JP3888753B2 - 持続性粉末状吸入用医薬品組成物 - Google Patents

持続性粉末状吸入用医薬品組成物 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は粉末状吸入用医薬品組成物に関する。詳しくは、気道内の滞留性が延長された粉末状吸入用医薬品組成物に関する。更に詳しくは、薬物微粒子の表面を生分解性生体付着性高分子で被覆することにより薬物微粒子の気道内滞留性を延長させ、その結果として薬効が持続する粉末状吸入用医薬品組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
吸入剤とは、口腔あるいは鼻腔から、気管、気管支、肺胞などの主に下気道へ薬物を投与することを目的とした製剤である。ここでいう下気道とは気道のうち、気管、気管支、細気管支、肺胞等と定義される。
【0003】
吸入剤は、喘息、気管支炎、肺気腫等の胸部疾患に対する局所投与製剤として実用化されており、また近年生理活性ペプチド類、蛋白質等を肺胞から全身血流へ移行させる投与法としても注目を集めている。
【0004】
このような吸入剤の剤型として、吸入液剤、フロンまたは代替フロン製剤、粉末吸入剤の3つがある。吸入液剤は通常薬物の水溶液であり、ネブライザーにより霧化されて微少の液滴となって患者の自発呼吸下で吸入され、気道内に液滴の形で沈着する。フロンまたは代替フロン製剤は、フロンまたは代替フロンに加圧下で薬物が分散または溶解された製剤であり、加圧式定量噴霧吸入器(Metered Dose Inhaler; MDI)と呼ばれる加圧容器に充填されて用いられる。投与時は、加圧下のMDIから開放されるとフロンまたは代替フロンが気化し、溶解・分散していた薬物が通常薬物の微粒子粉末となって気道内に沈着する。また、粉末吸入剤は薬物を主とする微粒子粉末を例えば粉末状組成物として賦形剤などとともにブリスター等の容器に充填し、通常患者自身の吸気により適当な投与器から該容器内の微粒子粉末が粉末エアロゾル化されて吸入され、薬物粉末として気道内に沈着する。
【0005】
これらの吸入剤の剤型のうち、吸入液剤は一般に高価で大きく重いネブライザーでの投与がのため、また薬液をネブライザーに充填する際に細菌等の混入の危険があるため、医療機関以外で患者自身が投与するには適さない。フロンまたは代替フロン製剤は、投与器であるMDIが軽量で携帯性がよく、また密封された容器に製剤が充填されいるが、フロンはオゾン層破壊、代替フロンは温室効果の要因であり、地球環境を考える上ではその使用は控えられるべきである。これらに対して粉末吸入剤は、一般にその投与器は軽量で携帯性がよく、また細菌等の混入を防ぐように構成されており、製剤中に環境破壊に関わるような成分を含まないことから、理想的な吸入剤の剤型であると考えられている。
【0006】
さらに粉末吸入剤には次の3種がある。
(1)薬物微粒子と乳糖等から選ばれる該薬物微粒子より粒径の大きい賦形剤粒子とが均一に混合された混合粒子が適当な容器から気道内に投与されると、賦形剤は口腔、咽頭あるいは喉頭に沈着するが薬物微粒子のみ気管、気管支等の下気道にまで到達、沈着する粉末状組成物。
【0007】
(2)薬物微粒子どうしが柔らかく造粒されて比較的大きな粒径となっている粉末状製剤が、適当な容器から気道内に投与されると飛行中に構成薬物微粒子に解離され、生成した薬物微粒子が気管、気管支等の下気道に到達、沈着する粉末状組成物。
【0008】
(3)薬物微粒子のみからなる粉末状製剤で、適当な容器から気道内に投与されると該薬物微粒子が気管、気管支等の下気道にまで到達、沈着する粉末状組成物。
これらの中でも薬物量が少ない場合は1回分投与量の粉末状薬物を分割することが困難であるために(1)のような薬物と賦形剤との粉末状組成物が使用されることが多い。
【0009】
また、下気道、特に細々気管支以上の部位では、上皮層に線毛および粘膜層が存在する。このため、従来の粉末吸入剤、すなわち薬物のみ、もしくは薬物と分散剤の組成物では、薬物が下気道沈着後、溶解、吸収する前に粘液線毛輸送により喉咽頭から消化管へ嚥下されるために薬効が持続しないという欠点を有する。吸入剤において薬効を持続化する手段としては、例えば吸入液剤としてUS5192528号明細書に記載されるようなリポソーム製剤があるが、一般にリポソームは不安定であり、室温での長期の安定な保存は困難である。また、特公平3-17014号公報に記載されているように、ポリ乳酸のような合成生分解性高分子マイクロスフェアの生分解に基づく放出制御によって薬効持続化を図る技術が公知であるが、この方法ではマイクロスフェア自体の下気道粘膜への付着が考慮されていないために喉咽頭部へのクリアランスを防ぐことはできない。また、WO96/09814号明細書には、噴霧乾燥によりアルブミンをはじめとした水溶性材料の1〜10μmのマイクロパーティクルについて記載されているが、特公平3-17014号公報と同様にマイクロパーティクル自体の粘液線毛輸送によるクリアランスについては考慮されていない。WO93/25198号明細書では、粘膜付着性を有するヒドロキシプロピルセルロースもしくはヒドロキシプロピルメチルセルロースのマイクロスフェアにより薬効持続化を図る技術について記載されている。安全性の上から吸入用基剤としてより好ましい形態は下気道中で分解しうる材料であるが、該特許はこの点については考慮されていない。さらにWO96/31198号明細書において、天然多糖ガムの吸入用組成物により、生体付着性かつ生分解性の多糖によるマイクロスフェアによる薬効持続化についての技術が開示されているが、下気道中での生分解性が疑われる材料が含まれること、およびその至適使用量が多いという安全面での問題点を有し、また吸入効率や粉体の取り扱いに関わる吸湿性などの粉体物性因子に対する考慮もなされていない。
【0010】
しかるに肺内滞留性が持続化された医薬品組成物は安全性の観点からは蓄積性が許容される範囲である必要がある。そこで生体付着性高分子化合物により薬物の持続化を図る時は該高分子化合物に生分解性がない場合にはその分子量などの調節により低粘度化して蓄積されないように設計することが検討されている。一方、生分解性がある場合には蓄積されても生分解されるためその安全性はより高いと考えられるが、一般的にこれらの生分解性生体付着性高分子化合物はその物性のゆえに粉体同士が凝集しやすく粉体としての取り扱いが極めて難しいという課題がある。従って、粉体としての取り扱いが容易でかつ肺内滞留性がある生分解性生体付着性高分子による粉末状吸入用医薬品組成物が望まれている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかして本発明の目的は、薬物微粒子の表面を生分解性生体付着性高分子で被覆することにより薬物微粒子の気道内滞留性を延長させ、その結果として薬効が持続する粉末状吸入用医薬品組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記の課題を解決するべく鋭意研究した結果、薬物の粒子の表面を生分解性生体付着性高分子により被覆すること、及びその際に薬物微粒子が球形である必要のあること、さらに生分解性生体付着性高分子と被覆される薬物微粒子との重量比が2:98〜10:90の場合に限り粉体の取り扱い性と肺内滞留性の双方が達成されることを見出し本発明に到達したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の薬物は吸入療法に用いられる薬物であればいずれでもよいが、脂溶性の高い薬物がより好適である。
脂溶性の高い薬物としては副腎皮質ホルモン類、性ホルモン類、活性型ビタミンD3類、プロスタグランジン類などが挙げられる。副腎皮質ホルモン類としては、プロピオン酸ベクロメタゾン、酢酸トリアムシノロン、フルニソリド、ブデソニドおよびプロピオン酸フルチカゾンなど、性ホルモン類としては、テストステロン、エストロジェンおよびエストラジオールなど、活性型ビタミンD3類としては、1α, 24-ジヒドロキシビタミンD3、1α, 25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシフェロール)、カルシポトリオール、1α-ヒドロキシ- 24-オキソビタミンD3、1α, 25-ジヒドロキシビタミンD3-26,23-ラクトン、1α, 25-ジヒドロキシビタミンD3-26,23-パーオキシラクトンおよび26,26,26,27,27,27-ヘキサフルオロ-1α, 25-ジヒドロキシビタミンD3など、プロスタグランジン類としては、プロスタグランジンE1(アルプロスタジル)、プロスタグランジンF2 α(ジノプロスト)、プロスタグランジンI2(エポプロステノール)、ベラプロストおよびクリンプロストなどを挙げられる。
特異的に凝集性が高い薬物の例としてはインスリン、カルシトニンなどの高分子量ペプチド類が挙げられる。
【0014】
本発明の薬物微粒子は噴霧乾燥法、晶析法、超臨界流体再結晶化法などの方法により球形に成型される。中でも噴霧乾燥法により好適に成型される。噴霧乾燥法による本発明の薬物微粒子は、プロピオン酸ベクロメタゾン(以下BDPとする)10gを無水エタノール500mLに溶解してサンプル溶液を調製し、噴霧乾燥機としてGS-31(ヤマトラボテック(株))を用い、ノズル径:0. 4 mm、入口温度:105℃、出口温度:70-80℃、送液速度:6.5g/min、熱風風量:0.6 m3/ min、噴霧圧力:2.5 kg/ cm2、の条件で上記サンプル溶液を噴霧乾燥をして製造することができる。(製造例1)このようにして製造された薬物微粒子は回収率50%で得られ、図1に示す走査型電子顕微鏡像に見られる球形粒子(ψS>0.90)であり、平均径 1.5μm、85%以上が0.5-10μmの範囲であった。
【0015】
本発明の薬物微粒子が球形であることは本発明の新規性にとって重要である。すなわち、薬物微粒子が球形でない場合、例えば多面体状などではその最大径を気管、気管支、肺に沈着するに適した範囲に設定しても、その表面を生分解性生体付着性高分子で被覆した場合には該薬物微粒子は気管、気管支、肺に沈着することができないことが本発明者らにより知見された。(実施例の項参照)
【0016】
本発明において「球形」とは、Wadellの球形度ψS(=πxv 2 / S)で粒子を評価して0.90以上のものをいう。なお xvは球体積相当径であるが、本発明では実用上フラウンホーファー回折の原理に基づくレーザー回折型粒度分布測定装置で得られる体積平均径を用いた。Sは粒子の表面積であって、比表面積として空気透過法またはガス透過法により測定される。
【0017】
本発明の薬物微粒子の粒径はその表面に生分解性生体付着性高分子が被覆されること及びその生分解性生体付着性高分子が吸入され気管、気管支、肺内に移行する際に水分を吸収して膨潤することを考慮すると、生分解性生体付着性高分子と薬物の割合は重量比で2:98〜10:90の範囲であることが必要である。
【0018】
本発明において「生分解性」とは、下気道中もしくは肺内で水分や酵素などにより分解される性質を指し、酵素分解については下気道中もしくは肺内において酵素活性が認められるものでなければならない。また、本発明において「生体付着性」とは、下気道もしくは肺の(粘液等を含む)上皮部分へ何らかの相互作用で付着・貯留する性質を指す。
【0019】
本発明において、薬物微粒子の表面を被覆するために用いられる生分解性生体付着性高分子は、多糖、ポリアミノ酸等、生分解性および生体付着性を有する高分子であればいずれでもよいが、より好ましくはヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩、ヘパリン、ヘパラン硫酸塩、ポリグルタミン酸、ムチン群から選ばれる1種あるいは2種以上である。
【0020】
本発明の、球形に成型された薬物微粒子の表面を生分解性生体付着性高分子で被覆する方法としては、1)予め球形に成型された薬物微粒子と生分解性生体付着性高分子とを流動層コーティング装置内で混合し被覆する方法、2)予め球形に成型された(疎水性)薬物微粒子を生分解性生体付着性高分子水溶液に懸濁して噴霧乾燥にする方法、3)(水溶性)薬物を生分解性生体付着性高分子水溶液に溶解して噴霧乾燥にする方法、4)(疎水性)薬物溶液(有機溶媒)を生分解性生体付着性高分子水溶液と混合しつつ噴霧乾燥する方法、あるいは5)生分解性生体付着性高分子を溶媒置換後分級してサブミクロン粒子を得て高速気流中衝撃処理装置により予め球形に成型した薬物に乾式コーティングする方法などが挙げられる。これらの中でも噴霧乾燥過程を含む2)、3)および4)の方法が好適であり、それらをより詳しく説明すると次の通りである。
2)予め球形に成型された(疎水性)薬物微粒子を生分解性生体付着性高分子水溶液に懸濁して噴霧乾燥する方法では、製造例1などで得た疎水性薬物の球形粒子を生分解性生体付着性高分子の水溶液に懸濁し、攪拌下に噴霧乾燥する。
3)(水溶性)薬物を生分解性生体付着性高分子水溶液に溶解して噴霧乾燥にする方法では、薬物を生分解性生体付着性高分子の水溶液に入れて十分溶解させた後、噴霧乾燥する。
4)(疎水性)薬物溶液(有機溶媒)を生分解性生体付着性高分子水溶液と混合しつつ噴霧乾燥する方法では、薬物の(例えば)エタノール溶液を、攪拌下に生分解性生体付着性高分子水溶液に滴下、混合しつつ噴霧乾燥する。
上記2)の方法はより具体的には、製造例1で得られたBDP球形粒子960mgを、40mg/ Lのヒアルロン酸Na水溶液1Lに入れて1500rpmで攪拌しながら、ノズル径:0. 4 mm、入口温度:105℃、出口温度:75-85℃、送液速度:5.0g/min、熱風風量:0.6 m3/ min、噴霧圧力:2.8 kg/ cm2、の条件で噴霧乾燥機としてGS-31(ヤマトラボテック(株))を用い噴霧乾燥する。製造された、表面が生分解性生体付着性高分子で被覆され球形に成型された薬物微粒子(以下、表面被覆薬物微粒子と言うことがある)は回収率70%で得られ、球形粒子(ψS>0.90)であり、平均径 1.7μm、85%以上が0.5-10μmの範囲であった。また得られた組成物から無作為に30サンプルを抽出してそのBDP含量を測定した結果、CV値が3.9%とほぼ均一に混合されており、粉体粒子の秤量値とBDP含量比から算出した30サンプルの平均被覆率は4.0%であった。
【0021】
また、被覆剤として使用される生分解性生体付着性高分子と被覆される薬物微粒子との重量比が2:98〜10:90という特定の範囲にあることも本発明の新規性にとって重要である。すなわち、生分解性生体付着性高分子の重量比率が2%より小さい場合には本発明の薬物微粒子は気管、気管支、肺で沈着した後沈着部位での滞留性を示すことができなかった。また、一方、生分解性生体付着性高分子の重量比率が10%より大きい場合には微粒子が製剤製造容器表面に付着しやすく粉体としての取り扱いが難しく、さらに薬物微粒子同士が凝集をおこして大きな二次粒子を生成し気管、気管支、肺に沈着することができなかった。従って被覆剤として使用される生分解性生体付着性高分子と被覆される薬物微粒子との重量比が2:98〜10:90という特定の範囲にあることが重要である。
【0022】
本発明の表面被覆薬物微粒子は賦形剤などとともに医薬品組成物に製造される。
本発明に用いられる賦形剤としては例えば乳糖、ブドウ糖、マンニトール、果糖、蔗糖、アラビノース、キシリトール、デキストロース、麦芽糖およびトレハロースおよびこれらの1水和物や、デキストラン、デキストリン等多糖類が挙げられる。この中でも乳糖が好ましい。
【0023】
本発明の医薬品組成物に用いられる賦形剤以外の添加物としては例えば塩化ベンザルコニウムのような防腐剤やdl-メントール、l-メントールなどの矯味剤、芳香剤などが挙げられる。このような成分は、ごく微量、例えば組成物の10重量%未満で存在するのが好ましく、さらに5重量%未満で存在するのが好ましい。このような添加剤の粒度の範囲は、好ましくは乳糖などの賦形剤と同等の粒度、例えば30〜150μmである。
【0024】
本発明の医薬品組成物は通常、表面被覆薬物微粒子と賦形剤等の添加物とを使用して例えば上記の製造例2により得たヒアルロン酸Na被覆BDP微粒子 1.0g、および吸入用乳糖(Pharmatose 325M, DMV社)61.5gを、小型V型混合機にて4時間混合して製造することができる。(製造例3)このようにして得られた医薬品組成物から無作為に30サンプルを抽出してそのBDP含量を測定した結果、CV値が4.7%とほぼ均一に混合されていた。
【0025】
【発明の効果】
かくして本発明により、粉体としての取り扱いが容易でかつ肺内滞留性がある生分解性生体付着性高分子を用いた粉末状吸入用医薬品組成物が臨床の場に使用されることは気管、気管支、肺疾患の治療上あるいは肺から血中へ薬物を吸収させることによる全身療法上その意義は高い。
【0026】
【実施例】
以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すのであって、本発明を限定するものではない。
【0027】
[実施例1]
ヒアルロン酸Na被覆BDP吸入微粒子を含む製剤の吸入効率評価
本実施例は、被覆される薬物が球形であることの吸入効率に対する有効性を示したものである。以下の2つの製剤について吸入効率の比較評価を実施した。
(1)ヒアルロン酸Na被覆BDP球形微粒子+吸入用乳糖:本発明製剤
(2)ヒアルロン酸Na(以下HA)被覆微粉砕BDP+吸入用乳糖:対照製剤1
(1)は製造例3で得られた製剤、(2)は薬局方BDP(藤川株式会社、平均径1.5μm)を用いて製造例2および製造例3と同じ条件で、被覆・乳糖混合を実施して調製した。これらをゼラチン3号カプセル(各製剤について)30個に、5mgずつ充填した。アンダーセンカスケードインパクター2台に、上記カプセルを充填した投与器Inhalater MTM(ベーリンガー・インゲルハイム社)を2股のインダクションポートを介して据え付けた図2に示す装置を用いて、それぞれのカスケードインパクターを1CFM(=28.3L/min)流量で吸引しながら、15秒間隔で各製剤あたり30個のカプセルを吸引させ評価した。各製剤ごとに、BDPについて、投与器残存量、カプセル残存量、インダクションポート付着量、インパクターのプレセパレーター、プレート沈着量、バックアップフィルター(BUF)沈着量を高速液体クロマトグラフィーにて定量した。
【0028】
評価の結果を表1に示す。なおこの評価は25℃、40%RHの条件で実施した。得られた値は30カプセルの合計値であり、フラクション(括弧内に示す、カプセル充填量に対する%値)は30カプセルの平均値とみなすことができる。0.65〜5.8μm (Stage2-6)のフラクションは、製剤中含量に対する臨床における下気道沈着分に相当する。このフラクションについては両製剤間で(1)>(2)であった。また、いわゆる微粒子画分(Fine Particle Fraction; 投与器からの排出量に対する吸入可能画分)として算出すると、(1)27.7%、(2)22.7%で(1)>(2)であった。カプセル残存のフラクションについて(1)および(2)の製剤は、(1)<(2)という結果であった。
カプセル中残存分の粉体の走査型電子顕微鏡観察において、(1)の製剤では多くの場合、HA被覆BDP微粒子と乳糖とが分散して存在していたのに対して、(2)の製剤ではHA被覆BDP微粒子が乳糖に付着したままの粉体、およびHA被覆BDP微粒子同士が凝集している粉体が多くみられた。
【0029】
【表1】
Figure 0003888753
【0030】
[実施例2]
HA被覆球形BDP微粒子の被覆剤量による高湿度条件吸入効率比較評価
本実施例は、高湿度条件(下気道内条件のシミュレーション)での吸入効率の比較を被覆剤量の適正範囲の存在を示したものである。以下3製剤について評価した。
(1)HA被覆BDP球形微粒子(被覆率4重量%)+吸入用乳糖:本発明製剤
(2)HA被覆BDP球形微粒子(被覆率1重量%)+吸入用乳糖:対照製剤2
(3)HA被覆BDP球形微粒子(被覆率21重量%)+吸入用乳糖:対照製剤3
(2)、(3)の対照製剤は製造例2と同様の方法(ただしヒアルロン酸Na水溶液(2)10 mg / L、(3)200 mg/ L )で薬物微粒子を被覆し(どちらも平均粒径1.7μm程度)、製造例3と同じ仕込みで製造した。(3)製剤は、薬物微粒子と乳糖とを混合した後に主薬含量の低下がみられた。
吸入効率は、37℃、93%RHの条件で、図2に示す装置を用いて実施例1と同様の方法で実施した。結果を微粒子画分(Fine Particle Fraction)として示すと、(1)21.6%、(2)22.0%、(3)13.2%であった。(3)製剤は被覆剤量が多いために、高湿度条件で吸水による粒子の重量増加と膨潤が生じ、微粒子画分の他の製剤と比べ低い値となったと考えられる。
【0031】
[実施例3]
HA被覆球形BDP微粒子の被覆剤量による薬効比較評価
本実施例は、HA被覆BDP微粒子におけるHA被覆量の薬効持続性に対する効果を、喘息モデルモルモットを用いた気管支・肺洗浄液中好酸球浸潤抑制を指標に評価したものである。
【0032】
以下3つの製剤について評価した。
(1)HA被覆BDP球形微粒子(被覆率4重量%)+吸入用乳糖:本発明製剤
(2)HA被覆BDP球形微粒子(被覆率1重量%)+吸入用乳糖:対照製剤2
(3)BDP球形微粒子+吸入用乳糖:対照製剤4
(3)の対照製剤4は、製造例1で得たBDP球形微粒子をHAで被覆することなく、製造例3と同様に乳糖と混合することで得た。
実験動物にはハートレー系モルモット(♂、体重210〜280g)を用いた。1週間馴化後、感作を開始した(第1日目)。感作プロトコールを図3に示す。アスカリス抗原(豚からの抽出物;:約2100PNU / mg)0.1 mg/mL、シリカ20 mg/ mLとなるよう生理食塩水にて懸濁液を用事調製して、感作後第1日目および第15日目に腹腔内投与した。感作後第22日目にアスカリス抗原10 mg/ mLを吸入感作装置により2分間感作し、感作開始後第29日目に上記3つの製剤を図4に示す装置を用いて鼻口部曝露法により30分間、ほぼ650μg/ L のチャンバー内エアロゾル濃度(BDP基準)で吸入投与した。その後、3、8および24時間後にアスカリス抗原10 mg/ mLを吸入感作装置により30秒間チャレンジし、チャレンジ24時間後に麻酔下に屠殺して生理食塩水8mLにて気管支肺洗浄液を取得した。気管支肺洗浄液は常法に従い、希釈、遠心塗末、染色後細胞を計数し、好酸球数割合を求めた。なお本実験系での必要性から、製剤投与群に加えて、製剤を投与しない、「非感作・非誘発群」、「感作・非誘発群」、「感作・誘発群」の3つの群を設けた(各群8匹)。
【0033】
結果は各群の気管支肺洗浄液中好酸球数を求めた上で、各製剤投与群と「感作・誘発群」の平均値の差を求め、「感作・非誘発群」と「感作・誘発群」の差を100%とし、浸潤好酸球抑制率として評価した(図5)。なお、「非感作・非誘発群」、「感作・非誘発群」、「感作・誘発群」それぞれの浸潤好酸球数は、4.88(±1.02)x104 個/ mL、52.2(±13.3.)x104 個 / mL 、170(±16.4)x104 個 / mLであった。
【0034】
「感作・誘発群」と製剤投与群の2群間の有意差検定(t-検定)より、(1)の本発明製剤が3、8、および24時間とも有意(p<0.001)に抑制していたのに対し、(2)対照製剤2および(3)対照製剤4は3、8時間までは有意(p<0.001)に抑制していたが、24時間では有意差がみられなかった。これらより(1)製剤の薬効持続における優位性が認められた。また(2)と(3)の製剤での結果は、ほぼ同様の傾向を示すことから、薬効持続に対する効果においては被覆率1重量%では充分でないと考えられた。
【図面の簡単な説明】
【図1】製造例1で製造したBDP球形微粒子の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図2】実施例1で用いた吸入効率評価装置を示す。
【図3】実施例3での感作プロトコールを示す。
【図4】実施例3で用いた吸入投与装置を示す。
【図5】実施例3の浸潤好酸球抑制率の結果を示す。

Claims (9)

  1. 球形に成型された薬物微粒子の表面が生分解性生体付着性高分子で被覆されており、かつ該生分解性生体付着性高分子と該薬物微粒子の重量比が2:98〜10:90である持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
  2. 生分解性生体付着性高分子がヒアルロン酸塩、コンドロイチン硫酸塩、ヘパリン、ヘパラン硫酸塩、ポリグルタミン酸、ムチン群から選ばれる1種あるいは2種以上である請求項1記載の持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
  3. 薬物が脂溶性薬物である請求項1記載の持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
  4. 脂溶性薬物が副腎皮質ホルモン類、性ホルモン類、活性型ビタミンD3類、プロスタグランジン類からなる群から選ばれた1種あるいは2種以上である請求項3記載の持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
  5. 球形に成型された薬物微粒子が噴霧乾燥法で製造される請求項1記載の持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
  6. 球形に成型された薬物微粒子の80重量%以上が0.5〜10μmの範囲の粒径である請求項1記載の持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
  7. 賦形剤、防腐剤あるいはその他の添加物をさらに含有する請求項1記載の持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
  8. 賦形剤が乳糖、ブドウ糖、果糖、マンニトール、蔗糖、麦芽糖およびデキストランから選ばれた1種あるいは2種以上である請求項7記載の持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
  9. 賦形剤の95重量%以上が30〜150μmの範囲の粒径である請求項7記載の持続性粉末状吸入用医薬品組成物。
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