JP3880427B2 - 電気式ディスクブレーキ - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車や自動二輪車等の各種車両に搭載され、電動モータの駆動力で進退動する進退動機構により、ディスクロータに摩擦パッドを押圧摺動して制動を行う電気式ディスクブレーキに係るものであり、制動時に摩擦パッドに掛かる荷重を検知するためのセンサが、摩擦パッドに蓄積された制動熱に影響されにくいものとし、センサの作動の正確性と耐久性を向上させるものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車や自動二輪車等の各種車両に於いて、電動モータの駆動力により進退動機構を進退動させ、ディスクロータに摩擦パッドを押圧摺動して制動を行う電気式ディスクブレーキが存在する。この摩擦パッドがディスクロータに押し付けられる際の押圧力を検出し、この押圧力に基づいて制動を制御するため、特開2000−62591号公報記載の発明の如く、摩擦パッドの押圧部材の先端に、圧電素子等の圧力センサを設けたものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この従来の構成では、制動熱により高温化する摩擦パッドの裏面にセンサが直に接触又は近接しているため、センサへの制動熱の影響が大きかった。更に、作用部のシリンダ内には、進退動機構や電動モータ等の多くの部品を組み付けているため、放熱性に乏しく、冷却も容易ではなかった。そのため、センサが高温化して、検出精度の低下を生じる事があり、電動式ディスクブレーキの作動に影響を及ぼす虞があった。また、シリンダ内部に設けるため、センサの組み付けやメンテナンスも容易ではなかった。更に、センサは進退動機構と共に進退動するので、この進退移動長さに応じて余裕を持たせた長さで進退動機構、その他の回動部品を内装したシリンダ内に、センサのハーネスを挿通させている。そのため、該ハーネスがシリンダ内で弛み、前記部品間に挟まり、進退動機構の作動に支障を与えたり、ハーネスが断線される虞もあった。
【0004】
本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、摩擦パッドのディスクロータへの押圧力を検出するセンサを、制動熱からの影響を受けにくい位置に配置可能とするものである。その結果、センサの作動の正確性と耐久性を向上させる事を可能とするものである。また、センサの組み付け性やメンテナンス性にも優れたものとする。尚、本明細書で述べる、ひずみを検出するセンサとは、圧縮荷重を検出可能な圧縮荷重センサ、引張荷重を検出可能な引張荷重センサ等、荷重が作用した際の伸び、縮み、ねじれ等の局部的変形を検知可能な、ひずみセンサ、荷重センサ等の全てを含むものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の如き課題を解決するため、電動モータの駆動力で一方の摩擦パッドをディスクロータの一方の摩擦面に押圧摺動させる進退動機構を内装した作用部と、他方の摩擦パッドをディスクロータの他方の摩擦面に押圧摺動させる反作用部と、前記作用部と反作用部とを連結するブリッジ部とから成るキャリパボディを設けた電気式ディスクブレーキに於いて、制動時に撓み変形を生じるブリッジ部又は反作用部であって、摩擦パッドとの非当接部に、変形によるひずみを検知するセンサを内蔵して配置し、この内蔵したセンサで検知したひずみ量を、摩擦パッドのディスクロータへの押圧力として検出するものである。
【0006】
また、キャリパボディは、ブリッジ部と作用部との間で分割形成し、この分割部にセンサを配置しても良い。
【0007】
また、前記ひずみを検知するセンサは、ブリッジ部又は反作用部の肉厚の中心より外方に内蔵して、圧縮荷重を検知するひずみセンサであること、又はブリッジ部又は反作用部の肉厚の中心より内方に内蔵して、引張荷重を検知するひずみセンサであっても良い。
【0008】
また、電動モータの駆動力で一方の摩擦パッドをディスクロータの一方の摩擦面に押圧摺動させる進退動機構を内装した作用部と、他方の摩擦パッドをディスクロータの他方の摩擦面に押圧摺動させる反作用部と、前記作用部と反作用部とを連結するブリッジ部とから成るキャリパボディを設けた電気式ディスクブレーキに於いて、前記キャリパボディは、前記ブリッジ部と作用部との間で分割形成し、この分割部のうち前記摩擦パッドとの非当接部に、変形によるひずみを検知するセンサを配置し、このセンサで検知したひずみ量を、摩擦パッドのディスクロータへの押圧力として検出するものである。
【0009】
【作用】
本発明は上述の如く構成したものであり、運転者がブレーキペダルを踏み込んで制動操作を行うと、電動モータの駆動により作用部の進退動機構が作動し、一方の摩擦パッドをディスクロータの一方の摩擦面に押圧摺動させ、この反作用で反作用部が他方の摩擦パッドをディスクロータの他方の摩擦面に押圧摺動させて、制動が行われる。この制動時に、キャリパボディのブリッジ部及び反作用部は、撓み変形を生じるが、本発明では、この撓み変形を生じるブリッジ部又は反作用部に、ひずみを検知するセンサを配置しているので、このセンサで検知したひずみ量を、摩擦パッドのディスクロータへの押圧力として検出する事ができる。
【0010】
そして、特開2000−62591号公報記載の従来発明では、摩擦パッドの押圧部材にセンサを設けていたので、センサは摩擦パッドからの制動熱の影響を受け易く、作動不良を生じ易かった。しかし、本発明では、前記センサを、一方の摩擦パッドと当接する押圧部材に設けるのではなく、キャリパボディのブリッジ部又は反作用部に設け、しかも摩擦パッドとも当接していない位置に設けているので、センサは作用部及び反作用部の何れの摩擦パッドからの制動熱の影響を受けにくいものとなる。従って、センサの高温化を防止して、センサの作動の正確性と耐久性を向上させる事が可能となる。また、本発明では、制動時に生じるキャリパボディの撓み変形を検知するセンサを使用しているので、摩擦パッドの押圧力の検出手段を単純な構成で形成する事ができる。
【0011】
また、キャリパボディは、ブリッジ部と作用部との間で分割形成し、この分割部にセンサを配置すれば、分割部は制動時の撓み変形が生じ易く、センサによるひずみの検知が行い易いものとなる。また、分割によりキャリパボディへのセンサの組み付け性が容易となり、メンテナンス性も向上する。
【0012】
また、制動時に摩擦パッドがディスクロータを押圧する際の反力により、キャリパボディのブリッジ部と反作用部が撓み変形を生じる。この変形の際は、キャリパボディの摩擦パッド方向、即ち内方では引張荷重が掛かり、摩擦パッドとは反対側、即ち外方では圧縮荷重がかかる。そのため、ひずみを検知するセンサは、ブリッジ部又は反作用部の肉厚の中心より外方に内蔵する場合は、圧縮荷重を検知するひずみセンサを用いるのが好ましく、ブリッジ部又は反作用部の肉厚の中心より内方に内蔵する場合は、引張荷重を検知するひずみセンサを用いるのが好ましい。何れの場合でも、ひずみに応じたセンサを用いる事ができ、このセンサで検知したひずみ量を、摩擦パッドの押圧力とみなす事ができ、センサの構成も単純で、組み付け性やメンテナンス性も高いものとなる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面に於いて説明すると、(1)は自動車の車輪に接続して一体に回動するディスクロータで、両側の摩擦面(2)に臨ませて、図1に示す如く、タイヤホイール(5)の内側に於いて、一対の摩擦パッド(3)(4)を配置している。また、前記ディスクロータ(1)に臨ませて、車両本体にブラケット(6)を固定し、この固定側からディスクロータ(1)の外周を跨いで反対側に掛けて突設したキャリパ支持腕(7)に、前記摩擦パッド(3)(4)を摺動可能に配置している。
【0014】
また、前記ブラケット(6)のキャリパ支持腕(7)に、摩擦パッド(3)(4)をディスクロータ(1)に押し付けるキャリパボディ(8)を、図2、図3に示す如く、一対のスライドピン(9)を介して進退可能に連結している。このキャリパボディ(8)は、図1に示す如く、ディスクロータ(1)を挟んで、一方の摩擦パッド(3)の背面に配置する作用部(10)と、他方の摩擦パッド(4)の背面に配置する反力爪(11)を設けた反作用部(12)と、ディスクロータ(1)の外周を跨いで作用部(10)及び反作用部(12)とを連結するブリッジ部(13)とで構成されている。
【0015】
そして、前記作用部(10)は、図1に示す如く、シリンダ(14)内に、ブラシレス型の電動モータ(15)と、摩擦パッド(3)(4)の押圧力を発生させるボールねじ機構(16)と、このボールねじ機構(16)に電動モータ(15)の駆動力を減速して伝達する減速ギア機構(17)とを収納している。この減速ギア機構(17)は、電動モータ(15)の駆動力により回動可能な遊星腕(18)と、この遊星腕(18)に回動可能に軸支した遊星歯車(23)と、この遊星歯車(23)を回動させる太陽歯車(26)とから構成されている。
【0016】
前記遊星腕(18)は、前記電動モータ(15)の回転子として作用するマグネット(39)を外周に配置した円筒部(20)と、この円筒部(20)よりも径大で、摩擦パッド(3)とは反対側の後部に設けた径大部(21)とから成り、電動モータ(15)の駆動力により、軸受部(57)を介してシリンダ(14)内を回動可能としている。そして、径大部(21)の外周三ヶ所に、等間隔で遊星歯車(23)を回動可能に軸支し、図1、図2に示す如く、各遊星歯車(23)を、径大部(21)外周に開口した切欠窓(22)から外部に突出させている。また、径大部(21)は、図2に示す如く、隣接する遊星歯車(23)間の外周を三角形状にカットして、遊星腕(18)の軽量化を図るとともに、後述の回転角センサ(19)のロータとしての使用を可能としている。
【0017】
また、遊星歯車(23)は、第1歯車部(24)と、この第1歯車部(24)よりも歯数の少ない第2歯車部(25)とを、軸方向の前後に分離して一体に形成し、前記第1歯車部(24)を、キャリパボディ(8)に回動不能に固定された太陽歯車(26)に噛合し、この太陽歯車(26)により遊星歯車(23)の回動を可能としている。
【0018】
また、上記太陽歯車(26)の固定は、図1、図4に示す如く、キャリパボディ(8)の後部に配置したバックプレート(27)に、等間隔で挿通穴(29)を複数開口し、各挿通穴(29)に挿通した固定ピン(28)を、太陽歯車(26)の背面に凹設した固定穴(30)に挿入する事により行っている。前記固定ピン(28)は、バックプレート(27)の装着孔(32)に装着したキャップ(33)にて頭部を押圧され、固定穴(30)への挿入状態が保たれている。そして、キャップ(33)を外すと、固定ピン(28)の頭部とバックプレート(27)間に装着した押圧発条(31)の付勢力により、固定ピン(28)が固定穴(30)から離脱し、太陽歯車(26)の固定が解除可能となる。
【0019】
そして、前記遊星腕(18)内に、軸受部(58)を介してボールねじ機構(16)のボールねじナット(34)を、回動可能で進退不能に収納している。このボールねじナット(34)は、遊星腕(18)の径大部(21)側に配置した後端外周に、太陽歯車(26)よりも歯数の少ない減速歯車(35)を固定している。この減速歯車(35)を、前記遊星歯車(23)の第2歯車部(25)に噛合し、遊星歯車(23)の回動によってボールねじナット(34)を回動可能としている。そして、このボールねじナット(34)の内径側に設けたボール溝(36)に、複数のボール(37)を介してボールねじ軸(38)を進退可能に螺着している。
【0020】
また、前記ボールねじ軸(38)は先端に、摩擦パッド(3)の押圧部材として、平板状のパッド押圧板(40)を互いに分離不能に接続している。このパッド押圧板(40)にて、摩擦パッド(3)を、広い面積で一部に押圧力を集中する事なく押圧して、ディスクロータ(1)に平行に押し付け可能としている。
【0021】
また、本実施例では、前記パッド押圧板(40)の外周とシリンダ(14)の内周との間に、伸縮可能なダストシール(47)を接続して、シリンダ(14)の開口部(45)を被覆し、シリンダ(14)内への塵埃や水滴、小石等の侵入を防止可能としている。このシリンダ(14)内部のシール性を更に高めるため、本発明では、前記ボールねじ軸(38)とパッド押圧板(40)との接続を、以下に示す如く行っている。
【0022】
まず、図1に示す如く、ボールねじ軸(38)は、内部を中空形状に形成し、中空部(41)を設けるとともに、摩擦パッド(3)側に取付ねじ(42)を固定する固定壁(49)を形成する。また、パッド押圧板(40)の背面に、袋穴状の取付穴(43)を凹設する。そして、ボールねじ軸(38)の中空部(41)側から、前記パッド押圧板(40)の取付穴(43)に、ボールねじ軸(38)の固定壁(49)を介して取付ねじ(42)を螺合し、ボールねじ軸(38)とパッド押圧板(40)とを接続している。
【0023】
このような構成とする事により、パッド押圧板(40)には、シリンダ(14)内部と摩擦パッド(3)側の外部とを連通する穴等が何ら形成される事はないし、該パッド押圧板(40)とボールねじ軸(38)との接続が、パッド押圧板(40)及びダストシール(47)で被覆された空間内で行われるものとなる。従って、シリンダ(14)の開口部(45)のシール性が向上し、摩擦パッド(3)側からのシリンダ(14)内への微細な塵埃や少量の水滴の侵入も確実に防ぐ事ができる。また、パッド押圧板(40)とボールねじ軸(38)との接続を、キャリパボディ(8)の後部側から行えるので、組み付け性やメンテナンス性も向上するものである。
【0024】
また、キャリパボディ(8)には、遊星腕(18)の回転角を検出して、ブラシレス型の電動モータ(15)の駆動を制御したり、ボールねじ軸(38)の進退量を推定するための回転角センサ(19)を設けている。この回転角センサ(19)は、図2、図4に示す如く、シリンダ(14)の内周面に、遊星腕(18)の三角形状の径大部(21)の外周に臨ませて、磁気コイルを円周状に配置してステータとし、遊星腕(18)の径大部(21)をロータとした構成である。この三角形状の径大部(21)が回転角センサ(19)の内周を回動する事により、波形の出力電圧を発生するので、遊星腕(18)の回転角を検知可能となるものである。このように、遊星腕(18)の径大部(21)をロータとして兼用できるので、遊星腕(18)とは別個に回転角センサ(19)用のロータを設ける必要がなく、部品点数や組み付け工数の増加を防ぐ事ができる。
【0025】
更に、本実施例では、図1、図4に示す如く、遊星腕(18)の径大部(21)の後端面に臨ませて、前記バックプレート(27)に、パーキング機構のソレノイド(54)を設けている。そして、車両の駐車時に、摩擦パッド(3)(4)により制動を行って、ソレノイド(54)を作動すると、係止ピン(55)が、遊星腕(18)の径大部(21)端面に設けた係止穴(56)に係合する。この係合により、遊星腕(18)が回動不能に固定され、摩擦パッド(3)(4)による制動を維持する事ができる。また、バックプレート(27)外周に、Oリング(60)を介して被覆カバー(44)を装着し、ソレノイド(54)やバックプレート(27)、その他を外的衝撃から保護するとともに、シリンダ(14)内のバックプレート(27)側のシール性も高めている。
【0026】
また、本実施例では、前述の如く減速ギア機構(17)を、電動モータ(15)を介して摩擦パッド(3)(4)とは反対側に配置しているので、制動熱が減速ギア機構(17)に伝達されにくいものとなり、減速ギア機構(17)の高温化を防ぐ事ができる。このような制動熱の伝達による部品の高温化を防止するため、本実施例では、キャリパボディ(8)を、電動モータ(15)の摩擦パッド(3)側と減速ギア機構(17)側で分割可能に形成し、各パーツ間に、図1、図3に示す如く、キャリパボディ(8)よりも熱伝導率の低い断熱材製の断熱リング部材(46)を挿入配置して、キャリパボディ(8)の断熱性を高めている。そして、キャリパボディ(8)の各パーツ及び断熱リング部材(46)は、図3に示す如く、一対の固定軸(52)により、分離不能に連結している。
【0027】
このように断熱リング部材(46)を配置する事により、摩擦パッド(3)(4)の制動熱が、キャリパボディ(8)の外表面を介して、電動モータ(15)、回転角センサ(19)、ソレノイド(54)等の電気部品、及び減速ギア機構(17)に伝達されるのを良好に防ぐ事ができる。また、電動モータ(15)の駆動熱が、減速ギア機構(17)に伝達されるのも防ぐ事ができる。
【0028】
従って、電動モータ(15)、回転角センサ(19)、ソレノイド(54)等の電気部品、減速ギア機構(17)等の高温化を良好に防ぎ、前記各部品の作動の正確性と耐久性が向上し、電気式ディスクブレーキの円滑な制動が長期に持続可能なものとなる。尚、前記断熱リング部材(46)は、キャリパボディ(8)の本体を分割形成して、各パーツ間に挿入配置しているので、キャリパボディ内部の部品に設ける場合と比較して、組み付けが容易であり、生産性に影響を与えにくいものとなる。また、分割形成によりキャリパボディ(8)の内部への各種部品の組み付け性やメンテナンス性も向上するものとなる。
【0029】
また、前述の如く、電動モータ(15)をキャリパボディ(8)に内蔵し、更に前記遊星歯車(23)等の減速ギア機構(17)を電動モータ(15)の内側ではなく、電動モータ(15)よりも後部側に配置しているので、キャリパボディ(8)が長尺にも径大にもならず、コンパクトな形成が可能となる。従って、電気式ディスクブレーキをタイヤホイール(5)の内側に設置する際のレイアウトの自由度が増すものとなる。
【0030】
上述の如く構成した電気式ディスクブレーキに、前記摩擦パッド(3)(4)のディスクロータ(1)への押圧力を検出して、制動を制御するためのセンサ(48)を設けている。従来技術では、このようなセンサを、摩擦パッドの押圧部材であるシャフトに設け、センサを摩擦パッドと直に当接させていたので、制動熱によるセンサの精度低下を招く虞があった。しかし、本発明では、図1、図3、図5に示す如く、このセンサ(48)は、一方の摩擦パッド(3)の熱伝導を受け易いシリンダ(14)内部ではなく、キャリパボディ(8)のブリッジ部(13)又は反作用部(12)で、しかも一方及び他方の摩擦パッド(3)(4)とも当接しない位置に内蔵する事により、センサ(48)への制動熱の影響を少なくしている。
【0031】
そして、制動時の摩擦パッド(3)(4)によるディスクロータ(1)の押圧の反力で、キャリパボディ(8)は、ブリッジ部(13)と反作用部(12)側とが撓み変形する。従って、本発明では、変形によるひずみを検出可能なセンサ(48)を使用するが、このセンサ(48)として、圧縮荷重を検出するものや引張荷重を検出するもの等、従来公知のひずみセンサや荷重センサを使用する事ができる。また、上記変形により、ブリッジ部(13)や反作用部(12)は、各々の肉厚の中心よりも摩擦パッド(3)(4)方向、即ち内方(以後内方と言う)では、図6の白抜き矢印で示す如く、引張荷重が掛かり、前記内方とは反対方向、即ち肉厚の中心より外方(以後外方と言う)では、図5の白抜き矢印で示す如く、圧縮荷重がかかる。
【0032】
そこで、本実施例では、作用部(10)とブリッジ部(13)との境目で、キャリパボディ(8)を分割形成し、この分割部の肉厚の中心よりも外方に、図5に示す如く、圧縮荷重を検出するひずみセンサ(48)を内蔵している。そして、このセンサ(48)での検出値を、摩擦パッド(3)(4)のディスクロータ(1)への押圧力として検出している。また、このように分割部にセンサ(48)を内蔵するので、組み付け性やメンテナンス性も向上するものとなる。
【0033】
また、従来技術では、センサがシリンダ内を進退し、このセンサのハーネスをシリンダ内に挿通していたため、ハーネスがシリンダ内の部品間に挟まり易く、前記部品の円滑な作動に支障を来したり、ハーネスの断線を生じる虞があった。しかし、本発明では、センサ(48)をブリッジ部(13)又は反作用部(12)に内蔵しているので、多くの部品を組み込んだシリンダ(14)内部にハーネス(50)を挿通する必要はなく、キャリパボディ(8)の外部に配線可能となるとともに、センサ(48)の移動もないので、ハーネス(50)の断線防止効果が高いものである
【0034】
上述の如く構成された電気式ディスクブレーキでは、自動車の運転者がブレーキペダルを踏み込んで制動操作を行うと、この踏み込み量に応じて電動モータ(15)が駆動し、遊星腕(18)がシリンダ(14)内を回動する。この遊星腕(18)の回動により、径大部(21)に軸支され、太陽歯車(26)に第1歯車部(24)を噛合する遊星歯車(23)が、太陽歯車(26)の外周を回動する。この遊星歯車(23)の回動により、第2歯車部(25)に減速歯車(35)を噛合するボールねじナット(34)が回動される。
【0035】
そして、ボールねじ機構(16)の作用により、回動力がボールねじ軸(38)の摺動力に変換され、パッド押圧板(40)を介して作用部(10)側の摩擦パッド(3)を押圧摺動し、ディスクロータ(1)に押し付ける。更に、ボールねじ軸(38)の摺動の反力で、キャリパボディ(8)が後退し、反作用部(12)の反力爪(11)が、反作用部(12)側の摩擦パッド(4)を押圧摺動し、ディスクロータ(1)に押し付ける事により、制動が行われる。
【0036】
この制動により、キャリパボディ(8)のブリッジ部(13)と反作用部(12)とが撓み変形する。この変形により、作用部(10)とブリッジ部(13)との境目で、肉厚の中心よりも外方に配置した本実施例のセンサ(48)には、図5の白抜き矢印で示す如く、圧縮荷重が掛かり、この圧縮荷重を検出する事により、摩擦パッド(3)(4)のディスクロータ(1)への押圧力として検出する事ができる。
【0037】
また、作用部(10)側の摩擦パッド(3)及び反作用部(12)側の摩擦パッド(4)とは当接しない位置に、センサ(48)を配置可能となるので、センサ(48)への制動熱の影響をより少なく抑える事ができる。更に、キャリパボディ(8)外表面側は放熱性が良く、冷却も容易であるから、センサ(48)の高温化を良好に防止する事が可能で、センサ(48)の作動の正確性と耐久性を向上させる事ができる。また、センサ(48)のハーネス(50)をキャリパボディ(8)の外部に配置しているので、ボールねじ機構(16)や減速ギア機構(17)の作動がハーネス(50)により邪魔される事はなく、円滑な作動が可能となるとともに、ハーネス(50)の断線防止効果も高く、電気式ディスクブレーキの適切な作動が可能となる。
【0038】
また、上記制動の際には、前述の如く、遊星歯車(23)は、太陽歯車(26)と噛合する第1歯車部(24)よりも、ボールねじナット(34)の減速歯車(35)と噛合する第2歯車部(25)の歯数を少なくし、この第2歯車部(25)にて、太陽歯車(26)よりも歯数の少ない減速歯車(35)を回動している。これらの作用により、電動モータ(15)の駆動力は、効率的に減速されて、摩擦パッド(3)(4)の強い押圧力に変換可能となり、効果的な制動が可能となる。
【0039】
そして、ブレーキペダルの踏み込みを解除すると、電動モータ(15)の制御により遊星腕(18)が逆回転し、遊星歯車(23)を介してボールねじナット(34)が、先の回転とは逆方向に回転するので、ボールねじ軸(38)が後退し、摩擦パッド(3)の押圧が解除される。また、このボールねじ軸(38)後退の反力により、キャリパボディ(8)も復元方向に摺動し、反作用部(12)側の摩擦パッド(4)の押圧が解除されるので、制動が解除されるものである。
【0040】
また、上記第1実施例では、作用部(10)とブリッジ部(13)との境目で分割可能とし、この分割部の肉厚の中心よりも外方に内蔵したセンサ(48)により、圧縮荷重を検出している。また、キャリパボディ(8)を分割形成せずにセンサ(48)を内蔵しても良い。
【0041】
そこで、他の異なる第2実施例では、図6に示す如く、センサ(48)を、作用部(10)とブリッジ部(13)との境目で分割した分割部で、肉厚の中心よりも内方に配置している。この位置では、白抜き矢印で示す如く、制動時に引張荷重が掛かるので、センサ(48)は、引張荷重を検出可能なものを使用している。また、センサ(48)は、キャリパボディ(8)に一個のみ設けても良いし、図3に示す如く、キャリパボディ(8)に複数個設けても良いし、前記第1実施例の圧縮荷重センサ(48)と第2実施例の引張荷重センサ(48)等、2種類以上のセンサ(48)を、キャリパボディ(8)に交互に配置しても良い。
【0042】
【発明の効果】
本発明は上述の如く構成したもので、摩擦パッドのディスクロータへの押圧力を検出するために、変形によるひずみを検知するセンサを、摩擦パッドの非当接箇所である、制動時に撓み変形を生じるブリッジ部又は反作用部に内蔵している。従って、摩擦パッドの制動熱からのセンサの影響を受けにくくして、センサの作動の正確性と耐久性を向上させる事が可能となる。そして、このセンサで検知したひずみ量を、摩擦パッドのディスクロータへの押圧力とみなす事ができる。この押圧力の検出により、電気式ディスクブレーキの作動を適切に行う事が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例で、ディスクロータに臨ませて設置した電気式ディスクブレーキの横断面図。
【図2】図4のA−A線断面図で、太陽歯車の固定ピンを省略したものである。
【図3】キャリパボディの一部切り欠き平面図。
【図4】図1のバックプレート側の部分拡大断面図。
【図5】図1のセンサ付近の部分拡大断面図。
【図6】第2実施例のセンサ付近の部分拡大断面図。
【符号の説明】
1 ディスクロータ
2 摩擦面
3 摩擦パッド
4 摩擦パッド
8 キャリパボディ
10 作用部
12 反作用部
13 ブリッジ部
15 電動モータ
48 センサ

Claims (3)

  1. 電動モータの駆動力で一方の摩擦パッドをディスクロータの一方の摩擦面に押圧摺動させる進退動機構を内装した作用部と、他方の摩擦パッドをディスクロータの他方の摩擦面に押圧摺動させる反作用部と、前記作用部と反作用部とを連結するブリッジ部とから成るキャリパボディを設けた電気式ディスクブレーキに於いて、制動時に撓み変形を生じるブリッジ部又は反作用部であって、摩擦パッドとの非当接部に、変形によるひずみを検知するセンサを内蔵して配置し、この内蔵したセンサで検知したひずみ量を、摩擦パッドのディスクロータへの押圧力として検出する事を特徴とする電気式ディスクブレーキ。
  2. キャリパボディは、ブリッジ部と作用部との間で分割形成し、この分割部にセンサを配置した事を特徴とする請求項1の電気式ディスクブレーキ。
  3. 前記ひずみを検知するセンサは、ブリッジ部又は反作用部の肉厚の中心よりも外方に内蔵して、圧縮荷重を検知するひずみセンサであること、又はブリッジ部又は反作用部の肉厚の中心より内方に内蔵して、引張荷重を検知するひずみセンサである事を特徴とする請求項1又は2の電気式ディスクブレーキ。
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