JP3885096B2 - アレルゲン分解繊維素材 - Google Patents

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Description

本発明は、金属フタロシアニンの誘導体を有効主成分としてアレルゲンを分解する薬剤を、担持させた繊維素材、及びそれから形づくられた繊維製品に関するものである。
アレルギー症状は、皮膚や、呼吸器、消化器からアレルゲンがヒトの身体に侵入すると、ヒトが生来的に持つ抗原抗体反応に誘発されて体内にヒスタミンやロイコトリエンなどの化学伝達物質が遊離したり、活性酸素が生ずるため、二次症状として発熱、発疹、そう痒、嘔吐、鼻炎などを発症する。このようなアレルギー症状は、アレルゲンの種類とヒトの各個体が持つ体質との組み合わせに依存して発症する。
アレルゲンは、例えばダニ、その死骸や排泄物、スギ・ブタクサ・カモガヤ等の花粉、細菌、かび、卵、牛乳、魚貝類、大豆、昆虫、獣毛、獣やヒトのフケなどの成分として含まれ、多くは蛋白質である。アレルギー症状に効果を示す投薬剤は未だない現状において、アレルギー症状を発症させないためには、アレルギー体質を持つヒトからアレルゲンを遠ざけることが肝要である。しかし、アレルゲンは、自然界に存在するものも数多く、ヒトが生活するに欠かせないものに付随していることもあるため、生活圏から全面的に取り除くことが極めて困難であり、実質上不可能である。
発生したアレルゲンを除去する手段として、特許文献1には、抗アレルゲンフィルターが示されている。フィルターに茶の抽出成分である茶ポリフェノールをアレルギー不活性剤として添着している。特許文献2には、アレルゲンと反応して不活性化させるジルコニウム塩を含有させた綿、麻、羊毛、絹、レーヨン、ナイロン、ポリエステル、アクリル等の抗アレルゲン繊維、および寝具、マスク、カーテン等の繊維製品が示されている。
また、繊維製品のダニを防除する手段として防ダニ剤処理が知られている。防ダニ剤は、少量では忌避効果しか期待できず、ダニを殺虫するには多量用いる必要があり、ヒトへの安全性上その使用量に制限がある。しかも防ダニ剤は、ダニの死骸や排泄物等のダニ由来のアレルゲンによって発症するアレルギー症状に対して、何ら抑制効果が認められない。
水鳥の羽毛製品は、保温性と保湿性と通気性とに優れているので、寝具や衣類の素材として汎用されている。羽毛製品は、動物性蛋白質である羽毛がダニの餌であるうえ、ヒトの発汗等による水分を適度に吸収し、ヒトの体温で適度に暖められていて、ダニが増殖する環境となっているので、ダニ由来のアレルゲン量が著しく増大し易い。防ダニ剤で処理されておらず、安全で、ダニ由来のアレルゲンを吸着する効果を有する抗アレルゲン羽毛は知られていない。
一方、特許文献3、特許文献4には、金属フタロシアニンを有効成分とする消臭剤が開示されている。特許文献4には金属フタロシアニンの誘導体が酸化還元触媒として作用して消臭剤としての効果を示す旨が記載されている。
特開2000−5531号公報 特開2001−214367号公報 特開昭56−63355号公報 特開昭61−258806号公報
本発明の発明者は、金属フタロシアニンの酵素様触媒作用を永年に渡って研究し、その吸着性や酸化還元触媒機能によって蛋白質を変性させることを見出した。アレルゲンの発生を全面的に取り除くことは極めて困難であることに鑑みて、本発明は、金属フタロシアニンの持つそのような特性を利用したアレルゲンの分解剤を含むアレルゲン分解繊維素材、及びアレルゲン分解機能を有する繊維製品を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載されたアレルゲン分解繊維素材は、下記式(I)
Figure 0003885096
(式(I)中、MはFe、Co、Mn、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Osから選択される金属)で示される金属フタロシアニンの誘導体を有効成分に含む、ダニ由来のアレルゲン分解剤が担持されている天然繊維、合成繊維、半合成繊維または再生繊維を含む綿、糸、織布、不織布、編物、または紙からなることを特徴とする。
請求項2に記載のアレルゲン分解繊維素材は、請求項1に記載された構成を具備し、前記金属フタロシアニンの誘導体が、下記式(II)
Figure 0003885096
(式(II)中、MはFe、Co、CuおよびNiから選択される金属、R、R、RおよびRは同一または異なるCOOH基またはSOH基であり、n1、n2、n3およびn4は0〜4で1≦n1+n2+n3+n4≦8を満たす正数)で示される化合物、またはその塩であることを特徴とする。
アレルゲン分解剤の有効成分である金属フタロシアニンの誘導体は、その中心金属に、アレルゲンの蛋白質を配位し、空気中の酸素酸化によってペプチド結合を切るので、低分子化させたり、分子構造を変化させたりする。金属フタロシアニンの誘導体は、アレルゲンを単に吸着するだけではなく、分解触媒として作用するので、その作用が永続的である。アレルゲンはヒトの身体に侵入し、その分子構造によってヒトが持つ抗体に特異的に結合しアレルギ−症状を示すが、アレルゲンが低分子化したり、アレルゲンの分子構造が変化したりしていると、それまで反応していた抗体に結合することがない。
生活環境内にあるアレルゲンは、この分解剤によって多くが分解され、僅かな残余がアレルギー体質を持つヒト身体内に入ってもアレルギー症状を発症する閾値まで濃度が到達しない。そのため、アレルゲンの分解剤が生活環境内に置かれていれば、アレルギー体質を持つヒトであっても発症することなく日常生活を送ることができる。
以下に、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
アレルゲンの分解剤は、前記金属フタロシアニンの誘導体が、金属フタロシアニンジカルボン酸、金属フタロシアニンテトラカルボン酸、金属フタロシアニンオクタカルボン酸、金属フタロシアニンジスルホン酸、金属フタロシアニンテトラスルホン酸、金属フタロシアニンオクタスルホン酸、またはこれら酸の塩であると好ましい。
金属フタロシアニンジカルボン酸の構造式は、下記式(III)
Figure 0003885096
金属フタロシアニンテトラカルボン酸の構造式は、下記式(IV)
Figure 0003885096
金属フタロシアニンオクタカルボン酸の構造式は、下記式(V)
Figure 0003885096
金属フタロシアニンジスルホン酸の構造式は、下記式(VI)
Figure 0003885096
金属フタロシアニンテトラスルホン酸の構造式は、下記式(VII)
Figure 0003885096
金属フタロシアニンオクタスルホン酸の構造式は、下記式(VIII)
Figure 0003885096
で例示される。
アレルゲンの分解剤、およびアレルゲンの分解方法について説明する。
アレルゲンの分解剤は、前記式(I)で示される金属フタロシアニンの誘導体を有効成分に含み、Mは前記した金属から選択されるものであるが、なかでもFe、CoまたはCuが好ましい。最も好ましいものは、鉄フタロシアニンテトラカルボン酸である。
化学式(II)の金属フタロシアニン化合物またはその塩は、市販のものであってもよく、公知の方法により製造したものであってもよい。例えば、「フタロシアニン −化学と機能−」(白井汪芳、小林長夫著、株式会社アイピーシー出版、平成9年2月28日発行)に記載の方法により、製造することができる。例えば、鉄フタロシアニンテトラカルボン酸は、以下のようにして得ることができる。ニトロベンゼンにトリメリット酸無水物と、尿素と、モリブデン酸アンモニウムと、塩化第二鉄無水物とを加えて撹拌し、加熱還流させて沈殿物を得る。得られた沈殿物にアルカリを加えて加水分解し、次いで酸を加えて酸性にすることで得られる。コバルトフタロシアニンオクタカルボン酸は、上記鉄フタロシアニンテトラカルボン酸の原料であるトリメリット酸無水物に代えてピロメリット酸無水物、塩化第二鉄無水物に代えて塩化第二コバルトを用いて同様の方法で製造可能である。
金属フタロシアニンの誘導体は、有機物、無機物の担体に担持または混合してアレルゲンの分解剤とすることが好ましい。有機物の担体としては繊維が特に好ましい。繊維は、嵩量があり大きな表面積を持つため、金属フタロシアニン或いはその誘導体が効率よく空気中のアレルゲンに接触する。
繊維素材は、例えばセルロース系繊維(木綿、麻、レーヨンなど)、蛋白質系繊維(羊毛、絹など)、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアクリル系繊維、ポバール系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリウレタン系繊維などあらゆる天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維が使用される。なかでもセルロース系繊維、特に木綿は、吸水性が良いため、吸水した培地として酵素様機能を発現するための好条件をそなえている。
前記金属フタロシアニンの誘導体を有効成分に含むアレルゲンの分解剤を担持した繊維素材を生活環境内に置き、蛋白質由来のアレルゲンを分解する。
アレルゲンの分解剤を担持した繊維は、衣類や布団としてアレルギー体質を持つヒトの身体をアレルゲンから隔離しつつアレルゲンを分解し、カーテンとして屋外から進入するアレルゲンを遮断しつつ分解し、壁紙やカーペットとして浮遊或いは落ちているアレルゲンを分解し、エアーフィルタとして通過するアレルゲンを分解する。
抗アレルゲン羽毛は、前記の金属フタロシアニンの誘導体が羽毛に担持されている。これに用いられる前記式(II)で示される金属フタロシアニンの誘導体は、式中、R、R、RおよびRが、SOH基であり、n1、n2、n3およびn4が、1であることが好ましい。同じく式中、MがCoまたはFeであることが好ましい。
抗アレルゲン羽毛は、前記金属フタロシアニンの誘導体が前記式(II)で示される化合物のナトリウム塩または銅(II)塩であると好ましい。
抗アレルゲン羽毛は、前記金属フタロシアニンの誘導体の担持量が、前記羽毛の重量に対して、0.1質量%以上10質量%以下であると好ましい。
この抗アレルゲン羽毛、それを含んでいる組成物や羽毛製品は、防ダニ剤で処理されておらず、かつ、ダニ自体のみならず、ダニの死骸や排泄物等のダニ由来のアレルゲンを吸着する効果を有する。従って、ダニ由来のアレルゲンを除去することが可能である。
以下、実施例1によりアレルゲンの分解剤および分解方法を更に具体的に説明する。
(実施例1)
アレルゲン分解剤の有効性を確かめるため、金属フタロシアニンの誘導体として鉄フタロシアニンテトラカルボン酸につき、試験管実験による薬効の確認と動物実験、その他の実験による安全性の確認をおこなった。
(薬効の確認)
アレルゲンとしてダニ抗原DerfII(アサヒビール株式会社製)を選び、このダニアレルゲンを鉄フタロシアニンテトラカルボン酸と混合した場合の電気泳動と、アレルゲンのみの電気泳動を比較した。
1.溶液の調製
各実験調製例の所定濃度(w/v%)の鉄フタロシアニンテトラカルボン酸カリウム(Fe−Pc−COOK)水溶液およびDerfII溶液と、IPG(Immobilized pH Gradient: 固定化pH勾配)バッファーを含んだ膨潤用ストック溶液(Urea 8mol/L、CHAPS 2w/v%、IPG Buffer 2%、Bromophenol blue 適量、蒸留水)との混合溶液を調製し、表4の実験調製例1〜4の試験溶液とした。
一方、DerfII溶液とIPGバッファーを含んだ膨潤用ストック溶液との混合溶液を調製し、表4の比較調製例1〜4の試験溶液とした。
2.一次元電気泳動
一次元電気泳動用ゲルのフィルム(以下Stripという)を2種類、Strip pH4〜7およびStrip pH3〜10.5を用意し、各試験溶液に浸漬して乾燥防止のシリコンオイルを適量添加し、10時間静置した。試験溶液から各Stripを取り出して水洗し、一次元電気泳動装置にセットし、乾燥防止のシリコンオイルを添加し、一次元電気泳動を16時間行った。
Strip pH4〜7の一次元電気泳動プログラムは表1のとおりである。
Figure 0003885096
Strip pH3〜10.5の一次元電気泳動プログラムは表2のとおりである。
Figure 0003885096
3.二次元電気泳動(1次元電気泳動のStripが異なっても操作は同様)
一次元電気泳動の終了したStripを泳動装置より取り出し水洗した。SDS(sodium dodecyl sulfate:ドデシル硫酸ナトリウム)平衡化用バッファー(1.5mol/L pH8.8 Tris−Cl 50mmol/L、Urea 6mol/L、87v/v% Glycerol 30v/v%、SDS 2v/v%、Bromophenol blue 適量、蒸留水)にDTT(dithiothreitol:ジチオトレイトール)100mg/10mLを加えた溶液10mLにStripを浸漬し10分間浸透させた。Strip を取り出し、SDS平衡化用バッファーにiodoacetamide(250mg/10mL)を加えた溶液10mLに浸漬し10分間浸透させた。Strip を取り出して水洗しふき取った後、二次元電気泳動ゲル、ろ紙、電極ゲル、分子量マーカーをセットした二次元電気泳動装置に取り付け、1時間40分電気泳動を行った。
二次元電気泳動プログラムは表3のとおりである。
Figure 0003885096
4.染色、撮影
資料の作成には、Amersham Biosciences製のSilver Staining Kit, Proteinを使用した。
固定用溶液(エタノール100mL, 酢酸25mL, 蒸留水で250mLにメスアップ)に二次元電気泳動ゲルを浸漬し30分間浸透させた。増感用溶液(エタノール75mL、25w/v%グルタルアルデヒド1.25mL、5w/v%チオ硫酸ナトリウム10mL、酢酸ナトリウム17g、蒸留水で250mLにメスアップ)に二次元電気泳動ゲルを浸漬し30分間浸透させた。蒸留水250mLに二次元電気泳動ゲルを浸漬し5分間浸透させる洗浄を3回繰返した。銀反応用溶液(2.5w/v%酢酸銀溶液25mL, 37w/v%ホルムアルデヒド0.1mL, 蒸留水で250mLにメスアップ)に二次元電気泳動ゲルを浸漬し20分間浸透させた。蒸留水250mLに二次元電気泳動ゲルを浸漬し30分間浸透させる洗浄を2回繰返した。現像用溶液(炭酸ナトリウム6.25g, 37w/v%ホルムアルデヒド0.05mL, 蒸留水で250mLにメスアップ)に二次元電気泳動ゲルを浸漬し2〜5分間浸透させた。停止用溶液(EDTA−Na・2HO 3.65g, 蒸留水で250mLにメスアップ)に二次元電気泳動ゲルを浸漬し10分間浸透させた。蒸留水250mLに二次元電気泳動ゲルを浸漬し5分間浸透させる洗浄を3回繰返した。
このようにして銀染色した二次元電気泳動ゲルを、ATTO社製Printgraph−1電気泳動撮影装置にて撮影した。
各実験調製例の鉄フタロシアニンテトラカルボン酸カリウム水溶液の濃度とともに、一次元電気泳動のStrip pH、二次元電気泳動のゲル勾配(ゲル中に含まれるポリアクリルアミドの濃度の勾配)、撮影した二次元電気泳動ゲルの写真が掲載されている図の番号を表4に示してある。
Figure 0003885096
図1、図2、図3、図4の各写真で中央のスポット列は分子量マーカーで、分子量の目安となる。図1、図2、図3の写真における分子量マーカーのスポットは、下から順に14.4、20.1、30、45、66、97KDa(Kiro Dalton)の分子量である。図4の写真における分子量マーカーのスポットは、下から順に3.5、6.5、14.3、20.1、30、45KDaの分子量である。各写真の中央のスポット列で分けられるA、Bの各横軸は一次元電気泳動のStrip pHである。
各写真のAにおけるスポットは鉄フタロシアニンテトラカルボン酸カリウムおよびダニアレルゲンを混合したもの、Bにおけるスポットはダニアレルゲンだけである。鉄フタロシアニンテトラカルボン酸カリウムによりダニアレルゲンの変化が無ければ、AとBにおけるスポットは同様となるが、写真からAではpH5〜6付近のスポットが消失しており鉄フタロシアニンテトラカルボン酸カリウムによりダニアレルゲンが変化していることが分かる。
(安全性の確認)
アレルゲンの分解剤が、安全に使用できることを実証するために、鉄フタロシアニンテトラカルボン酸について以下の実験を行った。
1.ウサギに対する皮膚一次刺激性試験
鉄フタロシアニンテトラカルボン酸を1重量%含有するニット生地を、アレルゲン分解の機能性繊維の試料とした。
投与前日に健康で無傷な皮膚を有する17週齢日本白色種雄性ウサギ(Kb1:JW(SPF))6例を選択し、その背部を除毛し、4ヵ所の投与区分(1区分:2.5×2.5cm)を設定した。そのうち2ヵ所は正常皮膚、他の2ヵ所はシェーバーで軽く剃毛してからセロファンテープでストリッピングして損傷皮膚とした。正常皮膚と損傷皮膚の各1ヵ所に注射用水で湿らせた機能性繊維を貼付し、ガーゼを被せてからテーピングテープで固定した。他方は無処置部位とし、ガーゼとテーピングテープの貼付を同様に行った。さらに布製カバー及びチューブ型ネット包帯を用いて被覆固定した。24時間後に機能性繊維、ガーゼ及びテーピングテープを除去し、投与部位を微温湯にて清拭した。
投与前、被験物質除去後1、24、48及び72時間に肉眼的判定を行った。判定はDraizeの判定基準(Appendix3)に準拠して、紅斑(痂皮形成)及び浮種についてそれぞれ評価した。正常皮膚と損傷皮膚に分けて、各観察時点に紅斑(痂皮形成)、浮種及びそれらの合計評点(TS)について平均値と標準偏差を算出した。また、ISO10993−10の評価基準(Appendix3)に準じて、正常皮膚と損傷皮膚について各々24、48及び72時間の評価により一次刺激指数(紅斑(痂皮形成)と浮種の合計評点の平均値、PII)を算出し、得られた一次刺激指数から被験物質の刺激性の強度を判定した。
その結果、機能性繊維投与部位では、正常皮膚および損傷皮膚ともに全観察期間を通じて刺激性反応は全く認められなかった。機能性繊維のPIIは正常皮膚及び損傷皮膚ともに0.0であり、刺激性への強度は「Negligible」と判定され、機能性繊維の皮膚に対する安全性に問題はないと考えられる。
2.ウサギに対する皮膚累積刺激性試験
前記同一のアレルゲン分解の機能性繊維を試料とし、同様にウサギの損傷皮膚とした。正常皮膚と損傷皮膚の各1ヵ所に注射用水で湿らせた機能性繊維を貼付し、ガーゼを被せてからテーピングテープで固定した。他の各1ヵ所は無処置部位とし、ガーゼとテーピングテープの貼付を同様に行った。さらに布製カバー及びチューブ型ネット包帯を用いて被覆固定した。23時間後に機能性繊維、ガーゼ及びテーピングテープを除去し、投与部位を微温湯にて清拭した。投与期間は21日間とし、毎日の除去後1時間に刺激性を肉眼的に評価した。判定はDraizeの判定基準に準拠して、紅斑(痂皮形成)及び浮種についてそれぞれ評価した。正常皮膚と損傷皮膚に分けて、各観察時点ごとに紅斑(痂皮形成)、浮種及びそれらの合計評点(TS)について平均値と標準偏差を算出した。投与期間終了後に動物をペントバルビタールナトリウム麻酔下で放血致死させ、各投与部位皮膚を10%中性緩衝ホルマリン液で固定後、HE染色を施し病理組織学的検査を行った。
その結果、機能性繊維投与部位では、正常皮膚および損傷皮膚ともに全観察期間を通じて刺激性反応は全く認められなかった。病理組織学的検査においても変化はみられなかった。以上の結果より、機能性繊維の皮膚に対する安全性に問題はないと考えられる。
3.ウサギに対する眼粘膜刺激性試験
10週齢の日本白色種雄性ウサギ各3匹からなる非洗浄群及び洗浄群の2群を設定した。ウサギは7日間の予備飼育の後、体重推移及び一般状態に異常のないことを確認した。また、投与前日に両眼について肉眼的に異常のないこと、フルオレセイン染色(フルオル試験紙、ロット番号3990849、ワイス・アイアースト ラボラトリーズ、アメリカ)を施し、スリットランプ(SL−5型、興和(株))を用いて角膜に損傷のないことを確認して試験に供した。
各ウサギの右眼結膜嚢内に被験物質である鉄フタロシアニンテトラカルボン酸の粉末であって300μmのメッシュを1回通したもの100mgを入れ、約1秒間上下眼瞼を穏やかに合わせて保持した。洗浄群で投与の30秒後に微温湯230〜330mLを用いて結膜嚢内を洗浄し、被験物質を除去した。左眼は非洗浄群、洗浄群とも無処置とした。投与後1,24,48及び72時間に角膜、虹彩及び結膜を無処置対照眼と比較しながら観察した。なお、非洗浄群では投与後72時間においても刺激性反応が認められたため、21日目まで観察期間を延長した。認められた所見はDraize(Appendix3)の評価基準に従って判定し、Kay and Calandra(Appendix4)の分類方法に従い刺激性を評価した。
非洗浄群では、全例に明らかな刺激性反応が発現し、角膜の混濁と表面粗造化、虹彩のうっ血、結膜の発赤、浮種、分泌物等が認められた。その他、被験物質による角膜と虹彩の着色(緑色)が認められた。これらの反応は投与後24時間に最も強く発現した。その後は徐々に回復し、角膜と虹彩の反応が投与後72時間までに、結膜の反応が10日目までに消失した。なお、虹彩の着色のみは投与後21日目まで継続して認められた。眼粘膜刺激性の評価はModerately irritatingであった。
洗浄群では、投与後1時間に全例の結膜に軽い発赤が認められたが、いずれも投与後24時間には消失した。角膜と虹彩には変化が認められなかった。眼粘膜刺激性の評価はPractically nonirritaingであった。鉄フタロシアニンテトラカルボン酸はウサギの眼粘膜に対してModerately irritating(M)の刺激性を有するが、生じた刺激性反応は回復性があり、洗浄によりPractically nonirritaing(P)まで軽減されることが確認された。
4.ラットに対する抽出液の静脈投与
塩化ナトリウム844mg、塩化カリウム1200mg、塩化カルシウム146mg、塩化マグネシウム52mg、リン酸二カリウム342mg、精製水1000mLで調製した生理食塩液に、被験物質である機能性繊維を0.2g/lmLの割合で浸し、オートクレーブ内で121±2℃で1時間抽出した後、20〜30℃に冷却し室温で保存し24時間以内に使用した。
機能性繊維の生理食塩液抽出物の20mL/kg(抽出に用いた機能性繊維換算で4g/kg)を6週齢のCrj:CD(SD)IGS(SPF)ラット雌雄26匹に28日間反復静脈内投与した時の毒性を検討した。対照群には生理食塩液を投与した。その結果、死亡は認められなかった。
一般状態、体重推移、摂餌量推移、病理解剖学的検査及び病理組織学的検査では、機能性繊維生理食塩液抽出物投与の影響を示唆する変化は認められなかった。尿検査、血液学的検査、血液化学的検査及び器官重量では、対照群と比較し機能性繊維生理食塩液抽出物投与群に有意差を示した項目が散見されたが、バックグラウンドデータの範囲内の変動であることやその差を示唆する他の検査項目の変化を伴わないことなどから、いずれも毒性とは無関係な偶発的変化と考えられる。
以上のことから、機能性繊維生理食塩液抽出物は極めて毒性が低いと考えられ、今回の試験条件下における毒性学的な無毒性量は雌雄とも20mL/kg(抽出に用いた機能性繊維換算で4g/kg)を超えるものと推察された。
5.ラットに対する抽出液の単回経口投与毒性試験
5週齢のCrj:CD(SD)IGS(SPF)ラット雌雄各26匹を1週間予備検疫飼育し、異常は認められなかったことから全数を試験に供した。予備飼育前に測定した体重を基準として層物連続無作為化法により各群に割り付けた。群に割り付けられなかった余剰動物は群分けした。投与時の週齢は雌雄とも6週齢、体重は雄が178〜197g、雌が122〜142gであった。
塩化ナトリウム844mg、塩化カリウム1200mg、塩化カルシウム146mg、塩化マグネシウム52mg、リン酸二カリウム342mg、精製水1000mLで調製した人工唾液に、被験物質である機能性繊維を0.2g/lmLの割合で浸し、オートクレーブ内で121±2℃で1時間抽出した。後20〜30℃に冷却し室温で保存し24時間以内に投与した。
投与量は投与直前の体重を基準にして体重1kgにつき抽出液を50mLとした。抽出液50mLは抽出した繊維に換算すると10gに相当する。投与回数は1回とした。投与前日の夕方より18時間以上絶食させた後、9:00〜13:30の間にディスポーザブルシリンジ及び経口ゾンデを用いて強制経口投与した。観察期間は投与後14日間とした。
投与前及び投与後5、15、30分、1、2、4時間まで継続的に観察した。投与翌日からは毎日1回観察した。投与前及び投与後1、3、7、10、14日の9:00〜12:00に体重測定した。観察期間終了時に、全例の頭部及び胸腹部の器官・組織を観察し異常の有無を確認した。
その結果、人工唾液抽出物投与群及び対照群の雌雄に死亡はみられなかった。投与後の一般状態観察では、人工唾液抽出物投与群及び対照群の雌雄には異常は認められなかった。人工唾液抽出物投与群の雌雄とも順調に体重増加し、対照群とほぼ同様の推移を示した。人工唾液抽出物投与群及び対照群の雌雄に病理解剖学的異常は認められなかった。
以上のことから、致死量は、機能性繊維に換算して10g/kg以上と推察された。
6.ラットに対する原体溶解液の単回経口投与毒性試験
5週齢のCrj:CD(SD)IGS(SPF)ラット雌雄各26匹を1週間検疫飼育し、異常が認められなかったことから全数を試験に供した。検疫飼育の直前に測定した体重を基準として層物連続無作為化法により各群に割り付けた。群に割り付けられなかった余剰動物は群分け実施日に試験から除外し、安楽死させ処分した。投与時の週齢は雌雄とも6週齢、体重は雄が172〜186g、雌が130〜151gであった。
投与直前に被験物質である鉄フタロシアニンテトラカルボン酸を必要量秤量し、1規定の水酸化ナトリウムでpHを10.2に調製した精製水に溶解させた。溶解後に1規定の塩酸を用いてpHを7.11に調製した後、鉄フタロシアニンテトラカルボン酸の最終濃度が100mg/mLになるように精製水でメスアップして投与液を調製した。医薬品毒性試験ガイドラインに準拠し、技術的に投与可能な最大用量として経口投与の場合の上限である2000mg/kgを被験物質の投与用量に設定した。その他、対照物質(日本薬局方精製水)を投与する対照群を設定し、試験群を計2群とした。各群には雌雄各10匹を割り付けた。
投与液量は20mL/kgとし、投与日における投与直前の体重を基準に個別に算出した。投与回数は1回とした。投与直前の夕方より18時間以上断食させた後、ディスポーザブルシリンジ(テルモ(株))及び経口ゾンデ(フチガミ器械店、ディスポーザブル経口ゾンデ)を用いて強制経口投与し、14日間観察した。一般状態及び生死の観察は、投与前及び投与後5、15、30分、1、2、4時間まで継続的に観察した。投与翌日からは毎日1回観察した。体重測定は、投与前及び投与後1、3、7、10、14日の9:00〜12:00に測定した。観察期間終了時に、全例の頭部及び胸腹部の器官・組織を観察し異常の有無を確認した。
その結果、被験物質投与群及び対照群の雌雄に死亡はみられなかった。投与後の一般状態観察では、被験物質投与群の雌雄全例に投与日の投与後2時間以降で液状緑色便がみられ、投与後1〜3日には緑色便が認められた。被験物質は濃緑色粉体で、便の緑色はこの固有色を反映したものである。対照群の雌雄には異常は認められなかった。被験物質投与群の雌雄とも順調に体重増加し、対照群とほぼ同様の推移を示した。また液状便は被験物質の大量投与による一過性の下痢症状と考えられ、いずれも毒性を示唆する所見とは考えられない。
観察期間中の死亡率から計数処理して概略の致死量を求めたところ鉄フタロシアニンテトラカルボン酸の本試験条件下における概略の最小致死量は2000mg/kg以上と推察された。
7.モルモットに対する皮膚感作性試験
5週齢の雄性Crj;Hartley系モルモットを媒体対照群、被験物質感作群に分け、Maximization法により機能性繊維の皮膚感作性について試験した。被験物質として細切した機能性繊維に10倍量のメタノールを加えて室温にて抽出した後、メタノールを留去し、機能性繊維151.88gから5.482gの抽出物が得られた。
媒体対照群においては、媒体対照であるジメチルスルホキシドを10%の濃度で皮内感作し、ジメチルスルホキシドで経皮感作した後、10%、1%及び0.1%機能性繊維メタノール抽出物並びにジメチルスルホキシドで惹起した。その結果、いずれの惹起部位においても皮膚反応はみられなかった。
被験物質感作群においては、機能性繊維メタノール抽出物を10%の濃度で感作した後、10%、1%及び0.1%機能性繊維メタノール抽出物並びに媒体対照で惹起した。その結果、10%メタノール抽出物惹起部位に皮膚反応が散見され、同惹起部位における平均評価点及び陽性率は惹起後24時間で0.7及び10%、48時間で1.4及び40%であった。1%機能性繊維メタノール抽出物惹起部位においては評価点1の紅斑が散見されたが、陽性例はみられなかった。0.1%機能性繊維メタノール抽出物及び媒体対照惹起部位には皮膚反応はみられなかった。惹起後48時間における陽性率より、機能性繊維メタノール抽出物は10%の濃度での惹起により中等度(Grade III)の皮膚感作性をもつと評価された。
陽性対照群においては、2,4−ジニトロクロロベンゼン(DNCB)を0.1%の濃度で感作した後、0.1%DNCB及びアセトンで惹起した。その結果、全例のDNCB惹起部位に皮膚反応がみられ、惹起後48時間における陽性率は100%で、DNCBは激しい(Grade V)皮膚感作性をもつと評価された。
各感作物質をアジュバントを併用して皮内投与し、7日後に各感作物質を48時間閉塞貼付して経皮感作した。皮内投与後21日に各惹起物質を24時間皮膚に閉塞貼付して惹起し、除去後24及び48時間に皮膚反応を判定した。皮膚反応の判定基準は、紅斑及び痂皮について、紅斑なし0、わずかな紅斑1、明らかな紅斑2、中等度の紅斑3、強紅斑に痂皮が認められる4、である。浮種について、浮種なし0、わずかな浮種1、中等度の浮種2、強い浮種3、である。
以上より、機能性繊維メタノール抽出物はモルモットに対して皮膚感作性をもつものと考えられ、最低惹起濃度は10%と考えられた。また、10%の濃度の惹起での感作性の強さは中等度(GradeIII)と評定された。
8.モルモットに対する皮膚光感作性試験
7の皮膚感作性試験に使用した機能性繊維メタノール抽出物について、5週齢の雄性Crj:Hartley系モルモットを用い、Adjuvant and Strip法により皮膚光感作性試験をした。各投与物質0.1mLを除毛したモルモット背部に開放塗布し、30分後より約10.2Joules/cmの紫外線を照射した。同様の処置を5日間連続して行い、光感作した。最終感光感作後17日に各投与物質0.1mLを除毛した背部皮膚の左右対称に開放塗布し、動物の右半分をアルミホイルで被覆して約10.2Joules/cmの紫外線を照射して光惹起した。光惹起後24時間及び48時間に皮膚反応を判定した。
被験物質光感作群については、機能性繊維のメタノール抽出物を10%の濃度でジメチルスルホキシドに溶解して感作し、1%の濃度で惹起した。その結果、評点1の紅斑が散見されたが陽性例はみられず、全例が陰性と判定された。媒体対照群については、ジメチルスルホキシドで感作及び惹起した。その結果、いずれの惹起部位にも皮膚反応はみられなかった。陽性対照群については、6−メチルクマリン(6−MC)を5%の濃度で感作し、1%の濃度で惹起した。その結果、6−MC惹起部位の紫外線照射部位に評点2〜4の紅斑がみられ、全例が陽性と判定された。
以上より、機能性繊維のメタノール抽出物はモルモットに対し皮膚光感作性をもたないものと考えられた。
9.モルモットに対する光毒性試験
7の皮膚感作性試験に使用した機能性繊維メタノール抽出物について、5週齢の雄性Crj:Htley系モルモットに対し、Morikawaらの方法により光毒性試験をした。被験物質投与群については10%の濃度でジメチルスルホキシドに溶解した機能性繊維のメタノール抽出物を、媒体対照群についてはジメチルスルホキシドを、陽性対照群については0.05% 8−methoxypsoralenを、それぞれ投与物質として、除毛したモルモットの背部に各投与物質0.03mLを開放塗布した。開放塗布後30分に約11.2Joules/cmの紫外線を照射した。照射後24及び48時間に皮膚反応を判定した。
その結果、被験物質投与群及び媒体対照群においては、紫外線照射部位と非照射部位いずれにおいても皮膚反応はみられず、全例が陰性と判定された。一方、陽性対照群においては、全例の紫外線照射部位において評点4の皮膚反応がみられた。
以上より、機能性繊維メタノール抽出物はモルモットに対し光毒性をもたないものと考えられた。
10.細菌を用いる突然変異誘発能試験
ネズミチフス菌Salmonella typhimurium TA100、TA1535、TA98、TA1537及び大腸菌Escherichia coli WP2 uvrAを使用して、機能性繊維のメタノール抽出物の突然変異誘発能の有無を検索した。メタノール抽出物は、細切した機能性繊維に10倍量のメタノールを加え、室温で24時間攪拌して抽出し、ロータリーエバポレーターでメタノールを留去した残留物である。
その結果、本被験物質処理による復帰変異コロニー数は、代謝活性化の有無にかかわらず塩基対置換型、フレームシフト型のいずれの菌株においても陰性対照と比較して2倍以上には増加せず、用量反応性も認められなかった。従って、機能性繊維のメタノール抽出物は、本試験条件下において突然変異誘発能を有さないと判断する。
11.ほ乳類細胞を用いる染色体異常試験
機能性繊維のメタノール抽出物の染色体異常誘発性の有無を検索した。DMSOを媒体として試験を実施した。細胞増殖抑制試験における被験物質の最高試験用量は、5.0mg/mLとした。細胞増殖抑制試験の結果、50%細胞増殖抑制濃度は、短時間処理の代謝活性化系非存在下(以下−S9mix法と略す)で、5.0mg/mL以上となった。また、短時間処理代謝活性化系存在下(以下+S9mix法と略す)で、0.840mg/mLとなった。被験物質の沈澱が、0.313mg/mL以上で認められた。したがって、染色体異常試験の試験用量は、−S9mix法の最高試験用量を0.313mg/mLとし、公比2で希釈した3用量を設定した。また、+S9mix法の最高試験用量を1.25mg/mLとし、公比2で希釈した4用量を設定した。
短時間処理法の結果、−S9mix法における染色体の構造異常を有する細胞及び倍数性細胞の出現頻度は、いずれの試験用量においても5%以下となった。しかしながら、+S9mix法では染色体の構造異常を有する細胞の出現頻度が0.313mg/mL以上で用量依存性のある増加を示し、陽性となった。なお、短時間処理法の結果、陽性と判断したため連続処理法は実施しなかった。
各処理法における陽性対照群では、染色体の構造異常を有する細胞の出現頻度が適正な値を示したことから試験は適切に実施されたものと判断した。以上の結果から、当該被験物質にはチャイニーズ・ハムスター肺由来線維芽細胞(CHL/IU細胞)に対する染色体異常誘発性があるものと判断した。
細胞増殖抑制試験は以下のとおりである。短時間処理法その1;−S9mix法は、直径60mmのプラスチック・シャーレ1枚あたり2×10個の細胞(培養液5.0mL)を播種し、3日間培養した。被験物質の最高試験用量は5.0mg/mLとし、最高試験用量から公比2で希釈した計10用量(0.010、0.020、0.039、0.078、0.156、0.313、0.625、1.25、2.5及び5.0mg/mL)を設定した。陰性対照として媒体(DMSO)対照群を設けた。用量当たり1枚のシャーレに媒体または各試験用量用の被験液を50μL加え、37℃で6時間作用させた。作用後、シャーレの培養液を取り除き、生理食塩水で細胞を洗浄後、新しい培養液5mLを加えた。さらに、18時間培養を続けた。培養後、シャーレの培養液を除き、生理食塩水で細胞表面を洗浄後、10%ホルマリン溶液で固定した。固定後、0.1%クリスタルバイオレット溶液で染色した。細胞の染色の濃淡から単層培養細胞密度計(モノセレータ、オリンパス光学工業(株))を用いて細胞増殖率を測定した。この際、媒体対照細胞の値を100%とした。これより被験物質の50%細胞増殖抑制濃度(概略値)を求めた。
短時間処理方法その2;+S9mix法は、−S9mix法と同様に細胞を播種し、3日間培養した。用量当たりのシャーレ枚数及び被験物質の用量は、−S9mix法と同条件とした。シャーレから0.83mLの培養液をぬきとり、0.83mLのS9mixを加え、S9mix希釈液(S9の最終濃度5%)とした。シャーレに媒体または各試験用量用の被験液を50μL加え、37℃で6時間作用させた。作用後の操作は、−S9mix法と同様とした。
染色体異常試験は以下のとおりである。被験物質の試験用量は、細胞増殖抑制試験を行って決定した。細胞増殖抑制試験の結果、50%細胞増殖抑制濃度は、短時間処理−S9mix法で、5.0mg/mL以上となった。また、短時間処理+S9mix法では、0.840mg/mLとなった。
被験物質の沈澱が、0.313mg/mL以上で認められた。
以上の結果から、染色体異常試験における短時間処理法の試験用量は以下の通りとした。−S9mix法:0.078、0.156及び0.313mg/mL(公比2、3使用)。+S9mix法:0.156、0.313、0.625及び1.25mg/mL(公比2、4使用)。細胞増殖抑制試験の結果、被験物質の最高試験用量は、0.313mg/mLとし、最高試験用量から公比2で希釈した計3用量を設定した。陰性対照として無処理及び媒体対照群を設け、陽性対照としてマイトマイシンC(0.05μg/mL)処理群を設けた。
その際、染色体標本用シャーレには細胞分裂を分裂中期で停止させるため、標本作製の2時間前にコルセミド(GIBCO/Lot No.1125546)を最終濃度0.2μg/mLになるように加えた。2時間後、各シャーレの培養液をスピッツ管に移した。直ちに、各シャーレに0.25%トリプシン溶液2mLを加え、細胞を剥離後、前述のスピッツ管に回収し、遠心分離(1000rpm、5分)した。上清を捨て、0.075M塩化カリウム溶液を5mL加え、37℃の恒温水槽中で15分間低張処理後、0.5mLの冷却固定液(冷却メタノールと酢酸を3:1に混合したもの)を加え半固定した後、直ちに遠心分離(1000rpm、5分)し、新しい固定液5mLを加えた。同じ操作を3回繰り返し細胞を完全に固定した。固定した細胞を軽く濁る程度の細胞浮遊液に調製したあと、スライドグラスに滴下し、空気乾燥後、1.7%のギムザ液で約15分間染色した。また、細胞増殖率用シャーレは前述の細胞増殖抑制試験と同様の方法で固定染色後、細胞増殖率を測定した。
顕微鏡下で、各処理群当たり200個(シャーレ当たり100個)の良く拡がった分裂中期像を観察し、構造異常等の種類と異常を持つ細胞の数を記録した。同時に倍数性細胞の数も記録した(3媒体を含めた染色体数37本以上を倍数性として記録した)。なお、客観的な観察を行うため、盲検法により観察した。
染色体異常の種類は以下のようにして分類した。ただし、ギャップとは非染色部分が染色部分の縦軸上にあり、その幅が染色分体の幅以下で非染色部分の形状が明確なもの、切断とは非染色部分が染色分体の縦軸にある場合にはその幅が染色分体の幅以上で非染色部分の形状が明確なもの、または、染色体または染色分体の軸よりずれて断片が存在すること、交換とは染色体または染色分体の2ヵ所以上の切断による相互交換と定義し、それ以外の構造異常はその他とした。
構造異常
染色分体型切断(ctb)
染色分体型交換(四放射状交換など、cte)
染色体型切断(csb)
染色体型交換(ニ動原体、環状など、cse)
その他(断片化、frg)
その他の染色体異常
ギャップ(g)
数的異常
倍数性(polyploid、endoreduplication)
短時間処理の結果、−S9mix法における染色体の構造異常を有する細胞及び倍数性細胞の出現頻度は、いずれの試験用量においても5%以下となった。しかしながら、+S9mix法では染色体の倍数性細胞の出現頻度は、いずれの試験用量においても5%以下となったが、染色体の構造異常を有する細胞の出現頻度が0.313、0.625及び1.25mg/mLでそれぞれ15.5、49.5及び73.0%と用量依存性のある増加を示した。被験物質の沈澱が、0.313mg/mL以上で認められた。短時間処理法の−S9mix法陽性対照群(MMC)は、染色体の構造異常を有する細胞の出現頻度が16.0%を示した。また、+S9mix法陽性対照群(DMN)では、染色体の構造異常を有する細胞の出現頻度が37.5%を示したことから、試験は適切に実施されたものと判断した。なお、短時間処理の結果、陽性と判断したため連続処理法は実施しなかった。被験物質が構造異常を20%誘発する試験用量(D20値)は、+S9mix法で0.35mg/mLであった。
12.細胞毒性試験
被験物質である機能性繊維8gを、高圧蒸気滅菌(121℃、20分)した。冷却、乾燥後、培地80mLを加えて軽く栓をした後、被験物質が培地中に十分に浸漬していることを確認して、炭酸ガスインキュベーター内に静置して24時間インキュベートした。ガラス瓶から培地のみを取り出し、この培地を100%被験物質抽出液とした。培地を用いて100、80、70、50、30及び10%に希釈した。なお、上記の被験物質抽出液の濃度は、予備検討の結果からIC50値を算出できる適切な範囲で6濃度設定した。
約2×15mmの機能性繊維標準材料及びブランク繊維の陰性材料を、それぞれガラス瓶に入れて高圧蒸気滅菌した。冷却、乾燥後、標準材料または陰性材料1gに対して培地を10mLずつの割合で加えて軽く栓をした。炭酸ガスインキュベーター内に静置して24時間インキュベートした後、ガラス瓶から培地のみを取り出し、この培地をそれぞれ100%標準材料抽出液及び100%陰性材料抽出液とした。培地を用いて、標準材料Aは8.0、3.0、1.0、0.5及び0.1%、標準材料Bは90、80、70、50及び30%に希釈した。陰性材料については100%抽出液をそのまま使用した。
Eagle MEM培地(Eagleの平衡塩類含有、0.292g/L L−グルタミン含有、インビトロジェン社、Lot No.1101728)に0.11g/L ピルビン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)、Lot No.LDE0019)、2.2g/L 炭酸水素ナトリウム(関東化学(株)、Lot No.106G1268)、0.1mmol/L MEM非必須アミノ酸(インビトロジェン社、Lot No.1133557)、50U/mL ペニシリン(萬有製薬(株)、Lot No.7QB03P)及び50μg/mL ストレプトマイシン(明治製菓(株)、Lot No.SSD468)を添加して牛胎児血清(FBS、インビトロジェン社、Lot No.A0282282)不含M05培地とした。FBS不含M05培地に5v/v%FBSを添加してM05培地とした。
細胞培養は、炭酸ガスインキュベーターを用いて温度:37.0±1.0℃(実測温度:36.9〜37.4℃)、CO濃度:5.0±0.5%(実測濃度:4.8〜5.1%)、加湿条件下で静置培養した。細胞密度がフラスコ底面積の約30〜70%の状態で継代操作を行った。フラスコ内の培地を除去し、Ca2+及びMg2+不含のダルベッコ リン酸塩緩衝液を用いて軽くリンスした。PBS(−)を吸引除去した後、細胞が浸る程度の少量の0.05% トリプシン及び0.02% EDTA・2Na(同仁化学(株)、Lot No.KC159)含有PBS(−)(トリプシン/EDTA液)を添加し炭酸ガスインキュベーター内に静置した。顕微鏡下で観察し細胞がフラスコ底面からほぼ剥がれたことを確認した後、培地を加えて細胞を回収し、遠沈管に移して約80rpmで2分間遠心した。上清を除去して新たに培地を加えて細胞をほぐし、細胞懸濁液とした。継代前の1/3〜1/10の細胞密度になるように培地で希釈して、新たなフラスコに播種した。
継代方法に従って細胞を剥離し、細胞数が1000個/mLになるように培地を用いて希釈調製した細胞懸濁液を、予め培地を3mL添加しておいた6ウェルプレートに0.1mL/ウェルずつ添加し、炭酸ガスインキュベーター内で24時間培養した。培地を除去した後、各濃度の被験物質抽出液、標準材料A及び標準材料B並びに陰性材料(100%抽出液のみ)を3mLずつ添加した。また培地のみを添加するウェルを4ウェル設け、コントロール群とした。1濃度につき4ウェルを使用した(n=4)。各抽出液を添加した後、炭酸ガスインキュベーター内で7日間培養した後、各ウェルの培地を除去し、PBS(−)3mL/ウェルで洗浄した。各ウェルにメタノールを3mL加えて10分間静置し細胞を固定した後、メタノールを除去し、リン酸緩衝液(pH6.4)で希釈した5%ギムザ溶液を3mL加えて10分間静置し、コロニーを染色した。精製水で各ウェルを一回洗浄した後、乾燥させて、50個以上の細胞から成ると判断されるコロニー数を、肉眼または実態顕微鏡にて計測した。
雄チャイニーズハムスター肺由来樹立株であるV79細胞を100個/ウェル(6ウェルプレート)で24時間培養した後、被験物質(機能性繊維)並びに各対照物質(標準材料A:0.1%zinc diethyldithiocarbamate(ZDEC)含有ポリウレタンフィルム、標準材料B:0.25%zinc dibuthyldithiocarbamate(ZDBC)含有ポリウレタンフィルム及び陰性材料:高密度ポリエチレンフィルム)の抽出液を各4ウェルずつ添加して、7日間培養した。形成されたコロニー数を計測し、培地のみで同様に培養した場合(コントロール群)のコロニー数の半数となるときの抽出液濃度(IC50値)を算出した。コントロール群のコロニー形成能は95%であり、良好なコロニー形成能を示した。コントロール群と陰性材料の100%抽出液添加ウェルのコロニー数に統計学的な有意な差は認められなかった。標準材料A及び標準材料BのIC50値は、それぞれ1.32%及び68.92%であり、いずれも試験の成立基準を満たしていた。
機能性繊維抽出液を添加したウェルとコントロール群のコロニーの大きさを比較すると、高濃度(70%以上)の抽出液ではコロニーが小さくなる傾向が認められ、細胞の増殖能に対する若干の影響が示唆された。しかし、機能性繊維抽出液のコロニー形成数においてはコントロール群と差異はなく、機能性繊維抽出液のIC50値は100%以上であり、コロニー形成能への影響は認められなかった。
以上の結果から、本試験条件において、機能性繊維抽出液のコロニー形成に対する阻害作用は認められないと判断した。
次に、抗アレルゲン羽毛、それを含む組成物・羽毛製品の好ましい実施例について説明する。
本発明は、前記の金属フタロシアニンの誘導体として前記式(II)で示される金属フタロシアニン化合物(以下、金属フタロシアニン化合物(II)と記載する)またはその塩が担持された抗アレルゲン羽毛である。前記羽毛に担持される金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩の量は、前記羽毛重量に対して、好ましくは0.1質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以上5質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以上3質量%以下である。金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩の量が0.1質量%以上10質量%以下であれば、抗アレルゲン羽毛のダニ由来のアレルゲンを吸着する効果に優れるからである。
前記抗アレルゲン羽毛の素材としては、アヒル、鵞鳥、鴨、マガモ、ルーアンダック、チャイニーズダック、ペキンダック、グース(ビルグリム・グース、エムデン・グース等)、ハイイロガン等から採取した羽毛が挙げられる。また、前記抗アレルゲン羽毛の素材としては、フェザー(ラージフェザー、翼の部分の羽軸を持つ羽毛)、ダウン(胸毛、綿毛)、スモールフェザー(小羽)等を用いることができる。
金属フタロシアニン化合物(II)の塩としては、例えば無機塩基との塩、有機塩基との塩等が挙げられる。無機塩基との塩の好適な例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;ならびに銅(II)塩、アンモニウム塩などが挙げられる。有機塩基との塩の好適な例としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン等との塩が挙げられる。
金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩は、前記式(II)中、MがCoまたはFeであるのが好ましい。この金属フタロシアニン化合物またはその塩は、前記式(II)中、R、R、RおよびRは、同一で、SOH基であり、n1、n2、n3およびn4は、同一で、1であるのがより好ましい。そのような金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩は、より具体的には、以下のような構造式で示されるものである。
Figure 0003885096
Figure 0003885096
金属フタロシアニン化合物(II)の塩は、ナトリウム塩または銅(II)塩であるのが、さらに好ましい。
金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩が担持された抗アレルゲン羽毛は、例えば、以下の方法で製造することができる。まず、羽毛を前処理する。前処理としては、原料羽毛中の土砂、その他の不純物を除去する前除塵処理、小石、砂、脂肪酸等洗浄では除去できない埃、羽毛の垢を除去する洗浄前除塵処理、水(常温水、温水等)での洗浄処理等が挙げられる。
次いで、金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩の水溶液中に80℃以上100℃以下で、30分〜2時間の間、前処理された羽毛を浸漬させ、水で洗浄し、脱水、および乾燥することにより、この金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩が担持された抗アレルゲン羽毛を製造することができる。
この金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩の水溶液中のそれらの含有量は、羽毛重量に対して、0.01質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上5質量%以下がより好ましい。
この金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩の水溶液には、ギ酸、酢酸、塩酸、リン酸、クエン酸など酸性染法で一般的に使用する酸等を含んでもよい。前記酸は、羽毛を構成するアミノ酸のアミノ基のカチオン化、金属フタロシアニン化合物の溶解性を落として羽毛に担持しやすくするために用いる。
金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩が担持された抗アレルゲン羽毛は、さらに、媒染剤、フィックス剤等で処理されてもよい。前記媒染剤としては、タンニン酸、アルミニウム塩(例えば、酢酸アルミニウム、生みょうばん、焼きみょうばん等)、クロム酸(例えば、酢酸クロム、クロムみょうばん等)、鉄塩(例えば、スルファミン酸第二鉄、木酢酸鉄、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等)、スズ塩(例えば、錫酸ソーダ、塩化第一錫等)、銅塩(例えば、酢酸銅等)、バリウム塩(例えば、塩化バリウム等)等を用いることができる。前記フィックス剤としては、銅塩(例えば、硫酸銅等)、アルミニウム塩、第4級アンモニウム塩等を用いることができる。前記媒染剤で処理すると、金属フタロシアニン化合物(II)中の遊離のSOH基またはCOOH基は塩を形成することができ、この金属フタロシアニン化合物(II)または塩の羽毛への担持を強固にすることができる。従って、金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩が担持された抗アレルゲン羽毛を洗濯しても、長期に渡ってその担持を保つことができる。
本発明は、金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩が担持された抗アレルゲン羽毛を含む組成物である。前記組成物は、他の素材と組み合わせて、羽毛製品などの成形品に加工されてもよい。
本発明は、金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩が担持された抗アレルゲン羽毛を含む羽毛製品である。前記羽毛製品としては、羽毛布団などの寝具、羽毛ジャケットなどの衣類が挙げられる。
以下、実施例2、3により抗アレルゲン羽毛を更に具体的に説明する。なお、この実施例においてかさ高性は、JIS L 1903羽毛試験方法に準じて、温度20℃関係湿度65%の試験室において測定した。
(実施例2)
前除塵処理、洗浄前除塵処理および水での洗浄処理を行ったグース羽毛(ダウン85質量%、スモールフェザー15質量%)(かさ高性153mm)を準備した。
一方、前記式(IX)で示されるコバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム0.5質量%(対羽毛重量比)およびギ酸2質量%(対羽毛重量比)を、30倍の容量の水に溶解させ、試薬溶液を調製した。
この試薬溶液中へ前記羽毛を浸漬させ、97℃で50分間放置した。
コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムは大部分、羽毛に吸尽された。
その後、羽毛を水でよく洗浄して残存する試薬溶液を除去した。続いて、脱水および乾燥して、コバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウムが担持された抗アレルゲン羽毛(かさ高性153mm)を得た。このようにして得た羽毛は、金属フタロシアニン化合物またはその塩が担持される前の羽毛と比較して、手触り、かさ高性の点においては全く変化がなかった。
(実施例3)
前除塵処理、洗浄前除塵処理および水での洗浄処理を行ったグース羽毛(ダウン85質量%、スモールフェザー15質量%)を準備した。
一方、前記式(IX)で示されるコバルトフタロシアニンポリスルホン酸ナトリウム0.5質量%(対羽毛重量比)、ギ酸2質量%(対羽毛重量比)を、30倍の容量の水に溶解させ、試薬溶液を調製した。この試薬溶液中へ前記羽毛を浸漬させ、97℃で50分間放置した。その後、羽毛を水でよく洗浄して残存する試薬溶液を除去した。続いて、脱水および乾燥させた。
また、硫酸銅五水和物1質量%(対羽毛重量比)を、30倍の容量の水に溶解させ、試薬液を調製した。この試薬溶液中へ前記羽毛を浸漬させ、30℃で30分間放置した。その結果、銅イオンがコバルトフタロシアニンポリスルホン酸と結合し、前記式(X)で示される銅塩である不溶体を形成した。
その後、羽毛を水でよく洗浄して残存する試薬溶液を除去した。続いて、脱水および乾燥して、金属フタロシアニン化合物の銅塩(X)が担持された抗アレルゲン羽毛を得た。このようにして得た羽毛は、金属フタロシアニン化合物またはその塩が担持される前の羽毛と比較して、手触り、かさ高性の点においては全く変化がなかった。
(評価)
1.ダニアレルゲン吸着力試験
実施例2および3で得た、金属フタロシアニン化合物(II)またはその塩が担持された抗アレルゲン羽毛を試料とし、ダニアレルゲンの吸着力を以下のようにして測定した。対照試料としては、実施例2および3において、試薬溶液処理を行っていない羽毛、すなわち、前除塵処理、洗浄前除塵処理および水での洗浄処理を行ったグース羽毛(ダウン85質量%、スモールフェザー15質量%)を用いた。
ダニアレルゲン抗原溶液(アサヒビール 社製、精製ダニアレルゲンrDer2(商品名))(1μg/mL)(200μl)中に、各試料(2mg)を入れ、25℃で1時間の間、浸漬させた。試料を取り出した後の溶液を遠心分離(10000rpm、3分間)した後、上澄み液(100μl)をELISA法で測定した。
酵素免疫測定法(ELISA法)での測定方法
(1)抗原のコーティング
マイクロプレート(塩化ビニル製96ウエルプレート、Dynatech社製)に、前記上澄み液を100μl/ウエル注入し、25℃で2時間維持した。その後、マイクロピペットを用いて、前記上澄み液をウエルから除去した。PBS溶液で3回ウエルを洗浄した。
(2)BSAによるブロッキング
BSA溶液(VECTOR 社製、BOVINESERUMALBUMIN(商品名))(1%(w/v))を、前記マイクロプレートに100μl/ウエル注入し、25℃で1時間維持した。その後、マイクロピペットを用いて、前記上澄み液をウエルから除去した。0.05%Tween−PBS溶液で1回ウエルを洗浄した。
(3)抗原への1次抗体の反応
前記マイクロプレートにダニアレルゲン抗体溶液(アサヒビール社製、抗Derf2モノクローナル抗体(商品名))(5μg/mL)を、100μl/ウエル注入し、25℃で2時間維持した。
(4)酵素標識された2次抗体の反応
ビオチン(Biotin)標識された抗マウスIgG(H+L)抗体溶液(VECTOR社製、BIOTINYLATED ANTI−MOUSE IgG(H+L)(商品名))(1μg/mL)を、前記マイクロプレートに100μl/ウエル注入し、25℃で2時間維持した。その後、マイクロピペットを用いて、前記抗体溶液をウエルから除去した。0.05%Tween−PBS溶液で1回ウエルを洗浄した。
(5)アビジン(AVIDIN)による修飾
アビジン溶液(VECTOR社製、ALKALINE PHOSPHATASE AVIDIN D(商品名))(100unit)を、前記マイクロプレートに100μl/ウエル注入し、25℃で0.5時間維持した。その後、マイクロピペットを用いて、前記上澄み液をウエルから除去した。0.05%Tween−PBS溶液で3回ウエルを洗浄した。
(6)発色基質との反応
PNPP溶液(VECTOR社製、P−NITROPHENYL PHOSPHATE(商品名))(500μg/mL)を、前記マイクロプレートに100μl/ウエル注入し、25℃で10分間維持した。その後、5N NaOH水溶液を100 μl/ウエルに注入し、反応を停止させた。
(7)測定
マイクロプレートリーダー(BIO−RAD社製、MICROPLATE READER Model 550(商品名))を用いて、405nm以上の吸光度を測定し、各試料に含まれるダニアレルゲンの濃度を定量した。試料を浸漬する前のダニアレルゲンの濃度(1μg/ml)と、試料を浸漬した後のダニアレルゲンの濃度から、以下の式に従い、試料のダニアレルゲン吸着率を算出した。
吸着率(%)=[(試料浸漬後のダニアレルゲンの濃度:μg/ml)/(試料浸漬前のダニアレルゲンの濃度:1μg/ml)]×100
Figure 0003885096
得られた結果から明らかなように、金属フタロシアニンの誘導体が担持された抗アレルゲン羽毛は、防ダニ剤を用いず、かつ、ダニアレルゲンを吸着する能力に優れることが確認できた。従って、本発明の羽毛は、防ダニ剤を用いず、かつ、抗アレルゲン効果に優れる。
本願発明で使用されるアレルゲンの分解剤は、その有効成分である金属フタロシアニンの誘導体の働きによってアレルゲンを分解する薬効が実験的に確認され、また安全性が実験的に確認もされているから、薬剤として利用可能である。
さらに、金属フタロシアニンの誘導体を担持させた繊維素材は、アレルゲンを吸着する効果も有するから、それを含む繊維製品に適用できる。
図1は、実験調製例1および比較調製例1の試験溶液の二次元電気泳動ゲルを撮影した写真である。
図2は、実験調製例2および比較調製例2の試験溶液の二次元電気泳動ゲルを撮影した写真である。
図3は、実験調製例3および比較調製例3の試験溶液の二次元電気泳動ゲルを撮影した写真である。
図4は、実験調製例4および比較調製例4の試験溶液の二次元電気泳動ゲルを撮影した写真である。

Claims (2)

  1. 下記式(I)
    Figure 0003885096
    (式(I)中、MはFe、Co、Mn、Ti、V、Ni、Cu、Zn、Mo、W、Osから選択される金属)で示される金属フタロシアニンの誘導体を有効成分に含む、ダニ由来のアレルゲン分解剤が担持されている天然繊維、合成繊維、半合成繊維または再生繊維を含む綿、糸、織布、不織布、編物、または紙からなることを特徴とするアレルゲン分解繊維素材。
  2. 前記金属フタロシアニンの誘導体が、下記式(II)
    Figure 0003885096
    (式(II)中、MはFe、Co、CuおよびNiから選択される金属、R、R、RおよびRは同一または異なるCOOH基またはSOH基であり、n1、n2、n3およびn4は0〜4で1≦n1+n2+n3+n4≦8を満たす正数)で示される化合物、またはその塩であることを特徴とする請求項1に記載のアレルゲン分解繊維素材。
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