JP3883513B2 - 光パルス試験器および後方散乱光測定方法 - Google Patents

光パルス試験器および後方散乱光測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光パルス試験器および後方散乱光測定方法に関し、特に、光伝送損失の大きい光ファイバケーブルに光パルスを入射したときの後方散乱光を測定することによって光ファイバの障害点を探索するための装置およびこの装置を用いた後方散乱光測定方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光ファイバケーブルの障害点(破断点、コネクタ接続点、溶融接続点)を探索することは、光ファイバの製造、布設および保守に欠くことができない重要事項である。そのための測定装置として、光ファイバケーブルに光パルスを入射したときに生じる後方散乱光を測定することにより光ファイバの障害点を探索する光パルス試験器(OTDR:Optical Time Domain Reflectometer)が存在する。なお、後方散乱光とは、光ファイバのコア内の不均一により屈折率に微小な乱れを生じ、光ファイバ内を伝播する光が散乱してその一部が入射端に戻ってくる光を言う。
【0003】
OTDRは、測定対象の光ファイバに光パルスを繰り返し入射し、障害点から戻ってくる反射光を検出して、入射光と反射光との時間差をもとに、入射端から障害点までの距離を測定するものである。光ファイバが均質なら後方散乱光の効率は一定であり、後方散乱光より光ファイバ内の伝播光の強度変化を推定することができる。一方、光ファイバ内に障害点が存在すると、その部分で後方散乱光の効率が変化する。このため、後方散乱光の強度を測定することにより、その強度が急変している位置を光ファイバの障害点として検出することができる。
【0004】
図9は、従来の光パルス試験器の構成を示す図である。図9において、光パルス発生器101から出射された光パルスは、光方向性結合器102および光コネクタ103を介して測定対象である光ファイバ104に入射される。この光パルスの入射直後から、光ファイバ104内における光パルスの伝播に伴い各位置から戻ってくる後方散乱光の光子は、光方向性結合器102で分岐され、受光器105に入射される。
【0005】
受光器105にはAPD(アバランシェフォトダイオード)が用いられており、光ファイバ104からの後方散乱光がここで電気信号に変換される。受光器105より出力された後方散乱光の検出信号は、増幅器106で増幅された後、平均化処理回路107でデジタル化され、S/Nが改善された上でディスプレイ108上に表示される。
【0006】
図10は、上記図9に示した光パルス試験器による信号処理の様子を示す波形図である。図10(a)は、光パルス発生器101より発生され光ファイバ104に入射される光パルスを示す。図10(a)に示すように、光パルス発生器101は、所定時間幅(例えば20ns程度)の光パルスを一定周期(例えば100KHz、1MHz)で繰り返し発生する。これは、光ファイバ104に入射する光パルスに対して戻ってくる後方散乱光の強度が1/1000程度(光ファイバの種類により異なる)で非常に弱く、その強度が量子的に揺らいで時間的に安定しないため、複数回のパルス入力に対して発生する後方散乱光をそれぞれ検出し、それを平均化してS/Nを向上させるためである。
【0007】
図10(b)は、1回の光パルスの出力に対応して受光器105で検出される後方散乱光の信号強度を示す。図10(b)に示すように、後方散乱光は光ファイバ104の入射端に近いところで最も強く、光ファイバ104の後方に行くほど強度が減衰していく。受光器105では、複数の光パルス入射に対応して発生するこのような後方散乱光の強度を電気信号としてアナログ的に逐次検出する。この後方散乱光の検出信号は振幅が非常に小さいものであるので、増幅器106によって増幅される。
【0008】
図10(c)は、図10(b)に示すアナログによる後方散乱光の検出信号をA/D変換して平均化した後の信号強度を示す。平均化処理回路107では、励起された光パルスの1周期を一定時間幅の測定区間に区切り、その測定区間幅毎に、受光器105により逐次検出された後方散乱光の検出信号を加算平均してその位置での信号とする。この信号を全測定区間にわたって記憶し、時間軸である横軸を光ファイバ104の長さ方向、縦軸を光ファイバ104内の各位置での信号強度として表示すれば、図10(c)のような曲線が得られる。
【0009】
図10(c)に示す後方散乱光の受光強度分布特性は、横軸の経過時間すなわち光ファイバ104の長さ方向に対して指数関数状となっている。この分布特性の縦軸を対数表示することにより、光パルス試験器について一般に知られている、図10(d)に示すような直線状の光反射波形が得られる。この図10(d)では、横軸に時間(任意単位)をとり、縦軸に光強度(dB)をとって後方散乱光の受光強度分布特性が示されている。
【0010】
この図10(d)に示す直線の傾きから、光ファイバ104の損失が求められる。また、この直線上には、点線で示されるようなピーク110や段差111が現れることがある。このようなピーク110や段差111は、光ファイバ104の障害点を表している。したがって、このピーク110や段差111の横軸の位置から光ファイバ104のどの位置に障害点があるかを特定することができる。
【0011】
ところが、上記従来の技術では、一定時間幅毎に区切って信号を平均化するため、原理的にその時間幅より時間分解能を上げることは困難である。この時間幅は、最小でも入射される光パルスの時間幅(10ns程度)に限定される。また、時間分解能を上げるためにパルス幅と測定区間幅とをより狭くしようとすると(例えば1ns、0.1ns程度)、信号の抽出が困難となる。したがって、この従来方式では、100m程度の短い長さの光ファイバにおける障害点の位置をcm単位で測定することは極めて困難であった。
【0012】
これに対して、光電子増倍管などの単一光子を検出できる検出器を用い、単一光子計数法を適用して光パルス試験器を構成すると、時間分解能を飛躍的に向上させることが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【0013】
【特許文献1】
特開2002−82015号公報
【0014】
図11は、光電子増倍管を用いた従来の光パルス試験器の構成例を示す図である。なお、この図11において、図9に示した機能ブロックと同一の機能を有する部分には同一の符号を付して示している。また、図12は、図11に示す光パルス試験器による信号処理の様子を示す波形図である。以下、これら図11および図12を用いて説明する。
【0015】
図11において、光パルス発生器101から出射された光パルス(図12(a)参照)は、可変光減衰器201にて減光される。可変光減衰器201では、1回の光パルスの出射毎に1つの光子が受光器202に入射する程度(受光器202で検出する後方散乱光の強度が単一光子を検出する程度)となるように、光パルス発生器101からの出射光強度が調整される。
【0016】
この可変光減衰器201で減光された光パルスは、光方向性結合器102および光コネクタ103を介して測定対象である光ファイバ104に入射される。この光パルスの入射直後から、光ファイバ104内における光パルスの伝播に伴い各位置から戻ってくる後方散乱光の光子は、光方向性結合器102で分岐され、受光器202に入射される。
【0017】
光ファイバ104に入射する光パルスを可変光減衰器201で減光した場合、受光器202に対する後方散乱光は、図12(b)に示すように単一光子として離散的に到来する。なお、図12(b)は入射光パルス1回分の後方散乱光の信号密度を示している。複数回分の入射光パルスに対する後方散乱光を積算した場合の信号密度は、図12(c)のようになる。
【0018】
受光器202には光電子増倍管が用いられており、光ファイバ104からの後方散乱光がここで単一光子として受光される。その際、単一光子は電子に変換された後、増倍機構により増幅され(106倍程度)、電気信号として出力される。この高倍率増幅のために、光電子増倍管より成る受光器202は高圧電源203によって高電圧に駆動されている。
【0019】
受光器202より出力された後方散乱光の検出信号は、増幅器106で増幅された後、ジッタ防止回路(CFD:Constant Fraction Discriminator)204に入力される。図12(b)(c)中には表現していないが、1つ1つの単位光子は強度が量子的に揺らいでいる。CFD204では、この中から一定振幅以上の単一光子信号を検出し、検出パルスを時間−電圧変換器(TAC:Time to Amplitude Converter)205に出力する。
【0020】
TAC205では、CFD204により単一光子信号を検出した時刻(光パルス発生器101より光パルスを出射してからCFD204で一定振幅以上の単一光子信号を検出するまでにかかった時間t)が電圧に変換される。すなわち、図12(d)に示すように、TAC205は、光パルスの出射から単一光子信号の検出までは基準電圧を維持しており、単一光子信号が検出された時点から一定のレートで直線的に電圧を降下させていく。そして、光パルスの出射から一定時間が経過したところでパルス信号発生器206より出力されるパルス信号に応じて電圧降下を停止し、その時点の電圧Vtを出力する。
【0021】
このTAC205より出力される電圧Vtは、光ファイバ104中の後方散乱光の発生位置を表している。この電圧VtがA/D変換器207によりデジタル化され、ヒストグラムメモリ208中の後方散乱光の発生位置に相当するアドレスに検出頻度情報として記録される。
【0022】
ここで重要なことは、受光器202に対する単一光子の到着順に後方散乱光の検出信号を得るのではなく、一回の光パルス入射に対して戻ってくる後方散乱光の中であらかじめ設定したレベル以上の大きさの信号を最初に検出した時点で、一回分の検出信号とすることである。したがって、単一光子信号の検出位置は、光ファイバ104の入射端に相当する早い時刻で検出されることもあれば、遠端部に相当する遅い時刻で検出されることもある。
【0023】
ただし、光ファイバ104内の各位置での単一光子信号の検出頻度は、その位置に対する後方散乱光に相当する単一光子の発生量に依存する。単一光子の発生量は光ファイバ104の入射端で最も多く、遠端部になるほど少なくなる。そのため、この検出頻度を検出時刻に沿って表示すると、図12(e)のようなヒストグラムができる。この分布特性は、光ファイバ104の長さ方向に沿って単一光子信号の検出頻度を示したものであり、横軸に単一光子信号の検出時刻(電圧Vの大きさ)、縦軸に単一光子信号の検出頻度を示している(1個の□が1回の検出頻度を表している)。この図12(e)に示すヒストグラムの縦軸を更に対数表示すれば、図12(f)のように図9の光パルス試験器と同等の表示が得られる。
【0024】
図12(e)に示すヒストグラムの時間分解能は、TAC205により求められる電圧VのA/D変換能力により決まる。例えば、光ファイバ104の中を伝播する光の速度は約20cm/ns(材質により多少異なる)であるので、100mを往復する時間(1000ns)を12ビットA/D変換すると、理論的分解時間は約250psとなる。したがって、光ファイバ104の長さ方向の理論的分解能は約2.5cmになり、図9に示した従来技術に比べて時間分解能が格段に向上する。
【0025】
【発明が解決しようとする課題】
このように、単一光子計数法を用いると時間分解能が飛躍的に向上するが、実用化に際しては以下のような課題がある。
【0026】
すなわち、単一光子計数法の検出器としては、光電子増倍管が使用される。しかし、光電子増倍管を利用するためには、高圧電源が必要である。また、光電子増倍管を常温で使用できる実用波長範囲は300〜850nm程度である。この波長を越える850〜1600nmの波長帯に感度のある光電子増倍管は−20℃〜−60℃に冷却する必要があり、冷却装置を併用しなければ測定は困難である。冷却にはペルチエ冷却素子または液体窒素などを用いるため、高圧電源の使用と相まって電力消費が大きくなる。しかも、装置の大型化が避けられず、小型・可搬性のある装置の製作が困難であった。
【0027】
一方、APDを単一光子計数法で使用する方法も考えられるが、APDは光電子増倍管に比べて10-4程度増幅率が低いため、−40℃〜−60℃といった超低温に冷却して使用する必要がある。低温冷却する目的は、熱雑音由来のダークカウント(光がなくても発生する信号)を減少させるためである。このダークカウントは、パルス試験器にとってS/Nを劣化させ、分解能低下の主原因となる。ところが、冷却器を作動させると、上述のように電力消費が大きくなる。例えばペルチエ冷却素子を使用するとアンペア単位の電流消費があり、電池駆動などの携帯・可搬型装置には不向きである。
【0028】
以上、単一光子計数法の問題点をまとめると、以下の通りである。
<光電子増倍管の場合>
波長によっては常温でも単一光子を計数できるが、実用可能な検出波長帯は可視光付近(300〜850nm程度)に限定される。長波長帯(850〜1550nm)では冷却器が必要となり、装置の大型化、電力消費の増大、高コスト化をまねく。
【0029】
<APD(アバランシェフォトダイオード)の場合>
波長帯は400〜1000nm、1000〜1600nmが各種市販品として存在する。しかし、常温では単一光子を検出できない。APDを単一光子計数法で使用するためにはやはり−40℃以上の冷却が必要であり、装置の大型化、電力消費の増大、高コスト化をまねく。
【0030】
したがって、光電子増倍管、APDの何れを使用しても、単一光子計数法による測定を行おうとすると、通信用光ファイバの要求する波長帯(例えばプラスチックファイバでは650nm帯や850nm帯、ガラスシングルモードファイバでは1310m帯や1550nm帯)の全てに使用でき、小型・可搬性を有し、かつ短距離測定用で高分解能の光パルス試験器を実現することは、非常に困難であった。
【0031】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、低温に冷却することなく常温で使用でき、小型・可搬性化に適し、かつ、単一光子計数法と同等の高分解能を有する光パルス試験器および後方散乱光測定法を提供することを目的とする。
【0032】
【課題を解決するための手段】
本発明の光パルス試験器は、光パルスを一定周期で繰り返し発生する光パルス発生器と、上記光パルスが入射された光ファイバの各位置から戻ってくる後方散乱光の光子を受光して電気信号に変換するAPDによる受光器と、上記受光器にて受光される後方散乱光の光子が所定時間幅あたりに複数個含まれる多光子状態となるように上記光パルスの光量を保持する光量保持回路と、上記受光器により生成された上記後方散乱光の電気信号を増幅する増幅器と、上記増幅器より出力される上記後方散乱光の電気信号の中から、一定振幅以上の多光子信号を検出する多光子検出器と、上記光パルス発生器より上記光パルスを発生してから上記多光子検出器により上記多光子信号を検出するまでの時間を各光パルスの発生毎にとり、各時間での上記多光子信号の検出頻度を求める頻度情報取得手段とを備えたことを特徴とする。
【0033】
本発明の他の態様では、上記受光器を常温の一定温度に保持する温度保持回路を備えたことを特徴とする。
本発明のその他の態様では、上記受光器に対する印加電圧を、環境温度の変動に対する電圧変動幅を所定範囲内に抑えて安定的に供給する精密電源を備えたことを特徴とする。
【0034】
本発明のその他の態様では、上記頻度情報取得手段は、上記多光子信号の検出と同時に一定レートでの電圧変化を開始し、その後所定のタイミングで上記電圧変化を停止し、その停止時における電圧値を出力することによって、上記光パルスの発生から上記多光子信号の検出までの時間を電圧に変換する時間−電圧変換回路と、上記電圧変化を開始してから停止するまでの間の一部期間において上記電圧変化のレートを他の期間よりも大きくする時間スケール切換回路とを備えたことを特徴とする。
【0035】
本発明のその他の態様では、上記頻度情報取得手段は、上記多光子信号の検出と同時に一定レートでの電圧変化を開始し、その後所定のタイミングで上記電圧変化を停止し、その停止時における電圧値を出力することによって、上記光パルスの発生から上記多光子信号の検出までの時間を電圧に変換する時間−電圧変換回路と、上記電圧変化の開始トリガとする上記多光子信号の検出動作に対して有効期間を設け、この有効期間内でのみ上記多光子信号の検出を受け付けるように制限する動作有効期間設定回路とを備えたことを特徴とする。
【0036】
また、本発明による後方散乱光測定方法は、光パルスを光ファイバに繰り返し入射し、当該光ファイバの各位置から戻ってくる後方散乱光の光子を受光器にて受光して、各光パルスの発生毎に検出される後方散乱光の検出時刻の頻度をとることによって上記光ファイバの各位置での光強度を検出する後方散乱光測定方法において、上記受光器として半導体のAPDを用い、当該APDを降伏電圧に近い駆動電圧の印加により高増倍率で使用するとともに、上記受光器にて受光される後方散乱光の光子を、単一光子のときに比較して所定時間幅あたりに複数個含まれる多光子状態となるように上記光パルスの光量を調整するようにしたことを特徴とする。
【0037】
本発明の他の態様では、上記受光器を常温の一定温度に保持して使用するようにしたことを特徴とする。
本発明のその他の態様では、上記受光器に対する印加電圧を、環境温度の変動に対する電圧変動幅を所定範囲内に抑えて安定的に供給するようにしたことを特徴とする。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態による光パルス試験器の構成例を示すブロック図である。図1において、光パルス発生器1は、測定対象の光ファイバ(被測定ファイバ)5に後方散乱光を発生させるパルス光源であり、所定の時間幅および振幅を有する光パルスを一定の周期で繰り返し発生する。
【0039】
光量保持回路2は、1回の光パルスの出射毎に1〜数個の光子が受光器6に入射する程度(受光器6に対して後方散乱光が多光子状態で届く程度)となるように、光パルス発生器1から出射される光パルスの光量を正確に保持する。多光子状態とは、複数の単一光子がほぼ同一時刻に重なって受光器6に届く状態を言い、単一光子に比べて振幅が大きくなる。
【0040】
光方向性結合器3は、光パルス発生器1から出射された光パルスを光コネクタ4を介して被測定ファイバ5にのみ導き、被測定ファイバ5から光コネクタ4を介して戻ってくる後方散乱光を受光器6に導き、両者の光が混信しないようにする。
【0041】
受光器6は、被測定ファイバ5からの後方散乱光を受光して電気信号に変換する。本実施形態では、受光器6としてAPD(アバランシェフォトダイオード)を用い、これを通常よりも高倍率で使用する。温度保持回路7は、APD6を常温の一定温度に精密に保持する。精密電源8は、mV単位まで精密に安定化させた駆動電圧をAPD6に印加する。
【0042】
増幅器9は、APD6より出力される後方散乱光の電気信号を増幅する。CFD10は、増幅器9より出力される後方散乱光の電気信号の中から、一定振幅以上の多光子信号を検出する。このCFD10は、多光子信号の検出時刻がパルス振幅によりジッタを発生しないように工夫された回路であり、一般にはジッタ防止回路として知られている。
【0043】
時間−電圧変換器(TAC)11は、CFD10による後方散乱光(多光子信号)の検出時刻、すなわち、光パルス発生器1より光パルスを出射してからCFD10で多光子信号を検出するまでにかかった時間を電圧に変換する。すなわち、TAC11は、光パルス発生器1より光パルスが出射されてからCFD10で多光子信号が検出されるまでの間は基準電圧を維持している。そして、多光子信号が検出された時点から一定のレートで直線的に電圧を降下させていき、次の光パルスが出射されるタイミングで電圧降下を停止する。その時点で得られた電圧が、多光子信号の検出時刻に対応する電圧となる(以下、これをTAC電圧と呼ぶことにする)。
【0044】
このTAC11では、CFD10による多光子の検出信号を、電圧降下の開始パルスとして用いる。また、パルス信号発生器12は、光パルス発生器1からの光パルスの出射と同じ時刻に電気パルスを発生する。この電気パルスは、TAC11に対して電圧降下の停止パルスとして印加される。
【0045】
時間スケール切換回路13は、被測定ファイバ5の特定の場所における光反射波形を拡大するためにフルスケールの時間を短くして、短い時間で大きなTAC電圧を発生させる。 動作有効期間設定回路14は、被測定ファイバ5の末端で生じるフレネル反射や光方向性結合器3からの光信号漏れにより特異的に発生する過大パルス信号を受け付けないように、信号にゲートをかける。
【0046】
A/D変換器15は、TAC11より出力されるTAC電圧をデジタル信号に変換する。ヒストグラムメモリ16は、A/D変換されたデジタル信号をアドレスとしたメモリ番地に1を加算して、被測定ファイバ5内の各位置における後方散乱光の検出頻度を記録する。ディスプレイ17は、ヒストグラムメモリ16に記録された検出頻度の情報を画面表示する。
【0047】
図2は、上記図1のように構成した本実施形態の光パルス試験器による信号処理の様子を示す波形図である。以下、図1および図2を用いて、本実施形態による光パルス試験器の主要な動作を説明する。
【0048】
図1において、光パルス発生器1から出射された光パルス(図2(a)参照)は、光方向性結合器3および光コネクタ4を介して被測定ファイバ5に入射される。この光パルスの入射直後から、被測定ファイバ5内における光パルスの伝播に伴い各位置から戻ってくる後方散乱光の光子は、光方向性結合器3で分岐され、APD6に入射される。
【0049】
本実施形態では、被測定ファイバ5に入射する光パルスの光量を光量保持回路2で調整し、図11に示す従来例に比べて光量を多くしている。この場合、APD6に対する後方散乱光は、図2(b)に示すように単一光子の中に多光子を含む状態として離散的に到来する。なお、図2(b)は入射光パルス1回分の後方散乱光の信号密度を示している。複数回分の入射光パルスに対する後方散乱光を積算した場合の信号密度は、図2(c)のようになる。
【0050】
被測定ファイバ5から戻ってくる後方散乱光の光子は、APD6にて単一光子もしくは多光子として受光される。その際、光子は103倍程度まで増幅され、電気信号に変換される。APD6より出力された後方散乱光の電気信号は、増幅器9で増幅された後、CFD10に入力される。CFD10では、図2(c)に示す複数の光子信号の中から一定振幅以上の多光子信号を検出し、その検出信号(電圧降下の開始パルス)をTAC11に出力する。
【0051】
このCFD10にはノイズレベルを除去するための閾値があらかじめ設定されており、ノイズと光信号とを分離して多光子信号のみを検出する。図2(c)の分布のように、ノイズおよび単一光子信号は低いレベルに集まるため、CFD10はこれらを信号として認識することができず、自動的に単一光子信号は振るい落とされることになる。
【0052】
TAC11では、CFD10により多光子信号を検出した時刻tがTAC電圧Vtに変換される(図2(d)参照)。そして、このTAC11より出力されたTAC電圧Vtは、A/D変換器15によりデジタル化され、ヒストグラムメモリ16中の多光子の発生位置に相当するアドレスに検出頻度情報として記録される。この検出頻度を検出時刻に沿って表示すると、図2(e)のようなヒストグラムができる。
【0053】
この図2(e)に示す分布特性は、被測定ファイバ5の長さ方向に沿って多光子信号の検出頻度を示したものであり、横軸に多光子信号の検出時刻(TAC電圧Vtの大きさ)、縦軸に多光子信号の検出頻度を示している(1個の□が1回の検出頻度を表している)。この図2(e)に示すヒストグラムの縦軸を更に対数表示すれば図2(f)のようになり、図12(f)と同等の表示が得られる。
【0054】
図2(e)に示すヒストグラムの分解能も、図11に示す従来例と同様、TAC11により求められるTAC電圧VtのA/D変換能力により決まる。したがって、被測定ファイバ5の長さ方向の時間分解能を、図11に示した従来例と同等程度に高くすることができる。
【0055】
以上のように、本実施形態では、基本的方法として、単一光子状態の光を用いず、単一光子が複数個集まった多光子状態の光を検出する方法を用いるとともに、APD6を通常使用する増倍率より高い増倍率で使用する。以下に、このことを詳細に説明する。
【0056】
単一光子状態にあるパルス光を光電子増倍管で測定すると、そのパルス振幅の統計的分布は、図3(a)のようにポアソン分布になることが知られている。この状態の光は、常温状態かつ通常安定的に使用される増倍率(100倍)程度でAPD6を使用したのでは、検出が困難である。なぜなら、一回の光検出で発生する電荷量は素電荷量の100倍程度で、検出電荷量が極めて少ない(1.6×10-19×100クーロン程度)からである。
【0057】
すなわち、APD6を普通に使用した場合における検出信号の電圧Vは、入力容量を1pFとしても、Q=CVから計算して V=16[μV] となる。そのため、増幅器等を使用しても、検出初段でS/Nが悪くなり、多光子の検出が極めて困難となる。検出後の信号処理を考慮して、回路上安定に処理できるようにするには、更に10倍程度(160[mV]レベル)の信号が必要である。
【0058】
一方、従来の光電子増倍管では内部に106倍程度の電子増倍機構があり、低ノイズであるため、APD6より104倍ほど増倍率が高く、光信号の検出能力が高い。そこで、後方散乱光の要因によってAPD6の出力信号を通常使用の104倍にし、単一光子と同等の信号を擬似的に発生させることができれば、実用化の可能性が開けることになる。
【0059】
ここで、光信号の検出器(受光器)の種類と光子数とで信号がどのようになるかを考察する。上述したように、光源が単一光子の状態にあるとき、これを光電子増倍管で測定すると、図3(a)のようなパルス振幅分布を示す。一方、単一光子を検出できる光電子増倍管で、時間分解能より短いパルス幅内(例えば1ns)に複数の光子を含む光パルスを入射すると、検出器ではその時間内に含む単一光子を時間分解することができなくなり、単一光子が複数個重なり合った分の信号を発生する。したがって、パルス振幅は単一光子のときより大きくなり、その振幅は図3(b)のように正規分布に近い分布を示す。
【0060】
この多光子状態の光をAPD6に入射するようにし、APD6の増倍率を上げるとともに、その後段の増幅器9の倍率も調整すれば結果として、擬似的ではあるが光電子増倍管の単一光子信号と同等の信号が得られる。また、そのパルス振幅分布も、図3(c)のような単一光子のパルス振幅分布と同等の分布を示すことになる。
【0061】
光電子増倍管に比べて電子増倍率の低いAPD6を用い、光電子増倍管と同等の信号を擬似的に発生させるためには、光電子増倍管が単一光子を検出するときの電子増倍率(106倍)を擬似的に実現する必要がある。そのために、APD6に入射する光パルスの光量を10倍、APD6の増倍率を1000倍、増幅器9の増幅率を100倍に設定すれば、結果として総合倍率は106倍になり、光電子増倍管の電子増倍率と同等の能力が擬似的に達成できる。
【0062】
この種の測定法において従来は、検出器に入射する光を全て単一光子の状態にしなければならないと考えられており、光ファイバに入射する光パルスの光量をそのように調整していた。なぜなら、従来検出器として用いていた光電子増倍管の増倍率が高く、単一光子も多光子も両方同時に検出することが可能なため、単一光子信号のなかに多光子信号が混入されると、パルス振幅が突出している多光子信号のみが偏在的に検出されてしまうからである。つまり、単一光子信号のパルス振幅分布の中に、範疇の異なる多光子信号の分布が混じってはいけないということである。
【0063】
これに対して、本実施形態において検出器として用いているAPD6では、パルス振幅の小さい単一光子を常温状態においては検出することができない。言い換えると、単一光子が検出できないことを逆に利用して、単一光子と多光子とが混在していても単一光子に相当する信号をふるい落とし、検出可能な多光子のみを抽出することが可能である。
【0064】
この方法によって多光子信号を抽出することにより、常温で感度が低い状態でAPD6を使用しても、あたかも単一光子で測定するかの如き信号が発生し、単一光子計数法と同等の動作が期待できる。その結果として、APD6を超低温に冷却する必要もなく、低消費電力化と小型・可搬性化とを実現することが可能となる。ただし、その具体化には以下に説明する非常に困難な課題が存在し、本実施形態ではこれらもすべて解決した。
【0065】
<課題1>
単一光子のときに比較して、1パルス当たり約10倍程度の光子が含まれるように多光子状態の光量を保持する必要がある。すなわち、光信号の検出器としてのAPD6が時間分解できない時間幅内(例えば1ns以内)に一定量の後方散乱光の光子が含まれるように、入射光パルスの光量を調整する必要がある。
【0066】
ここで、光量が少ないとAPD6に届く後方散乱光は多光子状態とならず、逆に光量が多すぎると多光子が頻出し過ぎ、同じ位置の多光子信号のみが偏在的に検出されてしまう。したがって、入射光パルスの光量を適量に安定化させることが必要となる。そのために、本実施形態では光量保持回路2を設け、入射光パルスの光量を精密に調整するようにした。
【0067】
すなわち、光パルス発生器1には半導体レーザ(LD)が使用されているが、その出力光量は環境温度に対して変動が大きい。殆どの場合、半導体レーザは温度に対して負の温度係数を持ち、温度が上がれば光出力は減少する。そこで、光量保持回路2は、内蔵するPD(フォトダイオード)により光パルス発生器1からの光信号を検出し、これを基準電圧と比較して誤差増幅により駆動電流を制御することにより、半導体レーザの出力が常に一定となるように制御する。
【0068】
ここで用いる基準信号は、温度係数の小さい(例えば50PPM/℃)の基準電圧発生器を使用して発生する。また、装置全体の温度試験を施すことによって装置としての温度係数を求め、内蔵の温度センサにより、補正値を加算して温度変動を極力抑えるようにしている。
【0069】
<課題2>
入射光パルスの光量を10倍にした場合、APD6の出力信号を通常使用の104倍にするためには、APD6の増倍率を1000倍程度で使用する必要がある。ところが、図4に示すように、APD6は通常、常温で安定的に使用できるのは増倍率が100倍程度までである。図5のように、この増倍率に相当する印加電圧より大きな電圧を印加してAPD6を使用すると、増倍率が急激に増加して、降伏電圧(逆電流が流れて増倍率が無限大となり、APD6が使用不能となる限界電圧)に近づいてしまう。
【0070】
また、APD6を降伏電圧に近い1000倍程度の増倍率で使用すると、図6のように、一定電圧であっても、わずかな温度変動で増倍率が敏感に反応し、降伏現象などが発生して使用不能な状態になってしまう。以上のことから、APD6の増倍率を1000倍程度まで上げるには、下記の2つの条件が必要となる。
【0071】
(1)APD6に対する印加電圧を極めて安定に保持する。印加する電圧はmV単位で精密に制御する必要がある。
(2)温度変動、負荷変動、ドリフト対策として、APD6の温度を一定の常温に保持する。温度は0.1℃単位まで精密に制御することが必要である。
これらの条件を満たすために、本実施形態では温度保持回路7および精密電源8を設けて対応した。
【0072】
すなわち、温度センサであるサーミスタとペルチエ素子の小型タイプとを温度保持回路7として設け、これをAPD6に結合する。または、両者を内蔵しているタイプのAPD6があれば、こちらの方が好ましい。何れにしても、APD6の温度をサーミスタで計りながらペルチエ素子で冷却と保温とを小刻みに繰り返すことによって温度を一定に保ち、熱容量を小さくして電力消費が極力小さくなるように制御する。このとき、APD6を低温にすると電力消費が大きくなるため、常温(約25℃)で使用する。
【0073】
電力消費を避けるために常温で制御すると(例えば、使用温度を常温±15℃とし、環境温度+10〜40℃の範囲で使用すると)、消費電流は約150mA前後に抑えることができる。ちなみに、0℃以下に温度を下げようとすると急激に消費電流が増加し、1A程度にも増加する。このことから、消費電力にとって環境温度(常温)近くで使うことの有利さが理解できる。
【0074】
また、APD6の駆動に必要な電圧は、APD6の種類により異なるが、シリコン系(400〜1000nm)の半導体から成るAPD6では約150V、長波長用では100V以下であることが多い。ただし、この電圧は将来的には変更されることもある。実際にAPD6を極めて高い増倍率である1000倍程度で使用するためには、電圧変動は0.1V以下に抑制する必要がある。
【0075】
APD6の信号による負荷変動は殆ど問題にならず、電圧変動の要因は主に、温度変動が支配的である。そこで、精密電源8として例えば温度係数が50PPM/℃の基準電圧発生器を使用するとともに、ループゲインの大きな誤差増幅器を使用することにより、DC−DCコンバータの出力変化を、±15℃の温度変動に対して±0.1V程度に抑えることができる。
【0076】
<課題3>
総合倍率を106倍にするためには、増幅器9では100倍の高周波増幅を行う必要がある。すなわち、本実施形態の増幅器9では、500MHz〜1GHz帯域の高周波増幅で信号を約100倍に増幅する。
【0077】
以上のように、光量保持回路2、温度保持回路7および精密電源8を設け、入射光パルスの適量光量の精密保持、APD6の常温温度保持、APD6への印加電圧精密化を図ることにより、多光子計測法によりAPD6を常温状態で使用することができるようになる。次に、TAC11に対して設けた時間スケール切換回路13および動作有効期間設定回路14について説明する。
【0078】
時間スケール切換回路13は、信号の重なり対策と高分解能化のために設けたものである。すなわち、被測定ファイバ5に生じた複数の障害点が狭い範囲内に接近して存在しているときは、図7(b)のように、後方散乱光が局部に重なっているように観察される。また、その表示結果も、図7(d)のように複数の障害点が1箇所に集中しているように表示されてしまう。
【0079】
このような場合は、ヒストグラムメモリ16に記録された内容を拡大表示する方法も効果的ではあるが、限界がある。なぜなら、フルスケール1000nsで12ビットA/D変換により分解した場合を考えると、時間分解能は250psであり、これ以上は分解できない。これに対して、特定の場所でのみTAC電圧のスルーレートを拡大すれば、時間分解能を上げることが可能である。
【0080】
例えば、図7(e)に示すように、クロック信号で制御された特定の位置に有効期間を定めて、その有効期間においてのみTAC信号の傾き(電圧降下の傾き)を図7(f)のように大きく(例えば10倍に)する。このようにすれば、250psの10倍である25psの時間分解能が得られる。この場合におけるTAC電圧のヒストグラムをとると、図7(g)のようになり、複数箇所の障害点が分離して観測される。
【0081】
また、動作有効期間設定回路14は、フレネル反射と励起光漏れ対策のために設けたものである。すなわち、被測定ファイバ5の種類によっては、ファイバ末端の破断点からのフレネル反射または光方向性結合器3からの漏れ光により、特異的にパルス振幅の大きな信号が発生する場合がある。プラスチックファイバ(POF)でもシングルモードのガラスファイバでも同様の現象がある。
【0082】
図8(b)に示すように、光方向性結合器3からの漏れ光による大振幅の信号は、光パルス発生器1からの光パルス出射直後(光パルスが被測定ファイバ5に入射して後方散乱光が戻ってくる前)に生じる。また、フレネル反射による大振幅の信号は、光パルスの出射から長い時間が経過した後に生じる。これらの信号は通常の後方散乱光より振幅が大きい。そのため、この信号の混入を許すと、その位置の大振幅信号のみを偏って検出するようになり、全体の後方散乱光分布に乱れが生じる。
【0083】
そこで、これらの大振幅信号を除去するため、図8(c)に示すように、後方散乱光の検出に対して一定の有効期間を設け、この有効期間内でのみ後方散乱光の検出信号を受け付けるように制限する。このように設定した測定有効期間に入る後方散乱光の検出信号のみでヒストグラムを作成すれば、正常な後方散乱光分布が作成される。
【0084】
以上詳しく説明したように、本実施形態では、通信帯に必要とする波長に感度を有する小型、低コストのAPD6を後方散乱光の検出器として用い、APD6に後方散乱光が多光子状態で届くように入射光パルスの光量を調整するようにしたので、光電子増倍管等の大規模な機器を用いることなく、単一光子計数法と同等の高分解能を実現することができる。
【0085】
また、本実施形態では、光量保持回路2、温度保持回路7および精密電源8によって入射光パルスの適量光量の精密保持、APD6の常温温度の精密保持、APD6への印加電圧の精密保持を図ることにより、APD6を低温に冷却することなく常温で使用でき、装置の小型・可搬性化、低消費電力化、低コスト化を実現することができる。
【0086】
以上により、本実施形態の光パルス試験器は、通信用光ファイバの要求する全ての波長帯に適用することが可能となる。すなわち、本実施形態によれば、例えば損失160dB/Km程度のプラスチックファイバでは100m程度(ファイバの損失により測定距離は多少異なる)、シングルモードあるいはマルチモードのガラスファイバでは主として1Km以内の短距離を対象とし、高分解能、低消費電力、小型・可搬性に適する光パルス試験器を提供することができる。
【0087】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその精神、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0088】
【発明の効果】
本発明は上述したように、後方散乱光の受光器として半導体のAPDを用い、当該APDを降伏電圧に近い駆動電圧の印加により高増倍率で使用するとともに、受光器にて受光される後方散乱光の光子が多光子状態となるように入射光パルスの光量を調整するようにしたので、単一光子に比べて振幅の大きい多光子をAPDでも検出できるようになる。これにより、光電子増倍管等の大規模な機器を用いることなく、単一光子計数法と同等の高時間分解能を実現することができ、短距離の光ファイバにおける障害点の位置を微小単位で測定することが可能となる。
【0089】
また、本発明の他の特徴によれば、受光器を常温の一定温度に精密に保持する機構と、受光器に対する印加電圧を、環境温度の変動に対する電圧変動幅を所定範囲内に抑えて安定的に供給する機構とを設けたので、受光器として用いるAPDを超低温に冷却することなく常温で使用でき、装置の小型・可搬性化、低消費電力化、低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態による光パルス試験器の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1のように構成した本実施形態の光パルス試験器による信号処理の様子を示す波形図である。
【図3】光子数によるパルス振幅分布を概念的に示す図である。
【図4】APDの逆電圧−増倍率の関係を示す特性図である。
【図5】APDの逆電圧−増倍率の関係を拡大して示す特性図である。
【図6】APDの増倍率の温度依存性を示す特性図である。
【図7】本実施形態による時間スケール切換回路の動作を説明するための図である。
【図8】本実施形態による動作有効期間設定回路の動作を説明するための図である。
【図9】従来の光パルス試験器の構成を示すブロック図である。
【図10】図9のように構成した従来の光パルス試験器による信号処理の様子を示す波形図である。
【図11】光電子増倍管を用いた従来の光パルス試験器の構成を示すブロック図である。
【図12】図11のように構成した従来の光パルス試験器による信号処理の様子を示す波形図である。
【符号の説明】
1 光パルス発生器
2 光量保持回路
3 光方向性結合器
4 光コネクタ
5 被測定ファイバ
6 受光器(APD)
7 温度保持回路
8 精密電源
9 増幅器
10 CFD(ジッタ防止回路)
11 TAC(時間−電圧変換器)
12 パルス信号発生器
13 時間スケール切換回路
14 動作有効期間設定回路
15 A/D変換器
16 ヒストグラムメモリ
17 ディスプレイ

Claims (11)

  1. 光パルスを一定周期で繰り返し発生する光パルス発生器と、
    上記光パルスが入射された光ファイバの各位置から戻ってくる後方散乱光の光子を受光して電気信号に変換するAPDによる受光器と、
    上記受光器にて受光される後方散乱光の光子が所定時間幅あたりに複数個含まれる多光子状態となるように上記光パルスの光量を保持する光量保持回路と、
    上記受光器により生成された上記後方散乱光の電気信号を増幅する増幅器と、
    上記増幅器より出力される上記後方散乱光の電気信号の中から、一定振幅以上の多光子信号を検出する多光子検出器と、
    上記光パルス発生器より上記光パルスを発生してから上記多光子検出器により上記多光子信号を検出するまでの時間を各光パルスの発生毎にとり、各時間での上記多光子信号の検出頻度を求める頻度情報取得手段とを備えたことを特徴とする光パルス試験器。
  2. 上記受光器を常温の一定温度に保持する温度保持回路を備えたことを特徴とする請求項1に記載の光パルス試験器。
  3. 上記受光器に対する印加電圧を、環境温度の変動に対する電圧変動幅を所定範囲内に抑えて安定的に供給する精密電源を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の光パルス試験器。
  4. 上記頻度情報取得手段は、上記多光子信号の検出と同時に一定レートでの電圧変化を開始し、その後所定のタイミングで上記電圧変化を停止し、その停止時における電圧値を出力することによって、上記光パルスの発生から上記多光子信号の検出までの時間を電圧に変換する時間−電圧変換回路と、
    上記電圧変化を開始してから停止するまでの間の一部期間において上記電圧変化のレートを他の期間よりも大きくする時間スケール切換回路とを備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光パルス試験器。
  5. 上記頻度情報取得手段は、上記多光子信号の検出と同時に一定レートでの電圧変化を開始し、その後所定のタイミングで上記電圧変化を停止し、その停止時における電圧値を出力することによって、上記光パルスの発生から上記多光子信号の検出までの時間を電圧に変換する時間−電圧変換回路と、
    上記電圧変化の開始トリガとする上記多光子信号の検出動作に対して有効期間を設け、この有効期間内でのみ上記多光子信号の検出を受け付けるように制限する動作有効期間設定回路とを備えたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の光パルス試験器。
  6. 光パルスを光ファイバに繰り返し入射し、当該光ファイバの各位置から戻ってくる後方散乱光の光子を受光器にて受光して、各光パルスの発生毎に検出される後方散乱光の検出時刻の頻度をとることによって上記光ファイバの各位置での光強度を検出する後方散乱光測定方法において、
    上記受光器として半導体のAPDを用い、当該APDを降伏電圧に近い駆動電圧の印加により高増倍率で使用するとともに、上記受光器にて受光される後方散乱光の光子を、単一光子のときに比較して所定時間幅あたりに複数個含まれる多光子状態となるように上記光パルスの光量を調整するようにしたことを特徴とする後方散乱光測定方法。
  7. 上記受光器を常温の一定温度に保持して使用するようにしたことを特徴とする請求項6に記載の後方散乱光測定方法。
  8. 上記受光器に対する印加電圧を、環境温度の変動に対する電圧変動幅を所定範囲内に抑えて安定的に供給するようにしたことを特徴とする請求項6または7に記載の後方散乱光測定方法。
  9. 上記受光器で受光される後方散乱光の光量が上記多光子状態となるように光量保持回路にて上記光パルスの光量を適量に保持することを特徴とする請求項6に記載の後方散乱光測定方法。
  10. 上記後方散乱光の電気信号の中から一定振幅以上の多光子信号を検出し、上記光パルスを発生してから一定振幅以上の上記多光子信号を検出するまでの時 間を各光パルスの発生毎にとり、各時間での上記多光子信号の検出頻度を求めるようにしたことを特徴とする請求項6に記載の後方散乱光測定方法。
  11. 上記多光子信号を検出するまでの時間をデジタル化して、上記検出頻度をヒストグラムによりグラフ化することを特徴とする請求項10に記載の後方散乱光測定方法。
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