに
より分析した。過去の実験によると、脱プリン度は分析物の脱着及びイオン化に
使用するレーザーエネルギーに依存することが知られていた。脱プリンによる断
片化に及ぼす7−デアザプリン修飾の影響は検討されていないので、全スペクト
ルを同一相対レーザーエネルギーで測定した。
図40a及び40bは修飾及び未修飾103量体核酸の質量スペクトルを示す
。修飾103量体の場合には断片化が広い(M+H)+シグナルを生じている。
ピークの最大値は低質量にシフトしており、帰属質量は(M+H)+シグナル自
体でなく(M+H)+シグナルと断片化イオンのシグナルの平均値に相当する。
修飾103量体はオリゴヌクレオシドプライマーからのA及びGをまだ約20%
含んでいるが、シグナルが著しく狭く対称になっていることから断片化が少ない
ことを示している。特に脱プリンによる低質量側にテールをもつピークは実質的
に減っている。従って、予想質量よりはまだ低いものの、測定質量と計算質量の
差は非常に小さくなっている。未修飾試料では、
計算質量との差が97u又は0.3%で31670に(M+H)+シグナルが観
察された。他方、修飾試料の場合にはこの質量差は10u又は0.03%に減っ
た(実測値31713u、計算値31723u)。これらの観測は2本の1本鎖
の(M+H)+シグナルの質量分解能の著しい増加により裏付けられる(Δm=
半最大値の全幅fwhmとしたときにn/Δm=67、未修飾試料では18)。
2本の1本鎖の質量差が小さい(8u)ため、各シグナルは分解しなかった。
99塩基対DNAフラグメントの結果によると、7−デアザプリンを含むDN
Aの質量分解能増加の効果は一層明白になる。プリンとピリミジンの分布が不均
一であるために増幅産物の2本の鎖の質量差が526uと非常に大きいにも拘わ
らず、未修飾試料の2本の1本鎖は分解しなかった(図41a)。これに対して
、修飾DNAは2本の1本鎖に異なるピークを示し(図41b)、分子量を測定
するためにこのアプローチがゲル電気泳動法よりも著しく優れていることを立証
している。基線分解は得られなかったが、各質量を0.1%の精度即ちL鎖では
Δm=27u(計算質量=30224u)、H鎖ではΔm=14u(計算質量=
30750u)で帰属させることができた。ま
た、7−デアザプリンを含む試料では半最大値の全幅が実質的に減少することが
判明した。
99量体と103量体の場合には、7−デアザプリンを含む核酸はまだ約20
%の未修飾プリンヌクレオチドを含んでいるという事実にも拘わらず、高い感度
を与えると思われる。同等の(M+H)+シグナルの強度で同等のシグナル対ノ
イズ比を得るためには、未修飾99量体は20回のレーザー照射が必要であるが
、修飾99量体では12回であり、未修飾試料の103量体は12回必要である
が、7−デアザプリンヌクレオシドを含む増幅産物の103の量体では3回であ
る。
修飾及び未修飾200量体アンプリコンのスペクトルを比較すると、この場合
も7−デアザプリンを含む試料では質量分解能の改善とシグナル強度の強化が判
明した(図42A及び42B)。修飾試料のスペクトルには1本鎖のシグナルが
優勢であるが、未修飾試料では1本鎖のDNAデュプレクスと2量体が最強のシ
グナルを与えた。
PCRで修飾プライマーを使用するか又は部分的に修飾した増幅産物から未修
飾プライマーを分離することにより核酸の完全な7−デアザプリン修飾を実施す
ることができる。上述のよ
うに修飾プライマーは不都合を伴うので、リボ修飾をもつプライマーを使用して
100量体を合成した。本発明者らの研究所で先に開発した方法に従ってプライ
マーをNaOHで加水分解した(Koester,H.ら,Z Physiol
.Chem.,359,1570−1589)。図43A及び43Bはプライマ
ー開裂前後の増幅産物のスペクトルを示す。図43bは加水分解に成功したこと
を示す。加水分解増幅産物と2種の遊離プライマーを残留未開裂100量体から
の小さいシグナルと共に検出することができた。プライマーに由来する未修飾プ
リンの割合は増幅配列の長さが短くなるにつれて増加するので、この方法は非常
に短いPCR産物のMALDI−TOF分析に特に有用である。
7−デアザプリンで修飾した核酸の優れた性質は、より効果的な脱着及び/又
はイオン化、イオン安定性の増加及び/又は2本鎖プリン修飾核酸の変性エネル
ギーの低下により説明することができる。メチル基のN−7を交換する結果、水
素結合の受容体が1個減り、核酸が非ワトソン−クリック塩基対合による二次構
造を形成する能力が変化する(Seela,F.とA.Kehne(1987)
Biochemistry,26,
2232−2238)。これに加え、7−デアザプリンの芳香族系は電子密度が
低く、ワトソン−クリック対合を弱めるので、2本鎖の融点が低下する(Miz
usawa,S.ら,(1986)Nucleic Acids Res.,1
4,1319−1324)。この効果により、MALDIプロセスでデュプレク
スの変性に必要なエネルギーが低減すると思われる。これらの側面と、N−7窒
素上に正電荷をもつと予想される部位の損失により、7−デアザプリン修飾核酸
は低極性になり、脱着効果が増すと思われる。
プロトン受容体としてのN−7の不在と7−デアザプリンヌクレオシドにおけ
るC−N結合の分極の低下により、溶液中の加水分解に認められているメカニズ
ムによる脱プリンが避けられる。溶液及び気相中の反応の直接相関は問題がある
が、MALDIプロセスでは修飾核酸の脱プリンによる断片化が少ないと予想す
ることができる。脱プリンは電荷の損失により電荷種の総効率を低下させたり、
あるいは電荷をもつ断片化産物を生じ、非断片化分子イオンシグナルの強度を低
下させると考えられる。
7−デアザプリンを含む試料の断片化の低下による感度の増
加と低質量側の(M+H)+シグナルのピークテーリングの低下は、MALDI
−TOFプロセスにおける脱プロセスのメカニズムに実際にN−7原子が不可欠
であることを示している。結論として、7−デアザプリンを含む核酸はMALD
I−TOF条件下で顕著なイオン安定性と感度の増加を示し、従って、高い質量
精度と質量分解能を提供する。
実施例9
固相シーケンシング及びマススペクトロメーター検出
材料と方法
オリゴヌクレオチドはOperon Technologies(Alame
da,CA)から未精製形態で購入した。シーケンシング反応はSequena
se Version 2.0(Amersham,Arlingon Hei
ghts,Illinois)用シーケンシングキットからの試薬を使用して固
相で実施した。
39量体ターゲットのシーケンシング
シーケンシング複合体:
固相Dシーケンシングを実施するために、鋳型鎖DNA11683を末端デオ
キシヌクレオチジルトランスフェラーゼにより3’−ビオチン化した。DNA1
1683 60pmol、ビオチン14−dATP(GIBCO BRL,Gr
and Island,NY)1.3nmol、末端トランスフェラーゼ(Am
ersham,Arlington Heights,Illinois)30
単位及び1×反応緩衝液(酵素を含む)を含む反応混合物30μlを37℃で1
時間インキュベートした。末端トランスフェラーゼを70℃で10分間熱不活化
して反応を停止した。得られた生成物をTE−10スピンカラム(Clonte
ch)に通して脱塩した。DNA11683の3’末端にビオチン14−dAT
P2分子以上を加えることができた。ビオチン化DNA11683を1×結合及
び洗浄用緩衝液30μl中でDynalストレプトアビジンビーズ0.3mgと
共に周囲温度で30分間インキュベートした。ビーズをTEで2回洗浄し、TE
30μlに再溶解し、(ビーズ0.1mgを含む)10μlアリコートをシーケ
ンシング反応に使用した。
Sequenaseキットからの5×Sequenase緩衝液(200mM
Tris−HCl,pH7.5,100mM MgCl2及び250mM N
aCl)2μlと対応するプライマーPNA16/DNA 5pmolを含む1
0μl容量に前段階からのビーズ0.1mgを再懸濁した。アニーリング混合物
を70℃まで加熱し、20〜30分間かけて室温までゆっくり放冷させた。次に
、0.1Mジチオトレイトール溶液1μl、Mn緩衝液(0.15Mイソクエン
酸ナトリウムと0.1M MgCl2)1μl及び希釈Sequenase2μ
l(3.25単位)を加えた。反応混合物を各3μlの4個のアリコートに分け
、(50mM NaCl中32μM c7dATP、32μM dCTP、32
μM c7dGTP、32μM dTTP及び4種のddTNPのうちの1種3
.2μMからなる適当なターミネーション混合物各3μlを含む)ターミネーシ
ョン混合物と混合した。反応混合物を37℃で2分間インキュベートした。伸長
の完了後、ビーズを沈殿させ、上清を除去した。ビーズを2回洗浄し、TEに再
懸濁し、4℃に維持した。
78量体ターゲットのシーケンシング
シーケンシング複合体:
ターゲットTNR.PLASM2をビオチン化し、前項(39量体ターゲット
のシーケンシング)に記載したと同様の手順を使用してシーケンシングした。
部分的デュプレクスプローブによる15量体ターゲットのシーケンシング
シーケンシング複合体:
1M NaCl 30μlとTE(1×結合及び洗浄用緩衝液)中で60pm
olのCM1B3Bを0.3磁性ビーズと共に室温で30分間インキュベートす
ることにより、ストレプトアビジンをコートしたDynabeads M280
(Dynal,ノルウェー)にCM1B3Bを固定化した。ビーズをTEで2回
洗浄し、TE30μlに再溶解し、(夫々ビーズ0.1
又は0.2mgを含む)10又は20μlアリコートをシーケンシング反応に使
用した。
デュプレクスは、Sequenaseキットからの5×Sequenase緩
衝液(200mM Tris−HCl,pH7.5,100mM MgCl2及
び250mM NaCl)2μlを含む9μl容量中で前段階からのビーズの対
応するアリコートを10pmolのDF11a5F(又はビーズ0.2mgを2
0pmolのDF11a5F)とアニールすることにより形成した。アニーリン
グ混合物を65℃まで加熱し、20〜30分間かけて37℃までゆっくり放冷さ
せた。次に、デュプレクスプライマーを1μl容量中10pmolのTS10(
ビーズ0.2mgには20pmolのTS10)と混合し、得られた混合物を3
7℃で5分間、室温で5〜10分間更にインキュベートした。次に、0.1Mジ
チオトレイトール溶液1μl、Mn緩衝液(0.15Mイソクエン酸ナトリウム
と0.1M MgCl2)1μl及び希釈Sequenase2μl(3.25
単位)を加えた。反応混合物を各3μlの4個のアリコートに分け、(50mM
NaCl中16μM dATP、16μM dCTP、16μM dGTP、
16μM dTTP及び4種
のddNTPのうちの1種1.6μMからなる適当なターミネーション混合物各
4μlを含む)ターミネーション混合物と混合した。反応混合物を室温で5分間
と、37℃で5分間インキュベートした。伸長の完了後、ビーズを沈殿させ、上
清を除去した。ビーズをTE20μlに再懸濁し、4℃に維持した。各チューブ
からの(20μlのうちの)2μlのアリコートを分取し、ホルムアミド8μl
と混合し、得られた試料を90〜95℃で5分間変性させ、7M尿素と0.6×
TBEを含む10%ポリアクリルアミドゲルを使用して(合計10μlのうちの
)2μlをALF DNAシーケンサー(Pharmacia,Piscata
way,NJ)に加えた。残りのアリコートはMALDT−TOF MS分析に
使用した。
MALDI試料調製及び装置
MALDI分析に先立ち、シーケンシングラダーを加えた磁性ビーズを50m
Mクエン酸アンモニウムで2回洗浄し、純水0.5μlに再懸濁した。次に、懸
濁液をマススペクトロメーターの試料ターゲットに加え、飽和マトリックス溶液
(50%アセトニトリル中3−ヒドロキシピコリン酸(HPA):クエン酸アン
モニウム=10:1モル比)0.5μlを加えた。マ
ススペクトロメーター分析前に混合物を乾燥させた。
リフレクトロンTOFMSマススペクトロメーター(Vision 2000
,Finnigan MAT,Bremen,ドイツ)を分析に使用した。イオ
ン源に5kVし、後加速に20kVを使用した。全スペクトルは陽イオンモード
で測定し、窒素レーザーを使用した。一般に、各スペクトルは100回以上の照
射を平均し、標準25点平滑化を適用した。
結果と考察
慣用固相シーケンシング
慣用シーケンシング法では、プライマーを鋳型に直接アニールした後、San
gerジデオキシシーケンシングで伸長及び停止する。通常はビオチン化プライ
マーを使用し、ストレプトアビジンをコートした磁性ビーズによりシーケンシン
グラダーを捕獲する。洗浄後、EDTAとホルムアミドを使用して産物をビーズ
から溶離する。従来の知見によると、デュプレクスのアニール鎖しか脱着されず
、固定化鎖はビーズに結合したままである。従って、鋳型を固定化し、プライマ
ーをアニールすると有利である。シーケンシング反応及び洗浄後、鋳型を固定化
し、シーケンシングラダーをアニールしたビーズをマススペク
トロメーターターゲットに直接加え、マトリックスと混合することができる。M
ALDIでは、アニールしたシーケンシングラダーしか脱着及びイオン化されず
、固定化した鋳型はターゲットに止まる。
まず、末端トランスフェラーゼによりビオチン−14−dATPを加えること
により39量体鋳型(配列番号23)の3’末端をビオチン化した。この酵素に
よりビオチン−14−dATP2分子以上を加えることができた。鋳型はMAL
DI中にビーズに固定化したままであるので、ビオチン−14−dATPの数は
質量スペクトルにしないと思われる。14量体(配列番号24)を固相シーケン
シングに使用し、下記DNAフラグメント3〜27(配列番号142〜166)
を生成した。4種のシーケンシングラダーのMALDI−TOF質量スペクトル
を図44に示し、予想理論値を表IIIに示す。 シーケンシング反応は比較的均一なラダーを生じ、全長配列は容易に決定され
た。全反応に現れる5150付近の1個のピークは同定されない。これは、鋳型
の小部分がループ等のある種の二次構造を形成し、シーケナーゼ伸長を妨げたと
考えることもできる。これらのピークの強度はシーケンシングラダーよりも著し
く低かったので、誤った取り込みはさほど問題にならない。シーケンシング反応
ではN−グリコシド結合を安定化して脱プリンを阻止することが可能な7−デア
ザプリンを使用したが、プライマーは7−デアザプリンで置換されなかったので
まだ僅かな塩基損失が観察された。3’末端にddAをもつ完全長ラダーは11
899.8の見かけの質量でA反応に現れた。より強度な12333のピークが
全4種の反応で現れ、これはSequenase酵素によるヌクレオチド付加に
起因すると思われる。
同一方法を使用してもっと長いDNAフラグメントを配列決定することができ
た。末端トランスフェラーゼを介してビオチン−14−dATPを加えることに
より、CTG反復を含む78量体鋳型(配列番号25)を3’ビオチン化した。
CTG反復のすぐ外側に18量体プライマー(配列番号26)をアニー
ルすると、反復をプライマー伸長直後に配列決定することができた。4種の反応
産物を洗浄し、通常通りMALDI−TOF MSにより分析した。G反応の1
例を図45(配列番号167〜220)に示し、予想シーケンシングラダーを各
ラダー成分の理論質量値と共に表IVに示す。最後の成分(理論値20577.
4)がバックグラウンドから区別できなかった以外は、全シーケンシングピーク
は良好に分解した。2つの隣り合うシーケンシングピーク(62量体と63量体
)も分離し、このシーケンシング分析をもっと長い鋳型に適用できると思われた
。更に、このスペクトルには、Sequenase酵素によるヌクレオチドの付
加が観察された。この付加は鋳型特異的ではなく、全4種の反応で現れたので、
同定し易い。プライマーピークに比較して、シーケンシングピークは長い鋳型の
場合のほうが著しく強度が低かった。 捕獲及びプライミング用デュプレクスDNAプローブを使用するシーケンシング
1本鎖オーバーハングをもつデュプレクスDNAプローブは特定DNA鋳型を
捕獲することができ、固相シーケンシング用プライマーとして利用できることが
立証されている。スキームを図46に示す。デュプレクスプライマーと1本鎖鋳
型のスタッキング相互作用により、5塩基のオーバーハングだけで捕獲に十分で
ある。このフォーマットに基づき、5塩基オーバーハングを残して5’蛍光標識
23量体(5’−GAT GAT CCG ACG CAT CAC AGC
TC−3’)(配列番号29)を3’ビオチン化18量体(5’−GTG ATG
CGT CGG ATC ATC−3’)(配列番号30)にアニールした。
15量体鋳型(5’−TCG GTT CCA AGA GCT−3’)(配列
番号31)をデュプレクスにより
捕獲し、5塩基オーバーハングの伸長によりシーケンシング反応を実施した。反
応産物のMALDI−TOF質量スペクトルを図47A〜Dに示す。全シーケン
シングピークは比較的低強度ではあったが分解した。各反応の最後のピークは、
Sequenase酵素により全長伸長産物に1個のヌクレオチドが非特異的に
付加されたためである。比較のために、同一産物を慣用DNAシーケンサーで試
験し、結果のスタッキングフルオログラムを図48に示す。同図から明らかなよ
うに、質量スペクトルは23量体プライマーよりも著しく低強度のシーケンシン
グピークをもつフルオログラムと同一パターンであった。
実施例10
サーモシーケナーゼサイクルシーケンシング
材料と方法
PCR増幅。ヒト白血球ゲノムDNAをPCR増幅に使用した。β−グロビン
遺伝子の209bpフラグメントを増幅するためのPCRプライマーとしては、
β2順プライマー(5’−CAT TTG CTT CTG ACA CAA
CTG−3’、配列番号32)とβ11逆プライマー(5’−CTT CTC
TGT CTC CAC ATG C−3’、配列番号
33)を使用した。Taq−ポリメラーゼと10×緩衝液はBoehringe
r−Mannheim(ドイツ)から購入し、dNTPはPharmacia(
Freiburg,ドイツ)から購入した。総反応容量は50μlとし、各プラ
イマー8pmol、鋳型として使用したゲノムDNA約200ng及び最終dN
TP濃度200μMとした。PCR条件は、5分間94℃の後、30秒間94℃
、45秒間53℃、30秒間72℃を40サイクル繰り返し、最終伸長時間2分
間72℃とした。生成した増幅産物をQiagen“Qiaquick”PCR
増幅キット(#28106)で情製及び濃縮し(2×)、H2O中に保存した。
サイクルシーケンシング。下記条件でThermo Sequenase(登
録商標)−DNA Polymerase(Amersham LIFE Sc
ience,#E79000Y)を用いてプライマー伸長によりシーケンシング
ラダーを生成した。即ち、総容量25μl中精製濃縮増幅産物6μl(即ち元の
増幅産物12μl)、Thermo Sequenase2.5単位及びThe
rmo Sequenase反応緩衝液2.5mlにHPLC精製プライマー(
Cad5 12量体:
5’−TGC ACC TGA CTC−3’、配列番号34)7pmolを加
えた。最終ヌクレオチド濃度は適当なddNTP(ddATP、ddCTP、d
dGTP又はddTTP;Pharmacia Biotech,#27−20
45−01)30μMと各dNTP(7−デアザ−dATP、DCTP、7−デ
アザ−GTP、dTTP;Pharmacia Biotech)210μMと
した。
サイクリング条件は4分間94℃で変性後、30秒間94℃、30秒間38℃
、30秒間55℃を35サイクル繰り返し、2分間72℃の最終伸長とした。
試料調製及びMALDI−TOF MSによる分析。サイクリングプログラム
の完了後、H2O 25μlを加えて反応容量を50μlまで増量した。アンモニ
ウム飽和DOWEX(Fluka #44485)カチオン交換ビーズ30μl
を分析物50μlと共に2分間室温で震盪することにより脱塩を行った。プロト
ン化形態で購入したDowexビーズは2M NH4OHで前処理してアンモニ
ウム形態に変換後、上清が中性になるまでH2Oで洗浄し、最後に10mMクエ
ン酸アンモニウムに加えて使用した。カチオン交換後、DNAを精製し、3M酢
酸ア
ンモニウム(pH6.5)5μl、グリコーゲン(10mg/ml,Sigma
)0.5μl及び無水エタノール110μlを分析物に加えてエタノール沈殿に
より濃縮し、室温で1時間インキュベートした。20,000×gで12分間遠
心分離後、ペレットを70%エタノールで洗浄し、18Mohm/cm H2O
水1μlに再葱濁した。
MALDI−TOF MS分析のために、再懸濁したDNA 0.35μlを
ステンレス鋼試料ターゲットディスク上でマトリックス溶液(1:1H2O:C
H3CN中0.7M 3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)、0.7Mクエ
ン酸アンモニウム)0.35〜1.3μlと混合し、風乾後、Thermo B
ioanalysis Vision 2000 MALDI−TOFをターゲ
ット及び変換ダイノード夫々5及び20kVのリフレクトロンモードで運転して
スペクトルを測定した。8個のピーク(3000〜18000Da)から生成し
た外部較正を全スペクトルに使用した。
結果
図49は鋳型として生物増幅産物と12量体(5’−TGC ACC TGA
CTC−3'((配列番号34))シーケン
シングプライマーから生成したシーケンシングラダーのMALDI−TOF質量
スペクトルを示す。脱プリンに起因するピークと配列に無関係のピークをアステ
リスクにより示す。MALDI−TOF MS測定はリフレクトロンTOF M
Sで行った。A.)ddATPで停止したシーケンシングラダー;B.)ddC
TPで停止したシーケンシングラダー;C.)ddGTPで停止したシーケンシ
ングラダー;D.)ddTTPで停止したシーケンシングラダー。
図50は図49で生成したシーケンシングラダーと、プライマーから40塩基
までの対応する計算分子量を示す(配列番号221〜260)。計算には、プラ
イマー3581.4Da、7−デアザ−dATP 312.2Da、dTTP
304.2Da、dCTP 289.2Da及び7−デアザ−dGTP 328
.2Daの分子量を使用した。
図51はシーケンシング用鋳型として使用したβ−グロビン遺伝子内の増幅2
09bp増幅産物(配列番号261)の配列を示す。適当なPCRプライマーの
配列と12量体シーケンシングプライマーの位置も示す。この配列はプライマー
から4位後のホモ接合突然変異体に相当する。野生型配列では、このT
はAに置き換えられる。
実施例11
オリゴ塩基伸長(PROBE)とMALDI−TOFマススペクトロメトリーを
使用するマイクロサテライト分析
要約
本方法は単一検出プライマーを使用後、オリゴヌクレオチド伸長段階を実施し
、MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより容易に分解可能な長さで反
復単位数又は反復領域内の第2の部位突然変異に特異的な塩基数だけ長さの異な
る産物を生成する。ヒト染色体21に位置するインターフェロン−αレセプター
遺伝子のイントロン5におけるAluVpA多型性と、ヒト染色体7に位置する
CFTR遺伝子からのイントロン8のスプライス受容部位のポリTトラクトをモ
デルシステムとして使用して本方法を説明する。
材料と方法
ゲノムDNAは18人の無関係の個体と、母親、父親及び3人の子供からなる
1家族から得た。反復領域を変性ゲル電気泳動により常法で評価し、得られた結
果を標準Sangerシーケンシングにより確認した。
PCR増幅用プライマー(各8pmol)は、インターフェロン−αレセプタ
ー遺伝子のイントロン5の一部にはIFNAR−IVS5−5’:(5’−TG
C TTA CTT AAC CCA GTG TG−3’、配列番号35)と
IFNAR−IVS5−3’.2:(5’−CAC ACT ATG TAA
TAC TAT GC−3’、配列番号36)を使用し、CFTR遺伝子のフラ
ンキングイントロン配列をもつCFTRエキソン9には(5’−ピオチン化)C
FEx9−F:(5’−GAA AAT ATC TGA CAA ACT C
ATC−3’、配列番号37)とCFEx9−R:(5’−CAT GGA C
AC CAA ATT AAG TTC−3’、配列番号38)を使用した。T
aq−ポリメラーゼと10×緩衝液はBoehriner−Mannheimか
ら購入し、dNTPはPharmaciaから購入した。総反応容量は50μl
とした。PCR条件は5分間94℃の後、1分間94℃、45秒間53℃及び3
0秒間72℃を40サイクル繰り返し、5分間72℃の最終伸長時間とした。
QiagenのPCR精製キット(No.28106)を製造業者の指示に従
って使用して増幅産物を精製した。TE緩衝
液(10mM Tris−HCl,1mM EDTA,pH7.5)50μlで
精製物をカラムから溶離した。
A)プライマーオリゴ塩基伸長反応(熱サイクリング法)
精製鋳型1pmol、Thermosequenase(Amevsham
Life Science,Cat.#E79000Y)2単位、Thermo
sequenase緩衝液2.5μl、各デオキシヌクレオチド25μmol(
7−デアザ−dATP、dTTP及び実験により付加的dCTP)及びジデオキ
シグアニン100μmol及び実験により付加的dCTPを含む総容量25μl
中で適当な検出プライマー(IFN:5’−TGA GAC TCT GTC
TC−3’、配列番号39)5pmolを使用してサイクルPROBEを実施し
た。サイクリング条件は5分間94℃の初期変性後、30サイクル30秒間44
℃のアニーリング温度と1分間55℃の伸長温度とした。
プライマーオリゴ塩基伸長反応(等温法)
ストレプトアビジンをコートしたマイクロタイタープレートウェル(50μl
容量当たり〜16pmol容量;No.1645684 Boehringer
−Mannheim)に精
製2本鎖増幅産物の10μlアリコート(〜3pmol)を移した後、インキュ
ベーション用緩衝液(80mMリン酸ナトリウム、40mM NaCl,0.4
%Tween 20,pH7.5)10μlと水30μlを加えた。1時間室温
でインキュベーション後、ウェルを洗浄用緩衝液A(40mM Tris,1m
M EDTA,50mM NaCl,0.1%Tween20,pH8.8)2
00μlで3回洗浄し、50mM NaOH 100μlと共に3分間インキュ
ベートし、2本鎖Dを変性させた。最後に、ウェルを70mMクエン酸アンモニ
ウム溶液200μlで3回洗浄した。
アニーリング用緩衝液(50mMリン酸アンモニウム緩衝液,pH7.0及び
100mM塩化アンモニウム)50μl中で65℃で2分間、37℃で10分間
及び室温で10分間検出プライマー(CFpT:5’−TTC CCC AAA
TCC CTG−3’、配列番号40)100pmolのアニーリングを行っ
た。ウェルを洗浄用緩衝液B(40mM Tris,1mM EDTA,50m
M NH4Cl,0.1%Tween 20,pH8.8)200μlで3回、
TE緩衝液200μlで1回洗浄した。USB製DNAシーケンシングキット(
No.
70770)の一部の成分とPharmacia製dNTP又はddNTPを使
用して伸長反応を実施した。総反応容量は45μlとし、水21μl、Sequ
enase緩衝液6μl、100mM DTT溶液3μl、7−デアザ−dAT
P 50μmol、ddCTP 20μmol、グリセロール酵素希釈用緩衝液
5.5μl、Sequenase2.0 0.25μl及びピロホスファターゼ
0.25μを含むものとした。反応産物を氷上にピペットでとった後、15分間
室温及び5分間37℃でインキュベートした。最後に、ウェルを洗浄用緩衝液B
200μlで3回洗浄した。
伸長したプライマーを50mM水酸化アンモニウム溶液50μl中で80℃に
10分間加熱することにより鋳型鎖から変性させた。
沈殿のために、3M酢酸NH4(pH6.5)10μl、グリコーゲン(10
mg/ml水,Sigma Cat.#G1765)0.5μl及び無水エタノ
ール110μlを上清に加え、1時間室温でインキュベートした。13,000
gで10分間遠心分離後、ペレットを70%エタノールで洗浄し、18Mohm
/cmH2O水1μlに再懸濁した。
試料調製はマトリックス溶液(1:1H2O:CH3CN中0.7M 3−ヒド
ロキシピコリン酸、0.07M二塩基性クエン酸アンモニウム)0.6μlを再
懸濁DNA/グリコーゲンペレット0.3μlと試料ターゲット上で混合し、風
乾することにより実施した。20個までの試料をプローブターゲットディスクに
スポットし、Thermo Bioanalysis(旧Finnigan)V
rsions 2000 MALDI−TOFのソース領域に導入し、夫々ター
ゲット及び変換ダイノード5及び20kVのリフレクトロンモードで運転した。
理論平均分子量(Mr(calc))は原子組成から計算し、報告実測Mr(Mr
(exp))値は外部較正を使用して決定した1プロトン化形態の値である。
結果
本実験の目的は、多型性領域内の第2の部位突然変異の検出能を含め、マイク
ロサテライト中の反復単位数又はモノヌクレオチド配列の長さを正確に決定する
ための迅速で確実な方法を開発することであった。そこで、特殊なDNAシーケ
ンシング(プライマーオリゴ塩基伸長、PROBE)をマトリックス介助レーザ
ーデソープションイオン化(MALDI)マススペク
トロメトリー(MS)による産物の評価と併用した。可能な質量測定システムと
して飛行時間(TOF)リフレクトロン構成を選択した。初期可用性試験として
、まずヒトインターフェロン−αレセプター遺伝子のイントロン5に位置するA
luVpA反復多型性(サイクルPROBE反応)、次にヒトCFTR遺伝子の
イントロン8に位置するポリTトラクト(等温PROBE反応)で試験を行った
。
AluVpA反復多型性のサイクルPROBE実験の模式図を図52に示す。
センス鎖を鋳型として使用してアンチセンス鎖(配列番号262)の伸長を実施
した。検出プライマーを下線で示す。家族試験では、電気泳動法とサイクルPR
OBE法の実施後、マススペクトロメトリー分析により種々の対立遺伝子の共優
性分離を立証することができた(図53)。母親と子供2の対立遺伝子は、増幅
産物の直接電気泳動によると2コピーのうちの一方が13個の反復単位をもつと
思われたが、ddGをターミネーターとしてサイクルPROBEで測定すると1
1単位しかもたないことが判明した。ddGをddCに置き換えると、母親と子
供2のDNAには約11650の分子量をもつ別の予想外の短い対立遺伝子が検
出された(図54)。配列分
析によると、13反復単位をもつ対立遺伝子には2つの第2の部位突然変異の存
在が確認された。一方は3番目の反復単位のC→T転位であり、第2の突然変異
は9番目の反復単位のT→G転位である。28人の無関係個体の試験によると、
13単位対立遺伝子はサイクルPROBEを使用すると正常対立遺伝子と切断対
立遺伝子にスプライスされる。統計評価によると、多型性はどちらの方法でもハ
ーディ・ワインベルグ平衡状態にあるが、検出法としてサイクルPROBEを使
用すると、多型性情報頻度は0.734まで増加する。
更にPROBEを等温法として使用し、CFTR遺伝子のイントロン8スプラ
イス受容部位(配列番号263)における3種の一般的な対立遺伝子を検出した
。図55は予想診断産物(配列番号264〜266)と理論質量値を示す。反応
はアンチセンス方向でも実施した。
図56は、この遺伝子座における全3個の一般的対立遺伝子(夫々T5、T7
及びT9)をこの方法により確実に検出できたことを立証している。図56から
明らかなように、この試験で使用したリフレクトロン飛行時間の質量正確度及び
精度は0〜0.4%であり、相対標準偏差0.13%であった。これは
IFNARシステムで生成される<90量体診断産物の単塩基精度よりも遥かに
良好である。このような高い分析感度は90量体に>1%質量シフトを誘導する
反復単位又はそのフランキング領域内で単一又は多重挿入/欠失突然変異を検出
するために十分である。これは図56のポリTトラクト分析でも同様である。早
期産物ターミネーションを生じない他の突然変異(即ちIFNAR遺伝子A3T
反復内のA→T又はT→A突然変異)はdNTP/ddNTPとPROBE及び
低性能MS装置をどのように組み合わせても検出することができず、90量体の
9Daシフトは0.03%質量シフトに対応する。100量体まで一桁のDa精
度が得られるフーリエ変換(FT)MS等の高性能装置では、このような微量質
量シフトを検出するために必要な正確度及び精度を達成できることが立証されて
いる。更に、質量シフトしたフラグメントを装置内で単離及び解離し、配列特異
的フラグメントを生成することができるタンデムFTMSは、同等寸法の産物で
塩基の点突然変異を位置決定できることが立証されている。従って、PROBE
を高性能装置と組み合わせると、反復領域の完全シーケンシングといった手間の
かかるに作業によってしか達成できないような分析感度が得ら
れよう。
実施例12
プライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)とMALDI−TOFマススペクトロ
メトリーを使用するアポリポタンパク質Eの遺伝子型別の改善
材料と方法
PCR増幅。
従来公表されている文献(Braun,Aら,(1992)Human Ge
net.89:401−406)による100人の匿名個体からのヒト白血球ゲ
ノムDNAについて常法によりアポリポタンパク質Eをスクリーニングした。ア
ポE遺伝子のエキソン4の一部を増幅するためのPCRプライマーは公表配列に
従って作製した(Das,HKら,(1985)J.Biol.Chem.26
0:6240−6247)(順プライマー、アポE−F:5’−GGC ACG
GCT GTC CAA GGA G−3’、配列番号41;逆、アポE−R
:5’−AGG CCG CGC TCG GCG CCC TC−3’、配列
番号42)。Taq−ポリメラーゼと10×緩衝液はBoehringer−M
annheim(ドイツ)
から購入し、dTNPはPharmacia(Freiburg,ドイツ)から
購入した。総反応容量は50μlとし、各プライマー8pmol、10%DMS
O(ジメチルスルホキシド、Sigma)及び鋳型として使用したゲノムDNA
約200ngを含むものとした。1Uポリメラーゼを加える前に溶液を80℃ま
で加熱した。PCR条件は2分間94℃の後、30秒間94℃、45秒間63℃
及び30秒間72℃を40サイクル繰り返し、72℃で2分間の最終伸長時間と
した。
制限酵素消化及びポリアクリルアミド電気泳動。
CfoI及びRsaIと反応用緩衝液LはBoehringer−Mannh
eimから購入し、HhaIはPharmacia(Freiburg,ドイツ
)から購入した。CfoI単独及びCfoI/RsaI同時消化では、増幅産物
20pLを水15μlとBoehringer−Mannheim緩衝液L4p
Lで希釈し、適当な制限酵素10単位の添加後、試料を60分間37℃でインキ
ユベートした。HhaI/RsaI同時消化操作では、まず緩衝液L中でRsa
Iで1時間消化後、NaCl(終濃度50mM)とHhaIを加えて更に1時間
インキュベーションが必要であった。他の文献(Hixson
(1990)J.Lipid Res.31:545−548)に記載されてい
るように12%ポリアクリルアミドゲル上で制限消化産物20pLを分析した。
RsaIとCfoI(HhaI)の認識配列は夫々GT/AC及びGCG/Cで
あり、252量体増幅産物のCfoI単独及びCfoI(又はHhaI)とRs
aIの同時二重消化による予想消化フラグメントの質量を表Vに示す。
熱PROBE。
増幅産物をQiagen“Qiaquick”キットで精製し、取り込まれな
かったプライマーを除去した以外は上記と同様にPCR増幅を実施した。ストレ
プトアビジンをコートした磁性ビーズに固定化した精製ビオチン化アンチセンス
鋳型〜1pmol、Thermosequenase2.5単位、Thermo
sequenase緩衝液2μl、各dNTP50μM及びddXTP200μ
M(N及びXの塩基種は本文に記載する通りである)を含む20μl中で増幅産
物35μlとコドン112(5'−GCG GAC ATG GAG GAC G
AG−3'配列番号43)及び158(5'−GAT GCC GAT GAC C
TG CAG AAG−3’配列番号44)
検出プライマー各8pmolを使用して多重熱PROBEを実施した。サイクリ
ング条件は変性(94℃、30秒間)後、94℃(10分間)と60℃(45秒
間)を30サイクルとした。
試料調製及びMALDI−TOF MSによる分析。
消化産物とPROBE産物の沈殿(Stultsら,(1991)Rapid
Commun.Mass Spectrom.5:359−363)のために
、3M酢酸アンモニウム(pH6.5)5μl、グリコーゲン(10mg/ml
,Sigma)0.5μl及び無水エタノール110μlを分析物溶液50μl
に加え、室温で1時間保存した。13,000×gで10分間速心分離後、ペレ
ットを70%エタノールで洗浄し、18Mohm/cm H2O水1μlに再懸
濁した。本実験では、アンモニウム飽和DOWEX(Fluka #44485
)カチオン交換ビーズ10〜20μlを分析物40μlに加えて震盪することに
より更に脱塩した。プロトン化形態で購入したビーズは2M NH4OHで5分
間スピンデカント段階を3回実施した後、H2Oと10mMクエン酸アンモニウ
ムで前処理した。
再懸濁したDNA0.35μlをステンレス鋼試料ターゲッ
トディスク上でマトリックス溶液(Wuら(1993)Rapid Commu
n.Mass Spectrom.7:142−146)(1:1H2O:CH3
CN中0.7M 3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)、0.07Mクエン
酸アンモニウム)0.35〜1.3μLと混合して風乾後、Thermo Bi
oanalysis Vision 2000 MALDI−TOFをターゲッ
ト及び変換ダイノード夫々5及び20kVのリフレクトロンモードで運転してス
ペクトルを測定した。フラグメントの理論平均分子量(Mr(calc))は原
子組成から計算し、実測分子量(Mr(exp))は組データ値からプロトンの
質量(1.08Da)を差し引き、中性基準で報告する。8個のピーク(300
0〜18000Da)から生成した外部較正を全スペクトルに適用した。
結果
CfoI単独消化。
図57aの挿入図は252bpアポE増幅産物のCfoI消化後のε3/ε3
遺伝子型の12%ポリアクリルアミドゲル電気泳動分離を示す。電気泳動バンド
を分子量ラダーに比較すると、切断パターンはε3/ε3遺伝子型にほぼ予想さ
れる通り
(表V)である。相違点として、約25bpの微かなバンドは予想外であり、最
小フラグメントは観察されない。沈殿消化産物の質量スペクトルは高分解能で同
様のパターンを示す。表Vと比較すると、観察される質量は1本鎖DNAに一致
する。酸性マトリックス環境(3−HPA,pKa3)と、イオン化により33
7nmで吸収する3−HPAとの相互作用を介して熱エネルギーを吸収させるこ
とを組み合わせると、正常MALDI条件下でdsDNAの短い配列は変性する
ことが知られている(Tang,Kら,(1994)Rapid Commun
Mass Spectrom 8:183−186)。
電気泳動で分解しなかった約25量体はMSにより3個の1本鎖フラクメント
として分解し、最大のもの(7427Da)は14.8kDaフラグメント(m
=14850,z=2;m/z=7425)からの2電荷イオンに相当し、67
15及び7153DaフラグメントはPCRアーチファクト又はプライマー不純
物に起因すると思われ、増幅産物を消化前にQiagen精製キットで精製する
と、全3個のピークは観察されない。表Vの8871Da29量体センス鎖3’
末端フラグメントは観察されず、9186Daで検出される種はPCR増幅中に
Taq−ポリメラーゼにより付加される付加塩基(9187−8871=316
、Aに一致)に一致する(Hu,Gら,(1983)DNA and Cell
Biol 12:763−770)。<35塩基をもつ各2本鎖(11kDa
)の個々の1本鎖は単一ピークとして分解されるが、48塩基1本鎖(Mr(c
alc)14845及び14858)は14850Daで未分解単一ピークとし
て観察される。これらを単一ピークに分離するには、この試験で使用した標準リ
フレクトロン飛行時間装置で通常得られるよりも約一桁大きい14850/13
=1140の質量分解能(m/Δm、質量と半高ピーク幅の比)が必要であるが
、この質量範囲で3桁まで上の分解能を提供するフーリエ変換MS等の高性能装
置ではこのような小さい質量差を分解できることが立証されている。91量体1
本鎖(Mr(calc)27849及び28436)は<50の分解能しか必要
としないが、この鎖も分解されない。質量が増すとピーク品質が著しく低下する
のは、レーザー照射中及び照射後に内部エネルギーが過剰に吸収される結果、準
安定断片化(即ち脱プリン)が生じるためである。
CfoI及びRsaI同時消化。
図57b(挿入図)はε3/ε3二重消化産物の12%ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動分離を示し、24、31、36、48及び53塩基対をもつdsDN
Aに一致するバンドが検出されるが、これよりも小さいフラグメントは倹出され
ない。CfoI単独で消化するよりも多くのピークが生成される(表V)が、全
フラグメントは<60塩基を含み、これは妥当な精度のMr値(例えば0.1%
)が所望される場合にMALDI−MSに遥かに適切な寸法範囲であるので、対
応する質量スペクトルの解読は容易になる。この質量範囲のフラグメントでは、
外部較正を使用した質量測定精度は−0.1%(即ち10kDaで<+10Da
)である。10kDaを上回る全ピークに(図にアステリスクで示す)顕著な脱
プリンが観察されるが、17171Daの最大ピークでもその脱プリンピークか
ら明白に分解されるので、正確なMrを測定することができる。消化産物のモル
濃度は一定であるべきだが、これらのフラグメントとの間に≦11塩基の差が観
察されるのはエタノール/グリコーゲン沈殿段階での損失に起因すると思われる
。生成されるフラグメントが小さいほうが高精度質量測定に良好であり、全遺伝
子型で2量体ピークが高質量診断ピークにオーバーラップする可能
性はないので、CfoI(又はHhaI)とRsaIの同時消化によるMSの品
質はCfoI(又はHhaI)単独よりも優れている。RsaI/CfoI及び
RsaI/HhaIによる消化は同一制限フラグメントを生じるが、前者は緩衝
液要件が同一であるため同時消化として実施できるので、制限消化プロトコール
によるその後の全遺伝子型別にはこの酵素混合物を使用した。 aCfoI不変フラグメント質量:1848、2177、2186、2435、
4924、5004、5412、5750、8871、9628Da。b
CfoI/RsaI不変フラグメント質量:1848、2177、2186、
2436、4924、5004、5412、5750、6745、7510、8
871、9628、16240、17175Da。 aコドン112検出プライマー由来(未伸長5629.7Da)。b
コドン158検出プライマー由来(未伸長6480.3Da)。
ダッシュ(−):この遺伝子型は100人の患者の分析プールから得られない。
図58a〜cはCfoI消化後のアポEε3/ε3遺伝子型と種々の沈殿スキ
ームを示し、同一増幅産物の等容量アリコートを各々使用した。酢酸アンモニウ
ム/エタノール/グリコーゲン溶液から1回沈殿させた試料(図58a)は特に
高質量で幅広いピークをもつ質量スペクトルを生じる。5.4、10.7及び1
4.9kDaの高強度ピークの質量は夫々予想値よりも
26Da(0.5%)、61Da(0.6%)及び45Da(0.3%)高く、
これらの各々の分解能(合計強度の2分の1におけるピーク幅とピークの測定質
量の比)は−50であり、質量の増加と共に低下する。このような観測結果は高
レベルの不揮発性カチオン付加に一致し、10.8kDaフラグメントでは、観
察される質量シフトは付加:非付加分子イオンの単位比を上回る。
再溶解し、二度目に沈殿した試料からのMSピークのほうが著しくシャープで
あり(図58b)、分解値は対応する図58aのピークのほぼ2倍である。質量
精度値も著しく改善され、各々夫々の計算値の0.07%以内であり、3−HP
Aをマトリックスとして使用するDNA測定の独立して測定した計器限界に近い
。エタノールの代わりにイソプロピルアルコール(IPA)で一回(図示せず)
及び2回(図58C)沈殿すると、分解能及び質量精度値は対応するエタノール
沈殿と同等になるが、二量化レベルの増加が観察され、このようなダイマーが溶
液中に存在する高質量「診断」モノマーにオーバーラップする場合には測定が混
乱しかねない。グリコーゲンを核生成剤としてEtOH/酢酸アンモニウム沈殿
すると、7量体以外のフラ
グメントをほぼ定量的に回収できるので、MS検出前に同時濃縮及び脱塩段階と
して利用できる。グリコーゲンの不在下で同一EtOH/酢酸アンモニウム溶液
から沈殿すると、特に低質量で回収は著しく不十分である。
これらの結果が示すように、1PA及びEtOH/沈殿後に正確なMr(ex
p)値を得るためには、第2の沈殿により高い質量精度と分解能を維持すること
が必要である。
マトリックス:消化産物の比もスペクトル品質に影響し、(1μLに再溶解し
た)1:1容量のマトリックス:消化産物で観察される高質量フラグメント(図
示せず)の著しい減少は、3〜5倍容量のマトリックスを使用することにより軽
減される。
酵素消化によるアポE遺伝子型別。コドン112及び158多型性は(Rsa
Iでなく)CfoI認識配列に該当する。本実施例で試験した252bp増幅産
物では、不変(即ち全遺伝子型で切断される)部位は塩基31、47、138、
156、239及び246の後に切断を生じる。塩基66の後の切断部位はε4
にしか存在せず、塩基204の後の切断部位はε3とε4に存在し、ε2遺伝子
型はこれらの部位のいずれでも切断されない。これらの制限パターンの相違は質
量スペクトルの変
化として立証することができる。図59は100人の患者のプールから入手可能
な数種のアポE遺伝子型の質量スペクトルを示す(Braun,Aら,(199
2)Hum.Gent.89:401−406)。予想される表Vの診断フラグ
メントに対応する質量に縦点線を引き、他の表示フラグメントは不変である。表
Vに関して、所与の対立遺伝子に2コピーが存在する場合にしかフラグメントは
「不変」とみなさず、この要件を満たすためには、このようなフラグメントはε
2mε3及びε4対立遺伝子の各々で生成されなければならないことに留意され
たい。
図59aのスペクトルは3kDaを上回る全予想不変フラグメントと、342
8及び4021(いずれも弱い)、11276及び11627(いずれも強い)
、14845、18271並びに18865Daの診断ピークを含む。図59b
のスペクトルは、18kDaのピーク対が検出されず、特に11〜18kDaフ
ラグメント間の相対ピーク強度が異なる点を除いてほぼ同一である。図59cの
スペクトルは更に18kDaフラグメントをもたない代わりに5〜6kDa間に
別の低強度ピークをもつ。9kDaを上回るフラグメントの強度比は11kDa
フラグメント対が比較的低い点を除いて図59bと同様である。図59dも5〜
6kDaにピーク群を含むが、11kDaフラグメントを含まない唯一のスペク
トルであり、先の2つのスペクトルと同様に18kDaフラグメントをもたない
。
各スペクトルの膨大な数のピークにも拘わらず、表Vbの診断ピークの数個の
みの有無により各遺伝子型を同定することができる。使用するMALDI−TO
F装置の分解能の制限により、5.2〜6.0kDaの4個の診断フラグメント
は数個の不変ピークにほぼオーバーラップするので、ε4対立遺伝子の特徴であ
るこれらのフラグメントの有無に基づく遺伝子型は最も区別しにくい。本発明で
は、5283Da診断フラグメントは5412Da不変フラグメントからの脱プ
リンピークにオーバーラップし、5781Da診断ピークは通常は5750Da
不変フラグメントから完全に分解されないことが判明した。従って、5880及
び5999Daフラグメントの有無によりε2/ε4とε2/ε3又はε3/ε
4とε3/ε3対立遺伝子を区別する。これらの各々は図59c及び59dには
存在するが、59a又は59bには存在しない。
図59の患者の各々の遺伝子型は図60のフローチャートを
参照すると、より迅速に同定することができる。図59aのスペクトルについて
説明すると、11kDaに強いピーク対があるのでホモ接合ε4の可能性はない
が、他の5種の遺伝子型は区別できない。同様に、14.8kDaの未分解フラ
グメントが存在するのでホモ接合ε2ではないが、4種の可能性(ε2/ε3、
ε2/ε4、ε3/ε3、ε3/ε4)がある。これらのうちでε2/ε3とε
2/ε4のみが18kDaピークに一致し、5283、5879、5779及び
5998Daのピークをもたないことから、図59aの試料はε2/ε3である
と判断される。同一手順を使用して図59b〜dの遺伝子型を夫々ε3/ε3、
ε3/ε4及びε4/ε4と同定することができる。現在までこの方法による全
対立遺伝子同定は慣用方法により得られる同定に一致しており、多くの場合には
慣用方法よりも容易に解読されている。フラグメント強度比を表Vのコピー数に
一致させることにより帰属を更に確認することができる。例えば、図59aでは
14.8kDaフラグメントは16〜17kDaフラグメントよりも強度が低い
が、図59b〜dでは逆である。後者3種の遺伝子型では14.8kDaが2コ
ピー存在するが、前者はε2を含むヘテロ接合体であるため、
増幅産物の2分の1は14.8kDaシグナルに加えられないので、これは予想
通りである。同様に、11kDaフラグメントの強度を9.6及び14.8kD
aフラグメントの強度に比較すると、このフラグメントは図59a、dでは夫々
2、2、1及び0コピーである。これらのデータは、MALDIがこれらの条件
下で半定量的に実施できることを裏付けている。
プライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)によるアポE遺伝子型別。コドン1
12及び158多型性の同時検出手段としてPROBE反応を更に試験した。3
’末端が可変部位のすぐ下流となるように検出プライマーを1本鎖PCR増幅鋳
型にアニールした。3種のdNTPと(dNTPとして存在しない)1種のdd
XTPの存在下にこのプライマーをDNAポリメラーゼにより伸長すると、多型
性塩基の種類に依存する長さと質量をもつ産物が生じる。特定塩基特異的チュー
ブが−99%dXTP及び−1%ddXTPを含む標準Sanger型シーケン
シングとは異なり、PROBE混合物は他の3種のdNTPと共に特定ddXT
P100%を含む。このように、PROBEではddXTPに相補的な第1の塩
基に到達後に全検出プライマーの完全な停止が達せられる。
ε2/ε3遺伝子型では、PROBE反応(ddTTP、dATP、dCTP
、dGTPの混合物)によりコドン112プライマーは5919Da、コドン1
58プライマーは6769及び7967DaにMr(exp)シフトし(表VI
)、ε2/ε3遺伝子型はこの位置でヘテロ接合であるため、単一コドン158
プライマーの結果として1対の伸長産物が生じる。ヘテロ接合体ε3/ε4から
は3種の伸長産物(コドン158から1種とコドン112から2種)も観察され
る(図61c及び表VI)が、図61b(ε3/ε3)及び図59d(ε4/ε
4)ホモ接合対立遺伝子からは2種の産物(各プライマーから1種)しか観察さ
れない。表VIを参照すると、利用可能な対立遺伝子の各々は理論質量の0.1
%以内で全予想ddT反応産物質量を生じるので、各々はこのデータだけで明確
に特徴付けられる。ddCTP(及びdATP、dTTP、dGTP)を用いて
反応を繰り返すことにより、対立遺伝子種の別の構造も得られ、表VIにも要約
するこれらの結果はddTの結果を明確に裏付ける。
方法の妥当性。図59(制限消化)及び61(PROBE)を比較すると、P
ROBE法は制限消化分析よりもコドン112
及び158多型性の多重分析のために著しく容易に解読可能なスペクトルを提供
する。消化産物は質量スペクトル当たり−25ピークまでを生じ、診断フラグメ
ントが不変フラグメントとオーバーラップする場合もあるが、PROBE反応は
検出プライマー当たり最大2個のピークしか生じない(即ち多型性)。後者のほ
うが自動化ピーク検出、スペクトル分析及び対立遺伝子同定が遥かに容易である
ことは明白である。同一又は異なる増幅産物からの数個の多型性部位を単一チュ
ーブから測定する高度多重化PROBEのスペクトルも簡単に分析できると予想
される。その融通性を強調すると、PROBEデータ分析はプライマー長を慎重
に先験的に選択することにより更に単純にすることができ、プライマー長はプラ
イマー又は産物の質量がオーバーラップしないようにデザインすることができる
。
従って、PROBEは予め十分に特性決定された多型性部位の大規模臨床試験
に選択される方法であるが、本実施例に記載するような制限消化分析は新しい突
然変異のスクリーニングに理想的に適している。本試験で論じる2種の多型性の
各々の型はフラグメントパターンに影響を与えるので、多型性の型が使用する唯
一の情報である場合には、MS検出は制限フラグメン
ト長多型性産物の慣用電気泳動分離よりも迅速な代用方法である。他の単一点突
然変異は突然変異を含む2本鎖フラグメントの1本鎖の各々の質量を必然的に変
化させるので、フラグメントMr値の正確な測定は、酵素認識部位から完全に離
れた部位に関する情報を与えることができる。252bp増幅産物が対立遺伝子
変異体も含む場合には、例えば従来記載されているGly127Asp(Wei
sgraber,KHら,(1984)J.Clin.Invest.73:1
024−1033)、Arg136Ser(Wardell,MRら,(198
7)J.Clin.Invest.80:483−490)、Arg142Cy
s(Horie,Yら,(1992)J.Bio1.Chem.267:196
2−1968)、Arg145Cys(Rall SC Jrら,(1982)
Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.79:4696−470
0)、Lys146Glu(Mann,WAら,(1995)J.Clin.I
nvest.96:1100−1107)、又はLys146Bln(Smit
,Mら,(1990)J.Lipid Res.31:45−53)置換を生じ
る。G→A塩基置換はGly127Aspアミノ酸置換をコー
ドし、センス鎖の−16Daシフトとアンチセンス鎖の+15Da(C→T)シ
フトを生じるが、制限パターンには変化を生じない。このような小さい変化は電
気泳動ではほとんど判別できないが、精密質量測定により置換を検出することが
でき、16240(センス)及び17175Daの不変55量体は夫々16224
及び17190Daにシフトする。微量の未分解付加物及び/又は十分に定義さ
れないピークは正確な質量測定能を制限するので、現行のMALDI−TOF装
置を使用してこのような小さい質量シフトを検出するために必要な質量精度を得
ることは内部較正を用いても容易でない。高性能エレクトロスプレーイオン化フ
ーリエ変換(ESI−FTMS)を使用すると、100量体まで(Little
,DPら,(1994)J.Am.Chem.Soc.116:4893−48
97)の合成オリゴヌクレオチド(Little,DPら,(1995)Pro
c.Natl.Acad.Sci.U.S.A.92:2318−2322)で
高いDa精度が達成されており、最近ではMALDI−FTMSを使用して25
量体までで同様の結果が達成されている(Li,Yら,(1996)Anal.
Chem.68:2090−2096)。
実施例13
テロメラーゼ活性に関連するDNAフラグメントのマススペクトロメトリー測定
方法
序論
米国の全死因の4分の1は悪性腫瘍である(R.K.Jain,(1996)
Science 271:1079−1080)。診断及び治療目的で確実且つ
高感度の腫瘍細胞検出方法に高い関心が寄せられている。
悪性細胞は種々の性質により正常細胞から区別することができる。その1つと
して、悪性細胞は不死化しており、無制御に細胞増殖することができる。正常2
倍体哺乳動物細胞を培養すると、老化前に限定回数の集団倍加を経る。集団倍加
数は各細胞分裂でテロメアと呼ばれる染色体末端の短縮に関係があると予想され
る。この短縮の理由は慣用半保存複製機構の性質による。DNAポリメラーゼは
5’→3’方向にしか作用せず、RNAプライマーを必要とする。
不死化は活性テロメラーゼの発現に関係があると考えられる。このテロメラー
ゼは鋳型の反復伸長を触媒するリボヌクレオタンパク質である。この活性はテロ
メア反復増幅プロトコール
(TRAP)として知られる特殊なPCRシステムによりテロメラーゼを含む細
胞の天然タンパク抽出物で検出することができる(N.W.Kimら(1994
)Science 266:2011−2015)。本実施例で使用するアッセ
イは、基質プライマー(TS)のテロメラーゼ特異的伸長と、反復構造に相補的
な第2のプライマー(bioCX)を使用したPCR段階によるテロメラーゼ特
異的伸長産物の後期増幅に基づく。ゲル電気泳動及び標識又は染色システムを使
用してこれらのアッセイの特徴的ラダーフラグメントを常法により検出する。こ
れらの方法をMALD−TOFマススペクトロメトリーに置き換えると、より迅
速で正確な自動検出が得られる。
材料と方法
細胞の調製
培養テロメラーゼ陽性細胞1×106個をペレット化し、PBS(滅菌DEP
C水中137mM NaCl,2.7mM KCl,4.3mM Na2HPO4
・7H2O,1.4mM KH2PO4)で1回洗浄した。調製した細胞は−75
℃で保存することができる。組織試料は抽出前に当業者に周知の手順によりホモ
ジナイズする必要がある。
テロメラーゼ抽出
ペレットをCHAPS溶解用緩衝液(10mM Tris−HCl,pH7.
5,1mM MgCl2,1mM EGTA,0.1mMベンズアミジン、5m
M β−メルカプトエタノール,0.5%CHAPS,10%グリセロール)2
00μlに再懸濁し、氷上で30分間インキュベートした。試料を12,000
gで30分間4℃で遠心分離した。上清を新しいチューブに移し、使用時まで7
5℃で保存した。
TRAPアッセイ
最終容量50μl中、10×TRAP緩衝液(200mM Tris−HCl
,pH8.3,15mM MgCl2,630mM KCl,0.05% Tw
een20,10mM EGTA)、50×dNTP混合物(dATP、dTT
P、dGTP及びdCTP各2.5mM)、TSプライマー10pmol及びb
ioCXプライマー50pmolの混合物にテロメラーゼ抽出物2μlを加えた
。混合物を30℃で10分間及び94℃で5分間インキュベートし、Taq P
olymerase2単位を加え、30秒間94℃、30秒間50℃及び45秒
間72℃を30サイクル繰り返してPCRを実施した。
TRAPアッセイ産物の精製
各TRAPアッセイ産物を精製するために、Streptavidin M−
280 Dynabeads(10mg/ml)50μlを1×BW緩衝液(5
mM Tris−HCl,pH7.5,0.5mM EDTA,1M NaCl
)で2回洗浄した。2×BW緩衝液50μlをPCR混合物に加え、ビーズをこ
の混合物に再懸濁した。ビーズを静かに震盪しながら15分間周囲温度でインキ
ュベートした。上清を取り出し、ビーズを1×BW緩衝液で2回洗浄した。ビー
ズに25%水酸化アンモニウム50μlを加え、60℃で10分間インキュベー
トした。上清を取り出し、操作を繰り返し、2つの上清をプールし、エタノール
(100%)300μlを加えた。30分後にDNAを13,000rpmで1
2分間ペレット化し、ペレットを風乾し、超純粋600nlに再懸濁した。
TRAPアッセイ産物のMALDI−TOF MS
試料300nlを飽和マトリックス溶液(50%水性アセトニトリル中3−H
PA:クエン酸アンモニウム=10:1モル比)500nlと混合し、周囲温度
で乾燥し、マススペクトロメーター(Vision 2000,Finigan
MAT)
に導入した。外部較正を使用してリフレクターモードで全スペクトルを測定した
。
配列及び質量
bioCX:d(bio−CCC TTA CCC TTA CCC TTA
CCC TAA、配列番号45)、質量:7540Da。
TS:d(AAT CCG TGC AGC AGA GTT、配列番号46)
、質量:5523Da。
テロメア反復構造:(TTAGGG)n、1反復の質量:1909.2。
増幅産物:
テロメア反復3個分伸長したTS(第1回増幅産物):12452Da(N3)
。
テロメア反復4個分伸長したTS:14361Da(N4)。
テロメア反復7個分伸長したTS:20088Da(N7)。
結果
図62はTRAPアッセイMALDI−TOF質量スペクトルの一部を示す。
プライマーTS及びbioCXは夫々5497及び7537Da(計算値552
3及び7540Da)に帰属
される。アステリスクを付けたシグナルは化学DNA合成のn−1プライマー産
物に相当する。第1のテロメラーゼ特異的TRAPアッセイ産物は12775D
aに帰属される。この産物は3個のテロメア反復を含む40量体に相当する。プ
ライマー配列により、これは陽性TRAPアッセイの第1の予想増幅産物である
。この産物はTaq DNAポリメラーゼのエキステンターゼ活性による付加的
ヌクレオチドの分だけ伸長している(非伸長産物計算値:12452Da、A分
伸長した産物:12765Da)。6389Daのシグナルはこの産物の2電荷
イオンに相当する(計算値:6387Da)。図63は図62に示すと同一のス
ペクトルの高質量部分を示し、従って、12775Daのシグナルは図62と同
一である。7個のテロメア反復を含み、同様に付加ヌクレオチド分伸長した64
量体に相当するTRAPアッセイ産物は20322Da(計算値20395Da
)で検出される。1、2、3及び4で示したシグナルは基線分解することができ
ない。この領域は、1は2量体n−1プライマーのシグナルを含み、2は4個の
テロメア反復を含み、従って、46量体(計算値:14341Da/エキステン
ダーゼ伸長産物14675Da)に相当する第2のTR
APアッセイ増幅産物を含み、3は2量体プライマーイオンと更にその対応する
全脱プリンシグナルを含む。第2の伸長産物と第5の伸長産物のシグナルにはギ
ャップが観察される。このシグナルギャップはTRAPアッセイのオートラジオ
グラフ分析で場合により第3及び第4の伸長産物に観察されるバンド強度の低下
に対応する(N.W.Kimら(1994)Science 266:2013
)。
2量体プライマー及び関連シグナルにより生じる上記問題は、MALDI−T
OF MS分析前にプライマーを除去するための分子量カットオフ膜を使用する
限外濾過段階により解決することができる。こうすると、第2の増幅産物の明確
な帰属が可能になる。
実施例14
MALDI−TOFマススペクトロメトリーによる神経芽細胞腫特異的入れ子R
T増幅産物の検出方法
序論
神経芽細胞腫は主に乳幼児腫瘍であり、症例の66%が5歳未満の幼時に発生
している。最も一般的な症状は腫瘍塊、骨の痛み又は過剰カテコールアミン分泌
に起因する症状である。稀
ではあるが、出生前に神経芽細胞腫が確認される場合もある(R.W.Jenn
ingsら,(1993)J.Ped.Surgery 28:1168−11
74)。神経芽細胞腫をもつ患者の約70%は診断時に転移症状をもつ。予後は
診断時の年齢、臨床段階及び他のパラメーターに依存する。
診断目的では、例えば自己由来骨髄移植又は進行中の治療の制御下に腫瘍細胞
を検出する確実で高感度の方法に高い関心が寄せられている。
カテコールアミン合成は神経芽細胞腫細胞の特徴的性質であり、骨髄細胞はこ
の活性を欠く(H.Naitoら,(1991)Eur.J.Cancer 2
7:762−765)ので、神経芽細胞腫細胞又は骨髄転移はカテコールアミン
の生合成の第1段階を触媒するヒトチロシン3−ヒドロキシラーゼ(E.C.1
.14.16.2,hTH)により同定することができる。
hTHの発現は逆転写(RT)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により検出す
ることができ、増幅産物はMALDI−TOFマススペクトロメトリーにより分
析することができる。
材料と方法
細胞又は組織処理
培養細胞をペレット化し(10分間、8000rpm)、PBS(滅菌PEP
C水中137mM NaCl,2.7mM KCl,4.3mM Na2HPO4
・7H2O,1.4mM KH2PO4)で2回洗浄した。溶液が粘性になるまで
ペレットを溶解/結合用緩衝液(100mM Tris−HCl,pH8.0,
500mM LiCl,10mM EDTA,1%ドデシル硫酸Li,5mM
DTT)1mlに再懸濁した。1mlシリンジを使用してDNA剪断段階により
粘度を下げた。溶解液は−75℃で保存してもよいし、そのまま更に処理しても
よい。固体組織(例えば患者試料)は溶解前にホモジナイズする必要がある。
磁性オリゴ−dT(25)ビーズの調製
細胞1×106個当たりビーズ100μLを保存用緩衝液から分離し、溶解/
結合用緩衝液200μLで2回洗浄した。
ポリA+RNAの単離
調製したビーズに細胞溶解液を加え、5分間周囲温度でインキュベートした。
ビーズを2〜5分間磁気的に分離し、LDS(10mM Tris−HCl,p
H8.0,0.15M
LiCl,1mM EDTA,0.1% LiDS)0.5mLで2回洗浄した
。
固相第1鎖cDNA合成
ポリA+RNAを含むビーズを逆転写混合物(50mM Tris−HCl,p
H8.3,8mM MgCl2,30mM KCl,10mM DTT,1.7
mM dNTP、3U AMV逆転写酵素)20μLに再懸濁し、1時間45℃
でインキュベートした(再懸濁段階は10分間)。ビーズを逆転者混合物から分
離し、溶離用緩衝液(2mM EDTA,pH8.0)50μLに再懸濁し、9
5℃まで1分間加熱し、RNAを溶離した。cDNA第1鎖を含むビーズはその
後の処理に備えてTB(0.089M Tris−塩基,0.089M硼酸,0
.2mM EDTA,pH8.0)、TE(10mM Tris−HCl,0.
1mM EDTA,pH8.0)又は70%エタノールに保存することができる
。
入れ子ポリメラーゼ連鎖反応
cDNA第1鎖を含むビーズ1×PCR緩衝液(20mM Tris−HCl
,pH8.75,10mM KCl,10mM(NH4)2SO4,2mM Mg
SO4,0.1% Tri
ton X−100,0.1mgウシ血清アルブミン)て2回洗浄し、(各外部
プライマー100pmol、Pfu(exo−)DNAポリメラーゼ2.5u、
各dNTP 200μM及び最終容量50μLのPCR緩衝液を含む)PCR混
合物に再懸濁した。混合物を72℃で1分間インキュベートし、30サイクルP
CR増幅した。入れ子反応のために、第1回PCR産物1μLを鋳型として(外
部プライマーを入れ子プライマーに変えた以外は上記と同様の)PCR混合物に
加え、1分間94℃、1分間65℃及び1分間72℃の温度プログラムを20サ
イクル実施した。
入れ子増幅産物の精製
10,000Daカットオフ限外濾過装置を使用してプライマーと低分子量反
応副生物を除去する。限外濾過は7,5000gで25分間実施した。各PCR
産物を精製するために、Streptavidin M−280 Dynabe
ads(10mg/ml)50μLを1×BW緩衝液(5mM Tris−HC
l,pH7.5,0.5mM EDTA,1M NaCl)で2回洗浄し、限外
濾過膜に加え、静かに震盪しながら15分間周囲温度でインキュベートした。上
清を取り出し、ビーズを
1×BW緩衝液で2回洗浄した。ビーズに25%水酸化アンモニウム50μLを
加え、周囲温度で10分間インキュベートした。上清を取り出し、操作を繰り返
し、2つの上清をプールし、エタノール(100%)300μLを加えた。30
分後にDNAを13,000rpmで12分間ペレット化し、ペレットを風乾し
、超純粋600nlに再懸濁した。
入れ子増幅産物のMALDI−TOF MS
試料300nlを飽和マトリックス溶液(50%水性アセトニトリル中3−H
PA:クエン酸アンモニウム=10:1モル比)500nlと混合し、周囲温度
で乾燥し、マススペクトロメーター(Vision 2000,Finigan
MAT)に導入した。外部較正を使用してリフレクターモードで全スペクトル
を測定した。
外部プライマー:
hTG1:d(TGT CAG AGC TGG ACA AGT GT、配列
番号47)
hTH2:d(GAT ATT GTC TTC CCG GTA GC、配列
番号48
入れ子プライマー:
bio−hTH d(bio−CTC GGA CCA GGT GTA CC
G CC、配列番号49)、質量:6485Da。
hTH6:d(CCT GTA CTG GAA GGC GAT CTC、配
列番号50)、質量:6422.21Da。
ビオチン化1本鎖増幅産物の質量:19253.6Da。
非ビオチン化1本鎖増幅産物の質量:18758.2Da。
結果
ヒトチロシン3−ヒドロキシラーゼ(hTH)特異的入れ子増幅産物(61量
体)のMALDI−TOF質量スペクトルを図64に示す。18763Daのシ
グナルは増幅産物の非ビオチン化鎖に対応する(計算値:18758.2Da、
質量誤差:0.02Da)。10,000Da未満及び35,000Daを上回
るシグナルは夫々多電荷及び2量体増幅産物イオンに起因する。
産物は上述のように神経芽細胞腫細胞系(L−A−N−1)の細胞1×106
個から逆転写反応で誘導した固相cDNAから得た。外部プライマー(hTH1
及びhTH2)を使用してcDNA第1鎖に第1回PCRを実施し、このPCR
のアリコ
ートを鋳型とし、入れ子プライマー(biohTH及びhTH6)を使用して第
2回PCRを実施した。入れ子増幅産物を精製し、MALDI−TOF MS分
析した。
図64のスペクトルは入れ子RT−PCR及びMALDI−TOF MS分析
を使用して神経芽細胞腫細胞を検出できることを立証するものである。
実施例15
マススペクトロメトリーを使用するRET癌原遺伝子コドン634突然変異の迅
速検出
材料と方法
プローブ
3個の対立遺伝子の各々におけるコドン634の存在をRsaI酵素消化、1
本鎖コンホメーション多型性又はSangerシーケンシングにより確認した。
5’−ビオチン化順(5’−ビオチン−CAT GAG GCA GAG CA
T ACG CA−3’、配列番号51)及び未修飾逆(5’−GAC AGC
AGC ACC GAG ACG AT−3’、配列番号52)プライマーを
チューブ当たり各8pmol使用してTaq−Polymerase(Boeh
ringer−Man
nheim)でゲノムDNAからRET遺伝子のエキソン11を増幅し(40サ
イクル)、増幅産物をQiagen“QIAquick”キットで精製し、取り
込まれていないプライマーを除去した。Dynalストレプトアビジンをコート
した磁性ビーズ10μL(10mg/mL)に増幅産物15μlを固定化し、製
造業者のプロトコールを使用して変性させ、アンチセンス鎖を含む上清を捨て、
thermoSequenase(TS)DNA Polymerase(Am
ersham)とPharmacia dNTP/ddNTPを使用してPRO
BE反応を実施した。H2O 13μL、TS緩衝液2μL、2mM ddAT
P(又はddTTP)2μL及び0.5mM dGTP/dCTP/dTTP(
又はdGTP/dCTP/dATP)0.2μLに伸長プライマー(5'−CGG
CTG CGA TCA CCG TGC GG−3’、配列番号53)8pm
olを加え、混合物を30秒間94℃に加熱した後、10秒間94℃及び45秒
間50℃を30サイクル繰り返し、5分間95℃でインキュベーション後、上清
をデカントし、10mg/mLグリコーゲン0.5μLを加えてエタノール沈殿
により生成物を脱塩した。得られたペレットを70%エタノールで
洗浄し、風乾し、H2O 1μLに懸濁した。この懸濁液300nLをステンレ
ス鋼試料プローブ上でMALDIマトリックス(1:1H2O:CH3CN中0.
7M 3−ヒドロキシピコリン酸、0.07Mクエン酸アンモニウム)と混合し
、風乾した。Thermo Bioanalysis Vision 2000
MALDI−TOFをターゲット及び変換ダイノード夫々5及び20kVのリ
フレクトロンモードで運転して質量スペクトルを測定した。報告実測質量(Mr
(exp))は外部較正を使用して測定した中性分子の質量である。
診断産物の直接測定
コドン634を含む44bp領域のPCR増幅条件は、Pfuポリメラーゼを
使用し、順プライマーの3’末端にリボヌクレオチドを加えた以外は上記と同一
とした(順、5’−GAT CCA CTG TGC GAC GAG C(配
列番号54)−ribo;逆、5’−GCG GCT GCG ATC ACC
GTG C(配列番号55))。産物固定化及び洗浄後、12.5%NH4O
H80μLを加え、80℃に一晩加熱し、44量体(センス鎖)からプライマー
を開裂し、25量体を得た。高温のうちに上消をピペットで捨て、乾燥し、H2
O 50μL
に再懸濁し、沈殿させ、再懸濁し、上述のようにMALDI−TOFにより測定
した。25量体合成類似体のMALDI−FTMSスペクトルを従来記載されて
いるように測定し(Li,Yら,(1996)Anal.Chem.68:20
90−2096)、要約すると、DNA1〜10pmolを直接挿入プローブ上
でマトリックスと1:1で混合し、外部イオン源(陽イオンモデル)に入れ、3
37nm波長レーザーパルスを照射してイオン化し、rf専用四重極ロッドによ
り6.5テスラ磁場に移し、衝突によりトラップした。15秒遅延後、広帯域c
hirpパルスによりイオンを励起し、256Kデータ点を使用して検出した処
、5秒周期の時間ドメインシグナルが得られた。報告(中性)質量は電荷をもつ
プロトンの質量(1.01Da)を差し引いた後の最高頻度同位体ピークの質量
である。
結果
本実施例の第1のスキームは図65に模式的に示すPROBE反応を利用する
。突然変異部位の下流の相補的鋳型上の領域に特異的に結合するように20量体
プライマーをデサインし、ビオチンで標識してストレプトアビジンをコートした
磁性ビー
ズに固定化した鋳型にアニーリングすると、3種のデオキシヌクレオチド三リン
酸(dNTP)の混合物、ジ−dNTP(ddNTP)及びDNAポリメラーゼ
がPROBEプライマーに結合する(図65)。プライマーはコドン634中の
可変塩基の種に特異的な一連の塩基分だけ伸長し、任意の反応混合物(例えばd
dA+dT+dC+dG)で3種の対立遺伝子に相当する3種の可能な伸長産物
が得られる(図65)。
陰性対照(図66)では、ddATP+dNTP(N=T,C,G)を用いて
PROBE反応を行うと、プライマーのMr(exp)は6135から6726
Daにシフトする(Δm+591)。6432のピークが存在しないのでC→A
突然変異の可能性はなく(図65)、観察される単一ピークの質量はC→A突然
変異体に予想されるA3TC2GからT−ddA伸長した質量(Mr(calc)
6736,−0.15%誤差)よりもC−ddA伸長した質量(Mr(calc
)6721,+0.07誤差)に近い。ddA及びddT反応データをまとめる
と、陰性対照は予想通りコドン634でホモ接合正常であることが明らかである
。
患者1のddA反応も野生型とC→T突然変異の予想値の間
に単一ピーク(Mr(exp)=6731)を生じる(図65b)。しかし、d
dT反応はヘテロ接合野生型(Mr(exp)8249,+0.04%質量誤差
)/C→T突然変異体(Mr(exp)6428Da,+0.08%質量誤差)
に一致する2個の明白に分解したピークを生じる。患者2では、図66cのdd
A産物対はヘテロ接合C→A(Mr(exp)6431,−0.06%質量誤差
)/正常(Mr(exp)6719,−0.03%質量誤差)対立遺伝子に相当
する。ddT反応はこれを裏付け、未分解野生型及びC→A対立遺伝子に一致す
る単一ピークが8264Daで測定される。図66a及び66bを比較すると二
重反復実験の意義がわかり、患者1ではddA反応からの6726のピークは1
種にしか相当しないが、患者1からの同様のピークは実際には質量が15Da異
なる1対の未分解ピークである。
点突然変異検出の代替スキームは診断産物質量の直接測定による対立遺伝子の
区別である。RET634部位を含む44量体をPCRにより生成し、その3’
末端のリボヌクレオチドのNH4OH開裂により19量体センスプライマーを除
去した。
図67はRET634突然変異部位を含む短い増幅産物の合
成類似体の一連のMALDI−FTMSスペクトルを示す。図67a〜c及び6
7d〜fは夫々ホモ接合及びヘテロ接合遺伝子型である。野生型遺伝子型に最高
頻度の同位体ピークを使用して内部較正を行い、この(外部)較正を5個の他の
スペクトルに適用すると、各々20ppmよりも良好な質量精度が得られた。対
立遺伝子の質量のみによる区別は16.00(図67d)、2501(図67e
)又は9.01Da(図65f)の差のある成分のヘテロ接合混合物でも確実で
ある。小さいDNA質量シフトの認識を突然変異の有無の診断の基礎とする場合
には、高性能MSの価値は明白である。最近では遅延抽出(DE)技術の再導入
により短いDNAでMALDI−TOFの性能が改善されており(Roskey
,M.T.ら,(1996)Anal.Chem.68:941−946)、混
合塩基50量体で>103の分解能(RP)が報告されており、可変位置にC又
はT(Δm15Da)をもつ1対の31量体が基線付近で分解している。このよ
うに、DE−TOF−MSはヘテロ接合体の個々の成分の分離に必要なRPを提
供することがわかっている。しかし、DEでもTOFによるDNA質量測定精度
は外部較正を使用すると一般に0.1%(8kDaで8Da)であ
り、診断を誤るに十分高い値である。空間電荷誘導周波数シフト(Marsha
ll,A.G.ら(1991)Anal.Chem.63:215A〜229A
)の可能性にも拘わらず、MALDI−FTMS質量誤差が0.005%(8k
Daで0.4Da)以上になることは稀であり、内部較正が不要である。
本発明のDNA点突然変異法は単塩基突然変異の分析のみならず、単一又は多
重塩基挿入又は欠失の検出や、2、3又は3個のタンデム塩基反復の定量にも適
用できる。PROBE反応は比較的低性能のESI又はMALDI装置により分
析可能な産物を生じ、短い増幅産物質量の直接測定は更に直接的な突然変異検出
手段であるため、FTMSで利用可能な高性能MSへの関心の高まりと共に益々
普及されると思われる。
実施例16
酸レービル共有二官能性トリチルリンカーによる核酸の固体支持体固定化
標準方法に従ってアミノ結合DNAを調製及び精製した。一部(10当量)を
speedvacで蒸発乾涸し、無水DMF/ピリジン(9:1;0.1ml)
に懸濁した。これに塩化ク
ロロトリチル樹脂(1当量、1.05μmol/mg添加)を加え、混合物を2
4時間震盪した。樹脂試料を抽出し、80%AcOHを使用してこれを脱トリチ
ル化し、260nmの吸光度を測定することにより添加量を調べた。添加量は約
150pmol/mg樹脂であった。
80%酢酸中で開裂半減期は実質的に5分未満であることが判明したが、これ
に対してトリチルエーテルを利用したアプローチの半減期はパラ及びメタ置換二
官能性ジメトキシトリチルリンカーで夫々105及び39分である。DNAをク
ロロトリチル樹脂から開裂するにはヒドロキシピコリン酸マトリックス単独で十
分であることも先行結果から分かった。
実施例17
疎水性トリチルリンカーによる核酸の固体支持体固定化
慣用トリチル−on DNA合成を使用してプライマーに5’−ジメトキシト
リチル基を付けた。
フィルターチップに入れたオリゴ精製カートリッジからのCl8ビーズ(0.
2mg)をアセトニトリルで洗浄した後、DNA溶液(25μl中50ng)で
フラッシュした。次にこれをクエン酸アンモニウム緩衝液(70mM,250μ
l)中5%
アセトニトリルで洗浄した。DNAをCl8から分離するために、ビーズを40
%アセトニトリル水溶液(10μl)で洗浄し、Speedvacで約2μlま
で濃縮した。次に試料をMALDIにかけた。
その結果、疎水性相互作用を解離するには約>30%のレベルのアセトニトリ
ル/水で十分であることが判明した。MALDIで使用したマトリックスは50
%アセトニトリルを含むので、(MALDIプロセス中に除去したトリチル基を
用いて)MALDI−TOF MSを使用してDNAを支持体から遊離させ、有
効に検出することができる。
図69は疎水性トリチルリンカーによる核酸固定化の模式図である。
実施例18
ストレプトアビジン−イミノビオチンによる核酸の固体支持体固定化
実験手順
製造業者に推奨される条件に従って、3’−又は5’−アミノリンカーにより
2−イミノビオチンN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Sigma)をオ
リゴヌクレオチドに結合し
た。反応の完了をMALDI−TOF MS分析により確認し、産物を逆相HP
LCにより精製した。
各反応毎にストレプトアビジンをコートした磁性ビーズ(Dynal製品Dy
nabeads M−280 Streptavidin)0.1mgを1M
NaClと50mM炭酸アンモニウム(pH9.5)の存在下に対応するオリゴ
80pmolと室温で1時間インキュベートした。オリゴヌクレオチドと結合し
たビーズを50mM炭酸アンモニウム(pH9.5)で2回洗浄した。次に、ビ
ーズを3−HPAマトリックス2μl中で室温で2分間インキュベートした。上
清の0.5μlアリコートをMALDI−TOFに加えた。ビオチン置換実験で
は、遊離ビオチン1.6mol(結合したオリゴの80倍)を50mMクエン酸
アンモニウム1μlに溶かしてビーズに加えた。5分間室温でインキュベーショ
ン後、3−HPAマトリックス1μlを加え、上清0.5μlをMALDI−T
OF MSに加えた。結合したイミノビオチンオリゴの回収を最大にするために
、上記処理からのビーズをもう一度3−HPAマトリックス2μlと共にインキ
ュベートし、上清0.5μlをMALDI−TOF MSに加えた。マトリック
ス単独及び遊離ビ
オチン処理により、図70及び71に示すようにストレプトアビジンビオチンか
らイミノビオチンオリゴが定量的に遊離した。
実施例19
ループプライマーオリゴ塩基慎重を使用する突然変異分析
材料と方法
ゲノムDNA。ゲノムDNAは健康個体と鎌状赤血球貧血患者から得た。野生
型及び突然変異対立遺伝子は標準Sangerシーケンシングにより慣用方法で
決定した。
PCR増幅。ストレプトアビジンをコートしたビーズで捕獲する後期精製段階
を実施せずに反応産物を使用するようにβ−グロビンの一部のPCR増幅を設定
及び至適化した。順プライマーとしてloop−cod5 d(GAG TCA
GGT GCG CCA TGC CTC AAA CAG ACA CCA
TGG CGC、配列番号58)及びビオチン化逆プライマーとしてβ−11
−bio d(TCT CTG TCT CCA CAT GCC CAG、配
列番号59)を使用してLOOP−PROBE反応のターゲット増幅を実施した
。loop−cod5プライマー中の下線を引いたヌクレオチドは不変CfoI
制限部位をアンプリコンに導入するように突然
変異させており、イタリック体で示したヌクレオチドは増幅産物の一部に相補的
である。総PCR容量は50μlとし、ゲノムDNA200ng、Taq−ポリ
メラーゼ(Boehringer−Mannheim,Cat#1596594
)1U、1.5mM MgCl2、0.2mM dNTP(Boehringe
r−Mannheim,Cat#1277049)及び各プライマー10pmo
lを含むものとした。5分間94℃の後、30秒間94℃、30秒間56℃、3
0秒間72℃を40サイクルと、2分間72℃最終伸長のサイクリング条件を使
用してβ−グロビン遺伝子の特定フラグメントを増幅した。
ビオチン化鋳型の捕獲及び変性。ストレプトアビジンをコートした常磁性ビー
ズ(10mg/ml;Dynal,Dynabeads M−280ストレプト
アビジンCat#112.06)10μlを5×結合溶液(5M NH4Cl,
0.3MNH4OH)で処理し、40μlPCR容量に加えた(増幅産物10μ
lは電気泳動を調べるためにとっておいた)。30分間37℃でインキュベーシ
ョン後、上清を捨てた。捕獲した鋳型を100mM NaOH50μlで5分間
周囲温度で変性させた後、50mM NH4OH50μlで1回、10mM T
ris.
Cl(pH8.0)100μlで3回洗浄した。1本鎖DNAをPROBE反応
の鋳型として使用した。
プライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)反応。酵素としてSequenas
e 2.0(USB Cat#E70775Z、緩衝液を含む)と、Boehr
inger−Mannheim製品dNTP及びddNTP(Cat#1277
049及び1008382)を使用してPROBE反応を実施した。dNTP(
dCTP,dGTP,dTTP)とddATPの比は1:1とし、合計使用濃度
は各ヌクレオチド50μMとした。1倍Sequenase−緩衝液5μlの添
加後、ビーズを5分間65℃、10分間37℃でインキュベートした。この時間
中に部分的に自己相補的なプライマーがターゲット部位にアニールした。100
mMジチオトレイトール(DTT)0.5μl、dNTP/ddNTP溶液3.
5μl及びSequenase(0.8U)0.5μlの添加後に酵素反応が開
始し、37℃で10分間インキュベートした。その後、ビーズを1倍TE緩衝液
(10mM Tris,1mM EDTA,pH8.0)で1回洗浄した。
CfoI制限消化。Boehringer−Mannheim
から購入した1倍緩衝液L中10U CfoIを使用して総容量5μl中で制限
酵素消化を実施した。インキュベーション時間は37℃で20分間とした。
診断産物のマススペクトロメトリー分析用条件付け
制限消化後、上清をH2O 45μl、3M酢酸NH4(pH6.5)10μl
、グリコーゲン(水中10mg/ml、Sigma,Cat#G1765)0.
5μl及び無水エタノール110μlで1時間室温で沈殿させた。13,000
gで10分間遠心分離後、ペレットを70%エタノールで洗浄し、18Mohm
/cm H2O2μlに再懸濁した。ビーズを0.7Mクエン酸NH4 100μ
l、次いで0.05Mクエン酸NH4100μlで洗浄した。ビーズを50mM
NH4OH 2μl中で80℃に2分間加熱することにより診断産物を得た。
試料調製及びMALDI−TOFマススペクトロメトリー分析。
ビーズを試料ターゲット上で50mM NH4OH中で加熱後、再懸濁したD
NA/グリコーゲンペレット又は上清0.3μlとマトリックス溶液(1:1H2
O:CH3CN中0.7M3−ヒドロキシピコリン酸、0.07M二塩基性クエ
ン酸アン
モニウム)0.6μlを混合することにより試料調製を実施し、風乾した。未改
造Perspective Voyager MALDI−TOFのソース領域
に試料ターゲットを自動導入し、ターゲット及び変換ダイノード夫々5及び20
kVの遅延抽出リニアモードで運転した。理論分子量(Mr(calc))は原
子組成から計算し、報告実測(Mr(exp))値は1プロトン化形態の値であ
る。
結果
鎌状赤血球貧血を誘発するヒトβ−グロビン遺伝子のコドン6の最も一般的な
突然変異の検出にLOOP−PROBEを適用した。方法の各段階を図72に模
式的に示す。コドン6の分析では、ビオチン化逆プライマーβ11bioとCf
oI制限部位を導入するように修飾したプライマーloop−cod5を使用し
てPCRによりβ−グロビン遺伝子の一部を増幅した(図72a)。増幅産物は
192bp長であった。PCR後に、上述のようにストレプトアビジンをコート
した常磁性粒子に増幅産物を結合した。2本鎖増幅産物の変性によりアンチセン
ス鎖を単離した(図72b)。短時間の熱変性段階と37℃のインキュベーショ
ンにより相補的3’末端の分子内アニーリング
を実施した。アンチセンス鎖の3’末端はこうして部分的に2本鎖になった(図
72c)。アンチセンス鎖の自己アニールした3’末端の下流のDNAを分析す
るために、ddATP、dCTP、dGTP、dTTPを使用してプライマーオ
リゴ塩基伸長(PROBE)を実施した(図72d)。こうすると、分析個体の
遺伝子型に特異的な長さの種々の産物が生成される。これらの診断産物の長さを
決定する前に、伸長産物の5’を切断するCfoI制限エンドヌクレアーゼと共
にDNAをインキュベートした。この段階でステムループは鋳型DNAから遊離
するが、伸長産物は鋳型に付着し続ける。その後、伸長産物を加熱して鋳型鎖か
ら変性させ、MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより分析する。
MALDI−TOF分析は非較正装置で実施したので、実測値と予測値の質量
差は理論計算よりも約0.6%高かった。しかし、得られた結果は反復実験内で
確実且つ再現可能であった。制限消化後に分析した全上清でステムループを検出
することができた。遺伝子型から独立してステムループは全分析で分子量約81
50Da(予測値8111Da)であった。図73aに1例を示す。この図面で
質量4076Daの第2のピークはス
テムループの2電荷イオンである。図73b〜73dは夫々の挿入図に示すよう
な異なる遺伝子型の分析を示す。HbAは野生型遺伝子型であり、HbC及びH
bSは鎌状赤血球病を誘発するβ−グロビン遺伝子のコドン6における2種の異
なる突然変異である。野生型状態では、分子量4247Daの単一ピークと66
96Daの別のピークが検出される(図73b)。後者はPCR反応で使用され
なかったビオチン化PCRプライマー(β−11−bio)に対応し、実験によ
っては除去されている。前者はHbAの診断産物に対応する。HbS形質をもつ
2個の各DNA分子とヘテロ接合性鎌状赤血球病化合物(HbS/HbC)を分
析しても明白に予想通りの結果が得られる(図73c及び73d)。
結論として、LOOP−PROBEは突然変異、特に主要疾患を誘発する突然
変異又は一般的多型性の強力な検出手段である。この方法は特定の突然変異検出
用試薬を使用する必要がないため、プロセスが簡単になり、自動化し易い。分析
する特定伸長産物はプライマーから開裂されるので、慣用方法に比較して短い。
更に、アニーリング効率は添加したプライマーのアニーリングよりも高いので、
より多量の産物を生成できる。この
方法は多重化及び種々の検出スキーム(例えば単塩基伸長、オリゴ塩基伸長及び
シーケンシング)に適合可能である。例えば、ループ−プライマーの伸長を使用
して高多型性領域内で短い診断シーケンシングラダーを生成し、例えばHLA型
別又は耐性及び種型別(例えばMycobacterium tubercul
osis)を実施することができる。
実施例20
CKR−5のT7−RNAポリメラーゼ依存性増幅及びMALDT−MSによる
検出
材料と方法
ゲノムDNA。ヒトゲノムDNAは健康な個体から得た。
PCR増幅及び精製。センスプライマーd(ACC TAG CGT TCA
GTT CGA CTG AGA TAA TAC GAC TCA CTA
TAG CAG CTC TCA TTT TCC ATA C(配列番号6
0))としてckrT7fを使用してCKR−5遺伝子の一部のPCR増幅を行
った。下線配列はCKR−5に相同の配列に対応し、太字配列はT7−RNAポ
リメラーゼプロモーター配列に対応し、イタリック体の配列はランダムに選択し
た。アンチセンスプラ
イマーd(AAC TAA GCC ATG TGC ACA ACA(配列番
号61))としてckr5rを使用した。QIAquick精製キット(Qia
gen,cat#28104)を使用して増幅産物の精製と取り込まれなかった
ヌクレオチドの除去を行った。最終PCR容量は50Aμlとし、ゲノムDNA
200ng、Taq−ポリメラーゼ(Boehringer−Mannheim
,Cat#1596594)1U、1.5mM MgCl2、0.2mM dN
TP(Boehringer−Mannheim,Cat#1277049)及
び各プライマー10pmolとした。5分間94℃の後、45秒間94℃、45
秒間52℃、5秒間72℃を40サイクルと、5分間72℃の最終伸長からなる
サイクリング条件を使用してCKR−5遺伝子の特定フラグメントを増幅した。
T7−RNAポリメラーゼ条件。精製したDNAの3分の1(約60ng)を
T7−RNAポリメラーゼ反応で使用した。(Boehringer−Mann
heim,Cat#881767)。反応は試薬に含まれる緩衝液を使用して製
造業者の条件に従って37℃で2時間実施した。最終反応容量は20μlとし、
RNアーゼ(33U/μl)0.7μlを加えておい
た。伸長反応後、酵素を5分間65℃でインキュベートして不活化した。
DNA消化及び診断産物のマススペクトロメトリー分析用条件付け。
無RNアーゼDNアーゼI(Boehringer−Mannheim,ca
t#776758)を不活化T7混合物に加えて室温で20分間インキユベート
することにより鋳型DNAを消化した。グリコーゲン(水中10mg/ml、S
igma,Cat#G1765)1μl、3M酢酸NH2(pH6.5)1/1
0容量及び無水エタノール3容量を加え、室温で1時間インキュベートすること
により沈殿させた。13,000gで10分間速心分離後、ペレットを70%エ
タノールで洗浄し、18Mohm/cm H2O3μlに再懸濁した。1μlを
アガロースゲルで分析した。
試料調製及びMALDI−TOFマススペクトロメトリー分析。
試料ターゲット上でマトリックス溶液(1:1H2O:CH3CN中0.7M
3−ヒドロキシピコリン酸、0.07M二塩基性クエン酸アンモニウム)0.6
μlを再懸濁DNA/グリコーゲンペレット0.3μlと混合することにより試
料調製を
実施した。試料ターゲットを未改造Finnigan VISION2000
MALDI−TOFのソース領域に自動導入し、5kVのリフレクトロンモード
で運転した。理論分子量は原子組成から計算し、報告実測値は1プロトン化形態
の値である。
結果
ケモカインレセプターCKR−5はHIV−1における主要コレセプターとし
て同定されている(例えばHuman Genome SciencesのWO
96/39437;Cohen,J.らScience 275:1261参照
)。HIV−1血清陰性集団の16%には32bp欠失を特徴とする突然変異対
立遺伝子が認められるが、HIV−1血清陽性集団ではこの対立遺伝子の頻度は
35%低い。この対立遺伝子のホモ接合個体はHIV−1耐性であると予想され
る。T7−RNAポリメラーゼ依存性増幅を利用してケモカインレセプターCK
R−5のこの特異領域を同定した(図74)。慣用PCRを使用してヒトゲノム
DNAを増幅した。センスプライマーは、ポリメラーゼ結合を助長する24塩基
のランダム配列とT7−RNAポリメラーゼプロモーター配列を含むように改変
した(図75)。推定転写開始はプロモーター配列の5’の最初の
塩基である。ckr5rをアンチセンスプライマーとして使用した。PCR条件
は上記に要約した通りである。野生型対立遺伝子に由来する増幅産物は75bp
長である。Qiagen QIAquick精製キットを使用してプライマーと
ヌクレオチドを増幅産物から分離した。精製物の3分の1をT7−RNAポリメ
ラーゼによるin vitro転写に用いた。鋳型DNAの干渉を避けるために
、無RNアーゼDNアーゼIを加えて消化した。開裂したDNA上清中に残し、
RNAを沈殿させた。再溶解したRNAの一部をアガロースゲルで分析し、残り
の試料はMALDI−TOF分析に用いた。産物の予想計算質量は24560D
aである。概算質量25378.5Daに対応する主要ピークを観察することが
できる。このピークは非常に広いので、分子量を正確に測定することはできなか
った。このピークは残留DNA鋳型には対応しない。第1に鋳型DNAは消化さ
れ、第2に、DNA鎖は夫々質量23036.0及び23174Daをもつと思
われるからである。
本実施例から明らかなように、T7 RNAポリメラーゼはターゲットDNA
を有効に増幅することができる。生成したRNAはマススペクトロメトリーによ
り検出することができる。
RNAポリメラーゼにより特異的に取り込まれるが、それ以上伸長しない修飾(
例えば3’−デオキシ)リボヌクレオチドと組み合わせると、本方法は鋳型DN
Aの配列を決定するために適用することができる。
実施例21
RNAエンドヌクレアーゼ消化産物のMALDエマススペクトロメトリー
材料
合成RNA(試料A:5’−UCCGGUCUGAUGAGUCCGUGAG
GAC−3’(配列番号62);試料B:5’−GUCACUACAGGUGA
GCUCCA−3’(配列番号63);試料C:5’−CCAUGCGAGAG
UAAGUAGUA−3’(配列番号64))試料はDNA技術(Aahus,
デンマーク)から得、変性ポリアクリルアミドゲル(Shaler,T.A.ら
(1996)Anal.Chem.63:5766−579)で精製した。RN
アーゼT1(Eurogentec)、U2(Calbiochem)、A(Bo
hringer−Mannheim)及びPhyM(Pharmacia)はそ
れ以上精製せずに使用した。ストレプトアビジン
をコートした磁性ビーズ(Dynabeads M−280 Streptav
idin,Dynal)は0.1%BSA及び0.02%NaN3を含むリン酸
緩衝塩類(PBS)にビーズ6〜7×108個/ml(10mg/ml)を溶か
した懸濁液として使用した。3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)(Ald
rich)は、他の文献(Little,D.P.ら(1995)Proc.N
atl.Acad.Sci.U.S.A.92,2318−2322)により詳
細に説明されているように使用前に別の脱塩段階により精製した。
方法
in vitro転写反応。(制限酵素BamHIで直鎖化した)プラスミド
pUTMS2をT7RNAポリメラーゼ(Promega)で転写することによ
り5’−ビオチン化49nt in vitro転写産物(配列番号65):A
GGCCUGCGGCAAGACGGAAAGACCAUGGUCCCUNAU
CUGCCGCAGGAUCを生成した。転写反応には、1u/μl RNAガ
ード(Rnaxインヒビター、Pharmacia)、0.5mM NTP、1
.0mM 5’−ビオチン−ApGジヌクレオチド、40mM Tris−HC
l(pH8.0)、6mM MgCl2、2mMスペルミジン及び10mM D
TTを含む50μl容量中で鋳型DNA3μgとT7RNAポリメラーゼ50u
を使用した。37℃で1時間インキュベーションを行った後、T7RNAポリメ
ラーゼ50単位の別のアリコートを加え、インキュベーションを更に1時間続け
た。混合物を2M酢酸NH4に調整し、エタノール1容量とイソプロパノール1
容量を加えてRNAを沈殿させた。沈殿したRNAを4℃で90分間20,00
0×gで遠心分離して集め、ペレットを70%エタノールで洗浄し、乾燥し、8
M尿素に再溶解した。他の文献(Shaler,T.A.ら(1996)Ana
l.Chem.68:576−579)に記載されているように変性ポリアクリ
ルアミドゲル電気泳動により更に精製した。5’−ビオチン化転写産物と非ビオ
チン化転写産物の比は約3:1であった。
リボヌクレアーゼアッセイ。選択したRNアーゼで部分消化するために、表V
IIに要約するような種々の酵素濃度及びアッセイ条件を使用した。各酵素の溶
剤は製造業者の指示に従って選択した。合成RNA試料とin vitro転写
産物の濃度は5〜10×10-6Mに調整した。 アッセイの0.6μlアリコートを3HPA溶液1.5μlと混合することに
より選択時間で反応を停止した。次に、MALDI−MS分析に備えて溶剤を冷
気流中で蒸発させた。
等容量(2.0μl)の25%水酸化アンモニウムとRNA試料(5〜10×
10-6M)を60℃で混合することにより制限アルカリ加水分解を実施した。選
択時間に1μlアリコートを分取し、冷気流中で乾燥した。これらの試料の場合
には、まず冷気流中で消化産物を乾燥してからマトリックス溶液1.5μlとN
H4+負荷カチオン交換ポリマービーズ0.7μlを加えることが重要であるこ
とが分かった。
5’−ビオチン化フラグメントの分離。ストレプトアビジンをコートした磁性
ビーズを使用し、部分RNアーゼ消化後にin vitro転写産物の5’−ビ
オチン化フラグメントを分離した。5’−ビオチン−pApG−ジヌクレオチド
により開始された転写反応中にこの試料中のビオチン部分が導入された。使用前
に、ビーズを2×結合及び洗浄用(b&w)緩衝液(20mM Tris−HC
l,2mM EDTA,2M NaCl,pH8.2)で2回洗浄し、2×b&
w緩衝液に10mg/mlで再懸濁した。上記プロトコールを使用してRNA
in vitro転写産物約25pmolをRNアーゼU2で消化した。10m
Mトランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N’,N’−四酢酸(
CDTA)を含む95%ホルムアミド3μlを90℃で5分間加えて消化を停止
した後、氷冷した。次いで、消化産物6μlをビーズ懸濁液6μl及びb&w緩
衝液3μlと共に室温で15分間インキュベートすることによりビオチン化フラ
グメントの捕獲を行った。製造業者により明示されているようにビーズ1mg当
たりビオチン化オリゴヌクレオチド200pmolのビーズ結合能であるので、
ほぼ2倍のオリゴヌクレオチドを使用してビーズの完全な添加を確保した。上清
を取り出し、ビーズをH2O 6μlで2回洗浄した。CDTAと95%ホルム
アミドを90℃に5分間加熱した。溶剤とホルムアミドの蒸発後、フラグメント
≦2.5pmolをH2O 2μlに再懸濁し、上述のようにMALDI−MS
により分析した。
MALDI−MS用試料調製。3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)を超
純水に約300mMの濃度に溶かした。従来詳細に記載されているように(Li
ttle,D.P.ら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci.U
.S.
A.92:2318−2322)金属カチオンをNH4 +と交換した。分析物溶液
の0.6μlのアリコートを平坦不活性金属支持体上で3−HPA1.5μlと
混合した。NH4 +負荷カチオン交換ポリマービーズの溶液0.7μlを加え、試
料溶液中と支持体表面上に残っているアルカリカチオンを除去した。溶剤蒸発中
に、調製物の内部に蓄積したビーズは分析に使用されず、ピペットチップで容易
に除去した。
装置。典型的なVision 2000(ThermBioanalysis
,Hemel,Hempstead,英国)リフレクトロン飛行時間マススペク
トロメーターをマススペクトロメトリーに使用した。イオンは周波数3倍ND:
YAGレーザー(355nm,5ns;Spektrum GmbH,Berl
in,ドイツ)の照射により生成し、10keVまで加速した。遅延イオン抽出
を使用するとシグナル対ノイズ比及び/又はシグナル強度が実質的に増加するの
で、図面に示すスペクトルは遅延イオン抽出を使用して獲得した。システムの等
価飛行経路長は1.7mであり、基本圧力は104-Paである。高質量イオンを
有効に検出するために変換ダイノードを取り付けたディスクリートダイノード二
次電子マルチプライヤー(R
2362,Hamamatsu Photonics)でイオンを検出した。変
換ダイノードに加えるイオンの総衝撃エネルギーは検出する質量に応じて16〜
25kdVの範囲の値に調節した。SEMの前置増幅出力シグナルは400MH
zまでのサンプリング速度でLeCroy9450トランジェントリコーダー(
LeCroy,Chestnut Ridge,NY,米国)によりディジタル
化した。保存とその後の評価のために、特注ソフトウェア(ULISSES)を
搭載したパーソナルコンピューターにデータを移した。全スペクトルは陽イオン
モードで測定した。図面に示すスペクトルは各々20〜30の単照射スペクトル
の平均である。
結果
RNアーゼの特異性。塩基特異的RNA開裂とMALDI−MSを併用するに
は、選択した酵素の活性及び特異性を維持するように至適化した反応条件と、M
ALDIの境界条件を満たすことが必要である。不適合の主因は、従来記載され
ている反応に一般に使用されているリン酸Na、クエン酸Na又は酢酸NaやE
DTA等のアルカリイオン緩衝液がMALDI試料調製を妨げ、マトリックス結
晶化及び/又は分析物取り込みを損
なうと予想されるためである。これに対して、Tris−HCl又はアンモニウ
ム塩緩衝液はMALDI適合性である(Shaler,T.A.ら(1996)
Anal.Chem.68:576−579)。更に、試料中のアルカリ塩は分
析物の多重塩の不均一混合物を形成し、リン酸基数の増加と共に問題は増加する
。このような混合物は質量分解能及び精度とシグナル対ノイズ比を低下させる(
Little,D.P.ら(1995)Proc.Natl.Acad.Sci
.U.S.A.92:2318−2322;Nordhoff,E.,Cram
er,R.Karas,M.,Hillenkamp,F.,Kirpekar
,F.,Kristiansen,K.及びRoepstorff,P.(19
93)Nucliec Acids Res.,21,3347−3357)。
従って、文献に記載されている条件を多少変更してRNアーゼ消化を行った。こ
れらの条件は上記表VIIに要約した。RNアーゼT1、A、CL3及びクサチビ
ンには、Tris−HCl(pH6〜7.5)を緩衝液として使用した。20m
M DACはRNアーゼU2及びPhyMの最大活性に推奨されているpH5を
提供する。濃度10〜20mMのこれらの化合物はMALDI分
析をさほど妨げないことが判明した。これらの条件下で選択リホヌクレオチドの
特異性を試験するために、異なるヌクレオチド配列をもつ3種の合成20〜25
量体RNA分子を消化した。
図77のMALDI−MSスペクトルはRNアーゼT1、U2、PhyM、Aに
よる部分消化とアルカリ加水分解後に得られた25nt RNAの5種の異なる
開裂パターン(A〜E)を示す。これらのスペクトルは、配列を最適にカバーす
るように実験により決定したインキュベーション時間後にアッセイから分取した
アリコートから得た。得られた試料はマススペクトロメトリー前に断片化しなか
ったので、その時点で各RNアーゼにより生成された全フラグメントを含んでい
る。実際に、開裂の均一性は特定ホスホジエステル結合に優先的な攻撃により変
化し得る(Donis−Keller,H.,Maxam,A.M.,及びGi
lbert,W.(1977)Nucleic Acids Res.,4,1
957−1978;Donis−Keller,H.(1980)Nuclei
c Acids Res.,8 3133−3142)。予想されるフラグメン
トの大部分は実際にスペクトルに観察される。使用されているような反応プロト
コールでは、2’、3’−環状リン酸
基と仮定した場合にしか全フラクメントの正しい帰属は不可能であることにも留
意すべきである。このような環状リン酸は開裂反応の中間体であり、酵素を用い
る別の独立した遅い反応段階で加水分解されることがよく知られている(Ric
hards,F.M.とWycoff,H.W.in The Enzymes
Vol.4,第3版(Boyer,P.D.編)746−806(1971,
Academic Press,New York);Heinemann,U
とW.Saenger(1985)Pure Appl.Chem.57,41
7−422;Ikehara,M.ら(1987)Pure Appl.Che
m.59−965−968;Vreslow,R.とXu,R.(1993)P
roc.Nal.Acad.Sci.USA,90,1201−1207)。少
数の例では異なるフラグメントの質量が1ダルトン程度しか違わない場合もある
。これらの場合には、質量ピークをフラグメントに明確に帰属させることができ
ない。そこで、これらの曖昧さを解決するために、更に2種の異なる20nt
RNA試料の消化が行われた(Hahner,S.,Kirpekar,F.,
Nordoff,E.,Kristiansen,K.,
Roepstorff,P.及びHillenkamp,F.(1996)Pr
oceedings of the 44th ASMS Conferenc
e on Mass Spectrometry,Portland,Oreg
on)。試験した全試料で、選択したリボヌクレオチドは特定ヌクレオチドでの
み開裂し、単一及び多重開裂からのフラグメントが得られると思われる。
図77中、元の5’末端を含むフラグメントを示すピークは矢印で示す。無印
の全ピークは内部配列又は保存された3’末端をもつ配列に帰属させることがで
きる。完全な配列を得るには、元のRNAの5’又は3’末端の一方のみをもつ
可能な全フラグメントで十分である。実際に、全3種の合成RNA試料のインキ
ュベーション後に得られるスペクトルは異なる全RNアーゼの5’イオンの元の
もののほぼ完全な組みを含むので、5’末端フラグメントはこの目的に好適であ
る(Hahner,S.,Kirpekar,F.,Nordoff,E.,K
ristiansen,K.,Roepstorff及びHilenkamp,
F.(1996)Proceedings of the 44th ASMS
Conference
on Mass Spectrometry,Portland,Oregon
)。内部フラグメントは多少少なく、元の3’末端を含むフラグメントはスペク
トルで抑制されているように見える。文献の報告されている知見通り(Gupt
a,R.C.とRanderath,K.(1977)Nucleic Aci
ds Res.,4,1957−1978)、RNアーゼT1及びU2によるRN
A25量体の部分消化産物では(内部フラグメントであるか又は元の5’末端を
含む場合であっても)3’末端に近い開裂が部分的に抑制された。このような開
裂からのフラグメントは質量スペクトル中に弱く十分に分解されないシグナルと
して現れる。
もっと大きいRNA分子では、二次構造が酵素開裂の均一性に影響を与えるこ
とが知られている(Donis−Keller,H.,Maxam,A.M.及
びGilbert,A.(1977)Nucleic Acids Res.8
,3133−3142)。これは主に反応条件を変えることにより解決すること
ができる。5〜7M尿素を含むアッセイ溶液では、RNAは十分に変性されるが
、T2、U2、A、Cl3及びPhyM等のRNアーゼの活性は保持されることが
知られている(Do
nis−Keller,H.,Maxam,A.M.及びGilbert,A.
(1977)Nucleic Acids Res.,4,2527−2537
;Boguski,M.S.,Hieter,P.A.及びLevy,C.C.
(1980)J.Biol.Chem.,255,2160−2163;Don
is−Keller,H.(1980)Nucleic Acids Res.
,8,3133−3142)。試料中の尿素濃度がこのように高いと、3−HP
AをマトリックスとするUV−MALDI分析は不可能である。反応緩衝液中2
Mまでの尿素濃度では、マトリックス結晶化に有意変化が観察されたが、試料の
MALDI分析はまだ可能であった。2M尿素の存在下で消化したRNA20量
体(試料B)のスペクトルは表VIIに記載した条件下で得られるものとまだ似
ていた。
フラグメントパターンの複雑さを少なくし、各ヌクレオ塩基のマッピングを容
易にするためには、1種のヌクレオ塩基のみを認識するRNアーゼによる消化が
望ましい。RNアーゼCL3及びクサチビンはシチジル酸残基で開裂することが
報告されている酵素である。非変性条件下でRNアーゼ20量体(試料B)をC
L3及びクサチビンで制限消化すると、従来報告されている
データ(Boguski,M.S.,Hieter,P.A.及びLevy,C
.C.(1980)J.Biol.Chem.,255,2160−2163;
Rojo,M.A.,Arias,F.J.,Iglesias,R.,Fer
reras,J.M.,Munoz,R.,Escarmins,C.,Sor
iano,F.,Llopez−Fando,Mendez,E.,及びGir
bes,T.(1994)Planta,194,328−338)と同様に、
確かにシチジル残基での開裂に対応するフラグメントが観察された(図78)。
しかし、図78の分解パターンによると、全てのシチジン残基が認識される訳で
はなく、特に隣接するC残基は認識されていない。RNアーゼCL3も二次構造
の影響を受け易いと報告されている(Boguski,M.S.,Heiter
,P.A.,及びLevy,C.C.(1980)J Biol.Chem.,
255,2160−2163)が、本試験で使用した寸法のRNアーゼではこの
ような影響は少ない。従って、この場合に認識されない開裂部位はこの酵素が特
異性を欠くためであると考えられる。これらのデータを裏付けるために、RNA
20量体(試料C)で更にRNアーゼCL3消化を行った。この分析物の
配列の結果として、シチジル酸を含む全3個の結合は容易に加水分解されたが、
ウリジル酸残基での開裂も検出された。温度増加(90℃)、種々の酵素対基質
比及び2M尿素の添加等、反応条件を変えても予想される特異的消化は生じなか
ったので、この酵素はシーケンシングにそれ以上適用しなかった。Cucumi
s sativus L.の乾燥種子から単離した新規シチジン特異的リボヌク
レアーゼであるクサチビンの採用はRNAシーケンシングに有望であると思われ
た(Rojo,M.A.,Arias,F.J.,Iglesias,R.,F
erreras,J.M.,Munoz,R.,Escarmis,C.,So
riano,F.,Llopez−Fando,J.,Mendez,E.及び
Girbes,T.(1994)Planta,194,328−338)。図
78に示すように、酵素の推奨濃度でシチジン残基の全てが加水分解された訳で
はなく、ウリジル酸残基にも開裂が生じた。従って、RNアーゼCL3及びクサ
チビンではシチジン残基のマッピングに所望される配列情報が得られないので、
それ以上使用しなかった。他方、Physarum polycephalum
RNアーゼ(ApN,NpNを開裂)及び膵RNアーゼA(UpN,
CpNを開裂)等の多重特異性をもつRNアーゼを使用すると、ピリミジン残基
を区別することができる(図77参照)。単一特異的RNアーゼU2により生成
され、図77Cのスペクトルに現れている全5’末端フラグメントはRNアーゼ
PhyM消化産物のスペクトル(図77D)でも明白であった。6個のウリジル
開裂部位のうちの5個をこの間接法によりこうして固有に同定することができた
。次段階では、ウリジン開裂部位の情報を使用し、同様に元の5’末端を含むイ
オンのみを使用してRNアーゼAと共にインキュベーション後に記録したスペク
トル(図77E)からウリジル酸残基の開裂部位を同定した。4個の予想開裂部
位のうちの2個をこうして同定した。元の5’末端を含むフラグメントのみを配
列決定に使用する場合には、これらのスペクトルから多少のアーチファクト認め
られる。最初から2個のヌクレオチドは低質量マトリックスバックグラウンドで
シグナルが消えるので通常は分析されない。このため、対応するフラグメントは
U及びC特異的開裂スペクトル中に存在しない。3’末端に近接する開裂部位を
もつ大きいフラグメントは収率が低く(上記参照)、非消化転写産物の強力なシ
グナルが近くにあることが多いので、特にRNアーゼT1及びU2消
化産物では同定しにくいことが多い。従って、22及び23位の開裂はG特異的
RNアーゼTのスペクトル(図77A)には現れず、U2及びPhyM消化産物
のスペクトル(図77C及びD)から開裂部位24を同定することはできない。
同様に図77EのRNアーゼAスペクトルでも2個の隣接するシチジル酸部位1
6及び17は同定できない。これらの知見から明らかなように、5’末端フラグ
メントのみを決定しても必ずしも十分ではなく、完全な配列分析には内部フラグ
メントに含まれる情報が必要である。
最後に、制限アルカリ加水分解は、配列データを補うために使用可能なフラグ
メントの連続を提供する(図77B)。この場合も、加水分解は全ホスホジエス
テル結合に等しく行われるが、スペクトルは5’末端を含むフラグメントのイオ
ンが優勢である。酵素消化の場合と同様に、正しい質量帰属には全フラグメント
が2’,3’−環状リン酸をもつと仮定する必要がある。従って、ピークの分布
は3’−エキソヌクレアーゼ消化後に得られるものに似ている(Pieles,
U.,Zurcher,W.,Schar,M.及びMoser,H.E.,(
1993)Nucleic Acids Res.,21,3191
−3196;Nordhoff,E.ら(1993)Book of Abst
racts,13th Internat.Mass Spectrom.Co
nf.,Budapest p.218;Kirpekar,F.,Nordh
off,E.,Kristiansen,K.,Roepstorff,P.,
Lezius,A.Hahner,S.,Karas,M.及びHillenk
amp.F.(1994)Nucleic Acid Res.,22,386
6−3870)。従って、原則としてアルカリ加水分解は単独で完全なシーケン
シングに使用することができると思われる。しかし、大きいフラグメントイオン
で質量が数質量単位しか違わないものはスペクトルで分解せず、ピークが部分的
又は完全に分解するとしても、大きいイオンの質量は1Daよりも良好な必要精
度で測定することができないので、これは非常に小さいオリゴヌクレオチドにし
か適用できない。元の5’末端を含むフラグメントのみがマススペクトロメトリ
ー前に分離されるならば、特に未知のRNA試料の消化産物からのスペクトルの
解読は実質的に簡単になる。このアプローチの方法を次項に記載する。
5’−ビオチン化フラグメントの分離。ストレプトアビジン
をコートした磁性ビーズ(Dynal)が元の5’末端を含むフラグメントを消
化産物から抽出できるかどうかを試験した。この固相アプローチにチェックすべ
き主要な特徴はビオチン化種の選択的固定化と効率的溶離である。先行実験で5
’−ビオチン化DNA(19nt)とストレプトアビジンをインキュベートし、
標準調製後にMALDI分析した。ストレプトアビジン−ビオチン相互作用の高
親和性にも拘わらず、MALDIスペクトルに無傷の複合体は認められなかった
。その代わりに、ストレプトアビジンとビオチン化DNAのモノマーサブユニッ
トのシグナルか検出された。複合体か酸性マトリックス溶液(pKA3)中又は
MALDI脱着プロセス中に解離するか否かは不明である。驚くべきことに、ス
トレプトアビジンを磁性ビーズ等の固体表面に固定化すると、同一結果は観察さ
れない。2種の5’−ビオチン化DNA試料(19nt及び27nt)と2種の
未標識DNA配列(12nt及び22nt)の混合物をビーズと共にインキュベ
ートした。ビーズを抽出し、注意深く洗浄した後、3−HPA MALDIマト
リックス中でインキュベートした。これらの試料から分析物シグナルを得ること
はできなかった。ビオチン化種がビーズに結合しているか否か
を試験するために、抽出及び洗浄したビーズを95%ホルムアミドの存在下に9
0℃に加熱することにより溶離を行った。この操作はストレプトアビジンを変性
させ、ストレプトアビジン/ビオチン複合体を破壊すると予想される。図79B
は2種のビオチン化種の予想シグナルを示し、MALDI法における結合分子の
遊離がビーズの結合よりもむしろ問題であることを証明している。図79Aは標
準調製後の同一試料のスペクトルを示し、基準として全4種の分析物のシグナル
を示す。溶離後でマススペクトロメトリー分析前にホルムアミドを完全に除去す
ることが重要であり、そうしないと、マトリックスの結晶化を損なうことが分か
った。スペクトル79Bにおける質量分解能及びシグナル対ノイズ比は基準スペ
クトルと同等である。Dynalビーズと共にインキュベーション後に非ビオチ
ン化分析物のシグナルは全く又は僅かしか検出されなかったので、これらの結果
はストレプトアビジン−ビオチン相互作用の特異性を裏付けている。結合用緩衝
液に洗剤Tween−20を加えると、非特異的結合の抑制が増すことが報告さ
れている(Tong,X.とSmith,L.M.(1992)Anal Ch
em.,64,2672−2677)。この効果は本試験でも
確認することができたが、ピークの広幅化が洗剤の残留量によるスペクトルの品
質を悪化させた。捕獲ビオチン化種の検出の前提条件として溶離段階が必要なの
は、ストレプトアビジンの磁性ビーズ固定化による複合体の安定化効果のためで
あると考えられる。
この固相法をシーケンシングに実際に適用するには、ビオチン化種の結合及び
溶離効率を最大にすることが最も重要である。従来検討されている種々の条件の
うちでは、DNAシーケンシングの場合には緩衝液にイオン強度を提供すること
によりEDTA等の塩を加えると最良の結果が得られた(Tong,X.とSm
ith,L.M.(1992)Anal Chem.,64,2672−267
7)。固相方法に及ぼすこのような効果を試験するために、5’−ビオチン化R
NA in vitro転写産物(49nt)の結合及び溶離に関して数種の添
加剤を試験した。結果を図80に示す。各シグナルの相対強度、シグナル対ノイ
ズ比及び分解能から判断すると、10mM CDTAを含む95%ホルムアミド
溶液(図80D)が結合/溶離に最も有効である。CDTAは2価カチオンのキ
レート化剤として作用するので、RNAの固有二次及び三次構造の形成が
妨げられる。エレクトロスプレーマススペクトロメトリーによるRNA試料の分
析では、このような条件下で感度とスペクトル分解能の改善が立証されている(
Limbach,P.A.,Crain,P.F.及びMcCloskey,J
.A.(1995)J Am.Soc.Mass.Spectrom.,6,2
7−39)。MALDI分析の改善はホルムアミドのみを含む溶液で得られるス
ペクトルに比較して実際にさほど顕著ではない(図81b)が、良好な品質のス
ペクトルの再現性はCDTA/ホルムアミド溶液のほうが実質的に改善された。
従って、結合/溶離の改善に加え、この添加剤は分析物のマトリックス結晶取り
込みも改善すると思われる。残念ながら、EDTA、CDTA又は25%水酸化
アンモニウムを含むホルムアミド溶液の場合には、高質量側に顕著なシグナル広
幅化が観察された。これは25%水酸化アンモニウムの場合にも最も顕著であり
、この添加剤はEDTA及びCDTAを最適pHに調整するためにも使用したの
で、NH3付加物イオン形成が目立ったのだと予想できる。
ストレプトアビジンをコートした磁性ビーズによる分離をRNAシーケンシン
グに適用できることを5’−ビオチン化RN
A in vitro転写産物(49nt)のRNアーゼU2消化について立証
した(図81)。RNアーゼU2と共にインキュベーション後に得られた完全な
フラグメントパターンをスペクトル81Aに示す。5’末端フラグメントのみが
ビーズに捕獲されるので、ビオチン化フラグメントの分離はスペクトルの複雑さ
を少なくする(図81B)。スペクトル中のシグナルは広幅化しており、低質量
範囲のシグナル数が増加し、ビーズのストリンジェント洗浄後も結合と溶離に使
用した緩衝液と洗剤が多少残存していることを示している。従って、方法の一層
の改善が必要である。磁性ビーズを適用する別のストラテジーとして、その後の
分析のために残存フラグメントを溶離することによりRNアーゼ消化前にターゲ
ットRNAを固定化することも考えられる。この場合、その他の反応条件を同一
にすると消化反応時間が延び、RNAの開裂が悪化した。
実施例22
タグ付きプライマーを使用する並行DNAシーケンシング突然変異分析及びマイ
クロサテライト分析とマススペクトロメトリー検出
本実施例はDNA分析で生成されたDNA産物の特異的捕獲
に関する。捕獲は相補的配列に結合する分析産物の5’末端の特定タグ(5〜8
ヌクレオチド長)を利用する。捕獲配列は固体支持体に結合した部分2本鎖オリ
ゴヌクレオチドにより提供することができる。例えば慣用チューブ又はマイクロ
タイタープレート(MTP)を使用して種々のDNA分析(例えばシーケンシン
グ、突然変異、診断、マイクロサテライト分析)を並行して実施することができ
る。タグオリゴヌクレオチド上の相補的同定配列を介して産物を特異的に捕獲し
、分別する。捕獲オリゴヌクレオチドは化学的又は生物学的結合により固体支持
体(例えばシリコンチップ)に結合することができる。試料の同定は、捕獲オリ
ゴヌクレオチドの規定位置により提供される。精製、条件付け及びマススペクト
ロメトリーを固体支持体で実施する。この方法を使用して6塩基タグ配列をもつ
特定プライマーを捕獲した。
材料と方法
ゲノムDNA
ゲノムDNAは健康な個体から得た。
PCR増幅
順プライマーとしてβ2d(CATTTGCTTCTGAC
ACAACT、配列番号66)と逆プライマーとしてβ11d(TCTCTGT
CTCCACATGCCCAG、配列番号67)を使用してβ−グロビン遺伝子
の一部のPCR増幅を行った。総PCR容量は50μlとし、ゲノムDNA20
0ng、Taq−ポリメラーゼ(Boehringer−Mannheim,C
at#159594)1U、1.5mM MgCl2、0.2mM dNTP(
Boehringer−Mannheim,Cat#1277049)及び各プ
ライマー10pmolを含むものとした。5分間94℃の後、30秒間94℃、
45秒間53℃、30秒間72℃を40サイクル繰り返し、2分間72℃の最終
伸長を行うサイクリング条件を使用してβ−グロビン遺伝子の特定フラグメント
を増幅した。QIAquick精製キット(Qiagen,Cat 28104
)を使用して増幅産物の精製と取り込まれなかったヌクレオチドの除去を行った
。精製産物の5分の1をプライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)又はシーケン
シング反応に夫々使用した。
プライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)及びシーケンシング反応
夫々ヒトβ−グロビン遺伝子のコドン5及び6とコドン30
並びにIVS−1供与部位における推定突然変異の検出を並行して実施した(図
82A)。β−TAG1(GTCGTCCCATGGTGCACCTGACTC
、配列番号68)をプライマーとして使用してコドン5及び6を分析し、β−T
AG2(CGCTGTGGTGAGGCCCTGGGCA)配列番号69)をコ
ドン30及びIVS−1供与部位の分析に使用した。プライマーオリゴ塩基伸長
(PROBE)反応は以下の条件を使用してサイクリングにより実施した。最終
反応容量は20μlとし、β−TAG1プライマー(5pmol)、β−TAG
2プライマー(5pmol)、dCTP、dGTP、dTTP(終濃度各25μ
M)、ddATP(終濃度100μM)、dNTP及びddNTP(Boehr
−inger−Mannheim製品、Cat#1277049及び10083
82)、10×ThermoSequence緩衝液2μl及びThermoS
equenase(Amersham,CAT#E79000Y)2.5Uとし
た。サイクリングプログラムは5分間94℃、30秒間53℃、30秒間72℃
及び8分間72℃の最終伸長段階とした。シーケンシングは反応容量を25μl
とし、ヌクレオチドの濃度をddNTP250μMとした以外は同一条件
で実施した。
TAG配列を用いる捕獲及び試料調製
捕獲オリゴヌクレオチドcap−tag1 d(GACGACGACTGCT
ACCTGACTCCA、配列番号70)とcap−tag2 d(ACAGC
GGACTGCTACCTGACTCCA、配列番号71)を夫々等モル量のu
ni−as d(TGGAGTCAGGTAGCAGTC、配列番号72)にア
ニールした(図82A)。各オリゴヌクレオチドの濃度はddH2O中10pm
ol/μlとし、2分間80℃と5分間37℃でインキュベートした。この溶液
を−20℃で保存し、アリコートを分取した。アニールした捕獲オリゴヌクレオ
チド10pmolを30分間37℃でインキュベートすることによりストレプト
アビジンをコートした常磁性ビーズ10μl(10mg/ml;Dynal,D
ynabeads M−280 streptavidin Cat#112.
06)に結合した。ビーズを捕獲し、PROBE又はシーケンシング反応産物を
夫々捕獲オリゴヌクレオチドに加えた。夫々β−TAG1及びβ−TAG2の結
合を容易にするために、反応体を5分間25℃と30分間16℃でインキュベー
トした。ビーズを
氷冷0.7Mクエン酸NH4で2回洗浄し、非特異的な結合伸長産物とプライマ
ーを除去した。DDH2O 1μlを加えて結合産物を溶解し、2分間65℃で
インキュベートし、氷冷した。試料0.3μlをマトリックス溶液(アセトニト
リル/水(50/50.v/v)中、飽和3−ヒドロキシピコリン酸、10%モ
ル比クエン酸アンモニウム)0.3μlと混合し、風乾した。試料ターゲットを
未改造Per−spective Voyager− MALDT−TOFのソ
ース領域に自動導入し、ターゲット及び変換ダイノード夫々5及び20kVの遅
延抽出リニアモードで運転した。理論平均分子量(M,(calc))は原子組
成から計算し、報告実測Mr(Mr(exp))値は1プロトン化形態の値である
。
結果
短い相補的配列による伸長産物の混合物の特異的捕獲を利用してシーケンシン
グ及びプライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)産物を単離した。この方法を使
用して夫々ヒトβ−グロビン遺伝子のコドン5及び6とコドン30並びにIVS
−1供与部位における推定突然変異を検出した(図82A)。ゲノムDNAはプ
ライマーβ2及びβ11を使用して増幅した。増幅産
物を精製し、ヌクレオチドを分離した。精製産物の5分の1をプライマーオリゴ
塩基伸長による分析に使用した。1回の反応で両部位を分析するために、プライ
マーβ−TAG1及びβ−TAG2を夫々使用した。β−TAG1はコドン5及
び6の上流に結合し、β−TAG2はコドン30とIVS−1供与部位の上流に
結合する。これらのプライマーの伸長はddATPとdCTP、dGTP及びd
TTPの存在下にサイクリングにより実施し、個体の表現型に応じて特異的産物
を得た。次に反応産物を捕獲オリゴヌクレオチドと混合した。捕獲オリゴヌクレ
オチドはビオチン化捕獲プライマー夫々cap−tag1及びcap−tag2
を含む。これらは夫々β−TAG1及びβ−TAG2の5’末端に相補的な6塩
基を5’末端にもつ。従って、捕獲オリゴヌクレオチドはこれらのプライマーと
伸長産物を特異的に捕獲する。ユニバーサルオリゴヌクレオチド(uni−as
)を捕獲オリゴヌクレオチドにアニールすることにより、捕獲配列のみを1本鎖
とする部分2本鎖分子に捕獲プライマーを変換する(図82)。ストレプトアビ
ジンをコートした常磁性粒子にこの分子を結合し、PROBE又はシーケンシン
グ反応産物を夫々加える。特異的にアニールしたオリゴヌクレ
オチドのみを結合するように混合物を洗浄した。捕獲したオリゴヌクレオチドを
溶解し、マススペクトロメトリーにより分析する。
1個の固体のPROBE産物(図83)は分子量7282.8Daの小さいピ
ークを示す。これは計算質量7287.8Daをもつ未伸長β−TAG1に対応
する。8498.6Daのピークは4塩基分伸長した産物に対応する。これは野
生型状態に対応する。この産物の計算質量は8500.6Daである。ヘテロ接
合状態を示す有意ピークは存在しない。更に、β−TAG2は捕獲されずにβ−
TAG1のみが捕獲され、この方法の高特異性を示している。
cap−tag2に結合したものの分析(図84)は、分子量9331.5D
aのただ1個の主要ピークを示す。これは8ヌクレオチドの伸長に対応する。こ
れは予想産物の計算質量が9355Daであるホモ接合野生型状態を示す。有意
量の未伸長プライマーは存在せず、β−TAG2のみが捕獲されている。
このアプローチが特異的シーケンシング産物を捕獲するのにも利用できること
を証明するために、同一の2種のプライマー夫々β−TAG1及びβ−TAG2
を使用した。プライマーを
混合し、1回のシーケンシング反応で使用した後、上記方法を適用することによ
り分別した。これらのプライマーでddATPとddCTPを用いる2種の異な
るターミネーション反応を実施した(夫々図85及び86)。スペクトログラム
に観察される全ピークは野生型状態の計算質量に対応する。
上述のように、異なる突然変異(例えば異なるPROBEプライマー)の並行
分析が可能である。更に、本発明の方法は特異的シーケンシング産物を捕獲する
のにも利用できる。捕獲は1個の反応チューブ/ウェルから異なるシーケンシン
グプライマーの分離、特異的多重増幅産物、PROBE産物の単離等に使用する
ことができる。サイクルシーケンシング等の慣用方法と慣用容量を使用すること
ができる。汎用チップデザインにより多種多様のアプリケーションを利用できる
。更に、この方法は高スループットを得るために自動化することができる。
実施例23
マススペクトロメトリーによる欠失検出
種々のフォーマットを利用して遺伝子内の欠失をマススペクトロメーターによ
り検出することができる。例えば、上記実施例に記載したように2本鎖増幅産物
の分子量を測定したり、2
本鎖産物の一方又は両方の鎖を単離して質量を測定することができる。
あるいは、本実施例に記載するように、特異的酵素反応を実施し、対応する産
物の質量をマススペクトロメトリーにより測定することもできる。欠失寸法は数
十塩基長までとすることができ、この場合も野生型と突然変異対立遺伝子の同時
検出が可能である。特異的産物の同時検出により、個体が特異的対立遺伝子又は
突然変異のホモ接合であるかヘテロ接合であるかを1回の反応で同定することが
可能である。
材料と方法
ゲノムDNA
白血球ゲノムDNAは無関係の健康個体から得た。
PCR増幅
ターゲットDNAのPCR増幅は、ストレプトアビジンをコートしたビーズを
捕獲する後期精製段階を実施せずに反応産物を使用できるように設定及び至適化
した。ターゲット増幅及びPROBE反応用プライマーは、CKRΔ−F:d(
CAG CTC TCA TTT TCC ATA C、配列番号73)及びC
KRΔ−R bio:d(AGC CCC AAG AT
G ACT ATC、配列番号74)とした。CKR−5は2分間94℃、45
秒間52℃、5秒間72℃及び5分間72℃最終伸長からなるプログラムにより
増幅した。最終容量は50μlとし、ゲノムDNA200ng、Taq−ポリメ
ラーゼ(Boehringer−Mannheim,Cat#1596594)
1U、1.5mM MgCl2、0.2mM dNTP(Boehringer
−Mannheim,Cat#1277049)、未修飾正プライマー10pm
ol及び5’ビオチン化逆プライマー8pmolを含むものとした。
ビオチン化鋳型の捕獲及び変性
ストレプトアビジンをコートした常磁性ビーズ(10mg/ml;Dynal
,Dynabeads M−280 streptavidin Cat#11
2.06)10μlを5×結合溶液(5M NH4Cl,0.3M NH4OH)
に加え、PCR反応液45μlに加えた(PCR反応液5μlは電気泳動用にと
っておいた)。30分間37℃でインキュベーションにより結合後、上清を捨て
た。捕獲した鋳型を100mM NaOH 50μlで5分間周囲温度で変性さ
せ、50mM NH4OH 50μlで1回、10mM Tris/Cl(pH
8.0)100μlで3回洗浄した。1本鎖DNAをPROBE反応の鋳型とし
て使用した。
プライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)反応
Sequenase 2.0(USB Cat#E70775Z、緩衝液を含
む)を使用してPROBE反応を実施した。dATP/dGTPとddNTPは
Boehringer−Mannheimから入手した(Cat#127704
9及び1008382)。d(CAG CTC TCA TTT TCC AT
A C(配列番号73))をPROBEプライマーとして使用した(図87)。
以下の溶液:H2O 3.0μl、反応緩衝液1.0μl、PROBEプライマ
ー1.0μl(10pmol)をビーズに加え、65℃で5分間、次いで37℃
で10分間インキュベートした。次いでDTT 0.5μl、dNTP/ddN
TP(各50μM)3.5μl及びSequenase 0.5μlを加え、3
7℃で10分間インキュベートした。
DNAのT4処理
平滑末端DNAを生成するために、増幅産物をT4 DNAポリメラーゼ(B
oehringer−Mannheim
Cat#1004786)で処理した。反応は製造業者のプロトコールに従って
20分間11℃で実施した。
伸長産物の直接寸法決定
増幅産物の寸法を決定するために、増幅産物の一方の鎖にMALDI−TOF
を適用した。試料を上述のようにビーズに結合し、下記のように条件付け及び変
性した。
DNA条件付け
PROBE反応後、上清を捨て、ビーズをまず700mMクエン酸NH4 5
0μl、次いで50mMクエン酸NH4 50μlで洗浄した。ビーズをH2O
2μl中で80℃に2分間加熱することにより、生成した診断産物を鋳型用に取
り出した。上清はMALDI−TOF分析に使用した。
試料調製及びMALDI−TOFマススペクトロメトリーによる分析。
マトリックス溶液(1:1H2O:CH3CN中0.7M 3−ヒドロキシピコ
リン酸、0.07M二塩基性クエン酸アンモニウム)0.6μlを試料ターゲッ
ト上で水中で診断PROBE産物0.3μlと混合することにより試料調製を実
施し、風乾した。100個までの試料をプローブターゲットディスクに
スポットして未改造Perspective Voyager MALDI−T
OF装置のソース領域に導入し、ターゲット及び変換ダイノード夫々5及び30
kVの遅延抽出リニアモードで運転した。分析物の理論平均分子量(M,(ca
lc))は原子組成から計算し、報告実測Mr(Mr(exp))値はPROBE
反応の場合には未伸長プライマーによる内部較正を使用して決定した1プロトン
化形態の値である。
慣用分析
標準プロトコールに従って天然ポリアクリルアミドゲル電気泳動により慣用分
析を実施した。診断産物をゲルに加える前にホルムアミドで変性させ、夫々臭化
エチジウム又は銀で染色した。
結果
健康な個体からランダムに選択した10個のDNA試料のCKR−5状態を分
析した。白血球DNAをPCR増幅し、増幅産物のアリコートをDNAの標準ポ
リアクリルアミドゲル電気泳動及び銀染色により分析した(図88)。4個の試
料が2個のバンドを示し、CKR−5ヘテロ接合性を示すと予想され、他の6個
の試料はホモ接合遺伝子に対応する1個のバンドを示
した(図88)。2個のバンドが観察された場合には、野生型遺伝子の75bp
と欠失をもつ対立遺伝子の43bpの予想寸法に対応する(図87)。1個のバ
ンドが観察された場合には、寸法は約75bpであり、ホモ接合野生型CKR−
5対立遺伝子を示した。ヘテロ接合と予想されるものからのDNA試料1個とホ
モ接合個体からの試料1個をその後の全分析に使用した。増幅産物の分子量を決
定するために、マトリックス介助レーザーデソープション/イオン化と飛行時間
分析の併用分析(MALDI−TOF)によりDNAを分析した。ストレプトア
ビジンをコートした常磁性粒子に結合した2本鎖DNAを変性させ、上清から遊
離した鎖を分析した。図89Aはポリアクリルアミドゲル電気泳動(図88)か
らの結果によりヘテロ接合であると予想されたDNA試料のスペクトログラフを
示す。野生型遺伝子のセンス鎖の計算質量は23086Daであり、欠失対立遺
伝子をもつセンス鎖は13143Daである(図87及び表VI)。多数の熱安
定ポリメラーゼは産物の3’末端に非特異的にアデノシンを付加するので、その
質量も計算した。これらの質量は23349及び13456Daである。観察さ
れるピーク(図89A)の質量は23119Daであり、アデノシン
が付加された野生型DNA鎖の計算質量(23349Da)に対応する。約23
036Daの質量をもつピークは観察されなかったので、ポリメラーゼは定性的
にアデノシンを付加したと思われる。相互に近接する2つのピークは13451
及び13137Daの質量をもつ。これは32bpを欠失した対立遺伝子の計算
質量に対応する。質量の大きいほうのピークはアデノシンが付加された産物に対
応し、質量の小さいほうのピークは非特異的アデノシンが付加されていない産物
に対応する。どちらのピークもほぼ同一の高さであり、産物の約2分1にアデノ
シンが付加されたと考えられる。質量11682Daのピークは23319Da
に対応するDNAの2電荷分子である(2×11682Da=23364Da)
。質量6732及び6575Daのピークは質量13451及び13137Da
のピークの2電荷分子であり、7794Daのピークは23319Daの3電荷
分子に対応する。多電荷分子は計算により常法により同定される。ホモ接合個体
からの増幅DNAはスペクトログラフ(図89C)に質量23349.6の1個
のピークと質量23039.9Daの著しく小さいピークを示す。質量の大きい
ほうのピークはアデノシンが付加された野生型対立遺伝子からの
DNAに対応する(計算質量23349Da)。質量の小さいほうのピークはア
デノシンが付加されていない同一産物に対応する。質量11686、7804.
6及び5852.5Daの別の3個のピークは2、3及び4電荷分子に対応する
。
非特異的に付加されたアデニンはDNA及びT4 DNAポリメラーゼの処理
により増幅DNAから除去することができる。ヘテロ接合及びホモ接合個体から
のDNAをT4 DNAポリメラーゼ処理後に分析した。図89Bはヘテロ接合
DNAからのスペクトログラフを示す。野生型鎖に対応するピークは質量230
08Daであり、付加されたアデニンが完全に除去されていることを示す。質量
13140Daの鎖も同様である。
他の3個のピークは親ピークの多電荷分子である。ホモ接合DNAの質量スペ
クトログラフはアデニンが付加されていない野生型DNA鎖に対応する分子量2
3004Daの1個のピークを示す。他の全ピークはこのDNAの多電荷分子に
由来する。増幅産物は上述のようにその質量の直接測定により分析することもで
きるし、その後の反応で増幅産物から得られる産物の質量を測定して分析するこ
ともできる。この「プライマーオリゴ塩基伸長(PROBE)」反応では、停止
ヌクレオチドが取り
込まれる前にプライマーが数塩基分だけ伸長し、プライマーは入れ子PCRの場
合には内部プライマーであり、あるいはPCRプライマーの1個と同一である。
伸長する長さに応じて遺伝子型を特定することができる。CKRΔ−FをPRO
BEプライマーとして使用し、dATP/dGTP及びddTTPをヌクレオチ
ドとして使用した。プライマー伸長は野生型鋳型の場合にはAGTであり、欠失
の場合にはATである(図87)。対応する質量は野生型では6604Daであ
り、欠失では6275Daである。PROBEを2種の標準DNAに適用した。
スペクトログラフ(図90A)は野生型DNAに対応する質量6604DaとC
KR−5欠失対立遺伝子に対応する質量6275Daのピークを示す(表VII
I)。質量5673DaのピークはCKRΔ−Fに対応する(計算質量5674
Da)。他の試料も同様に分析した(図90B)。質量6607Daのピークは
野生型対立遺伝子に対応し、質量5677Daのピークは未伸長プライマーに対
応するので、これは明白にホモ接合DNAと同定される。その他のピークは観察
されなかった。
本実施例から明らかなように、マススペクトロメトリーによ
り欠失分析を実施することができる。本実施例に示すように、欠失は1本鎖増幅
産物の直接欠失により分析することもできるし、特異的に生成した診断産物によ
り分析することもできる(PROBE)。更に、後記実施例26に示すように、2
本鎖DNA増幅産物も分析できる。全質量はダルトンで表す。
実施例24
ペンタプレクスtc−PROBE
要約
動脈硬化症の病因に関与すると思われる3種の異なるアポリポタンパク質遺伝
子中の5個の多型性部位を使用してサーモサイクリングプライマーオリゴ塩基伸
長(tc−PROBE)の
多重化を実施した。アポリポタンパク質AIV遺伝子(コドン347及び360
)、アポリポタンパク質E遺伝子(コドン112及び158)及びアポリポタン
パク質B遺伝子(コドン3500)を試験した。全質量スペクトルは5個の多型
性部位に関して容易に解読できた。
材料と方法
PCR増幅
ヒト白血球ゲノムDNAをPCRに使用した。アポAIV、アポE及びアポB
遺伝子の部分の各増幅に使用したプライマーは下記の通りである。
アポAIV:
A347F:5’−CGA GGA GCT CAA GGC CAG AAT
−3’(配列番号75)
A360R−2−bio:*5’−CAG GGG CAG CTC AGC
TCT C−3’(配列番号76)
アポE:
アポE−F:5’−GGC ACG GCT GTC CAA GGA−3’(
配列番号77)
アポE−R bio:*5’−AGG CCG CGC TC
G GCG CCC TC−3’(配列番号78)
アポB:
アポB−F2 bio:*5−CTT ACT TGA ATT CCA AG
A GC−3’(配列番号79)
アポB−R:5’−GGG CTG ACT TGC ATG GAC CGG
A−3’(配列番号80)
*ビオチン化。
Taq−ポリメラーゼと10×緩衝液はBoehringer−Mannhe
im(ドイツ)から購入し、dTNPはPharmacia(Freiburg
,ドイツ)から購入した。総PCR反応容量は50μlとし、各プライマー10
pmol、10%DMSO(ジメチルスルホキシド、Sigma)(アポB遺伝
子のPCRにはDMSOは使用しない)、鋳型として使用したゲノムDNA〜2
00ng及び最終濃度200μMのdNTPを含むものとした。Taqポリメラ
ーゼ1Uを加える前に溶液を80℃まで加熱した。PCR条件は5分間95℃の
後、30秒間94℃、30秒間62℃、30秒間72℃を2サイクル、30秒間
94℃、30秒間58℃、30秒間72℃を2サイクル、30秒間94℃、30
秒間56℃、30秒間72℃を
35サイクル繰り返し、72℃で2分間の最終伸長時間とした。取り込まれなか
ったプライマーとヌクレオチドを除去するために、増幅産物を“QIAquic
k”(Qiagen、ドィッ)キットで精製し、精製産物をTE緩衝液(10m
M Tris−HCl,1mM EDTA,pH8.0、50μLで溶離した。
増幅産物のビーズ結合
Dynalのプロトコールに従って各精製増幅産物10μlをDynaBea
ds(Dynal,M−280 Streptavidin)5μlに結合し、
変性させた。ペンタプレクスtc−PCR反応のために、(ビーズに結合した)
3種の異なる増幅産物をプールした。
tc−PCR
PCR反応には次のプライマーを使用した。
(アポA)P347:5’−AGC CAG GAC AAG −3’(配列番
号81)
(アポA)P360:5’−ACA GCA GGA ACA GCA−3’(
配列番号82)
(アポE)P112:5’−GCG GAC ATG GAG
GAC GTG−3’(配列番号83)
(アポE)P158:5’−GAT GCC GAT GAC CTG CAG
AAG−3’(配列番号84)
(アポB)P3500:5’−GTG CCC TGC AGC TTC AC
T GAA GAC−3’(配列番号85)
tc−PROBEは上記各プライマー10pmol、Thermoseque
nase(Amersham)2.5U、Thermosequenase緩衝
液2.5μL、並びに夫々dTTP 50μM(終濃度)及びddA/C/GT
P 200μMを含む総容量25μl中で実施した。混合物を入れたチューブを
サーモサイクラーに入れ、変性(94℃)のサイクリング条件にかけた。上清を
ビーズから注意深く取り出し、エタノール沈殿により「脱塩」し、Na+やK+等
の不揮発性カチオンをNH4 +に交換してイオン化プロセス中に蒸発させ、3M酢
酸アンモニウム(pH6.5)5μL、グリコーゲン(10mg/mL,Sig
ma)0.5μL、H2O 25μL及び無水エタノール110μLをPROB
E上清25μLに加え、1時間4℃でインキュベートした。13,000gで1
0分間遠心分離後、ペレットを70%エタノールで洗浄し、18Mohm/
cmH2O1μLに再懸濁した。再懸濁したDNAの0.35μLアリコートを
ステンレス鋼試料ターゲットディスク上でマトリックス溶液(1:1H2O:C
H3CN中0.7M 3−ヒドロキシピコリン酸(3−HPA)、0.07Mク
エン酸アンモニウム)0.35μlと混合し、風乾後、Thermo Bioa
nalysis Version 2000 MALDI−TOFを使用し、タ
ーゲット及び変換ダイノード夫々5及び20kVのリフレクトロンモードで運転
してスペクトルを獲得した。フラグメントの理論平均分子量(Mr(calc)
)は原子組成から計算した。合成(ATCG)n、オリゴヌクレオチド(3.6
〜18kDa)から生成した外部較正を使用した。1〜37500Daからの陽
イオンスペクトルを集めた。
結果
表VIIIは可能な全伸長産物のプライマー自体の質量を含む計算分子量を示
す。図91は3種の異なる鋳型と5種の異なるPROBEプライマーを1つの反
応で同時に使用したtc−PROBEの各MALDI−TOP MSスペクトル
を示す。実測質量と計算質量(表VIII参照)を比較すると、個々のDNA試
料中の種々の多型性部位を迅速に遺伝子分析できる。
図91に示す試料はアポリポタンパク質AIV遺伝子の夫々347及び360位
のトレオニンとグルタミンに関してホモ接合であり、アポリポタンパク質E遺伝
子にホモ接合のε3対立遺伝子をもち、更にアポリポタンパク質B遺伝子ではコ
ドン3500でアルギニンに関してホモ接合である。実施例25
MALDI−TOFマススペクトロメトリーによるp53遺伝子のエキソン5〜
8のシーケンシング
材料と方法
ゲノムDNA200ng、Taq DNAポリメラーゼ1単位、MgCl2
1.5mM、dNTP 0.2mM、順プライマー10pmol及びビオチン化
逆プライマー6又は8を含む総容量50μlを96穴マイクロタイタープレート
の各ウェルに加え、PCR反応を35サイクル実施した。確立化学(N.D.S
inha,J.Biernat,H.Kter,Tetrahed.Lett.
24:5843−5846(1983))に従って調製したPCRプライマーの
配列は、エキソン5:d(ビオチン−TATCTGTTCACTTGTGCCC
、配列番号101)及びd(ビオチン−CAGAGGCCTGGGGACCCT
G、配列番号102);エキソン6:D(ACGACAGGGCTGGTTGC
C、配列番号103)及びd(ビオチン−ACTGACAACCACCCTTA
AC、配列番号104);エキソン7:d(CTGCTTGCCACAGGTC
TC、配列番号105)及びd(ビオチン−CACAGCA
GGCCAGTGTGC、配列番号106);エキソン8:d(GGACCTG
ATTTCCTTACTG、配列番号107)及びd(ビオチン−TGAATC
TGAGGCATAACTG、配列番号108)である。
96穴マイクロタイタープレートの各ウェルに未精製増幅産物を加え、5×結
合溶液(5M NH4OH)10μl中の常磁性ストレプトアビジンビーズ(D
ynal)0.1mgを加え、37℃で30分間インキュベートした。
次にビーズを0.1M NaOHで室温で5分間処理した後、室温で5分間5
0mM NH4OHで1回、次いで50mMTris−HClで1回洗浄した。
マイクロタイタープレートの各ウェルでジデオキシターミネーション反応を4
回ずつ実施した。1個のマイクロタイタープレートで合計84回の反応(21プ
ライマー×4回反応/プライマー)を実施することができる。固定化1本鎖鋳型
を含む各ウェルに、1×反応緩衝液、シーケンシングプライマー10pmol、
dNTP 250mM、ddNTPの1種25mM及びThermoseque
nase(Amersham)1〜2単位を含む総容量10μlの反応混合物を
加えた。シーケン
シング反応は80℃1分間、50℃1分間、0.1℃/秒の勾配で50℃→72
℃及び72℃5分間の非サイクリング条件を使用してサーマルサイクラーで実施
した。次にビーズを0.7クエン酸アンモニウム、次いで0.05Mクエン酸ア
ンモニウムで洗浄した。次にビーズを50mM NH4OH 2μl中で2分間
80℃まで加熱することによりシーケンシング産物を除去した。上清をMALD
I−TOF MS分析に使用した。
マトリックスはKterら(Kter,H.ら,Nature Biotec
hnol.14:1123−1128(1996))に記載されているように調
製した。その後、この飽和マトリックス溶液を使用前に純水で1.52倍に希釈
した。希釈マトリックス溶液0.3μlを試料ターゲットに加え、結晶化させた
後、分析物水溶液0.3μlを加えた。Per−septive Voyage
r DEマススペクトロメーターを実験に使用し、試料を一般にマニュアルモー
ドで分析した。ターゲット及び中間プレートを各レーザー照射後200ナノ秒間
+18.2kVに維持し、その後、ターゲット電圧を+20kVまで上げた。飛
行チューブ内のイオンガイドワイヤーは−2Vに維持した。一般に、各試料に2
50回レーザー照射した。初期スペクトル
は500MHzディジタル化速度で獲得し、最終スペクトルは455点平均によ
り平滑化した(SavitskyとGolay,(1964)Analytica
l Chemistry,36:1627)。マススペクトロメーターのデフォ
ルト較正を使用して各ピークを同定し、配列を帰属させた。2個のシーケンシン
グピークの理論質量値を使用して各スペクトルを再較正した(D.P.Litt
le,T.J.Cornish,M.J.O’Donnel,A.Braun,
R.J.Cotter,H.Kter,Anal.Chem.,寄稿中)。
結果
p53遺伝子の変異は多数のヒト癌の発生で危険段階であるとみなされている
(Greenblattら(1994)Cancer Res.54,4855
−4878;C.C.Harris,(1996)J.Cancer,73,2
61−269;及びD.SidranskyとM.Hollstein,(19
96)Annu.Res.Med.,47,285−301)。突然変異はクロ
ーン産生能の分子インジケーターの役割をもち、一次腫瘍に既に突然変異が検出
されている患者では再発の初期マーカーの役割をもつと考えられる(Haina
ut
ら,(1997)Nucleic Acid Res.,25,151−157
)。癌の予後は存在するp53突然変異の種類によって異なると思われる(H.
S.Gohら,(1995)Cancer Res,55,5217−5221
)。p53遺伝子の発見以来、6000種を越える突然変異が検出されている。
エキソン5〜8には突然変異の大半が集まっているので、シーケンシングターゲ
ットとして選択した(Hainautら(1997)Nucleic Acid
s Res.,25,151−7)。
図96は材料と方法の項に詳細に記載したように実施したシングルチューブタ
ーゲット増幅及びシーケンシング法を模式的に示す。イントロン領域にフランキ
ングプライマーを使用し、下流プライマーはビオチン化し、p53遺伝子のエキ
ソン5〜8の各々をPCR増幅した。同一サイクリングプロフィルを使用するよ
うに種々のエキソンの増幅を至適化し、それ以上精製せずに産物を使用した。P
CR反応は96穴マイクロタイタープレートで実施し、1個のウェルで生成した
産物を1回のシーケンシング反応の鋳型として使用した。ストレプトアビジンを
コートした磁性ビーズを同一マイクロタイタープレートに加え、
増幅産物を固定化した。その後、ビーズをNaOHで処理し、シーケンシング鋳
型として固定化1本鎖DNAを生成した。残留塩基はシーケンシング酵素の活性
を減じるのでビーズをTris緩衝液で十分に洗浄した。
合計21個のプライマーを選択してプライマーウォーキングによりp53遺伝
子のエキソン5〜8をシーケンシングした。既知突然変異が存在しない部位に全
プライマーの3’末端を配置した。ターミネーション反応を4回別々に実施し、
同一PCRマイクロタイタープレートで合計84回のシーケンシング反応を実施
した。ストレプトアビジンをコートしたビーズは高温の反復使用に耐えられない
ので、シーケンシングには非サイクリング条件を採用した。シーケンシング反応
は末端に突然変異もつフラグメントが70ヌクレオチド未満となるようにデザイ
ンし、MALDI−TOF MSにより容易に測定可能でありながら次のプライ
マー結合部位をシーケンシングするのに十分長い寸法範囲となるようにした。T
hermequenaseは所望質量範囲で高収率のシーケンシング産物を再現
可能に生成することができたのでこれを選択酵素とした。シーケンシング反応後
、ビーズをアンモニウムイオン緩衝液で洗浄し、他の
全カチオンを交換した。その後、水酸化アンモニウム溶液中又は単に水中で加熱
することによりシーケンシングラダーをビーズから除去した。
先に加えたマトリックスを含む1個のMS試料ホルダーに84個のシーケンシ
ング反応産物各1μl以下のアリコートを加えた。図94は1個のプライマーか
ら生成したシーケンシングデータの1例を示し、4個のスペクトルを重ねたもの
である。
全シーケンシングピークは次のシーケンシングプライマー部位を介して解読す
るために必要な質量範囲で良好に分解した。2電荷ピークも観察され、1電荷イ
オンと質量を相関することにより容易に同定することができた。酵素伸長の初期
停止により生じた偽停止ピークをプライマー部位の近くに検出することができる
。質量分解能が十分高いので、隣接ピークの質量差を計算し、4個のスペクトル
を比較することにより真のシーケンシングピークから偽停止ピークを容易に区別
できる。更に、突然変異プライマーは下流プライマー結合部位の領域に検出可能
なデータを生じ、偽停止領域をカバーしている。
至適化増幅、シーケンシング及び条件付け手順を使用し、p53遺伝子のエキ
ソン5〜8を配列決定することができた。全
質量範囲にわたって約300〜800の質量分解能で全エキソンから正しい野生
型配列データが得られた。総質量精度は0.05%又はそれよりも良好であった
。MS試料ホルダーに添加された各シーケンシングフラグメントの平均量は50
fmol以下と推定される。
本実施例から明らかなように、MALDI−TOF MSによりヒト遺伝子の
エキソンを配列決定することができる。ゲルに基づく自動蛍光DNAシーケンシ
ングに比較すると、リーディング長が短い。マイクロチップ技術を組み込むと、
並行処理が可能である。マイクロタイタープレートで生成したシーケンシング産
物を直接マイクロチップに移し、MALDI−TOFMS分析用発射パッドとし
て利用することができる。ロボット駆動シリアル及びパラレルナノリットル分配
ツールを使用し、平坦又は幾何(例えばウェルを備える)表面をもつ<1”平方
チップ上に迅速マススペクトロメトリー分析用100〜1000素子DNAアレ
ーが製造されている。
図94は試料をピンツールによりマイクロタイタープレートから移したチップ
で得られたMSスペクトルを示す。各停止産物の推定添加量は5fmol以下で
あり、放射性標識又は蛍光
検出による慣用Sangerシーケンシングで使用されている量(0.5〜1f
mol/フラグメント)の範囲内である。MALDI試料の堆積量が少ないと、
小型化(試薬成分数の低減)、再現性の増加及びシグナル獲得の自動化といった
利点がある。
実施例26
MALDI−TOF MSによる合成及び生物生成2本鎖DNAの直接検出
序論
一般に、溶液中で2本鎖(ds)であるDNA分子をマトリックス介助レーザ
ーデソープション/イオン化(Karasら,(1989)Int.J.Mas
s Spectrom,Ion Processes,92,231)飛行時間
マススペクトロメトリー(MALDI−TOF MS)にかけると、2個の1本
鎖成分を表す分子イオンが得られ(Tangら(1994)Rapid Com
mun.Mass Spectrom.8:183;Tangら(1995)N
ucleic Acids Res.23:3126;Bennerら(199
5)Rapid Commun.Mass Spectrom.9:537;L
iuら(1995)Anal.Chem.67:
3482;Siegertら(1996)Anal.Biochem.243:
55;及びDoktyczら(1995)Anal.Biochem.230:
205)、これはポリメラーセ連鎖反応(PCR)増幅から生物学的に生成した
DNAに関する数件の報告に記載されている(Tangら(1994)Rapi
d Commun.Mass Spectrom.8:183;Liuら(19
95)Anal.Chem.67:3482;Siegertら(1996)A
nal.Biochem.243:55;及びDoktyczら(1995)A
nal.Biochem.230:205)。2本鎖が安定化されるのは、脱着
/イオン化/ファンデルワールス引力と「スタッキング」安定化力を上回るに十
分なエネルギーの加速中にマトリックス環境中のpHが低下するためであるか、
あるいはデュプレクスにより吸収されるためであるかは不明である(Canto
rとShimmel,Biophysical Chemistry Part
I:The conformation of Biomolecules,
W.H.Freeman,New York,(1980),176)。分析物
が高濃度で存在する場合には、タンパク質の場合と同様に非特
異的気相DNAマルチマーが形成されることは知られている(Karasら(1
989)Int.J.Mass Spectrom,Ion Processe
s 92:231)が、LecchiとPannell(Lecchiら(19
95)J.Am.Soc.Mass Spectrom.6:972)は特異的
ワトソンクリック(WC)塩基対合が気相に維持されることを立証する有力な証
拠を報告している。同氏らは、6−アザ−2−チオチミンをマトリックスとして
使用した場合にこれらの特異的二量体を検出したが、3−ヒドロキシピコリン酸
(3−HPA)又は2,4,6−ヒドロキシアセトフェノンマトリックスを使用
した場合には検出できなかった。後述するように、低いイオン加速電圧を使用し
、低温でMALDI分析用試料を調製することにより、dsDNAの日常検出が
可能である。
材料と方法
合成DNA。Perspective Expedite DNA合成器を使
用してオリゴヌクレオチドを合成し(Sinhaら(1984)Nucleic
Acids Res.,12,4539)、社内で逆相HPLC精製した。配
列は、50
量体(15337Da):5’−TTG CGT ACA CAC TGG C
CG TCG TTT TAC AAC GTC GTG ACT GGG A
AA ACC CT−3’(配列番号109);27量体c(相補、8343D
a):5’−GTA AAA CGA CGG CCA GTG TGT AC
G CAA−3’(配列番号110);27量体nc(非相補、8293Da):5
’−TAC TGG AAG GCG ATC TCA GCA ATC AG
C−3(配列番号111)であった。
18Mohm/cmH2Oを使用してストック溶液100μMを20、10、
5及び2.5μMまで希釈した。50量体と27量体c又は27量体ncの等モル
溶液各2μLを混合し、室温で10分間アニールさせた。これらの混合物0.5
μLを試料ターゲット上でマトリックス(50%アセトニトリル中0.7M 3
−HPA、0.07Mクエン酸アンモニウム)1μLと直接混合し、風乾した。
生物DNA。白血球からのヒトゲノムDNAの酵素消化を行った。アポリポタ
ンパク質E遺伝子のエキソン4の一部を増幅するためのPCRプライマー(順、
5’−GGC ACG G
CT GTC CAA GGA G−3’(配列番号112);逆、5’−AG
G CCG CGC TCG GCG CCC TC−3’(配列番号113)
)を公表配列(Dasら(1985)J.Biol.Chem.,260 62
40)から作製した。Taqポリメラーゼと10×緩衝液はBoehringe
r−Mannheim(ドイツ)から購入し、dNTPはPharmacia(
Freiburg,ドイツ)から購入した。総反応容量は50μlとし、各プラ
イマー20pmol及び10%DMSO(ジメチルスルホキシド、Sigma)
と鋳型として使用したゲノムDNA約200ngを含むものとした。ポリメラー
ゼ1Uを添加する前に溶液を80℃まで加熱した。PCR条件は2分間94℃の
後、30秒間94℃、45秒間63℃、30秒間72℃を40サイクルと、2分
間72℃最終伸長時間とした。増幅産物の最終収率を測定するために定量的デー
タは集めなかったが、−2pmolを酵素消化に利用可能であったと推定される
。
CfoI及びRsaIと反応緩衝液LはBoehringer−Mannhe
imから購入した。増幅産物20μlを水15μlと緩衝液L 4μlで希釈し
、制限酵素10単位を添加
後、試料を60分間37℃でインキュベートした。消化産物を沈殿させるために
、3M酢酸アンモニウム(pH6.5)5μl、グリコーゲン5μl(Brau
nら(1997)Clin.Chem.43:1151)(10mg/ml,S
igma)及び無水エタノール110μlを分析物溶液50μLに加え、1時間
室温で保存した。10分間13,000×gで遠心分離後、ペレットを70%エ
タノールで洗浄し、18Mohm/cm H2O 1μlに再懸濁した。
試料調製及びMALDI−TOF MSによる分析。再懸濁したDNA0.
35μLをマトリックス溶液(1:1H2O:CH3CN中0.7M 3−ヒドロ
キシピコリン酸(3−HPA)、0.07Mクエン酸アンモニウム)(Wuら(
1993)Rapid Commun.Mass Spectrom.7:14
2)0.35〜1.3μLとステンレス鋼試料ターゲットディスク上で混合し、
風乾後、Thermo Bioanalysis Vision 2000 M
ALDI−TOF装置を使用し、ターゲット及び変換ダイノード夫々5及び20
kVの陽イオンリフレクトロンモードで運転してスペクトルを獲得した。フラグ
メントの理論平均分子量(Mr(calc))は原子
組成から計算し、粗データ値からプロトン質量(1.08Da)を差し引いて中
性基準で実測分子量(Mr(exp))を報告した。8個のピーク(2000〜
18000Da)から生成した外部較正を全スペクトルに使用した。
結果と考察
図96Aは合成50量体と(非相補的)27量体nc(各10μM、本試験で使
用した最高終濃度)の混合物のMALDI−TOF質量スペクトルであり、レー
ザー出力はイオン化用閾値照射を僅かに上回るように調整した。8.30及び1
5.34kDaのピークは夫々27量体及び50量体1本鎖に由来する1電荷イ
オンに相当する。−16.6及び−30.7kDaの十分に分解していない低強
度のシグナルは夫々27量体及び50量体のホモダイマーに相当し、23.6k
Daのシグナルは27量体鎖と50量体鎖を1本ずつ含むヘテロダイマーに一致
する。このように、2種の非相補的オリゴヌクレオチドからの可能な全組み合わ
せ(27+27;27+50;50+50)に相当する低強度ダイマーイオンが
観察された。脱プリンピークが優勢になる点まで照射を増加しても、スペクトル
のこれらのダイマーピークの強度は僅かに高くなっただけであった。ハ
イブリダイゼーションは室温で非常に低い塩濃度、即ち非特異的ハイブリダイゼ
ーションが生じるような条件で実施したことに留意されたい。
図96は同一50量体と(相補的)27量体cの混合物のMALDI−TOF
スペクトルを示し、各オリゴヌクレオチドの終濃度は同じく10μMとした。図
96Aと同一のレーザー出力を使用した処、この場合も夫々1本鎖27量体及び
50量体に一致する88.34及び15.34kDaに強いシグナルが観察され
た。ホモダイマーピーク(27+27;50+50)はノイズとしてかろうじて
現れたたけであったが、1電荷(23.68kDa)及び2電荷(11.84k
Da)ヘテロダイマー(27+50)ピークは優勢であった。23.68kDa
ダイマーピークは全照射位置から検出できたが、モノマーピークに対するその強
度はスポット毎に少しずつ異なっていた。5、2.5及び1.25μMの各オリ
ゴヌクレオチド濃度で実験を繰り返すと、27及び50量体1本鎖ピークよりも
少量の27/50量体ワトソン−クリックダイマーピークが得られた。最低濃度
では、ダイマーは「結晶依存性」であり、即ち照射すると、結晶によっては有意
な27/50量体ダイマーシグナルを
生じたが、再現可能に殆ど又は全く生じない結晶もあった。これは、dsDNA
のマトリックス結晶取り込み又はイオン化/脱着プロセスによるこの相互作用の
維持効果が結晶の微細性質に依存すること、及び/又は試料全体を通してデュプ
レクスの急激な濃度勾配が存在することを示している。
このように、図96のスペクトルは、この質量範囲で高いオリゴヌクレオチド
濃度で温和なレーザー条件を使用して特異的WC塩基対合dsDNAを観察でき
ることを強く裏付けるものであり、3−HPAマトリックスを使用した最初の報
告である。本試験をアポリポタンパク質E遺伝子のエキソン4の領域の酵素消化
(RsaI/CfoI)により得られるdsDNAの複合混合物に応用した(D
asら(1985)J.Biol.Chem.,260 6240)。予想フラ
グメント質量を表IXに示す。
aε3対立遺伝子は17/19又は19/19対をもたす、ε4対立遺伝子は3
6/38対をもたない。b
(+)センス鎖、(−)アンチセンス鎖。
消化段階後、試料を精製し、エタノール沈殿により濃縮し、H2O 1μLに
再懸濁した後、試料ターゲット上で室温でマトリックスと混合した。質量3.4
〜17.2kDaの約20個のピークが産物のMALDIスペクトル(図97A
)で分解され、これらは全て2本鎖の変性1本鎖成分に一致する(表IX)。
同様の生物産物を数カ月にわたって多数回このように分析した処、ごく僅かしか
dsDNAを含まないスペクトルが得られ、従来の報告(Tangら(1994
)Rapid Commun.Mass Spectrom.8:183; L
iuら(1995)Anal.Chem.67:3482; Siegertら
(1996)Anal.Biochem.243:55;及びDoktyczら
(1995)Anal.Biochem.230:205)に一致したが、同様
の条件下で合成DNAには無傷の2本鎖が観察された(図96A)。生物反応後
に得られる鎖濃度を推定することは困難であるか、合成試料の二量化が生じた濃
度よりは著しく低かったと予想される。更に、2成分合成混合物内で特異的ハイ
ブリッドを維持するほうが消化産物からの1本鎖DNA成分20個の著しく複雑
な混合物よりも反応速度の点で好ましいと思われる。
dsDNAの維持に及ぼす低温の効果を試験した。消化DNA溶液のアリコー
ト、マトリックス、ピペット、ピペットチップ及びステンレス鋼試料ターゲット
を4℃「冷蔵室」に15分間保存し、通常の調製物と同様にマトリックス、次い
で分析物をターゲットにスポットし、風乾しながら同時結晶させた。3
HPA(50%アセトニトリル)300nLと分析物300nLの混合物は室温
では〜1分で結晶したが、低温では〜15分かかった。冷蔵室環境で調製した試
料スポットは一般に高い割合で大きい透明結晶を含んでいた。
低温で調製したアポE消化産物アリコートのMALDI−TOF分析は、図9
7Bのスペクトルを生じた。低質量範囲は定性的に図97Aと似ているが、8k
Daを越えると著しい相違が観察された。図97Aでは1本鎖に一致するシグナ
ルは1個しか観察されなかった(表IX)が、冷蔵室で調製した図97Bの試料
は8kDa未満を除いて同一質量のシグナルを生じなかった。更に、図97Bに
は付加的な高質量ピークがあり、これらは明らかに低質量成分を含むダイマーピ
ークに相当する。合成DNAの場合と同様に、これらが非特異的ヘテロダイマー
、特異的WCヘテロダイマー又は非特異的ホモダイマーのいずれに相当するかを
決定することが重要であった。まず33.35kDaフラグメントについて考察
する。この高質量フラグメントがトライマー以上のマルチマーであるという可能
性はあり得ないので問題外とすると、このフラグメントはダイマーとして最高質
量即ち>16kDaのssDNA成分を含んでいるはず
である。15.24及び17.18kDaフラグメントのホモダイマー化は夫々
32.49及び34.35kDaピークを生じ、実測値33.35kDaに対す
るこれらの不正確な帰属の対応する質量誤差は夫々−2.6%及び+3.0%で
ある。このピークが2個の最高質量1本鎖フラグメントのヘテロダイマーに由来
するならば著しく良好な対合が達せられ、質量の和(16.24+17.18=
33.42kDa)は実測ダイマー質量33.35kDaと0.2%の差であり
、これは外部較正を使用して大きいDNAフラグメントをMALDI−TOF分
折するのに許容可能な質量誤差である。同様に、29.66kDaフラグメント
は48量体のヘテロダイマーの予想値29.70kDaより僅かに0.13%低
い測定値であり、他の可能なホモダイマー又はヘテロダイマーの和のうちでこの
質量の妥当範囲内のものはなかった。夫々36/38量体及び31/29量体ヘ
テロダイマーに相当する22.89及び18.83kDaフラグメントについて
も同じことが言え、14.86kDaのシグナルは1電荷1本鎖と2電荷2本鎖
の48量体に一致する。>15kDaの図97Bの質量がこの消化産物から予想
されるdsDNAの質量に一致しており、ランダム質量ではホモダ
イマーと非特異的ヘテロダイマーが存在しないことから、塩基対合は確かに高特
異性であることが判明し、MALDIにより生成されるイオンで気相WC相互作
用を維持できることが更に裏付けられた。
図98はε4対立遺伝子のMALDI−TOFスペクトルを示し、ε3とは異
なり、CfoI/RsaI消化により36/38量体対を生じないと予想された
。ε3及びε4の質量スペクトルは、図97Bの主要な22.89kDaフラグ
メントが図98には存在しない点を除いて同様であり、この情報だけ(表IX)
でε3及びε4対立遺伝子は容易に区別され、MALDI−TOF MSによる
dsDNAの直接測定により遺伝子型別できることが立証された。同様に、ds
DNAをイオン化し、気相に移し、MALDI−TOF MSにより検出するこ
とができた。本装置で一般に使用した加速電圧は−5kVに過ぎず、試料ターゲ
ットから−2mmまでで1.5kV.mmに対応し、電界強度は試料ターゲット
からの距離と共に迅速に低下した。大半の従来の研究は少なくとも20kVの加
速を使用しており(Lecchiら(1995)J.Am.Soc.Mass
Spectrom.6:972)、唯一の例外として凍結マト
リックス溶液と100V加速を使用して27量体dsDNAが検出されている(
Nelsonら(1990)Rapid Commun.Mass Spect
rom.4:348)。理論の裏付けはないが、MALDIにより誘導されるd
sDNAの「変性」は、高加速磁場を使用する場合に気相衝突活性化がWC対合
を妨げるために生じると思われ、エレクトロスプレーイオン化を使用してdsD
NAの1本鎖成分を配列決定するために使用される断片化の第1段階と予想され
る変性に似ている(McLaffertyら(1996)Int.J.Mass
Spectrom.,Ion Processes)。溶液中でWC対合ds
DNAを安定化するために必要な高い塩濃度(一般に>10mM NaCl又は
KCl)はMALDI分析には適していないと思われ(Nordhoffら(1
993)Nucleic Acids Res.21:3347)、カチオンに
より付加されるMALDIシグナルを避けるためにはこのような不揮発性カチオ
ンの濃度を下げる必要があるが、その結果、溶液中の2本鎖は不安定になる。マ
トリックス環境の低pH条件もデュプレクスを不安定にすると思われる。図97
B及び98に示すように、特に長い鎖の場合には水素結合網目
構造が広範囲であるために融点が高いので、低濃度の生物試料でも低温で保存及
び調製するとこれらの変性効果を少なくとも部分的に回避できる。本実施例で使
用した条件は非常に非ストリンジェントなアニーリング条件であると認められる
。
高質量dsDNAピーク(例えば図97B、232kDa)の低質量テールは
1本鎖の各々からの脱プリンの合計よりも高度まで生じた脱プリンに一致する。
溶液中の脱プリンは酸触媒反応であるか、3−HPA中の弱酸性条件は有意脱プ
リンを誘導せず、De−MALDI−TOFで測定した混合塩基50量体からの
分子イオンシグナルに占める脱プリンピークの割合はほんの僅かであった(Ju
hazら(1996)Anal.Chem.68:941)。気相dsDNAの
1本鎖成分からの脱プリンが観察され、これらの塩基はその1本鎖の相補的塩基
に結合した水素であるとも予想されるが、これは鎖が変性される前に共有結合が
切断されていることを暗示している。
実施例27
塩基特異的リボヌクレアーゼの効率及び特異性アッセイ
選択した合成20〜25量体の消化中に等時間間隔で抽出したアリコートをマ
ススペクトロメトリーにより分析した。RN
アーゼの3種は効率的且つ特異的であることが判明した。これらはG特異的T1
、A特異的U2及びA/U特異的PhyMであった。C特異的であると予想され
るリボヌクレアーゼは信頼性が低いことが判明し、例えば全てのCを開裂した訳
でなく、予想外にUも開裂した。これらの3種の有望なRNアーゼはいずれも全
予想位置で開裂を生じ、完全な配列カバーが得られた。更に、1又は数個の非開
裂位置(短いインキュベーション時間)を含む開裂産物の存在は開裂産物の整列
を可能にした。合成20量体(配列番号114)RNAのT1消化後に抽出した
アリコートのMALDIスペクトルの1例を図100に示す。
実施例28
増幅DNAターゲットのシリコンウェーハ固定化
シリコン表面調製
シリコンウェーハをエタノールで洗浄し、ブンゼンバーナーで殺菌し、トルエ
ン中25(容量)%3−アミノプロピルトリエトキシシランの無水溶液に3時間
浸漬した。次にシラン溶液を除去し、ウェーハをトルエンで3回、ジメチルスル
ホキシド(DMSO)で3回洗浄した。次にウェーハを無水DMSO中N−スク
シンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエ
ート(STAB)(Pierce Chemical,Rockford,IL
)の10mM無水溶液中でインキュベートした。反応後、SIAB溶液を除去し
、ウェーハをDMSOで3回洗浄した。全ての場合に、ヨードアセトアミド官能
化ウェーハをすぐに使用し、レービルヨードアセトアミド官能基の加水分解を最
小限にした。更に、ヨードアセトアミド官能基は感光性であるため、その後の全
ウェーハ操作は暗所で実施した。
増幅チオール含有核酸の固定化
SIABを結合したシリコンウェーハを使用して特定増幅DNAターゲット配
列の特異的遊離チオール含有DNAフラグメントを分析した。112bpヒトゲ
ノムDNA鋳型(Genebank Acc.No.:Z52259;配列番号
118)の3’領域に相補的な5’−ジスルフィド結合を含む23量体オリゴヌ
クレオチド(Operon Technologiesから購入;配列番号11
7)をプライマーとして使用し、ゲノムDNAの5’末端の一部に相補的な市販
49量体プライマー(Operon Technologiesから購入;配列
番号119)をPCRで併用し、DNAブュプレクスの一方の鎖のみに結合した
5’−ジスルフィド結合を含む135bpD
NA産物(配列番号120)を増幅した。
PCR増幅反応はAmplitaq GoldKit(Perkin Elm
er Catalog No.N808−0249)を使用して実施した。要約
すると、112bpヒトゲノムDNA鋳型200ngを23量体プライマー10
μM及び市販49量体プライマー8μM、10mM dNTP、製造業者により
提供される緩衝液中のAmplitaq Gold DNAポリメラーゼ1単位
と共にインキュベートし、サーモサイクラーでPCRを実施した。
得られた増幅産物の5’−ジスルフィド結合を10mMトリス−(2−カルボ
キシメチル)ホスフィン(TCEP)(Pierce Chemical,Ro
ckford,IL)で完全に還元し、遊離5’−チオール基を生成した。修飾
オリゴヌクレオチドのジスルフィド還元は逆相FPLCで保持時間のシフトを観
察することによりモニターした。10mM TCEPの存在下で5時間後に、ジ
スルフィドは完全に遊離チオールに還元されることが判明した。ジスルフィド開
裂直後に、修飾オリゴヌクレオチドをヨードアセトアミドで官能化したウェーハ
と共にインキュベートし、SIABリンカーを介してシリコン
ウェーハの表面に結合した。完全なチオール脱プロトン化を確保するために、結
合反応はpH8.0で実施した。ジスルフィドを開裂するために10mM TC
EPを使用し、他の上記反応条件を使用すると、250fmol/mm2表面の
表面密度を再現可能に得ることができた。
ハイブリダイゼーション及びMALDI−TOFマススペクトロメトリー
135bpチオール含有DNAと結合したシリコンウェーハを相補的12量体
オリゴヌクレオチド(配列番号121)と共にインキュベートし、特異的にハイ
ブリダイズしたDNAフラグメントをMALDT−TOF MS分析により検出
した。12量体配列の理論質量対電荷比は3622.4Daであるが、質量スペ
クトルは3618.33の実測質量対電荷比でシグナルを生じた。
このように、5’−ジスルフィド結合を含む特定DNAターゲット分子を増幅
することができる。本実施例に記載する方法を使用して、SIABを結合したシ
リコンウェーハに分子を高密度で固定化し、特定相補的オリゴヌクレオチドをこ
れらのターゲット分子にハイブリダイズすると、MALDI−TOF
MS分析により検出することができる。
実施例29
核酸アレーを作製するための高密度核酸固定化の使用
実施例28に記載した高密度結合手順を使用し、その表面に例えば凹部やパッ
チ等の複数のロケーションをもつシリコンウェーハ上にMALDI−TOFマス
スペクトロメトリー分析可能なDNAオリゴマーのアレーを作製した。アレーを
作製するために、ウェーハの選択ロケーションのみに遊離チオール含有オリゴヌ
クレオチドプライマーを固定化した(例えば実施例28参照)。アレーの各ロケ
ーションに3種の異なるオリゴマーの1種を配置した。各固定化オリゴマーを別
々に検出及び区別できることを立証するために、3種のオリゴマーの1種に相補
的な異なる長さの3種の異なるオリゴヌクレオチドをウェーハ上のアレーにハイ
ブリダイズし、MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより分析した。
オリゴヌクレオチド
相補的オリゴヌクレオチド対の一方が3’又は5’−ジスルフィド結合を含む
3組の相補的オリゴヌクレオチド対を合成した(Operon Technol
ogies又はOligos
等から購入)。例えば、オリゴマー1[d(CTGATGCGTCGGATCA
TCTTTTTT−SS);配列番号122]は3’−ジスルフィド結合を含み
、オリゴマー2[d(SS−CCTCTTGGGAACTGTGTAGTATT
);配列番号117の5’−ジスルフィド誘導体]とオリゴマー3[d(SS−
GAATTCGAGCTCGGTACCCGG);配列番号115の5’−ジス
ルフィド誘導体]は各々5’−ジスルフィド結合を含む。
オリゴマー1〜3に相補的なオリゴヌクレオチドは、MALDI−TOF M
S分析中に相互に容易に分解可能な異なる長さとなるようにデザインした。例え
ば、オリゴマー1の一部に相補的な23量体オリゴヌクレオチド(配列番号12
3)を合成し、オリゴマー2の一部に相補的な12量体オリゴヌクレオチド(配
列番号121)を合成し、オリゴマー3の一部に相補的な21量体オリゴヌクレ
オチド(配列番号116)を合成した。更に、3種のオリゴマーのいずれにも相
補性をもたない第4の29量体オリゴヌクレオチド(配列番号124)を合成し
た。この第4のオリゴヌクレオチドは陰性対照として使用した。
シリコン表面化学及びDNA固定化
(a)4×4(16ロケーション)アレー
16×16ウェルアレー形態の256個の別個の凹部又はウェルをもつ2×2
cm2シリコンウェーハを業者(Accelerator Technolog
y Corp.,College Station,Texas)から購入した
。ウェルは800×800μm2、深さ120μm、1.125ピッチであった
。シリコンウェーハを3−アミノプロピルトリエトキシシランと反応させ、表面
に第1級アミンの均質層を生成した後、ヘテロ2官能性架橋剤SIABに暴露し
、表面にヨードアセトアミド官能基を付けた(例えば実施例28参照)。
シリコンアレーの各ロケーションに結合するオリゴマーを調製するために、実
施例28に記載したように10mM TCEPを使用して各オリゴマーのジスル
フィド結合を完全に還元し、DNAを100mMリン酸緩衝液(pH8.0)に
10μMの終濃度で再懸濁した。ジスルフィド結合還元の直後に、ほぼ上記実施
例28に記載したようなプローブ結合条件を使用してウェーハ上の16個のロケ
ーションのヨードアセトアミド官能基にオリゴマーの遊離チオール基を結合した
。ウェーハの16個
の異なるロケーションに別々に結合するために、ウェーハの表面全体をオリゴヌ
クレオチド溶液でフラッシュするのでなく、ロボットピンツールを使用してウェ
ーハ上の256個のウェルの16個のロケーション(即ち凹部)の各々に所定修
飾オリゴマーの〜30nlアリコートを並行して添加し、固定化DNAの4×4
アレーを作製した。
ロボットピンツールはプローブブロックに収容してX、Y及びZロボット段に
取り付けた16個のプローブから構成される。ロボット段はガントリーシステム
とし、ロボットのアームの下に試料トレーを配置できるようにした。ガントリー
ユニット自体は、リニアオプティカルエンコーダーにより位置フィードバック可
能なブラシレスリニアサーボモーターの案内下に夫々250及び400mm移動
するX及びYアームから構成される。ガントリーユニットのxy軸スライドには
リードスクリュー駆動Z軸(50mm鉛直移動)が取り付けられており、モータ
ー搭載ロータリーオプティカルエンコーダーにより位置フィードバック可能なオ
ンラインロータリーサーボモーターにより制御される。システムの作業領域はマ
イクロタイタープレート5枚(大抵の場合は洗浄溶液プレート2枚と、最大11
52種の異
なるオリゴヌクレオチド溶液の試料プレート3枚)と20×20mmウェーハ1
0枚までを保持するスライドアウトツーリングプレートを備える。ウェーハは2
本のバンキングピンでプレートに精密に配置され、真空により固定される。シス
テム全体は安全のためにプレキシガラスハウジングに収容され、熱及び振動緩衝
用スチール支持フレームに取り付けられる。運動制御は3軸サーボコントローラ
ーとした市販運動コントローラーにより行い、コンピューターに組み込み、必要
に応じて特定アプリケーション用プログラミングコードを書き込む。
DNAアレーを作製するために、オリゴマー1〜3の溶液を加えた多重ウェル
DNA源プレートの16個のウェルに、ソリッドピンエレメントをもつアセンブ
リを備えるピンツールを浸してピンの遠端を湿し、ロボットアセンブリによりピ
ンアセンブリをシリコンウェーハに移動し、表面接触により試料をスポットした
。こうして、シリコンウェーハ上の256個のウェルのうちの16個の別個のウ
ェルの各々に修飾オリゴマー1〜3の1種を共有的に固定化し、固定化DNAの
4×4アレーを形成した。
ハイブリダイゼーション反応の実施にあたっては、1M
NaClを加えたTE緩衝液(10mM Tris−HCl,pH8.0,1m
M EDTA)1ml中各オリゴヌクレオチド10μMの終濃度で3種の相補的
オリゴヌクレオチドと陰性対照オリゴヌクレオチドを混合し、溶液を65℃に1
0分間加熱した。直後にシリコンウェーハの表面全体を加熱オリゴヌクレオチド
溶液800μlでフラッシュした。シリコンアレーを周囲温度で1時間、次いで
4℃で少なくとも10分間インキュベートすることにより、相補的オリゴヌクレ
オチドを固定化オリゴマーにアニールした。あるいは、オリゴヌクレオチド溶液
をウェーハに加えた後に加熱し、放冷させてハイブリダイズさせてもよい。
ハイブリダイズしたアニールを次に50mMクエン酸アンモニウム緩衝液で洗
浄し、カチオン交換してDNA主鎖上のナトリウム及びカリウムイオンを除去し
た(Pielesら(1993)Nucl.Acids Res.21:319
1−3196)。ロボット圧電シリアルディスペンサー(即ち圧電ピペットシス
テム)を使用してアレーの各ロケーションに3−ヒドロキシピコリン酸のマトリ
ックス溶液(50%アセトニトリル中0.7M 3−ヒドロキシピコリン酸−1
0%クエン酸アン
モニウム;Wuら,Rapid Commun.Mass Spectrom.
7:142−146(1993))の6nlアリコートを順次加えた。
圧電ピペットシステムはMicrodrop GmbH,Norderste
dt、ドイツから購入したシステムを改造し、分配しようとする溶液を保持する
ガラスキャピラリーを包囲するようにこれに結合した圧電エレメントにパルス信
号を送る圧電エレメントドライバーと、キャピラリーに(負圧により)添加又は
(正圧により)排出するための圧力トランスデューサーと、添加、排出、分配及
び洗浄のためにキャピラリーを操作するロボットxyz段及びロボットドライバ
ーと、「懸濁」液滴特性を検査できるように圧電エレメントの周波数でパルスさ
れるストロボスコープ及びドライバーと、ソース及び指定プレート又は試料ター
ゲットのための別個の段(即ちSiチップ)と、指定プレートへの添加を検査す
るためにロボットアームに搭載されたカメラと、圧力ユニット、xyzロボット
及び圧電ドライバーを制御するデータステーションを含む。
3−HPA溶液を周囲温度で乾燥させた後、圧電ピペットを使用して水の6n
lアリコートを各ロケーションに加え、乾燥
マトリックス−DNA複合体を再懸濁し、マトリックス−DNA複合体を周囲温
度で乾燥すると各ロケーションの底面に均質結晶表面を形成するようにした。
MALDI−TOF MS分析
図6に示すハイブリダイゼーションアレーの16個のロケーションの各々でほ
ぼ実施例28に記載したようにMALDIーTOF MS分析を実施した。DN
Aハイブリダイゼーションの16個のロケーションの各々に特異的にハイブリダ
イズしたオリゴヌクレオチドの質量スペクトルは、特定相補的ヌクレオチド配列
に対応する実測質量対電荷比を表す特異的シグナルを各ロケーションに示した。
例えば、オリゴマー1を結合したロケーションのみで質量スペクトルは23量
体にほぼ等しい7072.4の実測質量対電荷比をもつ主要シグナルを示した(
23量体の理論質量対電荷比は7072.6Da)。同様に、オリゴマー2を結
合したロケーションのみに実測質量対電荷比3618.33Da(理論値362
2.4Da)で12量体オリゴヌクレオチドの特異的アレーハイブリダイゼーシ
ョンが検出され、オリゴマー3を結合したアレーのロケーションのみにMJM6
の特異的ハイブリ
ダイゼーション(実測質量対電荷比6415.4)が検出された(理論値640
7.2Da)。
アレーのロケーションのうちで陰性対照29量体オリゴヌクレオチドに対応す
るシグナル(理論質量対電荷比8974.8)を示したものは皆無であり、シリ
コンアレーの表面上の特定ロケーションに共有的に固定化したオリゴマーに特定
ターゲットDNA分子をハイブリダイズできると考えられ、MALDI−TOF
MS分析を使用して複数のハイブリダイズアッセイを個々にモニターできると
考えられる。
(b)8×8(64ロケーション)アレー
16×16ウェルアレー形態の256個の別個の凹部又はウェルをもつ2×
2cm2シリコンウェーハを業者(Accelerator Technolo
gy Corp.,College Station,Texas)から購入し
た。ウェルは800×800μm2、深さ120μm、1.125ピッチであっ
た。シリコンウェーハを上述のように3−アミノプロピルトリエトキシシランと
反応させ、表面に第1級アミンの均質層を生成した後、ヘテロ2官能性架橋剤S
IABに暴露し、表面にヨードアセトアミド官能基を付けた。
64素子アレーを作製するために、上記手順に従ってピンツールを使用した。
オリゴマー1〜3の溶液を加えた384ウェルDNAソースプレートの16個の
ウェルにピンツールを浸し、シリコンウェーハに移動し、表面接触により試料を
スポットした。次に、ツールを洗浄溶液に浸し、ソースプレートの同一の16個
のウェルに浸し、第1組の16個のスポットから2.25mm離してターゲット
にスポットし、完全なサイクルを繰り返し、各ピンから2×2アレーを作製し、
スポットの8×8アレーを形成した(2×2エレメント/ピン×ピン16本=合
計64エレメントにスポット)。
64個のロケーションに固定化したオリゴマー1〜3を相補的オリゴヌクレオ
チドにハイブリダイズさせ、MALDI−TOF MS分析により分析した。1
6ロケーションアレーの場合と同様に、DNAアレーのロケーションの各々で固
定化チオール含有オリゴマーの各々に相補的オリゴヌクレオチドが特異的にハイ
ブリダイズしていることが判明した。
実施例30
シリコンウェーハに固定化したDNA鋳型に結合したハイブリダイズしたDNA
プライマーの伸長
SIABを結合したシリコンウェーハを使用して、ほぼ実施例7に記載した手
順に従って固定化DNA鋳型のプライマー伸長反応を行うこともできる。
3’遊離チオール基を含む27量体オリゴヌクレオチド(配列番号125)を
SIAB結合シリコンウェーハに例えば実施例28に記載したように結合した。
12量体オリゴヌクレオチドプライマー(配列番号126)を固定化オリゴヌク
レオチドにハイブリダイズし、市販キット(例えばSequenase又はTh
ermoSequenase,U.S.Biochemical Corp)を
使用してプライマーを伸長させた。製造業者の指示に従って緩衝液中で3種のデ
オキシリボヌクレオシド三リン酸(dNTP;dATP、dGTP、dCTP)
とジデオキシリボヌクレオシドチミジン三リン酸(ddNTP)の存在下にSe
quenase DNAポリメラーゼ又はThermoSequenase D
NAポリメラーゼを加えると、12量体プライマーはシリコンウェーハに結合し
たまま3塩基伸長した。次に、ウェーハを上述のようにMALDI−TOFマス
スペクトロメトリーにより分析した。質量スペクトル結果は元の未伸長12量体
から15量体(配列番号127)
をはっきりと区別し、シリコンウェーハの表面で特異的伸長を実施でき、MAL
DI−TOF MS分析により検出できることが分かった。
実施例31
シリコンウェーハに固定化したDNA鋳型に結合したハイブリダイズしたDNA
プライマーのポリメラーゼ伸長に及ぼすリンカー長の効果
SIABを結合したシリコン表面とターゲットDNAを固定化オリゴマー鋳型
にハイブリダイズすることにより形成されるデュプレクスDNAの間の距離の効
果と酵素の選択を検討した。
3’末端に加えた3塩基ポリdTスペーサー配列以外は同一のDNA配列の2
種の遊離チオール含有オリゴヌクレオチド:CTGATGCGTC GGATC
ATCTT TTTT(配列番号122)及び
CTGATGCGTC GGATCATCTT TTTTTTT(配列番号12
5)の3’末端に2種のSIAB結合シリコンウェーハを結合した。これらのオ
リゴヌクレオチドは合成し、各々別々にSIAB架橋剤によりシリコンウェーハ
の表面に固定化した(例えば実施例28参照)。両オリゴヌクレオチドに
共通のヌクレオチド配列の部分に相補的な12量体オリゴヌクレオチド:AAA
AAAGATG AT(配列番号126)、GATGATCCGA CG(配列
番号128)、GATCCGACGC AT(配列番号129)と共に各ウェー
ハをインキュベートし、シリコンウェーハを75℃で変性させ、ゆっくりと冷却
した。次にウェーハを上述のようにMALDI−TOFマススペクトロメトリー
により分析した。
上記実施例30に記載したように、デュプレクスと表面の間に9塩基スペーサ
ーを加えたオリゴマープライマー(配列番号125)を使用すると、結合12量
体オリゴヌクレオチドの3塩基特異的伸長が観察された。STAB部分とDNA
デュプレクスの間のDNAスペーサー長が0.3、6及び12の場合にも同様の
結果が観察された。更に、SequenaseやThermo Sequena
se(US Biochemical)等の種々のDNAポリメラーゼを使用し
て伸長反応を実施することもできる。例えば、SIABリンカーをDNA鋳型に
直接結合してもよいし、ハイブリダイズしたDNAのプライマー伸長を実施せず
にリンカーを加えてもよい。
実施例32
アポE遺伝子におけるスペクトロチップ突然変異検出
本実施例は診断目的で野生型及び突然変異アポリポタンパク質E遺伝子を検出
するための固定化鋳型のハイブリダイゼーション、プライマー伸長及びマススペ
クトロメトリーに関する。本実施例は、未標識対立遺伝子特異的プライマーのプ
ライマー伸長とマススペクトロメトリーによる伸長産物の分析を使用して、特定
配列を含む固定化DNA分子を検出及び区別できることを立証する。
3’−遊離チオール基を含む野生型アポリポタンパク質E遺伝子の対立遺伝子
3のコーディング配列:5’−GCCTGGTACACTGCCAGGCGCT
TCTGCAGGTCATCGGCATCGCGGAGGAG−3’(配列番号
280)又はコドン158にG→A転位をもつ突然変異アポリポタンパク質E遺
伝子:5’−GCCTGGTACACTGCCAGGCACTTCTGCAGG
TCATCGGCATCGCGGAGGAG−3’(配列番号281)に相補的
な50塩基合成DNA鋳型を実施例28に記載したように別々のSIAB結合シ
リコンウェーハに結合した。
21量体オリゴヌクレオチドプライマー:5’−GAT GCC GAT G
AC CTG CAG AAG−3’(配列
番号282)を固定化鋳型の各々にハイブリダイズし、市販キット(例えばSe
quenase又はThermosequenase,U.S.Biochem
ical Corp)を使用してプライマーを伸長させた。製造業者の指示に従
って緩衝液中で3種のデオキシリホヌクレオシド三リン酸(dNTP;dATP
、dGTP、dTTP)とジデオキシリボヌクレオシドシトシン三リン酸(dd
CTP)の存在下にSequenaseDNAポリメラーゼ又はThermos
equenase DNAポリメラーゼを加えると、野生型アポリポタンパク質
E遺伝子をコードする固定化鋳型に結合した21量体プライマーは1塩基伸長し
、突然変異形態のアポリポタンパク質E遺伝子をコードする固定化鋳型に結合し
た21量体プライマーは3塩基伸長した。
本明細書に記載するようにマススペクトロメトリーによりウェーハを分析した
。野生型アポリポタンパク質E配列は、質量対電荷比6771.17Da(理論
質量対電荷比6753.5Da)をもつ1塩基伸長したプライマー(22量体)
を質量対電荷比6499.64Daの元の21量体プライマーから区別する質量
スペクトルを生じた。突然変異アポリポタンパク質E
配列は、質量対電荷比7386.9Da(理論質量対電荷比7386.9Da)
をもつ3塩基伸長したプライマー(24量体)を質量対電荷比6499.64D
aの元の21量体プライマーから区別する質量スペクトルを生じた。
実施例33
鎖置換及び固定化相補的核酸へのハイブリダイゼーションによる2本鎖核酸分子
の検出
本実施例は、24量体プライマーの固定化とデュプレクスDNA分子の一方の
鎖の特異的ハイブリダイゼーションに関し、選択されたターゲット分子を溶液相
で増幅すると共に、2本鎖分子の検出を可能にする。この方法は単塩基変異の検
出、特に2本鎖フラグメントのゲノムライブラリーのスタリーニングに有用であ
る。
3’−遊離チオール基を含む24量体プライマーCTGATGCGTC GG
ATCATCTT TTTT(配列番号122)を実施例29に記載したように
SIAB結合シリコンウェーハに結合した。
18量体合成オリゴヌクレオチド:5’−CTGATGCGTCGGATCA
TC−3(配列番号286)を、この18量
体の12塩基部分に相補的な配列をもつ12量体:5’−GATGATCCGA
CG−3’(配列番号285)とプレミックスした。オリゴヌクレオチドミック
スを75℃まで加熱し、室温までゆっくりと冷却し、デュプレクス分子:
の形成を助長した。
実施例30に記載したハイブリダイゼーション条件を使用してデュプレクス分
子1μMを混合することにより、デュプレクス分子の12量体鎖と固定化24量
体プライマーの特異的ハイブリダイゼーションを実施した。
ウェーハを上述のようにマススペクトロメトリーにより分析した。12量体の
質量スペクトルには質量対電荷比3682.78Daで特異的ハイブリダイゼー
ションが検出された。
実施例34
1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)
フェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)−ジイソプロピルアミノホスフ
ィノ)エタン
A.2−ニトロ−5−(3−ヒドロキシプロポキシ)ベンズアルデヒド
3−ブロモ−1−プロパノール(3.34g,24mmol)を無水アセトニ
トリル80ml中で5−ヒドロキシ−2−ニトロベンズアルデヒド(3.34g
,20mmol)、K2CO3(3.5g)及びKI(100mg)の存在下に一
晩(15時間)還流させた。反応混合物を室温まで冷却し、塩化メチレン150
mlを加えた。混合物を濾過し、固体残渣を塩化メチレンで洗浄した。有機溶液
をあわせて蒸発乾涸し、塩化メチレン100mlに再溶解した。得られた溶液を
飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶剤の減圧除去後に所
望生成物4.31g(96%)が得られた。
Rf=0.33(ジクロロメタン/メタノール,95/5)。
UV(メタノール)最大:313,240(ショルダー),215nm;最小:
266nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ10.28(s,1H),8.17(d,1H
),7.35(d,1H),7.22(S,1H),4.22(t,2H),3
.54(t,2H),1.90(m,2H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ189.9,153.0,141.6,13
4.3,127.3,118.4,
114.0,66.2,56.9,31.7。
B.2−ニトロ−5−(3−O−t−ブチルジメチルシリルプロポキシ)ベン
ズアルデヒド
2−ニトロ−5−(3−ヒドロキシプロポキシ)ベンズアルデヒド(1g,4
.44mmol)を無水アセトニトリル50mlに溶かした。この溶液にトリエ
チルアミン1ml、イミダゾール200mg及びtBDMSCl 0.8g(5
.3mmol)を加えた。混合物を室温で4時間撹拌した。メタノール(1ml
)を加えて反応を停止した。溶剤を減圧除去し、固体残渣を塩化メチレン100
mlに再溶解した。得られた溶液を飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄後、水洗し
た。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を減圧除去した。塩化メチレンを用
いて粗混合物をクイックシリカゲルカラムで精製すると、2−ニトロ−5−(3
−O−t−ブチルジメチルシリルプロポキシ)ベンズアルデヒド1.44g(9
6%)が得られた。
Rf=0.67(ヘキサン/酢酸エチル,5/1)。
UV(メタノール)最大:317,243,215nm;最小:235,267
nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ10.28(s,1H),.
8.14(d,1H),7.32(d,1H),7.20(s,1H),4.2
0(t,2H),3.75(t,2H),1.90(m,2H),0.85(s
,9H),0.02(s,6H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ189.6,162,7,141.5,13
4.0,127.1,118.2,113.8,65.4,58.5,31.2
,25.5,-3.1,−5.7。
C.1−(2−ニトロ−5−(3−O−t−ブチルジメチルシリルプロポキシ
)フェニル)エタノール
高減圧乾燥した2−ニトロ−5−(3−O−t−ブチルジメチルシリルプロポ
キシ)ベンズアルデヒド(1.02g,3mmol)を無水塩化メチレン50m
lに溶かした。トルエン(3ml)中2Mトリメチルアルミニウムを10分以内
で滴下し、反応混合物を室温に維持した。更に10分間撹拌し、混合物を氷冷水
10mlに注いだ。水相からエマルションを分離し、硫酸ナトリウム100gで
乾燥し、残留水を除去した。溶剤を減圧除去し、塩化メチレン中勾配メタノール
を使用して混合物をシリカゲルカラムで精製した。0.94g(86%)の所望
生
成物が単離された。
Rf=0.375(ヘキサン/酢酸エチル,5/1)。
UV(メタノール)最大:306,233,206nm;最小:255,220
nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ8.00(d,1H),7.36(s,1H)
,7.00(d,1H),5.49(b,OH),5.31(q,1H),4.
19(m,2H),3.77(t,2H),1.95(m,2H),1.37(
d,3H),0.86(s,9H),0.04(s,6H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ162.6,146.2,139.6,12
6.9,112.9,112.5,64.8,63.9,58.7,31.5,
25.6,24.9,−3.4,−5.8。
D.1−(2−ニトロ−5−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)エタノ
ール
1−(2−ニトロ−5−(3−O−t−ブチルジメチルシリルプロポキシ)フ
ェニル)エタノール(0.89g,2.5mmol)をTHF30mlに溶かし
、nBu4NF 0.5mm
olを撹拌下に加えた。混合物を室温で5時間撹拌し、溶剤を減圧除去した。塩
化メチレン中勾配メタノールを使用して残渣をシリカゲルカラムで精製した。1
−(2−ニトロ−5−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェニル)エタノール0.
6g(99%)が得られた。
Rf=0.17(ジクロロメタン/メタノール,95/5)。
UV(メタノール)最大:304,232,210nm;最小:255,219
nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ8.00(d,1H),7.33(s,1H)
,7.00(d,1H),5.50(d,OH),5.28(t,OH),4.
59(t,1H),4.17(t,2H),3.57(m,2H),1.89(
m,2H),1.36(d,2H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ162.8,146.3,139.7,12
7.1,113.1,112.6,65.5,64.0,57.0,31.8,
25.0。
E.1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポ
キシ)フェニル)エタノール
1−(2−ニトロ−5−(3−ヒドロキシプロポキシ)フェ
ニル)エタノール(0.482g,2mmol)を無水ピリジンと2回共蒸発さ
せ、無水ピリジン20mlに溶かした。溶液を氷水浴で冷却し、DMTCl 7
50mg(2.2mmol)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、メタノ
ール0.5mlを加えて反応を停止した。溶剤を減圧除去し、残渣をトルエンと
2回共蒸発させ、ピリジンを完全に除去した。トリエチルアミン数滴を含む塩化
メチレン中勾配メタノールを使用して最終残渣をシリカゲルカラムで精製すると
、所望生成物1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチル
プロポキシ)フェニル)エタノール0.96g(89%)が得られた。
Rf=0.50(ジクロロメタン/メタノール,99/1)。
UV(メタノール)最大:350(ショルダー),305,283,276(シ
ョルダー),233,208nm;最小:290,258,220nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ8.00(d,1H),6.82−7.42(
ArH),5.52(d,OH),5.32(m,1H),4.23(t,2H
),3.71(s,6H),3.17(t,2H),2.00(m,2
H),1.37(d,3H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ162.5,157.9,157.7,14
6.1,144.9,140.1,139.7,135.7,129.5,12
8.8,127.6,127.5,127.3,126.9,126.4,11
3.0,112.8,112.6,85.2,65.3,63.9,59.0,
54.8,28.9,24.9。
F.1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポ
キシ)フェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)−ジイソプロピルアミノ
ホスフィノ)エタン
1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)
フェニル)エタノール(400mg,0.74mmol)を高減圧下に乾燥し、
無水塩化メチレン20mlに溶かした。この溶液にN,N−ジイソプロピルエチ
ルアミン0.5mlと2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルクロロホスホ
ロアミダイト0.3ml(1.34mmol)を加えた。反応混合物を室温で3
0分間撹拌し、メタノール0.5mlを加えて反応を停止した。混合物を飽和重
炭酸ナトリウム溶
液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶剤を減圧除去し、トリエチルアミン
数滴を含む塩化メチレン中1%メタノールを使用してクイックシリカゲルカラム
で精製すると、所望のホスホロアミダイト510mg(93%)が得られた。
Rf=0.87(ジクロロメタン/メタノール,99/1)。
実施例35
1−(4−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)−3−メトキ
シ−6−ニトロフェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)ジイソプロピル
アミノホスフィノ)エタン
A.4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メトキシアセトフェノン
3−ブロモ−1−プロパノール(53ml,33mmol)を無水アセトニト
リル100ml中で4−ヒドロキシ−3−メトキシアセトフェノン(5g,30
mmol)、K2CO3(5g)及びKI(300mg)の存在下に一晩(15時
間)還流させた。室温まで冷却後、反応混合物に塩化メチレン(150ml)を
加えた。混合物を濾過し、固体残渣を塩化メチレンで洗浄した。有機溶液をあわ
せて蒸発乾涸し、塩化メチレン100mlに再溶解した。得られた溶液を飽和N
aCl溶液で洗浄し、
硫酸ナトリウムで乾燥した。溶剤の減圧除去後に所望生成物6.5g(96.4
%)が得られた。
Rf=0.41(ジクロロメタン/メタノール,95/5)。
UV(メタノール)最大:304,273,227,210nm;最小:291
,244,214nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ7.64(d,1H),7.46(s,1H)
,7.04(d,1H),4.58(b,OH),4.12(t,2H),3.
80(s,3H),3.56(t,2H),2.54(s,3H),1.88(
m,2H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ196.3,152.5,148.6,12
9.7,123.1,111.5,110.3,65.4,57.2,55.5
,31.9,26.3。
B.4−(3−アセトキシプロポキシ)−3−メトキシアセトフェノン
4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メトキシアセトフェノン(3.5g
,15.6mmol)を乾燥し、無水アセトニトリル80mlに溶かした。この
混合物にトリエチルアミン
6mlと無水酢酸6mlを加えた。4時間後にメタノール6mlを加え、溶剤を
減圧除去した。固体残渣をジクロロメタン100mlに再溶解し、溶液を希重炭
酸ナトリウム溶液で洗浄後、水洗した。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤
を除去した。塩化メチレンを使用して固体残渣をシリカゲルカラムで精製すると
、4−(3−アセトキシプロポキシ)−3−メトキシアセトフェノン4.1g(
98.6%)が得られた。
Rf=0.22(ジクロロメタン/メタノール,99/1)。
UV(メタノール)最大:303,273,227,210nm;最小:290
,243,214nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ7.62(d,1H),7.45(s,1H)
,7.08(d,1H),4.12(m,4H),3.82(s,3H),2.
54(s,3H),2.04(m,2H),2.00(s,3H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ196.3,170.4,152.5,14
8.6,130.0,123.0,111.8,110.4,65.2,60.
8,55.5,27.9,26.3,20.7。
C.4−(3−アセトキシプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロアセトフ
ェノン
4−(3−アセトキシプロポキシ)−3−メトキシアセトフェノン(3.99
g,15mmol)を水浴中70%HNO315mlに滴下し、反応温度を室温
に維持した。反応混合物を室温で30分間撹拌し、砕氷30gを加えた。この混
合物をジクロロメタン100mlで抽出し、有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液
で洗浄した。溶液を硫酸ナトリウムで乾燥し、溶剤を減圧除去した。塩化メチレ
ン中勾配メタノールを使用して粗混合物をシリカゲルカラムで精製すると、所望
生成物4−(3−アセトキシプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロアセトフ
ェノン3.8g(81.5%)とイプソ置換生成物5−(3−アセトキシプロポ
キシ)−4−メトキシ−1,2−ジニトロベンゼン0.38g(8%)が得られ
た。
イプソ置換副生物5−(3−アセトキシプロポキシ)−4−メトキシ−1,2−
ジニトロベンセン:
Rf=0.47(ジクロロメタン/メタノール,99/1)。
UV(メタノール)最大:334,330,270,240,21Inm;最小
:310,282,263,223nm。1
H NMR(CDCl3)δ7.36(s,1H),7.34(s,1H),4
.28(t,2H),4.18(t,2H),4.02(s,3H),2.20
(m,2H),2.08(s,3H)。13
C NMR(CDCl3)δ170.9,152.2,151.1,117.
6,111.2,107.9,107.1,66.7,60.6,56.9,2
8.2,20.9。
所望生成物4−(3−アセトキシプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロアセ
トフェノン:
Rf=0.29(ジクロロメタン/メタノール,99/1)。
UV(メタノール)最大:344,300,246,213nm;最小:320
,270,227nm。1
H NMR(CDCl3)δ7.62(s,1H),6.74(s,1H),4
.28(t,2H),4.20(t,2H),3.96(s,3H),2.48
(s,3H),2.20(m,2H),2.08(s,3H)。13
C NMR(CDCl3)δ200.0,171.0,154.3,148.
4,138.3,133.0,
108.8,108.0,66.1,60.8,56.6,30.4,28.2
,20.9。
D.1−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロフ
ェニル)エタノール
4−(3−アセトキシプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロアセトフェノ
ン(3.73g,12mmol)にエタノール150mlとK2CO3 6.5g
を加えた。混合物を室温で4時間撹拌し、ジクロロメタン中5%メタノールを用
いてTLCにかけると反応が完了したことを示した。この同一反応混合物にNa
BH4 3.5gを加え、混合物を室温で2時間撹拌した。アセトン(10ml
)を加え、残りのNaBH4と反応させた。溶剤を減圧除去し、残渣をシリカゲ
ル50gに吸収させた。塩化メチレン中5%メタノールを使用してシリカゲルカ
ラムの頂部にシリカゲル混合物を加えると、所望生成物1−(4−(3−ヒドロ
キシプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロフェニル)エタノール3.15g
(97%)が得られた。
脱保護後の中間生成物(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メトキシ−6
−ニトロアセトフェノン:
Rf=0.60(ジクロロメタン/メタノール,95/5)。
最終生成物1−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニト
ロフェニル)エタノール:
Rf=0.50(ジクロロメタン/メタノール,95/5)。
UV(メタノール)最大:344,300,243,219nm;最小:317
,264,233nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ7.54(s,1H),7.36(s,1H)
,5.47(d,OH),5.27(m,1H),4.55(t,OH),4.
05(t,2H),3.90(s,3H),3.55(q,2H),1.88(
m,2H),1.37(d,3H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ153.4,146.4,138.8,13
7.9,109.0,108.1,68.5,65.9,57.2,56.0,
31.9,29.6。
E.1−(4−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)−3−
メトキシ−6−ニトロフェニル)エタノール
1−(4−(3−ヒドロキシプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロフェニ
ル)エタノール(0.325g,1.2mmol)を無水ピリジンと2回共蒸発
させ、無水ピリジン15ml
に溶かした。溶液を氷水浴で冷却し、DMTCl 450mg(1.33mmo
l)を加えた。反応混合物を室温で一晩撹拌し、メタノール0.5mlを加えて
反応を停止した。溶剤を減圧除去し、残渣をトルエンと2回共蒸発させ、ピリジ
ンを完全に除去した。トリエチルアミン数滴を含む塩化メチレン中勾配メタノー
ルを使用して最終残渣をシリカゲルカラムで精製すると、所望生成物1−(4−
(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニ
トロフェニル)エタノール605mg(88%)が得られた。
Rf=0.50(シクロロメタン/メタノール,95/5)。
UV(メタノール)最大:354,302,282,274,233,209n
m;最小:322,292,263,222nm。1
H NMR(DMSO−d6)δ7.54(s,1H),6.8−7.4(Ar
H),5.48(d,OH),5.27(m,1H),4.16(t,2H),
3.85(s,3H),3.72(s,6H),3.15(t,2H),1.9
8(t,2H),1.37(d,3H)。13
C NMR(DMSO−d6)δ157.8,153.3,
146.1,144.9,138.7,137.8,135.7,129.4,
128.7,127.5,127.4,126.3,112.9,112.6,
108.9,108.2,85.1,65.7,63.7,59.2,55.8
,54.8,29.0,25.0。
F.1−(4−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)−3−
メトキシ−6−ニトロフェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)ジイソプ
ロピルアミノホスフィノ)エタン
1−(4−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)−3−メト
キシ−6−ニトロフェニル)エタノール(200mg,3.5mmol)を高減
圧下に乾燥し、無水塩化メチレン15mlに溶かした。この溶液にN,N−ジイ
ソプロピルエチルアミン0.5mlと2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピ
ルクロロホスホロアミダイト0.2ml(0.89mmol)を加えた。反応混
合物を室温で30分間撹拌し、メタノール0.5mlを加えて反応を停止した。
混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。溶剤
を減
圧除去し、トリエチルアミン数滴を含む塩化メチレン中1%メタノールを使用し
てクイックシリカゲルカラムで精製すると、所望のホスホロアミダイト1−(4
−(3−O−4,4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)−3−メトキシ−6−
ニトロフェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)ジイソプロピルアミノホ
スフィノ)エタン247mg(91.3%)が得られた。
Rf=0.87(ジクロロメタン/メタノール,99/1)。
実施例36
オリゴヌクレオチド合成
標準条件下で固相核酸合成(Sinhaら,Tetrahedron Let
t.1983,24,5843−5846;Sinhaら,Nucleic Ac
ids Res.1984,12,4539−4557;Beaucageら,
Tetrahedron 993,49,6123−6194;及びMatte
ucciら,J.Am.Chem.Soc.1981,103,3185−31
91参照)により光開裂性リンカーを含むオリゴヌクレオチド結合体を調製した
。更に、より長い結合時間を使用して光開裂性単位と5’末端アミノ基を取
り込ませた。遊離したDMTカチオンの吸光度を測定することにより結合効率を
検出した結果、ホスホロアミダイト1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’
−ジメトキシトリチルプロポキシ)フェニル)−1−O−((2−シアノエトキ
シ)−ジイソプロピルアミノホスフィノ)エタン又は1−(4−(3−O−4,
4’−ジメトキシトリチルプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロフェニル)
−1−O−((2−シアノエトキシ)ジイソプロピルアミノホスフィノ)エタン
の結合効率は慣用ヌクレオシドホスホロアミダイトと同等であることが判明した
。塩基保護の脱保護と、固体支持体からの結合体の遊離は濃アンモニウムを用い
て55℃で一晩行った。他の結合体の塩基保護の脱保護はAMA試薬による迅速
脱保護により行った。0.1M酢酸トリエチルアンモニウム(pH7.0)とア
セトニリル勾配(20分間で5%→25%)を使用してHPLC(トリチル−o
n)によりMMT−on結合体上のを精製した。MMT又はCMT保護結合体を
集めて減量し、80%酢酸水溶液で脱トリチル化(40分間、0℃)し、脱塩し
、−20℃で保存した。
実施例37
光分解試験
典型例では、蒸留水200μl中に光開裂性リンカーを含むオリゴヌクレオチ
ド結合体2nmolに長波長UVランプ(Blak Ray,XX−15UVラ
ンプ、Ultraviolet products,San Gabriel,
CA)で10cmの距離で照射した(放射ピーク365nm,距離31cmのラ
ンプ強度=1.1mW/cm2)。0.1M酢酸トリエチルアンモニウム(pH
7.0)とアセトニリル勾配を使用するHPLC(トリチル−off)により、
得られた混合物を分析した。分析の結果、結合体はUV照射数分以内にリンカー
から開裂することが判明した。
等価物
当業者は単に日常実験を使用して本明細書に記載した特定方法の多数の等価物
を認識又は確認することができよう。このような等価物は本発明の範囲に含まれ
るとみなされ、以下の請求の範囲により保護される。
【手続補正書】特許法第184条の8第1項
【提出日】平成11年1月28日(1999.1.28)
【補正内容】
f)試料をイオン化/揮発させる段階と、
g)伸長DNAの質量を検出し、質量によって野生型対立遺伝子が存在するか又
は突然変異対立遺伝子が存在するかを判断し、コドンに突然変異対立遺伝子が存
在する場合には新形成であると診断する段階を含む。1態様では、伸長−MS分
析を使用してレトロウイルス(RET)癌原遺伝子における突然変異コドン63
4の存在を検出する。
別の態様では、形質転換細胞で発現される遺伝子の逆転写と増幅を使用して疾
患を診断する方法を提供する。特に、腫瘍細胞では発現されるが、正常骨髄細胞
等の正常細胞では発現されないカテコールアミン生合成酵素であるチロシンヒド
ロキシラーゼの逆転写酵素(RT)−MSを使用して神経芽細胞腫を診断する方
法を提供する。本方法は、
a)組織試料を得る段階と、
b)試料からポリA RNAを単離する段階と、
c)逆転写を使用してcDNAライブラリーを調製する段階と、
d)1個のオリゴプライマーがリンカー部分をもつようにして選択した遺伝子の
cDNA産物又はその一部を増幅する段階と、
e)リンカー部分を介してDNAを固体支持体に固定化するこ
とにより増幅産物を単離する段階と、
f)場合によりDNAを条件付けする段階と、
g)試料をイオン化/揮発させ、選択した遺伝子の発現を表すDNAピークの存
在を検出する段階を含む。例えば、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子の発現は神
経芽細胞腫を表す。
別の態様では、ターゲット核酸から特定末端をもつフラグメントを生成し、マ
ススペクトロメトリーにより各フラグメントの質量を測定し、フラグメントを並
べてより大きいターゲット核酸の配列を決定することにより、比較的大きいター
ゲット核酸の正確な配列決定が得られる。好ましい態様では、特定末端をもつフ
ラグメントは特定塩基を末端にもつ部分又は完全フラグメントである。
特定塩基を末端にもつフラグメントを生成する方法の1例は、例えば転写反応
後に塩基特異的リボヌクレアーゼを使用する。好ましい塩基特異的リボヌクレア
ーゼはT1−リボヌクレアーゼ(G特異的)、U2−リボヌクレアーゼ(A特異的
)、PhyM−リボヌクレアーゼ(U特異的)及びリボヌクレアーゼA(U/特
異的)から選択される。他の有効な塩基特異的リボヌクレアーゼは実施例21に
記載するアッセイを使用して同定することができる。修飾ヌクレオチドを未修飾
ヌクレオチドと転写反応させることが好ましい。修飾ヌクレオチドと未修飾ヌク
レオチドを約1:1の好ましい比率で組み込むように適当な濃度で転写反応に加
えると最も好ましい。あるいは、修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチドで2回
別々にターゲットDNAの転写
を行い、結果を比較してもよい。好ましい修飾ヌクレオチドとしては、ホウ素又
は臭素修飾ヌクレオチド(Porterら(1995)Biochemistr
y 34:11963−11969;Hasanら(1996)Nucl.Ac
ids Res.24:2150−2157;Liら(1995)Nuclei
c Acids Res.23:4495−4501)、α−チオ修飾ヌクレオ
チド及び上述のような質量改変ヌクレオチドが挙げられる。
特定塩基を末端にもつフラグメントを生成する別の方法は、増幅と塩基特異的
ターミネーション反応を併用実施する。例えば、連鎖停止ヌクレオチドに対して
比較的親和性をもつ酵素による重合が指数的増幅を生じ、連鎖停止ヌクレオチド
に対して比較的高い親和性をもつ酵素が重合を停止してシーケンシング産物を生
じるように、連鎖停止ヌクレオチドに対して各々異なる親和性をもつ少なくとも
2種の異なるポリメラーゼ酵素を使用して増幅とターミネーション反応を併用実
施することができる。
捕獲は1個の反応チューブ/ウェルから異なるシーケンシングプライマーの分離
、特異的多重増幅産物、PROBE産物の単離等に使用することができる。サイ
クルシーケンシング等の慣用方法と慣用容量を使用することができる。汎用チッ
プデザインにより多種多様のアプリケーションを利用できる。更に、この方法は
高スループットを得るために自動化することができる。
実施例23
マススペクトロメトリーによる欠失検出
種々のフォーマットを利用して遺伝子内の欠失をマススペクトロメーターによ
り検出することができる。例えば、上記実施例に記載したように2本鎖増幅産物
の分子量を測定したり、2本鎖産物の一方又は両方の鎖を単離して質量を測定す
ることができる。
あるいは、本実施例に記載するように、特異的酵素反応を実施し、対応する産
物の質量をマススペクトロメトリーにより測定することもできる。欠失寸法は数
十塩基長までとすることができ、この場合も野生型と突然変異対立遺伝子の同時
検出が可能である。特異的産物の同時検出により、個体が特異的対立遺伝子又は
突然変異のホモ接合であるかヘテロ接合であるかを1
回の反応で同定することが可能である。
材料と方法
ゲノムDNA
白血球ゲノムDNAは無関係の健康個体から得た。
PCR増幅
ターゲットDNAのPCR増幅は、ストレプトアビジンをコートしたビーズを
捕獲する後期精製段階を実施せずに反応産物を使用できるように設定及び至適化
した。ターゲット増幅及びPROBE反応用プライマーは、請求の範囲
1.ターゲット核酸分子の特定塩基を末端にもつ核酸フラグメントの並び方の決
定方法であって、
a)ターゲット核酸配列と一方の末端にタグを含む核酸分子を得る段階と、
b)ターゲット核酸から特定塩基を末端にもつ核酸フラグメントを生成する段階
と、
c)フラグメントをマススペクトロメトリーフォーマットにより分析し、ターゲ
ット核酸分子中の特定塩基を末端にもつ核酸フラグメントの並び方を決定する段
階を含む前記方法。
2.段階b)においてヌクレアーゼをターゲット核酸と接触させ、特定塩基末端
をもつ核酸フラグメントを生成する請求項1に記載の方法。
3.ヌクレアーゼがターゲット核酸中の少なくとも1個の制限部位を認識し、こ
れを開裂することが可能な制限酵素である請求項2に記載の方法。
4.ターゲット核酸がデオキシリボ核酸であり、ヌクレアーゼがデオキシリボヌ
クレアーゼである請求項2に記載の方法。
5.ターゲット核酸がリボ核酸であり、ヌクレアーゼがリボヌクレアーゼである
請求項2に記載の方法。
6.リボヌクレアーゼがG特異的T1リボヌクレアーゼ、A特異的U2リボヌクレ
アーゼ、A/U特異的PhyMリボヌクレアーゼ、U/C特異的リボヌクレアー
ゼA、C特異的ニワトリ肝リボヌクレアーゼ及びクリサビチンから構成される群
から選択される請求項5に記載の方法。
7.段階b)において増幅と特定塩基ターミネーション反応の併用実施により特
定塩基を末端にもつフラグメントを生成する請求項1に記載の方法。
8.増幅と特定塩基ターミネーション反応の併用が、少なくとも1種の連鎖停止
ヌクレオチドに対して比較的低い親和性をもつ第1のポリメラーゼと、少なくと
も1種の連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的高い親和性をもつ第2のポリメラ
ーゼを使用して実施される請求項7に記載の方法。
9.第1及び第2のポリメラーゼが熱安定DNAポリメラーゼである請求項8に
記載の方法。
10.熱安定DNAポリメラーゼがTaq DNAポリメラーゼ、AmpliT
aq FS DNAポリメラーゼ、Deep
Vent(exo-)DNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼ、V
ent(exo-)DNAポリメラーゼ、Vent DNAポリメラーゼ、Ve
nt(exo-)DNAポリメラーゼ、Deep Vent DNAポリメラー
ゼ、Thermo Sequenase、exo(−)Pseudococcu
s furiosus(Pfu)DNAポリメラーゼ、AmpliTaq、Ul
tman、9 degree Nm、Tth、Hot Tub、Pyrococ
cus furiosus(Pfu)及びPyrococcus woesei
(Pwo)DNAポリメラーゼから構成される群から選択される請求項9に記載
の方法。
11.段階b)で生成される特定塩基を末端にもつ核酸フラグメントが質量改変
ヌクレオチドを含む請求項1に記載の方法。
12.タグが3’タグを含む請求項1に記載の方法。
13.タグが5’タグを含む請求項1に記載の方法。
14.タグが非天然タグである請求項12又は13に記載の方法。
15.非天然タグがアフィニティタグ及び質量マーカーから構成される群から選
択される請求項14に記載の方法。
16.アフィニティタグが核酸の固体支持体固定化を助長する
請求項15に記載の方法。
17.アフィニティタグがビオチン又は固体支持体に結合した捕獲核酸配列に結
合することが可能な核酸配列である請求項16に記載の方法。
18.生物試料中に存在するターゲット核酸の検出方法であって、
a)ターゲット核酸を含む核酸の一部を増幅することが可能な第1組のプライマ
ーを使用し、核酸又は第1組のプライマー中のプライマーを請求項92から10
3のいずれか一項に記載の光開裂性リンカーを介して固体支持体に固定化し、生
物試料から得られた核酸で第1回目のポリメラーゼ連鎖反応を実施し、増幅産物
を生成する段階と、
b)増幅産物をマススペクトロメトリーにより検出し、増幅産物が検出された場
合には生物試料中にターゲット核酸が存在すると判断する段階を含む前記方法。
19.生物試料中に存在するターゲット核酸の検出方法であって、
a)ターゲット核酸を含む核酸の一部を増幅することが可能な第1組のプライマ
ーを使用し、生物試料から得られた核酸で第
1回目のポリメラーゼ連鎖反応を実施し、第1の増幅産物を生成する段階と、
b)ターゲット核酸を含む第1の増幅産物の少なくとも一部を増幅することが可
能な第2組のプライマーを使用し、第1の増幅産物で第2回目のポリメラーゼ連
鎖反応を実施し、第2の増幅産物を生成する段階と、
c)第2の増幅産物をマススペクトロメトリーにより検出し、第2の増幅産物が
検出された場合には生物試料中にターゲット核酸が存在すると判断する段階を含
み、核酸又は第1組のプライマー中のプライマーもしくは第2組のプライマー中
のプライマーは請求項92から103のいずれか一項に記載の光開裂性リンカー
を介して固体支持体に固定化する前記方法。
20.ターゲット核酸を固体支持体に固定化し、固定化したターゲット核酸をマ
ススペクトロメトリー中に支持体から開裂する請求項18又は19に記載の方法
。
21.固体支持体がビーズ、平坦表面、チップ、キャピラリー、ピン、コーム及
びウェーハから構成される群から選択される請求項18又は19に記載の方法。
22.マススペクトロメトリーの前にターゲット核酸を精製す
る請求項18又は19に記載の方法。
23.プライマー又は増幅産物を条件付けする請求項18又は19に記載の方法
。
24.プライマー又は増幅産物をホスホジエステル主鎖修飾により条件付けする
請求項23に記載の方法。
25.ホスホジエステル主鎖修飾がカチオン交換である請求項24に記載の方法
。
26.プライマー又は増幅産物をアルキル化剤又は塩化トリアルキルシリルとの
接触により条件付けする請求項23に記載の方法。
27.プライマー又は第1もしくは第2の増幅産物の脱プリン感度を低下させる
少なくとも1種のヌクレオチドを加えることにより条件付けを行う請求項23に
記載の方法。
28.ヌクレオチドがN7−デアザプリンヌクレオチド、N9−デアザプリンヌ
クレオチド又は2’−フルオロ−2’−デオキシヌクレオチドである請求項27
に記載の方法。
29.組織又は細胞試料中の新形成/悪性の検出方法であって、テロメラーゼを
コードするか又は癌原遺伝子の突然変異に特異的であるか又は腫瘍特異的遺伝子
をコードする核酸をマススペ
クトロメトリーにより検出することにより試料中のテロメラーゼ活性、癌原遺伝
子の突然変異、腫瘍特異的遺伝子の発現を検出することを特徴とする前記方法。
30.組織又は細胞試料中の新形成/悪性の検出方法であって、
a)試料からテロメラーゼを単離し、合成DNAのテロメラーゼ特異的伸長を生
じる条件下で、場合により固定化したテロメア反復に相補的な合成DNAプライ
マーと全4種のデオキシヌクレオチド三リン酸を加える段階と、
b)テロメラーゼ伸長DNA産物を増幅する段階と、
c)DNA産物をマススペクトロメトリーにより検出し、テロメラーゼ特異的伸
長が検出された場合には新形成/悪性と判断する段階を含む請求項29に記載の
方法。
31.プライマーが支持体に固定化するためのリンカー部分を含み、リンカー部
分を固体支持体に結合することにより増幅プライマーを単離する請求項30に記
載の方法。
32.生物試料中のテロメラーゼ活性の検出方法であって、
a)生物試料と、テロメラーゼ活性により伸長することが可能な基質プライマー
と、完全な1組のデオキシヌクレオシド三リン酸をインキュベートする段階と、
b)テロメラーゼ伸長基質プライマーをマススペクトロメトリーにより検出し、
生物試料中のテロメラーゼ活性を検出する段階を含む前記方法。
33.基質プライマーを固体支持体に固定化する請求項32に記載の方法。
34.基質プライマーを固体支持体にアレー状に固定化する請求項33に記載の
方法。
35.テロメラーゼ伸長基質プライマーをマススペクトロメトリーの前に増幅す
る段階を更に含む請求項32に記載の方法。
36.突然変異癌原遺伝子により形質転換した細胞又は組織の同定方法であって
、
a)1個のプライマーが固定化のためのリンカー部分を含むようにして細胞又は
組織試料中で形質転換を表すコドンを含む癌原遺伝子の一部を増幅する段階と、
b)場合によりアレーの形態で固体支持体にリンカー部分を介してDNAを固定
化する段階と、
c)コドンの上流の癌原遺伝子配列に相補的なプライマーをハイブリダイズする
段階と、
d)3dNTP/1ddNTPとDNAポリメラーゼを加え、
ハイブリダイズしたプライマーを次のddNTPロケーションまで伸長する段階
と、
e)試料をイオン化/揮発させる段階と、
f)突然変異癌原遺伝子を表す伸長したDNAの質量を検出し、突然変異癌原遺
伝子により形質転換した細胞又は組織を同定する段階を含む請求項29に記載の
方法。
37.癌原遺伝子がRET癌原遺伝子である請求項36に記載の方法。
38.形質転換を表すコドンがRET癌原遺伝子のコドン634である請求項3
7に記載の方法。
39.腫瘍特異的遺伝子の発現の検出方法であって、
a)ポリA RNAを試料から単離する段階と、
b)逆転写を使用してcDNAライブラリーを調製する段階と、
c)1個がリンカー部分を含む1組のプライマーを使用して腫瘍特異的遺伝子の
cDNA産物又はその一部を増幅する段階と、
d)リンカー部分を介してDNAを固体支持体に固定化することにより増幅産物
を単離する段階と、
e)場合によりDNAを条件付けする段階と、
f)試料をイオン化/揮発させ、遺伝子の発現を表すDNAピ
ークの存在を検出する段階を含む請求項29に記載の方法。
40.細胞が骨髄細胞であり、遺伝子がチロシンヒドロキシラーゼ遺伝子であり
、遺伝子の発現が神経芽細胞腫を表す請求項39に記載の方法。
41.マトリックス介助レーザーデソープション/イオン化飛行時間(MALD
I−TOF)マススペクトロメトリーを使用する2本鎖核酸の直接検出方法であ
って、
a)細胞又は組織試料から2本鎖DNAフラグメントを単離する段階と、
b)dsDNA:ssDNA比を増加する条件として、約4℃以下の温度で分析
用試料を調製することと、マトリックス中で高いDNA濃度を使用してデュプレ
クス形成を誘導することのうちの一方又は両方を含む条件下で分析用2本鎖DN
Aを調製する段階と、
c)低い加速電圧を使用して段階b)のDNAをイオン化/揮発させる段階と、
d)MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより2本鎖DNAの存在を検
出する段階を含む前記方法。
42.血縁関係を認識又は突然変異を検出するためのDNA試
料の比較方法であって、
a)複数の生物試料を得る段階と、
b)2個以上のマイクロサテライトDNA反復配列を含む各試料からのDNA領
域を増幅する段階と、
c)増幅したDNAの存在をマススペクトロメトリーにより各試料から検出し、
増幅したDNAの分子量を比較し、分子量が異なる場合には試料間に不一致又は
突然変異が存在すると判断する段階を含む前記方法。
43.不一致が1個の試料中のDNAにおける突然変異の存在、試料を採取した
個体間の非血縁関係又はHLA不適合性を表す請求項42に記載の方法。
44.複数のマーカーを同時に試験する請求項42又は43に記載の方法。
45.核酸配列中のターゲットヌクレオチドの同定方法であって、
a)(i)ターゲットヌクレオチドのすぐ下流の核酸配列の一部に一致する5’
末端と、唯一の制限エンドヌクレアーゼ部位をコードする配列と、自己相補的な
3’末端をもつ第1のプライマーと、
(ii)リンカー部分を含む第2の下流プライマーを使用してターゲットヌクレ
オチドを含む核酸配列の少なくとも一部を増幅し、ターゲットヌクレオチドを含
む核酸配列の少なくとも一部を含む増幅2本鎖核酸を生成する段階と、
b)リンカー部分を介して増幅2本鎖核酸を固体支持体に固定化する段階と、
c)固定化核酸を変性させ、非固定化鎖を単離する段階と、
d)3’末端をポリメラーゼにより伸長できるように、単離した非固定化鎖の3
’末端の内部相補的配列をアニールし、自己アニールした核酸を生成する段階と
、
f)ポリメラーセと3dNTPと欠損dNTPに対応する1ddNTPと共にイ
ンキュベートすることにより、自己アニールした核酸を伸長し、伸長核酸を生成
する段階と、
g)伸長した核酸を前記唯一の制限エンドヌクレアーゼ部位に特異的な制限エン
ドヌクレアーゼで間裂する段階と、
h)ターゲットヌクレオチドを同定する段階を含む前記方法。
46.ターゲットヌクレオチドの同定が核酸配列中の突然変異を表す請求項45
に記載の方法。
47.伸長した核酸の質量に基づいてターゲットヌクレオチド
を同定する請求項45に記載の方法。
48.伸長した核酸の質量をマススペクトロメトリーにより測定する請求項46
に記載の方法。
49.RNA増幅を使用して生物試料中のターゲット核酸を検出する方法であっ
て、
a)ターゲット配列又はその補体に相補的な配列とRNAポリメラーゼプロモー
ターをコードする配列を含むプライマーを使用してターゲット核酸を増幅する段
階と、
b)プロモーターを認識するRNAポリメラーゼを使用してRNAを合成する段
階と、
c)マススペクトロメトリーを使用して得られたRNAを検出し、生物試料中の
ターゲット核酸配列の存在を検出する段階を含む前記方法。
50.ターゲット核酸配列の存在の検出方法であって、
a)i)RNAポリメラーゼと、
ii)ヌクレオシド三リン酸と、
iii)ターゲット核酸配列又はその補体とRNAポリメラーゼのプロモーター
とを含む核酸分子を反応混合物中でインキュベートし、ターゲット核酸配列又は
その補体を含むRNA分子
を生成する段階と、
b)マススペクトロメトリーによりRNA分子を検出し、ターゲット核酸配列の
存在を検出する段階を含む前記方法。
51.ターゲット核酸配列を含む核酸分子がDNAであり、RNAポリメラーゼ
がDNA依存性RNAポリメラーゼである請求項50に記載の方法。
52.段階a)の後で段階b)の前に、
RNAポリメラーゼを不活化する段階と、
RNアーゼフリーのDNアーゼIを使用してDNAを消化する段階を更に含む請
求項51に記載の方法。
53.ターゲット核酸配列の一部に相補的なデテクターオリゴヌクレオチドを、
ターゲット核酸配列を含むRNA分子にハイブリダイズする段階と、
ハイブリダイズしなかったデテクターオリゴヌクレオチドを除去する段階を更に
含み、
段階b)において、ハイブリダイズしたデテクターオリゴヌクレオチドを検出す
ることによりターゲット核酸配列を含むRNA分子を検出する請求項50に記載
の方法。
54.ターゲット核酸配列の存在の検出方法であって、
a)ターゲット配列又はその補体の少なくとも一部に相補的な配列とRNAポリ
メラーゼプロモーターをコードする配列を含むプライマーを使用してターゲット
核酸配列を増幅し、ターゲット核酸又はその補体とRNAポリメラーゼプロモー
ターを含む増幅核酸分子を生成する段階と、
b)プロモーターを認識するRNAポリメラーゼ及びヌクレオシド三リン酸と共
に増幅核酸分子をインキュベートし、ターゲット核酸配列に対応するRNAを生
成する段階と、
c)マススペクトロメトリーを使用してRNAを検出し、ターゲット核酸配列の
存在を検出する段階を含む前記方法。
55.生物試料中に存在するターゲット核酸配列の検出方法であって、
a)生物試料からターゲット核酸配列を含む核酸分子を得る段階と、
b)マススペクトロメトリーを使用して検出するに十分な密度でターゲット核酸
配列が存在するように、チオール結合を介してターゲット核酸配列を固体支持体
に固定化する段階と、
c)デテクターオリゴヌクレオチドをターゲット核酸配列とハイブリダイズする
段階と、
d)ハイブリダイズしなかったデテクターオリゴヌクレオチドを除去する段階と
、
e)段階c)の産物をイオン化及び揮発させる段階と、
f)デテクターオリゴヌクレオチトをマススペクトロメトリーにより検出し、デ
テクターオリゴヌクレオチドが検出される場合には生物試料中にターゲット核酸
配列が存在すると判断する段階を含む前記方法。
56.ターゲット核酸配列を固定化前に増幅する請求項55に記載の方法。
57.デテクターオリゴヌクレオチド又はターゲット核酸配列の少なくとも一方
を条件付けしておく請求項55又は56に記載の方法。
58.固体支持体がビーズ、平坦表面、ピン及びコームから構成される群から選
択される請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
59.ターゲット核酸をアレーの形態で固定化する請求項55から58のいずれ
か一項に記載の方法。
60.支持体がシリコンウェーハである請求項55から59のいずれか一項に記
載の方法。
61.クローニング、転写、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応及び鎖置
換増幅から構成される群から選択される増幅法によりターゲット核酸配列を増幅
する請求項55から60のいずれか一項に記載の方法。
62.マススペクトロメーターがマトリックス介助レーザーデソープション/イ
オン化飛行時間、エレクトロスプレー、イオンサイクロトロン共鳴及びフーリエ
変換から構成される群から選択される請求項55から61のいずれか一項に記載
の方法。
63.少なくとも2種のデテクターオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド
模擬体に質量差をつけ、少なくとも2種のターゲット核酸配列を同時に検出及び
区別することにより試料を条件付けする請求項55から62のいずれか一項に記
載の方法。
64.少なくとも2種のオリゴヌクレオチドの長さ又は配列の相違により質量差
をつける請求項63に記載の方法。
65.デテクターオリゴヌクレオチドの塩基、糖又はリン酸部分に質量改変官能
基を導入することにより質量差をつける請求項64に記載の方法。
66.ホスホジエステル結合におけるカチオン交換により質量差をつける請求項
63に記載の方法。
67.マススペクトロメトリー検出前に質量改変ジデオキシヌクレオシド三リン
酸とDNA依存性DNAポリメラーゼを使用して、生物試料から得た核酸分子を
DNAに増幅する請求項55から66のいずれか一項に記載の方法。
68.マススペクトロメトリー検出前に質量改変リボヌクレオシド三リン酸とD
NA依存性RNAポリメラーゼを使用して、生物試料から得た核酸分子をRNA
に増幅する請求項55から67のいずれか一項に記載の方法。
69.ターゲット核酸配列が遺伝病、染色体異常、遺伝素因、ウイルス感染、真
菌感染及び細菌感染から構成される群から選択される疾患又は症状を表す請求項
55から68のいずれか一項に記載の方法。
70.デテクターオリゴヌクレオチドがペプチド核酸である請求項50から69
のいずれか一項に記載の方法。
71.核酸の配列の決定方法であって、
a)配列決定しようとする核酸の多重コピーを得る段階と、
b)多重コピーを第1の末端から第2の末端に向かってエキソヌクレアーゼで開
裂し、個々のヌクレオチドを逐次遊離させる段階と、
c)逐次遊離したヌクレオチドの各々をマススペクトロメトリーにより同定する
段階と、
d)同定したヌクレオチドから核酸の配列を決定する段階を含み、請求項92か
ら103のいずれか一項に記載の光開裂性リンカーを介して共有結合により核酸
を固体支持体に固定化する前記方法。
72.核酸の配列の決定方法であって、
a)配列決定しようとする核酸の多重コピーを得る段階と、
b)多重コピーを第1の末端から第2の末端に向かってエキソヌクレアーゼで開
裂し、複数の組の入れ子核酸フラグメントを生成する段階と、
c)核酸フラグメントの組の各々の分子量をマススペクトロメトリーにより測定
する段階と、
d)核酸フラグメントの組の分子量から核酸の配列を決定する段階を含み、請求
項92から103のいずれか一項に記載の光開裂性リンカーを介して共有結合に
より核酸を固体支持体に固定化する前記方法。
73.核酸を少なくとも20fmol/mm2の密度で支持体の表面に共有結合
する請求項71又は72に記載の方法。
74.共有結合がN−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエ
ートを介して行われる請求項71から73のいずれか一項に記載の方法。
75.核酸が2’−デオキシリボ核酸(DNA)である請求項71又は72に記
載の方法。
76.核酸がリボ核酸(RNA)である請求項71又は72に記載の方法。
77.エキソヌクレアーゼがヘビ毒ホスホジエステラーゼ、脾臓ホスホジエステ
ラーゼ、Bal−31ヌクレアーゼ、大腸菌エキソヌクレアーゼI、大腸菌エキ
ソヌクレアーゼVII、マングマメヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、大腸菌D
NAポリメラーゼ1のエキソヌクレアーゼ活性、DNAポリメラーゼ1のKle
nowフラグメントのエキソヌクレアーゼ活性、T4 DNAポリメラーゼのエ
キソヌクレアーゼ活性、T7 DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性、
Taq DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性、DEEP VENT
DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性、大腸菌エキソヌクレアーゼII
I、λエキソヌクレアーゼ及びVENTRDNAポリメラーゼのエキソヌクレア
ーゼ活性から構成される群から選択
される請求項71から76のいずれか一項に記載の方法。
78.核酸が質量改変ヌクレオチドを含む請求項71から77のいずれか一項に
記載の方法。
79.質量改変ヌクレオチドがエキソヌクレアーゼ活性の程度を変更する請求項
78に記載の方法。
80.逐次遊離されるヌクレオチドをエキソヌクレアーゼ遊離後でマススペクト
ロメトリー同定の前に質量改変する請求項78に記載の方法。
81.逐次遊離されるヌクレオチドをアルカリホスファターゼと接触させて質量
改変する請求項80に記載の方法。
82.マススペクトロメトリーフォーマットがマトリックス介助レーザーデソー
プションマススペクトロメトリー又はエレクトロスプレーマススペクトロメトリ
ーである請求項71から81のいずれか一項に記載の方法。
83.a)支持体の表面を3−アミノプロピルトリエトキシシランの溶液と反応
させ、支持体の表面に第1級アミンの均質層を生成する段階と、
b)第1級アミンの均質層をN−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミ
ノベンゾエートの溶液と反応させることによ
り支持体の表面にヨードアセトアミド官能基を付ける段階を含む方法により固定
化を実施する請求項71から82のいずれか一項に記載の方法。
84.配列番号32〜38、41〜86、89、92、95、98、101〜1
10、112〜123、126、128及び129に記載のヌクレオチド配列の
配列のいずれかの少なくとも約20、好ましくは約16個の塩基を含むプライマ
ー。
85.配列番号1〜22、24及び27〜32に記載のヌクレオチド配列の配列
のいずれかの少なくとも約20、好ましくは約16個の塩基を含むプライマー。
86.標識されておらず、場合により、好ましくは5’末端に付けた質量改変部
分を含む請求項84又は85に記載のプライマー。
87.選択的に開裂可能なリンカーを介して核酸を固体支持体に固定化する請求
項1から17及び26から69のいずれか一項に記載の方法。
88.リンカーが熱開裂性、酵素開裂性、光開裂性又は化学開裂性である請求項
87に記載の方法。
89.リンカーがトリチルリンカーである請求項87に記載の
方法。
90.リンカーが1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシトリ
チルプロポキシ)フェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)ジイソプロピ
ルアミノホスフィノ)エタンと1−(4−(3−O−4,4’−ジメトキシトリ
チルプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロフェニル)−1−O−((2−シ
アノエトキシ)ジイソプロピルアミノホスフィノ)エタンから構成される群から
選択される請求項89に記載の方法。
91.プライマーがペプチド核酸である請求項1から90のいずれか一項に記載
の方法。
92.式I:
[式中、R20はω−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)アルキル及びω−
ヒドロキシアルキルから構成される群から選択され、R21は水素、アルキル、ア
リール、アルコキシカルボ
ニル、アリールオキシカルボニル及びカルボキシから構成される群から選択され
、R22は水素及び(ジアルキルアミノ)(ω−シアノアルコキシ)P−から構成
される群から選択され、tは0〜3であり、R50はアルキル、アルコキシ、アリ
ール及びアリールオキシから構成される群から選択される]の化合物を含む光感
受性リンカー。
93.リンカーが式II:
[式中、R20はω−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)アルキル、ω−ヒ
ドロキシアルキル及びアルキルから構成される群から選択され、R21は水素、ア
ルキル、アリール、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル及びカル
ボキシから構成される群から選択され、R22は水素及び(ジアルキルアミノ)(
ω−シアノアルコキシ)P−から構成される群から選択され、X20は水素、アル
キル又はOR20から構成される群
から選択される]で表される請求項92に記載の光開裂性リンカー。
94.R20が3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピル、3−ヒド
ロキシプロピル及びメチルから構成される群から選択され、R21が水素、メチル
及びカルボキシから構成される群から選択され、R22が水素及び(ジイソプロピ
ルアミノ)(2−シアノエトキシ)P−から構成される群から選択され、X20が
水素、メチル又はOR20から構成される群から選択される請求項93に記載の光
開裂性リンカー。
95.R20が3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルであり、R21
がメチルであり、R22が(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)P
−であり、X20が水素である請求項93に記載の光開裂性リンカー。
96.R20がメチルであり、R21がメチルであり、R22が(ジイソプロピルアミ
ノ)(2−シアノエトキシ)P−であり、X20が3−(4,4’−ジメトキシト
リチルオキシ)プロポキシである請求項93に記載の光開裂性リンカー。
97.式III:
[式中、R23は水素及び(ジアルキルアミノ)(ω−シアノアルコキシ)P−か
ら構成される群から選択され、R24はω−ヒドロキシアルコキシ、ω−(4,4
’−ジメトキシトリチルオキシ)アルコキシ、ω−ヒドロキシアルキル及びω−
(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)アルキルから構成される群から選択さ
れ、アルキル又はアルコキシ鎖上で1個以上のアルキル基により置換されていて
もいなくてもよく、r及びsは各々独立して0〜4であり、R50はアルキル、ア
ルコキシ、アリール又はアリールオキシである]の化合物を含む光開裂性リンカ
ー。
98.R24がω−ヒドロキシアルキル又はω−(4,4’−ジメトキシトリチル
オキシ)アルキルであり、アルキル鎖上でメチル基により置換されている請求項
97に記載の光開裂性リンカー。
99.R23が水素及び(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノ
エトキシ)P−から構成される群から選択され、R24が3−ヒドロキシプロポキ
シ、3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシ、4−ヒドロキシ
ブチル、3−ヒドロキシ−1−プロピル、1−ヒドロキシ−2−プロピル、3−
ヒドロキシ−2−メチル−1−プロピル、2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシメ
チル、4−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)ブチル、3−(4,4’−
ジメトキシトリチルオキシ)−1−プロピル、2−(4,4’−ジメトキシトリ
チルオキシ)エチル、1−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−2−プロ
ピル、3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−2−メチル−1−プロピ
ル及び4,4’−ジメトキシトリチルオキシメチルから構成される群から選択さ
れる請求項97に記載の光開裂性リンカー。
100.rとsが両方とも0である請求項99に記載の光開裂性リンカー。
101.R23が(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)P−であり、
R24が3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシ、4−(4,4
’−ジメトキシトリチルオキシ)ブチル、3−(4,4’−ジメトキシトリチル
オキシ)
プロピル、2−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)エチル、1−(4,4
’−ジメトキシトリチルオキシ)−2−プロピル、3−(4,4’−ジメトキシ
トリチルオキシ)−2−メチル−1−プロピル及び4,4’−ジメトキシトリチ
ルオキシメチルから構成される群から選択される請求項100に記載の光開裂性
リンカー。
102.R24が3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシである
請求項101に記載の光開裂性リンカー。
103.リンカーが1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシト
リチルプロポキシ)フェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)ジイソプロ
ピルアミノホスフィノ)エタンと1−(4−(3−O−4,4’−ジメトキシト
リチルプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロフェニル)−1−O−((2−
シアノエトキシ)ジイソプロピルアミノホスフィノ)エタンから構成される群か
ら選択される請求項102に記載の光開裂性リンカー。
【手続補正書】
【提出日】平成13年2月16日(2001.2.16)
【補正内容】
(1)明細書
i) 3頁2行目の「感染性生物」を「感染性微生物」と、同頁10行目から13
行目にかけての「核酸フラグメントの移動度を…同定することができる。」
を「核酸フラグメントの移動度を既知標準と比較することによるゲル電気
泳動により又は同定しようとする配列に相補的なプローブとのハイブリダ
イゼーションにより核酸配列を同定することができる。」と訂正する。
ii) 8頁下から4行目の「bu」を「by」と訂正する。
iii) 17頁9行目の「固定化した」を「固定化し」と訂正する。
iv) 18頁10行目から11行目にかけての「リンカー部分をもつようにして
…癌源遺伝子」を「リンカー部分をもつようにして、形質転換を示唆する
コドンを含む選択源癌遺伝子」と、同頁16行目の「する段階」を「させる
段階」と訂正する。
v) 19頁1行目から20頁5行目にかけての「f)試料をイオン化/…の発
現は神経芽細胞腫を表す。」を「f)試料をイオン化/揮発させる段階と、
g)伸長DNAの質量を検出し、質量によって野生型対立遺伝子が存在す
るか又は突然変異対立遺伝子が存在するかを判断する段階を含み、コドン
に突然変異対立遺伝子が存在する場合には新形成であると診断される。1
態様では、伸長−MS分析を使用してレトロウイルス(RET)癌原遺伝
子における突然変異コドン634の存在を検出する。
別の態様では、形質転換細胞で発現される遺伝子の逆転写と増幅を使用
して疾患を診断する方法を提供する。特に、腫瘍細胞では発現されるが、
正常骨髄細胞等の正常細胞では発現されないカテコールアミン生合成酵素
であるチロシンヒドロキシラーゼの逆転写酵素(RT)−MSを使用して
神経芽細胞腫を診断する方法を提供する。本方法は、
a)組織試料を得る段階と、
b)試料からポリA RNAを単離する段階と、
c)逆転写を使用してcDNAライブラリーを調製する段階と、
d)1個のオリゴプライマーがリンカー部分をもつようにして、選択遺伝
子のcDNA産物又はその一部を増幅する段階と、
e)リンカー部分を介してDNAを固体支持体に固定化することにより増
幅産物を単離する段階と、
f)場合によりDNAを条件付けする段階と、
g)試料をイオン化/揮発させ、選択遺伝子の発現を表すDNAピークの
存在を検出する段階を含む。例えば、チロシンヒドロキシラーゼ遺伝子の
発現は神経芽細胞腫を表す。」と訂正する。
vi) 21頁9行目から11行目にかけての「産物は多数の…長さが異なる。」
を「産物は多数の反物単位に特異的であるか又は反復領域内の第2の部位
突然変異に特異的な塩基の数だけ長さが異なる。」と訂正する。
vii) 22頁下から3行目の「する5’末端と」を「し、その一部に」と、同頁下
から1行目の「る配列と」を「る配列が続く5’末端と」と訂正する。
viii) 23頁3行目の「使用して試料中」を「使用して、試料中」と訂正する。
ix) 26頁2行目の「捕獲配列は」を「その捕獲配列は」と訂正する。
x) 27頁5行目の「更に、捕獲配列は」を「更に、その捕獲配列は」と、同
頁下から1行目「appと検出しようとするDmut」を「同時に検出するa
ppとDmut」と訂正する。
xi) 36頁下から3行目の「図25Bは…HBV陰性の」を「図25Bは核酸
(即ちPCR)、血清学的及びドットブロットアッセイに対しHBV陰性
である、」と訂正し、同頁下から2行目の「核酸(即ちPCR)に対応す
る」を削除する。
xii) 37頁11行目の「リゴBとT−Gミスマッチ」を「リゴBとともにT−G
ミスマッチ」と、同頁同行の「オリゴCとA−Cミスマッチ」を「オリゴ
CとともにA−Cミスマッチ)」と訂正する。
xiii) 40頁2行目の「反応混合物で」を「反応混合物中で」と訂正する。
xiv) 52頁3行目の「選択したRNアーゼ」を「選択RNアーゼ」と、同頁6
行目の「合計約20pmol」を「各酵素に関し、合計約20pmo
l」と、同頁8行目の「に固定して各酵素を分析」を「に分析用に固定」と
、同頁下から2行目の「開裂の不在」を「開裂しないところ」と訂正する。
xv) 56頁6行目の「もつ遺伝子」を「ともなう遺伝子」と、同頁8行目の「
にからの」を「から得た」と訂正する。
xvi) 61頁3行目および5行目(5行目には2箇所)の「上添」を「上付き」と
訂正する。
xvii) 62頁下から8行目の「レービル」を「レービル(labile)」と、同頁下から
2行目の「を除いて」を「だけをともなう」と訂正する。
xviii)66頁下から8行目の「樹脂)」を「樹脂」と訂正する。
xix) 92頁6行目の「シリルヌクレオシド間橋」を「シリルヌクレオシド間橋
(silyl internucleoside bridges)」と訂正する。
xx) 94頁下から1行目および95頁下から9行目の「ヌクレオ塩基」を「核
酸塩基」と訂正する。
xxi) 116頁2行目から117頁18行目にかけての「別の態様では、…併用
実施することができる。」を「別の態様では、ターゲット核酸から特定末端
をもつフラグメントを生成し、マススペクトロメトリーにより各フラグメ
ントの質量を測定し、フラグメントを並べてより大きいターゲット核酸の
配列を決定することにより、比較的大きいターゲット核酸の正確な配列決
定が得られる。好ましい態様では、特定末端をもつフラグメントは特定塩
基を末端にもつ部分又は完全フラグメントである。
特定塩基を末端にもつフラグメントを生成する方法の1例は、例えば転
写反応後に塩基特異的リボヌクレアーゼを使用する。好ましい塩基特異的
リボヌクレアーゼはT1−リボヌクレアーゼ(G特異的)、U2−リボヌク
レアーゼ(A特異的)、PhyM−リボヌクレアーゼ(U特異的)及びリ
ボヌクレアーゼA(U/特異的)から選択される。他の有効な塩基特異的
リボヌクレアーゼは実施例21に記載するアッセイを使用して同定するこ
とができる。修飾ヌクレオチドを未修飾ヌクレオチドと転写反応させるこ
とが好ましい。修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチ
ドを約1:1の好ましい比率で組み込むように適当な濃度で転写反応に加
えると最も好ましい。あるいは、修飾ヌクレオチドと未修飾ヌクレオチド
で2回別々にターゲットDNAの転写を行い、結果を比較してもよい。好
ましい修飾ヌクレオチドとしては、ホウ素又は臭素修飾ヌクレオチド(P
orterら(1995)Biochemistry 34:11963
−11969;Hasanら(1996)Nuc1.Acids Res
.24:2150−2157;Liら(1995)Nucleic Ac
ids Res.23:4495−4501)、α−チオ修飾ヌクレオチ
ド及び上述のような質量改変ヌクレオチドが挙げられる。
特定塩基を末端にもつフラグメントを生成する別の方法は、増幅と塩基
特異的ターミネーション反応を併用実施する。例えば、連鎖停止ヌクレオ
チドに対して比較的低い親和性をもつ酵素による重合が指数的に増幅し、
連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的高い親和性をもつ酵素が重合を停止
してシーケンシング産物を生じるように、連鎖停止ヌクレオチドに対して
各々異なる親和性をもつ少なくとも2種の異なるポリメラーゼ酵素を使用
して増幅とターミネーション反応を併用実施することができる。」と訂正
する。
xxii) 120頁4行目から5行目にかけての「をニックする」を「にニックを入れ
る」と、同頁13行目および14行目の「単位」を「ユニット」と訂正する
。
(2)請求の範囲
別紙の通り
(別紙)
請求の範囲
1.ターゲット核酸分子の特定塩基を末端にもつ核酸フラグメントの並び方の決
定方法であって、
a)ターゲット核酸配列と一方の末端にタグを含む核酸分子を得る段階と、
b)ターゲット核酸から特定塩基を末端にもつ核酸フラグメントを生成する段階
と、
c)フラグメントをマススペクトロメトリーフォーマットにより分析し、ターゲ
ット核酸分子中の特定塩基を末端にもつ核酸フラグメントの並び方を決定する段
階を含む前記方法。
2.段階b)においてヌクレアーゼをターゲット核酸と接触させ、特定塩基末端
をもつ核酸フラグメントを生成する請求項1に記載の方法。
3.ヌクレアーゼがターゲット核酸中の少なくとも1個の制限部位を認識し、こ
れを開裂することが可能な制限酵素である請求項2に記載の方法。
4.ターゲット核酸がデオキシリボ核酸であり、ヌクレアーゼがデオキシリボヌ
クレアーゼである請求項2に記載の方法。
5.ターゲット核酸がリボ核酸であり、ヌクレアーゼがリボヌクレアーゼである
請求項2に記載の方法。
6.リボヌクレアーゼがG特異的T1リボヌクレアーゼ、A特異的U2リボヌクレ
アーゼ、A/U特異的PhyMリボヌクレアーゼ、U/C特異的リボヌクレアー
ゼA、C特異的ニワトリ肝リボヌクレアーゼ及びクリサビチンから構成される群
から選択される請求項5に記載の方法。
7.段階b)において増幅と特定塩基ターミネーション反応の併用実施により特
定塩基を末端にもつフラグメントを生成する請求項1に記載の方法。
8.増幅と特定塩基ターミネーション反応の併用が、少なくとも1種の連鎖停止
ヌクレオチドに対して比較的低い親和性をもつ第1のポリメラーゼと、少なくと
も1種の連鎖停止ヌクレオチドに対して比較的高い親和性をもつ第2のポリメラ
ーゼを使用して実施される請求項7に記載の方法。
9.第1及び第2のポリメラーゼが熱安定DNAポリメラーゼである請求項8に
記載の方法。
10.熱安定DNAポリメラーゼがTaq DNAポリメラーゼ、AmpliT
aq FS DNAポリメラーゼ、DeepVent(exo-)DNAポリメ
ラーゼ、Vent DNAポリメラーゼ、Vent(exo-)DNAポリメラ
ーゼ、VentDNAポリメラーゼ、Vent(exo-)DNAポリメラーゼ
、Deep Vent DNAポリメラーゼ、ThermoSequenase
)exo(−)Pseudococcus furiosus(Pfu)DNA
ポリメラーゼ、AmpliTaq、Ultman、9 degree Nm、T
th、Hot Tub、Pyrococcus furiosus(Pfu)及
びPyrococcus woesei(Pwo)DNAポリメラーゼから構成
される群から選択される請求項9に記載の方法。
11.段階b)で生成される特定塩基を末端にもつ核酸フラグメントが質量改変
ヌクレオチドを含む請求項1に記載の方法。
12.タグが3’タグを含む請求項1に記載の方法。
13.タグが5’タグを含む請求項1に記載の方法。
14.タグが非天然タグである請求項12又は13に記載の方法。
15.非天然タグがアフィニティタグ及び質量マーカーから構成される群から選
択される請求項14に記載の方法。
16.アフィニティタグが核酸の固体支持体固定化を助長する請求項15に記載
の方法。
17.アフィニティタグがビオチン又は固体支持体に結合した捕獲核酸配列に結
合することが可能な核酸配列である請求項16に記載の方法。
18.生物試料中に存在するターゲット核酸の検出方法であって、
a)ターゲット核酸を含む核酸の一部を増幅することが可能な第1組のプライマ
ーを使用し、核酸又は第1組のプライマー中のプライマーを請求項92から10
3のいずれか一項に記載の光開裂性リンカーを介して固体支持体に固定化し、生
物試料から得られた核酸で第1回目のポリメラーゼ連鎖反応を実施し、
増幅産物を生成する段階と、
b)増幅産物をマススペクトロメトリーにより検出し、増幅産物が検出された場
合には生物試料中にターゲット核酸が存在すると判断する段階を含む前記方法。
19.生物試料中に存在するターゲット核酸の検出方法であって、
a)ターゲット核酸を含む核酸の一部を増幅することが可能な第1組のプライマ
ーを使用し、生物試料から得られた核酸で第1回目のポリメラーゼ連鎖反応を実
施し、第1の増幅産物を生成する段階と、
b)ターゲット核酸を含む第1の増幅産物の少なくとも一部を増幅することが可
能な第2組のプライマーを使用し、第1の増幅産物で第2回目のポリメラーゼ連
鎖反応を実施し、第2の増幅産物を生成する段階と、
c)第2の増幅産物をマススペクトロメトリーにより検出し、
第2の増幅産物が検出された場合には生物試料中にターゲット核酸が存在すると
判断する段階を含み、核酸又は第1組のプライマー中のプライマーもしくは第2
組のプライマー中のプライマーは請求項92から103のいずれか一項に記載の
光開裂性リンカーを介して固体支持体に固定化する前記方法。
20.ターゲット核酸を固体支持体に固定化し、固定化したターゲット核酸をマ
ススペクトロメトリーの間に支持体から開裂する請求項18又は19に記載の方
法。
21.固体支持体がビーズ、平坦表面、チップ、キャピラリー、ピン、コーム及
びウェーハから構成される群から選択される請求項18又は19に記載の方法。
22.マススペクトロメトリーの前にターゲット核酸を精製する請求項18又は
19に記載の方法。
23.プライマー又は増幅産物を条件付けする請求項18又は19に記載の方法
。
24.プライマー又は増幅産物をホスホジエステル主鎖修飾により条件付けする
請求項23に記載の方法。
25.ホスホジエステル主鎖修飾がカチオン交換である請求項24に記載の方法
。
26.プライマー又は増幅産物をアルキル化剤又は塩化トリアルキルシリルとの
接触により条件付けする請求項23に記載の方法。
27.プライマー又は第1もしくは第2の増幅産物において脱プリン化の感度を
低下する少なくとも1種のヌクレオチドを加えることにより条件付けを行う請求
項23に記載の方法。
28.ヌクレオチドがN7−デアザプリンヌクレオチド、N9−デアザプリンヌ
クレオチド又は2’−フルオロ−2’−デオキシヌクレオチドである請求項27
に記載の方法。
29.組織又は細胞試料中の新形成/悪性の検出方法であって、テロメラーゼを
コードするか又は癌原遺伝子の突然変異に特異的であるか又は腫瘍特異的遺伝子
をコードする核酸をマススペクトロメトリーにより検出することにより試料中の
テロメラーゼ活性、癌原遺伝子の突然変異、腫瘍特異的遺伝子の発現を検出する
ことを特徴とする前記方法。
30.組織又は細胞試料中の新形成/悪性の検出方法であって、
a)試料からテロメラーゼを単離し、合成DNAのテロメラーゼ特異的伸長を生
じる条件下で、場合により固定化したテロメア反復に相補的な合成DNAプライ
マーと全4種のデオキシヌクレオチド三リン酸を加える段階と、
b)テロメラーゼ伸長DNA産物を増幅する段階と、
c)DNA産物をマススペクトロメトリーにより検出し、テロメラーゼ特異的伸
長が検出された場合には新形成/悪性と判断する段階を含む請求項29に記載の
方法。
31.プライマーが支持体に固定化するためのリンカー部分を含み、リンカー部
分を固体支持体に結合することにより増幅プライマーを単離する請求項30に記
載の方法。
32.生物試料中のテロメラーゼ活性の検出方法であつて、
a)生物試料と、テロメラーゼ活性により伸長することが可能な基質ブライマー
と、完全な1組のデオキシヌクレオシド三リン酸をインキュベートする段階と、
b)テロメラーゼ伸長基質プライマーをマススペクトロメトリーにより検出し、
生物試料中のテロメラーゼ活性を検出する段階を含む前記方法。
33.基質プライマーを固体支持体に固定化する請求項32に記載の方法。
34.基質プライマーを固体支持体にアレー状に固定化する請求項33に記載の
方法。
35.テロメラーゼ伸長基質プライマーをマススペクトロメトリーの前に増幅す
る段階を更に含む請求項32に記載の方法。
36.突然変異癌原遺伝子により形質転換した細胞又は組織の同定方法であって
、
a)1個のプライマーが固定化のためのリンカー部分を含むようにして細胞又は
組織試料中で形質転換を表すコドンを含む癌原遺伝子の一部を増幅する段階と、
b)場合によりアレーの形態で固体支持体にリンカー部分を介してDNAを固定
化する段階と、
c)コドンの上流の癌原遺伝子配列に相補的なプライマーをハイブリダイズさせ
る段階と、
d)3dNTP/1ddNTPとDNAポリメラーゼを加え、
ハイブリダイズしたプライマーを次のddNTPロケーションまで伸長する段階
と、
e)試料をイオン化/揮発させる段階と、
f)突然変異癌原遺伝子を表す伸長したDNAの質量を検出し、突然変異癌原遺
伝子により形質転換した細胞又は組織を同定する段階を含む請求項29に記載の
方法。
37.癌原遺伝子がRET癌原遺伝子である請求項36に記載の方法。
38.形質転換を表すコドンがRET癌原遺伝子のコドン634である請求項3
7に記載の方法。
39.腫瘍特異的遺伝子の発現の検出方法であつて、
a)ポリA RNAを試料から単離する段階と、
b)逆転写を使用してcDNAライブラリーを調製する段階と、
c)一組のプライマーのうち一方のプライマーがリンカー部分を含む1組のプラ
イマーを使用して腫瘍特異的遺伝子のcDNA産物又はその一部を増幅する段階
と
d)リンカー部分を介してDNAを固体支持体に固定化することにより増幅産物
を単離する段階と、
e)場合によりDNAを条件付けする段階と、
f)試料をイオン化/揮発させ、遺伝子の発現を表すDNAピークの存在を検出
する段階を含む請求項29に記載の方法。
40.細胞が骨髄細胞であり、遺伝子がチロシンヒドロキシラーゼ遺伝子であり
、遺伝子の発現が神経芽細胞腫を表す請求項39に記載の方法。
41.マトリックス介助レーザーデソープション/イオン化飛行時間(MALD
I−TOF)マススペクトロメトリーを使用する2本鎖核酸の直接検出方法であ
って、
a)細胞又は組織試料から2本鎖DNAフラグメントを単離する段階と、
b)dsDNA:ssDNA比を増加する条件として、約4℃以下の温度で分析
用試料を調製することと、マトリックス中で高いDNA濃度を使用してデュプレ
クス形成を誘導することのうちの一方又は両方を含む条件下で分析用2本鎖DN
Aを調製する段階と、
c)低い加速電圧を使用して段階b)のDNAをイオン化/揮発させる段階と、
d)MALDI−TOFマススペクトロメトリーにより2本鎖DNAの存在を検
出する段階を含む前記方法。
42.血縁関係を認識又は突然変異を検出するためのDNA試料の比較方法であ
って、
a)複数の生物試料を得る段階と、
b)2個以上のマイクロサテライトDNA反復配列を含む各試料からのDNA領
域を増幅する段階と、
c)増幅したDNAの存在をマススペクトロメトリーにより各試料から検出し、
増幅したDNAの分子量を比較し、分子量が異なる場合には試料間に不一致又は
突然変異が存在すると判断する段階を含む前記方法。
43.不一致が1個の試料中のDNAにおける突然変異の存在、試料を採取した
個体間の非血縁関係又はHLA不適合性を表す請求項42に記載の方法。
44.複数のマーカーを同時に試験する請求項42又は43に記載の方法。
45.核酸配列中のターゲットヌクレオチドの同定方法であって、
a)(i)ターゲットヌクレオチドのすぐ下流の核酸配列の一部に一致し、その
一部に、特有の制限エンドヌクレアーゼ部位をコードする配列が続く5’末端と
、自己相補的な3’末端をもつ第1のプライマーと、
(ii)リンカー部分を含む第2の下流プライマーを使用してターゲットヌクレ
オチドを含む核酸配列の少なくとも一部を増幅し、ターゲットヌクレオチドを含
む核酸配列の少なくとも一部を含む増幅2本鎖核酸を生成する段階と、
b)リンカー部分を介して増幅2本鎖核酸を固体支詩体に固定化する段階と、
c)固定化核酸を変性させ、非固定化鎖を単離する段階と、
d)3’末端をポリメラーゼにより伸長できるように、単離した非固定化鎖の3
’末端の内部相補的(intracomplementary)配列をアニールし、自己アニールした
核酸を生成する段階と、
f)ポリメラーゼと3dNTPと欠損dNTPに対応する1ddNTPと共にイ
ンキュベートすることにより、自己アニールした核酸を伸長し、伸長核酸を生成
する段階と、
g)伸長した核酸を前記特有の制限エンドヌクレアーゼ部位に特異的な制限エン
ドヌクレアーゼで開裂する段階と、
h)ターゲットヌクレオチドを同定する段階を含む前記方法。
46.ターゲットヌクレオチドの同定が核酸配列中の突然変異を表す請求項45
に記載の方法。
47.伸長した核酸の質量に基づいてターゲットヌクレオチドを同定する請求項
45に記載の方法。
48.伸長した核酸の質量をマススペクトロメトリーにより測定する請求項46
に記載の方法。
49.RNA増幅を使用して生物試料中のターゲット核酸を検出する方法であっ
て、
a)ターゲット配列又はその相補体に相補的な配列とRNAポリメラーゼプロモ
ーターをコードする配列を含むプライマーを使用してターゲット核酸を増幅する
段階と、
b)プロモーターを認識するRNAポリメラーゼを使用してRNAを合成する段
階と、
c)マススペクトロメトリーを使用して得られたRNAを検出し、生物試料中の
ターゲット核酸配列の存在を検出する段階を含む前記方法。
50.ターゲット核酸配列の存在の検出方法であって、
a)i)RNAポリメラーゼと、
ii)ヌクレオシド三リン酸と、
iii)ターゲット核酸配列又はその相補体とRNAポリメラーゼのプロモータ
ーとを含む核酸分子を反応混合物中でインキュベートし、ターゲット核酸配列又
はその相補体を含むRNA分子を生成する段階と、
b)マススペクトロメトリーによりRNA分子を検出し、ターゲット核酸配列の
存在を検出する段階を含む前記方法。
51.ターゲット核酸配列を含む核酸分子がDNAであり、RNAポリメラーゼ
がDNA依存性RNAポリメラーゼである請求項50に記載の方法。
52.段階a)の後で段階b)の前に、
RNAポリメラーゼを不活化する段階と、
RNアーゼフリーのDNアーゼIを使用してDNAを消化する段階を更に含む請
求項51に記載の方法。
53.ターゲット核酸配列の一部に相補的なデテクターオリゴヌクレオチドを、
ターゲット核酸配列を含むRNA分子にハイブリダイズさせる段階と、
ハイブリダイズしなかったデテクターオリゴヌクレオチドを除去する段階を更に
含み、
段階b)において、ハイブリダイズしたデテクターオリゴヌクレオチドを検出す
ることによりターゲット核酸配列を含むRNA分子を検出する請求項50に記載
の方法。
54.ターゲット核酸配列の存在の検出方法であって、
a)ターゲット配列又はその相補体の少なくとも一部に相補的な配列とRNAポ
リメラーゼプロモーターをコードする配列を含むプライマーを使用してターゲッ
ト核酸配列を増幅し、ターゲット核酸又はその相補体とRNAポリメラーゼプロ
モーターを含む増幅核酸分子を生成する段階と、
b)プロモーターを認識するRNAポリメラーゼ及びヌクレオシド三リン酸と共
に増幅核酸分子をインキュベートし、ターゲット核酸配列に対応するRNAを生
成する段階と、
c)マススペクトロメトリーを使用してRNAを検出し、ターゲット核酸配列の
存在を検出する段階を含む前記方法。
55.生物試料中に存在するターゲット核酸配列の検出方法であつて、
a)生物試料からターゲット核酸配列を含む核酸分子を得る段階と、
b)マススペクトロメトリーを使用して検出するに十分な密度でターゲット核酸
配列が存在するように、チオール結合を介してターゲット核酸配列を固体支持体
に固定化する段階と、
c)デテクターオリゴヌクレオチドをターゲット核酸配列とハイブリダイズさせ
る段階と、
d)ハイブリダイズしなかったデテクターオリゴヌクレオチドを除去する段階と
、
e)段階c)の産物をイオン化及び揮発させる段階と、
f)デテクターオリゴヌクレオチドをマススペクトロメトリーにより検出し、デ
テクターオリゴヌクレオチドが検出される場合には生物試料中にターゲット核酸
配列が存在すると判断する段階を含む前記方法。
56.ターゲット核酸配列を固定化前に増幅する請求項55に記載の方法。
57.デテクターオリゴヌクレオチド又はターゲット核酸配列の少なくとも一方
を条件付けしておく請求項55又は56に記載の方法。
58.固体支持体がビーズ、平坦表面、ピン及びコームから構成される群から選
択される請求項55から57のいずれか一項に記載の方法。
59.ターゲット核酸をアレーの形態で固定化する請求項55から58のいずれ
か一項に記載の方法。
60.支持体がシリコンウェーハである請求項55から59のいずれか一項に記
載の方法。
61.クローニング、転写、ポリメラーゼ連鎖反応、リガーゼ連鎖反応及び鎖置
換増幅から構成される群から選択される増幅法によりターゲット核酸配列を増幅
する請求項55から60のいずれか一項に記載の方法。
62.マススペクトロメーターがマトリックス介助レーザーデソープション/イ
オン化飛行時間、エレクトロスプレー、イオンサイクロトロン共鳴及びフーリエ
変換から構成される群から選択される請求項55から61のいずれか一項に記載
の方法。
63.少なくとも2種のデテクターオリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド
摸擬体に質量差をつけ、少なくとも2種のターゲット核酸配列を同時に検出及び
区別することにより試料を条件付けする請求項55から62のいずれか一項に記
載の方法。
64.少なくとも2種のオリゴヌクレオチドの長さ又は配列の相違により質量差
をつける請求項63に記載の方法。
65.デテクターオリゴヌクレオチドの塩基、糖又はリン酸部分に質量改変官能
基を導入することにより質量差をつける請求項64に記載の方法。
66.ホスホジエステル結合におけるカチオン交換により質量差をつける請求項
63に記載の方法。
67.マススペクトロメトリー検出前に質量改変ジデオキシヌクレオシド三リン
酸とDNA依存性DNAポリメラーゼを使用して、生物試料から得た核酸分子を
DNAに増幅する請求項55から66のいずれか一項に記載の方法。
68.マススペクトロメトリー検出前に質量改変リボヌクレオシド三リン酸とD
NA依存性RNAポリメラーゼを使用して、生物試料から得た核酸分子をRNA
に増幅する請求項55から67のいずれか一項に記載の方法。
69.ターゲット核酸配列が遺伝病、染色体異常、遺伝素因、ウイルス感染、真
菌感染及び細菌感染から構成される群から選択される疾患又は症状を表す請求項
55から68のいずれか一項に記載の方法。
70.デテクターオリゴヌクレオチドがペプチド核酸である請求項50から69
のいずれか一項に記載の方法。
71.核酸の配列の決定方法であって、
a)配列決定しようとする核酸の多重コピーを得る段階と、
b)多重コピーを第1の末端から第2の末端に向かってエキソヌクレアーゼで開
裂し、個々のヌクレオチドを逐次遊離させる段階と、
c)逐次遊離したヌクレオチドの各々をマススペクトロメトリーにより同定する
段階と、
d)同定したヌクレオチドから核酸の配列を決定する段階を含み、請求項92か
ら103のいずれか一項に記載の光開裂性リンカーを介して共有結合により核酸
を固体支持体に固定化する前記方法。
72.核酸の配列の決定方法であって、
a)配列決定しようとする核酸の多重コピーを得る段階と、
b)多重コピーを第1の末端から第2の末端に向かってエキソヌクレアーゼで開
裂し、複数の組の入れ子核酸フラグメントを生成する段階と、
c)核酸フラグメントの組の各々の分子量をマススペクトロメトリーにより測定
する段階と、
d)核酸フラグメントの組の分子量から核酸の配列を決定する段階を含み、請求
項92から103のいずれか一項に記載の光開裂性リンカーを介して共有結合に
より核酸を固体支持体に固定化する前記方法。
73.核酸を少なくとも20fmol/mm2の密度で支持体の表面に共有結合
させる請求項71又は72に記載の方法。
74.共有結合がN−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミノベンゾエ
ートを介して行われる請求項71から73のいずれか一項に記載の方法。
75.核酸か2’−デオキシリボ核酸(DNA)である請求項71又は72に記
載の方法。
76.核酸がリボ核酸(RNA)である請求項71又は72に記載の方法。
77.エキソヌクレアーゼがヘビ毒ホスホジエステラーゼ、脾臓ホスホジエステ
ラーゼ、Bal−31ヌクレアーゼ、大腸菌エキソヌクレアーゼI、大腸菌エキ
ソヌクレアーゼVII、マングビーンヌクレアーゼ、S1ヌクレアーゼ、大腸菌
DNAポリメラーゼ1のエキソヌクレアーゼ活性、DNAポリメラーゼ1のK1
enowフラグメントのエキソヌクレアーゼ活性、T4DNAポリメラーゼのエ
キソヌクレアーゼ活性、T7 DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性、
Taq DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性、DEEP VENT
DNAポリメラーゼのエキソヌクレアーゼ活性、大腸菌エキソヌクレアーゼII
I、λエキソヌクレアーゼ及びVENTRDNAポリメラーゼのエキソヌクレア
ーゼ活性から構成される群から選択される請求項71から76のいずれか一項に
記載の方法。
78.核酸が質量改変ヌクレオチドを含む請求項71から77のいずれか一項に
記載の方法。
79.質量改変ヌクレオチドがエキソヌクレアーゼ活性の程度を変更する請求項
78に記載の方法。
80.逐次遊離されるヌクレオチドをエキソヌクレアーゼ遊離後、マススペクト
ロメトリー同定前に質量改変する請求項78に記載の方法。
81.逐次遊離されるヌクレオチドをアルカリホスファターゼと接触させて質量
改変する請求項80に記載の方法。
82.マススペクトロメトリーフォーマットがマトリックス介助レーザーデソー
プションマススペクトロメトリー又はエレクトロスプレーマススペクトロメトリ
ーである請求項71から81のいずれか一項に記載の方法。
83.a)支持体の表面を3−アミノプロピルトリエトキシシランの溶液と反応
させ、支持体の表面に第1級アミンの均質層を生成する段階と、
b)第1級アミンの均質層をN−スクシンイミジル(4−ヨードアセチル)アミ
ノベンゾエートの溶液と反応させることにより支持体の表面にヨードアセトアミ
ド官能基を付ける段階を含む方法により固定化を実施する請求項71から82の
いずれか一項に記載の方法。
84.配列番号32〜38、41〜86、89、92、95、98、101〜1
10、112〜123、126、128及び129に記載のヌクレオチド配列の
配列のいずれかの少なくとも約20、好ましくは約16個の塩基を含むプライマ
。
85.配列番号1〜22、24及び27〜32に記載のヌクレオチド配列の配列
のいずれかの少なくとも約20、好ましくは約16個の塩基を含むプライマー。
86.標識されておらず、場合により、好ましくは5’末端に付けた質量改変部
分を含む請求項84又は85に記載のプライマー。
87.選択的に開裂可能なリンカーを介して核酸を固体支持体に固定化する請求
項1から17及び26から69のいずれか一項に記載の方法。
88.リンカーが熱開裂性、酵素開裂性、光開裂性又は化学開裂性である請求項
87に記載の方法。
89.リンカーがトリチルリンカーである請求項87に記載の方法。
90.リンカーが1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシトリ
チルプロポキシ)フェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)ジイソプロピ
ルアミノホスフィノ)エタンと1−(4−(3−O−4,4’−ジメトキシトリ
チルプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロフェニル)−1−O−((2−シ
アノエトキシ)ジイソプロピルアミノホスフィノ)エタンから構成される群から
選択される請求項89に記載の方法。
91.プライマーがペプチド核酸である請求項1から90のいずれか一項に記載
の方法。
92.式I:[式中、R20はω−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)アルキル及びω−
ヒドロキシアルキルから構成される群から選択され、R21は水素、アルキル、ア
リール、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル及びカルボキシから
構成される群から選択され、R22は水素及び(ジアルキルアミノ)(ω−シアノ
アルコキシ)P−から構成される群から選択され、tは0〜3であり、R50はア
ルキル、アルコキシ、アリール及びアリールオキシから構成される群から選択さ
れる]の化合物を含む光感受性リンカー。
93.リンカーが式II:
[式中、R20はω−(4,4)−ジメトキシトリチルオキシ)アルキル、ω−ヒ
ドロキシアルキル及びアルキルから構成される群から選択され、R21は水素、ア
ルキル、アリール、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル及びカル
ボキシから構成される群から選択され、R22は水素及び(ジアルキルアミノ)(
ω−シアノアルコキシ)P−から構成される群から選択され、X20は水素、アル
キル又はOR20から構成される群から選択される]で表される請求項92に記載
の光開裂性リンカー。
94.R20が3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピル、3−ヒド
ロキシプロピル及びメチルから構成される群から選択され、R21が水素、メチル
及びカルボキシから購成される群から選択され、R22が水素及び(ジイソプロピ
ルアミノ)(2−シアノエトキシ)P−から構成される群から選択され、X20が
水素、メチル又はOR20から構成される群から選択される請求項93に記載の光
開裂性リンカー。
95.R20が3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロピルであり、R21
がメチルであり、R22が(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)P
−であり、X20が水素である請求項93に記載の光開裂性リンカー。
96.R20がメチルであり、R21がメチルであり、R22が(ジイソプロピルアミ
ノ)(2−シアノエトキシ)P−であり、X20が3−(4,4’−ジメトキシト
リチルオキシ)プロポキシである請求項93に記載の光開裂性リンカー。
97.式III:
[式中、R23は水素及び(ジアルキルアミノ)(ω−シアノアルコキシ)P−か
ら構成される群から選択され、R24はω−ヒドロキシアルコキシ、ω−(4,4
’−ジメトキシトリチルオキシ)アルコキシ、ω−ヒドロキシアルキル及びω−
(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)アルキルから構成される群から選択さ
れ、アルキル又はアルコキシ鎖上で1個以上のアルキル基により置換されていて
もいなくてもよく、r及びsは各々独立して0〜4であり、R50はアルキル、ア
ルコキシ、アリール又はアリールオキシである]の化合物を含む光開裂性リンカ
ー。
98.R24がω−ヒドロキシアルキル又はω−(4,4’−ジメトキシトリチル
オキシ)アルキルであり、アルキル鎖上でメチル基により置換されている請求項
97に記載の光開裂性リンカー。
99.R23が水素及び(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)P−か
ら構成される群から選択され、R24が3−ヒドロキシプロポキシ、3−(4,4
’−ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシ、4−ヒドロキシブチル、3−ヒド
ロキシ−1−プロピル、1−ヒドロキシ−2−プロピル、3−ヒドロキシ−2−
メチル−1−プロピル、2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシメチル、4−(4,
4’−ジメトキシトリチルオキシ)ブチル、3−(4,4’−ジメトキシトリチ
ルオキシ)−1−プロピル、2−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)エチ
ル、1−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−2−プロピル、3−(4,
4’−ジメトキシトリチルオキシ)−2−メチル−1−プロピル及び4,4’−
ジメトキシトリチルオキシメチルから構成される群から選択される請求項97に
記載の光開裂性リンカー。
100.rとsが両方とも0である請求項99に記載の光開裂性リンカー。
101.R23が(ジイソプロピルアミノ)(2−シアノエトキシ)P−であり、
R24が3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシ、4−(4,4
’−ジメトキシトリチルオキシ)ブチル、3−(4,4’−ジメトキシトリチル
オキシ)プロピル、2−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)エチル、1−
(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)−2−プロピル、3−(4,4’−ジ
メトキシトリチルオキシ)−2−メチル−1−プロピル及び4,4’−ジメトキ
シトリチルオキシメチルから構成される群から選択される請求項100に記載の
光開裂性リンカー。
102.R24が3−(4,4’−ジメトキシトリチルオキシ)プロポキシである
請求項101に記載の光開裂性リンカー。
103.リンカーが1−(2−ニトロ−5−(3−O−4,4’−ジメトキシト
リチルプロポキシ)フェニル)−1−O−((2−シアノエトキシ)ジイソプロ
ピルアミノホスフィノ)エタンと1−(4−(3−O−4,4’−ジメトキシト
リチルプロポキシ)−3−メトキシ−6−ニトロフェニル)−1−O−((2−
シアノエトキシ)ジイソプロピルアミノホスフィノ)エタンから構成される群か
ら選択される請求項102に記載の光開裂性リンカー。
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(51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考)
G01N 33/15 G01N 33/50 P
33/50 Z
C12N 15/00 ZNAA
(31)優先権主張番号 08/746,036
(32)優先日 平成8年11月6日(1996.11.6)
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/746,055
(32)優先日 平成8年11月6日(1996.11.6)
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/786,988
(32)優先日 平成9年1月23日(1997.1.23)
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/787,639
(32)優先日 平成9年1月23日(1997.1.23)
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/933,792
(32)優先日 平成9年9月19日(1997.9.19)
(33)優先権主張国 米国(US)
(31)優先権主張番号 08/947,801
(32)優先日 平成9年10月8日(1997.10.8)
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L
U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF
,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,
SN,TD,TG),AP(GH,KE,LS,MW,S
D,SZ,UG,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG
,KZ,MD,RU,TJ,TM),AL,AM,AT
,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,
CH,CN,CU,CZ,DE,DK,EE,ES,F
I,GB,GE,GH,HU,ID,IL,IS,JP
,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,
LS,LT,LU,LV,MD,MG,MK,MN,M
W,MX,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD
,SE,SG,SI,SK,SL,TJ,TM,TR,
TT,UA,UG,US,UZ,VN,YU,ZW
(72)発明者 ブラウン,アンドレアス
アメリカ合衆国、カリフオルニア・92030、
サン・デイエゴ、カーメル・クリーク・ロ
ード・11237―6
(72)発明者 ラフ,デイビツド・エム
イギリス国、ベリツクシヤー・テイー・デ
イー・14・55・エイ、アイマス、デイーン
ヘツド・ロード・32
(72)発明者 シヤン,コービン
アメリカ合衆国、カリフオルニア・92121、
サン・デイエゴ、アンドロメダ・ロード・
8655
(72)発明者 フアン・デン・ボーム,デイルク
ドイツ国、20253・ハンブルク、エツペン
ドルフアー・ベーク・205・デー
(72)発明者 ユリンケ,クリスチアン
ドイツ国、20255・ハンブルク、ロームベ
ルクシユトラーセ・22
(72)発明者 ルーペルト,アンドレアス
ドイツ国、デー―35440・リンデン、ハウ
プトシユトラーセ・10