JP3889098B2 - 大腸菌によりScaI制限エンドヌクレアーゼをクローニングし生産する方法 - Google Patents

大腸菌によりScaI制限エンドヌクレアーゼをクローニングし生産する方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ScaI制限エンドヌクレアーゼ及び修飾メチラーゼをコードする組換えDNA並びにこの組換えDNAからのScaI制限エンドヌクレアーゼの生産に関わる。
【0002】
【従来の技術】
II型制限エンドヌクレアーゼは細菌で天然に存在する一群の酵素である。細菌の他の成分を除去して制限エンドヌクレアーゼを精製すると、該酵素はDNA分子を、分子クローニングと遺伝子キャラクタリゼーション用の正確なフラグメントに切断するために、実験室で使用できる。
【0003】
制限エンドヌクレアーゼは、DNA分子の特定のヌクレオチド配列(“認識配列”)を認識し結合することによって作用する。結合すると、該酵素は認識配列内で、又はその一方の側で分子を切断する。別の制限エンドヌクレアーゼは別の認識配列にアフィニティーを有する。180を超える独特の特異性をもつ制限エンドヌクレアーゼが、現在まで試験された何百もの細菌の種から同定された。
【0004】
細菌は多くとも種当たり少数の制限エンドヌクレアーゼのみを有する傾向がある。通常、エンドヌクレアーゼは由来する細菌に基づいて命名される。即ち、例えばDeinococcus radiophilus という種は3つの異なる制限エンドヌクレアーゼを合成するが、それらの名はDraI、DraII、DRAIII である。これらの酵素は、それぞれ配列TTTAAA(配列番号1)、PuGGNCCPy(配列番号2)、CACNNNGTG(配列番号3)を認識し切断する。一方、Escherichia coli RY13 は唯一の酵素EcoRIを合成するが、それは配列GAATTC(配列番号4)を認識する。
【0005】
自然界では、制限エンドヌクレアーゼは細菌細胞の生存に関して防御的役割をもつと考えられている。制限エンドヌクレアーゼは、細菌を破壊し又は細菌に寄生するウイルスやプラスミドのような外来DNA分子の感染に対して細菌を抵抗性にすることができる。制限エンドヌクレアーゼは、認識配列が存在する毎に、侵入してくる外来DNA分子を切断することによって抵抗性を付与する。切断が起ると、多くの感染性遺伝子は無能になり、そのDNAは非特異的ヌクレアーゼによって更に分解されやすくなる。
【0006】
細菌の防御システムの第2の成分は修飾メチラーゼである。これらの酵素は制限エンドヌクレアーゼに対して相補的であり、細菌が自身のDNAを防御でき、自身のDNAを外来の感染性DNAから区別できる手段を提供する。修飾メチラーゼは対応する制限エンドヌクレアーゼと同一の認識配列を認識し結合するが、DNAを切断する代わりに、メチル基を付加することで配列内の1つのヌクレオチド又は他のヌクレオチドを化学修飾する。メチル化後、認識配列はもはや制限エンドヌクレアーゼによって切断されない。細菌細胞のDNAは、その修飾メチラーゼの活性により常に十分に修飾されている。そのため、細菌細胞のDNAは、内因性の制限エンドヌクレアーゼの存在に対して完全に非感受性である。制限エンドヌクレアーゼの認識と切断に感受性なのは、未修飾で、そのため同定可能な外来DNAだけである。
【0007】
遺伝子工学技術の出現により、遺伝子をクローニングし、該遺伝子がコードするタンパク質や酵素を従来の精製技術によって得られるより多量に生産することが現在では可能である。制限エンドヌクレアーゼ遺伝子のクローンを単離するための鍵は、複雑な“ライブラリー”即ち“ショットガン”法により得られるクローンの集団内で、あるクローンが10-3〜10-4の低い頻度で得られるときに、該クローンを同定する簡単で信頼性のある方法を開発することである。望ましくない大部分のクローンが破壊され、目的とするまれなクローンが生き残るような選択的な方法が好ましい。
【0008】
II型の制限−修飾システムは盛んにクローニングされつつある。最初にクローニングされたシステムは、制限エンドヌクレアーゼクローンを同定又は選別する手段としてバクテリオファージ感染を使用した(EcoRII:Kosykhら、Molec. Gen. Genet 178:717-719(1980) ;HhaII :Mannら、Gene 3:97-112(1978) ;PstI:Walderら、Proc. Nat. Acad. Sci. 78:1503-1507(1981)、それらの開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)。細菌に制限−修飾システムが存在するとその細菌はバクテリオファージ感染に対して抵抗することができるので、クローニングされた制限−修飾遺伝子を有する細胞は原則として、ファージにさらされたライブラリーから生存細胞として選択的に単離されうる。しかし、この方法は限定された価値しかないことが判明した。即ち、クローニングされた制限−修飾遺伝子は、必ずしも選択的生存をさせるのに十分なファージ抵抗性を発現しないことが知見された。
【0009】
別のクローニングのアプローチは、初めプラスミド担持として特徴付けられたシステムをE. coli クローニングプラスミド内へ転移することを含む(EcoRV :Bougueleret ら、Nucl. Acid. Res. 12:3659-3676(1984) ;PaeR7 :GingerasとBrooks, Proc. Natl. Acad. Sci. USA80:402-406(1983);Theriault とRoy, Gene 19:355-359(1982);PvuII :Blumenthalら、J. Bacteriol. 164:501-509(1985) 、これらの開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)。
【0010】
第3のアプローチ、そして現在増え続けているたくさんのシステムをクローニングするために使用されている方法は活性メチラーゼ遺伝子を選別することによってクローニングするものである(本発明者らによる EPO No. 193,413(1986年9月3日公開)及びBsuRI :Kissら、Nucl. Acid. Res. 13:6403-6421(1985) を参照されたい。これらの開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)。制限遺伝子と修飾遺伝子はしばしば接近して結合しているので、両方の遺伝子はしばしば同時にクローニングすることができる。しかし、この選択によって必ずしも完全な制限システムが得られるわけではなく、代わりにメチラーゼ遺伝子のみが得られる(BspRI :Szomolanyiら、Gene 10:219-225(1980) ;BcnI:Janulaitisら、Gene 20:197-204(1982) ;BsuRI :KissとBaldauf, Gene 21:111-119(1983);MspI:Walderら、J. Biol. Chem 258:1235-1241(1983) 、これらの開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)。
【0011】
より最近の方法(“エンド−ブルー(endo-blue )法”)が、dinD::lacZ融合体を含むE.coliの指示株に基づくE.coliでの制限エンドヌクレアーゼ遺伝子の直接的クローニングについて記載された(Fomenkovら、Nucl. Acids Res. 22:2399-2403(1994) 、この開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)。この方法は、エンドヌクレアーゼ又は非特異的ヌクレアーゼによるDNA損傷後のE.coliのSOS反応を用いる。いくつかの熱安定性ヌクレアーゼ遺伝子(TaqI、Tth111I 、BsoBI 、Tfヌクレアーゼ)がこの方法によりクローニングされた。
【0012】
E.coliでこれらのシステムをクローニングする際の別の障害が各種のメチラーゼをクローニングする過程で発見された。多くのE.coli株(クローニングに通常使用されるものを含む)は、シトシンメチル化を含有するDNAの導入に抵抗性のシステムを有する(Raleigh とWilson、 Proc. Natl. Acad. Sci., USA 83:9070-9074(1986)、この開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)。それ故、クローニングにどのE.coli株を使うべきかを注意深く考察することも必要である。
【0013】
外来の制限−修飾システムをクローニングして、E.coliに導入したとき、メチラーゼとエンドヌクレアーゼの発現は、恐らくE.coliでの遺伝子の転写又は翻訳がうまくいかないために、天然のエンドヌクレアーゼ生産株と比較して極めて低いことがある。特に、E.coliへのStreptomyces遺伝子のクローニングに当てはまる。これは2種の微生物のGC含量が異なるためである。Streptomyces遺伝子をE.coliで十分発現させ、効率的な遺伝子発現に基づいて選別することができるクローニングシステムがあれば望ましい。
【0014】
精製された制限エンドヌクレアーゼ及び有用性の程度は小さいが修飾メチラーゼは、実験室で遺伝子をキャラクタリゼーションするのに有用な道具であるので、組換えDNA技術によりこれらの酵素を豊富に合成する細菌株を得るという商業的動機が存在する。このような株は商業的に有用な量を生産する手段を提供すると同様に精製の仕事を簡単にするので有用であろう。
【0015】
【発明が解決しようとする課題及びその解決手段】
本発明は、制限エンドヌクレアーゼScaIをコードする単離DNA及び改変したメチラーゼ選択法によるStreptomycesのメチラーゼ遺伝子を .coliにクローニングする方法に関する。最初は、標準メチラーゼ遺伝子選択方法を用いて、ライブラリー構築の間、高コピー数のクローニングベクターpUC19を使用するScaIメチラーゼ遺伝子のクローニングを試みた。pUC19を使用するScaIメチラーゼ遺伝子のクローニングはできなかった。恐らくは、E.coliでのScaIメチラーゼ遺伝子が十分発現できなかったためと考えられる。もしScaIメチラーゼがE.coliで有効に発現しないならば、プラスミドのScaI部位はメチラーゼによって十分に修飾されないだろう。結果として、ScaIエンドヌクレアーゼの攻撃後、プラスミドは切断され、プラスミドライブラリー中で失れるだろう。標準メチラーゼ選択は有効でなかったので、“エンド−ブルー法”を用いてScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子のクローニングを試みた。19の青色のコロニーが同定されたが、いずれにもScaIエンドヌクレアーゼ活性は検出できなかった。
【0016】
E.coliでのScaIメチラーゼ遺伝子発現を増加させるために、pRRSという名称の、lacUV5プロモーターを含む高コピー数プラスミド(Skoglundら、Gene 88:1-5(1990)、この開示内容は引用により本明細書に含まれるものとする)をScaIメチラーゼ遺伝子をクローニングするために使用し、得られたライブラリーDNAをメチラーゼ選択のために使用した。ScaIメチラーゼ遺伝子を、次の4段階でpRRSにクローニングするのに成功した。(1)Sau3AIによって部分消化されたゲノムDNAとBamHIによって切断されCIP処理されたpRRSとの連結及びE.coliRR1コンピテント細胞の連結DNAによる形質転換、(2)混合プラスミドライブラリーの調製、(3)プラスミドDNAライブラリーのScaI消化、及びRR1細胞の攻撃されたDNAによる再形質転換、(4)生き残った細胞からのScaI耐性プラスミドのスクリーニング。ScaIメチラーゼ遺伝子をクローニングした後、メチラーゼ遺伝子の両側のDNAフラグメントをクローニングする努力をした。通常、特定の制限−修飾システムでメチラーゼ遺伝子とエンドヌクレアーゼ遺伝子は互いに隣接して存在している。ScaIメチラーゼ遺伝子の左側のDNAを、逆PCR(inverse PCR)によるDNA増幅でクローニングした。該DNAの配列決定を行ない、6つ全てのリーディングフレームで翻訳した。翻訳されたタンパク質配列を、部分精製したScaIタンパク質のN末端タンパク質配列と比較した。1つの予測タンパク質配列がScaIタンパク質のN末端配列とぴったりと合う。完全ScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子を、ゲノムDNAからポリメラーゼ連鎖反応により該遺伝子を増幅してクローニングし、pRRSベクターに連結し、ScaIメチラーゼで予め改変したE.coli株を形質転換した。
【0017】
【発明の実施の態様】
ScaIメチラーゼ遺伝子とScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子をクローニングし発現させる本発明の方法を図1で説明する。本方法は以下の段階を含む。
【0018】
1.ストレプトマイセス・カエスピトーサス(Streptomyces caespitosus)のゲノムDNAを精製する。
【0019】
2.完全なScaIメチラーゼ遺伝子を含むDNAフラグメントを生成する、Sau3AI又はそのアイソシゾマーのいずれかなどの制限エンドヌクレアーゼで、該DNAを部分消化する。フラグメントはまた、クローニング可能な大きさ、即ち1−20kbであるべきである。
【0020】
3.好ましくは、Sau3AIで消化されたゲノムDNAをBamHI切断/CIP処理されたpRRSなどの高発現ベクターと連結する。Ptac 、λPL 、λPR プロモーターを有する他のベクターも使用することができる。得られた混合物を使用して適切な宿主、即ち、E.coli株RR1などのhsdR- 、mcrBC- 、mrr- 株を形質転換する。DNA/細胞の混合物を、形質転換細胞用のアンピシリン選択培地に塗布する。インキュベーション後、形質転換細胞をまとめてプールし、第1細胞ライブラリーを作る。
【0021】
4.組換えプラスミドを第1細胞ライブラリーから全体として精製し、第1プラスミドライブラリーを作る。それから、精製プラスミドライブラリーを、ScaIエンドヌクレアーゼ又は任意のScaIアイソシゾマーを用いてin vitroで完全に消化する。ScaIエンドヌクレアーゼ消化により、未修飾でメチラーゼ非含有クローンが選択的に破壊され、ScaIメチラーゼ含有クローンの相対的頻度が増加する。
【0022】
5.ScaIメチラーゼクローンの同定:消化されたプラスミドライブラリーDNAをE.coli株RR1などの宿主に戻して形質転換を行ない、アンピシリンプレートに塗布して形質転換コロニーを再び得る。コロニーを拾い上げ、そのプラスミドDNAを調製し、それがScaI消化に抵抗性であるかどうかを決定するために、精製プラスミドDNAをScaIエンドヌクレアーゼと共にinvitroでインキュベートしてScaIメチラーゼ遺伝子の存在を分析する。
【0023】
6.メチラーゼ遺伝子がクローニングされたことが確立されたならば、クローンを制限地図作成と欠失地図作成により解析する。ScaIM遺伝子を含む領域を配列決定する。
【0024】
7.ScaIメチラーゼ遺伝子の右側の合計623bpDNAの配列決定をした。このDNA配列を、プログラム“Blastx”を用いてGenbankデータベースのすべての公知の遺伝子と比較した。配列の比較によると、この623bpからの1つの予測されたオープンリーディングフレーム(終止せず)はE.coliのコールドショックタンパク質に多少の相同性を有する。ScaIメチラーゼ遺伝子の右側のDNAは、ScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子であるはずがないことが結論された。
【0025】
8.左側に結合しているDNAをクローニングするために、Streptomyces caespitosusゲノムDNAを、BsaWI、BspE1、NlaIII 、PstI、PvuI、Sau3AI、SpeI制限酵素又は逆PCR反応用の適切な大きさの鋳型DNA(3kb未満)を生成する任意の他の制限酵素で消化する。消化DNAは、DNAの低濃度(2μg/ml未満)で自己連結させる。連結環状DNAを、ScaIメチラーゼ遺伝子の末端にアニールする1セットのプライマーを使用する逆PCR反応のための鋳型として用いる。上記のプロトコルの後、PvuI切断、自己連結のゲノムDNAから1.6kbの逆PCR産物を得る。該DNAを、T4ポリヌクレオチドキナーゼとT4DNAポリメラーゼで処理し、HincII切断/CIP処理pUC19ベクターにクローニングする。完全インサート(insert)を配列決定し、DNA配列を全ての6つのリーディングフレームでアミノ酸配列に翻訳し、次にScaIのN末端タンパク質配列と比較する。このアプローチで、実際のScaIタンパク質配列と6つのアミノ酸が一致する684bpの1つのオープンリーディングフレームが得られる。
【0026】
9.次に、ScaIメチラーゼ遺伝子を適合性プラスミドpACYC184にクローニングし、E.coli宿主を予め改変する。E.coliでの翻訳効率を増大させるために、効果的なリボソーム結合部位と最適なスペーシングをメチラーゼ遺伝子の前に入れる。完全ScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子を、2つのプライマーを用いてPCR増幅する。正方向のプライマーはリボソーム結合部位及びATG開始コドンの前の6bpのスペーシングを含む。ScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子を発現ベクターpRRSにクローニングし、ScaIメチラーゼで予め改変した細胞を形質転換する。
【0027】
10.pACYC184−ScaIM+ とpRRS−ScaIR+ を含むE.coli細胞を30℃で一晩、定常相まで生育させる。細胞を回収し、音波処理で溶菌する。細胞抽出物のScaIエンドヌクレアーゼ活性をアッセイする。ScaIエンドヌクレアーゼをクロマトグラフィーで精製する。
【0028】
以下の実施例で、本発明の好適実施態様を説明する。以下の実施例は単なる例示であり、本発明は以下の実施例に限定されるべきでないことが理解されよう。
【0029】
【実施例】
ScaI制限−修飾システムのクローニング
1.クローニングベクターとしてpUC19を用いるScaIメチラーゼの選別
1つのScaIリンカーをpUC19のSspI部位に挿入した。改変pUC19をライブラリー構築のために使用した。Sau3AIで部分消化したS.caespitosusゲノムDNAをBamHI切断/CIP処理のPUC19DNAに連結した。SmaIで部分消化及び完全消化したゲノムDNAを、SmaI切断/CIP処理のpUC19DNAに連結した。連結DNA混合物を用いてRR1コンピテント細胞を形質転換し、アンピシリンプレートに塗布した。SmaI及びSau3AIライブラリー中に、それぞれ合計13,600と60,000の細胞が見出された。プラスミドDNAを各1次細胞ライブラリーから調製した。ライブラリーDNAの5μg、2μg、1μgを37℃で2時間、ScaI制限エンドヌクレアーゼの100ユニットで切断した。ScaIで攻撃されたDNAを用いて、RR1コンピテント細胞を形質転換した。再び、プラスミドDNAを生き残っている形質転換菌から分離し、ScaI制限酵素で消化し、プラスミドDNAがScaI消化に耐性であるかどうかを試験した。Sau3AIライブラリーからの144の単離プラスミド及びSmaIライブラリーからの58の単離プラスミドのScaI消化に対する抵抗性を解析した。ベクター中のScaI部位の一方又は両方を失なった5つの耐性クローンを見出した。真の抵抗性クローン(メチラーゼ含有クローン)はこれら2つのライブラリーでは見出されなかった。
【0030】
2.“エンド−ブルー法”を用いるScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子のクローニングの試み
ScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子がE.coli細胞で発現されるのが貧弱であるならば、ScaIメチラーゼによる防御が無くともE.coliでエンドヌクレアーゼ遺伝子を直接クローニングするために“エンド−ブルー法”を使用できることが推察された。Sau3AIで部分消化したScaIゲノムDNAを、BamHI消化/CIP処理のpUC19に連結し、それを用いてdin1::lacZ融合体を有するE.coliの指示株を形質転換し、X−gal指示薬含有プレートに塗布した。19の青色のコロニーが5000のApR 形質転換菌の中で見出された。個々の青色のコロニーを10mlのLBプラスAp培地に植菌し、30℃で一晩揺動した。細胞を回収し、1mlの音波処理用緩衝液プラスリゾチーム(100μg/ml)に再懸濁した。細胞抽出物の1μl、2.5μl、5μl、10μlを使用して、37℃で1時間1μgのλDNAを切断した。ScaI活性は、青色の単離菌のいずれの細胞抽出物中にも見出されなかった。クローンのどれもScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子を含んでいない、又はエンドヌクレアーゼ遺伝子がin vitro検出のためによく発現しないことが結論された。
【0031】
3.クローニングベクターとしてpRRSを使用するScaIメチラーゼ選別
メチラーゼ選別方法は、メチラーゼがScaIメチラーゼ遺伝子を保有するベクターのScaI部位を修飾できるように、ScaIメチラーゼ遺伝子がin vivoで適度なレベルで発現されることを必要とする。Streptomyces遺伝子が、2種の微生物のGC含量が異なるために、E.coliで十分に発現されないことが公知である。ScaIメチラーゼ遺伝子を高レベルで発現させるために、別の高コピー数ベクターpRRSをクローニングビヒクルとして使用した。プラスミドpRRSは、pUC19の正規のlacプロモーターより強いlacUV5プロモーターを有する。多重クローニング部位にクローニングされた遺伝子はlacUV5プロモーターに制御される。Sau3AIで部分消化したS.caespitosusゲノムDNAを、BamHI消化/CIP処理のpRRSベクターに連結し、連結DNAを用いてRR1コンピテント細胞を形質転換した。合計18,000のApR 形質転換菌を1次細胞ライブラリーとして得た。プラスミドDNAを1次細胞ライブラリーから調製した。ライブラリーDNA5μgをScaI制限酵素100ユニットで切断し、それを用いて再びRR1コンピテント細胞を形質転換した。生き残っている形質転換菌を拾い上げ、培養した。プラスミドDNAを個々の細胞の培養物から単離した。これらのプラスミドのいずれかがScaIメチラーゼ遺伝子を有するかを試験するために、78の個々のプラスミドをScaIエンドヌクレアーゼで消化した。プラスミド#37、#38、#54がScaI消化に真に抵抗性であることが知見された。プラスミド#54が約5000bpのインサートを有し、それを更に解析した。1.7kbのSacIフラグメント欠失クローンが依然として活性あるメチラーゼ遺伝子を有する。インサートのPstIフラグメント(約2kb)の欠失はScaIメチラーゼ遺伝子を不活性化し、欠失クローンをScaIエンドヌクレアーゼ切断に感受性にする。1つのPstI部位がScaIメチラーゼ遺伝子内に位置することが結論された。PstI部位を囲むDNAの配列決定の努力をした。3つのサブクローン(SacI〜PstI、HindIII 〜PstI、PstI〜PstI)を、pUC19ベクターを用いて構築した。pUC19のユニバーサルの正方向と逆方向のプライマーを使用して、DNA配列を決定した。残りのDNAをプライマーウォーキングにより配列決定した。メチラーゼモチーフSPPY(配列番号9)とDPFLGSGTT(配列番号10)を含む1つのオープンリーディングフレームを同定した。メチラーゼ遺伝子は下部の(bottom)鎖によってコードされ、逆向きである。
【0032】
ScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子を同定するために、メチラーゼ遺伝子の右側の623bpのDNAの配列決定をした。この一続きのDNAをGenBankの全ての公知の遺伝子と比較した。623bp内の1つの部分的なオープンリーディングフレームは、E.coliのコールドショックタンパク質をコードする遺伝子と多少の相同性を有することが知見された。それ故、メチラーゼ遺伝子の左側のDNAをクローニングし、配列決定することに努力を集中した。
【0033】
4.ScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子のクローニング
逆PCRによるScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子のクローニング:逆PCRは公知のDNA配列に隣接するDNAをクローニングする有効な方法である。S.caespitosusゲノムDNAを逆PCR反応のために、制限酵素BsaWI、BspEI、NlaIII 、PstI、PvuI、Sau3AI、SpeIで消化した。制限消化後、DNAを、フェノール−CHCl3 で一度抽出し、CHCl3 で一度抽出し、95%エタノールで沈殿させ、TE緩衝液に再懸濁した。各々の消化されたDNAを、低いDNA濃度(合計容量500μl、2μg/ml)で自己連結させ、環状化した。連結DNAをフェノール−CHCl3 で一度、CHCl3 で一度抽出し、95%エタノールで沈澱させた。該DNAを逆PCR反応の鋳型として使用した(95℃1分、60℃1分、72℃2分、30サイクル)。メチラーゼ遺伝子の末端にアニールする1セットのプライマーを次の様に設計した:
正方向のプライマー
【0034】
【化1】
Figure 0003889098
【0035】
逆方向のプライマー
【0036】
【化2】
Figure 0003889098
【0037】
1.6kbの逆PCR産物が自己連結PvuIゲノムDNAの逆PCR反応で見出された。逆PCR産物を、反応容量50μl中(DNA2μg、10倍キナーゼ緩衝液5μl、ポリヌクレオチドキナーゼ1μl、0.1M ATP2μl、T4DNAポリメラーゼ1μl、TE41μl、37℃、1時間)T4ポリヌクレオチドキナーゼとT4DNAポリメラーゼで処理した。該DNAをpUC19にクローニングした。インサートを配列決定するために、いくつかの欠失クローンを構築した(NgoMI及びSmaI欠失、BamHI及びBstEII欠失、BssHII及びBssHII欠失、AatII及びAatII欠失)。DNA配列を、pUC19の正方向と逆方向のプライマー及びカスタマーメイド(customer-made )のプライマーを用いて配列決定した。合計956bpの配列を決定し、6つの全てのリーディングフレームで翻訳した。
【0038】
予測アミノ酸配列
【0039】
【化3】
Figure 0003889098
【0040】
を有する684bpの1つのオープンリーディングフレームが見出された。684bpのDNAは分子量26kDのタンパク質をコードするコーディング能力を有する。部分精製ScaI制限エンドヌクレアーゼのN末端タンパク質配列は次の通りである。
【0041】
【化4】
Figure 0003889098
【0042】
実際のタンパク質配列は始めの4残基を欠いているけれども、6残基(太字体で示す)が実際のタンパク質配列と予測タンパク質配列で同一であった。部分精製ScaIタンパク質の最初の4残基はタンパク質精製の間にプロテアーゼで分解されたものと考えられる。部分精製ScaIタンパク質の分子量は25−26kDである。この684bpのオープンリーディングフレームはScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子であることが結論された。
【0043】
5.E.coliでのScaIエンドヌクレアーゼの発現
ScaIメチラーゼ遺伝子を、正方向のプライマー
【0044】
【化5】
Figure 0003889098
【0045】
及び逆方向のプライマー
【0046】
【化6】
Figure 0003889098
【0047】
(逆方向のプライマーはメチラーゼ終止コドンの85bp下流である)
を用いてPCR増幅した。PCRのDNAをBamHIで切断し、pACYC184のBamHI部位にクローニングし、E.coli宿主を予め改変した。完全ScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子を、2つのプライマーによるPCRで増幅した。正方向のプライマーはリボソーム結合部位及びATG開始コドンの前の6bpのスペーシングを含む(正方向のプライマー:
【0048】
【化7】
Figure 0003889098
【0049】
逆方向のプライマー:
【0050】
【化8】
Figure 0003889098
【0051】
)。
【0052】
両端にSphI部位をもつScaIエンドヌクレアーゼ遺伝子を、発現ベクターpRRSのSphI部位にクローニングし、それを用いて、ScaIメチラーゼで予め改変した細胞を形質転換した。pRRS−ScaIR+ とpACYC−ScaIM+ を保有する細胞500mlを、LBプラスAp(100μg/ml)及びCm(30μg/ml)中で30℃で一晩生育させた。細胞を回収し、音波処理用緩衝液30mlに再懸濁した。溶菌を、リゾチーム最終濃度100μg/mlの添加と音波処理で行なった。細胞残渣を遠心分離で取り除いた。細胞抽出物をTE緩衝液で10、100、1000、10000倍に希釈した。希釈抽出物を5μl使用して、λDNA1μgを1時間、37℃で消化した。消化DNAを0.8%アガロースゲルで分析した。pRRS−ScaIR+ 及びpACYC−ScaIM+ を保有するE.coli株は、E.coli湿細胞1g当り106 ユニットのScaIエンドヌクレアーゼを産生することが知見された。
【0053】
6.組換えScaI制限エンドヌクレアーゼの精製
組換えScaI制限エンドヌクレアーゼを、ヘパリン−セファロース、DEAEセルロース、Q−セファロースカラムを使用するクロマトグラフィーにより均一になるまで精製した。
【0054】
pRRS−ScaIR+ 及びpACYC−ScaIM+ の両方を保有するE.coli(NEB991)のサンプルを、ブダペスト条約の条件の下、American Type Culture Collectionに1995年12月8日寄託し、ATCC受託番号69966を受けた。
【0055】
Figure 0003889098
Figure 0003889098
【0056】
【化9】
Figure 0003889098
【0057】
【化10】
Figure 0003889098
【0058】
Figure 0003889098
【0059】
【化11】
Figure 0003889098
【0060】
Figure 0003889098
【0061】
【化12】
Figure 0003889098
【0062】
【化13】
Figure 0003889098
【0063】
Figure 0003889098
【0064】
【化14】
Figure 0003889098
【0065】
Figure 0003889098
Figure 0003889098
Figure 0003889098

【図面の簡単な説明】
【図1】ScaI制限エンドヌクレアーゼのクローニング及び生産のスキーム。
【図2】ScaIM遺伝子のDNA配列(配列番号5)及びそれにコードされたタンパク質配列(配列番号6)。
【図3】ScaIR遺伝子のDNA配列(配列番号7)及びそれにコードされたタンパク質配列(配列番号8)。
【図4】ScaI制限−修飾システムの構成。

Claims (4)

  1. 配列番号7の配列から成るScaI制限エンドヌクレアーゼをコードする単離DNA。
  2. 請求項1に記載のDNAセグメントが挿入された組換えDNAベクター。
  3. 請求項2に記載のクローニングベクターによって形質転換された宿主細胞。
  4. ScaI制限エンドヌクレアーゼの発現に適した条件下、請求項2に記載のベクターによって形質転換された宿主細胞を培養することを含む、前記ScaI制限エンドヌクレアーゼの生産方法。
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