JP3882408B2 - 真空コンデンサ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大電力送信機の発振回路、半導体製造装置用の高周波電源、あるいは誘導加熱装置のタンク回路等に用いられる容量可変形の真空コンデンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
図3は、従来の真空コンデンサの断面図である。セラミック等の絶縁円筒1の両端側に銅製の円筒管2a,2bを接合して円筒部を形成し、この円筒部を固定側端板を兼ねた固定電極取付導体3と可動側端板4とで閉塞して、コンデンサ部を収容する真空容器5を形成している。
【0003】
固定電極取付導体3の内側には、径(半径)の異なる複数の円筒状電極板F1,F2…Fnを同心円状に一定間隔をもって取り付けて固定電極6を形成しており、また、この固定電極6の各電極板間の間隙内に、非接触状態で挿出入できるように、内径の異なる複数の円筒状電極板M1,N2…Mnを可動電極取付導体7に設けて可動電極8を形成している。
【0004】
固定電極取付導体3には、その内側で円筒状電極板F1〜Fnの同心部に、円筒状電極板の軸線に沿ってガイドピン9が設けられる。可動電極取付導体8には、円筒状電極板M1〜Mnの同心部に、ガイドピン9を挿入するガイド部10aをもつ可動リード部10が設けられる。
【0005】
可動リード部10と可動側端板4の間にはベローズ11がロー付けされ、電極側に真空空間を形成しながら可動リード部10の上下動が可能にされる。
【0006】
ねじ受部12は可動側端4の内側に立設され、内端部に鍔部12aが設けてある。13は外周にねじが螺設された可動リードボルトで、一端は可動リード部10の先端部に固定され、他端側は軸線に沿って鍔部12a内の空隙を遊貫してねじ受部12内に突設されている。14は容量調整ナットで、可動リードボルト13が螺合するねじ孔を有し、その一端側はねじ受部12内に突出した可動リードボルト13の端部に螺合し、ベアリング等の軸受15を介して鍔部12aの内底に回転自在に取付けられている。16は最大容量を調節するネジである。
【0007】
なお、真空容器5の円筒部は、全体をセラミック等による絶縁円筒で形成してもよい。要は、固定電極と可動電極とが電気的に絶縁されればよい。
【0008】
このように構成した真空コンデンサで、その静電容量の調整を行う場合は、可動電極と固定電極に課電し、調整ナット14を回動させることにより、可動リード部10を軸線方向に移動させて固定電極6の電極板と可動電極8の電極板との対向面積を変え、両電極6と8間に生ずる静電容量の値を連続的に変化させる。
【0009】
なお、固定電極6と可動電極8とは電気的に絶縁されなければならないので、ガイドピン9と可動リード部10とは電気的に絶縁されなければならないが、この絶縁手段は、摺動の円滑性を阻害しないように行う必要がある。それにはガイドピン9および可動リード部10のいずれか一方を絶縁材料で構成する必要がある。摺動性の円滑を保つためにガイドピン9をセラミック、特にアルミナによるセラミックで形成し、可動リード部10をリン青銅で形成することを好適とし、また、ガイドピン9を金属性にし、その表面に滑性の優れたナイロン樹脂をコーティングしても絶縁を保ちながら円滑な摺動を確保することができる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
従来の真空コンデンサでは、固定電極6の電極板と可動電極8の電極板との空隙を精度よく保持して可動電極8を移動させるため、ガイドピン9が設けられているが、このガイドピン9は固定側端板3の中心にロー付け接合で固定されている。ここで、ガイドピン9がセラミック製の場合、ロー付け接合するためには固定側端板3はメタライズ処理される。
【0011】
このような構造において、真空コンデンサの容量を多数回変化させると、ガイドピン9と可動リード部10のガイド部10aの間に横方向の応力が発生し、この応力のためガイドピン9(セラミック製)にその端面でクラックが発生し、固定電極6との接合部が破損することがある。
【0012】
本発明の目的は、ガイドピン9のクラック発生を防止し、しかも軸寸法を最小にしながらガイドピン部分での閃絡を防止した真空コンデンサを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため、固定側端板にはガイドピンを摺動自在に支持できるガイド部を設けることで固定側端板と該ガイド部の間を機械強度を高めて固定し、このガイド部にガイドピンを摺動自在に挿入することで端板のメタライズ処理及びガイドピンのロー付けを不要にしながらガイド機能を確保し、さらにガイドピンの材質をアルミナセラミックとすること、さらにはアルミナセラミックのアルミナ成分を92%以上とすることにより軸寸法を最小にしながらガイドピン部分での閃絡を防止できるようにしたもので、以下の構成を特徴とする。
【0014】
円筒部の一端側に固定側端板、他端側に可動側端板を有する真空容器と、
前記固定側端板に複数の円筒状電極板を同心状に取り付けて形成した固定電極と、
前記固定電極の各円筒状電極板間に非接触状態で挿出入できるように複数の円筒状電極板を同心状に取り付けて形成した可動電極と、
前記可動電極の取付導体と前記可動側端板との間に設けられ、真空状態を保持した状態で前記可動電極の移動を可能とするベローズと、
前記固定側端板の中心部に一体的に設けられるガイド部と、このガイド部に対向して前記可動電極の取付導体の中心部に設けられる可動リード部と、前記ガイド部と可動リード部とにそれぞれ摺動自在に挿入されるガイドピンとを有して前記可動電極を前記固定電極側に摺動自在にガイドするガイド手段とを備え、
前記ガイドピンは、アルミナセラミック製とすることを特徴とする。
【0015】
また、前記ガイドピンは、アルミナ含有率を92%以上とすることを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一実施形態の構成図で、縦断正面図を示している。同図が図2と異なる部分は、固定側端板3にはガイドピン9の取り付け位置に円筒状のガイド部17を設けた点にある。
【0017】
ガイド部17は、固定側端板3と同じ部材または同等の部材で作成され、固定側端板3にロー付けされる。ガイドピン9は、固定側端板3にロー付けされることなく、摺動自在でガイド部17に挿入される。また、ガイドピン9は、可動リード部10に対しても固定されることなく、摺動自在にされる。
【0018】
ガイド部17の長さ寸法L1及び可動リード部10の長さ寸法L2は、可動電極8の最大移動長さL0よりも大きくされ、可動電極8が最小容量位置にされた場合にもガイドピン9がガイド部17及び可動リード部10から外れないようにする。
【0019】
したがって、上記の構成によれば、ガイドピン9は、固定側端板3にロー付けされることなく、ガイド部17に挿入される構造にし、ガイド部17を固定側端板3にロー付けするため、ガイド部17と固定側端板3との間のロー付けはこれらが同一部材又は同等部材にされて強固な構造を得ることができる。この構造により、ガイドピン9がセラミック製にされる場合で、多数回の容量変更操作がなされたときにもガイドピン9にクラックが発生するのを防止できる。また、固定側端板3にはメタライズ処理が不要になる。
【0020】
本実施形態は、上記の構成に加えて、ガイドピン9の材質をアルミナセラミックとし、さらにはアルミナセラミックのアルミナ成分を92%以上とする。この理由を以下に詳細に説明する。
【0021】
真空コンデンサは、主に数百KHZの高周波で使用されるが、固定電極側のガイド及び可動電極側のガイドの先端間で高い電圧が印加される。この高い電圧に対して両ガイド間に設けるガイドピンの材質により、閃絡電圧が変化する。
【0022】
下記の表は、図1の構造の真空コンデンサで、ガイド部17の先端と可動リード部10の先端との距離L3を1mm、印加電圧の周波数を500MHZとし、セラミック製とするガイドピン9の材質をアルミナ、ジルコニア、マグネシアとした場合のそれぞれの閃絡電圧の測定結果を示す。
【0023】
【表1】
Figure 0003882408
【0024】
この表からも明らかなように、ガイドピン9としてアルミナセラミックを使用した場合が閃絡電圧が最も高くなる。換言すれば、ガイドピン9としてアルミナセラミックを使用することで、同じ閃絡電圧を得るのに他の材質のものに比べて距離L3を短くすることができ、真空コンデンサの軸寸法を最小にしながら、可動電極の確実なガイドが可能になる。
【0025】
図2は、ガイドピン9をアルミナセラミックとする場合で、そのアルミナ(Al23)含有率を横軸とした閃絡電圧特性を示す。なお、計測条件は、周波数を500MHZ、距離L3を1mmとした場合である。同図から明らかなように、アルミナの含有率を92%以上とすることで高い閃絡電圧を得ることができる。
【0026】
したがって、本実施形態では、図1の構造において、ガイドピン9をアルミナセラミックとし、さらにはアルミナ含有率を92%以上とする。これにより、ガイドピン部分で閃絡を起こすことなく最小距離にすることにより、真空コンデンサの軸寸法を最小にしながら、可動電極の確実なガイドが可能になる。
【0027】
以上までの実施形態において、ガイド部17は、固定側端板3と一体構造のものにした切り出し構造とすることができる。この場合、ガイド部17と固定側端板3とのロー付けも不要になる。
【0028】
また、図1の実施形態はベローズ11を可動リード部10に取付けた場合であるが、可動電極取付導体7に取付けてもよく、また、可動リード部10を可動電極取付導体と一体又は別個に設けた構造など、適宜設計変更できる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように、本発明はガイドピンを固定側端板に摺動自在に支持するガイド部を設けたため、固定側端板とガイド部とを機械的強度を高めて固定又は一体構造のものにでき、固定側端板をメタライズ処理すること及び固定側端板にガイドピンを直接にロー付けする必要性がなくなるし、ガイドピンのクラック発生を防止できる。
【0030】
これに加えて、ガイドピンの材質をアルミナセラミックとすること、さらにはアルミナセラミックのアルミナ成分を92%以上とすることにより軸寸法を最小にしながらガイドピン部分での閃絡を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の構成図。
【図2】ガイドピンのアルミナ含有率と閃絡電圧特性図。
【図3】従来の真空コンデンサの構成図。
【符号の説明】
1…絶縁円筒
2a,2b…円筒
3…固定側端板
4…可動側端板
5…真空容器
6…固定電極
7…可動電極取付導体
8…可動電極
9…ガイドピン
10…可動リード部
11…ベローズ
13…ねじ軸
14…調整ナット
17…ガイド部
1〜Fn,M1〜Mn…円筒状電極板

Claims (2)

  1. 円筒部の一端側に固定側端板、他端側に可動側端板を有する真空容器と、
    前記固定側端板に複数の円筒状電極板を同心状に取り付けて形成した固定電極と、
    前記固定電極の各円筒状電極板間に非接触状態で挿出入できるように複数の円筒状電極板を同心状に取り付けて形成した可動電極と、
    前記可動電極の取付導体と前記可動側端板との間に設けられ、真空状態を保持した状態で前記可動電極の移動を可能とするベローズと、
    前記固定側端板の中心部に一体的に設けられるガイド部と、このガイド部に対向して前記可動電極の取付導体の中心部に設けられる可動リード部と、前記ガイド部と可動リード部とにそれぞれ摺動自在に挿入されるガイドピンとを有して前記可動電極を前記固定電極側に摺動自在にガイドするガイド手段とを備え、
    前記ガイドピンは、アルミナセラミック製とすることを特徴とする真空コンデンサ。
  2. 前記ガイドピンは、アルミナ含有率を92%以上とすることを特徴とする請求項1に記載の真空コンデンサ。
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