JP3881300B2 - 音声スイッチ方法、音声スイッチ及び音声スイッチプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体 - Google Patents

音声スイッチ方法、音声スイッチ及び音声スイッチプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、拡声通話系においてハウリングの原因となる音響エコーを抑圧する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
拡声通話系では、受話音声がスピーカから拡声されマイクロホンに収音されて音響エコーが生じ、そのまま送信されると通話の障害や不快感などの問題が生じる。さらに対地の拡声通話系を含めて形成される閉ループのループゲインが1より大きい場合には、音響エコーはハウリングを引き起こし、通話を不可能にする。このような拡声通話系の問題を解決するために、音声スイッチが提案されている。
【0003】
[第1の従来法]
従来の拡声通話装置に用いられる音声スイッチの構成を図1に示す。
音声スイッチは、送話検出部5、受話信号を減衰させるための可変損失部7、マイクロホン3からの収音信号y(k)を減衰させるための可変損失部8からなる。送話検出部5は、送話音声の有無を検出し、送話音声があると判定されるときは受話側の可変損失部7により受話信号のみ減衰させ、送話音声がないと判定されたときは送話側の可変損失部8により収音信号y(k)のみを減衰させる。これによりエコーを小さくし、対地を含めて形成される閉ループのループゲインを低減させる。
送話検出方法としては、たとえば収音信号y(k)とスピーカ再生信号x(k)の短時間平均パワー比(例えば、非特許文献1 参照)を適用することができる。
この方法では、
【数2】
Figure 0003881300
y:マイクロホン収音信号y(k)の短時間平均パワー
x:スピーカ再生信号x(k)の短時間平均パワー
で定義される収音信号とスピーカ再生信号の短時間平均パワー比について
【数3】
Figure 0003881300
と展開することを利用する。送話音声がなくて受話信号のみあるとき
xy=(エコー経路のパワー利得)
となるので、マイクロホン収音信号とスピーカ再生信号の短時間平均パワー比の変動を注視すれば、送話音声を検出できる。
【0004】
しかし、この方法には
(P1)送話音声の話頭は、受話音声と重なった時に受話エコーに埋もれやすく、話頭切れが生じる。
(P2)エコー経路のインパルス応答が長いとき、エコーを送話音声に誤判定しないように平均パワーを算出する必要がある。このとき送話音声が検出されるまでに時間がかかり話頭切れが生じる。
(P3)マイクロホンの位置が動いたりして、音響結合が増大する方向にエコー経路が変動したときに、ダブルトーク状態として誤判定される。
という問題がある。
【0005】
[第2の従来法]
そこで上記の問題を解決するために、図2のように音声スイッチとエコー消去部を組み合わせることが提案されている(例えば、特許文献1 参照)。
エコー消去部9は、スピーカ再生信号x(k)と適応フィルタで推定されたエコー経路から予測エコー信号を生成し、減算器により収音信号y(k)から差し引くことでエコー消去を図る。この拡声通話装置においては、送話検出部5は、収音信号y(k)とエコー消去処理後段の残留エコー信号e(k)を送話検出に用いることができる。
この送話検出方法では、
【数4】
Figure 0003881300
y:マイクロホン収音信号y(k)の短時間平均パワー
e:残留エコー信号e(k)の短時間平均パワー
で定義される短時間平均パワー比に着目している。適応フィルタによるエコー予測の精度が十分高いとき、このパワー比は
【数5】
Figure 0003881300
と近似できる。この値があらかじめ設定した閾値より大きいときに送話があると判定し、閾値より小さいときに送話がないと判定する。
受話信号のみあるとき短時間平均パワー比Ryeは、エコー消去量(−30dB前後)とほぼ一致している。送話音声が入力されると、短時間平均パワー比Rye
直ちに0dB近辺の値をとるので、上記の問題(P1),(P2)が解決される。
【0006】
しかし実際にエコーキャンセラが使用される状況では、常に十分にエコー消去されているとは限らない。
例えば、
(1)エコーキャンセラが起動した直後
(2)エコー経路が変化した直後
(3)背景雑音があり、マイクロホンのSN比が低いとき
(4)ダブルトーク状態で送話を検出し損なって、適応フィルタを更新してしまったとき、
などの状況では、適応フィルタによる推定が不十分なため残留エコーパワーが大きくなる。このとき上記短時間平均パワー比は
【数6】
Figure 0003881300
となり、この送話検出方法では残留エコーと送話音声の判別が困難になる。そのため(P1),(P2),(P3)の問題はいずれも残る。
さらにステレオ信号による拡声通話を実現するためのマルチチャネル・エコーキャンセラでは、ステレオ受話信号のチャネル間相関が高いために、エコーが消去されている状態であっても推定されたエコー経路と真のエコー経路は必ずしも一致しない(文献 M.M.Sondhi , D. R. Morgan , and J. L. Hall , "Stereo-phonic Acoustic Echo Cancellation -An Overview of the Fundamental Problem ," IEEE Signal Processing Letters , vol.2 , no . 8 , pp. 148-151(1995)参照)。そのため、話者が交代して受話信号のチャネル間相互相関が変化すると突然残留エコーが生じ、モノラルエコーキャンセラと比較して(P1),(P2),(P3)の問題がより引き起こされやすくなる。
【0007】
【特許文献1】
特開平7−226697号公報(第6頁)
【非特許文献1】
来山,田村,山本,石上,「共通の適応制御部をもつ多重エコーキャンセラ」、
信学技法 CS78−23,1978
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、適応フィルタの状態や拡声再生チャネル数によらずに快適な双方向拡声通話を実現するには、エコーもしくは残留エコーのレベルの大小や変動によらず、マイクロホン収音信号から送話音声の有無を確実に判定する必要がある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
そこでスピーカM個(Mは2以上の整数)とマイクロホンN個(Nは1以上の整数)が共通の音場に配置され、スピーカからMチャネル信号を再生し、マイクロホンからのNチャネル収音信号を処理して送話信号とする拡声通話装置における上述の問題を解決するために、
Mチャネル再生信号とNチャネル収音信号の短時間スペクトルを求め、
マイクロホンごとに
第1チャネル再生信号の短時間スペクトルと収音信号 y(k) (k:時刻)の短時間スペクトルとから第1のコヒーレンスγ 2 1y (f) (f:周波数)を求め、第mチャネル再生信号 ( m≧2 ) から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルと、収音信号 y(k) から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルとから、第mのコヒーレンスγ 2 my(m-1) (f) を求め、収音信号y(k)に占める周波数fごとのエコー成分の比率を
γ 2 (f) =1−{ ( 1−γ 2 1y (f)) ・・・ ( 1−γ 2 My(M-1) (f))
推定し
マイクロホンごとに、
収音信号のパワースペクトルS yy (f) と、周波数帯域ごとに推定した収音信号に占める受話エコー成分の比率γ 2 (f) とから非エコー成分のパワー
求め、
マイクロホンごとに求めた非エコー成分のパワーを予め設定された閾値と比較して送話検出を行い、
送話ありと判定されたとき受話信号を減衰させてMチャネル再生信号としてスピーカに入力し、送話なしと判定されたとき収音信号を減衰させて送話信号とする音声スイッチ方法及び音声スイッチを構成する。
この構成により音声レベルが時々刻々と変動するダブルトーク状態であってもより確実に送話検出を行いつつ受話信号もしくは収音信号の減衰量を制御することが可能となる
【0010】
また、スピーカM個(Mは2以上の整数)とマイクロホンN個(Nは1以上の整数)が共通の音場に配置され、スピーカからMチャネル信号を再生し、
スピーカから再生される信号を擬似エコー経路に入力して擬似エコー信号を生成し、
マイクロホンからの収音信号から前記擬似エコー信号を差し引くことでエコー消去を図り、
その残差信号をもとに擬似エコー経路を更新すると同時に、その残差信号を処理して送話信号とする拡声通話装置においても、
Mチャネル再生信号とNチャネル収音信号の短時間スペクトルを求め、
各マイクロホンについて、収音信号に占めるエコー成分の比率を推定して 非エコー成分のパワーを求め、
マイクロホンごとに求めた非エコー成分のパワーから送話検出を行い、
送話ありと判定されたとき、受話信号を減衰させてスピーカから再生し、送話なしと判定されたとき、エコー消去処理を経た信号の減衰量を制御する音声スイッチ方法及び音声スイッチを構成する。
この構成により、適応フィルタによるエコー消去が不完全で残留エコーが大きい場合でも、確実に送話信号を検出して伝送することが可能となる
【0011】
以下ではこの発明に至った考え方を説明する。
収音信号に占めるエコー成分の比率を推定する目的に、コヒーレンスすなわちクロススペクトルをパワースペクトルで正規化して得られる複素関数の振幅2乗値を用いることができる。
いま音響エコー信号をyE(k)、近端話者の音声などの非エコー信号をyI(k)とすると、収音信号は
y(k)=yE(k)+yI(k)
になる。再生チャネル数M=1のケースでは、再生信号と収音信号のコヒーレンスは、
【数7】
Figure 0003881300
である。
通常、再生信号x(k)と非エコー信号yI(k)、エコー信号yE(k)と非エコー信号yI(k)は無相関と見なせるので、
【数8】
Figure 0003881300
が成立している。また再生信号x(k)からエコー信号yE(k)への伝達特性がほぼ一定と見なせる場合には、2つの信号のクロススペクトルについて
【数9】
Figure 0003881300
が成立している。これより再生信号x(k)と収音信号y(k)のコヒーレンスは、
【数10】
Figure 0003881300
を満たしている。
この式によれば、このコヒーレンスとは再生信号と相関のある成分が収音信号のパワースペクトルに占める割合である。すなわち再生信号と収音信号のコヒーレンスは、収音信号に占めるエコー成分のパワー比率を表し、0〜1の値をとる。なお、コヒーレンスについては例えば日野著、朝倉書店発行「スペクトル解析」に、コヒーレンスを用いた解析については、例えば森下,小畑著、計測自動制御学会発行「信号処理」に詳しい。
【0012】
上記のコヒーレンス解析によれば各周波数帯域で非エコー信号が収音信号中に占めるパワー比は
【数11】
Figure 0003881300
により求められる。この式を用いれば、収音信号にエコー信号と非エコー信号が混在している状況でも非エコー信号のパワーが求められるので確実な送話検出を行うことができる。
再生チャネル数が2チャネル以上の場合についても、コヒーレンスを同様に用いて、収音信号に示す非エコー信号のパワーを求められる。例えば、再生チャネル数M=2のとき、収音信号に占めるエコー成分の比率は
γ2(f)=1−{(1−γ2 1y(f))(1−γ2 2y(1)(f))}
ただし
γ2 1y(f):x1(k)とy(k)のコヒーレンス
γ2 2y(1)(f):x2(k)からx1(k)との相関成分を除去した信号と、y(k)からx1(k)との相関成分を除去した信号のコヒーレンス
であり、これより非エコー信号のパワーは
【数12】
Figure 0003881300
になる。
なお上記のような多入力1出力系のコヒーレンスについては文献J.S. Bendat and A.G. Piersol, "Engineering Applications of Correlation and Spectral Analysis," John Wiley &Sons(1980)に詳しい。
【0013】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
はじめに図3に示されたMスピーカ・1マイクロホンにおける音声スイッチを参照して、本発明の音声スイッチ方法及び音声スイッチの実施例を説明する。
以下の説明では、各信号をL/Dサンプル(Lは適応フィルタのフィルタ長、DはL/Dが整数となる1以上の整数)となるごとに1フレーム=2Lサンプルでブロック化して扱う。
【0014】
ステップ1
送話信号パワー推定部6では、時刻k=jL/D(j:フレーム番号)においてスピーカから再生されるMチャネル信号x1(k)〜xM(k)および収音信号y(k)を、TF変換部611〜61MおよびTF変換部62によって
[X1(1,j),・・・,X1(n,j),・・・,X1(2L,j)]
=FFT([x1(jL/D−2L+1),・・・,x1(jL/D)])


[XM(1,j),・・・,XM(n,j),・・・,XM(2L,j)]
=FFT([xM(jL/D−2L+1),・・・,xM(jL/D)])
[Y(1,j),・・・,Y(n,j),・・・,Y(2L,j)]
=FFT([y(jL/D−2L+1),・・・,y(jL/D)])
のように周波数領域に変換する。(ただし、1<n<2L、FFT:Fast Fourier
Transform)
【0015】
ステップ2
エコー成分比率推定部63は、図4に示す信号フローにより時刻k=jL/DにおけるMチャネル再生信号x1(k)〜xM(k)と収音信号y(k)の短時間スペクトルX(n,j)、Y(n,j)を入力とし、収音信号に占めるエコー成分の比率を周波数帯ごとに求める。
まず第mチャネル再生信号xm(k)について、第1〜第m−1チャネル再生信号x1(k)〜xm-1(k)と無相関な成分Xm(m-1)(n,j)を相関除去部631m(m=2〜M)にて抽出する。ただし、相関除去部631mへの入力は、再生信号そのものの短時間スペクトルX2(n,j)〜Xm(n,j)ではなく、相関成分除去済みの第2〜第m−1チャネル再生信号の短時間スペクトル X2(1)(n,j)〜Xm-1(m-2)(n,j)になっている。これらを用いて、第mチャネル再生信号xm(k)(m≧2)から下式のように第1〜第m−1チャネル再生信号x1(k)〜xm-1(k)との相関成分が除去される。
【数13】
Figure 0003881300
ここでε[]は時間平均をとることを意味しており、例えば
ε[X* i(i-1)(n,j)Xm(n,j)]
=βε[X* i(i-1)(n,j-1)Xm(n,j-1)]+(1−β)X* i(i-1)(n,j)Xm(n,j)のように、1フレーム前の処理結果と0〜1の値をとる平滑化定数βを用いて実現できる。ただし、"*" は複素共役を表す。
【0016】
次に、収音信号y(k)から第1〜第m−1チャネル再生信号x1(k)〜xm-1(k)と無相関な成分の短時間スペクトルY(m-1)(n,j)を、相関除去部632m(m=2〜M)により抽出する。その処理は
【数14】
Figure 0003881300
であり、上述の相関除去部631mとほぼ同様になっている。
【0017】
そしてコヒーレンス算出部633m(m=1〜M)では、第mチャネル再生信号と収音信号とのコヒーレンスとして、第mチャネル再生信号から抽出された無相関成分Xm(m-1)(n,j)と収音信号から抽出された無相関成分Y(m-1)(n,j)のコヒーレンスを求める。
【数15】
Figure 0003881300
ただし、コヒーレンス算出部6331は第1チャネル再生信号と収音信号のコヒーレンスγ1y(n,j)を求める。
エコー成分比率推定部634では、これらM個のコヒーレンスから収音信号に占めるエコー成分の比率を
【数16】
Figure 0003881300
で求める。
【0018】
ステップ3
信号パワー算出部64では、周波数帯域ごとにエコー成分比率から非エコー信号パワーを算出し、総和をとって非エコー信号パワーを求める。
【数17】
Figure 0003881300
【0019】
ステップ4
送話判定部10では、ステップ3で求めた非エコー信号パワーを閾値Pthと比較する。Pthより大きいとき、送話ありと判定して、受話側可変損失部71〜7Mにより受話信号11〜1Mを減衰させる。また非エコー信号パワーが閾値Pth以下のとき、送話なしと判定し、送話側可変損失部8により収音信号y(k)を減衰させる。閾値Pthの設定法としては、例えばマイクロホン入力定格レベルの−15dBに設定する等が考えられる。
次に図5のようにMスピーカ・2マイクロホン構成をとる場合について説明する。
この場合には送話音声パワー推定部61,62によりマイクロホンごとに収音信号y1(k),y2(k)に含まれる送話音声のパワーを推定し、送話判定部10は、2チャネル分の情報から送話の有無を判定することになる。その判定法としては、例えば各チャネルについて送話音声パワ−を閾値Pthと比較し、Pthより信号パワーの大きいチャネルの数が、あらかじめ設定した閾値Nthを越えるときに送話ありと判定し、それ以外のときに送話なしと判定する方法等が考えられる。Mスピーカ・1マイクロホン構成と同様に、送話ありと判定されたとき受話側可変損失部71〜7Mにより受話信号を減衰させ、送話なしと判定されたとき送話側可変損失部81,82により収音信号を減衰させる。Mスピーカ・Nマイクロホンの場合についてもMスピーカ・2マイクロホンと同様の構成で対応できる。
【0020】
[実施例2]
Mスピーカ・1マイクロホンにおける音響エコー消去部を備えた音声スイッチの構成を図6に示す。図6では、実施例1で説明した音声スイッチが、適応フィルタによる音響エコー消去部と組み合わされている。
送話側可変損失部71〜7Mを経たMチャネル受話信号x1(k)〜xM(k)は、スピーカ2m(m=1・・・M)で音響信号として再生され、音響エコー経路を経てマイクロホン3に回り込む。同時に音響エコー消去部9の予測エコー生成部91に入力されて予測エコー信号が生成される。減算器92によってマイクロホン3からの収音信号y(k)と予測エコー信号との差がとられ、この残差信号e(k)がエコー経路推定部93にフィードバックされると同時に送話側可変損失部8を経て対地へ送信される。
【0021】
スピーカ2mからマイクロホンまでの音響エコー経路のインパルス応答をhm(k)、その長さをL(適応フィルタ長)とすると受話チャネル数M=1のとき入力信号と収音信号の間には
【数18】
Figure 0003881300
の関係があり、インパルス応答と入力信号を
【数19】
Figure 0003881300
のようにベクトル化すると、入力信号と収音信号の関係は次のように簡潔に記述される。
【数20】
Figure 0003881300
のようにベクトル化することで、入力信号と収音信号の関係を受話チャネル数M=1のケースと同様に記述できる。
エコー経路推定部93では、予測エコー生成部91により生成された予測エコー信号と実際の収音信号y(k)との差分e(k)が小さくなるように、e(k)および過去の受話信号に基づいて予測エコー生成用の適応フィルタ係数が逐次更新される。フィルタ更新方法として例えばNLMS法を用いた場合には、フィルタ係数は
【数21】
Figure 0003881300
により更新される。ただしμは推定を安定にするために0〜1の固定値に設定されるステップサイズであり、e(k)は収音信号y(k)から適応フィルタによる予測エコー信号を差し引いた残差信号である。適応フィルタが収束した状態では、エコーを十分に消去することができる。
【0022】
Mスピーカ・2マイクロホンにおける音響エコー消去部を備えた音声スイッチの構成を図7に示す
マイクロホンごとに送話音声パワー推定部61,62と音響エコー消去部91,92があり、2チャネル分の送話音声パワーの情報から送話の有無を判定する。送話判定部10における送話判定方法として、例えば各チャネルについて送話音声パワーを閾値Pthと比較し、Pthより信号パワーの大きいチャネルの数があらかじめ設定した閾値Nthを越えるときに送話ありと判定し、それ以外のときに送話なしと判定する方法等が考えられる。送話ありと判定されたとき、受話側可変損失部71〜7Mにより受話信号を減衰させる。また送話なしと判定されたとき、送話側可変損失部81,82により収音信号y1(k),y2(k)を減衰させる。Mスピーカ・Nマイクロホン構成のときも同様の方法で対応できる。
【0023】
本発明の音声スイッチ及び音響エコー消去部を備えた音声スイッチは、CPUやメモリ等を有するコンピュータと記録媒体から構成することができる。記録媒体は、CD−ROM、磁気ディスク装置、半導体メモリ等の機械読み取り可能な記録媒体であり、ここに記録された音声スイッチプログラムあるいは通信回線を介して伝送された音声スイッチプログラムは、コンピュータに読み取られ、コンピュータの動作を制御し、コンピュータ上に前述した構成要素及び処理を実現する。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、周波数領域で多チャネル再生信号と収音信号との間のコヒーレンスを算出し、マイクロホンごとに収音信号が占める非エコー信号のパワーを求め、これに基づいて送話検出を行う。これによりエコー経路の推定が不十分な状態やダブルトーク状態でも確実に送話を検出でき、品質の高い拡声通話を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の音声スイッチの構成を示す図。
【図2】従来のエコー消去部を備えた音声スイッチの構成を示す図。
【図3】Mスピーカ・1マイクロホンにおける音声スイッチの構成例を示す図。
【図4】図3におけるエコー成分比率推定部の構成例を示す図。
【図5】Mスピーカ・2マイクロホンにおける音声スイッチの構成例を示す図。
【図6】Mスピーカ・1マイクロホンにおける音響エコー消去部を備えた音声スイッチの構成例を示す図。
【図7】Mスピーカ・2マイクロホンにおける音響エコー消去部を備えた音声スイッチの構成例を示す図。
【符号の説明】
6・・・送話信号パワー推定部、7,8・・・可変損失部、9・・・音響エコー消去部、10・・・送話判定部

Claims (8)

  1. スピーカM個(Mは2以上の整数)とマイクロホンN個(Nは1以上の整数)が共通の音場に配置され、スピーカからMチャネル受話信号を再生し、マイクロホンからのNチャネル収音信号を処理して送話信号とする拡声通話装置に用いられる音声スイッチ方法において、
    Mチャネル再生信号とNチャネル収音信号の短時間スペクトルを求め、
    マイクロホンごとに
    第1チャネル再生信号の短時間スペクトルと収音信号 y(k) (k:時刻)の短時間スペクトルとから第1のコヒーレンスγ 2 1y (f) (f:周波数)を求め、第mチャネル再生信号 ( m≧2 ) から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルと、収音信号 y(k) から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルとから、第mのコヒーレンスγ 2 my(m-1) (f) を求め、収音信号y(k)に占める周波数fごとのエコー成分の比率を
    γ 2 (f) =1−{ ( 1−γ 2 1y (f)) ・・・ ( 1−γ 2 My(M-1) (f))
    推定し、
    マイクロホンごとに
    収音信号のパワースペクトルS yy (f) と、周波数帯域ごとに推定した収音信号に占める受話エコー成分の比率γ 2 (f) から非エコー成分のパワーを
    Figure 0003881300
    求め、
    マイクロホンごとに求めた非エコー成分のパワーを予め設定された閾値と比較して送話検出を行い、
    送話ありと判定されたとき、受話信号を減衰させてMチャネル再生信号としてスピーカに入力し、送話なしと判定されたとき、収音信号を減衰させて送話信号とすることを特徴とする音声スイッチ方法。
  2. 請求項1に記載の音声スイッチ方法において、
    スピーカで再生される信号を擬似エコー経路に入力して擬似エコー信号を生成し、
    マイクロホンからの収音信号から前記擬似エコー信号を差し引き、
    その残差信号をもとに擬似エコー経路を更新するエコー消去処理を行い、
    受話信号もしくはエコー消去処理を経た収音信号を減衰させることを特徴とする音声スイッチ方法。
  3. スピーカM個(Mは2以上の整数)とマイクロホンN個(Nは1以上の整数)が共通の音場に配置され、スピーカからMチャネル受話信号を再生し、マイクロホンからのNチャネル収音信号を処理して送話信号とする拡声通話装置に用いられる音声スイッチにおいて、
    スピーカM個と接続され、Mチャネル再生信号の短時間スペクトルを求める手段と、
    マイクロホンN個と接続され、Nチャネル収音信号y(k)(k:時刻)の短時間スペクトルを求める手段と、
    マイクロホンごとに
    第1チャネル再生信号の短時間スペクトルと収音信号 y(k) (k:時刻)の短時間スペクトルとから第1のコヒーレンスγ 2 1y (f) (f:周波数)を求め、第mチャネル再生信号 ( m≧2 ) から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルと、収音信号 y(k) から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信 号の短時間スペクトルとから、第mのコヒーレンスγ 2 my(m-1) (f) を求め、収音信号y(k)に占める周波数fごとのエコー成分の比率を
    γ 2 (f) =1−{ ( 1−γ 2 1y (f)) ・・・ ( 1−γ 2 My(M-1) (f))
    推定する手段と、
    マイクロホンごとに
    収音信号のパワースペクトルS yy (f) と、周波数帯域ごとに推定した収音信号に占める受話エコー成分の比率γ 2 (f) から非エコー成分のパワーを
    Figure 0003881300
    求める手段と、
    マイクロホンごとに求めた非エコー成分のパワーを予め設定された閾値と比較して送話の有無を検出する手段と、
    検出された送話の有無により受話信号もしくは収音信号を減衰させる手段と、
    を備えたことを特徴とする音声スイッチ。
  4. 請求項に記載の音声スイッチにおいて、
    擬似エコー経路と、
    スピーカで再生される再生信号を擬似エコー経路に入力して擬似エコー信号を生成する手段と、
    マイクロホンからの収音信号から前記擬似エコー信号を差し引く手段と、
    その残差信号をもとに擬似エコー経路を更新する手段とからなるエコー消去手段を備え、
    受話信号もしくはエコー消去処理を経た収音信号を減衰させる手段と、
    を備えたことを特徴とする音声スイッチ。
  5. スピーカM個(Mは2以上の整数)とマイクロホンN個(Nは1以上の整数)が共通の音場に配置され、スピーカからMチャネル受話信号を再生し、マイクロホンからのNチャネル収音信号を処理して送話信号とする拡声通話装置に用いられる音声スイッチとしてコンピュータを機能させる音声スイッチプログラムにおいて、
    Mチャネル再生信号とNチャネル収音信号の短時間スペクトルを求める処理と、
    各マイクロホンについて、
    第1チャネル再生信号の短時間スペクトルと収音信号y(k)(k:時刻)の短時間スペクトルから第1のコヒーレンスγ2 1y(f)(f:周波数)を求め、第mチャネル再生信号(m≧2)から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルと収音信号y(k)(k:時刻)から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルから第mのコヒーレンスγ2 my(m-1)(f)(f:周波数)を求め、収音信号y(k)に占める周波数fのエコー成分の比率を
    γ2(f)=1−{(1−γ2 1y(f))・・・(1−γ2 My(M-1)(f))}
    推定する処理と
    各マイクロホンについて、
    収音信号のパワースペクトルS yy (f) と、周波数帯域ごとに推定した収音信号に占める受話エコー成分の比率γ 2 (f) とから非エコー成分のパワーを
    Figure 0003881300
    求める処理と、
    マイクロホンごとに求めた非エコー成分のパワーを予め設定された閾値と比較して送話検出を行う処理と、
    送話ありと判定されたとき受話信号を減衰させてスピーカから再生し、送話なしと判定されたとき収音信号を減衰させて送話信号とする処理と、
    をコンピュータに実行させる音声スイッチプログラム。
  6. 請求項に記載の音声スイッチプログラムにおいて、
    擬似エコー経路を生成する処理と、
    スピーカで再生される信号を基に擬似エコー経路により擬似エコー信号を生成する処理と、
    マイクロホンからの収音信号から前記擬似エコー信号を差し引く処理と、
    その残差信号をもとに擬似エコー経路を更新してエコー消去を行う処理と、
    受話信号もしくはエコー消去処理を経た収音信号を減衰させる処理と、
    を有する音声スイッチプログラム。
  7. スピーカM個(Mは2以上の整数)とマイクロホンN個(Nは1以上の整数)が共通の音場に配置され、スピーカからMチャネル受話信号を再生し、マイクロホンからのNチャネル収音信号を処理して送話信号とする拡声通話装置に用いられるとしてコンピュータを機能させる音声スイッチプログラムを記録した記録媒体において、
    Mチャネル再生信号とNチャネル収音信号の短時間スペクトルを求める処理と、
    各マイクロホンについて、
    第1チャネル再生信号の短時間スペクトルと収音信号y(k)(k:時刻)の短時間スペクトルから第1のコヒーレンスγ2 1y(f)(f:周波数)を求め、第mチャネル再生信号(m≧2)から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルと収音信号y(k)(k:時刻)から第1〜第m−1チャネル再生信号との相関成分を除去した信号の短時間スペクトルから第mのコヒーレンスγ2 my(m-1)(f)(f:周波数)を求め、収音信号y(k)に占める周波数fのエコー成分の比率を
    γ2(f)=1−{(1−γ2 1y(f))・・・(1−γ2 My(M-1)(f))}
    推定する処理と
    各マイクロホンについて、
    収音信号のパワースペクトルS yy (f) と、周波数帯域ごとに推定した収音信号に占める受話エコー成分の比率γ 2 (f) とから非エコー成分のパワーを
    Figure 0003881300
    求める処理と、
    マイクロホンごとに求めた非エコー成分のパワーを予め設定された閾値と比較して送話検出を行う処理と、
    送話ありと判定されたとき受話信号を減衰させてスピーカから再生し、送話なしと判定されたとき収音信号を減衰させて送話信号とする処理と、
    をコンピュータに実行させる音声スイッチプログラムを記録した記録媒体。
  8. 請求項に記載の音声スイッチプログラムを記録した記録媒体において、
    擬似エコー経路を生成する処理と、
    スピーカで再生される信号を基に擬似エコー経路により擬似エコー信号を生成する処理と、
    マイクロホンからの収音信号から前記擬似エコー信号を差し引く処理と、
    その残差信号をもとに擬似エコー経路を更新してエコー消去を行う処理と、
    受話信号もしくはエコー消去処理を経た収音信号を減衰させる処理と、
    を有する音声スイッチプログラムを記録した記録媒体。
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