JP3883053B2 - 磁気ディスク装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、現在のコンピューターの外部記録装置として用いられ、また将来、携帯型の記録装置として期待されている磁気ディスク装置における、外部からの不正なアクセスに対するデータの保護(耐タンパ性)、ならびに、外部からの衝撃に対する耐性(耐衝撃性)の向上技術に特徴を有する磁気ディスク装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図9は従来の磁気ディスク装置100の概略図である。磁気ディスク装置100は、磁気ディスク101と、磁気ディスク101を回転させるスピンドルモータ102と、磁気ディスク101上でデータの書き込み、読み取りを行う磁気ヘッド103と、磁気ヘッド103を磁気ディスク101上で移動させるロータリーアクチュエータ104とから構成される。
【0003】
磁気ディスク101上には、サーボ信号領域105とデータ信号領域106があり、磁気ヘッド103はサーボ信号領域105に書き込まれたサーボ情報を読み取って、自らの位置を検知し、ロータリーアクチュエータ104により移動、位置決めを行って、データ信号領域106にアクセス(書き込み、読み取り)する。
【0004】
そのため、サーボ信号領域105のサーボ情報が破壊されると、磁気ヘッド103は位置検知を行えなくなり、有効なデータ読み取りを行うことができなくなってしまう。現在の磁気ディスク101は1層の記録磁性層のみを持ち、サーボ信号領域105とデータ信号領域106が平面的に配列されているので、磁気ヘッド103が誤ってサーボ信号領域105に書き込みを行い、サーボ情報を誤って破壊してしまう危険性が存在していた。殊に携帯機器用記録装置として用いられるような場合、外部からの衝撃により、磁気ヘッド103が誤ってサーボパターンを壊しながら動いていくことがあり得る。また現状では、ネットワークなど、外部からの何らかの不正なアクセス(タンパ)により、磁気ヘッド103がサーボ信号領域105を侵すような手続きが与えられる危険性も存在する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように、磁気ディスク装置の信頼性を高めるため、サーボ信号領域を磁気ヘッドによる不正な書き込み(改竄)から保護することが望まれている。これを実現するのが本発明の課題である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、保磁力の高い記録層である下層部と、前記下層部より保磁力の低い記録層である上層部とからなる2層の記録層を持つ磁気媒体と、前記磁気媒体にアクセスする磁気ヘッドとを備えた磁気ディスク装置であって、前記上層部は、前記磁気ヘッドで書き込み及び信号読み取りが可能な保磁力を有し、前記下層部は、前記磁気ヘッドで信号読み取りは可能であるが書き込みは不可である保磁力を有し、前記下層部への情報付与は、前記下層部の保磁力より大きい外部磁界を前記磁気媒体に印加して前記上層部および下層部を同一方向に初期磁化し、ついで軟磁性パターンを持つマスターディスクを前記磁気媒体に密着し、外部磁界を前記磁気媒体に印加することによって前記軟磁性パターン下の部分の下層部の初期磁化のみ保持し、それ以外の上層部および残りの下層部は当該外部磁界によって磁化を反転させることによって行ったことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1において、前記磁気ヘッドは、前記磁気媒体との間の相対的移動の方向の下流側に書き込みヘッドを具え、上流側に読み取りヘッドを具え、前記書き込みヘッドによって前記磁気媒体の上層部の不必要な磁気情報を消去しながら前記読み取りヘッドによって前記磁気媒体の下層部からの信号のみを読み取る動作モードを有することを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記磁気媒体のサーボ領域の下層部に、サーボパターンを記録したことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明では、まずサーボパターンを磁気ヘッドによる不正な書き込み(改竄)の危険性から保護するため、磁気媒体として2層媒体を採用する。図1に示すように、2層媒体1は、低い保磁力Hc1を持つ上の記録層(以下、上層部2)と、高い保磁力Hc2を持つ下の記録層(以下、下層部3)の2つの記録層を持つ。2つの記録層の保磁力にはHc1≪Hc2の関係が成り立っている。下層部3は高保磁力を持つため、磁気ヘッドで書き込むことはできない(磁気信号を読み取ることは可能である)。このため、下層部3に磁気情報を書き込めば、磁気ヘッドにより磁気情報が破壊されることがない。
【0010】
ここで、下層部3への書き込みについて説明する。下層部3への書き込みには磁気転写技術を用いる。図2に磁気転写技術の概要を示す(図2の各層内の矢印は磁化の方向を示す。以下の各図においても同様である)。
【0011】
図2の(a)ではまず初期化工程を示す。まず、Hc1およびHc2より十分に大きい外部磁界(初期化磁界6)を、リング型ヘッド20(21は永久磁石、22は軟磁性材料からなるヨーク)から印加することにより、記録層は上下2層、すなわち、上部層2および下部層3とも初期磁化される。
【0012】
次に図2の(b)に下層部3への転写工程を示す。2層媒体1にマスターディスク4を密着し、外部磁界(転写磁界7)Hexを印加する。このとき、外部磁界Hexは初期化磁界と反対方向の磁界で、大きさはHc1≪Hex,Hc2〜Hexを満たすものとする。上層部2は外部磁界Hexが保磁力Hc1より十分大きいので、マスターディスク4の軟磁性パターン5の存在いかんにかかわらずHexの磁界方向(初期磁化と反対方向)に一様に磁化される。一方、下層部3では、軟磁性パターン5下の漏れ磁界が磁化を反転させるほど大きくないため、軟磁性パターン5下では初期磁化はそのまま保たれるが、軟磁性パターン5がない部分では外部磁界により磁化は反転する。このように、下層部3にはマスターディスク4の軟磁性パターン5の転写が行われる。
【0013】
次に、図3に2層媒体1の実施例を示す。図3に示されているのは、2層の記録層を備える記録媒体の層構成を表したものである。図3において、アルミニウムまたはガラスからなる基板31の上に記録層の磁気容易軸方向を制御する目的で、非磁性の下地層32をスパッタリング法によって10nm成膜する。下地層の材料としてはCoCr,CoW,CoTiなどの合金が用いられる。この下地層の上に例えば金属Coを主体とし、Pt,Cr,Ta,Bなどを数%から10数%添加した金属磁性膜(例えば、CoCrPtTaやCoCrPtBなどの合金材料からなる磁性膜)を下部層3として成膜する。次に、CoCr,CoW,CoTiなどのCoを主体とした非磁性の分離層33、さらに、同じくCoCr,CoW,CoTiなどのCoを主体とした非磁性の下地層34の成膜を行う。ここで、下地層34と分離層33はCoを主体とする合金材料であるが、組成や材料の組み合わせが異なる。下地層34の上には記録層としての上層部2が成膜される。上層部2は、やはり下層部3と同じ金属Coを主体とし、Pt,Cr,Ta,Bなどを添加した合金であるが、下層部3よりも保磁力を低くする目的で、添加金属の組成が異なっている。最後に、磁性層上に、磁性膜を腐食、または記録の書き込み/読出しヘッドとの摩擦による劣化から保護する目的でカーボン保護層35を成膜する。
【0014】
本実施の形態では上層部2の保磁力Hc1を3000Oe、下層部3の保磁力Hc2を6000Oeとし、上層部2の厚さを10nm、下層部3の厚さを20nmとする。上層部2の厚さを10nmに抑えたため、磁気ヘッドによる下層部3からの信号の読み取りが可能である。一方で、下層部3は高保磁力を持つため、磁気ヘッドは下層部3に書き込みを行うことができない。
以上をまとめると、
1.下層部3は磁気ヘッドで書き込むことはできない。読み取りは可能である。2.磁気転写技術により下層部3にのみ磁気情報を書き込むことができる。
【0015】
このように磁気転写技術を用いることにより、磁気ヘッドにより破壊されないような磁気情報を記録することが可能となる。
【0016】
上記の手段により、下層部3の磁気情報の保護は可能であるが、実際の信号読み取りの際に上層部2に磁化分布があると、下層部3の磁化分布による磁界変化と区別できない。実際に、タンパあるいは衝撃による磁気ヘッドの異常な書き込みがあった場合、上層部2には改竄された磁化が存在することになる。そのため、上層部2の改竄された磁化を消去してから信号を読み取ることが必要となる。
【0017】
上記手順を実現する磁気ヘッドの実施例を図4に示す。磁気ヘッド10は、磁気抵抗素子などを用いた読み取りヘッド11と、電磁コイルを用いた書き込みヘッド12を具える。本実施形態では、先端に書き込みヘッド12を持ち、後端に読み取りヘッド11を具える磁気ヘッド10を採用する。すなわち、前記2層媒体との間の相対的移動の方向の下流側に書き込みヘッドを具え、上流側に読み取りヘッドを具える。この磁気ヘッド10を用いると、まず先端の書き込みヘッド12で上層部2の改竄された磁化を消去し(この際、磁気ヘッドの書き込み磁界に下層部3の磁化分布は影響されない)、その後直ちに、後端の読み取りヘッド11で同位置の磁化分布による磁界を読み取ることができる。読み取りの時点では既に上層部2の不必要な磁気情報は消去されているので、本磁気ヘッド10は下層部3からの信号のみを読み取ることが可能である。
【0018】
また、図5には読み取りヘッド11の前後両方に書き込みヘッド12A,Bを配置した磁気ヘッドの例を示す。この磁気ヘッドでは、前方の書き込みヘッド12Aを消去ヘッドとして用い、後方の書き込みヘツド12Bを記録ヘッドとして用いるという使用法が可能である。
【0019】
図6に2層の記録層の実施例を示す(上層部2と下層部3の間にある分離層、下地層は省略する)。
【0020】
記録層はデータ信号領域8とサーボ信号領域9に分かれており、サーボ情報はサーボ信号領域9の下層部3に書き込まれる。サーボ信号領域9の下層部3には磁気ヘッド10で書き込みをすることができないので、サーボ情報は磁気ヘッド10で破壊されない。
【0021】
図7に磁気転写技術を用いた、サーボ領域9の下層部3にサーボ情報を書き込む手法を示す。まず、7000Oe程度の外部磁界(初期化磁界6)を印加し、上層部2、下層部3ともに初期磁化する(図7の(a))。続いて、磁気転写工程において初期化磁界6と反対方向に6000Oe程度の外部磁界(転写磁界7)を印加し、サーボ信号領域9の下層部3にサーボパターンを書き込む(図7の(b))。
【0022】
図8には、先端に書き込みヘッド12を、後端に読み取りヘッド11を備える磁気ヘッド10を用いた、サーボ情報の読み取りの工程を示す。
【0023】
図8の(a)の磁気ディスクでは上層部2に改竄された磁化が存在し、このままでは下層部3のサーボ情報を正しく読み取ることができない。
【0024】
図8の(a)に示されているように、本発明の磁気ヘッド10では、まず、書き込みヘッド12により消去磁界を印加し、上層部2の改竄された磁化を消去する。その後直ちに、図8の(b)に示されているように、読み取りヘッド11により下層部3からのサーボ情報を読み取る。
【0025】
まとめると
1.2層の記録層を持つ記録媒体を用いれば、サーボ信号領域9に、磁気ヘッド10の異常な動きによる書き込み(改竄)が行われたとしても、改竄は上層部2にとどまり、下層部3のサーボ情報は保護される。
2.実際にサーボ信号を読み取る際には、上記の先端に消去ヘッドを、後端に再生ヘッドを備える磁気ヘッド10を用いて、上層部2の改竄された磁化を消去しながら、下層部3からのサーボ信号のみを読み取ることができる。
【0026】
このようにして、磁気ヘッド10による改竄を受けても、サーボ信号の読み取りには影響がない磁気ディスク装置が実現される。
【0027】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、外部からの不正なアクセスに対するデータの保護(耐タンパ性)、ならびに、外部からの衝撃に対する耐性(耐衝撃性)に優れた磁気ディスク装置を提供することができる。このため、例えば、磁気ディスク装置を携帯型の記録装置として用いることを想定した場合、外部からの衝撃により磁気ヘッドが異常な動きをし、サーボ信号領域に不正な書き込みを行ってしまうこと、および、ネットワークなど外部から、不正なアクセス(タンパ)により、磁気ヘッドがサーボ信号領域を侵すような手続きが与えられる危険性があることが考えられるが、このような場合でも、磁気ディスクをサーボ情報の破損の危険性から守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】上下2層の記録層を持つ磁気記録媒体(2層媒体)の断面図である。
【図2】2層媒体への転写工程の説明図である。
【図3】2層媒体の層構成を示す断面図である。
【図4】先端に書き込みヘッドを、後端に読み取りヘッドを持つ磁気ヘッドの断面図である。
【図5】読み取りヘッドの前後両方に書き込みヘッドを配置した磁気ヘッドの断面図である。
【図6】2層媒体の記録層の配置を示す断面図である。
【図7】磁気転写技術を用いた、サーボ信号領域へのサーボパターン書き込みを示す断面図である。
【図8】上層部の改竄された磁化を消去した直後に、下層部から読み取りを行う工程を示す断面図である。
【図9】磁気ディスク装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
2 上部層
3 下部層
10 磁気ディスク
11 読み取りヘッド
12 書き込みヘッド

Claims (3)

  1. 保磁力の高い記録層である下層部と、前記下層部より保磁力の低い記録層である上層部とからなる2層の記録層を持つ磁気媒体と、前記磁気媒体にアクセスする磁気ヘッドとを備えた磁気ディスク装置であって、
    前記上層部は、前記磁気ヘッドで書き込み及び信号読み取りが可能な保磁力を有し、前記下層部は、前記磁気ヘッドで信号読み取りは可能であるが書き込みは不可である保磁力を有し、前記下層部への情報付与は、前記下層部の保磁力より大きい外部磁界を前記磁気媒体に印加して前記上層部および下層部を同一方向に初期磁化し、ついで軟磁性パターンを持つマスターディスクを前記磁気媒体に密着し、外部磁界を前記磁気媒体に印加することによって前記軟磁性パターン下の部分の下層部の初期磁化のみ保持し、それ以外の上層部および残りの下層部は当該外部磁界によって磁化を反転させることによって行ったことを特徴とする磁気ディスク装置。
  2. 請求項1において、
    前記磁気ヘッドは、前記磁気媒体との間の相対的移動の方向の下流側に書き込みヘッドを具え、上流側に読み取りヘッドを具え、前記書き込みヘッドによって前記磁気媒体の上層部の不必要な磁気情報を消去しながら前記読み取りヘッドによって前記磁気媒体の下層部からの信号のみを読み取る動作モードを有することを特徴とする磁気ディスク装置。
  3. 請求項1または2において、
    前記磁気媒体のサーボ領域の下層部に、サーボパターンを記録したことを特徴とする磁気ディスク装置。
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