JP3888721B2 - クローラ走行式自動溶接装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、吸着式クローラを備え、船殻ブロックなど大形外板の溶接を自動的に走行して上向き自動溶接が可能なクローラ走行式自動溶接装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえば大形の構造物を扱う造船ドッグ等において、船体外板を溶接する作業は、ほとんどが人手により行われている。特に船殻ブロックの底部外板を溶接する作業は、上向き溶接となり、長時間を要するため、自動化が要請されていた。
【0003】
また大形構造物の溶接ラインにおいて、一定の軌道上を走行する走行体に、多関節アームを有する溶接ロボットを配置した自動溶接装置が見られ、一定の範囲の被溶接物であれば、軌道を設定することにより容易に自動溶接することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、多様な形状を持った船体外板を溶接する場合、それぞれの船体ごとの各溶接範囲に軌道を設けることは容易ではなく、また船体ごとのプログラムの作成にも多大な費用と労力を必要とする。
【0005】
本発明は、吸着式クローラを有する作業走行装置に着目して、溶接の自動化を図ることを目的とするもので、請求項1記載の発明は、上記問題点を解決して、上向き溶接などの人手による作業に大きい労力を必要とし、不特定で広範な長大な被溶接物を自動的に上向き溶接できるクローラ走行式自動溶接装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の請求項1記載の発明は、走行体の両側にそれぞれ被溶接材に吸着可能で、かつ走行速度を制御可能な走行クローラを具備し、前記走行クローラにより被溶接物に反転姿勢で吸着しつつ走行して被溶接物の溶接線に対して上向き溶接可能なクローラ走行式自動溶接装置であって、走行体の中間部で前記左右の走行クローラ間に溶接用空間を形成し、前記溶接用空間に、溶接トーチを左右方向にシフト自在に保持するトーチ支持装置を設け、走行体の前部に溶接線を検出する前部センサと、走行体の後部に溶接線を検出する後部センサとを配置し、前記前部センサと後部センサとの検出信号に基づいて、走行体の進行方向に沿う走行体中心線に対する溶接線の傾斜角と、溶接トーチの前記走行体中心線からのシフト量を演算し、溶接トーチのシフト位置を制御するとともに、前記傾斜角とシフト量がそれぞれ0になるように、左右の走行クローラの走行速度を制御するコントローラを設けたものである。
【0007】
上記構成によれば、走行クローラにより走行体を被溶接材に吸着させつつ走行させるので、大きさの異なる長大な部材の上向き溶接を自動化することができ、作業員を3K作業から解放できる。またその走行制御を走行体の前部と後部に設けたセンサにより溶接線を検出し、これに基づいて左右の走行クローラの走行速度を制御することで、走行体を溶接線に沿わせて走行させることができる。またコントローラによる簡単な制御で溶接トーチを溶接線上方に沿って移動させ正確に溶接することができる。
【0008】
また請求項2記載の発明は、上記構成に加えて、コントローラを、まず左右の走行クローラを同一の基準速度で駆動して走行体の移動速度を溶接トーチの溶接速度と一致させ、左右の走行クローラを前記基準速度から等速度分相対して加算および減算し走行体の方向制御を行うように構成したものである。
【0009】
上記構成によれば、走行クローラの走行速度を溶接トーチの溶接速度と同一であることを基準として、この基準速度に対して左右の走行クローラを同量ずつ増減させることで、走行体の走行速度を変えることなく方向制御を行うことができ、走行体を溶接速度に合わせつつ容易に方向制御することができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
ここで、本発明に係るクローラ走行式自動溶接装置の実施の形態を図1〜図10に基づいて説明する。
【0011】
このクローラ走行式自動溶接装置は、図1〜図4に示すように、左右に走行クローラ2A,2Bを有する走行体1に、溶接トーチ3を搭載した溶接台車装置4と、この溶接台車装置4を制御するメインコントローラ5を備えた外部制御部6と、前記溶接トーチ3に溶接用電源を供給するとともに走行体1および外部制御部6に電源を供給する電源装置7と、前記溶接トーチ3に溶接ワイヤ8を給送するワイヤ給送装置9とを具備し、支援設備として図7に示すサポート台車10が配備されている。
【0012】
前記溶接台車装置4の走行クローラ2A,2Bは、リンクチェーン間に永久磁石が装着されるとともに駆動輪体および遊点輪体間に巻張され、走行体1を保持して被溶接材である逆向きの鋼製床面や垂直床面、ここでは船体外板41を走行可能に構成されている。また左右の走行クローラ2A,2Bは、それぞれ独立した走行用サーボモータ(図示せず)に連動連結されて走行駆動され、それぞれの駆動速度差により走行体1の方向転換を行うことができる。
【0013】
また走行体1に配置されて溶接トーチ3を保持するトーチ支持装置11は、走行体1に形成された溶接用空間1aの前部に配置されており、図5,図6に示すように、走行体1に立設された左右方向の支持壁12の後面に、上下一対の横行レール13を介して横行体14が左右方向にシフト自在に配設されている。そして、この横行体14の後面に、左右一対の昇降レール15を介して昇降体16が昇降自在に支持され、この昇降体16に支持アーム17を介して溶接トーチ3が保持されている。
【0014】
また溶接トーチ3を左右方向にシフトするトーチシフト装置18は、支持壁12の前面に左右方向に支持された横行用ねじ軸18aと、この横行用ねじ軸18aに嵌合された雌ねじ部材18bと、巻掛け伝動機構18cを介して横行用ねじ軸18aを回転駆動する横行用サーボモータ18dと、支持壁12の切欠き窓12aを介して雌ねじ部材18bと横行体14とを連結する連結部材18eとで構成されている。さらに溶接トーチ3を昇降するトーチ昇降装置19は、横行体14の後面に左右方向に支持された昇降用ねじ軸19aと、この昇降用ねじ軸19aに嵌合された雌ねじ部材19bと、巻掛け伝動機構19cを介して昇降用ねじ軸19aを回転駆動する昇降用サーボモータ19dと、昇降体16の切欠き窓16aを介して雌ねじ部材19bと横行体14とを連結する連結部材19eとで構成されている。
【0015】
走行体1の前部と後部には、左右方向に照射する赤色レーザ光により、溶接線ABを検知して、図8に示すように、走行体1の走行体中心線MNと溶接線ABとの距離La,Lbを計測する前部センサ21Aおよび後部センサ21Bが配設されている。また走行クローラ2A,2Bの前後位置には、落下防止用センサ22がそれぞれ設けられている。
【0016】
前記外部制御部6は、メインコントローラ5を操作するCRT23およびキーボード24と、前部および後部センサ21A,21Bをそれぞれ操作するセンサコントローラ25A,25Bと、リモートコントロールボックス26が接続された中継ボックス27が具備されている。
【0017】
前記電源装置7からの溶接電源ケーブル28は、+側がワイヤ給送装置9の溶接ワイヤ8に接続され、−側が被溶接材である船体外板41に接続されている。また、不活性ガスボンベ29からCO2ガスが供給されている。
【0018】
前記サポート台車10は、図7に示すように、走行自在な台車本体31に油圧シリンダ等からなる高さ調節装置32を介して反転受け台33が昇降自在に支持され、この反転受け台33は図示しない反転装置によりストッパ34,34の間で180°反転可能に構成されている。したがって、この反転受け台33に溶接台車装置4を正立姿勢で乗り移らせた後、反転受け台33を反転して溶接台車装置4を反転姿勢とし、高さ調節装置32により船体外板41と同一レベルに調整して、溶接台車装置を船底外板41に取り付けることができる。また逆の操作で船体外板41から取り出すことができる。
【0019】
次に溶接台車装置4の倣い走行制御を図8を参照して説明する。この倣い制御は、前部センサ21Aと後部センサ321Bから検出される走行体中心線MNとの距離La,Lbから溶接トーチ3のシフト量Uと、走行体中心線MNに対する溶接線ABの傾斜角θを求め、θ=0、U=0を制御目標とする(θ=0が優先)ものである。
【0020】
すなわち、O0 は溶接トーチ3の原点位置、Oaは前部センサ21Aの原点位置、Obは後部センサ21Bの原点位置、Haは前部センサ21Aと溶接トーチ3との距離、Hbは後部センサ21Bと溶接トーチ3との距離とすると、溶接トーチ3のシフト量Uは、
U=[(La+Lb)/(Ha+Hb)]×Hb−Lb…▲1▼
また、走行体中心線MNに対する溶接線ABの傾斜角θは、
tan θ=(La+Lb)/(Ha+Hb)
θ=tan-1 (La+Lb)/(Ha+Hb)…▲2▼により求められる。
さらに、VLは左走行クローラ2Aの走行速度、VRは右走行クローラ2Bの走行速度、ΔVは左右の走行クローラ2A,2Bの速度差とすると、
ΔV=K1|V|[θ−K2×U×(V/|V|)]…▲3▼−1
VL=V−ΔV,VR=V+ΔV…▲3▼−2,3
ここで、K1,K2は倣いゲイン、θは前部で走行体中心線MNより左側が+である。
【0021】
前記倣いゲインK1,K2は、たとえばθ=10°のずれでΔV=20%の速度差を発生させるとすると、K1=0.2/(10π/180)=1.146となり、U=50mmのずれでΔθ(≡K2×U)=10°の進行方向修正を発生させるとすると、K2=(10×π/180)/50=0.00349となる。
【0022】
またθ=20°のずれでΔV=20%の速度差を発生させるとすると、K1=0.2/(20π/180)=0.573となり、U=50mmのずれでΔθ(≡K2×U)=20°の進行方向修正を発生させるとすると、K2=(20×π/180)/50=0.00698となる。
【0023】
上記構成において、溶接台車装置4をサポート台車10の反転受け台33から船体外板41の底面に反転姿勢で乗り移らせた後、溶接台車装置4が自動運転される。この時の制御動作を図9,図10を参照して説明する。
1.メインコントローラ5の入出力装置であるキーボード24により溶接速度Vが設定される(Step1)。
2.自動溶接中には、前部センサ21Aによる溶接線ABの検出データと、後部センサ21Bの溶接線ABの検出データから,走行体中心線MNからのずれ量La,Lbを求め、溶接トーチ3のシフト位置Uと、走行体1の傾斜角θを算出する(Step11)。
3.走行体1の傾斜角θから倣い走行のための左右の走行クローラ2A,2Bの速度ΔVを算出し(Step12)、さらに溶接トーチ3のシフト位置U(Step13)を算出する。
4.トーチシフト装置18の横行用モータ18dと、左右の走行クローラ2A,2Bの駆動モータに指令値Uおよび±ΔVを指令する(Step14)。
【0024】
上記実施の形態によれば、サポート台車10を使用して溶接台車装置4を船体外板41の底面に反転姿勢で乗り移らせ、セッティングして開始操作をするだけで、溶接台車装置4が前部、後部のセンサ21A,21Bの検出信号に基づいて溶接線ABに沿って溶接速度に合わせて自動走行させ、トーチシフト装置18およびトーチ昇降装置19により溶接トーチ3の位置を制御して上向き溶接を自動的に行うことができる。したがって、労働者を3K労働から解放することができ、また船体外板41ごとのプログラムも不要で、また多種類の船体外板41に適用することができる。
【0025】
また、図11に示すように、上記トーチ支持装置11に代えて、溶接台車装置4に多関節アーム51を有する溶接ロボット52を配置することもできる。
【0026】
【発明の効果】
以上に述べたごとく、請求項1記載の発明によれば、走行クローラにより走行体を被溶接材に吸着させつつ走行させるので、大きさの異なる長大な部材の上向き溶接を自動化することができ、作業員を3K作業から解放できる。またその走行制御を走行体の前部と後部に設けたセンサにより溶接線を検出し、これに基づいて左右の走行クローラの走行速度を制御することで、走行体を溶接線に沿わせて走行させることができる。またコントローラによる簡単な制御で溶接トーチを溶接線上方に沿って移動させ正確に溶接することができる。
【0027】
また請求項2記載の発明によれば、走行クローラの走行速度を溶接トーチの溶接速度と同一であることを基準として、この基準速度に対して左右の走行クローラを同量ずつ増減させることで、走行体の走行速度を変えることなく方向制御することができ、走行体を溶接速度に合わせつつ容易に自動溶接することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るクローラ走行式自動溶接装置の実施の形態を示す全体構成図である。
【図2】同溶接台車装置の平面図である。
【図3】同溶接台車装置の側面図である。
【図4】同溶接台車装置の正面図である。
【図5】同溶接台車装置のトーチ支持装置を示す側面図である。
【図6】同溶接台車装置のトーチ支持装置を示す平面図である。
【図7】同溶接台車装置とサポート台車の使用状態を示す側面図である。
【図8】同クローラ走行式自動溶接装置の走行制御を示す説明図である。
【図9】同クローラ走行式自動溶接装置の走行制御装置を示す構成図である。
【図10】同クローラ走行式自動溶接装置の走行制御を示す流れ図である。
【図11】クローラ走行式自動溶接装置の他の実施の形態を示す側面図である。
【符号の説明】
1 走行体
2A,2B 走行クローラ
3 溶接トーチ
4 溶接台車装置
5 メインコントローラ
6 外部制御部
7 電源装置
8 溶接ワイヤ
9 ワイヤ給送装置
10 サポート台車
11 トーチ支持装置
18 トーチシフト装置
19 トーチ昇降装置
21A 前部センサ
21B 後部センサ
41 船体外板(被溶接材)
Claims (2)
- 走行体の両側にそれぞれ被溶接材に吸着可能で、かつ走行速度を制御可能な走行クローラを具備し、前記走行クローラにより被溶接物に反転姿勢で吸着しつつ走行して被溶接物の溶接線に対して上向き溶接可能なクローラ走行式自動溶接装置であって、
走行体の中間部で前記左右の走行クローラ間に溶接用空間を形成し、
前記溶接用空間に、溶接トーチを左右方向にシフト自在に保持するトーチ支持装置を設け、
走行体の前部に溶接線を検出する前部センサと、走行体の後部に溶接線を検出する後部センサとを配置し、
前記前部センサと後部センサとの検出信号に基づいて、走行体の進行方向に沿う走行体中心線に対する溶接線の傾斜角と、溶接トーチの前記走行体中心線からのシフト量を演算し、溶接トーチのシフト位置を制御するとともに、前記傾斜角とシフト量がそれぞれ0になるように、左右の走行クローラの走行速度を制御するコントローラを設けた
ことを特徴とするクローラ走行式自動溶接装置。 - 前記コントローラは、まず左右の走行クローラを同一の基準速度で駆動して走行体の移動速度を溶接トーチの溶接速度と一致させ、
左右の走行クローラを前記基準速度から等速度分相対して加算および減算し走行体の方向制御を行うように構成した
ことを特徴とする請求項1記載のクローラ走行式自動溶接装置。
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JP03722297A JP3888721B2 (ja) | 1997-02-21 | 1997-02-21 | クローラ走行式自動溶接装置 |
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1997
- 1997-02-21 JP JP03722297A patent/JP3888721B2/ja not_active Expired - Fee Related
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